説明

スリガラス状の外観を付与する意匠性塗料組成物及び塗膜

【課題】 軽量であると共に、触感、外観および質感が極めて本物のスリガラスに近い仕上りを有する塗膜を得る。
【解決手段】 平均粒子径1.5〜12μmの硬度が鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、バインダー(b)のみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー(b)90〜40重量%(上記シリコーン樹脂粒子(a)とバインダー(b)の合計は100重量%である)、及び必要に応じて加えられる艶消し用の体質顔料(a')からなる意匠性塗料組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の表面に塗装処理を行うことによって、スリガラス調の触感、質感および外観を物品に付与する塗料組成物及びそれから得られる塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車内装部品、家電製品、事務用品、屋内装飾品などの表面仕上げ方法の一つに、艶消し調の仕上げ方法がある。
一般に、艶消し塗料組成物では、艶消しを発現させる成分として無機系または有機系の艶消し用体質顔料が用いられている。無機系の艶消し用の体質顔料としては、不定形のシリカ粉末、炭酸カルシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末などが挙げられる。有機系の艶消し用の体質顔料としては、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの有機物の粉末やこれら有機物をワックス状にしたものが挙げられる。さらに有機系の粉末の範疇として、球状の架橋アクリル樹脂粒子や架橋ウレタン樹脂粒子なども艶消しの目的で使用されるが、これらはサテン調やスウェード調のような模様調や皮革調の触感を有する塗料組成物用に広く使用されている。
【0003】
特開平10−329840号公報には、ガラス瓶容器の表面に、5〜100μmの球形の固形樹脂を配合してなる樹脂組成物を、静電塗装によりサテン模様装飾を施す技術が開示されている。(特許文献1参照)
【0004】
しかし、上記技術による単純な艶消し塗料組成物では、スリガラスの触感、外観、質感の全てを満足するような艶消し塗料組成物を得ることは極めて困難であった。
例えばポリエチレンやポリカーボネートのような有機系粉体を体質顔料に用いた場合では、フィラーそのものが軟質であることから、スリガラス状の触感や質感を得ることは極めて困難であり、この点を解決する処方としてシリカ粉末を使用した艶消し塗料が考えられるが、この場合その触感や外観はスリガラス調に近い仕上がりが得られるものの外部からの機械的衝撃やスクラッチなどにより簡単に傷がつくものであり、また質感としても本物のスリガラスと比較して極めて低品位な仕上りであるという問題があった。
加えて、ガラスを用いて表面を粗すことによって得られるスリガラス状の表面を有する物品は重量が大きく衝撃により破損しやすいといった問題点があるため、様々な物品への応用として考えた場合、その適用には大きな制約を受けるという問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−329840号公報(請求項1〜4、段落0012、実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題点に着目してなされたものであって、軽量であると共に、触感、外観および質感が極めて本物のスリガラスに近い仕上りを付与する塗料組成物及びそれから得られる塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、平均粒子径1.5〜12μmで、鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、バインダー(b)のみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー(b)90〜40重量%からなる意匠性塗料組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1は、平均粒子径1.5〜12μmで、鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、バインダー(b)のみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー(b)90〜40重量%(上記シリコーン樹脂粒子(a)とバインダー(b)の合計は100重量%である)からなる意匠性塗料組成物を提供する。
本発明の第2は、さらに、艶消し用の体質顔料(a')を意匠性塗料組成物中に2.0重量%以下含有する請求項1記載の意匠性塗料組成物を提供する。
本発明の第3は、バインダー(b)が、(メタ)アクリル基を有する化合物(m)、及び活性化学種発生化合物(u)からなり、活性化学種の発生により硬化するバインダーである本発明の第1又は2に記載の意匠性塗料組成物を提供する。 本発明の第4は、紫外線の照射によって架橋硬化する本発明の第3に記載の意匠性塗料組成物を提供する。
本発明の第5は、シリコーン樹脂粒子(a)が、シリコーン樹脂粒子のみをフィルム状にした場合の硬度が鉛筆硬度で2H以上である本発明の第1〜4のいずれか1項に記載の意匠性塗料組成物を提供する。
本発明の第6は、シリコーン樹脂粒子(a)が球形である本発明の第1〜5のいずれか1項に記載の意匠性塗料組成物を提供する。
本発明の第7は、本発明の第1〜6のいずれかに記載の意匠性塗料組成物を硬化してなる塗膜を提供する。
本発明の第8は、スリガラス状の外観、質感および触感を有する本発明の第7に記載の塗膜を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スリガラスに非常に近い外観、触感および質感を有する塗膜が得られる。
特に、軽量で強度の高いプラスティックス素材に塗装処理を行った場合、スリガラスに極めて近い質感を付与することが可能となり、ガラス表面を粗して得られるスリガラス表面を有するガラス物品に比べて軽量であり、且つ衝撃による破損もガラスと比べて極めて耐久性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
シリコーン樹脂粒子(a)
本発明で使用するシリコーン樹脂粒子(a)は、硬質のシリコーン樹脂製である。硬質である理由は、塗膜を作製した場合、シリコーン樹脂粒子(a)が凹凸の凸状の部分に存在することにより、スリガラスの質感と同様なものが得られるからであり、軟質のシリコーン粒子を用いて塗膜を作製してもスリガラスが有するような質感は得られない。
シリコーン樹脂粒子(a)は、シリコーン樹脂粒子(a)をフィルム状(同種の樹脂成形品の上でフィルム状にしてもよい。)にした場合の鉛筆硬度が、常温で、F以上のものであり、H以上であるものが好ましく、2H以上であるものがさらに好ましい。
【0011】
シリコーン樹脂粒子(a)の平均粒子径は1.5〜12μm、好ましくは2〜8μm、さらに好ましくは3〜6μmである。
平均粒子径が上記範囲より小さすぎると、塗膜形成時の凹凸が小さくなり、艶消し効果が小さくなると同時にスリガラスの質感も低下する。また、平均粒子径が上記範囲より大きすぎると、塗膜がザラザラする触感となり、きめの細かいスリガラス状の質感が得られない。
【0012】
シリコーン樹脂粒子(a)の形状としては球状のものが好ましく、この理由としては不定形の粒子を使用した場合と比べてきめの細かな触感が得られるからである。
【0013】
このようなシリコーン樹脂粒子(a)としては、GE東芝シリコーン(株)製のトスパール120(球状;平均粒子径2.0μm)、トスパール130(球状;平均粒子径3.0μm)、トスパール145A(球状;平均粒子径4.5μm)、トスパール2000B(球状;平均粒子径6.0μm)、トスパール3120(球状シリコーン粒子;平均粒子径12.0μm)、トスパール240(不定形;平均粒子径4.0μm)などが例示される。これらは、フィルム状にした場合の鉛筆硬度が、常温で、2H以上である。
【0014】
本発明でいうスリガラスの特徴である触感、外観および質感について説明すると、触感とは処理された物品の表面に触れた場合の触感を意味する。外観とは、処理された物品の外観を目視した場合の外観を意味する。質感とは、処理された物品に触れた場合の触感の特徴の他に、スリガラスを爪で傷付けた場合やスリガラス同士を擦りつけた場合に発せられるような、一般的な人には極めて不快と感じられるような音や、音などを含めた感触から人間が感じるスリガラスの持つ特有な冷たさなども重要な要素として含まれる。
特にこのような質感の発現には、従来の艶消し塗料組成物では達成困難であり、前記スリガラスの質感を発揮させる為の成分として硬質のシリコーン樹脂粒子が重要な要素となるものである。
【0015】
バインダー(b)
バインダーの機械的特性も重要な要素であるから、本発明で使用するバインダー(b)は、硬質であることが好ましい。具体的には、バインダーのみ塗膜の鉛筆硬度が、常温で、F以上のものであり、好ましくはH以上であり、さらに好ましくは2H以上である。
バインダー(b)として鉛筆硬度がFより柔らかいバインダー樹脂や常温でゴム状の機械的特性を有するようなバインダー樹脂を用いた場合には、塗膜に触れた時にバインダーの柔らかさに起因して柔軟な触感となり、前記スリガラスの有する質感とは異なったものとなるために好ましくない。
【0016】
本発明で使用するバインダー(b)としては、硝化綿ラッカー、アクリルラッカー、ウレタンラッカー、ポリエステルラッカー、アクリルウレタン塗料、エポキシ塗料などに使用されるバインダー樹脂を使用することが可能であるが、好ましくは紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化するような硬化型塗料に使用されるもの、さらに好ましくは紫外線硬化型塗料に使用されるものである。
この理由としては、塗装された塗膜を照射処理して短時間に硬化させることが可能であり、また硬度の大きい塗膜が得られやすいからである。
本発明は、特にプラスティックスの表面処理を考慮して、高温での焼付けなどは極めて困難である場合においても、低温で短時間での硬化反応で硬度の大きい塗膜が得られやすい上記架橋反応を利用するものが好ましい。
【0017】
バインダー(b)は、好ましくは(メタ)アクリル基を有する化合物(m)及び、任意成分としての活性エネルギー線の照射によって活性化学種を生ずる化合物(u)からなり、照射により架橋硬化してバインダー樹脂となるものである。
【0018】
(メタ)アクリル基を有する化合物(m)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(炭素数1〜18)(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する1価のアクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの多価アルコールとの(メタ)アクリル酸エステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸アミドなどのアミド基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;γ−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどのシリル基含有単量体;カルボキシル基含有(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。またこれらのモノマーを構成単位として含むオリゴマーやポリマーも使用することができる。
これらは、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
【0019】
上記ラジカル反応性の官能基を有するモノマー等には、必要に応じてこれらと共重合し得るモノマーや、高分子化合物などを、紫外線を照射することによって活性ラジカルを発生するような光開始剤などと共に溶解混合したバインダーを例示することが出来るが、これに限定されるものではない。
上記共重合し得るモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等のα−オレフィン;ブタジエン、イソプレン、ノルボルナジエンなどのジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アリルアルコール等のビニル系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらは二種以上を併用してもよい。
【0020】
活性エネルギー線の照射によって活性化学種を生ずる化合物(u)としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物等が挙げられる。
これらの化合物は、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、それ自体では光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
【0021】
化合物(u)の添加量は、塗料組成物中の光硬化可能な成分の合計量100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で添加される。
【0022】
紫外線照射によって活性ラジカル以外の活性種を発生させるような化学物質を使用して架橋硬化するタイプの光硬化型の塗料用バインダー組成物も使用可能であり、高エネルギー電子線の照射によって塗膜を架橋硬化させるような塗料用バインダー組成物も使用可能である。
【0023】
活性エネルギー線の照射によって活性化学種を生ずる化合物(u)には、必要に応じて増感剤などを添加してもよい。
【0024】
また、バインダー(b)は、無溶剤でも、有機溶剤を含むものであってもよい。有機溶剤を含む場合、物品に塗装した後に溶剤成分を熱などにより乾燥させた後に、紫外線照射などにより塗膜を架橋硬化させる方法も例示できる。
【0025】
本発明の艶消し塗料組成物は、上記シリコーン樹脂粒子(a)10〜60重量%、及び、上記バインダー(b)90〜40重量%(シリコーン樹脂粒子(a)とバインダー(b)の合計は100重量%である)からなる。
シリコーン樹脂粒子(a)は、塗料組成物の固形分中に10〜60重量%、好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは50〜60重量%含有される。
シリコーン樹脂粒子(a)の含有率が10重量%未満の場合では、シリコーン樹脂粒子(a)のみの添加では塗膜の光沢の低下が少なく、スリガラス状としての外観、質感が低下するのと同時に、塗膜表面に形成される凹凸も少ないことから触感としても好ましくない。シリコーン樹脂粒子(a)の含有率が60重量%を超える場合は、バインダー(b)が少なくなり、塗膜強度が低下したり、塗膜表面にクラックが発生するなどの不具合が生じるので外観的に好ましくない。
本発明の塗料組成物において、艶消しであることはスリガラス調の一つとして重要であり、硬質シリコーン樹脂粒子のみを使用した塗料組成物も可能であるが、この場合シリコーン樹脂粒子の含有量は、塗料固形分として50〜60重量%の範囲で、良好な艶消し外観を有すると共に質感や触感にも優れたものが得られる。
【0026】
本発明の塗料組成物には、前記シリコーン樹脂粒子(a)以外に、必要に応じて無機系や有機系の艶消し用の体質顔料(a')を添加して、塗膜の凹凸の凸状の部分に存在させることができる。無機系の艶消し用の体質顔料としては、不定形のシリカ粉末、炭酸カルシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末などが挙げられる。有機系の艶消し用の体質顔料としては、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの有機物の粉末やこれら有機物をワックス状にしたものが挙げられる。さらに有機系の粉末の範疇として、球状の架橋アクリル樹脂粒子や架橋ウレタン樹脂粒子なども添加することができる。体質顔料(a')は意匠性塗料組成物中に2.0重量%以下、好ましくは0.5〜1.5重量%含有する(これらは全て、固形分基準を示す)。
体質顔料の添加は、得られる樹脂塗膜の60度光沢値が10以上、好ましくは20以上になるように行う。光沢値が10未満ではスリガラス調の塗膜の外観、質感、耐傷つき性に影響を与える可能性があり、添加することは好ましくない。
【0027】
本発明の塗料組成物には、必要に応じて、着色顔料(顔料には、染料も含む)、艶消し用以外の体質顔料、レベリング剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造粘剤などの公知の成分を添加することも可能であり、塗装時には任意の割合で有機溶剤などで稀釈することが可能である。
【0028】
本発明の塗料組成物を塗装する基材は特に限定されないが、特にプラスティックス成形品などを塗装処理することによって、スリガラスと同様な外観、触感、質感を有し且つガラスの有する破損しやすさを解決することが可能となる。
プラスティックス基材は限定されるものではなく、一般的に使用できるものが使用可能であり、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂などが例示される。
【0029】
本発明の塗料組成物の塗装方法としてはスプレー塗装が好ましく、ロールコート、カーテンコート、はけ塗りなども可能である。
【0030】
本発明の塗料組成物は意匠性塗料組成物である。本発明の塗料組成物は上記基材に直接塗装してもよいし、他の樹脂などで塗装したものの上に塗装してもよい。好ましくは、1回塗装で行われる。
【0031】
本発明の塗料組成物を塗装処理して得られる塗膜の厚みは、5〜20μm、好ましくは8〜15μmである。
【0032】
(実施例)
以下、実施例により本発明を説明するが、これによって本発明は限定されるものではない。
使用原料
シリコーン樹脂粒子(a)
a1:トスパール120(GE東芝シリコーン(株)製;球状;平均粒子径2.0μm、フィルム状にしたときの鉛筆硬度2H以上)
a2:トスパール145A(GE東芝シリコーン(株)製;球状;平均粒子径4.5μm、フィルム状にしたときの鉛筆硬度2H以上)
a3:トスパール2000B(GE東芝シリコーン(株)製;球状;平均粒子径6.0μm、フィルム状にしたときの鉛筆硬度2H以上)
a4:トスパール3120(GE東芝シリコーン(株)製;球状;平均粒子径12.0μm、フィルム状にしたときの鉛筆硬度2H以上)
体質顔料等(a')
a'1:TE10P2HO(岐阜セラック(株)製ポリエチレンワックスのトルエン/酢酸エチル混合溶剤溶液;固形分10%)
a'2:ニップシールE1011(日本シリカ工業(株)製シリカ微粉末艶消し顔料)
a'3:TS−100(デグサ(株)製シリカ微粉末艶消し用顔料)
a'4:MBX−8(積水化学(株)製、架橋アクリル系硬質粒状粒子;平均粒子径8μm)
【0033】
[実施例1]
(バインダー(b1)の調製)
アロニックスM402(東亜合成(株)製多官能アクリルモノマー(ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート))45.0g、アロニックスM309(東亜合成(株)製多官能アクリルモノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート))5.0g、光開始剤としてイルガキュアー#184(チバガイギー(株)製)1.0g、トルエン49.0gを加え、紫外線硬化型バインダーを調製した。バインダー自体の塗膜の紫外線硬化時の鉛筆硬度は3Hであった。
(スリガラス調塗料組成物の調製)
前記バインダー(b1)を50g(固形分25.5g)、トスパール120(球状;平均粒子径2.0μm)30g、TE10P2HO(岐阜セラック(株)製ポリエチレンワックスのトルエン/酢酸エチル混合溶剤溶液;固形分10%)8.0g、ノルマルブタノール12.0gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料組成物固形分中に53.3重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.4重量%併用した。
【0034】
[実施例2]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)50g、トスパール145A(球状;平均粒子径4.5μm)28g、上記TE10P2HOを8g、ノルマルブタノール14gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で51.6重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.5重量%併用した。
【0035】
[実施例3]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)50g、トスパール2000B(球状;平均粒子径6.0μm)27g、上記TE10P2HOを8g、ノルマルブタノール15gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で50.7重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.5重量%併用した。
【0036】
[実施例4]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)50g、トスパール3120(球状;平均粒子径12.0μm)25g、上記TE10P2HOを10g、ノルマルブタノール15gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で48.5重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.9重量%併用した。
【0037】
[実施例5]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)50g、上記トスパール145Aを12g、TE10P2HOを8.0g、ニップシールE1011(日本シリカ工業(株)製シリカ微粉末艶消し顔料)3.0g、トルエン10g、酢酸エチル17gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で29.1重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.9重量%とシリカ微粉末を7.3重量%併用した実施例である。
【0038】
[比較例1]
バインダー(b1)80g、TS−100(デグサ(株)製シリカ微粉末艶消し用顔料)8g、トルエン12gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。シリコーン樹脂粒子は含まず、艶消し用体質顔料としてシリカ微粉末16.4重量%を使用した例である。
【0039】
[比較例2]
バインダー(b1)60g、上記TE10P2HOを40gディスパー攪拌して塗料組成物を得た。シリコーン樹脂粒子は含まず、艶消し用体質顔料としてポリエチレンワックスを使用した例である。
【0040】
[比較例3]
バインダー(b1)50g、MBX−8(積水化学(株)製、架橋アクリル系硬質粒状粒子;平均粒子径8μm)27g、上記TE10P2HOを8g、ノルマルブタノール15.0gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。シリコーン樹脂粒子は含まず、平均粒子径8μmの架橋アクリル系球状硬質粒子を艶消し顔料として使用した例である。
【0041】
[比較例4]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)40g、上記トスパール145Aを40g、TE10P2HOを5g、ノルマルブタノール15gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で65.7重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを0.8重量%併用した。
【0042】
[比較例5]
(スリガラス調塗料組成物の調製)
バインダー(b1)90g、上記トスパール145Aを3g、TE10P2HOを7g、ディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で6重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックスを1.4重量%併用した。
【0043】
[比較例6]
(バインダー(b2)の調製)
前記アロニックスM402を20.0g、アロニックスM309を30.0g、イルガキュアー#184を1.0g、トルエン49.0gを加え、紫外線硬化型バインダーを調製した。バインダー自体の塗膜の紫外線硬化時の鉛筆硬度はBであった。
(スリガラス調塗料組成物の調製)
上記塗料用バインダー(b2)を50g、前記トスパール145Aを30g、TE10P2HOを8.0g、ノルマルブタノール12.0gをディスパー攪拌して塗料組成物を得た。
シリコーン樹脂粒子の含有量は塗料固形分で53.3重量%であり、体質顔料としてポリエチレンワックス1.4重量%を併用した例である。
【0044】
(塗料の調製)
実施例および比較例で調製した塗料組成物を、ブチルセルソルブ25重量部、イソプロピルアルコール25重量部、トルエン25重量部、メチルイソブチルケトン15重量部、ダイアセトンアルコール10重量部からなる塗料用シンナーで稀釈し、塗料粘度がフォードカップ#4で11秒になるように調製した。
(塗装方法)
前記方法により調製した塗料を、厚さ1mmの透明なPMMA板にスプレー塗装を行ない60℃に設定されたボックス型乾燥炉で5分間乾燥を行った後、紫外線照射を行い硬化させた。紫外線照射はハロゲンランプ式照射装置を用い積算エネルギーとして500mJ/cm2の照射を行った。
【0045】
試験は外観評価、触感評価、質感評価と耐傷付き性について行った。耐傷付き性は、傷によって物品の高級感などの質感が低下するために評価項目に加えた。
外観評価は目視による評価であり、○はムラがなく、クラックなどの外観不良がないものでスリガラス調の艶消し感のあるものを示し、△はムラがあり、スリガラス調の外観を損なうものを示し、×はクラックがあり、艶消し感のないものを示す。
触感評価は塗面に触れた時の触感による評価であり、○はサラサラとしたきめの細かい触感を示し、△はヌメリ感があったりツルツルした触感があるものを示し、×はゴム状触感があったりザラつきのある触感があるものを示す。
質感は前述したように、爪で塗膜を引っかいた時の感触や音などを実物のスリガラスと比較した評価であり、○は実物のスリガラスと同等のきめの細かさがあり、こすり合わせた時にスリガラス特有の傷つき音がするものを示し、△はきめの細かさがなく、こすり合わせた時に傷つき音が少ないものを示し、×はザラツキ感とともに、こすり合わせた時に傷つき音がしないものを示す。
耐傷付性は爪で傷付けた場合の傷の付き難さを相対的に評価したものであり、○はほとんど傷がつかないものを示し、△は多少傷がつくものを示し、×は傷が目立ち実用に耐えられないものを示す。
試験結果を表1にまとめるが、官能試験的な性格を有する評価のため、各試験結果を以下に説明する。
【0046】
実施例1の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観は得られたが、触感としてややヌメリ感があり、質感としてもガラスのイメージとは異なる。耐傷付性は良好。
実施例2の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観が得られ、触感としてサラサラとした良好な触感が得られた。質感もスリガラス同様な質感が得られ、耐傷付性も良好。
実施例3の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観が得られ、触感として粗目のサラサラとした良好な触感が得られた。質感もスリガラス同様な質感が得られ、耐傷付性も良好。
実施例4の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観は得られるが、触感として粗さが強かった。質感はスリガラス同様な質感が得られ、耐傷付性も良好。
実施例5の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観が得られ、触感としてサラサラとした良好な触感が得られた。質感もスリガラス同様な質感が得られたが、耐傷付性はやや劣る。
比較例1の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観が得られ、触感として木目の細かいサラサラとした良好な触感が得られた。質感は通常のツヤケシ塗膜と同様、スリガラスにみられる質感は得られなかった。耐傷付性は極めて悪く、この点からも高級感は無かった。
比較例2の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観は得らたが、触感としてはヌメリ感のあるツヤケシでスリガラスとしての触感とは異なった。質感もスリガラスとは異なった。耐傷付性は比較例1よりは良好であった。
比較例3の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観は得られたが、触感はザラつきがあった。実施例3や4と比較した場合の決定的な相違は質感でみられた。触れた時の冷たい感触を想像させるような傷付き音は無く、こすり合わせた場合もスリガラスとしての質感は得られなかった。耐傷付性は良好であった。
比較例4の塗膜:塗膜に微細なクラックが多く発生し、外観は不良。触感としてサラサラとした良好な触感が得られたが、質感はスリガラス同様の質感が得られたが耐傷付性は不良。
比較例5の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観は得らず、触感もツルツルとして不良。質感もスリガラスとは異なり通常のガラス状。耐傷付性は良好。
比較例6の塗膜:スリガラス調のツヤケシ外観が得られたが、触感としてはヌメリ感がありスリガラスとは異質でありソフト感があった。質感もスリガラスとは異質。耐傷付性は良好。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径1.5〜12μmで、鉛筆硬度F以上であるシリコーン樹脂粒子(a)を10〜60重量%、及び、バインダー(b)のみの塗膜の硬度が鉛筆硬度F以上であるバインダー(b)90〜40重量%(上記シリコーン樹脂粒子(a)とバインダー(b)の合計は100重量%である)からなる意匠性塗料組成物。
【請求項2】
さらに、艶消し用の体質顔料(a')を意匠性塗料組成物中に2.0重量%以下含有する請求項1記載の意匠性塗料組成物。
【請求項3】
バインダー(b)が、(メタ)アクリル基を有する化合物(m)、及び活性化学種発生化合物(u)からなり、活性化学種の発生により硬化するバインダーである請求項1又は2に記載の意匠性塗料組成物。
【請求項4】
紫外線の照射によって架橋硬化する請求項3に記載の意匠性塗料組成物。
【請求項5】
シリコーン樹脂粒子(a)が、シリコーン樹脂粒子のみをフィルム状にした場合の硬度が鉛筆硬度で2H以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の意匠性塗料組成物。
【請求項6】
シリコーン樹脂粒子(a)が球形である請求項1〜5のいずれか1項に記載の意匠性塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の意匠性塗料組成物を硬化してなる塗膜。
【請求項8】
スリガラス状の外観、質感および触感を有する請求項7に記載の塗膜。

【公開番号】特開2006−22148(P2006−22148A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199268(P2004−199268)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】