説明

スマート衣料品技術

所定の目的のために電磁信号を転送すべく身体の部分と接続する方法および装置に関する。この装置は、身体の部分との間で信号を送受する能力がある1つ以上の電極を含んでいる衣料品と、目的に応じて信号の性質を変えるために1つ以上のパラメータに応じて信号の性質を制御するか、または、信号を処理するコントローラと、を含み、1つ以上のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータが衣料品に含まれているデータ記憶装置に記憶されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
身体内で起こる電気活動の測定のため、または、電気エネルギーを身体に供給するために身体表面に電気接続しなければならないことは一般的な要件である。通常、対象とする用途に特有の解剖学的位置で皮膚に接触させて1つ以上の電極を位置付けることが必要である。衣料品がユーザによって着用されるときに目標とする解剖学的位置で身体の上に位置する1つ以上の電極を皮膚に対向する表面に組み込む衣料品、ラップ、または、ギブスのような装着手段を工夫することも一般的である。通常、このような衣料品は、着脱式コネクタを用いて電極を電子モジュールに接続する配線を組み込む。米国特許第6885896号は、電子モジュールが、内部配線された腹部ベルトに固定され、電気刺激信号をベルトの皮膚に対向する表面に搭載された電極に供給するホルスターとインターフェースをとる、このようなシステムについて記載している。
【0002】
類似したシステムが、膝、背中、肩などの治療のため考えられ、実際に、該文献は、電極を組み込む身体の様々な部分のための衣料品およびギブスの多数の実施例を挙げている。
【0003】
様々な身体部分を対象とするこのような衣料品またはその他の装着手段が選択されるとするならば、このような衣料品またはその他の装着手段は共通の電子モジュールとインターフェースをとることが望ましい。共通の電子モジュールは、衣料品タイプ毎に専用の電子モジュールを用いるより費用がかからない。典型的な臨床では、様々な解剖学的部位のための一人の患者が使用する衣料品の選択と、いずれの衣料品にも装着できる同一の電子コントローラのストックとを考えることが可能である。すべての衣料品のため共通コントローラを使用することに伴う問題は、コントローラが使用前に衣料品タイプ毎にユーザまたは療法士によって構成されなければならないことである。さらに、特定の衣料品が特定の患者に割り当てられ、コントローラが患者の間で交換されるか、または、取り替えられる可能性があるため、コントローラは当該患者に個人化されることが必要である。この理由のため、コントローラはコントローラが接続される衣料品のタイプに対し構成可能であり、かつ、特有の患者の治療が選択され得ることが望ましい。
【0004】
衣料品タイプ毎の電極の個数およびサイズは相違してもよく、各電極に印加される電気信号は必然的に衣料品タイプおよび意図された治療に固有である。コントローラは様々な衣料品設計および治療パラメータを考慮するために療法士によるデータ入力を介して手動でプログラム可能であるが、この過程は誤りやすい。
【0005】
伝統的に電気療法は、各チャンネルが専用の電極のペアを有する1つ以上のチャンネルを有する発電機を使用している。所与のチャンネルの電極のペアが身体に設置されるとき、治療電流が電極のペアの間で身体内を流れることを可能にさせる電気回路が完成する。身体内の電流路は主として身体上の電極の位置によって決められる。複数のチャンネルが身体に当てられるとき、複数のチャンネルはチャンネル間で電流が流れないように一般的に絶縁されている。身体上の電流路は、各ペアの個別の要素の間のエリアに制限されている。近年、中立のアレイとして身体上で電極のグループを取り扱うことの利点が認識されている。この取り扱いは、コントローラがその時々に電流を供給するため使用される電極または電極の組み合わせを選択し、シンクとして使用されるアレイのうちの残りの電極の組み合わせを選択することを可能にさせる。このことは、コントローラが、従来の方法による配線されたペアの間だけでなく、アレイの任意の電極の間に電流路をセットアップすることを可能にさせる。その上、たとえば、同じ筋肉を疲労させることを避けるために治療の途中で電極グループ分けを変更する方が有利である。電極アレイ選択、および、選択が経時的に変更されるかもしれない状況は、おそらく解剖学的に固有である。電極のアレイを組み込んでいる衣料品は様々な身体部分のため設計されることがあるため、解剖学的に適切な電流路を生成するための電極選択は、様々な電極アレイ要素の選択を必要とするであろうことは当然である。たとえば、肩ギブスと膝ギブスは共に4個の電極のアレイを有しているが、異なる電極の組み合わせがおそらく各治療中に様々な方法で変化する。コントローラはこのコンフィギュレーションを取り扱うために療法士からのデータ入力を受け入れるように設計されることがあるが、このような設計はユーザにとって使いやすい解決手法ではない。
【0006】
衣料品の電極は様々な表面積を有することがあるため、電流密度は所与の印加された電流に対して変化する。したがって、刺激装置が明確な電流密度限界を計算し、安全性限界の範囲内に維持するため所定の電流密度限界より下に維持できることが重要である。したがって、電極表面積を記述するデータをコントローラに何とかして入力することが必要である。さらに、電気療法衣料品の電極は、幾何学的性質、解剖学的場所、構造、および、電解液タイプに依存して様々な電気インピーダンス特性を有することがある。コントローラがエネルギーを身体に供給する前に接続の品質を確認できることが重要である。
【0007】
電極のアレイは電気生理学的モニタリングにおいて身体表面から信号を取得するため使用される。電極の解剖学的な場所と、モニタリング対象の信号とに依存して、信号処理パラメータに非常に著しい相違が存在する可能性がある。たとえば、胸部から収集された心電計(ECG)信号は、腕から記録された筋電計(ECG)信号と比べて非常に異なる信号振幅およびスペクトル特性を有している。ECGの種々のリード構造の範囲内でも、広範囲の許容可能な信号パラメータが存在する。様々なこのような衣料品とインターフェースをとる能力がある汎用コントローラは、この汎用コントローラがその入力端子上で検出された信号を処理することを可能にさせる入力データを有していることが必要である。この入力データは、ユーザによって入力されることがあるが、ユーザによる入力は面倒であり、かつ、誤りやすい。
【0008】
衣料品は、温度、圧力、力、加速度、変位のようなその他の信号モニタリングセンサを用いて容易に構成されることがある。これらの信号がコントローラによって処理される必要がある限り、これらの信号を取得するために必要とされる信号タイプ、増幅器利得、および、フィルタ通過帯域を特定する入力データと、この信号の正常限界とが必要とされる。このようなセットアップデータはユーザによって入力されてもよいが、この場合もやはり、ユーザによる入力はユーザにとって使いやすい解決手法ではない。
【0009】
したがって、電子モジュールに接続されている衣料品タイプに依存して自動的に構成する電子モジュールの必要性がある。従来の関連した問題を解決するためにいくらかの試みが行われている。BastyrによるUS5,487,759は、膝を治療する電極を組み込んでいるギブスについて記載している。このギブスは、コントローラが搬送周波数の選択肢のうちのいずれの搬送周波数を使用するかを選択することを可能にさせる3ビットバイナリ符号を実質的に実施するキー付きコネクタを特色としている。様々な搬送周波数が様々な衣料品に存在する様々な電極サイズのため必要とされた。Bastyrは、コントローラの性能の定義を可能にさせるためのどのようなタイプの自動衣料品認識にも気付いていない。
【0010】
Bastyrの解決手法に伴うさらなる重大な問題は、解決手法が3ビットの符号化ビットだけに制限されているという事実を含んでいる。さらに、コントローラは、コントローラが製造されたときに装置に対して符号化された8個の可能な搬送周波数のうちの1つを供給するように予めプログラムされ、このことが別の問題を生じさせる。予め定義された組のうちの1つとして含まれていない搬送周波数を必要とする追加的な衣料品が後のある時点で範囲内に持ち込まれるならば、搬送波周波数が更新された新しいコントローラを製造することが必要である。なぜならば、3ビット符号は、単にギブスを特定するだけであり、コントローラがそのギブスと共に使用すべき実際の治療パラメータを与えないからである。符号は書き換えられないので、コンフィギュレーションは変更できなかった。
【0011】
さらに、Bastyrは、各チャンネルが専用のリード線と電極のペアに配線されている刺激の2つのチャンネルを含む刺激システムについて記載している。このシミュレーションシステムは、電流がある期間に亘ってペアをなす電極の間で一方の向きに流れ、次に、ある期間に亘って同じペアの間で反対の向きに流れる二相刺激を使用する。対象の衣料品、または、対象の衣料品のため選択された治療に依存して電極の電気接続を再設定することが要求されない。電極面積、電極インピーダンス、または、電極摩耗特性に関する情報を指定し蓄積するための要件も考慮されていない。
【0012】
この問題に対する部分的な解決手法は、ユーザがコントローラ上に設けられたメニューから対象の衣料品を選択することを可能にすることである。この場合もやはり、ユーザによる選択は誤りやすく、さらに、必要なデータのすべてが予めコントローラにロードされていることを必要とするので、柔軟性がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の一つは、従来技術の問題の少なくとも一部を解決するシステムを提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、適切にプログラムされた電子コントローラが、身体に着用される配線付きの様々な衣料品とインターフェースをとり、接続されている衣料品タイプを認識し、電気信号を該衣料品と対象の治療のための電極との適切な組み合わせに向けるために適切な接続を選択し、必要な信号を適切な端子で合成できるように治療タイミングおよびその他のパラメータを選択することを可能にさせるシステムである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、適切にプログラムされた電子コントローラが、身体に着用される配線付きの様々な衣料品とインターフェースをとり、接続されている衣料品タイプを認識し、特定の生体信号の検出のための適切な接続を選択し、信号タイプおよび用途に適した信号処理ステップを適用することを可能にさせるシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、所定の目的のため電磁信号を転送するために身体の部分と接続する装置であって、
身体の部分との間で信号を送受する能力がある1つ以上の電極を含んでいる衣料品と、
1つ以上のパラメータに応じて信号を制御するか、または、信号を処理するコントローラと、
を含み、
1つ以上のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータが衣料品に含まれているデータ記憶装置に記憶されている装置が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、所定の目的のため身体の部分との間で電磁信号を転送する方法であって、
身体の部分との間で信号を送受する能力がある1つ以上の電極を含んでいる衣料品を着用するステップと、
所定の目的に従って1つ以上のパラメータに応じて信号を制御または測定するステップと、
を含み、
1つ以上のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータを衣料品に含まれているデータ記憶装置に記憶するステップをさらに含む方法が提供される。
【0018】
本発明の重要な特色のうちの一つは、配線付きの衣料品を認識し、配線付きの衣料品と協働するためにコントローラによって必要とされるデータが衣料品に組み込まれているデータ記憶装置に記憶されていることである。コントローラは、患者治療履歴に関するデータを衣料品に取り付けられているデータメモリに記憶することも考えられる。このようにして、共通コントローラが様々な衣料品タイプとインターフェースをとり、衣料品から、コントローラが適切な信号を電極に供給すること、および/または、指定された電極上で検出された信号を正確に処理することを可能にさせるデータを自動的にアップロードすることが可能である。
【0019】
本システムのさらなる利点は、様々な衣料品が長年に亘って開発され、様々な衣料品のうちの1つずつが予め設計された電子コントローラと互換性があるということである。なぜならば、衣料品は治療に固有のデータを格納し、コントローラは始動時にこのデータをコントローラのオンボードマイクロコンピュータに単にロードし、適切な端子に必要な刺激信号を生成するため、および/または、指定された電極で検出された信号を適切に処理するためにこのデータを使用するからである。この特色は、治療データを変更することが単に衣料品メモリ内のデータを書き換える問題に過ぎないので、新しい療法が開発されたときに、治療データが変更されることをさらに可能にする。
【0020】
装着手段は、ギブス、ヘッドセット、四肢クランプ、または、自己接着性電極のようなその他の形式をとり得る。後者の実施例では、電極は皮膚に直接的に接着し、コントローラへの導電接続はリード線を用いて行われる。本発明において考えられているデータ記憶装置はこのような電極組立体に組み込まれることがある。この組み込みはメモリチップを電極組立体に直接的に組み込むことによって行われ得る。チップ端子への別個の電気接続が付加的なリード線によって行われ得る。
【0021】
前述された問題のうちの多くは本アプローチによって解決される。患者または療法士は、接続されている衣料品を特定する必要がなく、または、治療明細データを入力するか、若しくは、様々な治療選択肢から治療明細データを選択する必要がない。患者または療法士は、電極が衣料品内でどのように接続されているかを心配する必要がないか、または、電気刺激を正しい電極の組に向ける選択を行う必要がない。患者または療法士は、該当する生体信号を収容する電極に関する選択、および、該当する生体信号を解釈するために必要とされる信号処理手段に関する選択を行う必要がない。
【0022】
本アプローチのさらなる利点は、治療データロギングが記憶のため衣料品メモリを使用できることである。たとえば、患者を特定する情報、システムと一体となっている治療履歴、取得された生理学的測定値の記録、電極の状態、サービスデータ、および、交換データである。この情報は、電極を掃除するか、または、電極を交換する時機が到来したことをユーザに警告するために使用され得る。
【0023】
データ記憶装置を格納している衣料品は、接続されたコントローラがコントローラの端子に現れている信号を解釈することを可能にさせるために情報を記憶することが可能である。さらに、測定されている信号に関連した患者履歴の側面、たとえば、心拍変動の警報限界が衣料品に記憶され得る。
【0024】
以下、一例として添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による配線を含む衣料品およびコントローラの略図である。
【図2】配線およびコネクタを含むさらなる衣料品の略図である。
【図3】本発明による衣料品に組み込まれることがある1つのタイプの装置の略図である。
【図4】本発明による電極および経路を表している略図である。
【図5】本発明による電気刺激において使用される波形のタイミング図である。
【図6】本発明によるチャンネルのパルス列である。
【図7】顔面筋を刺激するための本発明による代替的な装着手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、適切な方式、たとえば、プラグまたはその他のコネクタ104で、適切に一体的につながる典型的な配線付の衣料品100およびコントローラ102を示している。コントローラは電子モジュールでもよく、配線付きの衣料品はデータ記憶装置106を支える構成部品105をさらに収納している。たとえば、データ記憶装置は、シリアルデータ電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)でもよく、または、その他の適切なタイプの記憶装置でもよい。
【0027】
図1における衣類は、それぞれがボディベルトを着用している身体の特定の点に所要の刺激を加える4個の別個の電極108a、108b、108c、108dを備えているボディベルトの形である。ベルトは、ベルトを所定の位置に保持する締結手段を具備することがあり、ベルトが身体に正しく位置決めされることを可能にするためにいくつかの外部インジケータをさらに含むことがある。
【0028】
図2を参照すると、異なった衣料品200が示されている。この衣料品は、それぞれが構成部品204に接続されている4個の電極202a−dを含む。この構成部品は図3により詳細に示され、図1および図2の両方と類似している。構成部品204は、(図1に示されているように)プラグ104の突起部を収容する2つの雌型接続部206および208を含む。電極202a−dは、接続配線203を介して一方の雌型接続部206に接続されている。(図1における106に相当している)データ記憶装置210はもう一方の接続部208に接続されている。データ記憶装置は、Dallas Semiconductorによって供給されているEEPROMメモリ装置のような「1線式」シリアルEEPROMメモリ装置でもよく、衣料品上のデータ記憶エレメントに一体化されている。プラグ104を使用してコントローラに接続し、スイッチをオンにすると、コントローラはシリアルEEPROMの内容を読み取ることが可能であり、それによって、特有の人およびその人の衣料品のための所要の治療を行うためコントローラを設定する。
【0029】
衣料品上のメモリへのコンフィギュレーションデータの入力は様々な方式で達成され得る。コンフィギュレーションデータはコネクタ208とインターフェースをとる特殊なジグを使用して製造時に入力され得る。データは、適切にプログラムされたコンピュータと、コネクタ208を介したメモリへの通信用のデータフォーマットを変換するアダプタとによって、製造後に入力されることもあり得る。コントローラ102は、データと、ユーザによって選択された選択肢とが転送され、衣料品メモリに記憶されるように、コンフィギュレーションモードを有するようにプログラムされることもある。
【0030】
図4は、パルスの送出の際に使用される電極400a−dおよび経路(図中では矢印付きの線)が4電極の実施例で決められる方法を示している。このような情報はパルス毎に提供され得るが、どちらかというと、パルスのグループまたはパルス列全体に対し供給される。これらの選択肢はデータ記憶手段内で符号化され得る。
【0031】
より多数の電極またはより少数の電極に対し、様々な組み合わせおよび様々な個数の相互接続および経路が考えられ得ることが理解される。その上、ある種のタイプのパルス化および電極組み合わせを使用することにより、任意のタイプのパルスまたは電気パターンが以下に詳述されているように生成され得る。
【0032】
電子モジュールは、マイクロコンピュータと、使用時に身体と接触している衣料品上の電極に接続されることが意図されている1つ以上の出力端子の組に電気パルスを生成する駆動回路とを含んでいる。コントローラは、たとえば、電流を選択された端子の間で、したがって、端子に接続されている電極の間で流れるようにさせるため、電気駆動信号を端子へ送出可能である。マイクロコントローラプログラムは、信号が出力端子へ印加される正確なタイミングを計算するために、記憶されたデータを入力として使用する。
【0033】
図7は本発明による顔面に電極を支える装着手段を示している。(図7に示されていない)データ記憶エレメント210は、ヘッドセット装着手段に位置しているコネクタモジュール204に一体化されている。
【0034】
本発明の目的のため、衣料品という用語は、身体に着用されるか、または、身体と接触しているあらゆるものを含むことが意図されている。図7の装着手段は、このようにして、どんなものでも身体に装着されているその他の形式の装着手段と同様に、衣料品という用語の定義の範囲内に包含されている。装着手段は、ギブスでも、フレームでも、ワイヤでも、接着剤でも、その他の形式でもよい。唯一の要件は、1つ以上の電極が存在し、データ用の記憶エレメントが身体上で支えられているか、または身体と接触していることである。
【0035】
配線付きの衣料品のような身体電極アクセサリと協働するための刺激コントローラのセットアップおよびコンフィギュレーションは、対象の治療のため当該衣料品とインターフェースをとる特有の要件を指定するために十分なデータの入力を必要とする。種々のタイプのデータが必要とされ、種々のタイプのデータは、
刺激パルス列波形を指定するデータと、
電極への電気接続を指定するデータと、
刺激のためのトリガーオプションを指定するデータと、
信号取得パラメータを指定するデータと、
患者および選択された療法の詳細を指定するデータと、
を含む。
【0036】
図5は、以下に詳述される電気刺激で使用可能であり、
進み位相極性が交番する対称性二相パルスと、
単相パルスと、
パルスダブレットと、
進み位相極性が交番する非対称性二相パルスと、
を含むある種の典型的な波形を示している。
【0037】
このようなパルスの幾何学的形状は、上記のリストに類似し、進み位相極性Pと、進み位相振幅Vと、進み位相期間tと、遅れ位相期間tと、位相間間隔tと、遅れ位相振幅Vとのようなある特定のパラメータを指定するリストから、波形タイプを特定することによって記述され得る。パルス繰返しレートはパルス間間隔(T)に関して定義されることがある。これらのパルスパラメータは、刺激のチャンネル毎に相違してもよく、したがって、配列、たとえば、t(1)、t(2)、・・、t(i)などとして表現され得る。
【0038】
図6は、最大信号振幅V、ランプアップ時間RU、収縮時間CTと、ランプダウン時間RDと、オフ時間RTと、変調タイプと、変調の深さMとによって記述され得る振幅変調パルス列の主要な要素を示している。異なったチャンネル上に数個のこのようなパルス列が存在し、パルス列間の時間関係もまた位相遅れとして定義されることが必要である。代替的な変調スキーム、たとえば、周波数変調、パルス幅変調、位相変調もまた指定され得る。治療は、それぞれが秒単位で定義された区間を有するセグメントに分割されることがある。セグメント毎の刺激パラメータは相違する可能性があり、このようにして、周波数、パルス幅、波形タイプなどの変化を伴う複雑な治療シーケンスが符号化され得る。
【0039】
表Aは、治療セグメントのパルス列を指定するために要求されるデータと、出現する値の典型的な範囲とを要約している。データ記憶効率のため、間接インデックスが値として記憶され、実際の値がそれによってコントローラ内の参照テーブルから復元され得る。たとえば、印加される電気刺激で使用される典型的なパルス列は以下のデータセットによって特徴付けられ得る。
【表1】


*引数はチャンネル固有値を示している。たとえば、パルス周波数(i)はチャンネルi上のパルス周波数を示している。
【0040】
マイクロコントローラは、駆動信号を印加すべき出力端子を選択することもある。たとえば、いつでも、マイクロコントローラは、端子の組の中からアノードとすべきある特定の部分集合を選択し、端子の組の中からカソードとすべき別の部分集合を選択することがある。コントローラは、刺激電流をアノードの組とカソードの組との間で流す定電流駆動回路に信号を印加する。これらの割当は、双方向電流フローを生じさせ、異なる端子の間に電流フローを生じさせるために経時的に変更される可能性がある。一連のパルスを生成するため使用されるべき電極選択を指定するデータは種々の形式で記憶され得る。
【0041】
最も簡単な形式は、Nが使用中の電極の個数であるとき、2Nビット幅のビットマップメモリである。上位Nビットはアノードとして使用されるべき電極を特定するために使用され、下位Nビットはカソードとして使用されるべき電極を特定するために使用される。何れにも選択されていない電極は電気的浮遊状態のままにされる。このような2Nビットの記録は、位相期間を指定する付加的な記録と共に、連続的な刺激の位相毎に使用され得る。多相刺激シーケンスは、任意の所要の詳細レベルまで指定可能であり、データ記憶容量およびリアルタイムでの検索の速度だけによって制限される。
【0042】
このような情報が表現され得る多数のデータ構造が存在し、多数のデータ圧縮の可能性が存在することは明らかである。本発明の重要な態様は、このデータの一部または全部が電極装着アクセサリまたは衣料品に位置しているデータ記憶装置に記憶されることである。
【0043】
可能性のある電気接続が一例として表Bに示されている。
【表2】

【0044】
電気刺激療法システムにおいては多くの場合に、選択されてもよいさらなる選択肢が存在する。たとえば、刺激は、自励するよりむしろトリガーされるように選択されることがあり、トリガー条件自体がプログラム可能でもよい。トリガー源はハンドスイッチでもフットスイッチでもよい。多くの例によるこのようなトリガーオプションの典型的な表は表Cに示すことができる。
【表3】

【0045】
衣料品が信号モニタリング機能を有しているとき、データ記憶装置は、信号を処理する方法に関する情報をコントローラに供給するため使用されることがある。使用されるべき電極が特定され、許容可能電極インピーダンス、増幅器利得、および、フィルタ設定に関するさらなる情報もまた表Dに多数の例によって示されているように与えられる。
【表4】

【0046】
たとえば、患者識別番号または患者名、開始日付、選択されたプログラム番号、分単位の治療セッション期間、終了までに要する総治療時間、実際に終了した総治療時間、チャンネル毎の強度限界、各チャンネルに達した強度レベル、各チャンネルで使用された平均強度レベル、次の予約日付などのような患者固有データを記憶するための要件がさらに存在することがある。その上、装置は、セッション中の体温、心拍、血圧、生成された最大力、筋疲労指数などのような患者測定値を記録してもよい。
【0047】
上記の情報のうちの少なくとも一部を指定するデータファイルは衣料品内に位置している記憶装置に記憶されている。コントローラが衣料品に接続され、スイッチがオンにされるとき、コントローラは、ファイルをコントローラのオンボードメモリにロードし、電気刺激を出力端子に送出するため、および/または、特定された電極に再生された信号を処理するためにこの情報を使用する。治療中および治療後に、コントローラは、種々の治療固有データ、たとえば、使用された平均強度、使用された総時間、終了した治療の回数などを衣料品に位置している記憶装置に戻すことがある。
【0048】
本書中の説明はコントローラと衣料品との間の配線付きの接続に言及しているが、衣料品識別情報およびデータを無線リンクで実施された衣料品とコントローラとの間で交換させることが可能であることは明らかである。
【0049】
本発明の重要な特徴は、医学的処置を記述するデータを収容しているデータ記憶装置がある程度は少なくとも衣料品に格納されていることである。
【0050】
発明は好ましい実施形態を参照して具体的に明らかにされ、記述されているが、形式および細部における種々の変更が発明の精神および範囲から逸脱することなく発明の範囲内で行われてもよいことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の目的のために電磁信号を転送すべく身体の部分と接続する装置であって、
前記身体の前記部分に対して前記信号を送受信することができる1つ以上の電極を含んでいる衣料品と、
1つ以上のパラメータに応じて前記信号の性質を制御するコントローラ、または、前記信号を測定するコントローラと
を含み、
前記1つ以上のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータが、前記衣料品に含まれているデータ記憶装置に記憶されている、装置。
【請求項2】
前記データ記憶装置が前記衣料品のユーザおよび前記所定の目的に関係しているパラメータを含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極がコネクタによって前記コントローラに接続されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記データ記憶装置が前記コネクタの一部を形成している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラが前記パラメータに応じて前記信号の特性を変更する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記信号の特性に対する変更が前記所定の目的と関連付けられている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記データ記憶装置が、前記身体から得られたパラメータを記録するメモリを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記衣料品内の複数の電極が、所定のパターンで向きが定められている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記信号が、前記所定の目的に応じて、一方の電極から別の電極へ伝達する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記信号が、2つ以上のコンポーネント信号要素を構成するパルス列を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記衣料品が1着の衣類である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、前記衣料品から電気的に着脱可能である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
所定の目的のために身体の部分に対して電磁信号を送受信する方法であって、
前記身体の前記部分に対して信号を送受信することのできる1つ以上の電極を含んでいる衣料品を着用するステップと、
前記所定の目的に従って1つ以上のパラメータに応じて前記信号を制御または測定するステップと
を含み、
前記1つ以上のパラメータのうちの少なくとも1つのパラメータを、前記衣料品に含まれているデータ記憶装置に記憶するステップをさらに備える方法。
【請求項14】
前記衣料品のユーザおよび前記所定の目的に関係しているパラメータを前記データ記憶装置に入れるステップをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記電極を前記コントローラに接続するステップをさらに備える、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記データ記憶装置をコネクタの一部として形成するステップをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記パラメータに応じて前記信号の特性を変更するステップをさらに備える、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の目的と関連して前記信号の特性を変更するステップをさらに備える、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記身体に入射した前記信号の結果として前記身体から得られたパラメータをメモリに記録するステップをさらに含む、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ある特定のタイプの信号を送出するために前記衣料品内の複数の電極の向きを所定のパターンで定めるステップをさらに備える、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記信号を前記所定の目的に応じて一方の電極から別の電極へ伝達するステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
2つ以上のコンポーネント信号要素を構成するパルス列を生成するステップを備える、請求項12〜20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−538654(P2009−538654A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512584(P2009−512584)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055242
【国際公開番号】WO2007/138071
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(505192981)ビーエムアール、リサーチ、アンド、ディベロップメント、リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】BMR Research & Development Limited
【住所又は居所原語表記】BMR House, Parkmore Park West, Galway Ireland
【Fターム(参考)】