説明

スライバが編込まれた熱基板

この発明は熱伝達を抑制するための基板を提供する。当該基板は、フィラメント材で形成された繊維基層を含む。当該基板はまた、繊維基層のフィラメント材が織り交ぜられた複数のステープルファイバを有するスライバ層を含む。当該スライバ層のステープルファイバは、基層に対して実質的に垂直に方向付けされる。当該基板はまた、基層およびスライバ層のうちの1つに取付けられた少なくとも1つの反射層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
この出願は、2005年4月12日に出願され、「スライバが編込まれた熱基板(″SLIVER KNITTED THERMAL SUBSTRATE″)」と題され、その全体が引用によりこの明細書中に援用されている米国仮特許出願連続番号第60/670,439号の利益を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は、熱伝達を抑制するための繊維基板に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
熱シールドとして用いられる基板は、基板の動作環境に応じて、放射伝達もしくは伝導伝達またはこれら両方を実質的に抑制しなければならない。熱シールド基板は、不織布層と、当該不織布層によって支持される反射層とから形成され得る。不織布層は、フェルト材料の態様で重なってランダムに方向付けされた繊維を圧縮することによって形成され得る。繊維は、実質的に基板の面においてランダムに方向付けされる。反射層は、良好な光反射特性を有するアルミニウム、銅、銀または金などの金属箔であってもよい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
この発明は、熱伝達を抑制するための基板を提供する。当該基板は、フィラメント材で形成された繊維基層を含む。当該基板はまた、繊維基層のフィラメント材が織り交ぜられた複数のステープルファイバを有するスライバ層を含む。スライバ層のステープルファイバは、基層に対して実質的に垂直に方向付けされる。当該基板はまた、基層およびスライバ層のうちの1つに取付けられる少なくとも1つの反射層を含む。
【0005】
この発明の利点は、以下の詳細な説明および添付の図面に関連して考慮されるとより容易に認識され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
好ましい実施例の詳細な説明
この発明の複数のさまざまな実施例が本願の図面に示される。この発明のさまざまな実施例には類似する特徴が示されている。類似する特徴には共通の参照番号が付けられており、アルファベット記号で区別されている。また、当該特徴がすべての実施例に示されていないとしても、整合性を高めるために、いずれの特定の図面における特徴も同じアルファベット記号を共有する。類似する特徴は、図面またはこの明細書によって示されていない限り、同様に構造化され、同様に作動し、および/または同じ機能を有する。さらに、一実施例の特定の特徴は、図面またはこの明細書によって示されていない限り、別の実施例における対応する特徴と置換えることができる。
【0007】
図1に示されるこの発明の第1の具体的な実施例においては、基板10は、放射および伝導の両方の熱伝達を抑制し得る。当該基板10は、編まれたフィラメント材14から形成される繊維基層12を有する。横編みが好ましいが、他の実施例においてこの発明を実施するのに、他の表編みが適用されてもよい。
【0008】
当該基板10はまた、繊維基層12のフィラメント材14が織り交ぜられた第1の複数のステープルファイバ18を有するスライバ層16を含む。ステープルファイバ18は、当該基層12に対して実質的に垂直に方向付けされる。例示的なスライバ層16は、カーディングプロセスによって作り出される捩じられていないステープルファイバ18の房を含む。ステープルファイバ18は好ましくは約1〜2インチの長さであり、約4〜10デニールを有する。スライバ層16を含むステープルファイバ18は、パイル絨毯類の製造と類似の態様で繊維基層12を編んでいる間に、編機の針によって係合され、フィラメント材14と織り交ぜられる。ステープルファイバ18はまた、編んでいる間にカーディングされて、基層12に対して実質的に垂直に方向付けされる。ステープルファイバ18は、所望の厚さの基板を作り出すよう長さが整えられ得る。
【0009】
基板10はまた、繊維基層12またはスライバ層16のうちの1つに接着された反射層20を含む。この発明の第1の具体的な実施例においては、反射層20はスライバ層16に取付けられる。例示的な反射層20は、少なくとも部分的に、優れた放射熱反射特性を有するアルミニウム、銅または金などの金属箔から形成される。他の箔の例には、ステンレス鋼および亜鉛めっきされた鋼が含まれる。
【0010】
繊維基層12は、スライバ層16および反射層20を支持する堅固な基礎を基板10に提供する。反射層20は、基板を通じた放射熱伝達を実質的に妨げる。また、スライバ層16によって繊維基層12と反射層20との間にかなりの量の空気が閉じ込められるために、基板10を通じた伝導熱伝達も抑制される。スライバ層16はまた、ステープルファイバ18の相互接続の性質が希薄であるために、優れた減衰特性を示す。したがって、基板10はまた、音響振動および構造によって伝えられる振動に関する絶縁に有効である。
【0011】
繊維基層12は、好ましくは、可撓性を高めるマルチフィラメントヤーンから編まれて、基板10が実質的にいかなる形状にも容易に適合することを可能にし、熱保護を必要とする要素に適切な被覆を提供し得る。スライバ層16のステープルファイバ18は好ましくはバックコーティングされて、ステープルファイバ18を適所に保持する。基板10が相対的により堅固であることが所望される場合、サイズ剤が繊維基層12に施されてもよい。代替的には、剛性がより高い場合、モノフィラメントを用いて繊維基層12を形成してもよい。繊維基層12を形成するための好ましい材料にはヤーンまたはモノフィラメントが含まれ、どちらの層も、ポリエステル、ケブラー(Kevlar)(登録商標)およびナイロンを含むアラミド、ワイヤ、銀めっきされたナイロン、ならびに/または、銅/ニッケルめっきされたポリエステルなどのポリマーでできている。特に高温の応用例の場合、ガラス、シリカおよび玄武岩などの鉱物繊維を用いて繊維基層12を形成してもよい。繊維基層12を形成する材料はまた、たとえば、耐摩耗性、弾力性、引張強さおよび導電率を含む特定の特性で選択され得る。
【0012】
スライバ層16を形成するステープルファイバ18は好ましくは厚いファイバから成っており、これは、カーディングされて、繊維基層12と反射層20との間に空間を規定するフリース状の層を形成し得る。スライバ層16についての好ましい材料は、ポリエステル、ならびにナイロン、酸化されたポリアクリロニトリル、たとえばパノックス(Panox)(登録商標)または、重量で35〜85%のアクリロニトリル単位で構成される別の長鎖合成ポリマー、炭素、ガラス、ポリプロピレンまたは他のオレフィン、めっきされたファイバ(たとえば、ナイロン上に銀またはポリエステル上に銅/ニッケル)、ならびに、上述のすべての混合物を含む。
【0013】
図2に示されるこの発明の第2の具体的な実施例においては、基板10aは、スライバ層16aに取付けられた第1の反射層20aを含み、当該スライバ層16aは繊維基層12aが織り交ぜられている。基板10aはまた、スライバ層16aから間隔をあけて配置
され繊維基層12aに取付けられた第2の反射層22を含む。反射層20a、22aは、好ましくは、スライバ層16aおよび基層20aにそれぞれ接着接合されている。融解または溶接などの他の取付技術は、また、相互に適合する材料に適している。スパッタ、プラズマおよび真空蒸着などの技術によって繊維基層12aおよびスライバ層16aを金属化することも所望され得る。
【0014】
図3に示されるこの発明の第3の具体的な実施例においては、基板10bは、特定の応用例に適した特定の構成または形状へと成形されるかまたは付勢される。基板10bは、反射層22bが繊維基層12b上に位置決めされている管状スリーブである。ステープルファイバ18bを備えたスライバ層16bは、繊維基層12bの内面に放射状に内向きに面している。基板10bの管状形は、編んでいる間に繊維基層12bに置かれた比較的硬いモノフィラメント24bによって維持される。これらのモノフィラメント24bは、特定の形、たとえば管状スリーブを形成するらせん状に部分的に重なった円筒形、を弾力的に呈するように、熱、化学的または機械的技術を用いて付勢され得る。例示的なモノフィラメント24bは、湾曲した形になるよう付勢された場合に管状スリーブの円周を規定するように、平行な、間隔をあけた関係で配置される。当然、必要に応じて基板10bが特定の構成要素を覆うぴったりと合った外観を呈することを可能にする他の形状も実現可能である。管状スリーブは、基板10bの管状スリーブ内に位置決めされた長手の要素に対する放射および伝導の熱伝達をともに有効に抑制する。スライバ層16bは、加えて、音響減衰および振動減衰をもたらす。
【0015】
基板を円形の横編みとして編むこともできるので、スライバのパイルを備えた管を内部に編込むことができる。次いで、強化されたヤーンを外側に用いてもよく、または、外側が強固なポリマーで化学的にコーティングされてもよい。また、スライバは、通常の溶融繊維と混合わされた場合に熱および圧力で型に形成され得るセルボンド(CelBond)のような熱成形可能なスライバの混合物であってもよい。CelBondは芯/鞘型のフィラメントであり、この場合、鞘は融解温度のより低い材料であり、これは、その隣接する構成要素とともにフィラメントボンドを有するよう融解され得る。この発明の実施例においてCelBondを用いることの別の潜在的な利点は、加熱されると、スリーブが、保護された構成要素に対して自己位置特定できることである。さらに、当該スリーブは、確実に配置されると、保護された構成要素の長さに沿って摺動する可能性が低くなる。当該スリーブは保護された構成要素に接着する可能性が高くなる。この発明はまた、スライバ層が内側に、そして耐磨耗性および/または耐熱性のヤーンが外側に位置するように、管状で継ぎ目なく編まれたスリーブの形を取ることができる。
【0016】
この発明の他の実施例においては、円形に編むことで「すじを付ける(stripe)」こともでき、ここでは、材料および/または材料の組合せはスリーブの長さに沿って異なり得る。たとえば、スライバ層を含まない部分があってもよい。当該スリーブをこれらの部分に切断してカフを形成することができる。当該カフは、スライバ層がスリーブの長手方向の端部に露出されるのを防ぎ、および/または、保護すべき構成要素にスリーブをクランプするための区域を示し得る。スライバ層はまた、スリーブの長さに沿って材料が異なっており、保護された構成要素の長さに沿って熱保護のレベルが変わり得る。米国特許第6,978,643号はこのプロセスを示しており、引用によりこの明細書中に援用される。
【0017】
この発明の他の実施例においては、「めっきする」ことも可能であり、2つ以上のヤーンのうちの一方のヤーンが主に完成したスリーブの外面に位置し、他方のヤーンが主に内側に位置するように、(たとえば、スライバに加えて)当該2つ以上のヤーン同士を編み合わせることができる。たとえば、ポリエステルおよびノメックス(Nomex)(登録商標)のヤーンは、排気管を覆うスリーブのために内部にガラススライバを含むよう互いにめ
っきされてもよい。ポリエステル、すなわち、3つのうちの最低温度定格の材料はスリーブの最外層であって、その近傍での作業中にカバーされた排気管に偶発的に接触するおそれのある自動車の技術者に「冷たい」表面を呈示し得る。
【0018】
図4に概略的に示されるこの発明の第4の具体的な実施例においては、基板10cはフィラメント材14cから編まれた繊維基層12cを含み、さらに、第1の複数のステープルファイバ18cと第2の複数のステープルファイバ26cとを備えたスライバ層16cを含む。繊維基層12cのフィラメント材14cは第2の複数のステープルファイバ26cを捉える。繊維基層12cは、複数のステープルファイバ26cを繊維基層12cへと編み戻すがステープルファイバ18cが繊維基層12cから延在するパイルの一部としてとどまることを可能にすることによって、層をなすように編むことができる。これにより繊維基層12cに密度勾配が形成される。
【0019】
図5に概略的に示されるこの発明の第5の具体的な実施例においては、基板10dは、フィラメント材14dから編まれた繊維基層12dを含み、さらに、第1の複数のステープルファイバ18dと第2の複数のステープルファイバ26dとを備えたスライバ層16dを含む。ステープルファイバ26dは、ステープルファイバ18dよりも熱収縮しやすくなり得る。スライバ層16dは熱放射または超音波放射に晒されて、ステープルファイバ18dに対してファイバ26dを収縮させ得る。収縮後、基板10dは、ステープルファイバ18dの自由端と繊維基層12dの自由端との間に密度勾配を規定する。
【0020】
反射層をなくすことを含む上述の教示を考慮すると、この発明の多くの変更例および変形例が可能となる。したがって、特に規定のない限り、添付の特許請求の範囲内でこの発明が実施可能であることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】スライバ層をよりよく示すために反射層の一部が取除かれている、この発明の第1の具体的な実施例を示す斜視図である。
【図2】2つの反射層を有するこの発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図3】繊維層をよりよく示すために反射層の一部が取除かれている、この発明の第3の具体的な実施例を示す斜視図である。
【図4】スライバ層が繊維基層によって捉えられたステープルファイバを含んでいる、この発明の第4の具体的な実施例を示す概略図である。
【図5】スライバ層が長さの異なるステープルファイバを含んでいる、この発明の第5の具体的な実施例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達および振動伝達のうちの1つから構成要素を保護するための基板であって、
フィラメント材で形成される繊維基層と、
前記繊維基層の前記フィラメント材が織り交ぜられ、前記繊維基層に対して実質的に垂直に方向付けされた第1の複数のステープルファイバを有するスライバ層とを含む、基板。
【請求項2】
熱伝達を抑制するための基板であって、
フィラメント材で形成された繊維基層と、
前記繊維基層の前記フィラメント材が織り交ぜられ、前記繊維基層に対して実質的に垂直に方向付けされた第1の複数のステープルファイバを有するスライバ層と、
前記繊維基層および前記スライバ層のうちの1つに取付けられた少なくとも1つの反射層とを含む、基板。
【請求項3】
前記少なくとも1つの反射層は前記第1の複数のステープルファイバに取付けられる、請求項2に記載の基板。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反射層は前記第1の複数のステープルファイバから間隔をあけて配置される、請求項2に記載の基板。
【請求項5】
前記第1の反射層は金属箔を含む、請求項2に記載の基板。
【請求項6】
前記少なくとも1つの反射層は、前記第1の複数のステープルファイバに取付けられた第1の反射層と、前記繊維基層に取付けられた第2の反射層とを含む、請求項2に記載の基板。
【請求項7】
前記スライバ層の前記第1の複数のステープルファイバは約4〜約10デニールを有する、請求項2に記載の基板。
【請求項8】
前記スライバ層の前記第1の複数のステープルファイバはさらに、約1〜約2インチの長さのものとして規定される、請求項2に記載の基板。
【請求項9】
前記第1の複数のステープルファイバは少なくとも部分的にポリエステルから形成される、請求項2に記載の基板。
【請求項10】
前記スライバ層はさらに、
前記繊維基層によって捉えられる第2の複数のステープルを含む、請求項2に記載の基板。
【請求項11】
前記第1の複数のステープルファイバは異なる材料から形成される、請求項2に記載の基板。
【請求項12】
前記第1の複数のステープルファイバのうちの少なくともいくつかは熱収縮可能である、請求項2に記載の基板。
【請求項13】
前記第1の複数のステープルファイバのすべてが熱収縮可能であるわけではない、請求項12に記載の基板。
【請求項14】
前記フィラメント材は、ガラス、アラミドおよびポリエステルを含む群から選択される
材料から形成される、請求項2に記載の基板。
【請求項15】
前記フィラメント材はマルチフィラメントヤーンを含む、請求項2に記載の基板。
【請求項16】
前記繊維基層はさらに、
前記フィラメント材とともに配置され、前記繊維基層を形成するために予め定められた形に付勢可能である複数のモノフィラメントを含む、請求項2に記載の基板。
【請求項17】
前記繊維基層は管状形である、請求項2に記載の基板。
【請求項18】
熱伝達を抑制するための方法であって、
フィラメント材で繊維基層を形成するステップと、
繊維基層に対して実質的に垂直に方向付けされたスライバ層の第1の複数のステープルファイバを前記繊維基層のフィラメント材に織り交ぜるステップと、
少なくとも1つの反射層を繊維基層およびスライバ層のうちの1つに取付けるステップとを含む、方法。
【請求項19】
ステープルファイバの自由端と繊維基層の自由端との間に密度勾配を規定するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
繊維基層を予め定められた形に弾力的に付勢するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
スライバ層の形成後にすべてのステープルファイバよりも少ない数のステープルファイバを収縮させるステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−535710(P2008−535710A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506608(P2008−506608)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/013553
【国際公開番号】WO2006/110779
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】