スリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法
【課題】使用寿命の大幅な延長を図ることができるとともに、その使用方法の自由度を高めることができるスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部34と、を備えたスリーブ印刷版30であって、円筒状をなすスリーブ体31を有し、このスリーブ体31の外周面に版本体33が配設されており、位置決め用切欠部34は、スリーブ体31の周方向に複数形成されている。
【解決手段】印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部34と、を備えたスリーブ印刷版30であって、円筒状をなすスリーブ体31を有し、このスリーブ体31の外周面に版本体33が配設されており、位置決め用切欠部34は、スリーブ体31の周方向に複数形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のスリーブ印刷版は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキソ印刷、凸版印刷の分野において広く使用されている。また、特許文献2に記載されているように、缶等の円筒物に対するオフセット印刷の分野においても、スリーブ印刷版が適用されている。
このスリーブ印刷版では、画像パターンの周方向位置がスリーブ体上で予め設定されているので、スリーブ体とシリンダとの位置合わせを行うことで画像パターンの見当合わせを行うことができ、画像パターンの交換作業に掛かる時間と労力を大幅に削減することが可能となる。
【0003】
前述のスリーブ印刷版には、スリーブ体がなす円筒の軸線方向端部に向けて開口した位置決め用切欠部が設けられており、この位置決め用切欠部が前記シリンダに立設されたガイドピンと係合することによって、スリーブ印刷版とシリンダとの周方向の相対位置及び軸線方向の相対位置が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326938号公報
【特許文献2】特開2006−272682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のスリーブ印刷版においては、その収縮力が小さくシリンダとの固定が不十分であった場合には、シリンダを回転させた際に、シリンダのピンがスリーブ印刷版の位置決め用切欠部をシリンダ回転方向に押圧することによって回転トルクがスリーブ印刷版に伝達されることになる。すると、位置決め用切欠部に過度の荷重が負荷されることになり、位置決め用切欠部が早期に塑性変形してしまうおそれがあった。位置決め用切欠部が塑性変形した場合には、スリーブ印刷版の位置決めを精度良く行うことができず、印刷品位が低下してしまうことになる。これにより、スリーブ印刷版の版本体等が健全な場合でもスリーブ印刷版を廃棄することになり、スリーブ印刷版の使用寿命が大幅に短くなってしまうといった問題があった。
【0006】
また、スリーブ印刷版の外周面に形成された版本体の画像パターンとシリンダのガイドピンとの周方向位置が位置決め用切欠部によって決定されていることから、スリーブ印刷版の使用方法が限定されてしまうといった問題があった。例えば、2つのシリンダを有する印刷機において、一のシリンダには、位置決め用切欠部よりも回転方向前方側に版本体が配置されたスリーブ印刷版を使用し、他のシリンダには、位置決め用切欠部よりも回転方向後方側に版本体が配置されたスリーブ印刷版を使用する場合には、一のシリンダと他のシリンダとで同一の画像パターンを印刷する場合であっても、2種類のスリーブ印刷版を用いる必要があった。
【0007】
また、複数の版本体を設けたスリーブ印刷版を用いる場合、版本体に対してインクを供給するインキ付けロールは、複数の版本体で共用されることになる。ここで、一の版本体にインクを供給した後、他の版本体にインクを供給する際には、インキ付けロールには十分にインクが付着しておらず、インクの供給を安定して行うことができなかった。インクの供給を確実に行うために多量のインクを使用した場合には、余剰のインクが飛散し、印刷品質が劣化するといった問題があった。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、使用寿命の大幅な延長を図ることができるとともに、その使用方法の自由度を高めることができるスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係るスリーブ印刷版は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版であって、円筒状をなすスリーブ体を有し、このスリーブ体の外周面に前記版本体が配設されており、前記位置決め用切欠部は、前記スリーブ体の周方向に複数形成されていることを特徴とすることを特徴としている。
【0010】
この構成のスリーブ印刷版によれば、シリンダのガイド部材に係合される位置決め用切欠部が、前記スリーブ体の周方向に複数形成されているので、一の位置決め用切欠部が変形してしまった場合でも、版本体が摩耗していなければ、他の位置決め用切欠部をガイド部材に係合させることでスリーブ印刷版を使用することができる。よって、スリーブ印刷版の使用寿命を大幅に延長することが可能となる。
また、位置決め用切欠部を選択して使用することにより、シリンダのガイド部材と版本体の画像パターンとの相対位置を変更することができ、このスリーブ印刷版の使用方法の自由度を向上することができる。
【0011】
ここで、前記スリーブ体の外周面に複数の前記版本体が軸対称に配設されており、これら複数の前記版本体のそれぞれに対応するように、複数の前記位置決め用切欠部が軸対称に形成されていることが好ましい。
この場合、複数の前記版本体のそれぞれに対応するように軸対称に形成された複数の前記位置決め用切欠部を選択して使用することにより、前記スリーブ体の外周面に形成された複数の前記版本体を軸対称位置で使用することができる。
【0012】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが同一とされている構成としてもよい。
この場合、複数の版本体が同一の画像とされているので、一の位置決め用切欠部が変形した場合に他の位置決め用切欠部を使用しても、版本体同士の相対位置の調整を行うことなく、当該スリーブ印刷版を用いることができる。
【0013】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが互いに異なる構成としてもよい。
この場合、シリンダのガイドピンに係合する位置決め用切欠部を選択的に使用することで、シリンダのガイドピンと一の版本体の画像パターン及び他の版本体の画像パターンとの相対位置を調整することができる。
【0014】
位置決め用切欠部の開口端にブリッジ部が形成されていることが好ましい。
この場合、位置決め用切欠部の開口端にブリッジ部を形成することにより、現時点で使用しない位置決め用切欠部を誤って使用してしまうことを防止できる。
【0015】
本発明のスリーブ印刷版の製造方法は、前述のスリーブ印刷版を製造するスリーブ印刷版の製造方法であって、円筒状をなすスリーブ体に位置決め用切欠部を形成する位置決め用切欠部形成工程と、前記スリーブ体に前記画像パターンを形成する画像パターン形成工程と、を有し、外周面に前記スリーブ体が装着可能な回転ドラムと、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備えたレーザ加工機を用いて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を、同一の前記回転ドラムに前記スリーブ体を装着した状態で行うことを特徴としている。
【0016】
この構成のスリーブ印刷版の製造方法によれば、スリーブ体を同一の前記回転ドラムに装着した状態で、位置決め用切欠部形成工程と画像パターン形成工程とが行われるので、2以上の位置決め用切欠部と版本体の画像パターンとの相対位置にズレが生じるおそれがなく、高品位な印刷が可能なスリーブ印刷版を製造することが可能となる。
【0017】
前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を実施することが好ましい。
この場合、画像パターンと位置決め用切欠部とが画像データとして記録されていることから、複数のレーザ加工装置においてそれぞれスリーブ印刷版を製造した場合であっても、前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとの相対位置を精度良く一致させることができる。
【0018】
また、本発明の印刷装置は、前述のスリーブ印刷版を用いる印刷装置であって、前記スリーブ印刷版が装着されるシリンダを有し、前記シリンダには、前記スリーブ印刷版に設けられた位置決め用切欠部と係合するガイド部材が設けられており、前記ガイド部材は、前記シリンダの周方向位置を変更可能とされていることを特徴としている。
【0019】
この構成の印刷装置によれば、ガイド部材の周方向位置を変更可能であることから、使用する位置決め用切欠部を変更した際に、スリーブ印刷版に設けられた複数の位置決め用切欠部に応じてガイド部材の周方向位置を変更させることで、シリンダと版本体の周方向の相対位置が変化してしまうことを防止することができる。
【0020】
さらに、本発明のスリーブ印刷版を用いた印刷方法は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版を用いた印刷方法であって、前記スリーブ印刷版は、一の位置決め用切欠部と、当該一の位置決め用切欠部に対して軸対称に形成された他の位置決め用切欠部と、を有し、前記スリーブ体の外周面には、前記一の位置決め用切欠部に対応する位置に版本体が配設され、他の位置決め用切欠部に対応する位置には版本体が配設されておらず、前記印刷装置に設けられた複数の前記シリンダに、それぞれ前記スリーブ印刷版が装着されており、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されていることを特徴としている。
【0021】
この構成のスリーブ印刷版を用いた印刷方法によれば、スリーブ印刷版に一の版本体が配設されているので、スリーブ印刷版が一回転する際にこの版本体にのみインクを供給すればよく、インクの供給を確実に行うことができ、発色の良い印刷を実施することが可能となる。また、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されているので、一のシリンダと他のシリンダとで、版本体が複数のブランケットを備えたブランケットホイールに接触するタイミングが異なることになり、複数のブランケットに対して版本体の画像を効率よく転写することができる。なお、3以上のシリンダを有する場合、少なくとも1つのシリンダにおける版本体の周方向位置が、他のシリンダにおける版本体の周方向位置に対して軸対称となるように配置されていればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、使用寿命の大幅な延長を図ることができるとともに、その使用方法の自由度を高めることができるスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視説明図である。
【図2】図1のスリーブ印刷版を軸線方向から見た説明図である。
【図3】本実施形態であるスリーブ印刷版の製造方法を実施するレーザ加工装置の概略図である。
【図4】図1及び図2に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の概略図である。
【図5】図1及び図2に示すスリーブ印刷版が装着されるシリンダの概略図である。
【図6】シリンダに図1及び図2に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図7】シリンダに図1及び図2に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視説明図である。
【図9】図8のスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図10】図8及び図9に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の一部拡大説明図である。
【図11】図10における一の版胴のシリンダに図8及び図9に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図12】図10における他の版胴のシリンダに図8及び図9に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態であるスリーブ印刷版を軸線方向から見た説明図である。
【図14】図13に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の一部拡大説明図である。
【図15】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の展開説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。
このスリーブ印刷版30は、図1及び図2に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体31と、スリーブ体31の外周側に配設された版材32と、を備えている。
【0025】
スリーブ体31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成されており、外径が100mm以上300mm以下、軸線O方向長さが50mm以上600mm以下、肉厚が0.1mm以上1.0mm以下とされている。
版材32は、例えばレーザ光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり、肉厚が0.5mm以上1.0mm以下の円筒状をなしている。この版材32の外周面には、画像パターンを有する凸版33が刻設されている。本実施形態では、図1及び図2に示すように、2つの凸版33が180°対向位置に形成されている。
【0026】
そして、スリーブ印刷版30の軸線O方向一端側(図1において左側)部分には、後述するオフセット印刷装置80のシリンダ21に立設されたガイドピン24と係合することによって、シリンダ21との周方向相対位置、軸線O方向相対位置を案内する位置決め用切欠部34が形成されている。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、4つの位置決め用切欠部34a,34b,34c,34dが、周方向に90°間隔で形成されている。
【0027】
位置決め用切欠部34a,34cは、凸版33が形成されていない非画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されている。
位置決め用切欠部34b,34dは、凸版33が形成された画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されている。なお、この位置決め用切欠部34B,34においては、その開口端(軸線O方向一端側部分)にブリッジ部35が形成されている。
すなわち、位置決め用切欠部34a,34b,34c、34dは、90°間隔で軸対称に配置されているのである。
【0028】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版30を製造する際に用いられるレーザ加工装置50について、図3を参照にして説明する。
【0029】
このレーザ加工装置50は、図3に示すように、円筒状をなすスリーブ素体40が装着される円筒面51Aを有する回転ドラム51及びこの回転ドラム51を回転可能に支持する軸支部52を有するスリーブ素体支持部53と、回転ドラム51を軸線Nを中心に回動させる回転駆動部55と、回転ドラム51に装着されたスリーブ素体40に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部60と、このレーザ光照射部60を回転ドラム51の軸線Nに平行な方向に移動させる直動部65と、これら回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御する制御部70と、を備えている。
【0030】
直動部65は、回転ドラム51の軸線Nに平行な方向に延在するガイドバー66と、このガイドバー66に沿って移動する支持部材67と、支持部材67の位置情報(軸線N方向位置情報Z)を得る軸線方向位置センサ68と、を備えている。
そして、レーザ光照射部60は、直動部65の支持部材67に支持され、軸線Nに平行な方向に移動可能な構成とされている。また、このレーザ光照射部60には、レーザ光の出力を調整する出力調整器61が設けられている。なお、本実施形態においては、レーザ光照射部60は炭酸ガスレーザで構成されている。
【0031】
制御部70は、位置決め用切欠部形成位置及び形状と切断位置及び形状を示す第1画像データ及び凸版33の画像パターンの位置及び形状を示す第2画像データを記憶する記憶手段71と、第1画像データに基づいて、切断及び位置決め用切欠部を形成する際のレーザ光のエネルギー密度と第2画像データに基づいて凸版33の画像パターンを形成する際のレーザ光のエネルギー密度とを、それぞれ調整するエネルギー密度調整部72と、を備えている。
そして、第1画像データ及び第2画像データに基づいて、回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御し、スリーブ素体40の切断、位置決め用切欠部34の形成、凸版33の形成を行う。
【0032】
次に、このような構成とされたレーザ加工装置50を用いたスリーブ印刷版30の製造方法について説明する。
まず、回転ドラム51の円筒面51Aにスリーブ素体40を装着する。このとき、スリーブ素体40の一端を回転ドラム51に嵌め込み、この状態でエア噴出機構によってエア孔からエアを噴出する。すると、このエアによってスリーブ素体40が拡径され、回転ドラム51にスリーブ素体40が装着される。このとき、スリーブ素体40の軸線Oと回転ドラム51の軸線Nが一致することになる。
【0033】
次に、位置決め用切欠部形成位置及び形状と切断位置及び形状を示す第1画像データと、凸版33の画像パターンの位置及び形状を示す第2画像データと、を記憶手段71に記憶させる。
そして、制御部70において、これら第1画像データ及び第2画像データに基づいて、回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御する。
【0034】
レーザ光照射部60からスリーブ素体40に向けてレーザ光を照射しながら、回転ドラム51を回転駆動部55によって回転させるとともに直動部65によって軸線N方向に移動させることにより、スリーブ素体40の外周面全体をレーザ光照射部60によって走査させる。
【0035】
ここで、第1画像データに該当する箇所では、エネルギー密度調整部72から出力調整器61に指令信号が発信されてレーザ光の出力が高く設定され、スリーブ素体40の肉厚全体が除去されることになる。これにより、スリーブ素体40の切断及び位置決め用切欠部34の形成が行われる。
一方、第2画像データに該当する箇所では、エネルギー密度調整部72から出力調整器61に指令信号が発信されてレーザ光の出力が低く設定され、スリーブ素体40の肉厚の一部が除去されることになる。これにより、スリーブ素体40に凸版33の画像パターンが形成される。
【0036】
このように、レーザ光の出力を調整することでレーザ光のエネルギー密度が調整され、スリーブ素体40の外周面全体をレーザ光照射部60によって1回走査させることによって、スリーブ素体40の切断、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成が行われる。
以上のようにして、本実施形態であるスリーブ印刷版30が製造される。
【0037】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版30を使用するオフセット印刷装置80について説明する。オフセット印刷装置80の概略を図4に示す。このオフセット印刷装置80は、円筒状をなす缶の外周面に印刷を施す缶の印刷装置である。
オフセット印刷装置80は、複数配置されたインク付着機構81と、缶移動機構91とで概略構成されている。
【0038】
インク付着機構81は、インクを供給するインカーユニット84と、このインカーユニット84に接触してインクを写し取った後、缶胴90の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケット83を複数枚備えるブランケットホイール82とから構成される。
インカーユニット84は、インク源85と、インク源85に接触してインクを受けるダクティングロール86と、このダクティングロール86に接続して複数のローラからなるインキ練りロール87と、このインキ練りロール87に接続するインキ付けロール88と、このインキ付けロール88に接続する版胴20とからなり、版胴20の外周面には缶胴90に転写する画像パターンを備えたスリーブ印刷版30が配設されている。ブランケットホイール82の外周面には、ブランケット83が複数枚備えられており、このブランケット83は、版胴20の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版33に接触するとともに、缶胴90に接触する構成とされている。
【0039】
缶移動機構91は、缶胴90を取り入れる缶シュータ92と、この缶シュータ92から供給された缶胴90を回転自在に保持するマンドレル93と、このマンドレル93に装着された缶胴90を、順次、インク付着機構81方向に回転移動させるマンドレルターレット94とで構成されている。
【0040】
版胴20は、図6及び図7に示すように、円柱状をなし、印刷装置80のシャフト部95に片持ち状態で回転自在に支持されるシリンダ21を有しており、このシリンダ21の外周側に、本実施形態であるスリーブ印刷版30が嵌着される。ここで、スリーブ印刷版30の内径とシリンダ21の外径とは略同一に設定されている。なお、シリンダ21の外周面にはエア孔22が複数形成されており、シリンダ21の端面に形成された導入孔23からエアを供給してエア孔22から噴出させることにより、スリーブ印刷版30の内径を押し広げてシリンダ21への着脱を行うように構成されている。すなわち、スリーブ印刷版30が元の内径に戻ろうとする収縮力によってシリンダ21の外周面にスリーブ印刷版30が強く密着することにより、スリーブ印刷版30とシリンダ21とが固定されているのである。
【0041】
そして、シリンダ21には、その外周面のシャフト部95側に、径方向外方に向けて突出したガイドピン24が設けられており、ガイドピン24にスリーブ印刷版30の位置決め用切欠部34が係合され、スリーブ印刷版30とシリンダ21との周方向位置及び軸線O方向位置が決定される構成とされている。
ここで、本実施形態では、図5に示すように、ガイドピン24は、シリンダ21の外周面に穿設されたピン孔25に着脱可能に装着されている。シリンダ21には、2つのピン孔25a,25bが周方向に90°間隔で形成されており、この2つのピン孔25a,25bに選択的にガイドピン24を装着する構成とされている。
【0042】
ここで、スリーブ印刷版30の非画像部の中間位置に形成された位置決め用切欠部34a,34cを使用する場合には、図6に示すように、ピン孔25aに装着されたガイドピン24を使用する。
一方、スリーブ印刷版30の画像部の中間位置に形成された位置決め用切欠部34b,34dを使用する場合には、図7に示すように、ピン孔25bに装着されたガイドピン24を使用する。
すなわち、ガイドピン24は、スリーブ印刷版30に形成された複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dに対応するように、周方向位置が変更可能とされているのである。
【0043】
このようにしてスリーブ印刷版30が配設されたオフセット印刷装置80においては、各々のインカーユニット84のインク源85から各々異なった色のインクが、ダクティングロール86、インキ練りロール87、インキ付けロール88を介して、版胴20の外周面に配設された凸版33に付着させられ、これら各色のインクが、回転するブランケットホイール82上のブランケット83にパターンとして乗せられ、このパターンがマンドレル93に保持された缶胴90に接触しながら印刷される。
【0044】
以上のような構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版30によれば、スリーブ体31の周方向に4つの位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dが形成されているので、例えば位置決め用切欠部34aが変形した場合でも、他の位置決め用切欠部34b、34c、34dを使用することができる。よって、スリーブ印刷版30の使用寿命を大幅に延長することができる。
【0045】
また、本実施形態では、位置決め用切欠部34a、34cが、凸版33が形成されていない非画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されているので、これら位置決め用切欠部34a、34cを、シリンダ21のピン孔25aに装着されたガイドピン24に係合させることで、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、位置決め用切欠部34b,34dが、凸版33が形成された画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されているので、これら位置決め用切欠部34b、34dを、シリンダ21のピン孔25bに装着されたガイドピン24に係合させることで、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができる。
【0047】
このように、本実施形態では、位置決め用切欠部34a、34cに対応するピン孔25aと位置決め用切欠部34b、34dに対応するピン孔25bとを備え、ガイドピン24の周方向位置を、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dに対応するように、変更可能とされているので、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dのいずれを使用した場合であっても、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができるのである。
【0048】
また、本実施形態では、位置決め用切欠部34b,34dには、スリーブ体31の端領域にブリッジ部35が形成されているので、現時点で使用しない位置決め用切欠部34b,34dを誤って使用してしまうことを防止できる。すなわち、ガイドピン24がシリンダ21のピン孔25aに装着された状態において、位置決め用切欠部34b,34dを誤って使用してしまうことがなく、凸版33,33の周方向位置が変化することなくスリーブ印刷版30を使用することができる。
なお、ガイドピン24をシリンダ21のピン孔25bに装着して、位置決め用切欠部34b,34dを使用する場合には、ブリッジ部35を切断除去すればよい。
【0049】
また、本実施形態であるスリーブ印刷版の製造方法によれば、スリーブ体31を同一の回転ドラム51に装着した状態で、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成を行っているので、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dと凸版33の画像パターンとの相対位置にズレが生じるおそれがなく、高品位な印刷が可能なスリーブ印刷版30を製造することが可能となる。
【0050】
さらに、位置決め用切欠部34と凸版33の画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成を行っているので、複数のレーザ加工装置においてそれぞれスリーブ印刷版30を製造した場合であっても、位置決め用切欠部34と凸版33の画像パターンとの相対位置を精度良く一致させることができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について、図8から図12を参照して説明する。
本実施形態であるスリーブ印刷版130は、図8及び図9に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体131と、スリーブ体131の外周側に配設された版材132と、を備えている。
ここで、本実施形態では、図8及び図9に示すように、スリーブ印刷版130には、1つの凸版133が配設されており、この凸版133の180°対向位置には凸版133は配設されていない。
【0052】
スリーブ印刷版130の軸線O方向一端側(図8において左側)部分には、オフセット印刷装置のシリンダ121に立設されたガイドピン124と係合することによって、シリンダ121との周方向相対位置、軸線O方向相対位置を案内する位置決め用切欠部134が形成されている。
本実施形態では、図8及び図9に示すように、2つの位置決め用切欠部134a,134bが、軸対称に配置されており、具体的には、周方向において180°対向位置に形成されている。すなわち、一の位置決め用切欠部134aに対応する位置に凸版133が配設され、他の位置決め用切欠部134bに対応する位置には凸版が配置されていないのである。
【0053】
このスリーブ印刷版130は、第1の実施形態において説明したオフセット印刷装置80において使用される。
ここで、図10に示すように、本実施形態においては、一の版胴120aのシリンダ121aにおける凸版133の周方向位置と、他の版胴120bのシリンダ121bにおける凸版133の周方向位置とが軸対称となるように、本実施形態では180°対称となるように配設されている。
【0054】
図11に示すように、一の版胴120aのシリンダ121aにおいては、ガイドピン124にスリーブ印刷版130の位置決め用切欠部134aが係合されている。
一方、図12に示すように、他の版胴120bのシリンダ121bにおいては、ガイドピン124にスリーブ印刷版130の位置決め用切欠部134bが係合されている。
【0055】
以上のような構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版130によれば、スリーブ体131の周方向に180°間隔で2つの位置決め用切欠部134a、134bが形成されているので、例えば位置決め用切欠部134aが変形した場合でも、他の位置決め用切欠部134bを使用することができる。よって、スリーブ印刷版130の使用寿命を延長することができる。
【0056】
また、本実施形態のスリーブ印刷版130においては、1つの凸版133が配設されており、この凸版133の180°対向位置には凸版133は配設されていないので、ガイドピン124に係合させる位置決め用切欠部134a、134bを選択することで、凸版133の位置を選択することが可能となる。
また、図10に示すように、1つの凸版133に対して2つのインキ付けロール88を用いてインクを供給することが可能であるため、インキ練りロール87へのインクの供給量を抑制することができ、余剰なインクの飛散を抑制することができる。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態について、図13、図14を参照して説明する。
本実施形態であるスリーブ印刷版230は、図13に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体231と、スリーブ体231の外周側に配設された版材232と、を備えている。
ここで、本実施形態であるスリーブ印刷版230は、図13に示すように、複数の凸版233が軸対称に配設されており、本実施形態では、第1凸版233a,第2凸版233bが180°対向位置に形成されている。
また、本実施形態であるスリーブ印刷版230においては、これら複数の凸版233のそれぞれに対応するように、複数の位置決め用切欠部234が軸対称に形成されており、本実施形態では、互いに180°対向位置に形成された第1凸版233a,第2凸版233bに対応するように、第1位置決め用切欠部234a、第2位置決め用切欠部234bが180°対向位置に形成されている。
ここで、第1凸版233a,第2凸版233bにおいては、互いに異なる画像パターンを有するものとされている。
【0058】
このスリーブ印刷版230は、第1の実施形態において説明したオフセット印刷装置において使用される。本実施形態においては、図14に示すように、複数の版胴220が設けられており、第1版胴220a、第3版胴220c、第5版胴220eにおいては、第1位置決め用切欠部234aにガイドピンが係合されており、第2版胴220b、第4版胴220d、第6版胴220fにおいては、第2位置決め用切欠部234bにガイドピンが係合されている。すなわち、第1版胴220a、第3版胴220c、第5版胴220eにおける第1凸版233a及び第2凸版233bの位置と、第2版胴220b、第4版胴220d、第6版胴220fにおける第1凸版233a及び第2凸版233bの位置とが、180°ずれた位置に配設されているのである。
【0059】
また、ブランケットホイール82には、図14に示すように、偶数枚のブランケット83が周方向に等間隔に配設されており、本実施形態では、10枚のブランケット83a、83b、83c、83d、83e、83f、83g、83h、83i、83jが配設されている。
【0060】
以上のような構成とされた本実施形態によれば、ブランケットホイール82に配設されたブランケット83a、83c、83e、83g、83iにおいては、すべての版胴220において第1凸版233aが接触することになり、ブランケット83b、83d、83f、83h、83jにおいては、すべての版胴220において第2凸版233bが接触することになる。よって、異なる画像パターンの印刷を同時に実施することができ、印刷効率を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、凸版の数や配置は本実施形態に限定されることはなく、図15に示すように、3以上の凸版333(333a、333b、333c)を備え、それぞれの凸版333に対応するように、3つの位置決め用切欠部334(334a、334b、334c)を備えたスリーブ印刷版330であってもよい。
また、位置決め用切欠部の数についても、本実施形態に限定されることはなく、3つや5つ以上であってもよい。
【0062】
さらに、第1の実施形態において、ガイドピンを装入するピン孔が2つ設けられたものとして説明したが、これに限定されることはなく、非画像部の領域に形成された位置決め用切欠部を係合させるガイドピンを備えたシリンダと、画像部の領域に形成された位置決め用切欠部を係合させるガイドピンを備えたシリンダと、をそれぞれ個別に構成してもよい。また、ピン孔を3つ以上設けても良い。
また、位置決め用切欠部を係合させるガイド部材としてガイドピンを例示して説明したが、これに限定されることはなく、位置決め用切欠部に係合してスリーブ印刷版の位置を案内するものであれば、その他の構造のものであってもよい。
さらに、オフセット印刷機の構成は、本実施形態に限定されることはなく、適宜設計変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
21、121、121 シリンダ
24、124 ガイドピン(ガイド部材)
30、130、230、330 スリーブ印刷版
33、133、233、333 凸版(版本体)
34、134、234、334 位置決め用切欠部
35 ブリッジ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のスリーブ印刷版は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキソ印刷、凸版印刷の分野において広く使用されている。また、特許文献2に記載されているように、缶等の円筒物に対するオフセット印刷の分野においても、スリーブ印刷版が適用されている。
このスリーブ印刷版では、画像パターンの周方向位置がスリーブ体上で予め設定されているので、スリーブ体とシリンダとの位置合わせを行うことで画像パターンの見当合わせを行うことができ、画像パターンの交換作業に掛かる時間と労力を大幅に削減することが可能となる。
【0003】
前述のスリーブ印刷版には、スリーブ体がなす円筒の軸線方向端部に向けて開口した位置決め用切欠部が設けられており、この位置決め用切欠部が前記シリンダに立設されたガイドピンと係合することによって、スリーブ印刷版とシリンダとの周方向の相対位置及び軸線方向の相対位置が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326938号公報
【特許文献2】特開2006−272682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のスリーブ印刷版においては、その収縮力が小さくシリンダとの固定が不十分であった場合には、シリンダを回転させた際に、シリンダのピンがスリーブ印刷版の位置決め用切欠部をシリンダ回転方向に押圧することによって回転トルクがスリーブ印刷版に伝達されることになる。すると、位置決め用切欠部に過度の荷重が負荷されることになり、位置決め用切欠部が早期に塑性変形してしまうおそれがあった。位置決め用切欠部が塑性変形した場合には、スリーブ印刷版の位置決めを精度良く行うことができず、印刷品位が低下してしまうことになる。これにより、スリーブ印刷版の版本体等が健全な場合でもスリーブ印刷版を廃棄することになり、スリーブ印刷版の使用寿命が大幅に短くなってしまうといった問題があった。
【0006】
また、スリーブ印刷版の外周面に形成された版本体の画像パターンとシリンダのガイドピンとの周方向位置が位置決め用切欠部によって決定されていることから、スリーブ印刷版の使用方法が限定されてしまうといった問題があった。例えば、2つのシリンダを有する印刷機において、一のシリンダには、位置決め用切欠部よりも回転方向前方側に版本体が配置されたスリーブ印刷版を使用し、他のシリンダには、位置決め用切欠部よりも回転方向後方側に版本体が配置されたスリーブ印刷版を使用する場合には、一のシリンダと他のシリンダとで同一の画像パターンを印刷する場合であっても、2種類のスリーブ印刷版を用いる必要があった。
【0007】
また、複数の版本体を設けたスリーブ印刷版を用いる場合、版本体に対してインクを供給するインキ付けロールは、複数の版本体で共用されることになる。ここで、一の版本体にインクを供給した後、他の版本体にインクを供給する際には、インキ付けロールには十分にインクが付着しておらず、インクの供給を安定して行うことができなかった。インクの供給を確実に行うために多量のインクを使用した場合には、余剰のインクが飛散し、印刷品質が劣化するといった問題があった。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、使用寿命の大幅な延長を図ることができるとともに、その使用方法の自由度を高めることができるスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係るスリーブ印刷版は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版であって、円筒状をなすスリーブ体を有し、このスリーブ体の外周面に前記版本体が配設されており、前記位置決め用切欠部は、前記スリーブ体の周方向に複数形成されていることを特徴とすることを特徴としている。
【0010】
この構成のスリーブ印刷版によれば、シリンダのガイド部材に係合される位置決め用切欠部が、前記スリーブ体の周方向に複数形成されているので、一の位置決め用切欠部が変形してしまった場合でも、版本体が摩耗していなければ、他の位置決め用切欠部をガイド部材に係合させることでスリーブ印刷版を使用することができる。よって、スリーブ印刷版の使用寿命を大幅に延長することが可能となる。
また、位置決め用切欠部を選択して使用することにより、シリンダのガイド部材と版本体の画像パターンとの相対位置を変更することができ、このスリーブ印刷版の使用方法の自由度を向上することができる。
【0011】
ここで、前記スリーブ体の外周面に複数の前記版本体が軸対称に配設されており、これら複数の前記版本体のそれぞれに対応するように、複数の前記位置決め用切欠部が軸対称に形成されていることが好ましい。
この場合、複数の前記版本体のそれぞれに対応するように軸対称に形成された複数の前記位置決め用切欠部を選択して使用することにより、前記スリーブ体の外周面に形成された複数の前記版本体を軸対称位置で使用することができる。
【0012】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが同一とされている構成としてもよい。
この場合、複数の版本体が同一の画像とされているので、一の位置決め用切欠部が変形した場合に他の位置決め用切欠部を使用しても、版本体同士の相対位置の調整を行うことなく、当該スリーブ印刷版を用いることができる。
【0013】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが互いに異なる構成としてもよい。
この場合、シリンダのガイドピンに係合する位置決め用切欠部を選択的に使用することで、シリンダのガイドピンと一の版本体の画像パターン及び他の版本体の画像パターンとの相対位置を調整することができる。
【0014】
位置決め用切欠部の開口端にブリッジ部が形成されていることが好ましい。
この場合、位置決め用切欠部の開口端にブリッジ部を形成することにより、現時点で使用しない位置決め用切欠部を誤って使用してしまうことを防止できる。
【0015】
本発明のスリーブ印刷版の製造方法は、前述のスリーブ印刷版を製造するスリーブ印刷版の製造方法であって、円筒状をなすスリーブ体に位置決め用切欠部を形成する位置決め用切欠部形成工程と、前記スリーブ体に前記画像パターンを形成する画像パターン形成工程と、を有し、外周面に前記スリーブ体が装着可能な回転ドラムと、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備えたレーザ加工機を用いて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を、同一の前記回転ドラムに前記スリーブ体を装着した状態で行うことを特徴としている。
【0016】
この構成のスリーブ印刷版の製造方法によれば、スリーブ体を同一の前記回転ドラムに装着した状態で、位置決め用切欠部形成工程と画像パターン形成工程とが行われるので、2以上の位置決め用切欠部と版本体の画像パターンとの相対位置にズレが生じるおそれがなく、高品位な印刷が可能なスリーブ印刷版を製造することが可能となる。
【0017】
前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を実施することが好ましい。
この場合、画像パターンと位置決め用切欠部とが画像データとして記録されていることから、複数のレーザ加工装置においてそれぞれスリーブ印刷版を製造した場合であっても、前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとの相対位置を精度良く一致させることができる。
【0018】
また、本発明の印刷装置は、前述のスリーブ印刷版を用いる印刷装置であって、前記スリーブ印刷版が装着されるシリンダを有し、前記シリンダには、前記スリーブ印刷版に設けられた位置決め用切欠部と係合するガイド部材が設けられており、前記ガイド部材は、前記シリンダの周方向位置を変更可能とされていることを特徴としている。
【0019】
この構成の印刷装置によれば、ガイド部材の周方向位置を変更可能であることから、使用する位置決め用切欠部を変更した際に、スリーブ印刷版に設けられた複数の位置決め用切欠部に応じてガイド部材の周方向位置を変更させることで、シリンダと版本体の周方向の相対位置が変化してしまうことを防止することができる。
【0020】
さらに、本発明のスリーブ印刷版を用いた印刷方法は、印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版を用いた印刷方法であって、前記スリーブ印刷版は、一の位置決め用切欠部と、当該一の位置決め用切欠部に対して軸対称に形成された他の位置決め用切欠部と、を有し、前記スリーブ体の外周面には、前記一の位置決め用切欠部に対応する位置に版本体が配設され、他の位置決め用切欠部に対応する位置には版本体が配設されておらず、前記印刷装置に設けられた複数の前記シリンダに、それぞれ前記スリーブ印刷版が装着されており、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されていることを特徴としている。
【0021】
この構成のスリーブ印刷版を用いた印刷方法によれば、スリーブ印刷版に一の版本体が配設されているので、スリーブ印刷版が一回転する際にこの版本体にのみインクを供給すればよく、インクの供給を確実に行うことができ、発色の良い印刷を実施することが可能となる。また、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されているので、一のシリンダと他のシリンダとで、版本体が複数のブランケットを備えたブランケットホイールに接触するタイミングが異なることになり、複数のブランケットに対して版本体の画像を効率よく転写することができる。なお、3以上のシリンダを有する場合、少なくとも1つのシリンダにおける版本体の周方向位置が、他のシリンダにおける版本体の周方向位置に対して軸対称となるように配置されていればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、使用寿命の大幅な延長を図ることができるとともに、その使用方法の自由度を高めることができるスリーブ印刷版、スリーブ印刷版の製造方法、印刷装置及びスリーブ印刷版を用いた印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視説明図である。
【図2】図1のスリーブ印刷版を軸線方向から見た説明図である。
【図3】本実施形態であるスリーブ印刷版の製造方法を実施するレーザ加工装置の概略図である。
【図4】図1及び図2に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の概略図である。
【図5】図1及び図2に示すスリーブ印刷版が装着されるシリンダの概略図である。
【図6】シリンダに図1及び図2に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図7】シリンダに図1及び図2に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態であるスリーブ印刷版の斜視説明図である。
【図9】図8のスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図10】図8及び図9に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の一部拡大説明図である。
【図11】図10における一の版胴のシリンダに図8及び図9に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図12】図10における他の版胴のシリンダに図8及び図9に示すスリーブ印刷版を装着する状態を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態であるスリーブ印刷版を軸線方向から見た説明図である。
【図14】図13に示すスリーブ印刷版が使用される印刷装置の一部拡大説明図である。
【図15】本発明の他の実施形態であるスリーブ印刷版の展開説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。
このスリーブ印刷版30は、図1及び図2に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体31と、スリーブ体31の外周側に配設された版材32と、を備えている。
【0025】
スリーブ体31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成されており、外径が100mm以上300mm以下、軸線O方向長さが50mm以上600mm以下、肉厚が0.1mm以上1.0mm以下とされている。
版材32は、例えばレーザ光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり、肉厚が0.5mm以上1.0mm以下の円筒状をなしている。この版材32の外周面には、画像パターンを有する凸版33が刻設されている。本実施形態では、図1及び図2に示すように、2つの凸版33が180°対向位置に形成されている。
【0026】
そして、スリーブ印刷版30の軸線O方向一端側(図1において左側)部分には、後述するオフセット印刷装置80のシリンダ21に立設されたガイドピン24と係合することによって、シリンダ21との周方向相対位置、軸線O方向相対位置を案内する位置決め用切欠部34が形成されている。
本実施形態では、図1及び図2に示すように、4つの位置決め用切欠部34a,34b,34c,34dが、周方向に90°間隔で形成されている。
【0027】
位置決め用切欠部34a,34cは、凸版33が形成されていない非画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されている。
位置決め用切欠部34b,34dは、凸版33が形成された画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されている。なお、この位置決め用切欠部34B,34においては、その開口端(軸線O方向一端側部分)にブリッジ部35が形成されている。
すなわち、位置決め用切欠部34a,34b,34c、34dは、90°間隔で軸対称に配置されているのである。
【0028】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版30を製造する際に用いられるレーザ加工装置50について、図3を参照にして説明する。
【0029】
このレーザ加工装置50は、図3に示すように、円筒状をなすスリーブ素体40が装着される円筒面51Aを有する回転ドラム51及びこの回転ドラム51を回転可能に支持する軸支部52を有するスリーブ素体支持部53と、回転ドラム51を軸線Nを中心に回動させる回転駆動部55と、回転ドラム51に装着されたスリーブ素体40に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部60と、このレーザ光照射部60を回転ドラム51の軸線Nに平行な方向に移動させる直動部65と、これら回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御する制御部70と、を備えている。
【0030】
直動部65は、回転ドラム51の軸線Nに平行な方向に延在するガイドバー66と、このガイドバー66に沿って移動する支持部材67と、支持部材67の位置情報(軸線N方向位置情報Z)を得る軸線方向位置センサ68と、を備えている。
そして、レーザ光照射部60は、直動部65の支持部材67に支持され、軸線Nに平行な方向に移動可能な構成とされている。また、このレーザ光照射部60には、レーザ光の出力を調整する出力調整器61が設けられている。なお、本実施形態においては、レーザ光照射部60は炭酸ガスレーザで構成されている。
【0031】
制御部70は、位置決め用切欠部形成位置及び形状と切断位置及び形状を示す第1画像データ及び凸版33の画像パターンの位置及び形状を示す第2画像データを記憶する記憶手段71と、第1画像データに基づいて、切断及び位置決め用切欠部を形成する際のレーザ光のエネルギー密度と第2画像データに基づいて凸版33の画像パターンを形成する際のレーザ光のエネルギー密度とを、それぞれ調整するエネルギー密度調整部72と、を備えている。
そして、第1画像データ及び第2画像データに基づいて、回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御し、スリーブ素体40の切断、位置決め用切欠部34の形成、凸版33の形成を行う。
【0032】
次に、このような構成とされたレーザ加工装置50を用いたスリーブ印刷版30の製造方法について説明する。
まず、回転ドラム51の円筒面51Aにスリーブ素体40を装着する。このとき、スリーブ素体40の一端を回転ドラム51に嵌め込み、この状態でエア噴出機構によってエア孔からエアを噴出する。すると、このエアによってスリーブ素体40が拡径され、回転ドラム51にスリーブ素体40が装着される。このとき、スリーブ素体40の軸線Oと回転ドラム51の軸線Nが一致することになる。
【0033】
次に、位置決め用切欠部形成位置及び形状と切断位置及び形状を示す第1画像データと、凸版33の画像パターンの位置及び形状を示す第2画像データと、を記憶手段71に記憶させる。
そして、制御部70において、これら第1画像データ及び第2画像データに基づいて、回転ドラム51、直動部65及びレーザ光照射部60の動作を制御する。
【0034】
レーザ光照射部60からスリーブ素体40に向けてレーザ光を照射しながら、回転ドラム51を回転駆動部55によって回転させるとともに直動部65によって軸線N方向に移動させることにより、スリーブ素体40の外周面全体をレーザ光照射部60によって走査させる。
【0035】
ここで、第1画像データに該当する箇所では、エネルギー密度調整部72から出力調整器61に指令信号が発信されてレーザ光の出力が高く設定され、スリーブ素体40の肉厚全体が除去されることになる。これにより、スリーブ素体40の切断及び位置決め用切欠部34の形成が行われる。
一方、第2画像データに該当する箇所では、エネルギー密度調整部72から出力調整器61に指令信号が発信されてレーザ光の出力が低く設定され、スリーブ素体40の肉厚の一部が除去されることになる。これにより、スリーブ素体40に凸版33の画像パターンが形成される。
【0036】
このように、レーザ光の出力を調整することでレーザ光のエネルギー密度が調整され、スリーブ素体40の外周面全体をレーザ光照射部60によって1回走査させることによって、スリーブ素体40の切断、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成が行われる。
以上のようにして、本実施形態であるスリーブ印刷版30が製造される。
【0037】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版30を使用するオフセット印刷装置80について説明する。オフセット印刷装置80の概略を図4に示す。このオフセット印刷装置80は、円筒状をなす缶の外周面に印刷を施す缶の印刷装置である。
オフセット印刷装置80は、複数配置されたインク付着機構81と、缶移動機構91とで概略構成されている。
【0038】
インク付着機構81は、インクを供給するインカーユニット84と、このインカーユニット84に接触してインクを写し取った後、缶胴90の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケット83を複数枚備えるブランケットホイール82とから構成される。
インカーユニット84は、インク源85と、インク源85に接触してインクを受けるダクティングロール86と、このダクティングロール86に接続して複数のローラからなるインキ練りロール87と、このインキ練りロール87に接続するインキ付けロール88と、このインキ付けロール88に接続する版胴20とからなり、版胴20の外周面には缶胴90に転写する画像パターンを備えたスリーブ印刷版30が配設されている。ブランケットホイール82の外周面には、ブランケット83が複数枚備えられており、このブランケット83は、版胴20の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版33に接触するとともに、缶胴90に接触する構成とされている。
【0039】
缶移動機構91は、缶胴90を取り入れる缶シュータ92と、この缶シュータ92から供給された缶胴90を回転自在に保持するマンドレル93と、このマンドレル93に装着された缶胴90を、順次、インク付着機構81方向に回転移動させるマンドレルターレット94とで構成されている。
【0040】
版胴20は、図6及び図7に示すように、円柱状をなし、印刷装置80のシャフト部95に片持ち状態で回転自在に支持されるシリンダ21を有しており、このシリンダ21の外周側に、本実施形態であるスリーブ印刷版30が嵌着される。ここで、スリーブ印刷版30の内径とシリンダ21の外径とは略同一に設定されている。なお、シリンダ21の外周面にはエア孔22が複数形成されており、シリンダ21の端面に形成された導入孔23からエアを供給してエア孔22から噴出させることにより、スリーブ印刷版30の内径を押し広げてシリンダ21への着脱を行うように構成されている。すなわち、スリーブ印刷版30が元の内径に戻ろうとする収縮力によってシリンダ21の外周面にスリーブ印刷版30が強く密着することにより、スリーブ印刷版30とシリンダ21とが固定されているのである。
【0041】
そして、シリンダ21には、その外周面のシャフト部95側に、径方向外方に向けて突出したガイドピン24が設けられており、ガイドピン24にスリーブ印刷版30の位置決め用切欠部34が係合され、スリーブ印刷版30とシリンダ21との周方向位置及び軸線O方向位置が決定される構成とされている。
ここで、本実施形態では、図5に示すように、ガイドピン24は、シリンダ21の外周面に穿設されたピン孔25に着脱可能に装着されている。シリンダ21には、2つのピン孔25a,25bが周方向に90°間隔で形成されており、この2つのピン孔25a,25bに選択的にガイドピン24を装着する構成とされている。
【0042】
ここで、スリーブ印刷版30の非画像部の中間位置に形成された位置決め用切欠部34a,34cを使用する場合には、図6に示すように、ピン孔25aに装着されたガイドピン24を使用する。
一方、スリーブ印刷版30の画像部の中間位置に形成された位置決め用切欠部34b,34dを使用する場合には、図7に示すように、ピン孔25bに装着されたガイドピン24を使用する。
すなわち、ガイドピン24は、スリーブ印刷版30に形成された複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dに対応するように、周方向位置が変更可能とされているのである。
【0043】
このようにしてスリーブ印刷版30が配設されたオフセット印刷装置80においては、各々のインカーユニット84のインク源85から各々異なった色のインクが、ダクティングロール86、インキ練りロール87、インキ付けロール88を介して、版胴20の外周面に配設された凸版33に付着させられ、これら各色のインクが、回転するブランケットホイール82上のブランケット83にパターンとして乗せられ、このパターンがマンドレル93に保持された缶胴90に接触しながら印刷される。
【0044】
以上のような構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版30によれば、スリーブ体31の周方向に4つの位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dが形成されているので、例えば位置決め用切欠部34aが変形した場合でも、他の位置決め用切欠部34b、34c、34dを使用することができる。よって、スリーブ印刷版30の使用寿命を大幅に延長することができる。
【0045】
また、本実施形態では、位置決め用切欠部34a、34cが、凸版33が形成されていない非画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されているので、これら位置決め用切欠部34a、34cを、シリンダ21のピン孔25aに装着されたガイドピン24に係合させることで、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、位置決め用切欠部34b,34dが、凸版33が形成された画像部の中間位置にそれぞれ形成され、互いに180°対向位置に配設されているので、これら位置決め用切欠部34b、34dを、シリンダ21のピン孔25bに装着されたガイドピン24に係合させることで、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができる。
【0047】
このように、本実施形態では、位置決め用切欠部34a、34cに対応するピン孔25aと位置決め用切欠部34b、34dに対応するピン孔25bとを備え、ガイドピン24の周方向位置を、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dに対応するように、変更可能とされているので、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dのいずれを使用した場合であっても、凸版33,33の周方向位置を変更することなく使用することができるのである。
【0048】
また、本実施形態では、位置決め用切欠部34b,34dには、スリーブ体31の端領域にブリッジ部35が形成されているので、現時点で使用しない位置決め用切欠部34b,34dを誤って使用してしまうことを防止できる。すなわち、ガイドピン24がシリンダ21のピン孔25aに装着された状態において、位置決め用切欠部34b,34dを誤って使用してしまうことがなく、凸版33,33の周方向位置が変化することなくスリーブ印刷版30を使用することができる。
なお、ガイドピン24をシリンダ21のピン孔25bに装着して、位置決め用切欠部34b,34dを使用する場合には、ブリッジ部35を切断除去すればよい。
【0049】
また、本実施形態であるスリーブ印刷版の製造方法によれば、スリーブ体31を同一の回転ドラム51に装着した状態で、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成を行っているので、複数の位置決め用切欠部34a、34b、34c、34dと凸版33の画像パターンとの相対位置にズレが生じるおそれがなく、高品位な印刷が可能なスリーブ印刷版30を製造することが可能となる。
【0050】
さらに、位置決め用切欠部34と凸版33の画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、位置決め用切欠部34の形成及び凸版33の画像パターンの形成を行っているので、複数のレーザ加工装置においてそれぞれスリーブ印刷版30を製造した場合であっても、位置決め用切欠部34と凸版33の画像パターンとの相対位置を精度良く一致させることができる。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について、図8から図12を参照して説明する。
本実施形態であるスリーブ印刷版130は、図8及び図9に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体131と、スリーブ体131の外周側に配設された版材132と、を備えている。
ここで、本実施形態では、図8及び図9に示すように、スリーブ印刷版130には、1つの凸版133が配設されており、この凸版133の180°対向位置には凸版133は配設されていない。
【0052】
スリーブ印刷版130の軸線O方向一端側(図8において左側)部分には、オフセット印刷装置のシリンダ121に立設されたガイドピン124と係合することによって、シリンダ121との周方向相対位置、軸線O方向相対位置を案内する位置決め用切欠部134が形成されている。
本実施形態では、図8及び図9に示すように、2つの位置決め用切欠部134a,134bが、軸対称に配置されており、具体的には、周方向において180°対向位置に形成されている。すなわち、一の位置決め用切欠部134aに対応する位置に凸版133が配設され、他の位置決め用切欠部134bに対応する位置には凸版が配置されていないのである。
【0053】
このスリーブ印刷版130は、第1の実施形態において説明したオフセット印刷装置80において使用される。
ここで、図10に示すように、本実施形態においては、一の版胴120aのシリンダ121aにおける凸版133の周方向位置と、他の版胴120bのシリンダ121bにおける凸版133の周方向位置とが軸対称となるように、本実施形態では180°対称となるように配設されている。
【0054】
図11に示すように、一の版胴120aのシリンダ121aにおいては、ガイドピン124にスリーブ印刷版130の位置決め用切欠部134aが係合されている。
一方、図12に示すように、他の版胴120bのシリンダ121bにおいては、ガイドピン124にスリーブ印刷版130の位置決め用切欠部134bが係合されている。
【0055】
以上のような構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版130によれば、スリーブ体131の周方向に180°間隔で2つの位置決め用切欠部134a、134bが形成されているので、例えば位置決め用切欠部134aが変形した場合でも、他の位置決め用切欠部134bを使用することができる。よって、スリーブ印刷版130の使用寿命を延長することができる。
【0056】
また、本実施形態のスリーブ印刷版130においては、1つの凸版133が配設されており、この凸版133の180°対向位置には凸版133は配設されていないので、ガイドピン124に係合させる位置決め用切欠部134a、134bを選択することで、凸版133の位置を選択することが可能となる。
また、図10に示すように、1つの凸版133に対して2つのインキ付けロール88を用いてインクを供給することが可能であるため、インキ練りロール87へのインクの供給量を抑制することができ、余剰なインクの飛散を抑制することができる。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態について、図13、図14を参照して説明する。
本実施形態であるスリーブ印刷版230は、図13に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ体231と、スリーブ体231の外周側に配設された版材232と、を備えている。
ここで、本実施形態であるスリーブ印刷版230は、図13に示すように、複数の凸版233が軸対称に配設されており、本実施形態では、第1凸版233a,第2凸版233bが180°対向位置に形成されている。
また、本実施形態であるスリーブ印刷版230においては、これら複数の凸版233のそれぞれに対応するように、複数の位置決め用切欠部234が軸対称に形成されており、本実施形態では、互いに180°対向位置に形成された第1凸版233a,第2凸版233bに対応するように、第1位置決め用切欠部234a、第2位置決め用切欠部234bが180°対向位置に形成されている。
ここで、第1凸版233a,第2凸版233bにおいては、互いに異なる画像パターンを有するものとされている。
【0058】
このスリーブ印刷版230は、第1の実施形態において説明したオフセット印刷装置において使用される。本実施形態においては、図14に示すように、複数の版胴220が設けられており、第1版胴220a、第3版胴220c、第5版胴220eにおいては、第1位置決め用切欠部234aにガイドピンが係合されており、第2版胴220b、第4版胴220d、第6版胴220fにおいては、第2位置決め用切欠部234bにガイドピンが係合されている。すなわち、第1版胴220a、第3版胴220c、第5版胴220eにおける第1凸版233a及び第2凸版233bの位置と、第2版胴220b、第4版胴220d、第6版胴220fにおける第1凸版233a及び第2凸版233bの位置とが、180°ずれた位置に配設されているのである。
【0059】
また、ブランケットホイール82には、図14に示すように、偶数枚のブランケット83が周方向に等間隔に配設されており、本実施形態では、10枚のブランケット83a、83b、83c、83d、83e、83f、83g、83h、83i、83jが配設されている。
【0060】
以上のような構成とされた本実施形態によれば、ブランケットホイール82に配設されたブランケット83a、83c、83e、83g、83iにおいては、すべての版胴220において第1凸版233aが接触することになり、ブランケット83b、83d、83f、83h、83jにおいては、すべての版胴220において第2凸版233bが接触することになる。よって、異なる画像パターンの印刷を同時に実施することができ、印刷効率を向上させることができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、凸版の数や配置は本実施形態に限定されることはなく、図15に示すように、3以上の凸版333(333a、333b、333c)を備え、それぞれの凸版333に対応するように、3つの位置決め用切欠部334(334a、334b、334c)を備えたスリーブ印刷版330であってもよい。
また、位置決め用切欠部の数についても、本実施形態に限定されることはなく、3つや5つ以上であってもよい。
【0062】
さらに、第1の実施形態において、ガイドピンを装入するピン孔が2つ設けられたものとして説明したが、これに限定されることはなく、非画像部の領域に形成された位置決め用切欠部を係合させるガイドピンを備えたシリンダと、画像部の領域に形成された位置決め用切欠部を係合させるガイドピンを備えたシリンダと、をそれぞれ個別に構成してもよい。また、ピン孔を3つ以上設けても良い。
また、位置決め用切欠部を係合させるガイド部材としてガイドピンを例示して説明したが、これに限定されることはなく、位置決め用切欠部に係合してスリーブ印刷版の位置を案内するものであれば、その他の構造のものであってもよい。
さらに、オフセット印刷機の構成は、本実施形態に限定されることはなく、適宜設計変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
21、121、121 シリンダ
24、124 ガイドピン(ガイド部材)
30、130、230、330 スリーブ印刷版
33、133、233、333 凸版(版本体)
34、134、234、334 位置決め用切欠部
35 ブリッジ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版であって、
円筒状をなすスリーブ体を有し、このスリーブ体の外周面に前記版本体が配設されており、
前記位置決め用切欠部は、前記スリーブ体の周方向に複数形成されていることを特徴とするスリーブ印刷版。
【請求項2】
前記スリーブ体の外周面に複数の前記版本体が軸対称に配設されており、これら複数の前記版本体のそれぞれに対応するように、複数の前記位置決め用切欠部が軸対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ印刷版。
【請求項3】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが同一とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版。
【請求項4】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが互いに異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版。
【請求項5】
複数の位置決め用切欠部のうちの一部には、前記スリーブ体の端部領域にブリッジ部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版を製造するスリーブ印刷版の製造方法であって、
円筒状をなすスリーブ体に位置決め用切欠部を形成する位置決め用切欠部形成工程と、前記スリーブ体に前記画像パターンを形成する画像パターン形成工程と、を有し、
外周面に前記スリーブ体が装着可能な回転ドラムと、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備えたレーザ加工機を用いて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を、同一の前記回転ドラムに前記スリーブ体を装着した状態で行うことを特徴とするスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項7】
前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を実施することを特徴とする請求項6に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版を用いる印刷装置であって、
前記スリーブ印刷版が装着されるシリンダを有し、前記シリンダには、前記スリーブ印刷版に設けられた位置決め用切欠部と係合するガイド部材が設けられており、
前記ガイド部材は、前記シリンダの周方向位置を変更可能とされていることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版を用いた印刷方法であって、
前記スリーブ印刷版は、一の位置決め用切欠部と、当該一の位置決め用切欠部に対して軸対称に形成された他の位置決め用切欠部と、を有し、
前記スリーブ体の外周面には、前記一の位置決め用切欠部に対応する位置に版本体が配設され、他の位置決め用切欠部に対応する位置には版本体が配設されておらず、
前記印刷装置に設けられた複数の前記シリンダに、それぞれ前記スリーブ印刷版が装着されており、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されていることを特徴とするスリーブ印刷版を用いた印刷方法。
【請求項1】
印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版であって、
円筒状をなすスリーブ体を有し、このスリーブ体の外周面に前記版本体が配設されており、
前記位置決め用切欠部は、前記スリーブ体の周方向に複数形成されていることを特徴とするスリーブ印刷版。
【請求項2】
前記スリーブ体の外周面に複数の前記版本体が軸対称に配設されており、これら複数の前記版本体のそれぞれに対応するように、複数の前記位置決め用切欠部が軸対称に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスリーブ印刷版。
【請求項3】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが同一とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版。
【請求項4】
前記スリーブ体の外周面には、2以上の前記版本体が配設されており、一の版本体の画像パターンと他の版本体の画像パターンとが互いに異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスリーブ印刷版。
【請求項5】
複数の位置決め用切欠部のうちの一部には、前記スリーブ体の端部領域にブリッジ部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版を製造するスリーブ印刷版の製造方法であって、
円筒状をなすスリーブ体に位置決め用切欠部を形成する位置決め用切欠部形成工程と、前記スリーブ体に前記画像パターンを形成する画像パターン形成工程と、を有し、
外周面に前記スリーブ体が装着可能な回転ドラムと、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ体に対してレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備えたレーザ加工機を用いて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を、同一の前記回転ドラムに前記スリーブ体を装着した状態で行うことを特徴とするスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項7】
前記位置決め用切欠部と前記画像パターンとが画像データとして記録されており、この画像データに基づいて、前記位置決め用切欠部形成工程及び前記画像パターン形成工程を実施することを特徴とする請求項6に記載のスリーブ印刷版の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスリーブ印刷版を用いる印刷装置であって、
前記スリーブ印刷版が装着されるシリンダを有し、前記シリンダには、前記スリーブ印刷版に設けられた位置決め用切欠部と係合するガイド部材が設けられており、
前記ガイド部材は、前記シリンダの周方向位置を変更可能とされていることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
印刷装置のシリンダに装着されて使用され、被印刷物に印刷される画像パターンを有する版本体と、前記シリンダに設けられたガイド部材に係合される位置決め用切欠部と、を備えたスリーブ印刷版を用いた印刷方法であって、
前記スリーブ印刷版は、一の位置決め用切欠部と、当該一の位置決め用切欠部に対して軸対称に形成された他の位置決め用切欠部と、を有し、
前記スリーブ体の外周面には、前記一の位置決め用切欠部に対応する位置に版本体が配設され、他の位置決め用切欠部に対応する位置には版本体が配設されておらず、
前記印刷装置に設けられた複数の前記シリンダに、それぞれ前記スリーブ印刷版が装着されており、一のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置と、他のシリンダに装着された前記スリーブ印刷版の版本体の周方向位置とが、軸対称となるように配置されていることを特徴とするスリーブ印刷版を用いた印刷方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−254623(P2012−254623A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110565(P2012−110565)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
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