説明

スルホン酸塩基含有化合物を含む混合物およびその製造方法、溶液組成物、ポリウレタン樹脂およびその製造方法、ならびに磁気記録媒体

【課題】有機溶媒への溶解性および有機溶媒中での保存安定性に優れるスルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物とプロトン酸との混合物に関する。


[一般式(1)中、Xは二価の連結基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基または少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基を表し、Mは陽イオンを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸塩基含有化合物を含む混合物および該混合物から調製される溶液組成物に関するものであり、詳しくは、有機溶媒中での保存安定性に優れる、スルホン酸塩基含有化合物を含む混合物および該混合物から調製される溶液組成物に関するものである。
更に本発明は、上記混合物または溶液組成物を原料とするポリウレタン樹脂およびポリウレタン樹脂の製造方法、ならびに上記ポリウレタン樹脂を結合剤として含む磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高速に伝達するための手段が著しく発達し、莫大な情報をもつ画像およびデータ転送が可能となった。このデータ転送技術の向上とともに、情報を記録、再生および保存するための記録再生装置および記録媒体には更なる高密度記録化が要求されている。
【0003】
高密度記録領域において良好な電磁変換特性を得るためには、微粒子磁性体を使用するとともに、微粒子磁性体を高度に分散させ、磁性層表面の平滑性を高めることが有効であることが知られている。微粒子磁性体の分散性を高める手段としては、SO3Na基のようなスルホン酸(塩)基を結合剤に含有させる方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
磁気記録媒体用結合剤として広く用いられているポリウレタン樹脂へのスルホン酸(塩)基の導入方法としては、原料ジオールとしてスルホン酸(塩)基を導入したスルホン酸ポリオールを使用する方法が挙げられる。スルホン酸ポリオールとしては、ポリエステルスルホン酸ポリオールが知られているが、ポリエステルスルホン酸ポリオール中でスルホン酸(塩)基は、一部のオリゴマー成分に局在化した、不均一な形態で存在する。したがって、このポリエステルスルホン酸ポリオールを原料ジオールとして得られたポリウレタン中でも、スルホン酸(塩)基の存在形態は不均一となり、場合によってはスルホン酸(塩)基をほとんど含有しないポリウレタンも生成される。このようなポリウレタンは、磁性体への吸着性に乏しいため、良好な分散性向上効果を発揮することができず、吸着できないポリウレタンが媒体表面にマイグレートし、ヘッド汚れの発生や走行耐久性低下の原因となるおそれもある。
【0005】
そこで、スルホン酸(塩)基が均一に存在するポリウレタン樹脂を得るため、モノマーのスルホン酸ジオールを使用することが考えられる。そのようなスルホン酸ジオールとしては、例えば特許文献2に記載されているN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アミノエチルスルホン酸塩が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−132531号公報
【特許文献2】特開平3−66660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に記載のスルホン酸ジオールをはじめとする従来知られていたスルホン酸ジオールは水溶性が高く有機溶媒への溶解性に乏しい。一方、ポリウレタン樹脂は一般に有機溶媒中で合成されるため、有機溶媒への溶解性に乏しいスルホン酸ジオールでは反応を良好に進行させることは困難である。また、有機合成原料としての有用性の点からも、有機溶媒への溶解性が高いことが望ましい。
【0008】
これに対し本願発明者らは、有機溶媒への溶解性に優れたスルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物を見出し先に特許出願した(特願2008−233271号)。本願明細書において、スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基(−SOH)と−SONa、−SOLi、−SOK等のスルホン酸塩基とを含むものとする。特願2008−233271号に記載のスルホン酸(塩)基含有ポリオールは有機溶媒への溶解性に優れるため、有機溶媒中での均一系反応に使用することができる。したがって、上記スルホン酸(塩)基含有ポリオールは、ポリウレタン原料をはじめとする有機合成原料として好適である。しかし本願発明者らの検討の結果、上記スルホン酸(塩)基含有ポリオールは有機溶媒中で保存すると経時的なpH変化が大きいことが明らかとなった。上記スルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物の有機合成原料としての汎用性を高めるためには、有機溶媒中での保存安定性を改善すべきである。
【0009】
そこで本発明の目的は、有機溶媒への溶解性および有機溶媒中での保存安定性に優れるスルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、上記スルホン酸(塩)基含有ポリオール化合物の有機溶媒中での保存安定性は、塩基型をプロトン酸と共存させることにより改善できることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]下記一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物とプロトン酸との混合物。
【化1】

[一般式(1)中、Xは二価の連結基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基または少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基を表し、Mは陽イオンを表す。]
[2]一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に下記一般式(A)で表される基を表す[1]に記載の混合物。
【化2】

[一般式(A)中、*は窒素原子との結合位置を表し、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
[3]一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に下記一般式(B)で表される基を表す[1]に記載の混合物。
【化3】

[一般式(B)中、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
[4]前記プロトン酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸またはフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の混合物。
[5]前記プロトン酸は、一般式(1)中のMが水素原子を表すスルホン酸基含有化合物を含む[1]〜[4]のいずれかに記載の混合物。
[6]前記スルホン酸塩基含有化合物1モルに対して0.05〜0.50モルのプロトン酸を含む[1]〜[5]のいずれかに記載の混合物。
[7]一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物にプロトン酸を添加することにより、[1]〜[6]のいずれかに記載の混合物を製造する方法。
[8]前記プロトン酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸またはフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種である[7]に記載の製造方法。
[9]前記スルホン酸塩基含有化合物1モルに対して0.05〜0.50モルのプロトン酸を添加する[7]または[8]に記載の製造方法。
[10]スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとを反応させる工程において、前記アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対して0.50〜0.95モル%の塩基の存在下で前記反応を行うことにより、[1]〜[6]のいずれかに記載の混合物を製造する方法。
[11]前記スルホン酸(塩)基含有アミンは、アミノベンゼンスルホン酸もしくはその塩、または2−アミノエタンスルホン酸もしくはその塩である[10]に記載の製造方法。
[12][1]〜[6]のいずれかに記載の混合物を溶解させた有機溶媒からなる溶液組成物。
[13]前記有機溶媒は非プロトン性有機溶媒である[12]に記載の溶液組成物。
[14]前記非プロトン性溶媒は、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノンおよびそれらの2種以上の混合溶媒からなる群から選ばれる溶媒である[13]に記載の溶液組成物。
[15][1]〜[6]のいずれかに記載の混合物または[12]〜[14]のいずれかに記載の溶液組成物とイソシアネート化合物とを原料とすることを特徴とするポリウレタン樹脂。
[16]スルホン酸(塩)基含有量が1×10-5eq/g以上2×10-3eq/g以下である[15]に記載のポリウレタン樹脂。
[17]前記原料は、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するジオールを更に含有する[15]または[16]に記載のポリウレタン樹脂。
[18][1]〜[6]のいずれかに記載の混合物または[12]〜[14]のいずれかに記載の溶液組成物を、イソシアネート化合物とのウレタン化反応に付すことを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
[19]前記ウレタン化反応を、触媒存在下で行う[18]に記載の製造方法。
[20]前記混合物または前記溶液組成物に前記触媒を添加した後、前記ウレタン化反応に付す[19]に記載の製造方法。
[21]非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、[15]〜[17]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
[22]非磁性支持体上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または非磁性層に含まれる結合剤は、[15]〜[17]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機溶媒に対し高い溶解性を示すスルホン酸塩基含有化合物を、有機溶媒中で安定な状態で長期間保存することができる。これにより、上記スルホン酸塩基含有化合物の有機合成原料としての有用性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[混合物]
本発明は、下記一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物とプロトン酸との混合物に関する。
【0014】
【化4】

[一般式(1)中、Xは二価の連結基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基または少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基を表し、Mは陽イオンを表す。]
【0015】
従来知られていたスルホン酸ジオールは、有機溶媒への溶解性に乏しいのに対し、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物は、有機溶媒に対して優れた溶解性を示すことができる。一般に、有機合成反応は有機溶媒中で行われるため、有機溶媒に良好に溶解し得ることは有機合成原料として好適である。本発明の混合物は、このようなスルホン酸塩基含有化合物をプロトン酸と共存させることにより、該スルホン酸塩基含有化合物の有機溶媒中での経時的なpH変化を抑制し保存安定性を高めることができる。有機溶媒中での保存安定性に優れることは、溶液組成物として保存ないしは流通させるうえできわめて有利である。
以下、本発明の混合物について、更に詳細に説明する。
【0016】
一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物
一般式(1)中、Xは、二価の連結基を表し、有機溶媒への溶解性の点から、炭素数2〜20であることが好ましく、また、二価の炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基、アリーレン基、または、これらを2以上組み合わせた基であることがより好ましく、アルキレン基またはアリーレン基であることがさらに好ましく、エチレン基またはフェニレン基であることが特に好ましく、エチレン基であることが最も好ましい。
また、前記フェニレン基としては、o−フェニレン基、m−フェニレン基、および、p−フェニレン基を例示することができ、o−フェニレン基またはm−フェニレン基であることが好ましく、m−フェニレン基であることがより好ましい。
【0017】
前記アルキレン基の炭素数は、2以上20以下であることが好ましく、2以上4以下であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。また、前記アルキレン基は、直鎖状のアルキレン基であっても、分岐を有するアルキレン基であってもよいが、直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
【0018】
前記アリーレン基の炭素数は、6以上20以下であることが好ましく、6以上10以下であることがより好ましく、6であることがさらに好ましい。
【0019】
前記アルキレン基および前記アリーレン基は、置換されていてもよく無置換であってもよい。置換基としては、以下の置換基を例示できるが、前記アルキレン基および前記アリーレン基は、炭素原子および水素原子のみからなる基であることが好ましい。なお、本発明において、ある基が置換基を有する場合、該基について「置換基」とは置換基を含まない部分の炭素数をいうものとする。
【0020】
前記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、アリール基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基、アリールオキシ基、および、アルキル基が例示できる。
【0021】
前記アリーレン基が有していてもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルコキシ基、アリールオキシ基、および、アリール基が例示できる。
【0022】
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基または少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基を表す。前記アルキル基およびアラルキル基は水酸基以外の置換基を有していてもよい。
【0023】
前記アルキル基およびアラルキル基が水酸基以外に有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、スルホニル基、および、シリル基が例示できる。これらの中でも、アルコキシ基またはアリールオキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基がより好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基またはフェノキシ基がさらに好ましい。
また、前記アルキル基およびアラルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。
【0024】
1およびR2に含まれる水酸基の数は、それぞれ1以上であり、1または2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。ポリウレタン原料としての有用性の点から、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物は、スルホン酸塩基含有ジオール化合物であることが特に好ましい。
【0025】
1およびR2におけるアルキル基の炭素数は、有機溶媒への溶解性の点から3以上であり、3〜22であることが好ましく、4〜22であることがより好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
【0026】
1およびR2におけるアラルキル基の炭素数は、有機溶媒への溶解性の点から8以上であり、8〜22であることが好ましく、8〜12であることがより好ましく、8であることがさらに好ましい。また、R1およびR2におけるアラルキル基は、窒素原子のα位およびβ位が飽和炭化水素鎖であることが好ましい。また、その場合、窒素原子のβ位には水酸基を有していてもよい。
また、R1およびR2は、窒素原子のα位には水酸基を有しないことが好ましく、少なくとも窒素原子のβ位に水酸基を1つ有していることがより好ましく、窒素原子のβ位のみに水酸基を1つ有していることが特に好ましい。窒素原子のβ位に水酸基を有することにより、合成が容易となり、また、有機溶媒への溶解性を更に高めることができる。
【0027】
また、R1およびR2はそれぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3〜22のアルキル基、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8〜22のアラルキル基、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数4〜22のアルコキシアルキル基、または、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数9〜22のアリールオキシアルキル基であることが好ましく、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数4〜22のアルキル基、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8〜22のアラルキル基、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数4〜22のアルコキシアルキル基、または、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数9〜22のアリールオキシアルキル基であることがより好ましい。
【0028】
前記少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基として具体的には、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシヘキシル基、2−ヒドロキシオクチル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−エトキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシ−ブチル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシ−3−メチルブチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシブチル基、および、4−ヒドロキシブチル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基、1−エチル−2−ヒドロキシエチル基、1−プロピル−2−ヒドロキシエチル基、1−ブチル−2−ヒドロキシエチル基、1−ヘキシル−2−ヒドロキシエチル基、1−メトキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−エトキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−ブトキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−フェノキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−(1−メトキシエチル)−2−ヒドロキシエチル基、1−(1−メトキシ−1−メチルエチル)−2−ヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル基等が例示できる。この中でも、2−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル基、および、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基、1−メトキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−ブトキシメチル−2−ヒドロキシエチル基、1−フェノキシエチル−2−ヒドロキシエチル基を好ましく例示できる。
【0029】
前記少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基として具体的には、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルプロピル基、2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピル基、2−ヒドロキシ−2−フェニルブチル基、2−ヒドロキシ−4−フェニルブチル基、2−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル基、2−ヒドロキシ−2−(4−メトキシフェニル)エチル基、2−ヒドロキシ−2−(4−フェノキシフェニル)エチル基、2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エチル基、2−ヒドロキシ−2−(4−クロロフェニル)エチル基、2−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロピル基、および、2−ヒドロキシ−3−(4−クロロフェニル)プロピル基、1−フェニル−2−ヒドロキシエチル基、1−メチル−1−フェニル−2−ヒドロキシエチル基、1−ベンジル−2−ヒドロキシエチル基、1−エチル−1−フェニル−2−ヒドロキシエチル基、1−フェネチル−2−ヒドロキシエチル基、1−フェニルプロピル−2−ヒドロキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル基、1−(4−フェノキシフェニル)2−ヒドロキシ−エチル基、1−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシエチル基、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル基、1−(4−ヒドロキシフェニル)2−ヒドロキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)−3−ヒドロキシ−2−プロピル基等が例示できる。この中でも、2−ヒドロキシ−2−フェニルエチル基、1−フェニル−2−ヒドロキシフェニル基を好ましく例示できる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性をさらに向上させるため、分子内に1以上の芳香環を有していることが好ましい。
また、一般式(1)におけるR1とR2とは、同じであっても、異なっていてもよいが、合成上の容易性から、同じであることが好ましい。
一般式(1)におけるR1およびR2は、それぞれ、炭素数5以上の基であることが好ましい。また、一般式(1)におけるR1およびR2は、それぞれ、芳香環および/またはエーテル結合を有する基であることが好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される化合物の好ましい態様としては、R1およびR2が、それぞれ独立に下記一般式(A)で表される基または下記一般式(B)で表される基である化合物を挙げることができる。
【0032】
【化5】

[一般式(A)中、*は窒素原子との結合位置を表し、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
【0033】
【化6】

[一般式(B)中、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
【0034】
即ち、上記一般式(A)で表される基を有する化合物は下記一般式(2)で表され、上記一般式(B)で表される基を有する化合物は下記一般式(3)で表される。
【0035】
【化7】

[一般式(2)中、R21およびR22は、それぞれ独立に一般式(A)中のRと同義であり、XおよびMは、それぞれ一般式(1)中のXおよびMと同義である。]
【0036】
【化8】

[一般式(3)中、R31およびR32は、それぞれ独立に一般式(B)中のRと同義であり、XおよびMは、それぞれ一般式(1)中のXおよびMと同義である。]
【0037】
前記RおよびR(以下、RおよびRをまとめて「R」という)は、それぞれ独立に、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または、炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。
Rで表されるアルキル基の炭素数は、2〜20であり、2〜8であることがより好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。
【0038】
Rで表されるアリール基の炭素数は、6〜20であり、6〜10であることが好ましく、6であることがより好ましい。
【0039】
Rで表されるアラルキル基の炭素数は、7〜20であり、7〜11であることが好ましい。
【0040】
Rで表されるアルコキシアルキル基の炭素数は、2〜20であり、2〜12であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0041】
Rで表されるアリールオキシアルキル基の炭素数は、7〜20であり、7〜12であることが好ましく、7であることがより好ましい。
【0042】
Rで表されるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、または、アリールオキシアルキル基は、それぞれ無置換であっても置換基を有していてもよい。Rで表される前記した基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、スルホニル基、および、シリル基が例示できる。
また、前記アルキル基およびアラルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。
【0043】
前記Rで表される基は、それぞれ、炭素数2以上の基であることが好ましい。また、前記Rで表される基は、それぞれ、芳香環および/またはエーテル結合を有する基であることが好ましい。
【0044】
Rで表される基としては、エチル基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、および、フェニル基が好ましく、メトキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、および、フェニル基がより好ましい。
【0045】
一般式(2)中、R21およびR22は、同じであっても、異なっていてもよいが、合成上の容易性から、同じであることが好ましい。一般式(3)中のR31およびR32についても同様である。
【0046】
一般式(1)中、Mは陽イオンを表す。前記陽イオンは、無機陽イオンであっても、有機陽イオンであってもよい。前記陽イオンは、一般式(1)中の−SO3-を電気的に中和するものであり、1価の陽イオンに限定されず、2価以上の陽イオンとすることもできるが、1価の陽イオンが好ましい。なお、Mで表される陽イオンの価数をn価とすると、Mは、一般式(1)で表される化合物に対して(1/n)モルの陽イオンを意味する。
【0047】
無機陽イオンとしては、特に制限はないが、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが好ましく例示でき、アルカリ金属イオンがより好ましく例示でき、Li+、Na+またはK+がさらに好ましく例示できる。
有機陽イオンとしては、アンモニウムイオン、第四級アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等を例示できる。
【0048】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記例示化合物(S−1)〜(S−51)が好ましく例示できる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例中、Phはフェニル基を表す。
【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
本発明の混合物中、前記スルホン酸塩基含有化合物とともに含まれるプロトン酸としては、プロトンを放出し得る酸であればよく、無機酸であっても有機酸であってもよい。具体例としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、またはフェノールを挙げることができる。有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸およびオクタン酸である。有機スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0055】
本発明の混合物は、プロトン酸として一般式(1)中のMが水素原子を表すスルホン酸基含有化合物を含むこともできる。例えば後述する製法2によって、一般式(1)中のMが陽イオンを表すスルホン酸塩基含有化合物と、該化合物と一般式(1)中のMが水素原子である点のみで相違するスルホン酸基含有化合物を含む混合物を得ることができる。または、後述する製法1において、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物に、一般式(1)中のMが水素原子であるスルホン酸基含有化合物をプロトン酸として添加することもできる。添加するスルホン酸基含有化合物は、例えば、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物をイオン交換に付すことによって得ることができる。
【0056】
本発明の混合物は、一般式(1)で表される化合物の有機溶媒中での経時的なpH変化を効果的に抑制する観点から、一般式(1)で表される化合物1モルに対して0.05〜0.50モルのプロトン酸を含むことが好ましく、0.05〜0.30モルのプロトン酸を含むことが好ましい。
【0057】
本発明の混合物は、固形物であっても液状物質であってもよい。好ましくは、一般式(1)で表される化合物およびプロトン酸とともに、有機溶媒を含むことが好ましい。本発明の混合物は、有機溶媒中に溶解された状態で含まれてもよく、懸濁状態で含まれていてもよいが、均一系の有機合成反応において使用するためには、有機溶媒中に溶解された状態で含まれていることが好ましい。即ち、本発明の混合物は、本発明の混合物を溶解した有機溶媒からなる溶液組成物中に含まれていることが好ましい。
以下、上記溶液組成物について更に詳細に説明する。
【0058】
[溶液組成物]
本発明は、本発明の混合物を溶解した有機溶媒からなる溶液組成物に関する。本発明の溶液組成物は、経時的に大きなpH変化を起こすことなく保存安定性に優れるため有機合成原料として有用である。なお、本発明の溶液組成物において、本発明の混合物は目視で透明と判断される程度に溶解されていればよい。
【0059】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、および、イソホロン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、シクロヘキサンが挙げられる。
この中でも、ポリウレタン合成等の有機合成反応における有用性の点から、非プロトン性溶媒が好ましく、ケトン系、芳香族系溶媒がより好ましく、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノンおよびそれらの2種以上の混合溶媒が更に好ましく、シクロヘキサノンがよりいっそう好ましい。
【0060】
本発明の溶液組成物は、本発明の混合物を有機溶媒中に添加し、必要に応じて攪拌等を行うことにより調製することができる。本発明の溶液組成物中の本発明の混合物の含有量は、一般式(1)で表される化合物が有機溶媒100質量部に対して、10質量部以上含まれるように設定することが好ましく、20質量部以上含まれるように設定することが好ましく、40質量部以上含まれるように設定することが好ましく、40〜90質量部含まれるように設定することが更に好ましい。
【0061】
[混合物の製造方法]
更に本発明は、
一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物にプロトン酸を添加することにより、本発明の混合物を製造する方法(以下、「製法1」という);
スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとを反応させる工程において、前記アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対して0.50〜0.95モル%の塩基の存在下で前記反応を行うことにより、本発明の混合物を製造する方法(以下、「製法2」という)
に関する。以下、製法1および製法2について、順次説明する。
【0062】
製法1
製法1は、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物にプロトン酸を添加することにより本発明の混合物を製造する。一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物の詳細は、前述の通りである。
【0063】
一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物は、スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとを塩基存在下で反応させることにより合成することができる。反応は、水を含有する溶媒中で行うことが好ましく、水中で行うことがより好ましい。反応条件は、原料の種類、使用する溶媒等に応じて適宜設定すればよい。
【0064】
前記スルホン酸(塩)基含有アミンとしては、アミノアルカンスルホン酸塩もしくはその塩、またはアミノアレーンスルホン酸塩もしくはその塩を挙げることができる。好ましくは、アミノベンゼンスルホン酸もしくはその塩、または2−アミノエタンスルホン酸もしくはその塩である。
【0065】
前記オキシランとしては、例えば、アルキレンオキシド、グリシジルエーテル等を挙げることができ、目的物であるスルホン酸塩基含有化合物の構造に応じて選択すればよい。アルキレンオキシドの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキサンオキシドを挙げることができる。グリシジルエーテルの具体例としては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0066】
前記塩基は、1種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。使用する塩基は、一般式(1)中のMとなり得る陽イオンを供給し得るものであればよく、特に限定されるものではないが、アルカリ金属水酸化物であることが好ましい。具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等を挙げることができる。
【0067】
一般式(1)で表される化合物の単離方法としては、前記使用した塩基等にも依存するが、例えば、反応液にトルエンを適量添加することにより、スルホン酸塩基含有化合物を沈殿させ、濾過やデカンテーション等により分取し、乾燥して純度の高いスルホン酸塩基含有化合物を得ることができる。また、得られたスルホン酸塩基含有化合物は、公知の方法により塩交換を行い、他のスルホン酸塩基含有化合物としてもよい。
【0068】
一般式(1)で表される化合物に添加するプロトン酸の種類および添加量(一般式(1)で表される化合物に対する混合比)については、前述の通りである。一般式(1)で表される化合物とプロトン酸との混合は、有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで使用する有機溶媒の詳細は、先に本発明の溶液組成物について説明した通りである。
【0069】
製法2
製法2は、スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとを反応させる工程において、前記アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対して0.50〜0.95モル%の塩基の存在下で前記反応を行うことにより、本発明の混合物を製造する方法である。製法2において使用するスルホン酸(塩)基含有アミン、オキシラン、および塩基の詳細は、先に製法1について述べた通りである。使用する塩基量が、スルホン酸(塩)基含有アミンに対して1.0当量以上であると、生成物は一般式(1)中のMが陽イオンであるスルホン酸塩基含有化合物(以下、「塩基型」ともいう)が得られ、0当量より多く1.0当量未満であれば、塩基型とともに、一般式(1)中のMが水素原子である化合物(プロトン酸;以下、「酸型」ともいう)が得られるため塩基型と酸型との混合物である、本発明の混合物を得ることができる。ただし、スルホン酸(塩)基含有アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対する塩基量が0.50モル%未満では、反応が良好に進行せず、0.95モル%を超えると、得られる混合物の溶液安定性が低下する。そこで製法2では、スルホン酸(塩)基含有アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対して0.50〜0.95モル%の塩基の存在下で、スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとの反応を行う。これにより、酸型と塩基型との混合状態であり、かつ溶液安定性に優れる、本発明の混合物を得ることができる。スルホン酸(塩)基含有アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対する塩基量は、好ましくは0.70〜0.95モル%である。前記反応は、先に説明したように水を含む溶媒中で行うことが好ましく、水中で行うことがより好ましい。
【0070】
[ポリウレタン樹脂]
本発明のポリウレタン樹脂は、本発明の混合物または本発明の溶液組成物とイソシアネート化合物とを原料とするものである。
【0071】
磁気記録媒体用結合剤として広く用いられているポリウレタン樹脂へのスルホン酸(塩)基の導入方法としては、原料ジオールとしてスルホン酸(塩)基を導入したスルホン酸ポリオールを使用する方法が挙げられる。スルホン酸ポリオールとしては、ポリエステルスルホン酸ポリオールが知られているが、ポリエステルスルホン酸ポリオール中でスルホン酸(塩)基は、一部のオリゴマー成分に局在化した、不均一な形態で存在する。したがって、このポリエステルスルホン酸ポリオールを原料ジオールとして得られたポリウレタン中でも、スルホン酸(塩)基の存在形態は不均一となり、場合によってはスルホン酸(塩)基をほとんど含有しないポリウレタンも生成される。このようなポリウレタンは、磁性体への吸着性に乏しいため、良好な分散性向上効果を発揮することができず、吸着できないポリウレタンが媒体表面にマイグレートし、ヘッド汚れの発生や走行耐久性低下の原因となるおそれもある。これに対し、本発明のポリウレタン樹脂は、一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物を原料中に含む。一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物は、ポリウレタン重合時に使用する有機溶媒への溶解性が高く、また、モノマーのスルホン酸塩基含有ポリオールであるため、ポリウレタン中にスルホン酸塩基(塩基型と酸型との混合物を使用する場合はスルホン酸塩基およびスルホン酸基)を均一に導入することができる。このように吸着官能基であるスルホン酸(塩)基が均一に導入されたポリウレタン樹脂は、磁性粉末、非磁性粉末といった粉末を塗料中で高度に分散させることができる。このような塗料を塗布することにより形成される塗膜は平滑性に優れる。その結果、優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【0072】
本発明の混合物および溶液組成物の詳細は、先に説明した通りである。
【0073】
イソシアネート化合物としては、2官能以上の多官能イソシアネート化合物(以下、「ポリイソシアネート」ともいう)を用いることができる。原料として使用可能なポリイソシアネートとしては、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0074】
前記原料は、本発明の混合物または溶液組成物およびイソシアネート化合物とともに、ポリオールを含むことができる。併用されるポリオールは、鎖延長剤としての役割を果たすことができる。併用するポリオールとしては、一般にポリウレタン原料として使用されている各種ポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール等、公知のものを必要に応じて用いることができる。これらの中でも、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0075】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸(多塩基酸)と、ポリオールとを重縮合して得られ、二塩基酸(ジカルボン酸)とジオールとの反応により得られるものであることが好ましい。ポリエステルポリオールに用いることができる二塩基酸成分としては特に限定されないが、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸、Naスルホイソフタル酸等が好ましい。ジオールとしては2,2−ジメチル−1,3プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐側鎖を有するものが好ましい。
【0076】
ポリエーテルポリオールはビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物やビスフェノールAのポリエチレンオキサイド付加物等の環状構造を有するものが好ましい。
【0077】
更に、前記のポリオールのほかに必要に応じて分子量200〜500程度の公知の短鎖ジオールを鎖延長剤として用いてもよい。中でも炭素数2以上の分岐側鎖をもつ脂肪族ジオールや環構造を有するエーテル化合物、有橋炭化水素構造を有する短鎖ジオール、スピロ構造を有する短鎖ジオールが好ましい。
また、放射線硬化性を付与するために、分子内にアクリル系二重結合を少なくとも1個有するジオールを併用することができる。ここにいうアクリル系二重結合とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリル酸アミド等の残基(アクリロイル基またはメタクリロイル基)をいう。これらの中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも1個有するジオールが好ましく、アクリロイルオキシ基を少なくとも1個有するジオールがより好ましい。
【0078】
炭素数2以上の分岐側鎖をもつ脂肪族ジオールとしては以下のものを挙げることができる。
2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等。
これらの中でも好ましいものは、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールである。
【0079】
環構造を有するエ−テル化合物としてはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0080】
有橋炭化水素構造またはスピロ構造としては、式(1)〜(3)よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることが好ましい。
【0081】
【化14】

【0082】
有橋炭化水素構造を有する短鎖ジオールの具体例としては、ビシクロ[1.1.0]ブタンジオ−ル、ビシクロ[1.1.1]ペンタンジオ−ル、ビシクロ[2.1.0]ペンタンジオ−ル、ビシクロ[2.1.1]ヘキサンジオール、ビシクロ[3.1.0]ヘキサンジオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオール、ビシクロ[3.2.0]ヘプタンジオ−ル、ビシクロ[3.1.1]ヘプタンジオール、ビシクロ[2.2.2]オクタンジオール、ビシクロ[3.2.1]オクタンジオール、ビシクロ[4.2.0]オクタンジオール、ビシクロ[5.2.0]ノナンジオール、ビシクロ[3.3.1]ノナンジオール、ビシクロ[3.3.2]デカンジオール、ビシクロ[4.2.2]デカンジオール、ビシクロ[4.3.3]ドデカンジオール、ビシクロ[3.3.3]ウンデカンジオール、ビシクロ[1.1.0]ブタンジメタノ−ル、ビシクロ[1.1.1]ペンタンジメタノ−ル、ビシクロ[2.1.0]ペンタンジメタノール、ビシクロ[2.1.1]ヘキサンジメタノール、ビシクロ[3.1.0]ヘキサンジメタノール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[3.2.0]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[3.1.1]ヘプタンジメタノール、ビシクロ[2.2.2]オクタンジメタノール、ビシクロ[3.2.1]オクタンジメタノール、ビシクロ[4.2.0]オクタンジメタノール、ビシクロ[5.2.0]ノナンジメタノール、ビシクロ[3.3.1]ノナンジメタノール、ビシクロ[3.3.2]デカンジメタノール、ビシクロ[4.2.2]デカンジメタノール、ビシクロ[4.3.3]ドデカンジメタノール、ビシクロ[3.3.3]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジオール、トリシクロ[4.2.1.27,9]ウンデカンジオール、トリシクロ[5.4.0.02,9]ウンデカンジオール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジオール、トリシクロ[4.4.1.1]ドデカンジオール、トリシクロ[7.3.2.05,13]テトラデカンジオール、トリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンジオール、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプタンジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、トリシクロ[4.2.1.27,9]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[5.4.0.02,9]ウンデカンジメタノール、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカンジメタノール、トリシクロ[4.4.1.1]ドデカンジメタノール、トリシクロ[7.3.2.05,13]テトラデカンジメタノール、トリシクロ[5.5.1.03,11]トリデカンジメタノールが例示できる。
これらの中でも、好ましいものとしては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールが挙げられる。
【0083】
スピロ構造を有する短鎖ジオールの具体例としては、スピロ[3.4]オクタンジメタノール、スピロ[3.4]ヘプタンジメタノール、スピロ[3.4]デカンジメタノール、ジスピロ[5.1.7.2]ヘプタデカンジメタノール、シクロペンタンスピロシクロブタンジメタノール、シクロヘキサンスピロシクロペンタンジメタノール、スピロビシクロヘキサンジメタノール、ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどがある。
好ましくはビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンが好ましい。
【0084】
分子内にアクリル系二重結合を少なくとも1個有するジオールの具体例としては、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製ブレンマーGLM)、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(共栄社化学(株)製エポキシエステル3000A)が挙げられる。
【0085】
前記ポリウレタン樹脂は、触媒の存在下、本発明の混合物または溶液組成物、その他のポリオール、イソシアネート、および必要に応じて鎖延長剤を重合(重付加)させることにより製造することができる。一般式(1)で表される化合物は、ポリウレタン樹脂中のスルホン酸塩基含有量が1×10-5eq/g以上2×10-3eq/g以下となる量で添加することが好ましく、他のポリオールは20質量%〜45質量%の範囲で添加することが好ましく、イソシアネートはポリウレタン樹脂のウレタン基濃度が2.5mmol/g〜4.5mmol/gの範囲となる量で添加することが好ましい。
【0086】
触媒としては公知のポリウレタン樹脂の重合触媒を使用することができ、第三級アミン触媒や有機スズ触媒が例示できる。第三級アミン触媒としては、ジエチレントリアミン、N−メチルモルホリン、および、テトラメチルヘキサメチレンジアミンが例示でき、有機スズ触媒としては、ジブチルスズジラウレート、スズオクトエートが例示できる。触媒としては有機スズ触媒を使用することが好ましい。
触媒の添加量は、重合に使用する一般式(1)で表される化合物、その他のポリオール、イソシアネート、および必要に応じてその他の鎖延長剤を含む重合成分の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.1質量部である。本発明の混合物または溶液組成物は、反応速度を制御する観点から、触媒を添加した後、イソシアネート化合物とのウレタン化反応に付すことが好ましい。
【0087】
また、本発明の混合物または溶液組成物、ポリオールおよびポリイソシアネートを溶剤(重合溶媒)に溶解し、必要に応じて加熱、加圧、窒素置換等を行いながら重合することが好ましい。使用する溶剤としては、ポリウレタン樹脂の合成に使用されている公知の溶剤から選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の網時計溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、シクロヘキサンが挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンが好適に使用される。
【0088】
本発明のポリウレタン樹脂の質量平均分子量は1万以上20万以下(本発明において、「1万以上20万以下」を、「1万〜20万」とも記載することとする。以下、同様。)であることが好ましく、4万〜10万であることがより好ましく、5万〜9万であることがさらに好ましい。前記ポリウレタン樹脂の質量平均分子量が1万以上であれば、良好な保存性が得られるので好ましい。また、20万以下であれば、粉末を良好に分散性することができるので好ましい。
【0089】
質量平均分子量を上記範囲にコントロールする方法としては以下のものが挙げられる。
例えば、グリコール由来のOH基とジイソシアネート由来のNCO基のモル比の微調整や反応触媒を用いることで質量平均分子量を調整することができる。
反応触媒としてはジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛等の金属塩が挙げられる。好ましくはジブチルスズジラウレートが挙げられる。
その他の方法としては反応時の固形分濃度、反応温度、反応溶媒、反応時間等を調整することで質量平均分子量を調整することができる。
【0090】
前記ポリウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜2.5であることが好ましい。より好ましくは1.5〜2.0である。分子量分布が2.5以下であれば、組成分布が少なく、良好な分散性が得られるので好ましい。
【0091】
本発明のポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は、前述のように、2.5mmol/g〜4.5mmol/gであることが好ましく、3.0mmol/g〜4.0mmol/gであることがさらに好ましい。ウレタン基濃度が2.5mmol/g以上であれば、本発明のポリウレタン樹脂を結合剤成分として含む塗膜のTgが低下することなく、良好な耐久性を得ることができるので好ましい。また、4.5mmol/g以下であれば、良好な溶剤溶解性が得られ、分散性が良好であるので、分子量のコントロールが容易であるので好ましい。
【0092】
本発明のポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は80℃〜200℃が好ましく、90℃〜160℃がより好ましい。ガラス転移温度が80℃以上であれば、高強度な塗膜を形成することができ耐久性、保存性が向上するので好ましい。また、200℃以下であれば、塗膜のカレンダー成形性が良好であり、電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を形成することができるので好ましい。
【0093】
また、放射線硬化性を有するポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、10℃〜160℃が好ましく、10℃〜100℃がより好ましい。ガラス転移温度が10℃以上であれば、放射線硬化後に良好な塗膜強度が得られ、耐久性、保存性が向上するので好ましい。また、160℃以下であれば、放射線硬化後にカレンダー処理をする場合でもカレンダー成形性が良好であり、電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を形成することができるので好ましい。
【0094】
極性基の含有量は、1×10-5eq/g〜2×10-3eq/gであることが好ましく、1×10-5eq/g〜1×10-3eq/gであることがより好ましく、1×10-5eq/g〜5×10-4eq/gであることがさらに好ましい。極性基の含有量が1×10-5以上であれば、粉末への十分な吸着力を得ることができ、分散性が良好であるので好ましい。また、2×10-3eq/g以下であれば、良好な溶剤への溶解性が得られるので好ましい。
【0095】
本発明のポリウレタン樹脂は、ポリオールとして一般式(1)で表される化合物を使用して得られるので、極性基として−SO3Mを有する。ここで、Mは、前述と同義である。
【0096】
本発明のポリウレタン樹脂は、他の極性基を有していてもよい。
他の極性基としては、−OSO3M、−PO32、−COOMが好ましい。この中でも、−OSO3Mがさらに好ましい。Mは、水素原子または1価のカチオンを表す。1価のカチオンとしては、アルカリ金属またはアンモニウムが例示できる。
【0097】
本発明のポリウレタン樹脂には、水酸基(OH基)が含まれていてもよい。OH基は1分子あたり2〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましい。OH基の個数が上記範囲であると、イソシアネート硬化剤との反応性が向上するために塗膜強度、および耐久性が向上し、また、溶剤への溶解性が向上するので分散性が良好となる。
【0098】
本発明のポリウレタン樹脂は、分子内にアクリル系二重結合を少なくとも1個有するジオールを使用することで、アクリル系二重結合を導入することができる。
二重結合(エチレン性不飽和結合)の含有量は、1×10-5eq/g〜2×10-3eq/gであることが好ましく、1×10-5eq/g〜1×10-3eq/gであることがより好ましく、1×10-4eq/g〜1×10-3eq/gであることがさらに好ましい。
二重結合の含有量が1×10-5eq/g以上であれば、放射線硬化後に良好な塗膜強度を得ることができるので好ましい。また、2×10-3eq/g以下であれば、放射線硬化後にカレンダー処理をする場合でもカレンダー成形性が良好であり、電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を形成することができるので好ましい。
【0099】
[ポリウレタン樹脂の製造方法]
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、本発明の混合物または本発明の溶液組成物を、イソシアネート化合物とのウレタン化反応に付すものである。その詳細は、前述の通りである。
【0100】
[磁気記録媒体]
本発明は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体(以下、「媒体1」という)、非磁性支持体上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体(以下、「媒体2」という)に関する。
媒体1は、磁性層に含まれる結合剤が、本発明のポリウレタン樹脂を含み、媒体2は、磁性層に含まれる結合剤および/または非磁性層に含まれる結合剤が、本発明のポリウレタン樹脂を含む。
以下において、媒体1と媒体2をあわせて、「本発明の磁気記録媒体」という。
以下、本発明の磁気記録媒体について、更に詳細に説明する。
【0101】
(結合剤)
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層の結合剤として、本発明のポリウレタン樹脂を含む。結合剤成分としては、本発明のポリウレタン樹脂に加えて、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応性樹脂を含むこともできる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を各層に使用することも可能である。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号公報に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用することができる。
【0102】
磁気記録媒体には、通常、結合剤樹脂を架橋、硬化させて塗膜強度を高めるために熱硬化性化合物が硬化剤(架橋剤とも呼ばれる)として使用される。硬化剤としてはポリイソシアネートが広く用いられている。ポリイソシアネートとしては、3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物。TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、およびこれらの混合物。HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物。さらに、クルードMDIなどがある。これらの中で好ましいものは、TMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
【0103】
イソシアネート系硬化剤以外に電子線あるいは紫外線などの放射線硬化性の硬化剤を用いてもよい。この場合放射線硬化性官能基としてアクリロイル基またはメタクリロイル基を分子内に2個以上、好ましくは3個以上有する硬化剤を用いることができる。例えばTMP(トリメチロールプロパン)のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどがある。この場合、硬化剤のほかに結合剤にも(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。紫外線硬化の場合はこのほかに光増感剤が併用される。
硬化剤は、分散性を維持する観点からは、硬化剤を除く結合剤100質量部に対して0質量部以上80質量部以下添加することが好ましい。
【0104】
非磁性層、磁性層には、非磁性粉末または磁性粉末に対し、例えば5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で結合剤を用いることができる。また、本発明のポリウレタン樹脂の使用量は、結合剤全体の50重量%以上とすることが好ましく60〜100重量%含有することが好ましく、70〜100重量%含有することが特に好ましい。結合剤中の本発明のポリウレタン樹脂の含有量が上記範囲内であると、分散性が良好であるので好ましい。
【0105】
(磁性層)
磁性層には、結合剤とともに強磁性粉末が含まれる。
強磁性粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
強磁性粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を強磁性粉末の平均粒子サイズとする。
【0106】
なお、本発明において、磁性体等の粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
【0107】
また、該粉体の平均針状比は、上記測定において粉体の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粉体の(長軸長/短軸長)の値の算術平均を指す。ここで、短軸長とは、上記粉体サイズの定義で(1)の場合は、粉体を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚さ乃至高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、粉体の形状が特定の場合、例えば、上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。粉体サイズ測定において、標準偏差/平均値をパーセント表示したものを変動係数と定義する。
【0108】
強磁性粉末としては、針状強磁性体、平板状磁性体、または球状もしくは楕円状磁性体を使用することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0109】
(1)針状強磁性体
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性粉末として使用可能な針状強磁性体としては、針状であるコバルト含有強磁性酸化鉄または強磁性合金粉末等の強磁性金属粉末が例示できる、そのBET比表面積(SBET)は、好ましくは40m2/g以上80m2/g以下、より好ましくは50m2/g以上70m2/g以下である。結晶子サイズは好ましくは8nm以上25nm以下、より好ましくは9nm以上22nm以下であり、特に好ましくは10nm以上20nm以下である。長軸長は20nm以上50nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上45nm以下である。
【0110】
強磁性粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Fe等の強磁性金属粉末が挙げられる。強磁性粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5原子%以上20原子%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、5原子%以上10原子%以下である。0.5原子%以上であれば、強磁性粉末を高σS化することができ、良好な磁気特性が得られ、良好な電磁変換特性が得られるため好ましい。20原子%以下であれば、鉄の含有量が適切であり、良好な磁気特性が得られ、良好な電磁変換特性が得られるため好ましい。さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
【0111】
強磁性粉末として使用可能な、コバルト、イットリウムを導入した強磁性粉末の製造方法の一例を示す。
第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。
このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましい。その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させてもよく、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
【0112】
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
【0113】
次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
【0114】
強磁性粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン、ガドリニウム等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用してもよい。
【0115】
強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は、好ましくは159.2kA/m以上238.8kA/m以下(2,000Oe以上3,000Oe以下)であり、さらに好ましくは167.2kA/m以上230.8kA/m以下(2,100Oe以上2,900Oe以下)である。
また、飽和磁束密度は、好ましくは150mT以上300mT以下(1,500G以上3,000G以下)であり、さらに好ましくは160mT以上290mT以下(1,600G以上2,900G以下)である。また飽和磁化(σs)は、好ましくは100A・m2/kg以上170A・m2/kg以下(100emu/g以上170emu/g以下)であり、さらに好ましくは110A・m2/kg以上160A・m2/kg以下(110emu/g以上160emu/g以下)である。
【0116】
磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布をよくする、単分散α−Fe23を使用する、粒子間の焼結を防止するなどの方法がある。
【0117】
(2)平板状磁性体
強磁性粉末として使用される平板状磁性体としては六方晶フェライト粉末が好ましい。
六方晶フェライトとしてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、さらに一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Zr、Znなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
【0118】
粒子サイズは六角板径で10nm以上50nm以下であることが好ましい。磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下であることが好ましい。板径が上記範囲であれば、熱揺らぎがなく安定な磁化が望める。また、ノイズも低くなるため高密度磁気記録に適する。
板状比(板径/板厚)は1以上15以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。上記範囲であると配向性が十分であり、粒子間のスタッキングが起こりにくくノイズが小さくなる。この粒子サイズ範囲のBET法による比表面積は10m2/g以上200m2/g以下を示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。結晶子サイズは50Å以上450Å以下であることが好ましく、より好ましくは100Å以上350Å以下である。粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1以上2.0以下であることが好ましい。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0119】
抗磁力Hcは39.8kA/m以上398kA/m以下(500Oe以上5,000Oe以下)程度の磁性体は作製可能である。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。通常63.7kA/m以上318.4kA/m以下(800Oe以上4,000Oe以下)程度であるが、好ましくは119.4kA/m(1,500Oe)以上278.6kA/m(3,500Oe)以下である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラを越える場合は、159.2kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。
Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。飽和磁化σsは、好ましくは40A・m2/kg以上80A・m2/kg以下(40emu/g以上80emu/g以下)である。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等がよく知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0120】
磁性体(磁性粉末)を分散する際に磁性体粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は磁性体に対して0.1%以上10%以下である。磁性体のpHも分散に重要である。通常4以上12以下程度であり、分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性か、一般に6以上10以下程度が選択される。磁性体に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01%以上2.0%以下が選ばれる。
【0121】
六方晶フェライトの製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法。(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法。(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1,100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0122】
(3)球状または楕円状磁性体
球状または楕円状磁性体としては、Fe162を主相とする窒化鉄系の強磁性粉末が好ましい。窒化鉄系強磁性粉末は、Fe、N原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。Feに対するNの含有量は1.0原子%以上20.0原子%以下が好ましい。
【0123】
窒化鉄は球状または楕円状が好ましく、長軸径/短軸径の軸比は1以上2以下が好ましい。BET比表面積(SBET)が30m2/g以上100m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは50m2/g以上70m2/g以下である。結晶子サイズは12nm以上25nm以下であることが好ましく、より好ましくは13nm以上22nm以下である。
【0124】
飽和磁化σsは50A・m2/kg(50emu/g)以上200A・m2/kg(200emu/g)以下が好ましい。さらに好ましくは70A・m2/kg(70emu/g)以上150A・m2/kg(150emu/g)以下である。
【0125】
(非磁性層)
媒体2は、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有し、磁性層および/または非磁性層の結合剤が、前記ポリウレタン樹脂を含む。
【0126】
非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。また、カーボンブラックを使用することもできる。
【0127】
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどを単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。好ましいものは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0128】
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
【0129】
非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/gであり、より好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
【0130】
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
【0131】
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましく、6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下または脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。
【0132】
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%、さらに好ましくは0.3〜1.5質量%である。含水量が0.1〜5質量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。強熱減量は、20質量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0133】
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、好ましくは1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
【0134】
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0135】
非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOPおよびそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0136】
また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記載されているようなものが使用できる。
【0137】
(カーボンブラック)
本発明の磁気記録媒体は、磁性層および/または非磁性層にカーボンブラックを含むことができる。使用可能なカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒子径は5〜300nm、好ましくは10〜250nm、更に好ましくは20〜200nmであることがそれぞれ好ましい。pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccであることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、905、800、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアンカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15、RAVEN−MT−P、日本EC社製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗布液に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末または非磁性粉末に対する量の0.1〜30質量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減(易滑性付与)、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。また、非磁性層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。また、非磁性層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。従って本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは磁性層、非磁性層でその種類、量、組合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。本発明において、磁性層および/または非磁性層に使用できるカーボンブラックについては、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0138】
(研磨剤)
研磨剤としてはα化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料を単独または組合せて使用することができる。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90質量%以上であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の平均粒子サイズは0.01〜2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜1.0μm、特に好ましくは0.05〜0.5μmの範囲である。特に電磁変換特性を高めるためには、その粒度分布が狭い方が好ましい。また耐久性を向上させるためには必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることも可能である。タップ密度は0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m/g、であることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。具体的には住友化学社製AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT20、HIT−30、HIT−55、HIT60、HIT70、HIT80、HIT100、レイノルズ社製ERC−DBM、HP−DBM、HPS−DBM、不二見研磨剤社製WA10000、上村工業社製UB20、日本化学工業社製G−5、クロメックスU2、クロメックスU1、戸田工業社製TF100、TF140、イビデン社製ベータランダムウルトラファイン、昭和鉱業社製B−3などが挙げられる。これらの研磨剤は必要に応じ非磁性層に添加することもできる。非磁性層に添加することで表面形状を制御したり、研磨剤の突出状態を制御したりすることができる。これら磁性層、非磁性層の添加する研磨剤の粒径、量はむろん最適値に設定すべきものである。
【0139】
(添加剤)
磁性層および非磁性層には、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつ添加剤を使用することができる。具体的には、二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、αナフチル燐酸、フェニル燐酸、ジフェニル燐酸、p−エチルベンゼンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、アミノキノン類、各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコール、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
【0140】
これらの具体例としては、脂肪酸では、カプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、などが挙げられる。エステル類ではブチルステアレート、オクチルステアレート、アミルステアレート、イソオクチルステアレート、ブチルミリステート、オクチルミリステート、ブトキシエチルステアレート、ブトキシジエチルステアレート、2ーエチルヘキシルステアレート、2ーオクチルドデシルパルミテート、2ーヘキシルドデシルパルミテート、イソヘキサデシルステアレート、オレイルオレエート、ドデシルステアレート、トリデシルステアレート、エルカ酸オレイル、ネオペンチルグリコールジデカノエート、エチレングリコールジオレイル、アルコール類ではオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、などが挙げられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン系界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン系界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0141】
本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は個々に異なる物理的作用を有するものであり、その種類、量、および相乗的効果を生み出す潤滑剤の併用比率は目的に応じ最適に定められるべきものである。非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点、融点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を中間層で多くして潤滑効果を向上させるなど考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。一般には潤滑剤の総量は、強磁性粉末または非磁性粉末に対し、0.1〜50質量%、好ましくは2〜25質量%の範囲とすることができる。
【0142】
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等の公知の有機溶媒を任意の比率で使用することができる。
【0143】
また、本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層塗布液および非磁性層塗布液製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。本発明は、公知の有機溶剤を使用することができ、例えば特開昭6−68453に号公報記載の溶剤を用いることができる。
【0144】
(層構成)
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の厚さは、例えば2〜100μm、好ましくは2〜80μmである。コンピューターテープの場合、非磁性支持体の厚さは、3.0〜6.5μmが好ましく、更に好ましくは、3.0〜6.0μm、特に好ましくは、4.0〜5.5μmである。
【0145】
非磁性支持体と非磁性層または磁性層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。下塗り層の厚みは、例えば0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.5μmである。本発明の磁気記録媒体は、支持体両面に非磁性層と磁性層を設けてなるディスク状媒体であっても、片面のみに設けたテープ状媒体またはディスク状媒体でもよい。この場合、帯電防止やカール補正などの効果を出すために非磁性層、磁性層側と反対側にバックコ−ト層を設けてもかまわない。この厚みは、例えば0.1〜4μm、好ましくは0.3〜2.0μmである。これらの下塗層、バックコート層は公知のものが使用できる。
【0146】
非磁性層の厚みは通常、0.2〜5.0μm、好ましくは0.3〜3.0μm、さらに好ましくは0.4〜2.0μmである。
【0147】
磁性層の厚みは、好ましくは30〜150nm、より好ましくは50〜120nm、更に好ましくは60〜100nmであり、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化することが好ましい。また、磁性層の厚み変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±30%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0148】
(バックコート層)
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気記録媒体(磁気テープ)は、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バックコート層には、カーボンブラックと無機粉末が含有されていることが好ましい。
【0149】
バックコート層に添加することができる無機粉末としては、平均粉体サイズが80〜250nmでモース硬度が5〜9の無機粉末が挙げられる。無機粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、酸化クロム(Cr)、TiO等を使用することができ、中でもα−酸化鉄、α−アルミナを用いることが好ましい。
【0150】
バックコート層に使用するカーボンブラックは、磁気記録媒体に通常使用されているものを広く用いることができる。例えば、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。バックコート層の凹凸が磁性層に写らないようにするために、カーボンブラックの平均粒径は0.3μm以下にすることが好ましい。特に好ましい粒径は、0.01〜0.1μmである。また、バック層におけるカーボンブラックの使用量は、光学透過濃度(マクベス社製TR−927の透過値)が2.0以下になる範囲にすることが好ましい。
【0151】
走行耐久性を向上させる上で、平均粒子サイズの異なる2種類のカーボンブラックを使用することが有利である。この場合、平均粒子サイズが0.01〜0.04μmの範囲にある第1のカーボンブラックと、平均粒子サイズが0.05〜0.3μmの範囲にある第2のカーボンブラックとの組合せが好ましい。第2のカーボンブラックの含有量は、無機粉末と第1のカーボンブラックとの合計量を100質量部として、0.1〜10質量部が適しており、0.3〜3質量部が好ましい。結合剤の使用量は、無機粉末とカーボンブラックの合計質量を100質量部として10〜40質量部の範囲から選ばれ、より好ましくは20〜32質量部にする。バックコート層用の結合剤には、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。
【0152】
(非磁性支持体)
非磁性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、芳香族ポリアミド、ポリベンゾオキサゾールなどの公知のフィルムが使用できる。ガラス転移温度が100℃以上の支持体を用いることが好ましく、ポリエチレンナフタレート、アラミドなどの高強度支持体を用いることが特に好ましい。また必要に応じ、磁性面とベース面の表面粗さを変えるため、特開平3−224127号公報に示されるような積層タイプの支持体を用いることもできる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などを行ってもよい。
【0153】
非磁性支持体としては、WYKO社製光干渉式表面粗さ計HD−2000で測定した中心面平均表面粗さ(Ra)が8.0nm以下、好ましくは4.0nm以下、さらに好ましくは2.0nm以下のものを使用することが好ましい。これらの支持体は単に中心面平均表面粗さ(Ra)が小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。支持体の最大高さRmaxは1μm以下、十点平均粗さRzは0.5μm以下、中心面山高さはRpは0.5μm以下、中心面谷深さRvは0.5μm以下、中心面面積率Srは10%以上、90%以下、平均波長λaは5μm以上、300μm以下であることがそれぞれ好ましい。所望の電磁変換特性と耐久性を得るため、これら支持体の表面突起分布をフィラーにより任意にコントロールすることができ、0.01μmから1μmの大きさのものを各々を0.1mmあたり0個から2000個の範囲でコントロ−ルすることができる。
【0154】
本発明に用いられる支持体のF−5値は好ましくは5〜50kg/mm(49〜490MPa)である。また、支持体の100℃30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強度は5〜100kg/mm(49〜980MPa)、弾性率は100〜2000kg/mm(0.98〜19.6GPa)であることがそれぞれ好ましい。温度膨張係数は10−4〜10−8/℃であることが好ましく、より好ましくは10−5〜10−6/℃である。湿度膨張係数は10−4/RH%以下であることが好ましく、より好ましくは10−5/RH%以下である。これらの熱特性、寸法特性、機械強度特性は支持体の面内各方向に対し10%以内の差でほぼ等しいことが好ましい。
【0155】
(塗布液の製造)
磁性層塗布液、更には非磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、非磁性粉末、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は強磁性粉末または非磁性粉体と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30質量%以上が好ましい)および強磁性粉末100質量部に対し15〜500質量部の範囲で混練処理することができる。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層塗布液および非磁性層塗布液を分散させるためにはガラスビーズを用いることができ、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズを用いることが好ましい。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
【0156】
磁気記録媒体の製造方法では、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層用塗料を所定の膜厚となるようにして磁性層を塗布して形成する。ここで複数の磁性層用塗料を逐次または同時に重層塗布してもよく、非磁性層用塗料と磁性層用塗料とを逐次または同時に重層塗布してもよい。磁性層塗布液または非磁性層塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
【0157】
磁性層用塗料の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層用塗料の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて磁場配向処理してもかまわない。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向することもできる。
【0158】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20m/分〜1000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
【0159】
このようにして得られた塗布原反は、一旦巻き取りロールにより巻き取られ、しかる後、この巻き取りロールから巻き出され、次いでカレンダー処理に施され得る。
カレンダー処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどを利用することができる。カレンダー処理によって、表面平滑性が向上するとともに、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。カレンダー処理する工程は、塗布原反の表面の平滑性に応じて、カレンダー処理条件を変化させながら行うことが好ましい。
【0160】
塗布原反の表面平滑性は、カレンダーロール温度、カレンダーロール速度、カレンダーロールテンションを制御することによっても制御することができる。塗布型媒体の特性を考慮すると、カレンダーロール圧力、カレンダーロール温度を制御することが好ましい。カレンダーロール圧力を低くする、あるいはカレンダーロール温度を低くすることにより、最終製品の表面平滑性は低下する。逆に、カレンダーロール圧力を高くする、あるいはカレンダーロール温度を高くすることにより、最終製品の表面平滑性は高まる。
【0161】
これとは別に、カレンダー処理工程後に得られた磁気記録媒体を、サーモ処理して熱硬化を進行させることもできる。このようなサーモ処理は、磁性層塗布液の配合処方により適宜決定すればよいが、例えば35〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。またサーモ処理時間は、12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。
【0162】
カレンダーロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用することができる。また金属ロールで処理することもできる。
【0163】
カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を、例えば60〜100℃の範囲、好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲とすることができ、圧力は、例えば100〜500kg/cm(98〜490kN/m)の範囲であり、好ましくは200〜450kg/cm(196〜441kN/m)の範囲で、特に好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)の範囲とすることができる。また、磁性層表面の平滑性を高めるため、非磁性層表面にカレンダー処理をすることもできる。非磁性層に対するカレンダー処理も、上記条件で行うことが好ましい。
【0164】
得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。裁断機としては、特に制限はないが、回転する上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の組が複数設けられたものが好ましく、適宜、スリット速度、噛み合い深さ、上刃(雄刃)と下刃(雌刃)の周速比(上刃周速/下刃周速)、スリット刃の連続使用時間等を選定することができる。
【0165】
物理特性
本発明の磁気記録媒体は、前記ポリウレタン樹脂を結合剤として含むことにより、極めて優れた表面平滑性を有することができる。本発明の磁気記録媒体の表面平滑性は、磁性層表面の中心面平均粗さにおいて、好ましくは0.1〜4nm、より好ましくは1〜3nmの範囲である。磁性層表面の十点平均粗さRzは30nm以下が好ましい。磁性層の表面性は、支持体のフィラーによる表面性のコントロールやカレンダ処理のロール表面形状などでもコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
【0166】
磁性層の飽和磁束密度は100〜400mTが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hc)は、143.2〜318.3kA/m(1800〜4000Oe)が好ましく、159.2〜278.5kA/m(2000〜3500Oe)が更に好ましい。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0167】
本発明の磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において、例えば0.50以下であり、好ましくは0.3以下である。また、表面固有抵抗は、磁性面10〜108Ω/sqが好ましく、帯電位は−500V〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2000kg/mm)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1500kg/mm)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
【0168】
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×10〜8×10Pa(1×10〜8×10dyne/cm)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障が発生しやすい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
【0169】
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m以下、さらに好ましくは10mg/m以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0170】
本発明の磁気記録媒体が非磁性層と磁性層を有する場合、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができる。例えば、磁性層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りを良くすることができる。
【実施例】
【0171】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、ここに示す成分、割合、操作、順序等は本発明の精神から逸脱しない範囲で変更し得るものであり、下記の実施例に制限されるべきものではない。また、実施例中の「部」、「%」は、特に示さない限り質量部、質量%を示す。また、以下に記載の固形分は下記方法で測定した。
試料1.0gを180℃/30分の条件で乾燥させた。乾燥後の質量を固形分とした。
【0172】
1.混合物および溶液組成物の実施例・比較例
【0173】
[実施例1]
2−アミノエタンスルホン酸100部、水酸化リチウム1水和物26.8部を水250部に添加し、45℃、30分撹拌した。1,2−ブチレンオキシド156部を添加し、45℃でさらに2時間撹拌した。トルエン400部を添加し10分撹拌した後、静置して下層を分取した。得られた下層を固化・乾燥し、スルホン酸塩基化合物(S−1)と、(S−1)中のリチウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−1)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0174】
[実施例2]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化ナトリウム25.6部に変更して実施例1と同様の操作を行い例示化合物(S−19)と、(S−19)中のナトリウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−19)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0175】
[実施例3]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化カリウム(純度95%)37.8部に変更して実施例1と同様の操作を行い、例示化合物(S−20)と、(S−20)中のナトリウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−19)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0176】
[比較例1]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化リチウム33.5部に変更して実施例1と同様の操作を行い、例示化合物(S−1)を得た。
【0177】
[比較例2]
用いる水酸化ナトリウム量を32.0部に変更して実施例2と同様の操作を行い、例示化合物(S−19)を得た。
【0178】
[比較例3]
用いる水酸化カリウム(純度95%)量を47.2部に変更して実施例3と同様の操作を行い、例示化合物(S−20)を得た。
【0179】
[実施例4]
2−アミノエタンスルホン酸100部、水酸化リチウム1水和物26.8部を水250部に添加し、45℃、30分撹拌した。ブチルグリシジルエーテル282部を添加し、45℃でさらに2時間撹拌した。トルエン400部を添加し10分撹拌した後、静置して下層を分取した。得られた下層を固化・乾燥し、例示化合物(S−2)と、(S−2)中のリチウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−2)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0180】
[実施例5]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化ナトリウム25.6部に変更して実施例4と同様の操作を行い、例示化合物(S−21)と、(S−21)中のナトリウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−21)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0181】
[実施例6]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化カリウム(純度95%)37.8部に変更して実施例4と同様の反応を行い、例示化合物(S−22)と、(S−22)中のカリウムが水素原子である酸型との混合物を得た。仕込み量から算出される例示化合物(S−22)(塩基型)と酸型との混合比(質量比)は、塩基型:酸型=80:20であった。
【0182】
[比較例4]
用いる水酸化リチウム1水和物29.1部を水酸化リチウム33.5部に変更して実施例4と同様の操作を行い、例示化合物(S−2)を得た。
【0183】
[比較例5]
用いる水酸化ナトリウム量を32.0部に変更して実施例5と同様の操作を行い、例示化合物(S−21)を得た。
【0184】
[比較例6]
用いる水酸化カリウム(純度95%)量を37.8部に変更して実施例6と同様の操作を行い、例示化合物(S−22)を得た。
【0185】
[実施例7]
比較例1で得た例示化合物(S−1)1.0部に酢酸0.21部、トルエン0.79部を添加し、固形分50%の溶液を調製した
【0186】
[実施例8]
比較例2で得た例示化合物(S−19)1.0部に酢酸0.21部、トルエン0.79部を添加し、固形分50%の溶液を調製した。
【0187】
[実施例9]
比較例3で得た例示化合物(S−20)1.0部に酢酸0.20部、トルエン0.80部を添加し、固形分50%の溶液を調製した。
【0188】
[実施例10]
比較例4で得た例示化合物(S−2)1.0部に酢酸0.15部、トルエン0.85部を添加し、固形分50%の溶液を調製した。
【0189】
[実施例11]
比較例5で得た例示化合物の方法で得た(S−21)1.0部に酢酸0.15部、トルエン0.85部を添加し、固形分50%の溶液を調製した。
【0190】
[実施例12]
比較例6で得た例示化合物(S−22)1.0部に酢酸0.14部、トルエン0.86部を添加し、固形分50%の溶液を調製した。
【0191】
[実施例13]
トルエン0.79部に変えてシクロヘキサノン0.79部を使用した点以外は実施例7と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0192】
[実施例14]
トルエン0.79部に変えてシクロヘキサノン0.79部を使用した点以外は実施例8と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0193】
[実施例15]
トルエン0.80部に変えてシクロヘキサノン0.80部を使用した点以外は実施例9と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0194】
[実施例16]
トルエン0.85部に変えてシクロヘキサノン0.85部を使用した点以外は実施例10と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0195】
[実施例17]
トルエン0.85部に変えてシクロヘキサノン0.85部を使用した点以外は実施例11と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0196】
[実施例18]
トルエン0.86部に変えてシクロヘキサノン0.86部を使用した点以外は実施例12と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0197】
[実施例19]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.52部、トルエン0.48部を使用した点以外は実施例7と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0198】
[実施例20]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.49部、トルエン0.61部を使用した点以外は実施例8と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0199】
[実施例21]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.47部、トルエン0.53部を使用した点以外は実施例9と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0200】
[実施例22]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.37部、トルエン0.63部を使用した点以外は実施例10と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0201】
[実施例23]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.35部、トルエン0.65部を使用した点以外は実施例11と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0202】
[実施例24]
酢酸0.21部、トルエン0.79部変えてオクタン酸0.34部、トルエン0.66部を使用した点以外は実施例12と同様の方法で、固形分50%の溶液を調製した。
【0203】
生成物の同定
実施例1で得られた混合物のNMRデータおよびその帰属を以下に示す。なお、本実施例における1H NMRの測定には、400MHzのNMR(BRUKER社製AVANCEII−400)を使用した。
【0204】
1H NMR (D2O = 4.75 ppm) δ(ppm) = 3.68 (2H, m), 3.10 (2H, m), 2.59 (2H, m), 2.40 (4H, m), 1.45 (4H, m), 0.89 (6H, t).
【0205】
比較例1で得られた例示化合物(S−1)の1H NMRデータおよびその帰属を以下に示す。
1H NMR (D2O = 4.75 ppm) δ(ppm) = 3.68 (2H, m), 3.10 (2H, m), 2.59 (2H, m), 2.40 (4H, m), 1.45 (4H, m), 0.89 (6H, t).
【0206】
【化15】

【0207】
実施例7で得られた混合物の1H NMRデータおよびその帰属を以下に示す。
1H NMR (D2O = 4.75 ppm) δ(ppm) = 3.68 (2H, m), 3.10 (2H, m), 2.59 (2H, m), 2.40 (4H, m), 1.91(1.2H,s), 1.45 (4H, m), 0.89 (6H, t).
実施例7において、酢酸を添加する前後で1H NMRにおいてプロトンシフトは見られなかった。酢酸の1H NMRデータおよびその帰属を以下に示す。
酢酸:1.91(1.2H,s)
【0208】
実施例4で得られた混合物のNMRデータおよびその帰属を以下に示す。
【0209】
【化16】

【0210】
1H NMR (D2O = 4.75 ppm) δ(ppm) = 3.84 (2H, m), 3.55-3.30 (8H, m), 3.38 (2H, m), 2.95 (4H, m), 2.51 (2H, m), 1.49 (4H, m), 1.27 (4H, m), 0.83 (6H, t).
【0211】
[実施例25〜30]
実施例1〜6で得られた混合物を、それぞれトルエン1部中に1部溶解し、固形分50%の溶液を得た。
【0212】
[実施例31〜36]
実施例1〜6で得られた混合物を、それぞれシクロヘキサノン1部中に1部溶解し、固形分50%の溶液を得た。
【0213】
[比較例7〜12]
比較例1〜6で得られた例示化合物を、それぞれトルエン1部中に1部溶解し、固形分50%の溶液を得た。
【0214】
溶液安定性の評価
実施例7〜36で得た溶液の調製後1日以内のpHと、調製後2ヶ月後のpHを測定した。結果を下記表1に示す。得られた溶液を目視で観察したところ、溶液は透明であった。
【0215】
【表1】


【0216】
表1に示す結果から、実施例で得られた溶液は、いずれも経時的なpH変化が少なく保存安定性に優れることが確認できる。
【0217】
2.ポリウレタン樹脂の実施例
【0218】
[実施例37]
実施例3で調製した混合物を2.2部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)34.4部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)27.2部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部を、シクロヘキサノン150部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)36.3部を添加した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量および質量平均分子量/数平均分子量費(Mw/Mn)を0.3質量%の臭化リチウムを含有するDMF溶媒を用いて標準ポリスチレン換算で求めた。質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。以下の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ、6×10-4eq/gであった。
硫黄の標品として硫酸銅5水和物(和光純薬製)1.0質量部を純水49.0質量部に溶解させた。得られた溶液を、島津社製サークル付ろ紙Φ30mmに200μL滴下し、常温・真空で3時間乾燥させた。島津社製蛍光X線分析装置LAB CENTER XRF−1700を用いて、硫黄の発光強度を測定した。用いる硫酸銅5水和物および水をそれぞれ、0.1質量部:49.9質量部、0.5質量部:49.5質量部に変えた溶液を作製し硫黄の発光強度を測定し、検量線を作成した。
ポリウレタン1.0質量部をシクロヘキサノン49.0質量部に溶解させた。同様の方法で島津社製サークル付ろ紙にポリウレタン溶液を滴下、乾燥させ、硫黄の発光強度を測定した。硫酸銅5水和物の検量線とポリウレタン溶液の硫黄発光強度を比較し、ポリウレタン中に含まれるスルホン酸(塩)基量とした。
【0219】
分散性の評価
下記非磁性粉末4.1部および実施例37で合成したポリウレタン1部をシクロヘキサノン10.8部、2−ブタノン16.2部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90部を添加し、6時間分散させた。得られた液を帝人(株)製ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムに塗布し、乾燥させることでシートを作製した。シートの光沢を測定したところ、光沢値191であった。光沢度が高いほど、粉末の分散性が良好でありことを示す。なお、光沢度の測定は、スガ試験機器株式会社製GK−45Dを用いて行った。
非磁性粉末:α−酸化鉄(表面処理層:Al23、SiO2
平均長軸長:0.15μm、平均針状比:7、BET法による比表面積:52m2/g、pH8
【0220】
[実施例38]
実施例5で調製した混合物を3.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)33.3部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)27.5部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部を、シクロヘキサノン54.1部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、内温を80℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)36.3部を添加した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ6×10-4eq/gであった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例37と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は189であった。
【0221】
[実施例39]
実施例3で調製した混合物を2.2部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)38.3部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)18.4部、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製ブレンマーGLM)4.8部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部を、シクロヘキサノン150部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)36.3部を添加した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ、6×10-4eq/gであった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例37と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は191であった。
【0222】
[実施例40]
実施例5で調製した混合物を3.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)37.3部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)18.7部、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製ブレンマーGLM)4.8部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部をシクロヘキサノン54.1部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)36.3部を添加した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ、6×10-4eq/gであった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例37と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は189であった。
【0223】
[実施例41]
実施例6で調製した混合物を3.0部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)37.3部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)18.7部、グリセリンモノメタクリレート(日油(株)製ブレンマーGLM)4.8部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部をシクロヘキサノン54.1部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)36.3部を添加した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ、6×10-4eq/gであった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例37と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は193であった。
【0224】
[比較例7]
下記構造のポリエステルを含有するスルホン酸塩基含有化合物(質量平均分子量=4,500)を5.7部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)35.7部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)22.4部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部を、N-メチルピロリドン54.1部に添加し、室温で30分撹拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、内温80〜90℃になる速度で50質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を含有するN-メチルピロリドン溶液71.9部を滴下した。内温80℃〜90℃で4時間撹拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例37と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は145であった。
【0225】
【化17】

【0226】
[実施例42]
実施例1で調製した混合物を1.7部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)40.7部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)21.4部を、N−メチルピロリドン54.1部に添加し、室温で30分攪拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、内温80〜90℃になる速度で50質量%のジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を含有するN−メチルピロリドン溶液71.9部を滴下した。内温80℃〜90℃で4時間攪拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。上記の方法で、得られたポリウレタンのスルホン酸(塩)基含有量を測定したところ、6×10-4eq/gであった。
下記バリウムフェライト粉末7.3部および上記で合成したポリウレタン1部をシクロヘキサノン11.9部、2−ブタノン17.7部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液にジルコニアビーズ(ニッカトー製)90部を添加し、6時間分散させた。分散させた液のポリウレタンのバリウムフェライト粉末表面/溶液中の存在比率を以下の方法で測定したところ、4.0/1であった。溶液中の硫黄含量を蛍光X線を用いて測定したところ検出限界以下であった。このように溶液中でスルホン酸(塩)基由来の硫黄が検出されなかったことから、上記で合成したポリウレタンが、ほとんど溶液中に存在せず、ほぼ全量が粉末に吸着していることが確認できる。その後、得られた液を塗布し、乾燥させることでシートを作製した。シートの光沢を上記と同様の方法で測定したところ、光沢値171であった。
強磁性六方晶バリウムフェライト粉末
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:176kA/m(2200Oe)、平均板径:25nm、平均板状比:3
BET比表面積:65m2/g
σs:49A・m2/kg(49emu/g)
pH:7
【0227】
−ポリウレタンの存在比率の測定方法−
日立製分離用小型超遠心機CS150GXLにて100,000rpm、80分の条件で分散液中のバリウムフェライト粉末と溶液を遠心分離した。上澄み液3mlを測り取り質量を測定した。40℃、18時間の条件で乾燥させた後、140℃、3時間真空条件下で乾燥した。乾燥したものの質量をポリウレタン非吸着固形分とし、分散に使用したポリウレタンと上澄み液中から観察されたポリウレタンの比率から、バリウムフェライト粉末表面/溶液中のポリウレタンの存在比を計算した。
【0228】
[比較例8]
比較例7のポリウレタン合成に使用したポリエステルを含有するスルホン酸化合物(質量平均分子量=4,500)を31.2部、ポリエーテル(株式会社アデカ製アデカポリエーテルBPX-1000)35.7部10.6部、トリシクロ[5,2,1,0(2,6)]デカンジメタノール(東京化成工業株式会社製)21.9部、ジラウリン酸ジブチルすず0.1部を、N−メチルピロリドン54.1部に添加し、室温で30分撹拌し完溶させた。フラスコ内の水分をカールフィッシャー水分計で測定し、含有する水に対して1倍モルのジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を添加した。内温を80℃に設定した後、内温80〜90℃になる速度で50質量%のミリジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製ミリオネートMT)を含有するN−メチルピロリドン溶液71.9部を滴下した。内温80℃〜90℃で4時間撹拌した後室温に冷却した。
得られたポリウレタンの質量平均分子量およびMw/Mnを実施例37と同様の方法で測定したところ、質量平均分子量は70000、Mw/Mn=1.90であった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例42と同様の方法で分散液の調製およびバリウムフェライト粉末表面/溶液中の存在比率の測定を行ったところ、2.6/1であった。
得られたポリウレタンを使用し、実施例42と同様の方法でシートの作製および光沢度の測定を行ったところ、光沢度は145であった。
【産業上の利用可能性】
【0229】
本発明の混合物は、ポリウレタン樹脂の合成等の各種有機合成反応の原料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物とプロトン酸との混合物。
【化1】

[一般式(1)中、Xは二価の連結基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、少なくとも1つの水酸基を有する炭素数3以上のアルキル基または少なくとも1つの水酸基を有する炭素数8以上のアラルキル基を表し、Mは陽イオンを表す。]
【請求項2】
一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に下記一般式(A)で表される基を表す請求項1に記載の混合物。
【化2】

[一般式(A)中、*は窒素原子との結合位置を表し、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
【請求項3】
一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に下記一般式(B)で表される基を表す請求項1に記載の混合物。
【化3】

[一般式(B)中、Rは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜20のアルコキシアルキル基、または炭素数7〜20のアリールオキシアルキル基を表す。]
【請求項4】
前記プロトン酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸またはフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項5】
前記プロトン酸は、一般式(1)中のMが水素原子を表すスルホン酸基含有化合物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項6】
前記スルホン酸塩基含有化合物1モルに対して0.05〜0.50モルのプロトン酸を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項7】
一般式(1)で表されるスルホン酸塩基含有化合物にプロトン酸を添加することにより、請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物を製造する方法。
【請求項8】
前記プロトン酸は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸またはフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記スルホン酸塩基含有化合物1モルに対して0.05〜0.50モルのプロトン酸を添加する請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
スルホン酸(塩)基含有アミンとオキシランとを反応させる工程において、前記アミンに含まれるスルホン酸(塩)基に対して0.50〜0.95モル%の塩基の存在下で前記反応を行うことにより、請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物を製造する方法。
【請求項11】
前記スルホン酸(塩)基含有アミンは、アミノベンゼンスルホン酸もしくはその塩、または2−アミノエタンスルホン酸もしくはその塩である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物を溶解させた有機溶媒からなる溶液組成物。
【請求項13】
前記有機溶媒は非プロトン性有機溶媒である請求項12に記載の溶液組成物。
【請求項14】
前記非プロトン性溶媒は、トルエン、2−ブタノン、シクロヘキサノンおよびそれらの2種以上の混合溶媒からなる群から選ばれる溶媒である請求項13に記載の溶液組成物。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物または請求項12〜14のいずれか1項に記載の溶液組成物とイソシアネート化合物とを原料とすることを特徴とするポリウレタン樹脂。
【請求項16】
スルホン酸(塩)基含有量が1×10-5eq/g以上2×10-3eq/g以下である請求項15に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項17】
前記原料は、(メタ)アクリロイルオキシ基を含有するジオールを更に含有する請求項15または16に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項18】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の混合物または請求項12〜14のいずれか1項に記載の溶液組成物を、イソシアネート化合物とのウレタン化反応に付すことを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項19】
前記ウレタン化反応を、触媒存在下で行う請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記混合物または前記溶液組成物に前記触媒を添加した後、前記ウレタン化反応に付す請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記結合剤は、請求項15〜17のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項22】
非磁性支持体上に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層と強磁性粉末および結合剤を含む磁性層とをこの順に有する磁気記録媒体であって、
前記磁性層に含まれる結合剤および/または非磁性層に含まれる結合剤は、請求項15〜17のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする磁気記録媒体。

【公開番号】特開2010−254918(P2010−254918A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109683(P2009−109683)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】