説明

スルホン化キサンテン誘導体

【課題】新規なスルホン化キサンテン染料(ローダミン、フルオレセインおよびロドール染料を包含する)、反応性染料誘導体、および染料結合体を提供する。
【解決手段】例えば下式で例示される様な、スルホン酸またはスルホン酸の塩により1回以上置換されたキサンテン染料(ローダミン、ロドールおよびフルオレセインを含む)。染料(化学的に反応性の染料および染料結合体を含む)は、特に、生物学的サンプルにおける蛍光プローブとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規なスルホン化キサンテン染料(ローダミン、フルオレセインおよびロドール(rhodol)染料を包含する)、反応性染料誘導体、および染料結合体(dye-conjugates);ならびにそれらの生物学的体系における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明の染料は、染料のキサンテン部位が少なくとも1つのスルホン酸部分により置換された、フルオレセイン、ロドールおよびローダミン染料を含む、キサンテン染料である。本発明のスルホン化されたキサンテン染料は、これらの非スルホン化アナログを越えるかなりの利点を有する。
【0003】
「フルオレセイン」染料は、9位で2-カルボキシフェニル基で典型的に置換された3H-キサンテン-6-オール-3-オンの誘導体を包含する。「ロドール」染料は、9位で2-カルボキシフェニル基で典型的に置換された6-アミノ-3H-キサンテン-3-オンの誘導体を包含する。「ローダミン」染料は、9位で2-カルボキシフェニル基で典型的に置換された6-アミノ-3H-キサンテン-3-イミンの誘導体を包含する。
【0004】
【化1】

【0005】
【化2】

ロドール、ローダミンおよびフルオレセインは、典型的に、5員または6員のラクトンまたはラクタム環を形成し得る誘導体により置換される。例えば、フルオレセインの場合、スピロラクトン型の染料は、以下の構造を有する:
【0006】
【化3】

【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフルオレセイン染料の収率は、典型的には、匹敵するスペクトルを有する他の染料の収率よりも高い(表5)。本発明のスルホン化染料は、同様に、タンパク結合のクエンチに対する耐性の増強(図3)、および光安定性の増強(図6)を示す。本発明のスルホン化ローダミン染料のスペクトルは、pH4と10との間の範囲のpH変化に非感受性である。
【0008】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 以下の式を有する化合物:
【0009】
【化42】

ここで
、R、RおよびRは、独立して、H、F、Cl、Br、I、CN;またはC〜C18アルキル、またはC〜C18アルコキシ、ここで各アルキルまたはアルコキシは必要に応じて、F、Cl、Br、I、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC〜Cアルコールのカルボン酸エステルによりさらに置換される;または−SOX、ここでXはHまたは対イオンである;であり
およびRは、Hであるか;またはRはRと組み合わさって、あるいはRはRと組み合わさって、または両方で、必要に応じて−SOXにより1回以上置換される縮合芳香族6員環を形成し;
AはORまたはNRであり、
はH、C〜C18アルキルであり;
およびRは、独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cスルホアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、またはC〜Cスルホアルキルの塩であり、ここで、該アルキル部分は、必要に応じて、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のC〜Cアルキルエステルにより置換され;あるいはRはRと組み合わさって、ピペリジン、モルホリン、ピロリジンまたはピペラジンである飽和5または6員環ヘテロ環を形成し、これらのそれぞれは必要に応じて、メチル、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはカルボン酸のC〜Cアルキルエステルにより置換され;
またはRはRと組み合わさって、あるいはRはRと組み合わさって、またはその両方で、5または6員環を形成し、該5または6員環は、飽和または不飽和であり、そして必要に応じて、1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分で置換され;
CはOR17またはNR1819であり;
ここでR17はH、またはC〜C18アルキルであり;
ここでR18およびR19は独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cスルホアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、またはC〜Cスルホアルキルの塩であり、ここで、該アルキル部分は、必要に応じて、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはカルボン酸のC〜Cアルキルエステルにより置換され;あるいはR18はR19と組み合わさって、ピペリジン、モルホリン、ピロリジンまたはピペラジンである飽和5または6員環ヘテロ環を形成し、これらのそれぞれは必要に応じて、メチル、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはカルボン酸のC〜Cアルキルエステルにより置換され;
またはR18はRと組み合わさって、あるいはR19はRと組み合わさって、またはその両方で、5または6員環を形成し、該5または6員環は、飽和または不飽和であり、そして必要に応じて、1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分で置換され;
BはOまたはN1819であり;
10は、H、F、CN、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはカルボン酸のC〜Cアルコールエステルであり;あるいはR10は、必要に応じて、F、Cl、Br、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のC〜Cアルコールエステル、−SOX、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノにより1回以上置換される飽和または不飽和C〜C18アルキルであり、これらの該アルキル基は1〜6個の炭素を有し;あるいはR10は以下の式を有し:
【0010】
【化43】

ここでR12、R13、R14、R15およびR16は、独立して、H、F、Cl、Br、I、−SOX、カルボン酸、カルボン酸の塩、CN、ニトロ、ヒドロキシ、アジド、アミノ、ヒドラジノ;またはC〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキルチオ、C〜C18アルカノイルアミノ、C〜C18アルキルアミノカルボニル、C〜C36ジアルキルアミノカルボニル、C〜C18アルキルオキシカルボニル、またはC〜C18アリールカルボキサミドであり、ここでこれらのアルキルまたはアリール部分は、必要に応じて、F、Cl、Br、I、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、カルボン酸のC〜Cアルコールエステル、−SOX、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシにより1回以上置換され、それぞれのアルキル部分は1〜6個の炭素を有し;または隣接する置換基R13およびR14、R14およびR15またはR15およびR16の1つの対は、組み合わさって、必要に応じてさらにカルボン酸、またはカルボン酸の塩により置換される縮合6員環芳香族環を形成し;そして
11は、H、ヒドロキシ、CNまたはC〜Cアルコキシであるか;またはR10はR11と組み合わさって、5員環スピロラクトン環または5員環スピロスルトン環を形成するか;またはR11はR12と組み合わさって、5または6員環スピロラクトン環または5または6員環スピロスルトン環を形成し、該環は必要に応じてかつ独立してH、F、またはCHにより置換されるか;またはR10は、R11と組み合わさってカルボニル酸素であり;
ただし、AがORである場合、R12は存在するならば−SOXであり;そして
ただし、R、R、RおよびRの少なくとも1つは−SOXであり;またはRはRと組み合わさって、またはRはRと組み合わさって、またはR18はRと組み合わさって、またはR19はRと組み合わさって、5または6員環を形成し、該環は飽和または不飽和であり、少なくとも1つの−CHSOX部分により置換される。
(項目2) R、R、R、R、R、R、R、R10、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、またはR19の1つ以上が、−L−Rまたは−L−Sであるか、または−L−Rまたは−L−Sに改変され;
ここで各Lが必要に応じて同じかまたは異なり、そして共有結合であり;
各Rが必要に応じて同じかまたは異なり、そして反応性基であり;
各Sが必要に応じて同じかまたは異なり、そして結合物質である、項目1に記載の化合物。
(項目3) R13、R14、R15、およびR16の1つが、−L−Rまたは−L−Sである、項目2に記載の化合物。
(項目4) R、R、R、R17、R18、およびR19の1つが、−L−Rまたは−L−Sである、項目2に記載の化合物。
(項目5) 各Lが独立して、単共有結合であるか、またはLがC、N、O、P、およびSからなる群より選択される1〜24個の非水素原子を有する共有結合であり、かつ単結合、二重結合、三重結合または芳香族の炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、窒素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、リン−酸素結合、およびリン−窒素結合の任意の組み合わせからなり、
各Rが、アクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、ヒドロキシ、アルデヒド、アルキルハライド、スルホネート、アミン、無水物、アニリン、アリールハライド、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、カルボジイミド、ジアゾアルカン、エポキシド、グリコール、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、ケトン、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、またはチオール基であり、
各Sが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、単糖、二糖、多糖、イオン錯体化部分、ヌクレオチド、核酸ポリマー、ハプテン、薬物、脂質、脂質アセンブリ、非生物学的有機ポリマー、ポリマー性微粒子、動物細胞、植物細胞、細菌、酵母、ウイルス、または原生生物である、、項目2に記載の化合物。
(項目6) Lが単共有結合であり、Rが、カルボン酸、カルボン酸の活性化エステル、アミン、アジド、ヒドラジン、ハロアセトアミド、アルキルハライド、イソチオシアネート、またはマレイミド基である、項目2に記載の化合物。
(項目7) Sがペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオチド、または核酸ポリマーである、項目2に記載の化合物。
(項目8) Sが抗体、アビジン、ストレプトアビジン、レクチン、成長因子、または毒素である、項目7に記載の化合物。
(項目9) Sが必要に応じて化学的に架橋されるフィコビリンタンパク質である、項目7に記載の化合物。
(項目10) 前記フィコビリンタンパク質がアロフィコシアニンである、項目9に記載の化合物。
(項目11) 前記フィコビリンタンパク質がさらに化学的反応性基または結合物質を含む、項目9に記載の化合物。
(項目12) Sがさらに1つ以上のさらなる蛍光または非蛍光染料、あるいはビオチンにより置換される、項目7、8、9、10または11に記載の化合物。
(項目13) RおよびRがそれぞれ−SOXである、項目1から9のいずれかに記載の化合物。
(項目14) AがORであり、BがOであり、CがOR17であり、そしてRおよびRが独立してFまたはClである、項目13に記載の化合物。
(項目15) R10が以下の式を有し:
【0011】
【化44】

ここで、R12がカルボン酸、カルボン酸の塩、または−SOXであり;R11が存在せず;そして
(i)R13、R14、R15、およびR16の少なくとも3つがFまたはClであるか;または
(ii)R14およびR15の一方がカルボン酸またはカルボン酸の塩であるかまたは−S−(CHCOOHであり、ここでnが1〜15であり、R14およびR15の他方がH、FまたはClであるかのいずれかである、項目1から9のいずれかに記載の化合物。
(項目16) AがNRであり、BがOであり、CがOR17である、項目1から9のいずれかに記載の化合物。
(項目17) AがNRであり、BがN1819であり、CがNR1819であり、そして
(i)RがRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、必要に応じて1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分により置換される5または6員環を形成し;そしてR19がRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、必要に応じて1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分により置換される5または6員環を形成するか;または
(ii)RおよびR18が独立して、H、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、C〜Cスルホアルキル、またはC〜Cスルホアルキルの塩であるか;または
(iii)RがRと組み合わさって、およびR19がRと組み合わさって、それぞれ、飽和である5または6員環を形成し;そしてRおよびRがそれぞれ−SOXであるか;または
(iv)RがRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、−CHSOXにより置換される5または6員環を形成し;そしてR19がRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、−CHSOXにより置換される5または6員環を形成するかのいずれかである、項目1から9のいずれかに記載の化合物。
(項目18) R、R、RおよびRがHであり;
およびRがそれぞれ−SOXであり;そして
、R、R18、およびR19がH、C〜Cアルキル、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cスルホアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、またはC〜Cスルホアルキルの塩である、項目1から9のいずれかに記載の化合物。
(項目19) 以下の式を有する項目1から9のいずれかに記載の化合物:
【0012】
【化45】

ここで
、R、RおよびRは独立して、H、F、Cl、Br、I、C〜C18アルキル、C〜C18アルコキシ、または−SOXであり;
およびRは独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、C〜Cスルホアルキル、またはC〜Cスルホアルキルの塩であるか;または、RはRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、必要に応じて1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分により置換される5または6員環を形成し;
18およびR19は独立して、H、C〜Cアルキル、C〜Cカルボキシアルキル、C〜Cカルボキシアルキルの塩、C〜Cスルホアルキル、またはC〜Cスルホアルキルの塩であるか;または、R19はRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、必要に応じて1つ以上のC〜Cアルキルまたは−CHSOX部分により置換される5または6員環を形成し;
12、R13、R14、R15およびR16は、独立して、H、Cl、F、アミノ、ニトロ、−SOX、カルボン酸、カルボン酸の塩、または−S−(CHCOOHであり、ここでnは1〜15であり;
ただし、
(i)RおよびRはそれぞれ−SOXであるか;または
(ii)RはRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、−CHSOXにより置換される5または6員環を形成し;そしてR19はRと組み合わさって、飽和または不飽和であり、−CHSOXにより置換される5または6員環を形成するかのいずれかである。
(項目20) 生物学的サンプルを染色する方法であって:
a)所望の条件下で検出可能な光学応答を生じるのに十分な濃度で、項目1から18のいずれかに記載の化合物を含む染料溶液を、生物学的サンプルと合わせる工程;
b)該光学応答を誘発するように選択された波長で、該サンプルを照射する工程、を包含する方法。
(項目21) (i)前記サンプルを、前記光学応答と検出可能に異なるスペクトル特性を有するさらなる検出試薬と合わせる工程;および/または
(ii)該光学応答を標準応答パラメーターと比較することにより、該サンプルの特性を決定する工程;および/または
(iii)該サンプル内の該光学応答の時間的または空間的位置を追跡する工程、をさらに包含する、項目20に記載の方法。
(項目22) 前記サンプルが細胞であり、前記決定した特性が該細胞の生存度である、項目21(ii)に記載の方法。
(項目23) 前記サンプルが細胞を含み、前記合わせる工程が、エレクトロポレーション、ショック療法、高細胞外ATP、圧力マイクロインジェクション、スクラップローディング、パッチクランプローディング、ファゴサイトーシス、または飲細胞作用ベシクルの浸透圧溶解を含む、項目20に記載の方法。
(項目24) 項目1から19のいずれかに記載の1種以上の化合物を含む、キット。
(項目25) 項目2から18のいずれかに記載の染料結合体を含む複合体であって、Sが特異的結合対のメンバーであり、該対が該特異的結合対の相補的メンバーと非共有結合している、複合体。
(項目26) 前記特異的結合対が以下の対から選択される、項目25に記載の複合体:
抗原−抗体
ビオチン−アビジン
ビオチン−ストレプトアビジン
ビオチン−抗ビオチン
免疫グロブリンG−プロテインA
免疫グロブリンG−プロテインG
薬物−薬物レセプター
毒素−毒素レセプター
炭水化物−レクチン
炭水化物−炭水化物レセプター
ペプチド−ペプチドレセプター
タンパク質−タンパク質レセプター
酵素基質−酵素
DNA−aDNA
RNA−aRNA
ホルモン−ホルモンレセプター
イオン−キレート剤。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1:実施例38に記載される、化合物5のヤギ抗マウス(GAM)IgG結合体(化合物5-GAM)およびテトラメチルローダミン(TMR-GAM)の吸光スペクトル。
【図2】図2:実施例40に記載される、530nmで励起した場合における、同程度の置換および同等の光学密度での、化合物5のヤギ抗マウスIgG結合体(化合物5-GAM)およびCY-3染料(CY-3GAM)の蛍光スペクトル。
【図3】図3:実施例40に記載される、化合物7およびTEXAS RED-X染料のヤギ抗マウスIgG結合体(Fab2フラグメント)への置換度に対する結合体蛍光(これは、本発明の染料への高度の置換のクエンチがより少ないことを示す)。
【図4】図4:実施例42に記載される、488nmで励起した、R-フィコエリトリンの化合物24-結合体の蛍光スペクトルと比較した、R-フィコエリトリン(R-PE)の蛍光スペクトル。タンパク質から本発明の染料への高効率エネルギー移動を示す。
【図5】図5:実施例45に記載される、本発明(化合物35)またはフルオレセインファロイジンそれぞれのファロイジン結合体で染色した細胞の相対光退色率。相対光退色率は、本発明の染料の優れた光安定性を示す。
【図6】図6:実施例45に記載される、化合物5のヤギ抗マウスIgG結合体(化合物5-GAM)およびCY-3染料のヤギ抗マウスIgG結合体(CY-3-GAM)で染色した細胞の相対光退色率。相対光退色率は、本発明の染料の優れた光安定性を示す。
【図7】図7:架橋アロフィコシアニンの化合物19-結合体(化合物19-XL-APC)の蛍光スペクトルと比較した架橋アロフィコシアニン(XL-APC)の蛍光スペクトル(実施例59)。スルホン化ローダミン染料の添加が、本発明の染料からフルオレセインタンパク質へのエネルギー移動を介した、650nmでの蛍光を非常に増強する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の要旨および好適な実施態様の説明
本発明は、蛍光プローブとして有用なスルホン酸またはスルホン酸の塩によって1回以上置換されたキサンテン染料を記載する。本発明の染料は、任意で、蛍光結合体を調製するのに有用な反応性基を有する。
【0015】
本発明の化合物は、-SO3Xまたは-CH2SO3X(ここで、XはH(スルホン酸)またはカウンターイオン(スルホン酸の塩)である)により1回以上置換された、フルオレセイン、ローダミンおよびロドールを含む、キサンテンである。本明細書で用いられるように、Xがカウンターイオンの場合、それは典型的には、使用時に毒性でない、および生体分子に実質的に有害な影響を有さない、陽イオンである。適切な陽イオンの例としては、数ある中で、K+、Na+、Cs+、Li+、Ca2+、Mg2+、アンモニウム、アルキルアンモニウムもしくはアルコキシアンモニウム塩、またはピリジニウム塩が挙げられる。あるいは、スルホン酸のカウンターイオンは、キサンテン染料自体の上の正荷電原子、典型的にはローダミン染料の4級窒素原子と分子内塩を形成し得る。
【0016】
1つの実施態様において、染料は、以下に示す、式Iまたは式IIを有する:
【0017】
【化4】

置換基R2、R3、R4およびR5は、独立して、H、F、Cl、Br、IまたはCN;あるいはC1-C18アルキル、またはC1-C18アルコキシであり、ここで、各アルキルまたはアルコキシは任意でさらに、F、Cl、Br、I、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルコールのカルボン酸エステルにより置換される。あるいは、1つまたはそれ以上のR2、R3、R4およびR5は、-SO3X、または-L-Rx、または-L-Scであり、ここで、Lは共有結合、Rxは反応性基、そしてScは結合物質である。好ましい実施態様では、R3およびR4はそれぞれ-SO3Xである。
【0018】
置換基R1もしくはR6はHであるか、またはR2と組み合わされたR1、もしくはR6と組み合わされたR5、またはその両方が縮合芳香族6員環を形成し、これは、1つまたはそれ以上の-SO3X部分によって、任意で置換される。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、R2、R3、R4およびR5は、独立して、H、F、Cl、Br、IまたはC1-C18アルキルである。本発明の別の実施態様において、R1、R2、R5およびR6はHである。本発明のさらに別の実施態様において、R2およびR5はそれぞれFまたはClである。
【0020】
A部分はOR7であり、ここで、R7はH、C1-C18アルキル、または-L-Rx、または-L-Scである。あるいは、AはNR8R9であり、ここで、R8およびR9は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6カルボキシアルキル、C1-C6スルホアルキル、C1-C6カルボキシアルキルの塩、またはC1-C6スルホアルキルの塩であり、ここで、それぞれのアルキル部分は、独立しておよび任意で、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルキルのカルボン酸エステルにより置換される。あるいはR9と組み合わされたR8は、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、またはピペラジンである飽和5または6員ヘテロ環を形成し、そのそれぞれが、任意で、メチル、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルキルのカルボン酸エステルにより置換される。あるいは別に、R8およびR9の1つまたは両方が-L-Rxまたは-L-Scである。
【0021】
本発明の別の局面では、R2と組み合わされたR8、またはR3と組み合わされたR9、または両方が、飽和または不飽和の5または6員環を形成し、任意で、1つまたはそれ以上のC1-C6アルキルまたは-CH2SO3X部分により置換される。
【0022】
B部分(存在する場合)は、OまたはN+R18R19であり、ここでR18およびR19は、独立して、H、C1-C6アルキル、C1-C6カルボキシアルキル、C1-C6スルホアルキル、C1-C6カルボキシアルキルの塩、またはC1-C6スルホアルキルの塩であり、ここで、それぞれのアルキル部分は、任意で、アミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルキルのカルボン酸エステルにより置換される。あるいは、R19と組み合わされたR18は、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、またはピペラジンである飽和5または6員ヘテロ環を形成し、そのそれぞれが、任意で、メチル、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルキルのカルボン酸エステルにより置換される。あるいは別に、R18およびR19の1つまたは両方が-L-Rxまたは-L-Scである。
【0023】
本発明の別の局面において、R4と組み合わされたR18、またはR5と組み合わされたR19、またはその両方が飽和または不飽和の5または6員環を形成し、これは、1つまたはそれ以上のC1-C6アルキルまたは-CH2SO3X部分によって、任意で置換される。
【0024】
C部分(存在する場合)は、OR17であり、ここで、R17はH、C1-C18アルキル、または-L-Rx、または-L-Scである。あるいは、CはNR18R19であり、ここでR18およびR19は先に定義した通りである。
【0025】
本発明の1つの実施態様において、R9およびR18は、独立して、H、またはカルボキシアルキル、カルボキシアルキルの塩、スルホアルキルまたはスルホアルキルの塩であり、それぞれが1〜6個の炭素を有する。典型的にはR9およびR18はH、メチルまたはエチルである。
【0026】
本発明の別の実施態様において、R2と組み合わされたR8、およびR5と組み合わされたR19は、独立して、飽和または不飽和の5または6員環を形成し、そして、任意で、1つまたはそれ以上の1〜6個の炭素を有するアルキル基で、または1つまたはそれ以上の-CH2SO3X部分により置換される。本発明のさらに別の局面では、R2と組み合わされたR8、またはR5と組み合わされたR19が、独立して、飽和の5または6員環を形成し、1つまたはそれ以上の-CH2SO3X部分で置換される。本明細書中に記載した縮合5または6員環のいくつかの(しかし全てではない)例を以下に示す(スルホン酸またはスルホメチル部分のような付加的置換基は示されていない)。
【0027】
【化5】

置換基R10は、H、F、CN、カルボン酸、カルボン酸の塩、またはC1-C6アルコールのカルボン酸エステルである。あるいは、R10は、1回以上、F、Cl、Br、カルボン酸、カルボン酸の塩、C1-C6アルコールのカルボン酸エステル、-SO3X、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノで任意に置換される飽和または不飽和C1-C18アルキルであり、各置換基のアルキル基が1〜6個の炭素を有する。R10は任意で-L-Rxまたは-L-Scである。
【0028】
本発明の別の実施態様では、R10は以下の式を有するアリール置換基である:
【0029】
【化6】

ここで、R12、R13、R14、R15またはR16置換基は、独立して、H、F、Cl、Br、I、-SO3X、カルボン酸、カルボン酸の塩、CN、ニトロ、ヒドロキシ、アジド、アミノ、ヒドラジノであるか、またはR12、R13、R14、R15またはR16は、独立して、C1-C18アルキル、C1-C18アルコキシ、C1-C18アルキルチオ、C1-C18アルカノイルアミノ、C1-C18アルキルアミノカルボニル、C2-C36ジアルキルアミノカルボニル、C1-C18アルキルオキシカルボニル、またはC6-C18アリールカルボキサミド、アルキルまたはアリール部位(1回以上、F、Cl、Br、I、ヒドロキシ、カルボン酸、カルボン酸の塩、C1-C6アルコールのカルボン酸エステル、-SO3X、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアルコキシにより任意で置換されている)であり、これらの置換基のアルキル部位は、同様に1〜6個の炭素を有する。あるいは、組み合わされる場合、隣接置換基R13およびR14、R14およびR15、またはR15およびR16の1つの組が、任意でさらに、カルボン酸、またはカルボン酸の塩により置換される縮合6員芳香環を形成する。あるいはR12、R13、R14、R15およびR16の1つが、-L-Rxまたは-L-Scである。
【0030】
本発明の1つの実施態様において、R12、R13、R14、R15、およびR16は、独立して、H、Cl、F、アミノ、ニトロ、-SO3X、カルボン酸、カルボン酸の塩、または式-S-(CH2)nCOOH(ここで、nは1〜15)を有するカルボキシ置換アルキルチオである。本発明の別の実施態様において、R13、R14、R15、およびR16の少なくとも3つがFまたはClである。本発明の別の実施態様において、R14およびR15の一方が、カルボン酸、カルボン酸の塩、または-S-(CH2)nCOOH(ここで、nは1〜15)であり、他方がH、FまたはClである。
【0031】
R11置換基は、H、ヒドロキシ、CNまたはC1-C6アルコキシである。本発明の別の実施態様においては、R11と組み合わされたR10は、5員スピロラクトン環または5員スピロスルトン環を形成する。あるいは、たとえば、R12と組み合わされたR11は、5もしくは6員スピロラクトン環または5もしくは6員スピロスルトン環を形成する。例えば、(付加的置換基は示されていない):
【0032】
【化7】

スピロラクトン環またはスピロスルトン環のメチレン炭素は、任意でおよび独立して、H、FまたはCH3により置換される。
【0033】
あるいは、R11と共にR10は、以下の簡易式のカルボニル酸素である(付加的置換基は示されていない)。
【0034】
【化8】

スピロラクトン環を含む染料の実施態様は、R12がカルボン酸であるか、またはR10がプロピオン酸または酪酸である異性体と平衡で存在し得る構造異性体の代表である。スピロスルトン環を含む染料は、R12がスルホン酸であるか、またはR10がスルホン酸置換エチルまたはプロピルである異性体と平衡で存在し得る。スピロラクトン環またはスピロスルトン環を含む異性体は、開環するまで非蛍光性である。
【0035】
AがOR7であり、BがOであり、R10がアリールであり、そしてR12がカルボキシまたは-SO3Xである場合、記載された染料はフルオレセイン(式I)である。AがOR7でありかつCがOR17であり、R10がアリールであり、R11がHであり、そしてR12がカルボキシまたは-SO3Xである場合、記載された染料はジヒドロフルオレセイン(式II)である。AがNR8R9であり、BがOであり、R10がアリールであり、そしてR12がカルボキシである場合、記載された染料はロドール(式I)である。AがNR8R9であり、CがOR17であり、R10がアリールであり、R11がHであり、そしてR12がカルボキシである場合、染料はジヒドロロドール(式II)である。AがNR8R9であり、BがN+R18R19であり、R10がアリールであり、そしてR12がカルボキシである場合、記載された染料はローダミンである。AがNR8R9であり、CがNR18R19であり、R10がアリールであり、R11がHであり、そしてR12がカルボキシである場合、記載された染料はジヒドロローダミンである。本発明の染料がフルオレセインである場合、これらは好ましくはスルホンフルオレセインである(ここで、R12はSO3Xである)。好ましくは、本発明の染料は、ローダミンまたはロドールであり、より好ましくはローダミンである。
【0036】
本発明の1つの実施態様において、R2、R3、R4、およびR5の少なくとも1つは、-SO3Xであり、好ましくはR3およびR4は-SO3Xである。本発明の別の実施態様において、R2と組み合わされたR1、またはR6と組み合わされたR5、または両方は、少なくとも1つの-SO3X部分により置換されている縮合芳香族6員環を形成する。本発明の別の実施態様において、R2と組み合わされたR8、またはR3と組み合わされたR9、またはR4と組み合わされたR18、またはR5と組み合わされたR19は、飽和または非飽和の5または6員環を形成し、少なくとも1つの-CH2SO3X部分により置換される。好ましくは、R2と組み合わされたR8、およびR5と組み合わされたR19は、飽和または非飽和の5または6員環を形成し、少なくとも1つの-CH2SO3X部分により置換される。
【0037】
選択した染料のスペクトル特性を表1に示す。
【0038】
【表1−1】

【0039】
【表1−2】

【0040】
【表1−3】

反応性染料の結合体
本発明の1つの実施態様において、スルホン化キサンテンは少なくとも1つの基-L-Rxを含み、ここでRxは反応性基であり、これは共有結合Lで発蛍光団に結合する。特定の実施態様において、スルホン化キサンテンをRxに結合する共有結合は、スペーサーとして働く複数の介在原子を含有する。反応性基(Rx)を有する染料は、適切な反応性を有する官能基を含むかあるいは含むべく修飾された広範囲の有機または無機の基質を蛍光的に標識し、その結果、結合物質(Sc)が化学的に付着し、これは-L-Scと表される。反応性基および官能基は、典型的には、求電子試薬および求核試薬であり、これは共有結合を生成し得る。あるいは、反応性基は光活性化可能な基である。典型的に、反応性染料と結合されるべき物質との間の結合反応によって、スルホン化キサンテンを結合物質Scに結合する新規の結合Lに取り込まれるべき反応性基Rxの1つまたはそれ以上の原子を生じる。選択された官能性基および結合の例を、表2に示す。ここで求電子性基および求核性基の反応は共有結合を生じる。
【0041】
【表2−1】

【0042】
【表2−2】

活性化エステルは当該分野で理解されるように、一般に式-COΩを有し、ここでΩは良好な脱離基(例えば、スクシンイミジルオキシ(-OC4H4O2)、スルホスクシンイミジルオキシ(-OC4H3O2-SO3H)、-1-オキシベンゾトリアゾリル(-OC6H4N3);あるいはアリールオキシ基、または活性化アリールエステルを形成するために使用される電子吸引性置換基(例えば、ニトロ、スルホ、フルオロ、クロロ、シアノ、またはトリフルオロメチル、あるいはそれらの組み合わせ)で1回以上置換されたアリールオキシ;あるいはカルボジイミドで活性化されて、無水物または混合無水物-OCORaまたは-OCNRaNHRb(ここでRaおよびRbは同じでも異なっていてもよく、C1-C6アルキル、C1-C6パーフルオロアルキル、またはC1-C6アルコキシである)を形成するカルボン酸;あるいはシクロヘキシル、3-ジメチルアミノプロピル、またはN-モルホリノエチル)である。
** アシルアジドはまた、転位してイソシアネートとなり得る。
【0043】
共有結合Lは、反応性基Rxまたは結合物質Rcを発蛍光団に、直接(Lは単結合)または安定な化学結合(任意に、単結合、二重結合、三重結合または芳香族の、炭素-炭素結合、ならびに炭素-窒素結合、窒素-窒素結合、炭素-酸素結合、炭素-イオウ結合、リン-酸素結合、およびリン-窒素結合を包含する)との組み合わせのいずれかで結合させる。Lは代表的には、エーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、尿素、ウレタンまたはヒドラジン部分を含む。好適なL部分は、C、N、O、PおよびSからなる群から選択される1〜20個の非水素原子を有し;そしてエーテル、チオエーテル、アミン、エステル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドラジド結合および芳香族またはヘテロ芳香族結合の任意の組み合わせから構成される。好ましくはLは、炭素-炭素単結合およびカルボキサミドまたはチオエーテル結合の組み合わせである。結合Lの最長の線状セグメントは好ましくは、1個または2個のヘテロ原子を含む4〜10個の非水素原子を含む。Lの例は、置換または非置換の、ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル、またはアリールチオである。1つの実施態様において、Lは1〜6個の炭素原子を含み;他の実施態様において、Lはチオエーテル結合である。さらに別の実施態様において、Lは式-(CH2)a(CONH(CH2)b)z-であるかまたはそれを含み、ここでaは0〜5の任意の値を有し、bは1〜5の任意の値を有し、そしてzは0または1である。さらに別の実施態様において、Lは、米国特許第5,714,327号(Houthoffら(1998))に記載される置換プラチナ原子であるかまたはそれを含む。
【0044】
-L-Rxおよび-L-Sc部分は、任意のR2〜R5またはR7〜R16で、好ましくはR13〜R16の1つで、より好ましくはR14またはR15で、発蛍光団と直接結合されるか、あるいはアルキル、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルアミノ置換基の置換基として存在する。1つの実施態様では、R2、R3、R4、R5、R7、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15またはR16のうちの厳密に1つが、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。別の実施態様では、R13、R14、R15、またはR16のうちの厳密に1つが、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。さらに別の実施態様では、R2、R3、R4、R5、R7、R9、またはR10のうちの厳密に1つが、-L-Rxまたは-L-Sc部分である。
【0045】
発蛍光団を結合されるべき物質に結合するのに用いられる反応性基の選択は、一般的に、結合されるべき物質上の官能性基および所望の共有結合のタイプまたは長さに依存する。有機または無機物質上に典型的に存在する官能基のタイプは、アミン、チオール、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、ホスフェート、イミダゾール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、二置換アミン、ハライド、エポキシド、スルホン酸エステル、プリン、ピリミジン、カルボン酸、またはこれらの基の組み合わせを包含するがこれらに限定されない。単独のタイプの反応性部位が物質上で利用可能である場合もあり(典型的には多糖の場合)、あるいは、タンパク質の場合に典型的であるように、多種の部位が存在する場合がある(例えば、アミン、チオール、アルコール、フェノール)。結合物質は、1つ以上の発蛍光団(これらは同じかまたは異なり得る)に結合し得、あるいはハプテン(例えば、ビオチン)でさらに修飾される物質に結合し得る。いくぶんかの選択性は反応条件を注意深く制御することによって得られ得るが、標識の選択性は、適切な反応性染料の選択によって最も良好に得られる。
【0046】
典型的には、Rxはアミン、チオール、アルコール、アルデヒドまたはケトンと反応する。1つの実施態様において、Rxはアクリルアミド、カルボン酸の活性化エステル、アシルアジド、アシルニトリル、アルデヒド、アルキルハライド、アミン、無水物、アニリン、アリールハライド、アジド、アジリジン、ボロネート、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ホスホルアミダイト、スルホニルハライド、またはチオール基である。好ましくは、Rxはカルボン酸、スクシンイミジルエステル、アミン、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアネート、マレイミド基、またはアジドパーフルオロベンズアミド基である。
【0047】
反応性基が光活性化可能性基(例えば、アジド、ジアジリニルまたはアジドアリール誘導体)である場合、染料は適切な波長での照明後、化学的に反応性となる。
【0048】
Rxがカルボン酸のスクシンイミジルエステルである場合、反応性染料はタンパク質またはオリゴヌクレオチドの染料結合体を調製するのに特に有用である。Rxがマレイミドである場合、反応性染料はチオール含有物質への結合に特に有用である。Rxがヒドラジドの場合、反応性染料は過ヨウ素酸塩酸化炭水化物および糖タンパク質への結合に特に有用であり、さらに細胞ミクロインジェクションのアルデヒド固定可能極性トレーサーである。
【0049】
本発明の反応性染料は、発蛍光団の共有結合に適切な官能基を有する任意の結合物質の調製に有用である。特に有用な染料結合体の例として、とりわけ、抗原、ステロイド、ビタミン、薬物、ハプテン、代謝物、毒素、環境汚染物質、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸、核酸ポリマー、炭水化物、脂質、イオン錯形成部分および非生物学的ポリマーの結合体が挙げられる。あるいは、これらは、細胞、細胞系、細胞フラグメント、または細胞下の粒子の結合体である。例には、とりわけ、ウイルス粒子、細菌粒子、ウイルス成分、生体細胞(例えば、動物細胞、植物細胞、細菌、酵母、または原生生物)、または細胞成分が挙げられる。スルホン化反応性染料は、典型的には、細胞表面の、細胞膜、細胞小器官、または細胞質にある反応性部位を標識する。好ましくは、結合物質は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、チラミン、多糖類、イオン錯形成部分、ヌクレオチド、核酸ポリマー、ハプテン、薬物、ホルモン、脂質、脂質アセンブリ、ポリマー、ポリマー性微粒子、生体細胞またはウイルスである。1つの実施態様において、生体ポリマー(例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸ポリマー)の結合体はまた、第2の蛍光または非蛍光染料(本発明の付加的染料を含む)によって標識され、エネルギー移動対を形成する。
【0050】
1つの実施態様において、結合基質(Sc)は、アミノ酸(保護されたアミノ酸、あるいはホスフェート、炭水化物、またはC1〜C22カルボン酸で置換されたアミノ酸を包含する)、あるいはペプチドまたはタンパク質のようなアミノ酸のポリマーである。好適なペプチドの結合体は、少なくとも5個のアミノ酸、より好ましくは5〜36個のアミノ酸を含む。好適なペプチドは、神経ペプチド、サイトカイン、毒素、プロテアーゼ基質、およびタンパク質キナーゼ基質を包含するがこれらに限定されない。好適なタンパク質結合体は、酵素、抗体、レクチン、糖タンパク質、ヒストン、アルブミン、リポタンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、フィコビリンタンパク質(phycobiliprotein)および他の蛍光タンパク質、ホルモン、毒素および成長因子を包含する。典型的には、結合タンパク質は、抗体、抗体フラグメント、アビジン、ストレプトアビジン、トキシン、レクチン、ホルモン、または成長因子である。典型的には、結合物質が毒素である場合、それは神経ペプチドまたはファロイジンのようなファロトキシンである。
【0051】
結合物質がフィコビリンタンパク質である場合、それは典型的には、フィコエリトリン、フィコシアニン、またはアロフィコシアニンであり、好ましくはB-もしくはR-フィコエリトリン、またはアロフィコシアニンである。フィコビリンタンパク質は、任意で化学的に架橋され、特に架橋アロフィコシアニンである。本実施態様において、本発明の染料およびフィコビリンタンパク質はエネルギー移動対を形成し、そしてかなりの程度の蛍光共鳴エネルギー移動を示す(実施例59、図7)。好ましくは、本発明の染料はドナー性染料として振る舞い、そしてフィコビリンタンパク質が究極的なアクセプターとして振る舞い、これは、極長波長蛍光を有する488nm光源での励起を可能にする。あるいは、染料はアクセプター性染料であり、フィコビリンタンパク質が初期ドナー性染料である(実施例41および42、図4)。好ましくは、染料-フィコビリンタンパク質結合体は、100nmより大きな有効Stokesシフトを示し、485〜515nmで染料の極大励起を、そして620nmまたはそれより大きな波長で、フィコビリンタンパク質の極大蛍光を有する。これらのエネルギー移動対は任意で、典型的にはフィコビリンタンパク質を介して結合した、検出可能な標識またはトレーサーとしての使用を容易にする、化学的反応性基または結合物質を含有する。他のタンパク質結合体の場合のように、フィコビリンタンパク質は任意で付加的発蛍光団で標識され、これは同じであってもよくまたは異なってもよく、付加的エネルギー移動染料、ドナー性染料、または究極放射体染料として機能する。
【0052】
別の実施態様において、結合物質(Sc)は核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたは核酸ポリマーであり、本発明の染料の結合のための付加的リンカーまたはスペーサー(例えば、アルキニル結合(米国特許第5,047,519号)、アミノアリル結合(米国特許第4,711,955号)または他の結合)を有するように改変されたものを含む。好ましくは、結合ヌクレオチドは、ヌクレオシド三リン酸あるいはデオキシヌクレオシド三リン酸またはジデオキシヌクレオシド三リン酸である。
【0053】
好適な核酸ポリマー結合体は、標識された、一本鎖または多重鎖の、天然または合成のDNAまたはRNA、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチド、あるいはDNA/RNAハイブリッドであり、あるいはモルホリン誘導体化ホスフェート(AntiVirals,Inc., Corvallis OR)のような一般的ではないリンカーまたはN-(2-アミノエチル)グリシン単位のようなペプチド核酸を取り込む。核酸が合成オリゴヌクレオチドである場合、それは典型的には50より少ないヌクレオチド、より典型的には25より少ないヌクレオチドを含む。より大きな蛍光核酸ポリマーは、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマー化DNAポリメリゼーションを用いた標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドから、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応によってまたはプライマー伸長を介して、あるいは標識化ヌクレオチドの核酸ポリマーへの3'末端への、末端トランスフェラーゼに触媒された付加によって、調製される。典型的には、染料はアミド、エステル、エーテル、チオエーテル結合を介した1つまたはそれ以上のプリンまたはピリミジン塩基を介して結合されるか;あるいはエステル、チオエステル、アミド、エーテルまたはチオエーテルである結合によって、ホスフェートまたは炭水化物へ結合される。あるいは、本発明の染料結合体は、同時に、ビオチンまたはジゴキシゲニンのようなハプテンで、あるいはアルカリホスファターゼのような酵素へ、または抗体のようなタンパク質へ、標識される。本発明の核酸結合体は、DNAポリメラーゼにより容易に組み入れられ、そしてインサイチュハイブリダイゼーション(実施例54)および核酸配列決定(例えば、米国特許第5,332,666号;第5,171,534号;および第4,997,928号;およびWO出願第94/05688号)のため用いられ得る。
【0054】
別の実施態様において、結合物質(Sc)は単糖、二糖、または多糖である炭水化物である。典型的には、Scが炭水化物の場合、それは多糖、例えば、デキストラン、FICOLL、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、デンプン、アガロース、およびセルロースである。あるいは、炭水化物は脂質多糖である多糖類である。好適な多糖結合体は、デキストランまたはFICOLL結合体である。
【0055】
別の実施態様において、結合物質(Sc)は、脂質(典型的には6〜60個の炭素を有する)であり、これには糖脂質、リン脂質、およびスフィンゴ脂質、およびステロイドが包含される。あるいは、結合物質は、リポソームのような脂質アセンブリであり得る。米国特許第5,208,148号に記載のように、親油性部分は結合物質を細胞中に保持するために用いられ得る。
【0056】
イオン錯形成部分を有する結合体は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、または他の生物学的に重要な金属イオンの指示薬として働く。好適なイオン錯形成部分はジアリールジアザクラウンエーテル(米国特許5,405,975号)を包含するクラウンエーテル;BAPTAキレート剤(米国特許第5,453,517号、米国特許第5,516,911号、および米国特許第5,049,673号);APTRAキレート剤(AM.J.PHYSIOL.256、C540(1989));またはピリジン-およびフェナントロリン-ベースの金属イオンキレート剤(米国特許第5,648,270号)である。好ましくは、イオン錯形成部分は、ジアリールジアザクラウンエーテルまたはBAPTAキレート剤である。イオン指示薬は任意で、プラスチックまたはデキストランもしくはミクロスフェアのような生物学的ポリマーに結合して、それらのセンサーとしての有用性を増大させる。あるいは、染料がフルオレセインまたはロドールである場合、染料自体が、個別の染料のpKaから約1.5pH単位以内のpH値で、H+の指示薬として作用する。
【0057】
非生物学的物質の他の結合体は、有機または無機ポリマー、ポリマーフィルム、ポリマーウェハ、ポリマー膜、ポリマー粒子、ポリマー微粒子(磁性および非磁性のミクロスフェアを包含する)、伝導性および非伝導性の金属および非金属、ならびにガラスおよびプラスチック表面および粒子の染料結合体を包含する。結合体は、任意に、適切な官能性を含むスルホン化染料を、ポリマーを調製しながら共重合することによって調製され、あるいは適切な化学反応性を有する官能基を含むポリマーの化学修飾によって調製される。ポリマーの染料結合体を調製するために有用な他のタイプの反応には、アルケンの触媒重合または共重合およびジエンとジエノフィル(dienophile)との反応、エステル交換またはアミノ交換が挙げられる。他の実施態様において、結合物質はガラスまたはシリカを含み、これは光ファイバーまたは他の構造に形成され得る。
【0058】
反応性染料を用いた染料結合体の調製は、例えば、R.Haugland、MOLECULARPROBES HANDBOOK OF FLUORESCENT PROBES AND RESEARCH CHEMICALS 1-3章(1996);およびBrinkley、BIOCONJUGATECHEM.,3,2(1992)に詳細に説明される。結合体は、典型的には、適切なスルホン化反応性染料と結合されるべき物質との両方を溶解可能な適切な溶媒中で混合することによって得られる。本発明の染料は、水溶液に容易に溶解可能であり、ほとんどの生物学的物質との結合反応を促進する。光活性化される染料については、結合はまた照射を必要とする。
【0059】
特異的な結合対の標識化メンバーは、代表的には特異的な結合対の相補メンバーに対する蛍光プローブとして使用され、各特異的結合対メンバーは、他の特定の空間的かつ極性組織と特異的に結合し、そして相補的である表面上またはキャビティの領域を有する。好ましい特異的結合対メンバーは、低分子量リガンド(例えば、ビオチン、薬物-ハプテンおよび蛍光染料(例えば抗フルオレセイン抗体))に非共有結合的に結合するタンパク質である。このようなプローブは、必要に応じて酵素または光によって除去される共有結合部分を含み、あるいはR11はHであり、そして化合物が酸化の後に蛍光を発する。代表的な特異的結合対を表3に示す。
【0060】
【表3】

*IgGは免疫グロブリンである。
†aDNAおよびaRNAは、ハイブリダイゼーションに用いられるアンチセンス(相補)鎖である。
【0061】
本発明の別の実施態様において、スルホン化キサンテン染料は、発蛍光団の蛍光を実質的に変更するブロック部分によって置換され、その後のブロック部分の除去は親染料の蛍光を回復する。代表的には、染料からのブロック部分の切断は、酵素活性によって達成され、ブロックされた染料を酵素基質にする(例えば、Mangelら、米国特許第4,557,862号(1985)に記載のように)。あるいは、ブロック部分は感光性拘束基(caginggroup)(例えば、o-ニトロアリールメチン(α-カルボキシ o-ニトロアリールメチン(Hauglandらへの米国特許第5,635,608号(1997))およびビス-(5-t-ブトキシカルボニルメトキシ)-2-ニトロベンジルを含む)の、2-メトキシ-5-ニトロフェニルの、あるいはデシルの置換または非置換誘導体である。
【0062】
適切にブロックされた染料を用いて検出され得るかまたは定量され得る酵素は、ミクロソームのデアルキラーゼ(例えば、チトクロムP450酵素)、グリコシダーゼ(例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、α-フコシダーゼ、β-グルコサミニダーゼ)、ホスファターゼ、スルファターゼ、エステラーゼ、リパーゼ、グアニジノベンゾエターゼ(guanidinobenzoatase)およびその他を含む。アミノ酸またはペプチドアミドであるロードル染料の結合体は、代表的にはペプチダーゼの基質として有用である。スルホン化キサンテンがチラミン分子に結合される場合、得られる染料-結合体はペルオキシダーゼ酵素の基質として有用である(Bobrowらへの米国特許第5,196,306号に記載のように)。キサンチリウム(xanthylium)染料の還元された誘導体(すなわち、R11がHである式IIのもの)は、電子を取り込む酵素の基質として、または化学的酸化剤、反応性酸素種あるいは一酸化窒素の検出において寄与する。キサンテン染料のスルホン化は、これらの基質の改良された水溶性を提供する。
【0063】
用途および使用方法
本発明の染料化合物は、一般に、上記のようにスルホン化キサンテン染料化合物を検出可能な光学応答を得るために選択される条件下で目的のサンプルと組み合わせることによって使用される。用語「染料化合物」は本明細書中で反応性および非反応性スルホン化キサンテンならびにその結合体を指すものとして使用される。代表的には染料化合物は、サンプルの元素との共有または非共有会合あるいは複合体を形成し、もしくはサンプルの結合またはサンプルの部分内に単に存在する。次いで、サンプルは光学応答を誘発するように選択される波長で照射される。代表的には、サンプルを染色することは、光学応答を標準または予期される応答とさらに比較することにより、サンプルの特定された特徴を決定するために使用される。
【0064】
生物学的用途に関して、本発明の染料化合物は、代表的には当該分野で一般に公知である方法に従って調製される水性、ほぼ水性または水性混和可能溶液中で使用される。染料化合物の正確な濃度は、実験条件および所望の結果に依存するが、しかし代表的には約1nM〜1mM以上の範囲である。最小バックグラウンド蛍光を伴う満足な結果が達成されるまで、最適濃度は系統変動によって決定される。
【0065】
染料化合物は、最も有利には、生物学的成分を有するサンプルを染色するために使用される。サンプルは、成分の不均質混合物(インタクトの細胞、細胞抽出物、細菌、ウイルス、細胞小器官、およびそれらの混合物を含む)、あるいは単独成分または均質の成分群(例えば、天然または合成のアミノ酸、核酸または炭水化物ポリマー、あるいは脂質膜複合体)を含み得る。BrまたはIでさらに1回以上置換されたスルホン化染料は効率的な光増感剤であるが、これらの染料は、通常、生細胞および他の生物学的成分に対して、使用濃度範囲内で非毒性である。
【0066】
染料化合物は任意の染料化合物と目的のサンプル成分との間の接触を促進する方法でサンプルと組み合わされる。代表的には、染料化合物または染料化合物を含む溶液は、単にサンプルに添加される。他のキサンテン誘導体よりも、スルホン化キサンテン誘導体は生物細胞の膜に対して不透過性(impermeant)である傾向があるが、しかし一旦生存可能な細胞の内部に入ると、典型的には良く保持される。原形質膜を透過させる処理(例えば、エレクトロポレーション、ショック処理または高細胞外ATP)は、染料化合物を細胞内に導入するために使用され得る。あるいは、染料化合物は圧力マイクロインジェクション、スクラップローディング(scrapeloading)、パッチクランプ法、ファゴサイトーシス、または飲細胞作用ベシクルの浸透圧性溶解によって細胞内に挿入される。
【0067】
アミンまたはヒドラジン残基を導入するスルホン化キサンテン染料は、細胞内にマイクロインジェクションされ得、ここでそれらはアルデヒド固定液(例えば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒド)によってあるべき場所に固定され得る。この固定性(fixability)により、このような染料は細胞内用途(例えば、ニューロンのトレース)に関して有用になる。
【0068】
スルホネート部分およびその膜に対する相対不透過性による水中への発蛍光団の可溶化は、他の染料化合物に関する当該分野で一般に公知の方法に従って、本発明の染料化合物に極性トレーサーとしての特別な有用性を付与する(例えば、Stewartへの米国特許第4,473,693号(1984)(ルシファーイエローを用いる)、およびHauglandらへの米国特許第5,514,710号(1996)(ケージ化ヒドロキシピレンスルホン酸を用いる)を参照のこと)。スルホン化キサンテン染料が、光反応性である場合、得られた極性トレーサーは光固定可能である。
【0069】
親油性置換基を有する染料化合物(例えば、リン脂質)は、(例えば、膜構造に対するプローブとしての使用するため;またはリポソーム、リポタンパク質、フィルム、プラスチック、親油性ミクロスフィアまたは同様の物質中への組み込みのため;あるいはトレースのために)脂質アセンブリに非共有結合的に導入される。親油性スルホン化キサンテン染料は、膜構造の蛍光プローブとして有用であり、ここでスルホン酸部分は膜の表面またはその近傍でのプローブの捕捉を可能にする。
【0070】
化学反応性染料化合物は、広範な種々の物質の対応する官能基に共有結合的に結合する。染料化合物(光反応性バージョンを含む)を細胞上または細胞内の標識反応性部位に用いると、サンプル中のそれらの存在あるいは量、アクセス可能性、またはそれらの空間的および時間的分布を決定することが可能である。本発明の染料の生物学的細胞の膜に対する相対不透過性は、それらに生細胞中のタンパク質分布のトポグラフィーを評価するための蛍光プローブとして、または単一細胞生存可能性の指示薬としての利用可能性を付与する(実施例55)。
【0071】
細胞環境の外側では、中性pHにおける染料化合物の負電荷もまた、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、HPLCまたは他の分離方法による分析に関する炭水化物、薬物および他の低分子量化合物の染料結合体の電気泳動的な分離を促進する。たとえ複数の発蛍光団で標識化した後も、スルホン化キサンテン誘導体が中性pHで完全にイオン化されているので、結合体の沈殿は最小化される。
【0072】
サンプルは、必要に応じて、1つ以上のさらなる検出試薬と組み合わされる。さらなる検出試薬は、代表的には、当該分野で一般に公知である方法によって検出可能な応答を生じ、この応答は特異的な細胞成分の存在、細胞内物質、または細胞条件に起因する。さらなる検出試薬が、目的の染料化合物のスペクトル特性と異なるスペクトル特性を有する、またはそのようなスペクトル特性を有する生成物をもたらす場合、多色用途が可能である。これは、さらなる検出試薬が、他の染料のスペクトル特性と検出可能に区別されるスペクトル特性を有する本発明の染料または染料結合体である場合に有用である。
【0073】
染料結合体である本発明の化合物は当該分野で周知である方法(例えば、顕微鏡研究における抗体結合体の使用および免疫蛍光アッセイ;および核酸ハイブリダイゼーションアッセイならびに核酸シークエンシングに関するヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド結合体(例えば、Proberらへの米国特許第5,332,666号(1994);Smithらへの同5,171,534号(1992);Hobbsへの同4,997,928号(1991);およびMenchenらへのWO出願94/05688号)))に従って用いられる。本発明の複数の独立染料の染料結合体は、多色用途に関する利用可能性を有する。
【0074】
抗体の発蛍光団への染料結合体は、蛍光の増幅に関する利用可能性を有する。例えば、本発明のスルホン化ローダミン染料は抗フルオレセインと交差反応性を示さない。フルオレセイン標識を増幅するための緑色蛍光スルホン化キサンテン染料に結合された抗フルオレセイン抗体の使用は、シグナルの増幅および光安定化の両方をもたらし、これは本発明の染料の高い光安定性に起因する。標識化抗体はまた多色用途に有用であり、フルオレセイン標識化と組み合わせる赤色蛍光抗フルオレセイン抗体の使用が、明るく、光安定な赤色蛍光シグナルを生じる。
【0075】
染色後または染色中の任意の時点で、サンプルは選択された光の波長で照射されて検出可能な光学応答を生じ、そして光学応答を検出する手段で観測される。適切な照射装置は以下のものを含むが、これらに限定されない:ハンドヘルド紫外線ランプ、水銀アークランプ、キセノンランプ、レーザーおよびレーザーダイオード。これらの照射源は必要に応じて、レーザースキャナー、蛍光マイクロプレートリーダー、標準あるいは小型蛍光光度計、またはクロマトグラフィー検出器の中に組み込まれる。
【0076】
検出可能な光学応答は、観測または装置のいずれかによって検出され得る光学シグナルの変化または発生を意味する。代表的には、検出可能な応答は蛍光の変化(例えば、強度、励起または蛍光の発光波長分布、蛍光継続時間(lifetime)、蛍光偏光、またはそれらの組み合わせの変化)である。染色の度合いおよび/または位置は、標準または予期される応答と比較して、サンプルが所定の特性を有するか否か、どの程度までなのかを示す。
【0077】
光学応答は、必要に応じて、目視、または以下のデバイスのうちのいずれかの使用によって検出される:CCDカメラ、ビデオカメラ、写真用フィルム、レーザースキャニングデバイス、蛍光光度計、フォトダイオード、量子カウンター、エピ蛍光(epifluorescence)顕微鏡、走査型顕微鏡、フローサイトメーター、蛍光マルチプレートリーダー、あるいはシグナルを増幅する手段(例えば、光倍増管)。サンプルがフローサイトメーターを用いて検査される場合、サンプルの検査は必要に応じて、それらの蛍光応答によるサンプルの分類部分を含む。
【0078】
染料合成
キサンチリウム染料は、代表的には適切なレゾルシノールまたはアミノフェノールと安息香酸、フタル酸あるいは無水フタル酸、またはスルホ安息香酸あるいは無水スルホ安息香酸の種々の誘導体との縮合によって調製される。この縮合は、種々の酸触媒の存在下または非存在下で生じる。水性ワークアップ、次いで代表的にはカラムクロマトグラフィーによって、所望のキサンチリウム染料が得られる。
【0079】
非対称キサンチリウム染料(例えば、ロドール、非対称フルオレセイン、または非対称ローダミン)に関して、縮合は適切な置換または非置換レゾルシノールまたはアミノフェノールのそれぞれ1当量と、異なるレゾルシノール、アミノフェノール1当量、および適切なフタル酸誘導体またはベンズアルデヒド(上記に列記した)1当量とを用いて酸触媒を使用して行われ得る(Khannaら、米国特許第4,439,359号(1984)、およびHauglandら、米国特許第5,227,487(1993))。所望の非対称キサンチリウム染料は、当該分野で周知である結晶化またはクロマトグラフィー技術を用いて任意の望ましくない対称染料副生成物から分離される。
【0080】
非対称キサンチリウム染料はまた、ステップワイズ法で構築され得る:選択されたレゾルシノールまたはアミノフェノールは、1当量の適切なフタル酸誘導体またはベンズアルデヒドと縮合され、ベンゾフェノンを得る。これは代表的には単離され、精製され、そして1当量の異なるレゾルシノールまたはアミノフェノールと縮合され、非対称染料を得る。
【0081】
キサンチリウム染料のスルホン化は、適切な温度において代表的には発煙硫酸(20〜30%SO3含有)または濃硫酸中で染料を撹拌することによって行われる。利用可能な場合、スルホン化は4'-位および5'-位のいずれかに生じ、または/およびキサンチリウム染料がビニル置換基によって置換されている場合、キサンチリウムのビニルメチル基に生じる。フルオレセイン誘導体の4'-および5'-位のスルホン化は、代表的には、発煙硫酸(20〜30%)中の所望のフルオレセイン誘導体の溶液を撹拌することによって行われる。キサンチリウム環上に電子供与基を有するフルオレセイン誘導体は、代表的には室温でスルホン化され、一方電子吸引基(例えば、キサンチリウム環上のフッ素および塩素)を有するフルオレセイン誘導体は、代表的には上昇した温度(例えば、100〜110℃)でスルホン化される。ロドール染料のモノスルホン化は、0℃で数時間発煙硫酸中で適切なロドール染料を撹拌することにより行われる。利用可能である場合、4'-位および5'-位の両方でロドールのビススルホン化は、室温で数時間発煙硫酸中の染料を撹拌することにより達成される。利用可能である場合、ほとんどのローダミンまたはローザミン(rosamine)染料の4'-位および5'-位でのスルホン化は、0℃で発煙硫酸を用いて行われる;スルホン化は通常、均質な溶液が撹拌中に達成されるとすぐ完了する。キサンチリウム染料がビニルメチル基を有する場合、ビニルメチルでのスルホン化は、室温で濃硫酸と処理することにより達成される。4'-位および5'-位がまたスルホン化に利用可能な場合、スルホン化はこれらの位置でも起こり得るが、ただし発煙硫酸はスルホン化剤として使用される。
【0082】
キサンチリウム染料の縮合後修飾(post-condensationmodification)は、周知である。例えば、染料のキサンテン部分は、適切なハロゲン化剤(例えば、液体臭素)で処理することにより、ハロゲン化され得る。不飽和縮合環(fusedring)を含むキサンテンは、飽和誘導体に水素化され得る。無水トリメリット酸またはその誘導体が染料の合成に使用される場合、代表的には、2つの異性体カルボン酸が形成される。これらの異性体は、分離されるか、またはほとんどの場合、異性体の混合物として使用される。キサンチリウム染料の還元された誘導体(すなわち、R11がHである、式IIの化合物)は、キサンテン部分を、有機溶媒中で亜鉛末または水素化ホウ素を用いて化学的に還元することにより調製される。非スルホン化キサンテンと同様に、スルホン化されたキサンテンのアミノ基およびヒドロキシル基は、アシル化もしくはアルキル化されて、アミド、エステル、およびエーテルを生じ得、これらのいくつかは、酵素基質、ケージ化染料(cageddye)、または蛍光プローブである。
【0083】
キサンチリウム染料の縮合における、適切なポリハロゲン化フタル酸誘導体またはベンズアルデヒドの選択により、9−位にテトラもしくはペンタ塩素化フェニル環またはテトラもしくはペンタフッ素化フェニル環を有する染料を生じる。これらのポリハロアリール置換染料は、転位反応により、チオールと反応し、それによりさらなる反応性基を導入する容易な方法を提供することが示されている(実施例19;およびGeeら、TET. LETT. 37、7905(1996)により議論される)。
【0084】
本発明の染料のジヒドロキサンテンおよびキサンチリウムバージョンは、周知の酸化剤(例えば、分子酸素、一酸化窒素、ペルオキシニトリル、重クロム酸塩、トリフェニルカルベニウム、およびクロラニル)または還元剤(例えば、水素化ホウ素物、水素化アルミニウム、水素/触媒、および亜ジチオン酸)により、自由に相互変換可能である。このキサンテンはまた、酵素作用(過酸化物と組み合わせた西洋ワサビペルオキシダーゼ)により、または一酸化窒素により、酸化される。
【0085】
選択されたスルホン化発蛍光団のための合成ストラテジー、ならびにその特徴付け、合成前駆体、結合体、および使用方法を、以下に示す。以下の実施例は、本発明の実施を例示するために提供される。これらは、本発明の全範囲を限定または規定することを意図していない。
【実施例】
【0086】
実施例1.化合物2の合成:
【0087】
【化9】

7-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン(20g、74mmol)、無水トリメリット酸(10g、52mmol)、およびZnCl2の混合物を、撹拌しながら、3時間、220℃〜230℃に加熱する。熱い反応混合物に、150mLの水を添加する。得られた沈殿物を濾過し、水(3×50mL)で洗浄し、そして乾燥させる。粗生成物を、MeOH/CHCl3を用いてシリカゲル上で精製する。収量:10g。
【0088】
実施例2.化合物6の調製:
【0089】
【化10】

化合物6を、プロピオン酸(50mL)中の7-ヒドロキシ-1,2,2,4-テトラメチル-1,2-ジヒドロキノリン(15.2g、74.9mmol)、無水トリメリット酸(9.35g、48.7mmol)、およびp-トルエンスルホン酸(1g)を用いること以外は、化合物2(実施例1)と同様に調製する。還流下で24時間加熱した後、混合物を、2%HCl(2L)中に注ぐ。粗生成物を、回収し、乾燥させ、そしてCHCl3/MeOH(10:1〜10:3)を用いてシリカゲル上で精製する(8g、36%)。
【0090】
実施例3.化合物8の調製:
【0091】
【化11】

化合物8を、8-ヒドロキシユロリジン、7-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、および無水トリメリット酸のそれぞれ1当量を用いた以外は、化合物6(実施例2)と同様に調製する。
【0092】
実施例4.化合物15の調製:
【0093】
【化12】

化合物15を、無水トリメリット酸の代わりに無水テトラフルオロフタル酸を用いて、化合物6(実施例2)と同様に調製する。
【0094】
実施例5.化合物28の調製:
【0095】
【化13】

化合物6のニトロ置換アナログを、実施例4に記載の方法を用いて、7-ヒドロキシ-N-メチル-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンおよび無水4-ニトロフタル酸から調製する。McKinneyら(McKinneyら,J.ORG. CHEM. 27, 3986(1962))に記載の方法を用いるニトロ基の還元により、化合物28が得られる。
【0096】
実施例6.化合物10の調製:
【0097】
【化14】

7-ヒドロキシ-1,2,2,4-テトラメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンヒドロブロミド(25.8g、94.9mmol)および4-カルボキシベンズアルデヒド(7.1g、47.3mmol)の混合物を、130℃で4時間、120mLの70%H2SO4中で撹拌する。溶液を0℃まで冷却し、次いで70%KOHを用いてpH7に中和する。得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させる。固体を、300mLのMeOH中で懸濁させ、そしてクロラニル(11.6g、47.3mL)を添加する。懸濁液を、還流下で2時間加熱し、室温まで冷却し、そして100mLまでロータリーエバポレートする。エーテル(500mL)を添加し、そして沈殿物を濾過する。粗生成物を、MeOH/CHCl3を用いてシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製する。収量:40%。
【0098】
実施例7.化合物13の調製:
【0099】
【化15】

7-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(6g、22.2mmol)および4-カルボキシベンズアルデヒド(2.1g、14mmol)の混合物を、150℃〜160℃で、6〜7時間撹拌する。混合物を、MeOH(300mL)中に溶解させ、そして約50mLまでエバポレートし、そしてEt2O(1.2L)中に注ぐ。粗生成物を回収し、そしてCHCl3:MeOH=7:3を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する(2.5g、21%)。
【0100】
実施例8.化合物1の調製:
【0101】
【化16】

5-(および-6)-カルボキシローダミン110塩酸塩(8.14g、19.8mmol;MolecularProbes, Inc.. Eugene, OR)を、氷浴中で、30%発煙H2SO4(50mL)に、分割してゆっくりと添加する。12時間後、0℃で、溶液を600mLの冷却したジオキサン中に注ぎ、そして1.2LのEt2Oを添加する。懸濁液を、ケイ藻土を通して濾過する。濾過ケーキを、1.2LMeOH中に懸濁させ、そしてpHを、トリエチルアミンを用いて約10に調整する。混合物を濾過し、そして濾液をエバポレートする。残渣を、水を溶離液として用いてSEPHADEXLH-20上で精製し、化合物1を、オレンジ色の固体(9g)として得る。
【0102】
実施例9.化合物3の調製:
【0103】
【化17】

化合物3を、LiOHを用いてMeOH懸濁液を塩基性化したこと以外は、実施例8に記載の方法を用いて、化合物2から調製した。
【0104】
実施例10.化合物9の調製:
【0105】
【化18】

化合物9を、実施例9に記載の手順を用いて、化合物8から調製する。
【0106】
実施例11.化合物11の調製:
【0107】
【化19】

化合物11を、実施例9に記載の手順を用いて、化合物10から調製する。
【0108】
実施例12.化合物17の調製:
【0109】
【化20】

化合物17を、実施例9に記載の手順を用いて、6-アミノ-9-(2',4'-(または5')-ジカルボキシフェニル)-3H-キサンテン-3-オンから調製する。Abs:493em(pH9);Em:518nm(pH9)。
【0110】
実施例13.化合物18の調製:
【0111】
【化21】

5-カルボキシ-2',7'-ジクロロスルホンフルオレセイン(1g、2.1mmol)を、15mLの30%発煙H2SO4に添加する。混合物を、撹拌しながら、4時間、110℃まで加熱し、次いで、室温まで冷却し、そして氷中に注ぐ。次いで、沈殿物を6%NaClから再結晶させて、明るい黄色の結晶を得る。収量:70%。
【0112】
実施例14.化合物7の調製:
【0113】
【化22】

濃H2SO4(20mL)に、0℃にて、化合物6(1.7g、3.02mmol)を添加する。混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで、室温で2日間撹拌する。ジオキサン(30mL)およびEt2O(1L)を添加する。沈殿物を、ケイ藻土を通して濾過する。濾過ケーキを、H2O中に懸濁させ、そして固体NaHCO3を用いて中和する。濾過の後、濾液をエバポレートし、そして残渣をシリカゲル上でのクロマトグラフィー(溶離液:CH3CN:H2O=8:2)、その後のSEPHADEXLH-20上でのクロマトグラフィー(溶離液: H2O)により精製する。生成物を、リチウム陽イオン交換樹脂を用いる処理により、リチウム塩に変換する。収量:0.7g(31%)。
【0114】
実施例15.化合物12の調製:
【0115】
【化23】

MeOH(10mL)中の、化合物7(100mg、0.14mmol)および10%Pd/C(30mg)の混合物を、45psiで、一晩水素化する。粗生成物を、CH3CN:H2O=8:2を溶離液として用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製する(15mg、14%)。
【0116】
実施例16.化合物16の調製:
【0117】
【化24】

化合物16を、実施例14に記載の方法を用いて、化合物15から調製する。
【0118】
実施例17.化合物40の調製:
【0119】
【化25】

化合物40を、実施例2に記載の手順を用いて、無水テトラクロロフタル酸および7-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンから調製する。
【0120】
実施例18.化合物41の調製:
【0121】
【化26】

化合物41を、実施例8に記載の手順を用いて、化合物40および発煙硫酸から調製した。Abs:557(MeOH);Em:574nm(MeOH)。
【0122】
実施例19.化合物42の調製:
【0123】
【化27】

5mLのDMF中の化合物42(425mg、0.54mmol)の溶液に、窒素下で、メルカプト酢酸(99mg、1.07mmol)および酢酸ナトリウム(219mg、2.67mmol)を添加する。溶液を一晩撹拌し、次いで、真空中でエバポレートして乾燥させる。粗生成物を、CH3CN:H2O=85:15を用いて溶離するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製する。収量:79%。
【0124】
実施例20.化合物14の調製:
【0125】
【化28】

化合物14を、実施例14に記載の手順を用いて、化合物13から調製する。
【0126】
実施例21.化合物30の調製:
【0127】
【化29】

化合物30を、実施例14に記載の方法を用いて、化合物28から調製する。
【0128】
実施例22.化合物19の調製:
【0129】
【化30】

10:4DMF/H2O(14mL)中の化合物1(200mg、0,36mmol)に、0℃にて、DMF(6mL)中のO-スクシンイミジル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(330mg、1.10mmol)を添加する。30分後、0℃において、この溶液をエバポレートする。残渣を、CH3CN:H2O=8:2を溶離液として用いるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製する(60mg、26%)。
【0130】
実施例23.化合物20の調製:
【0131】
【化31】

化合物20を、実施例22に記載の方法を用いて、化合物11から調製する。収量:80%。
【0132】
実施例24.化合物21の調製:
【0133】
【化32】

化合物21を、実施例22に記載の方法を用いて、化合物14から調製する。
【0134】
実施例25.化合物22の調製:
【0135】
【化33】

H2O(2mL)中の化合物7のスクシンイミジルエステル(実施例22に記載の方法を用いて調製される)(17.3mg、21.1μmol)の溶液に、アミノカプロン酸(5mg、38μmol)、次いでN,N-ジイソプロピルエチルアミン8滴を添加する。15分後、溶液をエバポレートし、そして残渣を、CH3CN:H2O=85:15を溶離液として用いてシリカゲル上で精製する。生成物を、Li+カチオン交換樹脂で処理して、化合物22(8mg)を得る。
【0136】
実施例26:化合物23の調製:
【0137】
【化34】

化合物23を、実施例22に記載の方法を用いて、化合物22から調製する。
【0138】
実施例27.化合物26の調製:
【0139】
【化35】

H2O(10mL)中の化合物19(100mg、0.16mmol)に、CH3CN(6mL)中のN-t-BOC-カダベリン(300mg、1.58mmol)を添加する。45分後、混合物をエバポレートして乾燥させる。残渣を、CH3CN:H2O=85:15を用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。精製された化合物を、水中に溶解させ、そしてNa+カチオン交換樹脂を用いて処理して、化合物26(40mg、34%)を得る。
【0140】
実施例28.化合物27の調製:
【0141】
【化36】

化合物26(300mg、0.41mmol)に、0℃において、冷却したトリフルオロ酢酸(5mL)を添加する。15分後、0℃において、混合物をエバポレートする。残渣を、Et3N(2mL)を有するCH3OH(20mL)およびH2O(30mL)中に溶解させる。溶液をエバポレートし、そして残渣を、SEPHADEXLH-20上で精製して、化合物27を得る。Na+塩を、Na+カチオン交換樹脂を用いて調製する。
【0142】
実施例29.化合物43の調製:
【0143】
【化37】

DMF中の、等モル量の化合物27およびトリエチルアミンの溶液に、1当量の4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸スクシンイミジルエステルを添加する。4時間撹拌した後、反応混合物をエバポレートし、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、化合物43を得る。
【0144】
実施例30.化合物24の調製:
【0145】
【化38】

H2O中の、化合物7のスクシンイミジルエステル(10mg、12μmol)に、CH3CN中のN-(5-アミノペンチル)マレイミドトリフルオロ酢酸(5mg、17μmol)、続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミン1滴を添加する。15分後、混合物をエバポレートして乾燥させる。残渣を、CH3CN:H2O=85:15を用いるシリカゲルにより精製し、次いで、Na+カチオン交換樹脂を用いてNa+塩に転化して、化合物24(6mg)を得る。
【0146】
実施例31.化合物25の調製:
【0147】
【化39】

化合物25を、実施例30に記載の方法を用いて、化合物19から調製する。
【0148】
実施例32.化合物31の調製:
【0149】
【化40】

化合物30を、過剰のチオホスゲンを用いて、イソチオシアネートの調製のための標準的な方法を用いて処理することにより、化合物31を調製する。
【0150】
実施例33.化合物33の調製:
【0151】
【化41】

DMF(10mL)中の化合物21(0.28g、0.37mmol)に、0℃で、t-ブチルカルバゼート(0.15g、1.12mmol)を添加する。30分後、この溶液をエバポレートする。この中間体を、CH3CN/H2O(9:1)を用いて、シリカゲル上で精製する。トリフルオロ酢酸(3mL)を添加し、溶液を0℃にて15分間撹拌し、次いでエバポレートする。生成物を、SEPHADEXLH-20上で精製する(H2Oで溶離)。Na+塩を、Na+陽イオン交換樹脂を用いて、イオン交換樹脂により調製する。
【0152】
実施例34.スルホン化ローダミンのファロイジン結合体(化合物35)の調製
アミノファロイジンp-トルエンスルホネート(3.5mg, 4μmol)およびDMF中の化合物7(5.0mg,5μmol)のスクシンイミジルエステルを、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(3μL, 17μmol)に添加する。混合物を室温で3時間撹拌する。これに、7mLのジエチルエーテルを添加する。固体を遠心分離によって回収する。粗生成物をSEPHADEXLH-20で精製し、水で溶出し、純粋な化合物35(4.0mg)を得る。
【0153】
実施例35.ヌクレオチド染料-結合体の調製
水(100μL)中の5-(3-アミノアリル)-2'-デオキシウリジン5'-トリホスフェート(SigmaChemical)(2mg)に、DMF(100μL)中の化合物19(3mg)およびトリエチルアミン(5μL)を添加する。3時間後、溶液をエバポレートし、そして残渣をHPLCによって精製する。生成物の画分を凍結乾燥し、緑色の蛍光性ヌクレオチド結合体(化合物36)を得る。
【0154】
あるいは、デオキシウリジン5'-トリホスフェートの蛍光染料結合体を5-(3-アミノ-1-プロピニル)-2'-デオキシウリジン5'-トリホスフェートから(Hobbs,Jr.ら、前出に記載のように)調製する。
【0155】
実施例36.オリゴヌクレオチド染料-結合体の調製
5'-アミン修飾, 18-塩基M13プライマー配列(約100μg)を0.1Mトリス-EDTAバッファー(4μL)中に溶解する。これに、0.1Mホウ酸ナトリウム(100μL)中の化合物25(実施例31)(250μg)(pH8.5)を添加する。16時間後、5M NaCl(10μL)および3容量の冷エタノールを添加する。混合物を-20℃に冷却し、遠心分離し、上清をデカントし、ペレットをエタノールですすぎ、次いでHO(100μL)中に溶解する。標識オリゴヌクレオチドを、300AC8逆相カラムで、0.1M トリエチルアンモニウムアセテート(pH 約7)およびアセトニトリル(5→45%を40分かけて)のランプグラジエントを用いる、HPLCによって精製する。所望のピークを集め、そしてエバポレートし、蛍光オリゴヌクレオチドを得る。
【0156】
実施例37.薬剤染料-結合体の調製:
蛍光ドーパミンDアンタゴニストを以下のように調製する:N-(p-アミノフェネチル)スピペロン(Amlaikyら、FEBSLETT 176, 436(1984))(10mg)およびDMF(1mL)中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(10μL)に、化合物31(実施例32)(15mg)を添加する。3時間後、反応混合物をエタノール(5mL)に注ぐ。沈殿物を遠心分離し、次いでクロロホルム中10〜30%メタノールを用いるシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製する。
【0157】
実施例38.スルホン化キサンテン染料のタンパク質結合体
ヤギ抗-マウスIgGまたはストレプトアビジンの染料結合体のシリーズを、標準法(Hauglandら、METH.MOL.BIOL.45,205(1995); Haugland、METH.MOL.BIOL.45, 223(1995); Haugland、METH.MOL.BIOL.45,235(1995))によって、以下の発蛍光団の反応性スクシンイミジルエステルを用いて調製する:化合物1、化合物4、化合物5、化合物7、化合物14、フルオレセイン、およびCY-3、RHODAMINEGREEN、RHODOL GREEN、RHODAMINE RED-X、およびTEXAS RED-X染料。
【0158】
所望のタンパク質の溶液を0.1M ジカルボン酸ナトリウム中10mg/mLで調製する。標識化剤をDMFまたは水中に10mg/mLで溶解させる。所定の量の標識化剤を撹拌しながらタンパク質溶液に添加する。10当量の染料対1当量のタンパク質のモル比が典型的であるが、最適量は特定の標識化剤、標識されるタンパク質、およびタンパク質濃度によって変化し、そして経験的に決定される。反応混合物を室温で1時間か、または氷上で数時間インキュベートする。染料-タンパク質結合体を典型的に、遊離の未反応の試薬からサイズ排除クロマトグラフィーによってPBSで平衡にされたCELLUFINEGH-25で分離する。着色バンドを含む初期タンパク質を集め、そして置換の程度を、各発蛍光団の吸光度最大値での吸光度から、表4に示される吸光係数を用いて決定する。280nmでの染料の吸光度を280nmでの結合体の総吸光度から引いて、タンパク質の濃度を得る。化合物5のヤギ抗-マウスIgG結合体(DOS=7)とテトラメチルローダミンのヤギ抗-マウスIgG結合体(DOS=4.3)との同じタンパク質濃度における吸光度の比較を表1に得る。本発明の結合体は、1つのみの吸光度ピーク(545nm)を示すが、テトラメチルローダミン結合体は、2つの吸光度ピーク(558nmおよび522nm)を示す。522nmのテトラメチルローダミンのピークは、非蛍光ローダミンダイマーの存在によるものである。中程度から高レベルの染料置換体でのいくつかのローダミン発蛍光団の凝集する傾向は、これらの染料-結合体から得られ得る有用なシグナルを制限する。
【0159】
【表4】

吸光係数は、水溶液中の遊離カルボン酸に関して決定される。
【0160】
抗体フラグメント、他のアビジン、および他のタンパク質のタンパク質結合体を調製し、そして同様に分析する。
【0161】
実施例39.過ヨウ素酸−酸化タンパク質の蛍光標識化
1mLの0.1M アセテート、0.135M NaCl(pH 5.5)中の各5mgのヤギIgG抗体の2つのサンプルを、氷上で、2.1mgのメタ過ヨウ素酸ナトリウムで、それぞれ1時間および2時間処理する。反応をエチレングリコール(30μL)の添加によって停止させる。抗体を、PBS(pH7.2)中に詰められたMATREX GH 25カラム(1cm×30cm)で精製する。1/10容量の1M 重炭酸ナトリウムを添加してpHを上げ、そして化合物30(実施例2)を100:1の染料のタンパク質に対する比で添加する。反応系を室温で2時間撹拌する。シアン化水素臭化ナトリウムを10mMの最終濃度に添加し、そして反応系を室温で4時間撹拌する。抗体結合体を透析およびMATREXGH 25カラムによって上記のように精製する。典型的に1時間酸化された抗体は、IgG1モルに対して染料1モルの置換を生じる。2時間酸化された抗体は、IgG1モルに対して染料1.7モルの置換を生じる。
【0162】
実施例40.置換の程度の関数としての選択された染料-タンパク質結合体の総蛍光
ヤギ抗-マウスIgG結合体のシリーズを実施例39のように調製し、類似の程度の置換を有する誘導体(DOS)を得る。蛍光を測定する場合、スルホン化-キサンテン染料結合体の蛍光は典型的に、スペクトル的に類似の染料の蛍光よりも大きい(表5)。図2に示すように、化合物5(DOS4.0)およびCY-3(DOS 3.8)の同じ溶液の最適な密度でのヤギ抗-マウスIgG結合体の蛍光発光スペクトルは、実質的に、530nmで励起される場合、本発明の染料-結合体による増強された蛍光を明らかにする。
【0163】
【表5】

a.ヤギ抗-マウスIgG結合体
さらに、化合物1、4、5、7および14の抗体結合体の蛍光は、比較的高い置換の程度においてさえもクエンチしない(例えば、化合物7ヤギ抗-マウスIgG結合体およびTEXAS RED-Xヤギ抗-マウスIgG結合体についての図3に示される)。同様の結果を、レクチン、プロテインA、トランスフェリン、フィブロネクチン、酵素、リポタンパク質、糖タンパク質、および神経ペプチドを含む、他のペプチドおよびタンパク質に関して見出す。
【0164】
実施例41.チオール反応性スルホン化キサンテン染料によるR-フィコエリトリンの標識化
PBS(160μL)中のピリジルジスルフィド-修飾R-フィコエリトリン(MolecularProbes, Inc.)(0.9mg)(pH 7.5)を、トリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィンで処理し、ジスルフィドをチオールに還元する。チオール化タンパク質を化合物24(実施例30)の20mg/mLDMF溶液(8μL)で処理する。未反応の染料をスピンカラムで取り除く。染料による置換の程度を、595nmにおけるε=52,600cm−1M−1を用いて算出する。タンパク質濃度を488nmでの吸光度(その波長での化合物24の吸光度で補正)から算出する。
【0165】
実施例42.R-フィコエリトリンのスルホン化-ローダミン結合体における蛍光エネルギー伝達
実施例41のR-フェコエリトリン結合体を488nmで励起させ、そして同一の波長で励起された未修飾のR-フィコエリトリンのものと比較する。図4は、タンパク質からスルホン化ローダミン染料へのより高い効果的なエネルギー伝達を示す。ストレプトアビジンとのこの複合体の結合体を、本質的に、Haugland(METH.MOL. BIOL. 45, 205(1995)(前出))によって記載されたように調製する。この結合体はエネルギー伝達特性を保持し、そして励起のためにアルゴンイオンレーザーを利用するフローサイトメータでの細胞染色に有用である。
【0166】
実施例43.コムギ胚凝集素染料-結合体の標識化および使用
コムギ胚凝集素(170mg,EY Laboratories)を、N-アセチルグルコサミン(14.9mg)を含むNaCO(pH9.0)(5mL)中に溶解させる。これに、化合物19(実施例22)(14.8mg)を添加する。1時間後、この溶液をゲル濾過にて精製する。1分子当たりの2〜3の染料の置換の程度を490nmにおける吸光度から決定する。
【0167】
Staphylococcus aureusを得られる結合体(化合物37)で室温で15分間染色する。化合物37で染色された細菌は、定量顕微鏡で測定すると、フルオレセインコムギ胚凝集素結合体で同様に染色された細菌よりも1.4倍明るい。Sizemoreら(米国特許第5,137,810号)に従って使用する場合、化合物37は、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌とを区別し得る。
【0168】
実施例44.培養された哺乳動物細胞でのアクチンおよびチューブリンの同時標識化
ウシの肺動脈細胞(BPAEC)を、ガラス上で30〜50%コンフルエンスに増殖させる。細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定し、0.2%TritonX-100で浸透させ、そして6%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックする。すべての細胞をマウスモノクローナル抗-α-チューブリンで60分間インキュベートする。次いで、細胞を洗浄し、そして染色のために2つのグループに分ける。
【0169】
細胞の第1のグループをヤギ抗-マウスIgGおよび化合物5の結合体で30分間標識化し、洗浄し、次いでファロイジン染料-結合体(化合物35、実施例33)でさらに30分間インキュベートする。細胞の第2のグループをCY-3結合ヤギ抗-マウスIgGで30分間標識化し、次いでフルオレセイン-結合ファロイジンで標識化する。細胞の両方のグループを、赤色蛍光をデコレートした(decorated)微小管および緑色蛍光でデコレートしたアクチンフィラメントに置く。
【0170】
細胞の両方のグループの緑色および赤色シグナルの光退色の間の定量強度測定を、スライドを485nm励起に曝露し、そしてCCDカメラを用いて緑色および赤色細胞蛍光強度を獲得することによって行う。
【0171】
PBSでマウントされた細胞からのフルオレセインおよびCY-3シグナルは、それぞれ、化合物35および化合物5の抗-マウス結合体より低い初期強度および/またはより速い光退色を有する。他の細胞内成分を、必要に応じて、識別可能なスペクトルを有するさらなる染料で染色する。例えば、細胞核をDAPIを用いて青色蛍光で染色し、一方、他の細胞抗原をCY-5の抗体結合体と共に、濃赤色蛍光で染色する。
【0172】
実施例45.スルホン化キサンテン染料-結合体により染色された細胞の光退色
アクチンフィラメントを化合物35またはフルオレセインファロイジンで染色する。洗浄後、各サンプルを連続的に照射し、蛍光顕微鏡で観察する。相対光退色速度は、図5に示されるように、スルホン化ローダミン染料-ファロイジン結合体の優れた光安定性を明らかに示す。
【0173】
実施例46.免疫試薬(immunoreagent)としてのタンパク質染料-結合体の有用性および光退色に対する耐性
表5の染料の抗体結合体を、約4〜6の置換の程度で調製する。INOVAスライドをPBS中1%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分間水和する。スライドをドレインし、ヒト自己-抗体をアプライし、スライドを30分間インキュベートし、そしてPBS中ですすぐ。マウス抗-ヒト抗体をアプライし、スライドを30分間インキュベートし、PBS中ですすぐ。1%BSA/PBS中で希釈した各蛍光抗-マウス抗体結合体を10μg/mL溶液としてアプライした。洗浄およびマウント後、サンプルを適切なフィルターを通して観察する。すべてのサンプルが主として核染色を呈する。定量強度測定により染料の比較が可能になる。同様の結果が、ビオチン標識された抗-マウス調製物および蛍光ストレプトアビジン結合体を用いて得られる。
【0174】
光退色測定について、連続照射しながら、100秒の間、5秒毎にスライドの1画像を獲得する。細胞の3つのフィールドを脱色し、そして光退色値を規格化および平均する(図6)。スルホン化-キサンテン染料の抗体結合体は、有意に、CY-3スルホン化-カルボシアニン染料を含む比較スペクトルを有する他の染料よりも光安定性である。
【0175】
実施例47.蛍光性α−ブンガロトキシン染料結合体の調製および使用:
25μLの0.1M NaHCO3中のα−ブンガロトキシン(1mg)を1.5当量の化合物19(実施例22)で、室温で、2時間、処理する。生成物を、サイズ排除およびイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。アセチルコリンレセプターの染色をし、そしてその得られる蛍光の検出は、フルオレセイン結合体α−ブンガロトキシンのそれと比較可能である(スルホン化キサンテン染料結合体の蛍光がより明るくかつ光退色により抵抗性であることを除く)。
【0176】
実施例48.アミノデキストラン染料結合体の調製:
平均13のアミノ基で誘導体化されたMW70,000のアミノデキストラン(50mg)を、10mg/mLで0.1MNaHCO3に溶解する。スルホン化キサンテン染料のアミン反応性誘導体を、約12の染料/デキストラン比を与えるように添加する。6時間後、結合体を、SEPHADEXG-50で、水で溶出し精製する。典型的には、約6モルの染料が、70,000gのデキストランに結合する。
【0177】
実施例49.蛍光染料標識化ミクロスフィアの調製:
種々の方法が、ポリマー性ミクロスフィアをスルホン化キサンテン染料で修飾するのに、使用される。例えば、アミンまたはカルボン酸修飾ミクロスフィアへの共有結合、または染料標識化タンパク質のミクロスフィアへの結合。例えば、1.0μmのアミン誘導体化ポリスチレンミクロスフィアを、100mM NaHCO3、pH 8.3中、約2%固体で、懸濁し、そして2mg/mLのアミン反応性スルホン化キサンテン染料で処理する。1時間後、ミクロスフィアを、遠心分離し、そして緩衝液で洗浄する。
【0178】
より大きな粒子は、フローサイトメトリー(flow cytometry)を用いて、染色の均一性および明るさを分析され得る。顕微鏡下、標識化ビーズは、それらの表面に薄い環を有する球として見える。それらは、顕微鏡、特にレーザー走査共焦点顕微鏡の校正に、そしてフローサイトメトリーのための光安定標準として、特に有用である。ミクロスフィアは、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ハプテン、およびアッセイのための他の生体分子に、当該分野で周知の方法を用いて、さらに結合され得る。スルホン化キサンテン染料で標識化されたミクロスフィアは、比較可能なスペクトルを有する他の染料で標識化された表面であるものよりも、より光安定性であるようである。
【0179】
実施例50.本発明の染料を用いる蛍光性リポソームの調製:
本発明のスルホン化キサンテン染料は、当該分野で周知の方法によってリポソームの内部に組み入れられるのに十分に水溶性である(J.BIOL.CHEM.257,13892(1982)およびPROC.NATL.ACAD.SCI.USA 75,4194(1978))。または、Szoka,Jr.ら(ANN.REV.BIOPHYS.BIOENG.9,467(1980))に基本的に記載されているように、膜内に、親油性の置換基(例えば、11〜22個の炭素を有するアルキル)を有するスルホン化キサンテンを含むリポソームを、リポソーム分散体を形成する前に、リポソームを作る非標識化リン脂質および蛍光性脂質を共溶解することによって、調製する。
【0180】
実施例51.細菌の蛍光性染料結合体の調製:
熱殺菌Escherichia coliを、10mg/mLのpH8〜9の緩衝液に懸濁し、次いで、0.5〜1.0mg/mLのアミン反応性スルホン化キサンテン染料でインキュベートした。30〜60分後、標識化細菌を遠心分離し、そして緩衝液で数回洗浄し、非結合染料を全て除去した。オプソニン化された標識化細菌を、フローサイトメトリーにより決定されるように、マクロファージにより取り上げる。
【0181】
実施例52.蛍光性ヌクレオチド染料結合体を用いるDNAハイブリダイセーションプローブを調製する工程:
各標識化反応のために、E.coli lacZ構造遺伝子の約1μgの約700bpHind III-Bgl II画分を含むミクロチューブを、約10分間、95℃で加熱し、完全にストランドに分離する。DNAを氷で冷却する。2μLの0.5MTris-HCl、pH7.2、0.1M MgCl2、1mM ジチオスレイトール中の2mg/mLランダム配列ヘキサヌクレオチドの混合物を添加し、続いて2μLのdNTP標識混合物(1mMdATP、1mM dGTP、1mM dCTP、0.65mM dTTPおよび0.35mM 化合物36(実施例35)を添加する。無菌水を添加し、容積を19μLにする。1μLKlenow DNAポリメラーゼ(2単位/μL)を添加する。試料を1時間、37℃でインキュベートする。反応を2μLの0.2M EDTA、pH8.0で停止する。標識化DNAを、2.5μLの4MLiClと75μLの-20℃エタノールで沈澱させる。-20℃で2時間後、沈澱した核酸を12,000rpmで遠心分離する。ペレットを、冷70%エタノール、次いで冷100%エタノールで洗浄する。ペレットを乾燥し、10mMTris-HCl、pH8.0、1mM EDTAに溶解する。各試料の一部を、標準条件下1% アガロースミニゲルでゲル電気泳動により分析する。標識化DNA生成物は、RNAまたはDNA(例えば、細胞または組織中のE.colilacZ遺伝子に関連する)の検出のためのインサイチュのハイブリダイゼーション実験に適切である。
【0182】
実施例53.蛍光性ヌクレオチド結合体のDNA増幅生成物への組み込み:
DNA増幅反応を以下のように調製する:ヒトβアクチン遺伝子にハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーの20μM溶液の各々1μLを、5μLのDNAテンプレート(100pmolの全遺伝子を含むプラスミド)と、5μLの10×反応緩衝液(100mMTris、pH8.3、500mMKCl)と、2.5μLの1mM化合物36(実施例35)と、1μLの10mM dATPと、1μLの10mM dCTPと、1μLの10mM dGTPと、1.5μLの5mMdTTPと、3μLの25mM MgCl2と、28μLの蒸留、脱イオン水とを含む標識反応物に添加する。試料を、熱サイクラーに移し、そして以下のように処理する:1サイクル、94℃、2.5分;30サイクル、94℃、1分、50℃、1分、72℃、1分;1サイクル、72℃、5分;次いで、4℃一晩。試料のアリコートを等容量の10%グリセロールと混合し、0.9%アガロースミニゲルにロードし、そして電気泳動する。ゲルを300nm紫外光で照射すると、予期される大きさの蛍光バンドが、見られる。
【0183】
実施例54.RNAプローブのインサイチュのハイブリダイゼーション:
マウス繊維芽細胞を固定し、そして標準手順を用いるインサイチュのハイブリダイゼーションで、mRNAを調製する。スルホン化キサンテンRNAプローブを、ファージT3 RNAポリメラーゼプロモーターの下流をクローンしたマウスアクチン構造遺伝子を含むプラスミドのインビトロ転写により調製する。標識反応は、DNAテンプレート(1μgのDNA)2μLと、10mM ATP、10mM CTP、および10mM GTPの各々1μLと、10mM UTP 0.75μLと、1mM 化合物36(実施例35)2.5μLと、10×転写緩衝液(400mMTris、pH8.0、100mMMgCl2、20mMスペルミジン、100mM NaCl)2μLと、T3 RNAポリメラーゼ(40単位/μL)1μLと、2mg/mLBSA 1μLと、水8.75μLとを合わせたものからなる。反応物を、37℃で、2時間、インキュベートする。
【0184】
DNAテンプレートを、20単位のDNアーゼI(DNase I)での15分間、37℃の処理によって除去する。RNA転写物を、等容量のフェノール:クロロホルム1:1での抽出により、次いでSEPHADEXG50によるクロマトグラフィーにより精製する。標識化RNAを、50℃で5分間、変性させ、次いで、標準手順を用いて、細胞調製物にハイブリダイズする。調製物を洗浄し、そして蛍光顕微鏡でフルオレセインフィルターをセットし、これを通して見ると、アクチンmRNAを発現する細胞は、明るい緑色の蛍光を示す。
【0185】
実施例55.本発明の染料を用いる生細胞と死細胞との識別:
スルホン化キサンテン染料の極性、および生細胞の膜によるそれらの相対非透過性のために、反応性染料は、以下のような単一の染色アッセイで、無傷な細胞を、損傷(compromised)細胞膜に対比し、識別するのに使用され得る:
マウス単球マクロファージ、形質転換アベルソン白血病ウィルス(RAW264.7)細胞を、トリプシン処理し、そしてリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.2で洗浄する。180μLのPBS、pH7.2中に懸濁された約800〜1000万の細胞を、ガラス試験管に入れ、そして水浴中、50℃で、20分間、加熱し、細胞の画分を殺す。約60μL(200〜300万の細胞)の細胞懸濁液を、940μLのPBS、pH7.2に添加し、続いて0.1μLの化合物1のDMSO溶液1mg/mLを添加する。混合物を氷で30分間、インキュベートし、そしてPBSで2回、洗浄し、続いて、200μLのPBS、pH7.2、そして2μLの150μMヨウ化プロピジウム水溶液(死細胞を識別するためのコントロールとして)を添加する。フローサイトメトリーを用いる細胞懸濁液の分析は、死細胞(強い赤色蛍光により測定される)が、約3100の平均チャネル蛍光(MCF)強度を有し、一方、生細胞は、約50のMCF強度を有することを示す。
【0186】
または、化合物1とのインキュベーションに続いて、フローサイトメトリーによる分析の前に、細胞を3%ホルムアルデヒドで固定する。固定は、病源性細胞を用いる作業の危険を減らす。
【0187】
実施例56.蛍光標識を増幅する抗染料結合体の調製および使用:
基本的に実施例38で記載のように、ポリクロナール抗フルオレセインウサギIgG(分子プローブ)を、化合物19に結合させて、化合物38を得る。A431細胞を、0.125μgフルオレセイン結合上皮細胞成長因子(フルオレセインEGF)で標準方法により染色する。2mMアジ化ナトリウムを含むPBS中の1%BSA(洗浄緩衝液)で2回洗浄の後、細胞の一部を、さらに3.5μgの化合物38で染色する。混合物を、氷上で30分間、インキュベートし、洗浄緩衝液で洗浄し、そしてフローサイトメトリーにより分析する。結果は、化合物38を用いて増幅した場合、フルオレセイン-EGF単独で染色するのと比較して、細胞の明るさにおいて約3倍の増幅を示す。
【0188】
蛍光シグナルのさらなる増幅を、ウサギ抗フルオレセイン抗体を、さらなる本発明の染料(同じかまたは異なるスペクトル特性を有する)に結合させられたさらなる抗ウサギ抗体で処理することにより達成する。このタイプの連続の増幅を用いる場合、結果は、蛍光シグナルの約11倍の増幅を示す。
【0189】
実施例57.蛍光をクエンチする抗染料結合体の調製および使用:
例えば、化合物1の発蛍光団の抗体を、標準方法を用い、そしてキーホールリンペットヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)を免疫源として用いて、ウサギで調製する。得られた抗体を化合物19を用いて標識化する。得られた標識化抗体は、90%を越える化合物1溶液の蛍光をクエンチする。
【0190】
実施例58.ヒドラジド標識化発蛍光団を用いる細胞トレーシング:
ゼブラフィッシュ胚からのニューロンに、Blankenfeldら(J.NEUROSCI.METH.36,309(1991)によって記載のような標準方法を用い、化合物33(実施例33)を微量注入する。ニューロンは、それらの容積の全てを、迅速に、染料で満たし、そして、より細かいプロセスにおいてでさえ、それらの赤色蛍光が、すぐに観察可能になる。ホルムアルデヒドおよび標準固定方法を用いて、染色は、細胞中で固定可能である。または、Okadaら(CELL,29,33(1982))によって記載のショ糖/ポリエチレングリコール法を用いて、ヒドラジド染料またはそれらの結合体を、細胞中に詰め込む。
【0191】
実施例59.架橋アロフィコシアニン(allophycocyanin)結合体の調製および特性決定:
化学的架橋アロフィコシアニン(Yehら,CYTOMETRY 8,91(1987))の溶液を、0.1Mリン酸塩、0.1MNaCl、pH7.5中に、濃度10mg/mLの溶液で調製する。化合物19の無水DMF溶液を、濃度10mg/mLで調製する。タンパク質に対する染料のモル比45を与えるように、染料溶液の量を、アロフィコシアニン溶液に添加し、そして溶液を攪拌する。室温で1時間インキュベートした後、1.5MヒドロキシルアミンpH8.0の反応物容積の0.1に等しい量での添加により、反応を停止する。反応混合物を、さらに30分、インキュベートする。エネルギー変換結合体を、BioGel P-30(Bio Rad)のサイズ排除クロマトグラフィーにより、精製する。
【0192】
架橋APC、および架橋APCの化合物19結合体の溶液を、比較可能な光学密度で、488nmで励起し、そして得られる蛍光発光スペクトルを記録する。架橋アロフィコシアニンは、488nmで励起すると、650nmで蛍光発光を示す。図7に示すように、架橋アロフィコシアニンの化合物19結合体の励起は、実質的に、488nmでのスルホン化ローダミンの励起、および続くフィコビリンタンパク質への有効エネルギー変換によるアロフィコシアニンによる増強された発光を生じる。
【0193】
上記の発明は、例示および実施例の方法によって、詳細に記載されているが、多くの修飾、置換、および代替が、以下の請求の範囲に記載されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、可能であることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−180409(P2010−180409A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56739(P2010−56739)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【分割の表示】特願平11−519270の分割
【原出願日】平成10年9月23日(1998.9.23)
【出願人】(594117168)モレキュラー・プロウブズ・インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Molecular Probes Inc
【Fターム(参考)】