説明

スラグ検出方法と装置

本発明は、取鍋(2)からタンディシュ(6)まで溶融金属が通過するシュラウド(4)内のスラグの存在を検出する方法と装置に関するものである。受信コイル(24)に生じる誘導電圧が規定された電圧範囲と比較される。誘導電圧の値が、規定された電圧範囲から外れていると、それは、スラグの存在を示す。電圧範囲は、シュラウドを通過する溶融金属の流量に応じて規定される。本発明は鋳造プラントにも係わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ検出方法および装置に係わり、特に、溶融金属を取鍋からタンディシュに案内するシュラウド(shroud)内のスラグの存在を検出することに関するものである。本発明は、また、かかる装置を含む鋳造プラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冶金業界において、液体金属を処理する幾つかの異なる方法がある。その一例が、金属(例、鋼)の鋳造である。一部のかかる鋳造法では、液体金属が、一般にシュラウドと称する注入ノズルを経由して取鍋からタンディシュに供給される。金属は、タンディシュから別の注入ノズルを経由して鋳型またはチル鋳型に流れ、そこで、金属が冷却されて固体状態に変化する。
【0003】
製錬および加熱工程では、スラグが溶融金属中に形成される危険性がある。最終鋳造品に含まれるスラグの危険性を最小限に抑制するために、鋳造プラントはスラグ検出装置を含むことがある。スラグ検出装置が溶融金属中のスラグを検出すると、警報が発せられ、適切な手段が講じられるであろう。
【0004】
従来技術において、或る種のスラグ検出装置は、取鍋における滑動ゲート(スライドゲート)の上方に設置された電磁コイルを含む。この種のスラグ検出装置は、電磁界について、金属の浸透深さがスラグの浸透深さよりも小さいという原理に基づいて作動する。斯様に、電磁界の大部分は、空気と同様にスラグを透過するため、スラグ検出装置がスラグと気体(空気等)を区別することは困難である。取鍋の底部(すなわち、滑動ゲートの直上)では、取鍋の測定領域が一般に溶融金属で満たされるので、この点は大きな問題ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、取鍋とタンディシュの間にあるシュラウド内のスラグを検出することも望ましいだろう。このことによって、鋳造プラントで用いられる各取鍋にスラグ検出電磁気センサ(コイル)を設置する必要性が避けられるだろう。さらに、取鍋に設置されるセンサは、センサが機械的に損傷される危険性が比較的高い位置にある。したがって、費用を抑え、センサが機械的に損傷される危険性を極小化するような方法で、電磁気スラグ検出センサを設置することが望ましいだろう。振動計、または、赤外線計測装置と組み合わされた振動計を含むスラグ検出装置が存在するにしても、電磁気によりシュラウド内のスラグを検出する満足すべき方法は未だ存在しない。その理由は、取鍋からシュラウドを通過する溶融金属は、必ずしもシュラウドを完全に満たさないからである。したがって、金属の代わりに気体を含むシュラウドの部分はスラグとして誤認される可能性があり、その結果、誤った警報が発せられることになる。
【0006】
本発明の目的は、取鍋とタンディシュの間に延在するシュラウド内のスラグを検出するために好適な方法、装置および鋳造プラントを得ることである。
以下の説明で明らかになされる前記目的およびその他の目的は、特許請求の範囲で定義された方法、装置および鋳造プラントによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の観点によれば、溶融金属を取鍋からタンディシュに案内するシュラウド内に存在するスラグを検出する方法が提供される。この方法によれば、シュラウドおよびその内容物に進入する電磁界を発生させるために発信コイルが用いられる。シュラウドに進入した電磁界を受信するために受信コイルが用いられる。電磁界は受信コイルに誘導電圧を発生させる。誘導電圧の値が規定された電圧範囲から外れていると、前記内容物中にスラグが存在することを示す。前記電圧範囲は、シュラウド内を通過する溶融金属の流量の大きさに応じて規定される。流量の大きさは、シュラウドで直接決定されるか、または、別の場所で測定してシュラウド内の流量を計算して得る測定値から間接的に決定される。
【0008】
本発明の第二の観点によれば、前記方法に合うようにスラグを検出する装置が提供される。
かくして、本発明は、存在する気体(例えば、空気)の量に応じて警報限界を設定することによって、必ずしも完全に溶融金属で満たされていないシュラウド等の空間内でも、スラグを首尾よく検出できるという知見に基づいている。特に、本発明は、シュラウド内を通過する溶融金属の流量(すなわち、単位時間当たりの体積)を決定することによって、気体の存在を確定できるという知見に基づいている。
【0009】
溶融金属の流量を決定する利点は、流動成分の比(すなわち、シュラウド内の気体量に対する金属量の比)が得られることであり、前記比の変化に応じて検出装置の感度を変更できる。例えば、溶融金属の流量がしばらくして減少すると、検出装置の警報を与えることの必要性または要求水準が高くなる。これは、前記規定された電圧範囲を拡大することによって実行される。このことは、所定の誘導電圧が、スラグの存在を示すか、または、その時点で規定されている電圧範囲に依存しないことを意味する。かくして、一方において、所定誘導電圧の値が、スラグの存在を示すことになるであろう流量の減少前に規定された電圧の範囲外になるかもしれない。他方、流量の減少および電圧範囲の拡大後に、誘導電圧の同じ値が再規定された電圧範囲内に含まれるだろう。その値は、存在するとすれば、スラグではなく、気体であると解釈されるだろう。取鍋の排出完了が近づくと、溶融金属流にスラグが混入する危険性は、通常、工程の終りに向かって増大する。
【0010】
電圧範囲の変更は次のように説明される。想定として、空のシュラウド(すなわち、溶融金属が存在せず、気体のみが存在する)について、受信コイルが、信号強度Vを有する誘導電圧を発生するものとする。シュラウド内を通過する溶融金属でシュラウドが完全に満たされると、信号強度V(ただし、V<V)を有する電圧が誘導される。かくして、満たされたシュラウドについては、電圧範囲が少なくとも間隔0〜Vに設定されるが、安全側にあって誤警報の危険をなくすために、電圧範囲を若干広げることができる。シュラウドが溶融金属で一部だけ満たされると、電圧範囲の規定が適切に調整される。新たに規定される電圧範囲は0〜Vの範囲であり、V<V<Vの関係がある。
【0011】
簡単な計算例は以下のとおりである。
溶融金属で完全に満たされたシュラウドについて、誘導電圧の大きさが金属含量90%以下を示す場合(溶融金属の決定された流量の大きさは依然として約100%であるが)、スラグの存在を示すに留まるように電圧範囲が規定されるものと想定する。かくして、もしも、誘導電圧が溶融金属で95%満たされたシュラウドに対応する場合、スラグの存在は示されないだろう。これは、誤警報を避けるために安全幅10%を与えている。今、溶融金属の流量が半分に減少したこと(すなわち、シュラウドの50%だけが溶融金属で満たされ、残りが気体で満たされること)が後になって確定するものと想定する。10%の安全幅を維持するために、誘導電圧の値が金属含量45%以下に対応する場合、スラグの存在が示されるように電圧範囲が規定される。この例における数値は、電圧範囲の変化に関する一般原理を説明するために、単に例示したにすぎないことに留意されたい。
【0012】
前記のとおり、シュラウド内を通って案内される溶融金属の流量は、直接または間接的に測定される。シュラウド内部の流量の直接的な測定に各種の流量計を利用できる。しかしながら、間接的な測定方法を利用することがより簡単であろう。例えば、シュラウド内を通過する溶融金属の流量は、タンディシュにおける注入速度を測定して、この測定された注入速度から溶融金属の流量を計算することによって確定できる。別の代替方法は、取鍋内容物の重量の減少速度を測定して、この測定された重量の減少速度から溶融金属の流量を計算することである。さらに別の代替方法は、鋳造速度とチル鋳造後の鋳造品の寸法とを測定することであり、速度および寸法が流量を示唆する。さらに別の代替方法は、取鍋の下に設けた滑動ゲートの開口度または位置を検出して、フィードバック信号をプロセッサに送信することであり、該プロセッサは、滑動ゲートの位置情報(すなわち、滑動ゲートの開口度)から溶融金属の流量を計算する。これらの異なる代替方法の利点は、スラグ警報の設定を規定するために必要な関連情報を得るために、標準的な既存測定システムを利用できることである。
【0013】
発信コイルと受信コイルは、好適には、共通または別体のコイルホルダによって所定位置に保持される。共通コイルホルダを用いる場合、コイルホルダは少なくとも2つの分岐部を有するフォーク形状に設計される。発信コイルと受信コイルは、シュラウドの各側に設置されるようになされた各分岐部で保持される。フォーク状コイルホルダは、単独設置であってもよく、また、以下に説明するような他の設備に結合されてもよい。
【0014】
スラグ検出過程で、シュラウドに対してコイルが実質的に動かないように維持することが好ましい。シュラウドに対してコイルが動かなければ(すなわち、シュラウドの動きにコイルが追従すれば)、溶融金属の不変流に対して均一な信号が得られる。これは、例えば、前記フォーク状コイルホルダの各分岐部に発信コイルと受信コイルを装着することによって達成される。その場合、発信コイルと受信コイルを通る仮想直線がシュラウドを横断するようにフォーク状コイルホルダを適切に配置する。換言すれば、フォーク状コイルホルダの分岐部間にシュラウドを配置する。フォーク状コイルホルダを用いる利点は、その比較的長いステムを利用できることであり、その場合、シュラウドの周囲でのコイルの位置決めは、シュラウドに過度に接近させずに、シュラウドから所定距離を置いてコイルを取り扱うことによって行なうことができる。フォーク状コイルホルダの分岐部は、コイルの正しい配置を容易にし、コイル間の相対移動の危険性を減少させ、それによって不必要な誤信号変化を回避する。コイル間の相対移動の危険性は、分岐部が比較的短く作られていると更に減少する。このように、短い分岐部を有する比較的長いステムを使用することが好適である。フォーク状コイルホルダは、好ましくはシュラウドの周囲全体を囲まないので、シュラウドに対して容易に着脱できる。
【0015】
コイルをシュラウドのあらゆる動きに実質的に追従させるために、フォーク状コイルホルダは、シュラウドの動きに追従する装置に適切に懸架される。かかる装置の一例は、公知のあらゆる種類のシュラウド・マニピュレータである。シュラウド・マニピュレータは、シュラウドを掴んで持って来たり、位置決めしたり、支持したりするために用いられる一般に伸長するアーム形状体である。かかるシュラウド・マニピュレータにフォーク状コイルホルダを装着することができる。これに代わるものとして、取鍋に装架された滑動ゲート装置にフォーク状コイルホルダを懸架させてもよく、また、所望の従動効果を得るために別の代替手段を用いてもよい。
【0016】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、発信コイルと受信コイルをそれぞれ保持する2つの分岐部が互いに電気的に絶縁可能である。例えば、共通の横棒で分岐部をステムに結合する場合には、その横棒に電気的な絶縁を施してもよい。この種の遮断は無用な電磁界を極小化する。
【0017】
フォーク状コイルホルダには数多くの利点があるが、互いに電気的に絶縁された、別体保持部材(例えば、別体アーム)にコイルを配置することによって、本発明方法を実施することもできる。また、シュラウド・マニピュレータ、または、シュラウドの動きに追従するその他の装置に、斯かる別体保持部材を装着することもできる。したがって、シュラウドの一方の側から1以上の発信コイルにより電磁界を発生させて、シュラウドの別の側の1以上の受信コイルによって前記電磁界を受信するには、種々の方法がある。
【0018】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、シュラウドの異なる側に送信コイルと受信コイルを設ける別の方法として、シュラウドを囲んで各コイルが配置される。コイルは円錐曲線形(toroid)または環状であってよく、シュラウドは各円錐曲線形状部を通って伸長するだろう。コイルをシュラウドに固定する締着具を含むコイルホルダ装置によって、コイルをシュラウドに装架させることができる。これに代えて、取鍋の滑動ゲート等のその他の箇所に環状構造体を装着させ、シュラウドを包囲するようにして、その箇所に環状構造体を懸架することができる。別の方法は、シュラウド・マニピュレータまたはその他のシュラウド追従装置に同様に装着されるフォーク状コイルホルダの分岐部間に、コイルを装架することである。
【0019】
選択されるコイル装置の種類にかかわらず、シュラウドのあらゆる位置変更にも、コイルが事実上追従できるように、コイルを配設できることが前記議論から明らかだろう。このことの利点は、シュラウドに進入する発生された磁界の伝播が一定になり、検出精度が増す。溶融金属の注入中にシュラウドの動きが生じるかも知れない。斯かる動きは直線状または円弧状である。また、シュラウドは、取鍋の滑動ゲートを動かす時に動きやすい。
【0020】
本発明の少なくとも1つの実施形態では、規定された電圧範囲の制御を補完するものとして、発信コイルにより生じる電磁界の周波数制御が可能である。シュラウドが完全に満たされず、溶融金属の乱流がシュラウド内部に存在すると、より高い周波数がより安定した誘導電圧信号を送ることが判った。このように、シュラウド内部で乱流が検出されると、電磁界の周波数が本装置によって変えられ、適切に増大せしめられる。また、溶融金属中に進入して、溶融金属流の中心またはその他の場所にあるスラグを検出するために選択される周波数に、溶融金属流量の大きさが影響を与える。測定に干渉可能な範囲外周波数が周波数を変化させる基礎になり得る。したがって、発信コイルにより発生される電磁界は交番周波数であってよい。また、雑音効果(noise effect)を極小化するために、それぞれ異なる周波数を有する複数の電磁界を発生させる複数のコイルを使用してもよい。さらに、1つ以上が交番周波数である複数の電磁界を発生させるために、複数のコイルを使用できる。
【0021】
電磁界を発生させる発信コイルには、スラグが存在するか否かを確認することを目的とするシュラウド部分に向かう電磁界の方向を最適化するコア等の方向づけ部材を設けることができる。同様に、受信コイルに、前記方向付け部材を設けることができる。
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、高温環境であるが故に、水または気体を収容する冷却路等の適切な冷却装置によって、送信コイルと受信コイルを冷却できる。
【0022】
本発明の第三の観点によれば、溶融金属を取鍋からタンディシュに案内するシュラウド内に存在するスラグを検出する装置が提供され、該装置は少なくとも2つの分岐部を有するフォーク状コイルホルダを含み、第一分岐部が発信コイルを保持し、第二分岐部が受信コイルを保持し、2つの分岐部はこれらの間にシュラウドが配設されるように配置可能である。このことによって、コイル同士、シュラウドおよび内部の金属流に対してコイルを実質的に動かせない状態にすることができ、もって望ましくない信号の変動を回避できる。別の利点は、コイルが取鍋から独立していることである。
【0023】
本発明の第四の観点によれば、取鍋と、タンディシュと、これらの間のシュラウドとを含む鋳造プラントが提供される。鋳造プラントは、また、前記のとおり、シュラウド内のスラグの存在を検出する装置を含む。
【実施例】
【0024】
以下、添付図面を見ながら本発明を説明する。
図1は、シュラウド4を通ってタンディシュ6に送られるべき溶融金属を収容するようになされた取鍋2を概略的に示す。溶融金属はタンディシュ6から注入ノズルを経てチル鋳型に流れ、チル鋳型で溶融金属が冷却されて固体に変わるが、注入ノズルとチル鋳型は図示されていない。フォーク状コイルホルダ10が、シュラウド4の外側に設けられ、シュラウド・マニピュレータ30に装架されている。フォーク状コイルホルダ10は発信コイルを収納しており、該発信コイルは電磁界を発生させ、該電磁界がシュラウドを通って伝播して、やはりフォーク状コイルホルダ10に配設された受信コイルによって受信される。フォーク状コイルホルダ10とコイルについては、図2に関する議論で更に説明する。
【0025】
引き続き図1において、信号ケーブル40がフォーク状コイルホルダ10とコネクタ42の間に延在している。信号ケーブル40は、それぞれ、発信コイルに対して信号を導き、受信コイルから信号を導くための内部ケーブルまたは個別導電線を収納している。また、発信コイルに対して信号を送り、受信コイルから信号を受けるための導電線をそれぞれ収納する送信ケーブル44および受信ケーブル46がコネクタ42に連結されている。受信ケーブル46は、受信コイルから発生した誘導電圧信号を増幅するために、他端が前置増幅器ユニット48に接続されている。前置増幅器ケーブル50は、プロセッサを含む制御ユニット52に信号を送る。送信ケーブル44は、制御ユニット52に直接接続される。このようにして、制御ユニット52から、送信ケーブル44、コネクタ42、および信号ケーブル40中の対応する導電線を経て、フォーク状コイルホルダ10内の発信コイルに信号を送ることによって、発信コイルによる電磁界の発生が制御される。
【0026】
制御ユニット52は、警報ケーブル56を介して警報ユニット54に接続されている。制御ユニット52は、受信コイルからくる受信された誘導電圧信号を予め決められた電圧範囲と比較する。もしも、受信された電圧が前記電圧範囲に含まれない場合には、制御ユニット52は、警報音および/または視覚警報を適切に発生できる警報ユニット54を起動させる。また、図示されていないが、スラグ検出プロセスを連続して見ながらモニターできる制御パネルを設けてもよい。
【0027】
さらに、制御ユニット52は、シュラウドを通る溶融金属の流量(すなわち、単位時間当たりの容積)に関する情報を受ける。この情報は、他端が流量測定装置(図示せず)に接続されている流量入力線58を経て受信され、該流量測定装置は、先に説明したとおり、直接測定装置または事後計算を伴う間接測定装置であってよい。溶融金属の流量が著しく変化したことが確定されると、制御ユニット52は異なった電圧範囲を設定する。流量が低下すると、より広い電圧範囲を設定することになり、流量が増大すると、より狭い電圧範囲を設定することになる。このように、警報ユニット54が起動する時点は、受信された流量情報に依存する。
【0028】
図2には、フォーク状コイルホルダ10と、シュラウド4を保持するシュラウド・マニピュレータ30に対するコイルホルダの懸架とが、詳細に示されている。図2は、一部欠截斜視図である。フォーク状コイルホルダ10は、ステム部分12、第一分岐部分14、第二分岐部分16および横棒部分18を含む。本実施例において、分岐部分14,16は横棒部分18の両端部に位置し、ステム部分12は横棒部分18の中央に結合されている。しかしながら、変形例では、ステム部分を横棒部分の一端に配置してもよく、また、一方の分岐部分を延長させた部分であってもよい。
【0029】
図2は、第一分岐部分14の内部が、横棒部分18から最も離れた端部にある発信コイル20を含むことを示している。発信コイルの導電線22は、第一分岐部分14を通り、横棒部分18および基部12を経て制御ユニットに至る(図1も参照)。
また、図2は、第二分岐部分16の内部が、横棒部分18から最も離れた端部にある受信コイル24を含むことを示す。受信コイル24の導電線26は、第二分岐部分16を通り、横棒部分18および基部12を経て制御ユニットに至る(図1も参照)。
【0030】
分岐部分14,16の端部は、発信コイル20、シュラウド4および受信コイル24が直線上に位置するように位置付けられる。換言すれば、シュラウド4は2つのコイル20,24の間に位置する。分岐部分14,16またはこれらの一部は、フォーク状コイルホルダの残部に対して異なる角度の間で制御できるようにしてもよい。これによって、電磁界の主伝播方向を作動位置にあるシュラウドに対して直角に設定すべく、コイル20,24を正確に位置づけることができる。
【0031】
信号に対する望ましくない電磁気の影響を回避するために、横棒部分18およびステム部分12において2つのコイル20,24の導電線を互いに電気的に絶縁することができる。
フォーク状コイルホルダ10は、主として非磁性材料(例えば、ステンレス鋼、セラミック材料、ガラス繊維、または、電磁界と実質的に干渉しない、同様に適切なその他の材料のいずれか)で首尾よく形成される。
フォーク状コイルホルダ10は、締付具32によってシュラウド・マニピュレータ30に懸架されている。締付具32は2つの突出部34を含み、該突出部34の各々が、その端部でシュラウド・マニピュレータ30を囲むクランプ36につながっている。クランプ36は、ボルトまたはねじ38によってシュラウド・マニピュレータ30に締着される。
【0032】
図2に示すシュラウド・マニピュレータ30は、標準型であり、シュラウド4を保持する端部に把持手段を有する。把持手段は、シュラウド・マニピュレータ30の後部の伸張部分64から上方に傾斜する2つの把持部分62を含む。傾斜は、とりわけ、シュラウドの位置決めの仕方に依存する。シュラウド上の初期把持点は、マニピュレータのシュラウド位置決め点と相違し、角度を変化させることが望ましい。把持部分62は、さらに馬蹄形に形成されたホルダ66に結合される。
【0033】
図3は、図1に示される制御ユニット52の作動例を説明するフローチャートである。
ステップS1で、制御ユニットは電圧範囲を規定する。ステップS2で、制御ユニットは、受信コイルで誘導された電圧を示す信号を受信する。ステップS3で、制御ユニットは、受信された信号の値を規定された電圧範囲と比較し、前記値が規定された電圧範囲内にあるか否かを決定する。前記値が規定された電圧範囲内になければ(そのような場合、受信された信号の絶対値は、通錠、電圧範囲の最大電圧の絶対値よりも大きい)、その時、制御ユニットはステップS4でスラグ検出警報を作動させる。他方、受信された信号の値が規定された電圧範囲に包含されることがステップS3において判断されると、制御ユニットは、引き続きステップS3等において比較される新たな信号を受信するステップS2に戻る。
【0034】
以上のステップと並行して、制御ユニットは、また、ステップS5において流量信号を受信する。流量信号は、シュラウドを流れる溶融金属の単位時間当たりの容積を示す。ステップS6で、制御ユニットは、測定された溶融金属の流量を記憶された値と比較し、流量の著しい経時変化があったかどうかを吟味する。著しい変化がなければ、制御ユニットは、ステップS5を継続し、引き続き流量信号を吟味する。しかしながら、著しい変化があると、制御ユニットは、記憶された値(例えば表)に従ってステップS1における電圧範囲を再設定する。
図3は意図を明らかにするための制御ユニットの一作動例にすぎず、別例も可能であることに留意すべきである。
【0035】
特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、数多くの変形および変更が可能であることにも留意すべきである。例えば、単一の発信コイルおよび単一の受信コイルの使用に焦点を当てて説明したが、本発明方法および装置は、複数の発信コイルおよび複数の受信コイルを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の少なくとも1つの実施例によるシュラウド内のスラグを検出するために構成された装置の模式図。
【図2】図1におけるシュラウドの周囲に示される構成部材の詳細な模式図。
【図3】制御ユニットの作動例を説明するフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を取鍋(2)からタンディシュ(6)に案内するシュラウド(4)内のスラグの存在を検出する方法において、
少なくとも1つの発信コイル(20)によって、前記シュラウドおよびその内容物に進入する電磁界を発生させ、
前記シュラウドおよびその内容物に進入した前記電磁界に曝される少なくとも1つの受信コイル(24)によって誘導電圧を発生させ、ここで、規定された電圧範囲から外れた値を有する誘導電圧は前記内容物中にスラグが存在することを示し、
前記シュラウドを通過する前記溶融金属の流量を確定し、かつ
確定された前記溶融金属の流量の大きさに応じて前記電圧範囲を規定することを含むシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項2】
前記各コイルがシュラウドに対して実質的に移動しない状態に保つ
ことをさらに含む請求項1に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項3】
少なくとも2つの分岐部を有するフォーク状コイルホルダ(10)を設け、
前記発信コイルを前記フォーク状コイルホルダの第一分岐部(14)に装架し、前記受信コイルを前記フォーク状コイルホルダの第二分岐部(16)に装架し、かつ
前記発信コイルと前記受信コイルを結ぶ仮想直線が前記シュラウドを横断するように、前記フォーク状コイルホルダを配置することを更に含む請求項1または請求項2に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項4】
前記フォーク状コイルホルダを配置する行為が、前記フォーク状コイルホルダを前記シュラウド・マニピュレータ(30)に装着することを含む請求項3に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項5】
前記フォーク状コイルホルダを配置する行為が、前記シュラウドの位置に追従するようになされた別体装架装置に前記フォーク状コイルホルダを装着することを含む請求項3に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項6】
前記フォーク状コイルホルダを配置する行為が、前記フォーク状コイルホルダを前記取鍋の滑動ゲートに装着することを含む請求項3に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項7】
円錐曲線形状の前記少なくとも1つの発信コイルを用意して、前記シュラウドを包囲するように該発信コイルを配置し、かつ
円錐曲線形状の前記少なくとも1つの受信コイルを用意して、前記シュラウドを包囲するように該受信コイルを配置することを更に含む請求項1または請求項2に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項8】
前記シュラウド内に乱流が存在すれば、該乱流を検出し、かつ
乱流が検出された場合に、前記発信コイルによって発生する電磁界の周波数を変えることを更に含む請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項9】
交番周波数の電磁界、または、異なる周波数を有する複数の電磁界を、前記少なくとも1つの発信コイルによって発生させることを更に含む請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項10】
前記溶融金属の流量の大きさが低下したことが確定された場合に、より広い電圧範囲を規定することを更に含む請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項11】
前記取鍋における滑動ゲートの開口位置信号からフィードバックを行い、前記滑動ゲートの開口情報から前記溶融金属の流量を計算することを、前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する行為が含む請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項12】
前記取鍋の内容物の重量の減少速度を測定し、該測定された重量の減少速度から前記溶融金属の流量を計算することを、前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する行為が含む請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項13】
前記タンディシュ内の増量速度を確定し、該確定された増量速度から前記溶融金属の流量を計算することを、前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する行為が含む請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項14】
前記送信および受信コイルを冷却することを更に含む請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する方法。
【請求項15】
溶融金属を取鍋(2)からタンディシュ(6)に案内するシュラウド(4)内のスラグの存在を検出する装置において、
前記シュラウドおよびその内容物に進入させるべき電磁界を発生させるための少なくとも1つの発信コイル(20)と、
前記シュラウドおよびその内容物に進入した電磁界を受信して誘導電圧を発生する少なくとも1つの受信コイル(24)と、ここで、規定された電圧範囲から外れた値を有する誘導電圧が前記内容物中のスラグの存在を示し、
前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する手段と、
前記測定された流量の大きさに応じて前記電圧範囲を規定する手段(52)とを含むシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項16】
前記各コイルが前記シュラウドの位置変更に実質的に追従するように配設可能であるコイルホルダ装置を更に含む請求項15に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項17】
少なくとも2つの分岐部である、前記発信コイルを保持する第一分岐部(14)と、受信コイルを保持する第二分岐部(16)とを有するフォーク状コイルホルダ(10)を、前記コイルホルダ装置が含み、前記2つの分岐部は、それら分岐部の間に前記シュラウドが位置するように、配置可能である請求項16に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項18】
前記フォーク状コイルホルダが、シュラウド・マニピュレータ(30)に装架されるようになされている請求項17に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項19】
前記フォーク状コイルホルダが、前記シュラウドの位置に追従するように構成された別体装架装置に装着されるようになっている請求項17に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項20】
前記フォーク状コイルホルダが、取鍋の滑動ゲートに装着されるようになっている請求項17に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項21】
前記2つの分岐部が、互いに電気的に絶縁されている請求項17から請求項20までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項22】
前記各コイルが円錐曲線形状であり、前記コイルホルダ装置は、それが前記シュラウドを囲む態様で各円錐曲線形状体を保持するようになっている請求項15または請求項16に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項23】
前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する前記手段が、
前記取鍋における滑動ゲートの開口位置信号を感知するセンサと、
前記滑動ゲートの開口情報から前記溶融金属の流量を計算するプロセッサとを含む請求項15から請求項22までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項24】
前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する前記手段が、
前記取鍋の内容物の重量の減少速度を測定する測定装置と、
該測定された重量の減少速度から前記溶融金属の流量を計算するプロセッサとを含む請求項15から請求項22までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項25】
前記シュラウドを通過する溶融金属の流量を確定する前記手段が、
前記タンディシュ内の増量速度を測定する測定装置と、
該測定された注入速度から前記溶融金属の流量を計算するプロセッサと
を含む請求項15から請求項22までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項26】
前記送信および受信コイルには、前記シュラウドに向かう前記電磁界、および、前記シュラウドから出る前記電磁界を方向づけるコア等の方向づけ部材が、前記送信コイルと前記受信コイルに設けて成る請求項15から請求項25までのいずれか一項に記載されたシュラウド内のスラグの存在を検出する装置。
【請求項27】
溶融金属を収容するようになされた取鍋(2)と、
該取鍋から溶融金属を受けるようになされたタンディシュ(6)と、
前記取鍋と前記タンディシュの間に配置されるシュラウド(4)と、
請求項15から請求項26までのいずれか一項に記載された装置とを含み、前記取鍋から前記シュラウドを経て前記タンディシュに溶融金属が送られるようになっている鋳造プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−523747(P2007−523747A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515756(P2006−515756)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004314
【国際公開番号】WO2004/110675
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(501374954)エムピーシー、メタル、プロセス、コントロール、アクチボラグ (2)
【氏名又は名称原語表記】MPC METAL PROCESS CONTROL AB
【Fターム(参考)】