説明

スライド型電子機器の配線構造及びスライド型電子機器

【課題】折り曲げ性及び耐久性に優れ、かつ伝送特性及び耐ノイズ性にも優れたスライド型電子機器の配線構造を提供するとともに、スライド型電子機器の配線構造を適用したスライド型電子機器を提供する。
【解決手段】第1のスライド部材2と、第2のスライド部材3と、ハーネス6と、一対の配線ガイド機構4,5とを備え、スライド部材2,3が相対移動可能に取り付けられ、一対の配線ガイド機構4,5が相対移動方向と直交する方向に互いに相対移動可能とされ、配線積層部6bが一対の配線ガイド機構4,5に巻きかけられて蛇行するように曲げられると共に、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3との間の空間部に収納されていることを特徴とするスライド型電子機器の配線構造1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド型電子機器の配線構造及びスライド型電子機器の改良に関するものであり、より具体的には極細同軸ケーブルを用いたスライド型電子機器の配線構造及びこれを適用したスライド型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、2つ以上の筐体が連結されてなる電子機器においては、筐体間の配線としてフレキシブルプリント配線基板(Flexible printed circuits、以下、FPCと記す。)が使用されている。
【0003】
例えば、図7(d)に示すような、2つの筐体が相互にスライドするスライド式の携帯電話機に例示される電子機器においては、一般にFPCからなる配線が使用されている(特許文献1〜3参照)。図7(d)のようなスライドタイプの構造に適用する配線には、筐体間の高さ方向3mmの非常に狭いスペースでの水平屈曲および、約10万回以上の耐屈曲性能が求められている。図8には、筐体間配線材としてFPC110を適用したスライド型電子機器の配線構造100を示している。この配線構造100は、第1の筐体101とこれにスライド可能に取り付けられた第2の筐体102とを有し、それぞれの回路をFPC110により電気的に接続した構造となっている。第1及び第2の筐体101,102の間には、高さHが3mm程度のスペースが設けられており、FPC110はこのスペースに折り曲げられた状態で配線されている。第1及び第2の筐体101,102が相互にスライドした際に、スライド量に対応してFPC110自体が変形して、第1及び第2の筐体101,102の相対移動に追従できるようになっている。これは、FPCが狭い屈曲スペースでも折り曲げ性に優れるからである。
【0004】
しかし、FPCは、複数の信号線が樹脂フィルム等によって固定されているものであるため、各信号線がシールドされておらず、ノイズに弱いという欠点がある。また、携帯電話に代表される電子機器では高機能・高性能化が進んでおり、電気的接続配線には、伝送特性や耐ノイズ性の向上が要求されている。
【0005】
そこで、FPCに換えて、伝送特性や耐ノイズ性の良好な極細同軸ケーブルが配線として使用されている。そして特許文献4及び5には、伝送特性及び耐ノイズ性に優れた極細同軸ケーブルをフラット化したモジュールが開示されている。
すなわち特許文献4には、同軸ケーブルを複数本用いた多心同軸ケーブルとして、複数本の同軸ケーブルを平行一列に並べて縦糸とし、プラスチックの繊維糸を横糸とし、縦糸と横糸が一本毎に交叉する平織り構造で、フラット状に編みこんで形成されたフラットケーブルが開示されている。
一方、特許文献5には、同軸ケーブルを複数本用いた多心同軸ケーブルとして、同軸ケーブルの複数本を平行一列に並べて共通外被でフラットケーブルが開示されている。
【0006】
しかし、極細同軸ケーブルはFPCに比べて折り曲げ性が良くないため、特許文献4及び5に開示されている極細同軸ケーブルをフラット化したモジュールでは、図7(a)に示すようなクラムシェルタイプと称される開閉構造や、図7(b)に示すようなジャックナイフタイプと称される回転構造や、図7(c)に示すようなツイストタイプと称される回転と開閉が行える2軸構造への適用に限られ、図7(d)に示すスライドタイプの電子機器に対しては、単純にFPCの代替という形では極細同軸ケーブルを適用できないという問題があった。
【0007】
以上のことから、特に、2つの筐体を有し、且つこれらが相互にスライド自在とされた電子機器において、伝送特性及び耐ノイズ性にも優れた配線構造が望まれていた。
【特許文献1】特開2006−128808号公報
【特許文献2】特開2006−216908号公報
【特許文献3】特許第3723539号公報
【特許文献4】特開2006−286299号公報
【特許文献5】特開2006−202641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、折り曲げ性及び耐久性に優れ、かつ伝送特性及び耐ノイズ性にも優れたスライド型電子機器の配線構造を提供するとともに、スライド型電子機器の配線構造を適用したスライド型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明のスライド型電子機器の配線構造は、回路を有する複数の筐体を相対移動可能に支持すると共に前記筐体間の回路同士を配線によって電気的に接続するスライド型電子機器の配線構造であって、一方側の前記筐体に取り付けられる第1のスライド部材と、他方側の前記筐体に取り付けられる第2のスライド部材と、複数本の配線と当該配線の端部に設けられた接続部とを有すると共に第1のスライド部材と第2のスライド部材との間で引き回されるハーネスと、第1のスライド部材と第2のスライド部材とにそれぞれ設けられると共に配線を付勢支持する一対の配線ガイド機構とを備え、第1のスライド部材と第2のスライド部材とが相対移動可能に取り付けられ、一対の配線ガイド機構が相対移動方向と直交する方向に互いに相対移動可能とされ、配線を複数本積み重ねた配線積層部が一対の配線ガイド機構に巻きかけられて蛇行するように曲げられると共に、第1のスライド部材と第2のスライド部材との間の空間部に収納されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のスライド型電子機器の配線構造では、第1のスライド部材と第2のスライド部材との間の空間部内で、ハーネスを構成する配線を複数本積み重ねた配線積層部が配線ガイド機構に巻きかけられて蛇行するように曲げられている。これにより、配線は、空間部の高さ方向で屈曲半径をとる必要がなく、空間部の幅方向で屈曲半径をとることができる。したがって、屈曲特性に優れない配線であってもスライド型電子機器に用いることが可能となり、優れた屈曲耐性を有するスライド型電子機器の配線構造を提供することができる。
また、配線積層部が一対の配線ガイド機構に巻きかけかれて蛇行するように曲げられていることから、第1及び第2のスライド部材とからなるスライドヒンジ筐体の開閉による配線の伸縮を配線ガイド機構によって吸収することができる。これにより、スライドヒンジ筐体の開閉時に配線のたるみを防ぐことが可能なスライド型電子機器の配線構造を提供することができる。
また、配線積層部が一対の配線ガイド機構により蛇行するように曲げられていることから、配線積層部の内側及び外側のケーブル長を変える必要がなく、電子機器配線用ハーネスのアッセンブリを簡便にすることができる。
また、配線がスライドヒンジの筐体である第1のスライド部材と第2のスライド部材との空間部に収容されていることから、スライド運動する際に他の部品と擦れることがないため、接続信頼性が向上する。
また、スライドヒンジ筐体とハーネスとが一体化されているため、スライド型電子機器に組み込むときに取り扱いが容易となり生産性が向上する。
【0011】
配線は、複数本の極細同軸ケーブルと、樹脂製の被覆材とから少なくとも構成され、相互に平行に並べられた複数本の極細同軸ケーブルを被覆材で被覆することにより極細同軸ケーブルを一括被覆してなるフラットケーブルであると共に、空間部において、第1のスライド部材と第2のスライド部材とが対向する方向に沿って極細同軸ケーブルが並ぶように配線積層部が収納されていることが好ましい。
また、前記複数のフラットケーブルは等長であることが好ましい。
【0012】
ハーネスを構成する配線が、相互に平行に並べられた複数本の極細同軸ケーブルを被覆材で被覆することにより極細同軸ケーブルを一括被覆してなるフラットケーブルであるため、伝送特性及び耐ノイズ性に優れたスライド型電子機器の配線構造を提供することができる。
また、空間部において、第1のスライド部材と第2のスライド部材とが対向する方向に沿って極細同軸ケーブルが並ぶように配置されていることから、極細同軸ケーブルが空間部の幅方向で屈曲半径をとることができると共に、第1のスライド部材と第2のスライド部材とによって隣接するフラットケーブルの飛び越えを防ぐことができる。
さらに、複数のフラットケーブルが等長であることから、配線積層部が蛇行するように曲げられるときに、配線積層部のたわみの発生を抑制することができる。
【0013】
本発明の配線ガイド機構は、少なくとも円筒状のコマ部材から構成されることが好ましい。また、円筒の半径は、配線の最小屈曲半径以上であることが好ましい。
配線ガイド機構が円筒状のコマ部材で構成されることにより、コマ部材が回転することによりスライドヒンジ筐体の開閉に追従する配線の伸縮を滑らかに付勢支持することができる。
また、円筒の半径が配線の最小屈曲半径以上とすることにより、配線を構成する極細同軸ケーブルの屈曲半径を最小屈曲半径以上に確保することができる。これにより、極細同軸ケーブルをスライド型電子機器の配線構造に適用することができるため、伝送特性及び耐ノイズ性にも優れたスライド型電子機器の配線構造を提供することができる。
【0014】
本発明のスライド型電子機器は、上述のスライド型電子機器の配線構造によって、回路を有する複数の筐体が相対移動可能に取り付けられると共に、これらの筐体内の回路同士を電気的に接続されてなることを特徴とする。
本発明のスライド型電子機器は、上述のスライド型電子機器の配線構造を用いることから、伝送特性及び耐ノイズ性に優れた薄型のスライド型電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のスライド型電子機器の配線構造及びこれを適用したスライド型電子機器によれば、折り曲げ性及び耐久性に優れ、かつ伝送特性及び耐ノイズ性にも優れたスライド型電子機器の配線構造を提供するとともに、スライド型電子機器の配線構造を適用したスライド型電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明を適用したスライド型電子機器の斜視図である。また、図2及び図3は、本発明の実施形態であるスライド型電子機器の配線構造を示す図である。また、図4及び図5は、本実施形態の電子機器配線用ハーネスを説明するための図である。さらに、図6は、本発明の実施形態であるスライド型電子機器を示す斜視図である。尚、以下の図1〜6は本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のスライド型電子機器の配線構造及びスライド型電子機器の寸法関係とは異なる場合がある。
【0017】
先ず、本発明の一実施形態であるスライド型電子機器21の構成について説明する。スライド型電子機器21は、図1に示すように、下側筐体22と上側筐体23と配線構造1とから概略構成されている。また、下側筐体22及び上側筐体23には、それぞれスライド型電子機器の配線構造1(以下、配線構造1)の第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3が取り付けられており、この配線構造1を介して相互にスライド可能とされている。
【0018】
次に、この配線構造1の構成について図面を用いて詳細に説明する。配線構造1は、図2(a)に示すように、配線構造1の筐体となる第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3と、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とにそれぞれ設けられている一対の配線ガイド機構4,5と、第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3との間で引き回される電子機器配線用ハーネス6(以下、ハーネス6という)とから概略構成されている。また、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とは、配線構造1の長手方向に沿って互いにスライド可能となるように取り付けられている。これにより、図2(a)に示すように第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とが完全に重ね合わされた状態から、図2(b)に示すようにスライド動作の中間状態を経て、図2(c)に示すように第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とが一部が重ね合わされた状態となるまでのストロークで、互いに往復スライドできるように構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
第1のスライド部材2は、図2に示すように、主面部2aと、主面部2aの幅方向両端から立設されている折曲部2bと、折曲部2b上に主面部2aと対向するように設けられた天面部(図示せず)とから概略構成されている。また、第2のスライド部材3は、主面部3aと、主面部3aの幅方向両端から立設されている側面部3bと、側面部3b上に主面部3aと対向するように設けられた天面部(図示せず)とから概略構成されている。
【0020】
配線構造1の筐体は、図2に示すように、第1のスライド部材2の主面部2aの上に,第2のスライド部材3の主面部3aが一部重ね合わされて構成されている。また、主面部2a及び主面部3aと、図示しない各スライド部材2,3の天面部との間には、折曲部3a及び側面部3bの高さに対応する高さを有する空間部が設けられている。この空間部に一対の配線ガイド機構4,5とハーネス6とが収納されている。また、ハーネス6は、空間部において一対の配線ガイド機構によって蛇行するように曲げられて収納されている。また、空間部の最小の高さ(すなわち側面部3bの高さ)は、例えば3mm程度とされている。また、側面部3b間の幅(すなわち、空間部の最小幅)は、例えば数十mm程度とされている。なお、本実施形態では、主面部2aの上に主面部3bが一部重ねあわされる構成を説明したが、これに限定されるものではなく、主面部2aと主面部3aとが同じ高さとなるような構成であってもよい。
【0021】
また、配線構造1には、図2に示すように、スライド機構が設けられている。本実施形態のスライド機構は、第1のスライド部材2の折曲部2bと、第2のスライド部材3の側面部3bとから構成されており、折曲部2bと側面部3bとが互いにスライド自在とされている。これにより、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とが相互にスライド可能とされている。
なお、スライド機構は、特に限定されるものではなく、配線構造1の筐体となる第1のスライド部材2と第2の第1のスライド部材2とが相互にスライド可能とされるものであればよい。例えば、第1のスライド部材2の主面部2aに係合突起を設け、第2のスライド部材4の幅方向外側にフランジ部を設けて、上記フランジ部と上記係合突起とを係合して第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とを相互にスライド可能としてもよい。
さらに、配線構造1には、スナップ作動部材が設けられていてもよい。スナップ作動部材は、特に限定されるものではなく、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とをスナップ作動が可能となるように連結するものであれば良い。スナップ作動部材としては、例えばねじりバネを用いることができる。
なお、これらのスライド機構及びスナップ作動部材は、前述の空間部内に収納されるものが好ましい。
【0022】
図2に示すように、第1のスライド部材2の主面部2aには、開口部2cが設けられている。この開口部2cは、一対の折曲部2bのうち一方の折曲部2b側に設けられている。また、後述するハーネス6の一方のコネクタ12がこの開口部2cを通って配線構造1の外部に取り出し可能とされている。同様に第2のスライド部材3には、開口部3cが設けられている。この開口部3は、一対の側面部3bのうち、一方の側面部3b側に設けられている。また、後述するハーネス6の他方のコネクタ13がこの開口部3cを通って配線構造1の外部に取り出し可能とされている。これらによって、図1に示すように、ハーネス6の一方のコネクタ12が、スライド型電子機器21の一方の筐体22のコネクタ接続部に接続可能とされており、他方のコネクタ13が、他方の筐体23のコネクタ接続部に接続可能とされている。また、第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3に対するそれぞれの開口部2c,3cの位置、範囲、大きさ(以下、位置等という)は、配線構造1が適用されるスライド型電子機器21の筐体22,23に設けられているコネクタ接続部の位置等に応じて任意に設定することができる。なお、開口部2c,3cの形成は、第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3の両方に限定されるものではなく、第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3のいずれか一方に形成されていても良い。
【0023】
配線ガイド機構4,5は、図2及び図3に示すように、第1及び第2のスライド部材2,3にそれぞれ取り付けられた一対の移動ガイド部材7と、一対の移動ガイド部材7に沿ってスライド移動可能とされる移動部材8と、一対の移動ガイド部材7と移動部材8との間に取り付けられて移動部材8のスライド量を規制する一対の付勢体9と、移動部材8に取り付けられると共にハーネス6の配線部6a(配線積層部6b)が巻きかけられるコマ部材10とから概略構成されている。そして配線ガイド機構4,5は、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とからなる筐体が相互にスライド移動する際に、ハーネス6のケーブル部6aが筐体内部の空間でたるまないように付勢支持するために設けられている。
【0024】
配線ガイド機構4は、第1のスライド部材2の主面2a上であって、開口部2cと反対側にある他方の折曲部2b側に設けられている。また、配線ガイド機構5は、第2のスライド部材3の主面3a上であって、開口部3cと反対側にある他方の側面部3b側に設けられている。そして、配線ガイド機構4,5は、配線構造1の中心部から互いに点対称となる位置にそれぞれ設けられている。これにより、上述のケーブル部6aの配線積層部6bを付勢支持する際に、配線積層部6bを互いに反対側から付勢支持する構造となるため、上記の配線積層部6bが蛇行するように曲げることが可能とされている。
【0025】
すなわち、ハーネス6は、図2に示すように、一方のコネクタ12が開口部2c側にあり、他方のコネクタ13が開口部3c側にある。ハーネス6の配線積層部6bは、一方のコネクタ12から折曲部2b側に延びていて、折曲部2b近くにある配線ガイド機構4に巻きかけられて、側面部3b側にある配線ガイド機構5に向けて曲げられている。さらに、ケーブル部6aは、配線ガイド機構5に巻きかけられて、側面部3b2の方向に向けて曲げられている。そして、ハーネス6の他方の末端である他方のコネクタ13が開口部3cに位置している。このようにしてハーネス6は、配線ガイド機構4,5により蛇行されている。
【0026】
一対の移動ガイド部材7は、図3に示すように、断面視コ字状の部材である。移動ガイド部材7の内部には、図2及び図3に示すように、ガイド軸7aが長手方向に沿って配設されている。移動部材8には、その両端部に一対の孔が開いている。その孔にそれぞれガイド軸7aが挿入されて、移動部材8がスライド自在とされている。さらに、付勢体9がガイド軸7aに挿入されていて、移動ガイド部材7の内部側面の一端と、移動部材8との間に取り付けられており、移動部材8を移動ガイド部材7の一端側に付勢している。
【0027】
付勢体9は、特に限定されるものではなく、前述の移動部材8が移動ガイド部材7の一端側に付勢できるものであればよい。本実施形態では付勢体9として、例えばコイルばねを適用することができる。付勢体9としてコイルばねを用いる場合には、移動部材8が移動ガイド部材7及びガイド軸7aの一端側から他端側へ移動すると、コイルばねの両端部間の距離が広がるため、戻り応力が発生する。したがって、コイルばねは、移動部材8が移動ガイド部材7に沿って一端側に付勢することができる。また、付勢体9として抵抗バネを適用することも可能である。なお、付勢体9の付勢力は、配線構造1のスライド長及びハーネス6のケーブル部6aの長さによって自由に選択することができる。
【0028】
コマ部材10は、図2及び図3に示すように、ケーブル部6aの配線積層部6bが巻きかけられる円筒状のローラー部材である。コマ部材10は、移動部材8のほぼ中央部に回動自在に取り付けられている。これにより、図2(a)〜図2(c)に示すように、第1及び第2のスライド部材2,3がスライドしてハーネス6の配線部6aが追従して変形する際に、配線積層部6bを付勢する位置を変えながらコマ部材10が回転する。
また、コマ部材10の半径は、特に限定されるものではないが、ハーネス6を構成する配線の最小屈曲半径以上とすることが好ましい。本実施形態では、ハーネス6は、後述するように極細同軸ケーブル14からなるフラットケーブル11で構成されているため、極細同軸ケーブル14の最小屈曲半径である5mm以上とすることが好ましい。また、極細同軸ケーブル14の最小屈曲半径にあわせて、4mm、3mm、2mm等、適宜選択することができる。これにより、スライド型電子機器の配線構造1に極細同軸ケーブル14を適用することができる。
【0029】
以上のように、一対の配線ガイド機構4,5は、配線積層部6bが巻きかけられることにより、蛇行するように曲げて第1のスライド部材1と第2のスライド部材2との間の空間部に収納することができる。また、一対の配線ガイド機構4,5は、配線積層部6bを付勢支持するため、スライド部材2,3の開閉時に生じるケーブル部6aの伸縮を吸収する機構となっている。
【0030】
ハーネス6は、図4に示すように、複数のフラットケーブル11が積層され、その両端部にそれぞれコネクタ12,13が接続されて概略構成されている。そして、ハーネス6は、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3との間の空間部に収納されている。また、ハーネス6のケーブル部6a(配線積層部6b)は、図2に示すように、一対の配線ガイド機構4,5に巻きかけられており、平面視略S字形(又はN字形、Z字形とも言う)をなすように蛇行して曲げられている。そして、第1及び第2のスライド部材2,3がスライドした場合には、各コネクタ12,13が互いにスライド方向に沿って離れるが、このとき一対の配線ガイド機構4,5に巻きかけられたケーブル部6a(配線積層部6b)が同時に変形して、各コネクタ12,13の動きに追従できるようになっている。
【0031】
フラットケーブル11は、図4(c)に示すように、4本の断面視ほぼ円形の極細同軸ケーブル14と、前記4本の極細同軸ケーブル14の外周囲を被覆するシース(被覆材)15とから構成されている。また、シース15の断面形状は、4本の円形状の極細同軸ケーブル14を一括して被覆することからレーストラック形状となっており、一対の直線部分の外側面15aはほぼ平坦な面となっている。ハーネス6には、図4(a)及び図4(b)に示すように、各フラットケーブル11の平坦な外側面15aが相互に接するように積層されて積層部(配線積層部)6bが形成されている。これにより空間部においては、各フラットケーブル11を構成する4本の極細同軸ケーブル14が、積層方向に沿って4列に並べられた状態になっている。すなわち、第1のスライド部材2(の主面部2a)と第2のスライド部材3(の主面部3a)とが対向する方向に沿って極細同軸ケーブル14が並ぶように積層部6bが空間部に収納されている
なお、本実施形態では、極細同軸ケーブル14の本数は特に限定されるものではなく、収納部の高さとの関係に応じて数本から数10本であってもよい。また、本実施形態では極細同軸ケーブル14のみの構成を示しているが、本実施形態の構成はこれに限定されるものではなく、給電用電線や光ケーブルなどの同軸ケーブル以外のケーブルと極細同軸ケーブルとを組み合わせてフラットケーブル11を構成してもよい。
【0032】
ケーブル部6aは、図2及び図3に示すように、一対の配線ガイド機構4,5のコマ部材10にそれぞれ巻きかけられて円弧状に曲げられている。このとき、一方のコマ部材10に巻きかけられているケーブル部6aにおいては、積層された複数のフラットケーブル11のうち、積層方向一端側のフラットケーブル11aが円弧の最内周側となり、積層方向他端側のフラットケーブル11bが円弧の最外周側となるように、曲げられている。これに対して他方のコマ部材10に巻きかけられているケーブル部6aにおいては、積層方向一端側のフラットケーブル11aが円弧の最外周側となり、積層方向他端側のフラットケーブル11bが円弧の最内周側となるように、曲げられている。そして、このように円弧状に曲げられたケーブル部6aを有するハーネス6全体が、スライド部材2,3の間の空間部に収納されている。
【0033】
フラットケーブル11の屈曲半径は、各コマ部材10に巻きかけられている円弧の最外周側が最大となり、円弧の最内周側が最小となる。円弧の最内周側のフラットケーブル11の屈曲半径は、最小で、円筒状のコマ部材10の半径の大きさ(本実施形態では5mm)となる。また、円弧の最外周側のフラットケーブル11の屈曲半径は、最内周側のフラットケーブル11の屈曲半径から、フラットケーブルの積層厚み分を加えたものとなる。いずれにしても、配線構造1に組み込まれた状態のフラットケーブル11の屈曲半径は、円筒状のコマ部材10の半径によって決められる。
また、ケーブル部6aは、一方のコネクタ12から配線ガイド機構4まで、配線ガイド機構4から配線ガイド機構5まで、配線ガイド機構5から他方のコネクタ13までの3つの区間でほぼ直線状態であり、配線ガイド機構4,5のそれぞれのコマ部材10にまきかけられている区間で一定の曲率半径で曲げられた状態となる。また、第1及び第2のスライド部材2,3がスライドした場合には、ケーブル部6a(配線積層部6b)の曲げ部分の長さ(コマ部材10に巻きかけられた範囲)が変形することはいうまでもない。
【0034】
また、ケーブル部6aのコネクタ12,13付近では、フラットケーブル11の隣接間距離は比較的に広くなっている。これに対して、積層部6bでは、各フラットケーブル11の隣接間距離は比較的に狭くなっており、隣接するフラットケーブル11同士が互いに一部接触して密な状態となっている。また、前述のようにフラットケーブル11の断面形状はレーストラック形状であり、4本の極細同軸ケーブル14の並び方向の幅がこれに直交する方向の幅よりも広くなっているため、積層されたフラットケーブル11は、隣接するケーブルを飛び越えることができず、コネクタ12,13付近のケーブルの並びと、積層部6bのケーブルの並びとが同じ順番になっている。そして、極細同軸ケーブル14の並び方向の幅よりも、これに直交する方向の幅が狭いため、ハーネス6は、フラットケーブル11の、極細同軸ケーブル14の並び方向に直交する方向に可撓性を有しており、積層部6bにおいても可撓性が損なわれることがない。
【0035】
また、積層された複数のフラットケーブル11は、等長であることが好ましい。すなわち、積層方向一端側のフラットケーブル11aと、他端側のフラットケーブル11bとが同じ配線長であることが好ましい。本実施形態では、フラットケーブル11が一対の配線ガイド機構4,5によって蛇行するように曲げて配線されているため(すなわち点対称な配線方法であるため)フラットケーブル11を等長とすることができる。これにより、ケーブル部6aのほぼ全域(コネクタ12,13との接続部分付近を除く)が、配線間隔が密である配線積層部6bとなるため、ケーブル部6a(配線積層部6b)をたるみなく配線することができる。
【0036】
極細同軸ケーブル14は、図5(a)に示すように、中心導体16と、それを囲む内側絶縁層17と、更にそれを囲む外部導体18と、更にまたそれを囲む外側被覆(以下、ジャケットという)19とから構成されている。使用する極細同軸ケーブル14の種類や外部導体の巻き方向の組み合わせ等は特に限定されないが、中心導体16のサイズがAWG(American Wire Gauge)36以下のケーブルであることが好ましく、AWG42〜50の範囲のケーブルであることがより好ましい。また、内側絶縁層17の材質は、特に限定されないが、フッ素樹脂を用いることが好ましく、PFA(テトラエチレン/フルオロ パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;融点300℃)であることがより好ましい。
【0037】
シース15は、断面形状がレーストラック形状となっており、レーストラック形状を構成する一対の直線部分の表面は、外側面15a及び内側面15bのいずれも平坦になっている。そして、外側面15aの表面には、極細同軸ケーブル14の形状が転写されていない。また、互いに隣接する極細同軸ケーブル14同士の接触部14aでは、互いのケーブル同士が接触しているが、ジャケット19は、互いに融着していない。
また、シース15は、極細同軸ケーブル14が互いに隣接ケーブルを飛び越える動きを制限している。また、シース15と極細同軸ケーブル14の接触部14bでは、シース15とジャケット19とが接触しているが、樹脂同士では融着していない。
なお、本実施形態では、シース15と極細同軸ケーブル14の間には、シース15を構成する樹脂等が充填されておらず、隙間20が存在している。しかし本実施形態は、これに限定されるものではなく、フラットケーブル11の可撓性や、屈曲耐久性を向上させるような樹脂等が充填されていても良い。
【0038】
シース15の材質は、特に限定されるものではないが、紫外線硬化型樹脂やフッ素樹脂などが好ましく、ETFE(融点225℃)であることがより好ましい。フッ素樹脂は、融点が低く、薄く形成し易い点で好ましい。また、シース15の外周面15aおよび内周面15bの摩擦抵抗が小さいため、上述したフラットケーブル11の可撓性を阻害しない点で好ましい。
【0039】
表1は、PFAとETFEの特性について比較結果を示している。表1に示すように、ETFEは、PFAと比較して引張強度および引張伸度が優れている。このため、シース材にETFEを用いることにより、PFAよりも機械特性が向上するとともに、フラットケーブル11の薄肉被覆が可能となる。また、シース15の被覆方法は、特に限定されるものではないが、極細同軸ケーブル14を4本並列に並べて、押出成型によって一括被覆することが好ましい。これにより、従来は困難であった極細同軸ケーブル14のフラットケーブル化が可能となる。また、シース15の厚みは特に限定されるものではないが、10〜50μmの範囲であることが好ましく、20〜30μmの範囲であることがより好ましい。シース15の厚みが10〜50μmの範囲であると、フラットケーブル11は十分な可撓性を確保することができるため好ましい。
【0040】
【表1】

【0041】
本実施形態では、シース15を構成する樹脂とジャケット19を構成する樹脂との融点差が30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。融点差が30℃以上であると、炭酸レーザー等を用いてシース15の選択切除することができる。これにより、シース15とジャケット19との接触部14bを融着させることなく、シース15のみを切除して剥がすことができる。また、シース15にETFEを用いた場合には、炭酸レーザーの出力が小さくても、シース15を切除することができるため、作業上の安全確保およびコスト削減の点で好ましい。
【0042】
フラットケーブル11とコネクタ12及び13との接続部は、図5(b)に示すように、シース15が剥がされて、極細同軸ケーブル14が露出されている。このため、極細同軸ケーブルの1本1本が動きやすくなり、コネクタ12及び13の端子ピッチに極細同軸ケーブル14の配線間隔を合わせることが容易となる。また、露出された極細同軸ケーブル14の幅は、3mm程度が好ましい。そして、フラットケーブル11は、コネク12及び13に接続された極細同軸ケーブル14の並び方向と、積層部6bにおけるフラットケーブル11内の極細同軸ケーブル14の並び方向とが、90°直行する方向となるように捻られて、コネクタ12及び13と接続されている。
【0043】
なお、シース15の切除による極細同軸ケーブル14の露出方法は、コネクタ12及び13に接続する場合が代表的であるが、本実施形態ではこれに限定されるものではなく、フラットケーブル11の任意のケーブル部分を任意の範囲で切除して、シース15を切除することも可能である。シース15を切除された部分は、極細同軸ケーブル14がケーブル部分の表面から露出するためケーブル1本1本が動きやすくなる。これによって、露出部分をケーブルヒンジ等に適用する等、フラットケーブル11の屈曲特性を向上させることができる。
【0044】
次に、本実施形態の配線構造1のスライド動作について説明する。
図2(a)は、本実施形態の配線構造1の筐体(第1及び第2のスライド部材2,3)を閉じた状態を示しており、図2(b)は筐体のスライド中の状態を示しており、図2(c)は、筐体をスライドした状態を示している。
【0045】
図2(a)において、第1のスライド部材2に対して第2のスライド部材3を手動によりスライドさせると、第1及び第2のスライド部材2,3の間のスライド量に応じて、ハーネス6のケーブル部6a(配線積層部6b)の形状が変化する。すなわち、配線積層部6bにおいて、配線ガイド機構4,5の間の長さ(以下、領域1とする)の割合が大きくなり、コネクタ12と配線ガイド機構4との間の長さ(以下、領域2とする)及びコネクタ13と配線ガイド機構5との間の長さ(以下、領域3とする)の割合が小さくなる。また、配線積層部6bの長さが領域1、領域2、領域3の総和となるため、領域1が拡大した場合には、領域2及び領域3が縮小する。
したがって、第1及び第2のスライド部材2,3がスライドする場合(領域1が拡大)には、コマ部材10が配線積層部6bによりそれぞれのコネクタ12,13側に押圧される。押圧されたコマ部材10は、スライド部材8と共に付勢体9の付勢力に抗してそれぞれコネクタ12,13側にスライド移動する。このため、上述の領域2,3はそれぞれ縮小することになる。これにより、配線構造1は、ケーブル部6a(配線積層部6b)にたるみが生じることなく、図2(b)の状態を経て、図2(c)に示すスライド状態になる。
また、第2のスライド部材3を図2(c)の状態からスライド移動させるときも、同様な過程を経て図2(a)の状態に復帰する。
【0046】
次に、本実施形態の配線構造1を適用したスライド型電子機器について説明する。スライド型電子機器21は、図6に示すように、下側筐体22と上側筐体23と配線構造1とから概略構成されている。下側筐体22及び上側筐体23には、それぞれ配線構造1の第1のスライド部材2及び第2のスライド部材3が取り付けられており、この配線構造1を介して相互にスライド可能とされている。
また、各筐体22,23には回路部の入出力部となるコネクタ接続部(図示せず)がそれぞれ備えられている。そして、ハーネス6の一方のコネクタ12が、下側筐体22のコネクタ接続部(図示せず)に接続されており、他方のコネクタ13が、上側筐体23のコネクタ接続部(図示せず)に接続されている。これによって、2つの筐体22,23の各回路部が配線構造1を介して電気的に接続されている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のスライド型電子機器の配線構造1によれば、第1及び第2のスライド部材2,3との間の空間部内で、ハーネス6を構成するフラットケーブル11を複数本積み重ねた配線積層部6bが一対の配線ガイド機構4,5に巻きつけられて蛇行するように曲げられている。これにより、フラットケーブル11を構成する極細同軸ケーブル14は、空間部の高さ方向で屈曲半径をとる必要がなく、空間部の幅方向で屈曲半径をとることができる。したがって、極細同軸ケーブル14をスライド型電子機器21に用いることが可能となり、優れた屈曲耐性を有するスライド型電子機器の配線構造1を提供することができる。
また、配線積層部6bが一対の配線ガイド機構4,5のそれぞれのコマ部材10に付勢支持されていることから、第1及び第2のスライド部材2,3とからなるスライドヒンジ筐体の開閉によるケーブル部6aの伸縮を配線ガイド機構4,5によって吸収することができる。これにより、スライドヒンジ筐体の開閉時にケーブル部6aのたるみを防ぐことが可能なスライド型電子機器の配線構造1を提供することができる。
また、配線積層部6bが蛇行するように曲げられていることから、点対称な配線構造となっている。このため配線積層部6bの内側及び外側のケーブル長を変える必要がなく、電子機器配線用ハーネス6のアッセンブリを簡便にすることができる。
また、ケーブル部6aがスライドヒンジの筐体である第1及び第2のスライド部材2,3との空間部に収容されていることから、スライドする際に他の部品と擦れることがないため、接続信頼性が向上する。
また、スライドヒンジの筐体とハーネス6とが一体化されているため、スライド型電子機器21に組み込むときに取り扱いが容易となり生産性が向上する。
【0048】
本実施形態のハーネス6を構成する配線が、相互に平行に並べられた複数本の極細同軸ケーブル14をシース(被覆材)15で被覆することにより極細同軸ケーブル14を一括被覆してなるフラットケーブル11であるため、伝送特性及び耐ノイズ性に優れたスライド型電子機器の配線構造1を提供することができる。
また、空間部において、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とが対向する方向に沿って極細同軸ケーブル14が並ぶように配置されていることから、極細同軸ケーブル14が空間部の幅方向で屈曲半径をとることができると共に、第1のスライド部材2と第2のスライド部材3とによって隣接するフラットケーブル11の飛び越えを防ぐことができる。
さらに、複数のフラットケーブル11が等長であることから、配線積層部6bが蛇行するように曲げるときに、配線積層部6bのたわみの発生を抑制することができる。
【0049】
本実施形態の配線ガイド機構4,5が円筒状のコマ部材10で構成されるため、コマ部材10が回転することによりスライドヒンジ筐体のスライドに追従するケーブル部6a(配線積層部6b)の伸縮を滑らかに付勢支持することができる。
また、円筒状のコマ部材10の半径が配線の最小屈曲半径以上であることにより、ケーブル部6a(配線積層部6)を構成する配線である極細同軸ケーブル14の屈曲半径を最小屈曲半径以上に確保することができる。これにより、極細同軸ケーブル14をスライド型電子機器の配線構造1に適用することができるため、伝送特性及び耐ノイズ性にも優れたスライド型電子機器の配線構造1を提供することができる。
【0050】
本実施形態のスライド型電子機器21は、上述のスライド型電子機器の配線構造1を用いることから、伝送特性及び耐ノイズ性に優れた薄型のスライド型電子機器21を提供することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態のスライド型電子機器の配線構造1によれば、伝送特性及び耐ノイズ性に優れた薄型の配線構造1及びこれを利用したスライド型電子機器21を提供することができる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、極細同軸ケーブルのフラットケーブル化において、樹脂シースと変えて樹脂テープあるいは樹脂繊維による平編みによってフラットケーブル化してもよい。
また、配線ガイド機構4,5を構成する移動ガイド部材7は、第1及び第2のスライド部材2,3のそれぞれの主面部2a,3a上に設けられているが、主面部2a,3aと一体に形成して、主面部2a,3a上を平坦とした構造としてもよい。これにより、厚みが薄いスライド型配線機器の配線構造1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本実施形態のスライド型電子機器を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態のスライド型電子機器の配線構造を示し、図2(a)はスライド動作前の筐体が閉じた状態の平面図、図2(b)はスライド動作中の筐体の平面図、図2(c)はスライド動作後の筐体が開いた状態の平面図である。
【図3】図3は、本実施形態のスライド型電子機器の配線構造を示す側面図である。
【図4】図4は、本実施形態のハーネスを示しており、図4(a)は平面図、図4(b)は斜視図、図4(c)は図4(a)のA−A’線に対応する断面模式図である。
【図5】図5(a)は、フラットケーブルの断面模式図、図5(b)は、コネクタの接続部分の平面図である。
【図6】図6は、本実施形態のスライド型電子機器を示す斜視図である。
【図7】図7は、電子機器の一例として携帯電話の筐体移動形態を例示する図である。
【図8】図8は、従来の筐体間配線材としてFPCを用いたスライド型電子機器の配線構造を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・スライド型電子機器の配線構造(配線構造)、2・・・第1のスライド部材、2a・・・主面部、2b・・・折曲部、2c・・・開口部、3・・・第2のスライド部材、3a・・・主面部、3b・・・側面部、3c・・・開口部、4,5・・・配線ガイド機構、6・・・電子機器配線用ハーネス(ハーネス)、6a・・・ケーブル部、6b・・・配線積層部、7・・・移動ガイド部材、7a・・・ガイド軸、8・・・移動部材、9・・・付勢体、10・・・コマ部材、11・・・フラットケーブル、12,13・・・コネクタ、14・・・極細同軸ケーブル、15・・・シース(被覆材)、16・・・中心導体、17・・・内側絶縁体、18・・・外部導体、19・・・ジャケット(外側被覆)、20・・・隙間、21・・・スライド型電子機器、22・・・下側筐体、23・・・上側筐体、100・・・(従来の)スライド型電子機器の配線構造、101・・・第1の筐体、102・・・第2の筐体、110・・・FPC、H・・・筐体間の高さ、W・・・筐体の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を有する複数の筐体を相対移動可能に支持すると共に前記筐体間の回路同士を配線によって電気的に接続するスライド型電子機器の配線構造であって、
一方側の前記筐体に取り付けられる第1のスライド部材と、
他方側の前記筐体に取り付けられる第2のスライド部材と、
複数本の配線と当該配線の端部に設けられた接続部とを有すると共に前記第1のスライド部材と前記第2のスライド部材との間で引き回されるハーネスと、
前記第1のスライド部材と前記第2のスライド部材とにそれぞれ設けられると共に前記配線を付勢支持する一対の配線ガイド機構とを備え、
前記第1のスライド部材と前記第2のスライド部材とが相対移動可能に取り付けられ、
前記一対の配線ガイド機構が前記相対移動方向と直交する方向に互いに相対移動可能とされ、
前記配線を複数本積み重ねた配線積層部が前記一対の配線ガイド機構に巻きかけられて蛇行するように曲げられると共に、前記第1のスライド部材と前記第2のスライド部材との間の空間部に収納されていることを特徴とするスライド型電子機器の配線構造。
【請求項2】
前記配線は、複数本の極細同軸ケーブルと、樹脂製の被覆材とから少なくとも構成され、相互に平行に並べられた複数本の前記極細同軸ケーブルを前記被覆材で被覆することにより前記極細同軸ケーブルを一括被覆してなるフラットケーブルであると共に、前記空間部において、前記第1のスライド部材と前記第2のスライド部材とが対向する方向に沿って前記極細同軸ケーブルが並ぶように前記配線積層部が収納されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド型電子機器の配線構造。
【請求項3】
前記複数のフラットケーブルは、等長であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスライド電子機器の配線構造。
【請求項4】
前記配線ガイド機構は、少なくとも円筒状のコマ部材から構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスライド型電子機器の配線構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスライド型電子機器の配線構造によって、回路を有する複数の筐体が相対移動可能に取り付けられると共に、これらの筐体内の回路同士を電気的に接続されてなることを特徴とするスライド型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−141627(P2009−141627A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315147(P2007−315147)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】