説明

スライドゲートバルブ用プレートれんが

【課題】 溶鋼やスラグによる稼動面の焼き付き現象を抑制することのできるスライドゲートバルブ用プレートれんがを提供する。
【解決手段】 使用される耐火原料の最大粒径が1mmであり、前記プレートれんがの摺動距離であるストローク長さの最大値が溶鋼流通孔の孔径の3.2倍以下であること。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用取鍋やタンディッシュに取り付けられて、溶鋼の流量制御を行うスライドゲートバルブ用プレートれんがに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドゲートバルブ用プレートれんが(以下、単にプレートれんがと称する)は溶融金属の流量制御装置として使用され、特に、鉄鋼業において、取鍋やタンディッシュなどの溶融金属用容器(以下、とくに指定のないときは溶融金属用容器という言葉に統一する)から溶鋼を排出するときに流量制御装置として使用される。
【0003】
プレートれんがの使用回数が増えるにつれ、稼動面は溶鋼やスラグといった化学的、または機械的な要因によって稼動面表面は組織が次第に脆化してくる。そのような状態でプレートれんが同士を全閉状態にすると、溶鋼やスラグが稼動面の脆化した表面に浸潤する。
【0004】
プレートれんがの使用末期になると、前述した開孔部のエッジ部の欠けによって、溶鋼やスラグが稼動面に接する範囲が使用初期よりも広がり、同時に稼動面表面の脆化範囲を拡大させる。
【0005】
そして、近年では、高級鋼や清浄鋼の要求が高まり、従来よりも溶融金属用容器での保持時間が長くなっている。そのような状況下では、溶鋼やスラグと接したプレートれんがの稼動面は溶鋼やスラグ(特にスラグ)がプレートれんが稼動面に浸潤する。使用末期にはプレートれんが稼動面表面はさらに脆化しているので、溶鋼やスラグの浸潤作用が大きい。さらに、プレートれんがの稼動面表面に浸潤した溶鋼やスラグは、温度が下がると溶融状態から固化し、稼動面表面に固着する。一旦固着すると、プレートれんがを再び摺動させると、溶鋼やスラグと固着したプレートれんが稼動面の表面の一部を剥ぎ取ってしまう。この一連の現象を「焼付き」と称している。
【0006】
焼付きによる稼動面損傷が繰り返され、その範囲が拡大していく。これがプレートれんがの寿命を決める要素になっている。
【0007】
場合によっては、隙間無く重なり合っているはずのプレートれんが同士の稼動面の隙間を作ることになって、溶鋼が差し込んでしまい(この現象を「地金差し」と称する)、プレートれんがの使用中止にとどまらず、プレートれんがの稼動面の隙間から溶鋼が漏れて、漏鋼事故を引き起こすこともある。
【0008】
【特許文献1】 特開平11−57989号公報
【0009】
プレートれんがの面損傷を抑制するために特許文献1の技術が開示されている。特許文献1は、プレートれんがの摺動面にノズル孔(溶鋼流通孔)を囲むようにプレートれんがの厚みの0.1〜2%の深さの凹面を設けたことによって、熱膨張によって発生するプレートれんがの反りによる圧縮応力の緩和を図っている。しかしながら、特許文献1は、プレートれんが摺動面に設けた凹面部から地金差し現象が発生してしまう欠点があった。
【0010】
または、大気中の空気をプレートれんがの摺動面の面間から吸い込んでエアーリークを発生させて溶鋼を再酸化させ、鋼品質を低下させることもある。
【0011】
近年ではコストダウン、耐火物原単位低減の狙いから、プレートれんがを小型化するようになっている。プレートれんがを小型化するには、プレートれんがの摺動距離であるストローク長さを縮小するのが一つの手段である。ストローク長さは、2枚または3枚で一対として使うプレートれんがにおいて、固定されているプレートれんがの溶鋼流通孔の中心を起点として、摺動させるプレートれんがの溶鋼流通孔の中心までの直線距離で定義される。特に互いの溶鋼流通孔の中心を最大限に引き離した距離を、最大ストローク長さと定義する。
【0012】
最大ストローク長さをできるだけ縮小するようにプレートれんが形状を設計すると、プレートれんがを小型化できる。しかしながら、最大ストローク長さを縮小すると、プレートれんがの摺動面同士で起きる溶鋼の差し込みやエアーリークなどの不具合が発生しやすくなる。
【0013】
プレートれんがの溶鋼流通孔をぴったり一致させて、いわゆる「全開」状態で容器等から溶鋼を排出するのではなく、操業条件によって、溶鋼流通孔を少しずらして溶鋼流通孔の径を絞って溶鋼を排出する場合、溶鋼流出孔近傍の摺動面(この部分を「エッジ」という)が溶鋼によって機械的、化学的に摩耗される。プレートれんがを使用するにつれてエッジ部の摩耗が進行してくると、本来なら隙間無く重なり合っているプレートれんが同士の摺動面に隙間が生じてくる。この隙間に溶鋼やスラグが差し込んで、エアーリーク現象を起こして溶鋼を再酸化させたり、先ほど述べた焼付き現象を引き起こして操業を不安定化させたりといった操業トラブルを招いてしまう。
【0014】
従来のプレートれんがのように最大ストローク長さに余裕があれば、溶鋼やスラグによってエッジ部の摩耗が進行しても、重なり合ったプレートれんがの摩耗したエッジ部が接することはないので、これらの不具合は特に問題にならなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の解決課題は、溶鋼やスラグによるプレートれんが稼動面の焼付きを抑制することである。焼付きの抑制によって、プレートれんがの耐用回数を増加させ、なおかつ、安定した連続鋳造操業に貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題を解決するために、プレートれんがを構成する耐火原料等の構成について検討した。従来一般的に使用されているプレートれんがにおいて、プレートれんがを構成する耐火原料の粒度構成は、その最大粒径を3mm前後としている。最大粒径を3mm前後としているのには以下のような理由がある。一般的にプレートれんがに使用される耐火材料等の最大粒径は、プレートれんがの厚みの10分の1が目安となっているからである。通常プレートれんがの厚みは30〜45mmである。そのため最大粒径が3mm前後となるような粒度構成になっているのである。
【0017】
プレートれんがに限らず耐火物製品に使用される耐火原料の粒径が大きいと耐食性は向上する。しかしながら、耐火原料の粒径が大きいと、溶鋼やスラグが稼動面表面に浸潤した時に、耐火原料と固着してしまう。そのような状態でプレートれんがを再び摺動させると、固着物がプレートれんが表面の耐火原料ごとプレートれんが本体から剥ぎ取られてしまう。粒径の大きい耐火原料の粒子があったプレートれんが表面の組織は粗くなり、さらに溶鋼やスラグの浸潤そして面荒れを起こしやすくなるという悪循環に陥る。
【0018】
その現象を防ぐために、プレートれんがに使用される耐火原料の最大粒径を1mmとしているのである。
【0019】
なお、粒径が最大1mmであれば使用される耐火原料の種類について特に制限はなく、例えば、アルミナ原料、ジルコニア原料、シリカ原料、マグネシア原料、スピネル原料、カーボン原料から組み合わされる原料が挙げられる。また、強度を上げるために添加するアルミ、シリコン、それらの合金を由来とした金属粉末も、本発明では耐火原料に含むものとする。他には結合剤や添加剤を添加する。以上の耐火材料、結合剤、添加剤等は、プレートれんがの使用状況、コスト面に応じて適宜選択される。
【0020】
プレートれんがに使用される材料は従来から使用されるものを適宜選択すればよいが、耐火原料の粒度構成は最大1mmとする。
【0021】
ラボテストにおける耐食性は粒径の大きいものを使用した従来品プレートれんがよりも若干低下するものの、先に述べた焼付き現象による面荒れが抑制され損傷スピードが安定するので、耐用回数は従来品よりも向上した。
【0022】
そして、本発明によって稼動面損傷の抑制を達成できたので、プレートれんがの小型化の要求をクリアすることができた。本発明のプレートれんがは、特に、相対するプレートれんが同士の溶鋼流通孔の最大ストローク長さが、前記溶鋼流通孔の孔径の3.2倍以下の形状で使用しても効果を発揮する。溶鋼流通孔の最大ストローク長さが、前記溶鋼流通孔の孔径の3.2倍以下としたのは、従来、その条件のプレートれんがにて、トラブルが多く発生していたからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、プレートれんが稼動面の焼付き現象を抑制することができ、そのうえ、プレートれんがを小型化してもエアリークなどのトラブルを抑えて安定した連続鋳造ができるようになった。
【発明の最良の形態】

【実施例】
【0024】
本発明にかかるプレートれんがを電気炉製鋼メーカーA社とB社にて使用した。表1にプレートれんがの材質による組成比と粒径による組成比の一覧表としてまとめている。化学組成は本発明品と従来品のどちらも同じである。しかし、粒径組成においては、本発明品は3〜1mm超の粒径の材料は含んでいない。
【0025】
【表1】

【0026】
次に、表1の本発明品と従来品の組成のプレートれんがを電気炉製鋼メーカーのA社とB社にて使用したプレートれんがの耐用回数の平均値を表2にまとめている。
【0027】
【表2】

【0028】
表2の使用結果から、A社、B社のいずれにおいても、本発明品の耐用回数が従来品よりも20%前後アップした。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、耐火物コスト削減と連続鋳造の安全操業を両立して達成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼の流量制御に使用されるレシプロ式スライドゲートバルブ用プレートれんがにおいて、耐火材料の最大粒径が1mmであることを特徴とするスライドゲートバルブ用プレートれんが。
【請求項2】
最大ストローク長さが溶鋼流通孔の孔径の3.2倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のスライドゲートバルブ用プレートれんが。

【公開番号】特開2010−155277(P2010−155277A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17316(P2009−17316)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】