説明

スルホン化したポリアリーレン化合物、前記化合物からの膜材料、その製造方法及び使用方法

本発明は、ポリマー化学の分野に関連し、かつ、例えば燃料電池中のイオン交換膜として使用されることができるスルホン化したポリアリーレン化合物並びにその製造方法及びその使用方法に関する。本発明の課題は、加水分解安定性かつ熱安定性の、定義されたスルホン化度及び−場所を有するスルホン化したポリアリーレン化合物であって、ここから改善された加水分解抵抗性を有する膜材料を製造することができる化合物を示すことであった。前記課題は、一般式(I)〜(IV)の少なくとも1つに応じたスルホン化したポリアリーレン化合物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー化学の分野に関連し、かつ、例えばイオン交換体膜として燃料電池又は他の電気化学的プロセスにおいて又はナノ濾過、限外濾過又はマイクロ濾過又は逆浸透のための低ファウリング膜として使用されることができるスルホン化したポリアリーレン化合物、並びにその製造方法及びその使用に関する。
【0002】
公知の燃料電池の種類では、酸性のポリマー電解質燃料物質(PEM)が、高い出力密度及び出力対質量の有利な比により特徴付けられる。ポリ(ペルフルオロアルキルスルホン酸)からなる膜、例えばNafion(R)(DuPont)は、今のところ、その高い化学的な抵抗性及び高い伝導性のために標準的な膜として一般に認められている。この膜の欠点は、最高で80〜90℃の運転温度の限定並びに目下のところの極めて高い価格である。しかしながらより高い運転温度が所望され、というのは、この電極運動論は有利に影響され、触媒毒、例えば一酸化炭素はより迅速に脱着され、かつ、この冷却は、より少ない手間を必要とするからである(C. Wieser, Fuel CeIIs 4, 245 (2004))。更に、このポリ(ペルフルオロアルキルスルホン酸)は、高いメタノール透過性を有し、これは、このポリ(ペルフルオロアルキルスルホン酸)をDMFC(直接メタノール燃料電池)における使用のために排除する。
【0003】
燃焼電池膜のための代替的な材料として、スルホン化したポリアリーレン化合物が強力に試験されている。この際、特にポリ(エーテルケトン)(PEK、PEEK)及びポリ(エーテルスルホン)(PES、PEES)が好まれる。その他のスルホン化した高出力ポリマー、例えばポリイミドは、同様に試験される(N. Cornet et al., J. New Mater. Electrochem. Syst. 3, 33-42 (2000))。しかしながら、これは、その化学的安定性に関して、燃焼電池膜としての使用に適さない(G. Meier et al., Polymer 47, 5003-5011 (2006))。
【0004】
このスルホン化は、大抵の場合において、電子リッチな芳香族化合物で主鎖で行われる。しかしながら、芳香族化合物のスルホン化が可逆的であり、かつ、電子ドナー置換基(例えば、エーテル基)により、高い温度及び酸性媒体が支持されることが一般的に公知である(Organikum、第22版、Wiley-VCH Verlag GmbH Weinheim 2004, ISBN 3-527-31148-3)。更に、ポリマー主鎖のスルホン化が、脱安定化を引き起こし、従って、このモル質量の減少及び機械的特性の低下を引き起こすことが報告されている(J. F. Blanco et al., J. Appl. Polym. Sci. 84, 2461-2473 (2002))。
【0005】
他方では、ポリ(スチレンスルホン酸)中でのスルホン酸基が約200℃までで水中で加水分解安定性であることが見出された(C. Vogel et al., Fuel CeIIs, 4, 320-327 (2004))。しかしながら、ポリ(スチレンスルホン酸)は、その酸化感受性のために、燃焼電池中では使用されることができない(J. Yu et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 5, 611-615 (2003))。
【0006】
スルホン化した芳香族側鎖を有するポリマーの燃焼電池膜は同様に記載されている。この際の目的は、疎水性の主鎖と親水性の要素(スルホン酸基)との間でのマイクロ相分離を支持することである。水中でのこの膜の膨潤が、ポリマー主鎖とスルホン酸基との間に導入されるスペーサーにより最低眼にされることが期待される。
【0007】
Lafitte et al.は、ビスフェノールAベース上のポリスルホンと2−スルホ安息香酸の環式無水物及び他の求電子化合物とを2工程及び多工程で反応させている(B. Lafitte et al., Macromol. Rapid Commun., 23, 896-900 (2002) 及び ibid 26, 1464-1468 (2005))。この第1の工程において、このポリマーの活性化は、ブチルリチウムとの反応により行われた。この第2の工程は、この活性化したポリマーと2−スルホ安息香酸無水物又はフルオロベンゾイル塩化物との反応を包含する。後者は、更なる工程において、求核反応において、ヒドロキシアリールスルホン酸と反応される。この方法の欠点は、この反応物(BuLi、活性化したポリマー)の汚染物質(例えば水、酸素、二酸化炭素)に対する感受性、及び、これに関連した副反応及びこのスルホン化度の劣悪な制御並びにブチルリチウムのための比較的高い値段である。
【0008】
Chen et al.は、スルホベンゾイル側基を有するポリイミド−スルホンを記載する(S. Chen et al., Polymer 47, 2660-2669 (2006))。この研究において、ジクロロジフェニルスルホンを多工程反応においてまずカルボキシル化し(BuLi+CO2)、次いでこの酸塩化物に移行させ、そして、フリーデル−クラフツ−アシル化において、ベンゼンと、ベンゾイル誘導体に反応させた。このモノマーのスルホン化を、オレウム(30%、SO3)と75℃で行った。1)アミノフェノール、及び、2)ナフタレンテトラカルボン酸無水物との更なる反応を介して、スルホン化したポリマーが得られる。この方法は、極めて手間及び費用がかかり、とりわけ、このスルホン化したモノマーの製造の際には、50%の全体の収率しか達成されていない。更に、ポリイミドは燃焼電池条件では耐性でないことが公知である(G. Meier et al., Polymer 47, 5003-5011 (2006))。
【0009】
Ghassemi et al.は、ポリフェニレンスルホン及びポリ(4′−フェニル−2,5−ベンゾフェノン)を基礎とするブロックコポリマーを記載し、これは、フェニルベンゾフェノン−側鎖中でのみスルホン化される(H. Ghassemi, et al., Polymer 45, 5855-5862 (2004))。この生成物の加水分解安定性に関する記載は、為されていない。
【0010】
Gieselmann et al.は、このポリマーの溶解性を改善するために、側鎖、スルホン化したポリベンズイミダゾールを提案している(M. Gieselman et al., Macromolecules, 25, 4832-4834 (1992))。この改質化は、2工程反応における、イミダゾール環のNH窒素の活性化により行われた、1)強塩基(LiH)を用いたこのNH窒素の脱プロトン化、及び、1,3−プロパンスルホン又はベンジル臭化物スルホン酸との引き続く反応。
【0011】
本発明の課題は、加水分解安定性かつ熱安定性の、定義されたスルホン化度及び−場所を有するスルホン化したポリアリーレン化合物であって、ここから改善された加水分解抵抗性を有する膜材料を製造することができる化合物を示すこと、そして、このための簡易かつ安価な製造方法を示すことであった。
【0012】
前記課題は請求項に記載された発明により解決される。有利な実施形態は、下位請求項の主題である。
【0013】
本発明によるスルホン化したポリアリーレン化合物は、一般式(I)〜(IV)
【化1】

[式中、
Ar1は、1核−及び/又は多核の芳香族化合物である、及び
1は、電子受容体特性を有する基である、及び、
2は、エーテル−及び/又はスルフィド−及び/又はケト−及び/又はスルホン−及び/又はフェニルホスフィンオキシド−及び/又はスルホキシド基である、及び、
1、R2、R3、R4は、置換基である、又は、R1〜R4は等しく水素である、又は、R1〜R4の少なくとも1つの残基は水素でなくかつ置換基である、及び、
y≧0かつz≧1かつx≧5である、及び
Ar=1個又は数個の1核−及び/又は多核の芳香族化合物及び/又は1個又は数個のビフェニルである、
及び、スルホン酸基は少なくとも芳香族基"Ar"に結合し、これは側鎖を形成する]の少なくとも1つにより構成されている。
【0014】
有利には、
Ar1は、フェニル単位及び/又はナフチル単位である、及び、
1は、スルホン基及び/又はケト基及び/又はフェニルホスフィン基である。
【0015】
同様に、有利にはy≧2であり、更に有利にはy≧4である。
【0016】
また有利にはz≧2であり、更に有利にはz≧4である。
【0017】
更に有利にはx≧10であり、更に有利にはx≧20である。
【0018】
有利には、Arが少なくとも1つのフェニル残基及び/又は少なくとも1つのナフチル残基である場合である。
【0019】
有利には、このスルホン酸基が、芳香族基"Ar"にのみ結合している場合でもある。
【0020】
更に有利には、このポリアリーレン化合物が主としてブロック構造を有する場合である。更には、このポリアリーレン化合物がランダムの又は純粋なブロック構造を有する場合にも有利である。
【0021】
また、芳香族基"Ar"が側鎖として直接的に共有的に、主鎖の、1核−又は多核の芳香族化合物に結合している場合にも有利である。
【0022】
更に本発明により、少なくとも1つのスルホン化したポリアリーレン化合物からの膜材料が存在する。
【0023】
この際、有利には、芳香族のモノマー単位からの更なる少なくとも1つのポリマーであり、これは、スルフィド−及び/又はスルホキシド−及び/又はスルホン−及び/又はエーテル−及び/又はケト−及び/又はメチレン−及び/又はイソプロピル−及び/又はヘキサフルオロイソプロピル−及び/又はフェニルホスフィンオキシド−及び/又はイミダゾール−及び/又はオキサゾール−及び/又はチアゾール−及び/又はキノキサゾリン−及び/又はキノキサゾール基を介して連結している。
【0024】
そして、更に有利には、この芳香族モノマー単位は置換されている。
【0025】
本発明による、スルホン化したポリアリーレン化合物の製造のための方法では、少なくとも1回アリール置換した1,4−ジヒドロキシベンゼン/ヒドロキノン及び/又はアリールモノマーとして芳香族基"Ar"を有する基1,4−ジヒドロキシナフタレンをジハロゲン芳香族化合物と一緒にアリーレン化合物へと重合し、引き続き、スルホン酸基を少なくとも芳香族基"Ar"に結合させる。
【0026】
有利には、アリールモノマーとしてフェニルヒドロキノン及び/又はナフチルヒドロキノン及び/又はアントラセニルヒドロキノン及び/又は2,5−ジフェニルヒドロキノン及び/又はビフェニルイルヒドロキノン及び/又は2,5−ビスビフェニルイルヒドロキノン及び/又はテトラフェニルヒドロキノン及び/又は1,4−ジヒドロキシ−2−フェニルナフタレン及び/又は1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチルナフタレンを使用する。
【0027】
同様に有利には、アリールモノマーは、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリールポリマーへと溶液中で重合される。
【0028】
また有利には、アリールモノマーは、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリールポリマーへと溶融物中で重合される。
【0029】
更なるアリールモノマーを側鎖としての芳香族基"Ar"無しに、ポリアリーレン化合物のポリマー鎖中に組み込んで結合させる場合には有利である。
側鎖として芳香族基"Ar"無しの更なるアリールモノマーとして、ビスフェノール又は更なる1,4−ジヒドロキシベンゼン/ヒドロキノンを、及び/又は1,4−ジヒドロキシナフタレンを芳香族基"Ar"無しのアリールモノマーとして使用する場合にも有利であり、これは、有利には、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は2,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は3,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,2−(ビス−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンとして使用される。
【0030】
更に、ジハロゲン芳香族化合物としてジフルオロジフェニルスルホン及び/又はジフルオロベンゾフェノン及び/又はビス−(4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド及び/又はビス−(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン又はジクロロジフェニルスルホン及び/又はジクロロベンゾフェノンを使用する場合に有利である。
【0031】
同様に、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリールポリマーをスルホ化剤へのこのポリマーの添加によりスルホン化する場合に有利である。
【0032】
有利には、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリールポリマーを不活性溶媒中で溶解し、かつ、スルホン化剤を用いてスルホン化する場合であり、その際、スルホン化剤として硫酸又はオレウム又はクロロスルホン酸又はクロロスルホン酸トリメチルシリルエステル又はアセチルスルファート又はSO3−トリエチルホスフィットアダクトを使用する場合に特に有利である。更に、スルホン化剤が硫酸であり、かつ、このスルホン化を、室温でかつ反応時間1〜8時間の間、有利には2〜4時間の間実施する場合に特に有利である。
【0033】
更に、このスルホン化剤を不活性溶媒中に溶解して使用する場合が有利であり、その際有利には、溶媒としてクロロホルム又はジクロロメタン又はジクロロエタン又はテトラクロロエタンを使用することが有利である。
【0034】
スルホン化剤としてクロロスルホン酸トリメチルシリルエステルを使用する場合に一層有利である。
【0035】
また、スルホン化反応を25℃〜100℃の温度で、有利には25℃〜50℃の温度で実施する場合にも有利である。
【0036】
また、後処理により、あまり安定でないか又は不安定な、即ちスルホン化に対する後反応(Rueckreaktion)において分離可能な/加水分解可能なスルホン酸基が分離される場合にも有利である。
【0037】
本発明により、このスルホン化したポリアリーレン化合物から膜が製造される。
【0038】
また、本発明により、このスルホン化したポリアリーレン化合物は膜材料として使用される。
【0039】
有利には、これは、イオン交換体膜のための膜材料として燃料電池又は他の電気化学的プロセスのために又はナノ濾過膜として又は限外濾過膜として又はマイクロ濾過膜として又は逆浸透膜として使用される。
【0040】
本発明による解決策を用いて、簡易かつ安価な様式で膜材料のための出発材料が製造でき、これは、特性において顕著な改善を示す。
【0041】
本発明の解決策の利点として、この本発明による、ヒドロキノン及び/又はビスフェノールA及び/又はジヒドロキシビフェニルを基礎とするスルホン化したポリアリーレン化合物のガラス転位温度は、PEEK及びPESに比較して、顕著により高いことが挙げられることができる。
【0042】
本発明によるポリマー材料の化学構造により、このスルホン化の場所及び程度は狙いを定めて調整されることができる。この加水分解安定性は、技術水準に対して顕著に高められている。
【0043】
この本発明による製造方法は、極めて安価であり、というのは、市販のモノマーが使用できるからである。この実施例に挙げた化合物に対する代替策として、遊離のビスフェノール及びジクロロ芳香族化合物も使用でき、これは本発明によるポリマーを同様に一層顕著に安価にする。但し、190℃−200℃の反応時間が選択されなくてはならない。
【0044】
本発明によるスルホン化したポリアリーレン化合物からの膜は、技術水準、特にNafionに対して実質的により少ないメタノール透過性を示し、この際、他の特性が損なわれることはなく、これはこの膜を、とりわけDMFCにおける使用のために予定させる。
【0045】
以下に、本発明を複数の実施例で詳説する。
【0046】
この際、略称は次のものを意味する:
DMAc=N,N−ジメチルアセトアミド
GPC=ゲル浸透クロマトグラフィ
w=モル質量(g/mol)(質量平均)
n=モル質量(g/mol)(数平均)
ηinh.=固有粘度(dl/g)
IEC=イオン交換体容量、mmol/g、(ポリマー)、スルホン化度のための尺度
g:ガラス転移温度(℃)
c=濃度(g/l)
PVP=ポリビニルピロリドン。
【0047】
スルホン化度及びスルホン化の場所を測定するために、実施例に挙げた全ての試料をNMRスペクトル測定した。無論、この試料のスペクトルは実施例4から記載されている。
【0048】
この際、図は以下のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1:実施例4に対する1H−NMR−スペクトル(芳香族化合物領域)、ポリ(オキシ−1,4−(2−フェニル)フェニレンオキシ−1,4−フェニレン−カルボニル−1,4−フェニレン)、次のものを有する式Iに応じた構造を有する実施例、y=0、及びAr1=p−フェニレン基(1,4−末端の基G1及びG2を有する)Ar=フェニル基、主鎖の2位の1,4−二置換したフェニル基Ar1−スルホン酸基無し(物質A)−スペクトルA:パラ位のスルホン酸基有り(物質B)−スペクトルB、C、DG1=CO(ケト基)G2=O(エーテル架橋)。
【0050】
実施例1
26.18g(120mmol)の4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン、17.76g(45mmol)の4,4′−ビストリメチルシロキシ−ジフェニルスルホン及び24.766g(75mmol)の2,5−ビス−トリメチルシロキシビフェニル(フェニルヒドロキノン−ビス−トリメチルシリルエーテル)を湿分排除下で、500mlの三口丸底フラスコ中に量り入れ、そして、250mlの水不含のN−メチル−2−ピロリドンと混合する。軽いアルゴン流下で、このモノマーを溶解し、そして、この反応溶液を24.88g(180mmol)の水不含の炭酸カリウムと混合する。この反応バッチを175℃に加熱し、そして24時間この温度に維持する。室温への冷却後に、溶解していない成分(塩)を分離するためにこの溶液を濾過し、次いでこのポリマーを2−プロパノール中で沈殿させる。このポリマーをクロロホルム中に溶解し、そして、場合によって溶解していない成分を濾過により分離する。このポリマーを2−プロパノール中に沈殿させ、入念にまず2−プロパノールでそして引き続きメタノールで洗浄し、80℃で真空中で恒量まで乾燥させる。このスルホン化を、濃硫酸(96−98%)中へのポリマーの溶解及び4時間25℃での撹拌により実施する。このスルホン化生成物を、この硫酸溶液の冷水中への流し込みにより沈殿させる。冷水を用いた徹底的な洗浄(洗浄水pH7までの)後に、この生成物を真空中で80℃までこの恒量まで乾燥させる。このスルホン化度を滴定により測定する。
【0051】
特性:
ηinh=0.39dl/g(DMAc(25℃)中で測定;c=2g/l)
GPC;Mw=58000;Mn=24000;Mw/Mn=2.4
(DMAc+2%水 3g/l LiCl;PVP標準、校正のため)
IECtheo:1.33mmol/g IECtitriert:1.35mmol/g
g:229℃
水吸収:22%(Nafion 117:25%)
メタノール拡散:1.8×10-6cm2/sec(Nafion 117:8.9-6cm2/sec)。
【0052】
実施例2
30.51g(120mmol)の4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン、11.84g(30mmol)の4,4′−ビストリメチルシロキシ−ジフェニルスルホン及び29.71g(90mmol)の2,5−ビス−トリメチルシロキシビフェニル(フェニルヒドロキノン−ビス−トリメチルシリルエーテル)を湿分排除下でガラス反応器中に量り入れる。軽いアルゴン流下で、撹拌しながらこのモノマーを130℃の温度で溶融させる。100mgのCsFの添加後に、この温度を10時間の期間にわたり段階的に300℃に高める。この最終温度では、この反応を真空下で1時間更なる撹拌無しに継続させる。このポリマーを室温への冷却後に、200mlのクロロホルム中に溶解させ、この溶液を引き続き激しい撹拌下で18.5ml(120mmol)のクロロスルホン酸トリメチルシリルエステル(50mlのクロロホルム中に溶解されている)と混合し、かつ、24時間50℃で撹拌させる。この生成物を水/2−プロパノール1:9中に沈殿させ、水で洗浄し、かつ、真空中で80℃で恒量まで乾燥させる。
【0053】
特性:
ηinh=0.41dl/g(DMAc(25℃)中で測定;c=2g/l)
GPC;Mw=71000;Mn=30000;Mw/Mn=2.4
(DMAc+2%水 3g/l LiCl;PVP標準、校正のため)
IECtheo:1.58mmol/g IECtitriert:1.54mmol/g
g:225℃
水吸収:26%、25℃で(Nafion 117:25%)
メタノール拡散(73℃):3.8×10-6cm2/sec(Nafion 117:8.9-6cm2/sec)。
【0054】
実施例3
26.18g(120mmol)の4,4′−ジフルオロベンゾフェノン、21.52g(60mmol)のビス−4,4′−トリメチルシロキシベンゾフェノン及び19.83g(60mmol)の2,5−ビス−トリメチルシロキシビフェニル(フェニルヒドロキノン−ビス−トリメチルシリルエーテル)を湿分排除下で、500mlの三口丸底フラスコ中に量り入れ、そして、250mlの水不含のN−メチル−2−ピロリドンと混合する。軽いアルゴン流下で、このモノマーを溶解し、そして、この反応溶液を24.88g(180mmol)の水不含の炭酸カリウムと混合する。この反応バッチを175℃に加熱し、そして24時間この温度に維持する。室温への冷却後に、溶解していない成分(塩)を分離するためにこの溶液を濾過し、次いでこのポリマーを2−プロパノール中で沈殿させる。このポリマーをクロロホルム中に溶解し、そして、場合によって溶解していない成分を濾過により分離する。このポリマーを2−プロパノール中に沈殿させ、入念にまず2−プロパノールでそして引き続きメタノールで洗浄し、80℃で真空中で恒量まで乾燥させる。
【0055】
このスルホン化を、濃硫酸(96−98%)中へのポリマーの溶解及び4時間25℃での撹拌により実施する。このスルホン化生成物を、この硫酸溶液の冷水中への流し込みにより沈殿させる。冷水を用いた徹底的な洗浄(洗浄水pH7までの)後に、この生成物を真空中で80℃までこの恒量まで乾燥させる。
【0056】
特性:
ηinh=0.63dl/g(DMAc;25℃;c=2g/l)
GPC;Mw=62000;Mn=16000;Mw/Mn=3.88
(DMAc+2%水 3g/l LiCl;PVP標準、校正のため)
IECtheo:1.17mmol/g IECtitriert:1.13mmol/g
g:135℃。
【0057】
実施例4
6.6115g(30.3mmol)の4,4′−ジフルオロベンゾフェノン、9.917g(30mmol)の2,5−ビストリメチルシロキシビフェニル(フェニルヒドロキノン−ビス−トリメチルシリルエーテル)を湿分排除下で、100mlの三口丸底フラスコ中に量り入れ、そして、50mlの水不含のN−メチル−2−ピロリドンと混合する。軽いアルゴン流下で、このモノマーを溶解し、そして、この反応溶液を4.146g(30mmol)の水不含の炭酸カリウムと混合する。この反応バッチを175℃に加熱し、そして24時間この温度に維持する。室温への冷却後に、溶解していない成分(塩)を分離するためにこの溶液を濾過し、次いでこのポリマーを2−プロパノール中で沈殿させる。このポリマーをクロロホルム中に溶解し、そして、場合によって溶解していない成分を濾過により分離する。このポリマーを2−プロパノール中に沈殿させ、入念にまず2−プロパノールでそして引き続きメタノールで洗浄し、80℃で真空中で恒量まで乾燥させる。このスルホン化を、濃硫酸(96−98%)中へのポリマーの溶解及び4時間25℃での撹拌により実施する。このスルホン化生成物を、この硫酸溶液の冷水中への流し込みにより沈殿させる。冷水を用いた徹底的な洗浄(洗浄水pH7までの)後に、この生成物を真空中で80℃までこの恒量まで乾燥させる。
【0058】
特性:
ηinh=0.40dl/g(DMAc;25℃;c=2g/l)
GPC;Mw=120700;Mn=32000;Mw/Mn=3.77
(DMAc+2%水 3g/l LiCl;PVP標準、校正のため)
IECtheo:2.24mmol/g IEC(スルホン化度):2.2mmol/g
g:168℃。
【0059】
実施例5
膜の製造
実施例1、2又は3からのスルホン化したポリマー10gを100mlのN−メチル−2−ピロリドン中に25℃で溶解させ、かつ、ガラスフリットG4を介して濾過する。真空を印加することにより、この溶液を脱ガスする。この溶液が泡無しになった後に、これらをドクターを用いて700μmの厚さのフィルムにガラスプレート上に塗布する。この溶液をまず8時間80℃でかつ常圧で、そして引き続き8時間100mbarの圧力及び80℃で蒸発する。完全な乾燥のためにこのフィルムを24時間油ポンプ真空中で、120℃で熱により処理する。この膜を、冷却したガラスプレートの水中への装入により剥離させ、かつ、24時間蒸留水中で水を複数回交換しながら溶解性の成分を取り除く。乾燥のためにこの膜を2つの金属プレートの間でプレス処理し、かつ、80℃で真空中で恒量まで乾燥させる。このフィルム厚は、約70μmである。
【0060】
実施例6
このスルホン化した材料の加水分解安定性を、実施例5に応じて製造した膜の、水又は希釈した水性の鉱酸(2%、HCl)中での135℃での、168時間にわたる処理により試験した。この熱処理前の、及び、後の、試料の1H−NMRスペクトルの比較の際に差は示されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)−(IV)
【化1】

[式中、
Ar1は、1核−及び/又は多核の芳香族化合物である、及び、
1は、電子受容体特性を有する基である、及び、
2は、エーテル−及び/又はスルフィド−及び/又はケト−及び/又はスルホン−及び/又はフェニルホスフィンオキシド−及び/又はスルホキシド基である、及び、
1、R2、R3、R4は、置換基である、又は、R1〜R4は等しく水素である、又は、R1〜R4の少なくとも1つの残基は水素でなくかつ置換基である、及び、
y≧0かつz≧1かつx≧5である、及び
Ar=1個又は数個の1核−及び/又は多核の芳香族化合物及び/又は1個又は数個のビフェニルである、
及び、スルホン酸基は少なくとも芳香族基"Ar"に結合し、これは側鎖を形成する]
の少なくとも1つに応じたスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項2】
Ar1は、フェニル単位及び/又はナフチル単位である、及び
1は、スルホン基及び/又はケト基及び/又はフェニルホスフィン基である、
請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項3】
y≧2である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項4】
z≧2である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項5】
x≧10である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項6】
Arが少なくとも1つのフェニル残基及び/又は少なくとも1つのナフチル残基である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項7】
y≧4である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項8】
z≧4である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項9】
x≧20である、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項10】
スルホン酸基が、芳香族基"Ar"にのみ結合している、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項11】
ポリアリーレン化合物が、主としてブロック構造を有する、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項12】
ポリアリーレン化合物が、ランダムの又は純粋なブロック構造を有する、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項13】
芳香族基"Ar"が側鎖として直接的に共有的に、主鎖の、1核−又は多核の芳香族化合物に結合している、請求項1記載のスルホン化したポリアリーレン化合物。
【請求項14】
少なくとも1回アリール置換した1,4−ジヒドロキシベンゼン/ヒドロキノン及び/又はアリールモノマーとして芳香族基"Ar"を有する1,4−ジヒドロキシナフタレンをジハロゲン芳香族化合物と一緒にアリーレン化合物へと重合し、引き続き、スルホン酸基を少なくとも芳香族基"Ar"に結合させる、スルホン化したポリアリーレン化合物の製造方法。
【請求項15】
アリールモノマーとしてフェニルヒドロキノン及び/又はナフチルヒドロキノン及び/又はアントラセニルヒドロキノン及び/又は2,5−ジフェニルヒドロキノン及び/又はビフェニルイルヒドロキノン及び/又は2,5−ビスビフェニルイルヒドロキノン及び/又はテトラフェニルヒドロキノン及び/又は1,4−ジヒドロキシ−2−フェニルナフタレン及び/又は1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチルナフタレンを使用する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アリールモノマーを、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリーレンポリマーへと溶液中で重合させる、請求項14記載の方法。
【請求項17】
アリールモノマーを、側鎖として芳香族基"Ar"を有するアリーレンポリマーへと溶融物中で重合させる、請求項14記載の方法。
【請求項18】
側鎖として芳香族基"Ar"無しの更なるアリールモノマーを、ポリアリーレン化合物のポリマー鎖中に組み込んで結合させる、請求項14記載の方法。
【請求項19】
側鎖として芳香族基"Ar"無しの更なるアリールモノマーとしてビスフェノールを、又は更なる1,4−ジヒドロキシベンゼン/ヒドロキノン及び/又は1,4−ジヒドロキシナフタレンを芳香族基"Ar"無しのアリールモノマーとして使用する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ビスフェノールとして4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は2,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は2,2′−ジヒドロキシベンゾフェノン及び/又は4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は3,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,2′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び/又は2,2−(ビス−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを使用する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ジハロゲン芳香族化合物としてジフルオロジフェニルスルホン及び/又はジフルオロベンゾフェノン及び/又はビス−(4−フルオロフェニル)ホスフィンオキシド及び/又はビス−(4−フルオロベンゾイル)−ベンゼン又はジクロロジフェニルスルホン及び/又はジクロロベンゾフェノンを使用する、請求項14記載の方法。
【請求項22】
側鎖としての芳香族基"Ar"を有するアリーレンポリマーをスルホン化剤へのこのポリマーの添加によりスルホン化する、請求項14記載の方法。
【請求項23】
側鎖としての芳香族基"Ar"を有するアリーレンポリマーを不活性溶媒中に溶解し、スルホン化剤を用いてスルホン化する、請求項14記載の方法。
【請求項24】
スルホン化剤として硫酸又はオレウム又はクロロスルホン酸又はクロロスルホン酸トリメチルシリルエステル又はアセチルスルファート又はSO3−トリエチルホスフィット−アダクトを使用する、請求項22記載の方法。
【請求項25】
スルホン化剤が硫酸であり、かつ、スルホン化を室温でかつ1〜8時間の反応時間の間実施する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
2〜4時間の間反応を実施する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
スルホン化剤を不活性溶媒中に溶解して使用する、請求項23記載の方法。
【請求項28】
溶媒としてクロロホルム又はジクロロメタン又はジクロロエタン又はテトラクロロエタンを使用する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
スルホン化剤としてクロロスルホン酸トリメチルシリルエステルを使用する、請求項23、24及び27記載の方法。
【請求項30】
25℃〜100℃の温度でスルホン化反応を実施する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
25℃〜50℃の温度でスルホン化反応を実施する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
後処理により不安定なスルホン酸基を分離する、請求項14記載の方法。
【請求項33】
請求項1から13までのいずれか1項記載の、及び請求項14から32までのいずれか1項記載の方法により製造されたスルホン化したポリアリーレン化合物の膜材料としての使用。
【請求項34】
燃料電池又は他の電気化学的プロセスのためのイオン交換体膜のための膜材料としての又はナノ濾過膜としての又は限外濾過膜としての又はマイクロ濾過膜としての又は逆浸透膜としての請求項33記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−544831(P2009−544831A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522204(P2009−522204)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057280
【国際公開番号】WO2008/012222
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(500525405)ライプニッツ−インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ (8)
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Hohe Strasse 6,D−01069 Dresden,Germany
【Fターム(参考)】