説明

スライドテーブル式竪型射出成形機

【課題】成形工場におけるレイアウトの自由度を高めることができ、かつ生産性及び安全性に優れたスライドテーブル式竪型射出成形機を提供する。
【解決手段】成形機に、ベースプレート32上に摺動自在に配置されたスライドテーブル13と、スライドテーブル13上に金型取付手段により取り付けられた下金型14と、下金型14を所定の型締位置P1と作業位置P2とに交互に移動するように、スライドテーブル13を往復直線駆動する電動サーボモータ36を備える。金型取付手段は、スライドテーブル13に開設されたねじ孔41と、ねじ孔41に螺合される締結ボルト44とを含む構成とし、ねじ孔41はスライドテーブル13上の中央部、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに偏倚した位置、又は中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに偏倚した位置に、適宜下金型14を取付可能な位置に開設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を型締位置と作業位置とに交互に移動するためのスライドテーブルを備えたスライドテーブル式竪型射出成形機に係り、特に、作業性及び安全性の改善手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースプレート上に摺動自在に配置されたスライドテーブルを、モータ及びボールねじ機構を備えた駆動手段を用いて往復直線駆動し、スライドテーブル上に取り付けられた下金型を所定の型締位置と作業位置(退避位置)とに交互に移動できるようにしたスライドテーブル式竪型射出成形機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載のスライドテーブル式竪型射出成形機は、ボールねじ機構を構成するねじ軸をスライドテーブルに貫通させたので、ねじ軸をスライドテーブルの側面に配置する場合に比べて成形機を小型化でき、かつ、作業位置において下金型にインサート品をセットしたり、下金型から成形品を取り出したりする際に、ねじ軸を避けて作業を行う必要がないので、作業効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−1756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成形工場においては、ラインのレイアウトを自由に設定できるようにするため、スライドテーブル式竪型射出成形機に対するオペレータの立ち位置を適宜変更できるようにすることが求められる。スライドテーブル式竪型射出成形機は、射出充填工程が終了した後に、スライドテーブルに取り付けられた金型が型締位置から作業位置まで移動されるので、金型が作業位置まで移動された状態では、スライドテーブルの端面側のみならず、右側面側或いは左側面側からも、インサート品のセットや成形品の取り出し等の作業を行うことが、原理的には可能である。しかしながら、スライドテーブル上に定められた一定の金型取付位置に金型を取り付けた場合、オペレータの立ち位置に応じて金型の取付位置までの距離が変化するので、オペレータが窮屈な姿勢で作業を行わなくてはならない場合を生じ、実際には、スライドテーブルの端面側、右側面側及び左側面側のいずれからも所望の作業を高能率に行うことは困難である。例えば、スライドテーブルの端面側に立ったオペレータが作業しやすいように、スライドテーブルに対する金型取付位置が定められている場合において、スライドテーブルの右側面側又は左側面側にオペレータが立って作業を行おうとすると、オペレータの立ち位置から金型の取付位置までの距離が遠くなるため、オペレータは身を乗り出した状態で作業を行わなくてはならず、オペレータが疲労しやすく、作業能率が低下する。特許文献1には、オペレータの立ち位置に応じて金型の取付位置を調整する技術が何ら開示されていないので、特許文献1に記載のスライドテーブル式竪型射出成形機によっては、成形工場におけるレイアウトの自由度を高めるという技術的要請に対応することができない。
【0006】
また、スライドテーブル式竪型射出成形機は、大重量のスライドテーブル及び金型が往復直線移動するので、オペレータその他の人がこれらの移動物と衝突しないように、高い安全性を備えていることが求められる。即ち、上述したように、スライドテーブル式竪型射出成形機は、スライドテーブルの端面側、右側面側及び左側面側のいずれにも人がアクセス可能であるので、作業中のオペレータについては十分に安全を確認しながら作業を行ったとしても、作業中のオペレータ以外の人がオペレータの立ち位置以外の場所に不用意に進入した場合に移動物と衝突する虞があり、このような事故を未然に防止することが求められる。特許文献1には、オペレータその他の人の安全確保に関する技術が何ら開示されておらず、かかる技術的要請に対応することができない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の不備を解消するためになされたものであり、その目的は、成形工場におけるレイアウトの自由度を高めることができ、かつ生産性及び安全性に優れたスライドテーブル式竪型射出成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するため、ベースプレート上に摺動自在に配置されたスライドテーブルと、当該スライドテーブル上に金型取付手段により取り付けられた金型と、当該金型を所定の型締位置と作業位置とに交互に移動するように、前記スライドテーブルを往復直線駆動する駆動手段とを備えたスライドテーブル式竪型射出成形機において、前記金型取付手段は、前記スライドテーブルに開設されたねじ孔と、当該ねじ孔に螺合される締結ボルトとを含む構成とし、前記ねじ孔は、前記スライドテーブル上の中央部に前記金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに前記金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに前記金型を取付可能な位置に開設するという構成にした。
【0009】
かかる構成によると、金型固定用の締結ボルトを螺合するねじ孔を変更することにより、スライドテーブル上の中央部にも、端辺寄りにも、側辺寄りにも、適宜金型を取り付けることができるので、スライドテーブル式竪型射出成形機に対するオペレータの立ち位置に関係なく、オペレータの立ち位置から金型の取付位置までの距離を最適化することができる。よって、オペレータは楽な姿勢で作業を行うことができ、オペレータの疲労を緩和することができて、高い作業能率を維持することができる。また、スライドテーブル式竪型射出成形機に対するオペレータの立ち位置を適宜変更できることから、成形工場におけるレイアウトの自由度を高めることができる。
【0010】
また本発明は、前記課題を解決するため、前記スライドテーブルの移動範囲外であって、前記スライドテーブルの端辺と対向する部分及び側辺と対向する部分に、オペレータが左右の両手を用いて同時に操作することにより、前記駆動手段による前記スライドテーブルの移動を開始する両手押しスイッチの押釦を備えるという構成にした。
【0011】
かかる構成によると、スライドテーブルの移動を開始するためには、オペレータが左右の両手を用いて同時に両手押しスイッチの押釦を操作する必要があるので、オペレータが意図しないタイミングでスライドテーブル及び金型の移動が開始されることがない。また、両手押しスイッチの押釦は、スライドテーブルの移動範囲外に備えられているので、オペレータの身体が移動中のスライドテーブル及び金型に不用意に接触しにくい。これらのことから、オペレータの安全性を確保することができる。
【0012】
また本発明は、前記課題を解決するため、前記駆動手段は、電動サーボモータと、当該電動サーボモータの出力軸に連結されたねじ軸と、当該ねじ軸の回転運動を前記スライドテーブルの直線運動に変換するナット体とからなるという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、電動サーボモータに備えられたロータリエンコーダの出力信号に基づいて、スライドテーブル(金型)を予め定められた任意の停止位置に正確に停止させることができるので、スライドテーブルに対する金型の取付位置の変更に容易に対処することができる。
【0014】
また本発明は、前記課題を解決するため、前記金型が前記型締位置にあること、及び前記金型が前記作業位置にあることを検知する金型位置検出センサを備えるという構成にした。
【0015】
かかる構成によると、スライドテーブル(金型)が所定の型締位置又は作業位置において停止しているか否かを検知できるので、電動サーボモータに備えられたロータリエンコーダの故障等によるスライドテーブル(金型)の停止位置ずれを検知することができ、成形機の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、金型取付手段は、スライドテーブルに開設されたねじ孔と、当該ねじ孔に螺合される締結ボルトとを含む構成とし、ねじ孔は、スライドテーブル上の中央部に金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに金型を取付可能な位置に開設するので、締結ボルトを螺合するねじ孔を変更することにより、スライドテーブルに対する金型の取付位置を適宜変更することができる。よって、スライドテーブル式竪型射出成形機に対するオペレータの立ち位置に関係なく、オペレータの立ち位置から金型の取付位置までの距離を最適化することができ、オペレータの疲労を緩和することができて、高い作業能率を維持することができる。また、スライドテーブル式竪型射出成形機に対するオペレータの立ち位置を適宜変更できることから、成形工場におけるレイアウトの自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るスライドテーブル式竪型射出成形機の斜視図である。
【図2】実施形態に係る作業部の平面図である。
【図3】実施形態に係る作業部の側面図である。
【図4】実施形態に係る作業部の端面図である。
【図5】実施形態に係るスライドテーブルに対する下金型の取付方法を示す要部断面図である。
【図6】実施形態に係るスライドテーブルに対する下金型の取付位置を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態に係るスライドテーブル式竪型射出成形機について、図を参照しながら説明する。本例のスライドテーブル式竪型射出成形機は、金型の側面方向から金型キャビティ内に溶融樹脂を射出充填する横射出タイプであり、図1に示すように、型締部1と、型締部1の側方に配置された溶融樹脂の射出充填部2と、型締部1から射出充填部2とは直交する方向に張り出された作業部3と、作業部3にヒンジ5を介して旋回可能に取り付けられたコントローラ4とから主に構成されている。コントローラ4には、入力装置及び表示装置が備えられる。
【0019】
型締部1は、タイバー11と、スライドテーブル13が取り付けられた図示しない固定ダイプレートと、スライドテーブル13に固定された下金型14(図5及び図6参照)と、タイバー11の上端部に固定され、タイバー11と共に上下動する可動ダイプレート12と、可動ダイプレート12に取り付けられ、下金型14に対して開閉動作する図示しない上金型と、タイバー11の下端に位置する図示しないテールストックと、固定ダイプレートとテールストックとの間に備えられた図示しない型締手段を有している。なお、上金型は、可動ダイプレート12に取り付けることもできるし、可動ダイプレート12とは独立の別体に構成し、下金型14と一体となって型締部1と作業部との間を往復するように構成することもできる。
【0020】
射出充填部2は、図示しない射出スクリューが内蔵された加熱シリンダ21と、加熱シリンダ21内にペレット状の原料樹脂を供給するホッパ22と、射出スクリューの回転と前後進とを行う射出装置23とを有している。
【0021】
作業部3は、図2乃至図4に示すように、ベースフレーム31上に取り付けられたベースプレート32と、ベースプレート32の長辺に沿って相平行に設けられた2条の案内レール33と、前記スライドテーブル13の下面に取り付けられ、案内レール33と組み合わされる摺動ブロック34と、スライドテーブル13を案内レール33に沿って往復直線駆動する駆動手段35を有している。駆動手段35は、ベースプレート32に取り付けられた電動サーボモータ36と、電動サーボモータ36の出力軸に所要のカップリング37を介して連結されたねじ軸38と、ねじ軸38を螺合するためのねじ孔が開口され、スライドテーブル13の下面に取り付けられたナット体39とからなる。ねじ軸38とナット体39とはボールねじ機構を構成しており、電動サーボモータ36(ねじ軸38)の回転運動をナット体39の直線運動に変換してスライドテーブル13に伝達し、スライドテーブル13を図3に示す型締位置P1と作業位置P2とに移動する。なお、前記案内レール33及び摺動ブロック34としては、LMレールとLMブロックとの組合せからなるLMガイドを用いることができる。このように、スライドテーブル13の駆動手段を、電動サーボモータ36と、電動サーボモータ36の出力軸に連結されたねじ軸38及びスライドテーブル13の下面に取り付けられ、ねじ軸38が螺合されたナット体39とからなるボールねじ機構とから構成すると、電動サーボモータ36に備えられたロータリエンコーダの出力信号に基づいて、スライドテーブル13(下金型14)を予め定められた任意の停止位置に正確に停止させることができるので、スライドテーブル13に対する下金型14の取付位置の変更に容易に対処することができる。
【0022】
ベースプレート32には、図2に示すように、スライドテーブル13が所定の型締位置P1に停止したか否かを検出する第1の近接センサ40aと、スライドテーブル13が所定の作業位置P2に停止したか否かを検出する第2の近接センサ40bとが備えられている。本実施形態においては、スライドテーブル13が所定の型締位置P1に停止した場合、第1の近接センサ40aからはON信号が出力され、第2の近接センサ40bからはOFF信号が出力される。また、スライドテーブル13が所定の作業位置P2に停止した場合、第1の近接センサ40aからはOFF信号が出力され、第2の近接センサ40bからはON信号が出力される。このように、本実施形態に係るスライドテーブル式竪型射出成形機は、スライドテーブル13が所定の型締位置P1に停止した場合と所定の作業位置P2に停止した場合において、出力信号が択一的に切り替えられるように各近接センサ40a,40bを配置したので、これら各近接センサ40a,40bの出力信号と電動サーボモータ36に備えられたロータリエンコーダの出力信号とをコントローラ4にて監視することにより、機械各部の故障を検出することができる。
【0023】
即ち、ベースプレート32に対するスライドテーブル13の移動位置は、ロータリエンコーダの出力信号からコントローラ4が演算により求めることができるので、スライドテーブル13が所定の型締位置P1に達したか否かの判定、及びスライドテーブル13が所定の作業位置P2に達したか否かの判定もコントローラ4により行うことができる。しかしながら、ロータリエンコーダの出力信号からは、スライドテーブル13が所定の型締位置P1又は作業位置P2に達したと判定される場合においても、第1及び第2の近接センサ40a,40bが共にON、又は共にOFFである場合には、実際にスライドテーブル13が所定の型締位置P1又は作業位置P2に達していないので、ロータリエンコーダ若しくはスライドテーブル13の駆動手段35に故障が発生したことが判る。
【0024】
スライドテーブル13の四隅部分には、それぞれ複数個の下金型取付用のねじ孔41が開設されており、スライドテーブル13の中央部分には、5つのイジェクトピン貫通孔42a〜42eが等分に開設されている。一方、ベースプレート32の取出位置P2におけるイジェクトピン貫通孔42a〜42eの開設位置と対応する部分には、イジェクトピン43a〜43eが上下動可能に設定されている。
【0025】
下金型14は、図5に示すように、複数個のねじ孔41のいずれかに螺合される締結ボルト44と、締結ボルト44の締め付け力を下金型14に伝達する固定板45と、固定板45の下面を支えるスペーサ46とからなる金型取付手段を用いて、スライドテーブル13上に固定される。固定板45とスペーサ46とは、一体構造とすることもできる。このように、本実施形態に係るスライドテーブル式竪型射出成形機は、スライドテーブル13の四隅部分にそれぞれ複数個の下金型取付用のねじ孔41を開設したので、締結ボルト44を螺合するねじ孔41を適宜選択することにより、図6に示すように、下金型14をスライドテーブル13の中央部にも、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに偏倚した位置にも、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに偏倚した位置にも固定することが可能となる。これにより、スライドテーブル13の端辺側にオペレータが立って作業する場合にも、スライドテーブル13の側辺側にオペレータが立って作業する場合にも、オペレータが作業しやすい位置に下金型14を取り付けることができるので、下金型14にインサート品をセットしたり、下金型14から成形品を取り出したりする際の作業性を高めることができる。
【0026】
イジェクトピン貫通孔42a〜42eは、それぞれスライドテーブル13の中央部と、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに偏倚した位置と、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに偏倚した位置とに開設される。中央部のイジェクトピン貫通孔42aは、スライドテーブル13の中央部に下金型14が取り付けられた場合におけるイジェクトピン43aの突き出しに用いられる。中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに偏倚したイジェクトピン貫通孔42b,42cは、スライドテーブル13の中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに偏倚した位置に下金型14が取り付けられた場合におけるイジェクトピン43b,43cの突き出しに用いられる。また、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに偏倚したイジェクトピン貫通孔42d,42eは、スライドテーブル13の中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに偏倚した位置に下金型14が取り付けられた場合におけるイジェクトピン43d,43eの突き出しに用いられる。
【0027】
図1及び図2に示すように、作業部3の周囲は、4本の柱51a〜51dと隣接する柱間を接続する3本の梁52とからなる構造体にて囲われており、スライドテーブル13の端辺と対向する2本の柱51a,51bの下部外面には、オペレータが左右の両手を用いて同時に操作することにより、電動サーボモータ36を起動して、スライドテーブル13の移動を開始する両手押しスイッチの押釦53a,53bが備えられている。また、スライドテーブル13の一側辺と対向する2本の柱51b,51cの下部外面にも、前記と同様の両手押しスイッチの押釦53c,53dが備えられている。なお、図示は省略するが、スライドテーブル13の他の側辺と対向する2本の柱51a,51dの下部外面に、前記と同様の両手押しスイッチの押釦を備えることもできる。押釦53a,53b及び53c,53dの操作状態は、図示しないコントロータによって監視されており、押釦53aと押釦53b、又は押釦53cと押釦53dとが同時に操作された場合には、コントローラ4が電動サーボモータ36の駆動信号を出力し、スライドテーブル13の駆動を開始する。
【0028】
このように、オペレータの各立ち位置に対応する2本の柱51a,51b及び51b,51cの下部外面に両手押しスイッチの押釦53a,53b及び53c,53dを備えると、オペレータが左右の両手を用いて同時に両手押しスイッチの押釦53a,53b又は53c,53dを操作しない限り、スライドテーブル13の移動が開始されないので、オペレータが意図しないタイミングでスライドテーブル13及び金型の移動が開始されることがない。また、両手押しスイッチの押釦53a,53b及び53c,53dは、スライドテーブル13の移動範囲外に備えられているので、オペレータの身体が移動中のスライドテーブル13及び金型に不用意に接触しにくい。よって、これらのことから、オペレータの安全性を確保することができる。なお、2組の押釦53a,53b及び53c,53dのいずれを有効にするかは、オペレータの立ち位置に応じて、コントローラ4側で設定される。
【0029】
さらに、スライドテーブル13の端辺と対向する2本の柱51a,51bの対向面には、オペレータその他の人が接近したことを検知するためのライン状の発光器54aと、このライン状の発光器54aからの光を受光するライン状の受光器55aの組合せからなる第1のエリアセンサが備えられている。また、スライドテーブル13の一側辺と対向する2本の柱51b,51cの対向面には、前記と同様の発光器54bと受光器55bの組合せからなる第2のエリアセンサが備えられている。なお、図示は省略するが、スライドテーブル13の他の側辺と対向する2本の柱51a,51dの対向面に、前記と同様の発光器と受光器の組合せからなる第3のエリアセンサを備えることもできる。受光器55a,55bによる発光器54a、54bから発光された光の受光状態は、コントローラ4によって監視されており、受光器55a,55bにて受光されるべき発光器54a、54bの発光が遮断された場合、コントローラ4は、射出成形機の動作を停止させることができる。
【0030】
このように、オペレータの各立ち位置に対応する2本の柱51a,51b及び51b,51cの対向面に第1及び第2のエリアセンサを備え、いずれか一方のエリアセンサがオペレータその他の人の接近を検知している状態において、他方のエリアセンサがオペレータその他の人の接近を検知したときに、コントローラ4が射出成形機の動作を停止させる構成にすると、射出成形機に不用意に接近した人に射出成形機の可動部が接触する等の事故を未然に防止できるので、射出成形機の安全性を高めることができる。
【0031】
以下、本実施形態に係るスライドテーブル式竪型射出成形機の使用方法と動作とについて説明する。
【0032】
スライドテーブル式竪型射出成形機の使用に際しては、まず、スライドテーブル13に対する下金型14の取り付けを行う。スライドテーブル13に対する下金型14の取り付けは、スライドテーブル13をコントローラ4に予め記憶された作業位置P2に移動した状態で、図5に示す金型取付手段を用いて行われる。その際、スライドテーブル13に対する下金型14の取付位置に合わせて、金型取付手段である締結ボルト43を螺合するための最適なねじ孔41を適宜選択する。これにより、オペレータが楽な姿勢で作業を行うことができるように、オペレータの立ち位置に合わせた下金型14の設定位置の調整が可能になる。また、射出充填部2から供給される溶融樹脂を受け入れるスプールが金型の中央部に開設されていない金型を用いる場合においては、下金型14の設定位置をスライドテーブル13の中央部からずらすことにより、スプールの開口位置をスライドテーブル13の中央部に設定することが可能になる。
【0033】
スライドテーブル13に対する下金型14の取り付けが終了した後、電動サーボモータ36を駆動してスライドテーブル13を型締位置P1側に移動し、電動サーボモータ36の駆動を微調整しながら、スプールの開口位置を射出充填装置2に備えられた射出ノズルの設定位置に合致させる。そして、この合致した位置を型締位置P1としてコントローラ4に記憶する。また、射出充填装置2を駆動して射出ノズルの前進位置及び後退位置を決定し、これをコントローラ4に記憶する。
【0034】
しかる後に、コントローラ4を操作して、連続成形運転を開始する。その際、オペレータは、スライドテーブル13に対する下金型14の取付位置に応じて、スライドテーブル13の端辺側を立ち位置とすることもできるし、スライドテーブル13の側辺側を立ち位置とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、スライドテーブル式竪型射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 型締部
2 射出充填部
3 作業部
4 コントローラ
11 タイバー
12 可動ダイプレート
13 スライドテーブル
14 下金型
21 加熱シリンダ
22 ホッパ
23 射出装置
31 ベースフレーム
32 ベースプレート
33 案内レール
34 摺動ブロック
35 駆動手段
36 電動サーボモータ
37 カップリング
38 ねじ軸
39 ナット体
40a,40b 近接センサ
41 下金型取付用のねじ孔
42a〜42e イジェクトピン貫通孔
43a〜43e イジェクトピン
44 締結ボルト
45 固定板
46 スペーサ
51a〜51d 柱
52 梁
53a〜53d 両手押しスイッチの押釦
54a,54b エリアセンサの発光器
55a,55b エリアセンサの受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート上に摺動自在に配置されたスライドテーブルと、当該スライドテーブル上に金型取付手段により取り付けられた金型と、当該金型を所定の型締位置と作業位置とに交互に移動するように、前記スライドテーブルを往復直線駆動する駆動手段とを備えたスライドテーブル式竪型射出成形機において、
前記金型取付手段は、前記スライドテーブルに開設されたねじ孔と、当該ねじ孔に螺合される締結ボルトとを含む構成とし、前記ねじ孔は、前記スライドテーブル上の中央部に前記金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の端辺寄りに前記金型を取付可能な位置と、中央部よりもいずれか一方の側辺寄りに前記金型を取付可能な位置に開設したことを特徴とするスライドテーブル式竪型射出成形機。
【請求項2】
前記スライドテーブルの移動範囲外であって、前記スライドテーブルの端辺と対向する部分及び側辺と対向する部分に、オペレータが左右の両手を用いて同時に操作することにより、前記駆動手段による前記スライドテーブルの移動を開始する両手押しスイッチの押釦を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスライドテーブル式竪型射出成形機。
【請求項3】
前記駆動手段は、電動サーボモータと、当該電動サーボモータの出力軸に連結されたねじ軸と、当該ねじ軸の回転運動を前記スライドテーブルの直線運動に変換するナット体とからなることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のスライドテーブル式竪型射出成形機。
【請求項4】
前記金型が前記型締位置にあること、及び前記金型が前記作業位置にあることを検知する金型位置検出センサを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスライドテーブル式竪型射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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