スルーホール型マイクロストリップガスカウンタ素子
【課題】汎用な電子回路基板加工技術をもって製作可能な、高い解像度のイメージング計測ができる低コストの多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を提供する。
【解決手段】絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置し、絶縁基板に大きなスルーホールを多数設けることによって、放射線により電離ガス中に発生した電子及びイオンが両電極間を自由に移動できる素子基板構造を採用する。二次元のそれぞれの信号出力に極性が逆転した同一のパルス波形でかつ大きな電気信号を与え、高い信号対雑音比を得る。
【解決手段】絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置し、絶縁基板に大きなスルーホールを多数設けることによって、放射線により電離ガス中に発生した電子及びイオンが両電極間を自由に移動できる素子基板構造を採用する。二次元のそれぞれの信号出力に極性が逆転した同一のパルス波形でかつ大きな電気信号を与え、高い信号対雑音比を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エックス線または中性子散乱を用いた物質の構造解析実験において、高速応答性能、広い計測レンジ及び高位置検出分解能が要求されるエックス線及び中性子インメージング計測に用いられる一次元あるいは二次元放射線センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
電離ガスを用いたエックス線または中性子を計測するためのイメージングセンサーでは、それらから得られる一次電離電荷が3×10-15クーロン[C]以下と極めて微少であるため、センサー内で高電圧電場により電子増倍した後、電気信号として取出している。上記の原理を用いた放射線センサーとしては、次のものがある。
【0003】
(1)直径20[μm]程度の極めて細い金属線を数ミリメートル間隔で縦横に張り、それぞれの縦線出力をX軸信号として、横線出力をY軸信号とした構造のマルチワイヤ比例計数管(MWPC)型放射線センサー。
【0004】
(2)絶縁基板表面上に幅10[μm]程度の陽電極ストリップを、そして両脇に50[μm]程度の絶縁ギャップを介して陽電極ストリップを挟む形で幅100[μm]程度の陰電極ストリップを配置した電極対を多数並べ、背面には陽電極ストリップと直交する方向に表面の陽電極と同じピッチでバックストリップを配置して、それぞれの陽電極ストリップ出力をX軸信号として、それぞれのバックストリップの出力をY軸信号とした構造のマイクロストリップガスカウンタ(MSGC)型放射線センサー。
【0005】
(3)縁基板背面に多数本の陽電極ストリップを数100[μm]間隔で配置し、それぞれの陽電極ストリップの長さ方向数100[μm]間隔でストリップ真上の絶縁基板にそれを貫通する直径50[μm]以下の円柱状の金属製スタッドピンを陽電極ストリップと電気的に接合する形で成形し、また表面のスタッドピンの真上に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップを配置して、その陰電極ストリップとスタッドピンが重なる部分にスタッドピンと同心で幅100[μm]程度のドーナツ状絶縁ギャップを設け、それぞれの陽電極出力をX軸信号、それぞれの陰電極出力をY軸信号とした構造のマイクロピクセルガスカウンター(MPGC)型放射線センサー。
【0006】
又、本発明の背景技術には、更に次のものものがある。
(1) MWPC原理に基づいた二次元位置検出型検出器が中性子小角散乱
実験装置のために製作された。その検出器の有感面積は640x640mm2である。中性子検出効率と高位置分解能の性能を得るため、そして視差を最小にするため、混合ガスは190kPa 3He + 100kPa CF4にし、そして有感体積を30mm厚さにした。検出器の最大中性子計数率の設計は105イベント/秒である。計算上の中性子検出効率は2Åの中性子で60%であり、そしてアノードグリッドにおける測定された中性子エネルギー分解能は代表的で20%(半値幅)であった。有感面で検出された中性子の位置は、ワイヤ対ワイヤ法(高い分解能の5x5mm2はワイヤ座標によって定義された)を使って決定された。16チャンネルの電荷型前置増幅器/増幅器/コンパレーターモジュールは、チャンネル感度が0.1V/fC、ノイズラインの幅が0.4fCそしてチャンネル間クロストークが5%以下の性能を持ったものが開発された(非特許文献1)。
【0007】
(2) 我々はマイクロチップ モジュール(MCM)技術を用いて、検出
面積5cm x 5cmの二次元マイクロストリップ ガス チェンバ(MSGC)を開発した。それは17mmの薄い素子基板、200 mmのピッチの254アノードと255バックストリップを有している。MSGCは、500ピン以上を持った大きなピングリッドアレイ(PGA)パッケージにマウントされている。それは読出し電子回路と組み合わされたイメージングMSGCからの大量の信号を容易に接続することを可能にする。本誌において、我々は強烈なX線線源の近くで作動するX線イメージング検出器としてのMSGCの能力について報告する。高輝度X線の下での安定な作動を得るために、約20mm素子基板と約1015W/squareの表面抵抗が解決策であることがわかった。表面抵抗の制御はポリイミド素子基板の表面に有機チタンをコーティングすることで行った。この改善により、MSGCが107Hz/mm2の高計数率の下で約103秒間安定に作動した。また、MSGCはX線発生器からの中程度輝度のX線の下で数ヶ月間作動した。この測定において、ヒットした電極の位置を記録するだけのシンプルな読取り法を用い、約60mmRMS位置分解能を有した高品質デジタルX線イメージングを達成した(非特許文献2)。
【0008】
(3) X線、ガンマ線及び荷電粒子のイメージングのために、斬新なガスを用いた検出器Micro Pixel Chamber(mu-PIC)が開発された。そのmu-PICは、大面積検出器が容易に生産できる両面プリント回路基板を基本にして製作される。0.4mmピッチ、3cmx3cm面積の mu-PICを用いた作動テストは成功裡に行われた。ガスゲインと安定性はこのテストで測定された。103のガスゲインにおける5日間の連続作動テストで、アノードとカソード間放電はおろかゲインの減少さえなかった。また、107cps/mm2の輝度のX線照射までゲインの低下は観測されなかった(非特許文献3)。
【非特許文献1】著者:Knott,-R.B.; Watt,-G.; Boldeman,-J.W.; Smith,-G.C.; et al.題名:A large 2D PSD for thermal neutron detector.発行所(書名):Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-SectionA,-Accelerators,Spectrometers.発行日:(21 Jun 1997). 該当頁:v.392(1-3). P.62-67
【非特許文献2】著者:Toru Tanimori; Atsuhiko Ochi; Seiji Minami, Tomofumi Naga.題名:Development of an imaging microstrip gas chamber with a 5cm x tcm area based on multi-chip module technology. 発行所(書名):Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-Section-A 381 (1996).受理日:(6 May 1996). 該当頁: P.280-288
【非特許文献3】著者:Ochi Atsuhiko; Nagayoshi Tsutomu; Koishi Satoshi, Tanimori,-Toru; et al.題名:Development of micro pixel chamber.Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-Section-A,-Accelerators,-Spectrometers,-Detectors-and-Associated-Equipment (1 Feb 2002) v. 478(1-2) 発行日:(1 Feb 2002). 該当頁: p. 196-199
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エックス線または中性子散乱を用いた物質の構造解析実験に用いられるエックス線及び中性子インメージングセンサには、数100[μm]の極めて高い位置検出分解能と6桁以上のダイナミックレンジ、高い信号対雑音比(S/N)、その上、広い検出面積が求められる。これらを実現するためには、先ず、電極ピッチを1[mm]以下の狭い間隔で配置し、且つ電極間隔が作動中に位置的に変動しないことが要求される。また、高い S/Nを得るには、エックス線及び中性子から得られる一次電離電荷が極少であることから、大きなガス増幅率を達成することはもとより、センサー内で発生した電気信号を損失無く信号電極から取出せる構造のセンサーが必要である。
【0010】
従来のMWPC型放射線センサーでは直径20[μm]程度の極めて細い金属線を1[mm]以下の等間隔で広い面積に張ることは技術的に困難であり、この結果、高速電荷収集及び位置検出分解能の向上には限界があった。また、空間に極めて細い金属線を狭い間隔で長く張った場合に検出器の振動により金属線が揺らいで出力信号が不安定になる、金属線が接触するなどの問題があった。
【0011】
MSGC型放射線センサーでは、絶縁基板表面上に50[μm]程度の狭い絶縁間隔で電極が配置されている結果、絶縁基板表面近傍のイオン群の移動に伴う絶縁基板背面のバックストリップへの電気誘導が表面の電極列の遮蔽によって大きく減損し、バックストリップ信号が極めて小さくなり、S/Nが悪く、高い解像度のイメージング計測が困難であった。また、陽電極ストリップはガス増幅を大きくするために、そのストリップ幅を10[μm]前後の細い金属薄膜を用いなければならず、現在の微細加工技術をもってしても長さ10[cm]以上のストリップを加工することが難しく、大面積の素子の製作ができないなどの課題があった。
【0012】
MPGC型放射線センサーでは、絶縁基板表面にはそれぞれの貫通スタッドピンと重なる部分にスタッドピントと同心で200[μm]程度の円形の穴を開けた帯状の陰電極ストリップを設ける必要がある。貫通スタッドピンと円形絶縁帯の中心がずれると、電界強度分布に偏りが生じて放電の原因になるため、総ての貫通スタッドピンと円形絶縁帯を高い精度で同心加工することが極めて重要である。例えば50x50[mm]の小さな有効検出面積の素子を製作する場合でも、スタッドピンのピッチが400[μm]のメッシュでは絶縁基板の全面に基板を貫通した直径50[μm]以下の円柱状のスタッドピンを15,000本以上形成し、総てのスタッドピンと円形絶縁帯との同心加工誤差を数マイクロメートル以下にする必要があり、製作するには極めて高度な加工技術を要し、また、貫通スタッドピンの形成には複雑な多数の加工工程を必要とする結果、MPGC型放射線センサーの製作コストが高くなるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置、あるいは陰電極ストリップと陽電極ストリップを逆転配置し、絶縁基板に大きなスルーホールを多数設けることによって、放射線により電離ガス中に発生した電子及びイオンが両電極間を自由に移動できる素子基板構造を採用する。この構造により、陽陰電極ストリップを非接触で直交する形に配置することができ、陽陰電極部があたかもガス中に浮いて配置されているような効果を得ることができる。この結果、電離ガス中の電子群とイオン群がそれぞれ陽陰電極ストリップに収集することが可能になり、イオンが絶縁基板に溜まることなく、陽陰電極ストリップには同じ波形で極性が異なった大きな電気信号パルスを発生させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、絶縁基板の表面上と背面にプリントした電極ストリップと絶縁基板に開けた直径50から150[μm]程度のスルーホールのシンプルな組合せで構成されるため、電極ピッチを200[μm]以下にすることも十分可能であり、電極間隔が振動等により変化することもなく、MWPC素子が有する課題を解決できる。
【0015】
本発明は、絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置、あるいは陰電極ストリップと陽電極ストリップを逆転配置し、絶縁基板に多数の大きなスルーホールを設けることによって、電離ガス中の電子及びイオンが両電極間を自由に移動可能になり、この結果、ガス増幅が生じる陽陰電極部がガス中に浮いて配置されているような効果をもたらし、入射した電子群は陰電極ストリップと極細の陽電極ストリップ間に印加された高電圧により形成された陽電極ストリップ近傍の非常に高い電界勾配によってガス増幅されて、発生した電子とイオン雲がそれぞれ陽陰電極ストリップに電荷収集される。このことによって、陽電極ストリップと陰極ストリップに電気誘導される信号電流を等しくすることができて、従来品のMSGC素子のようにバックストリップに誘導される信号電流が減損してS/Nを低下させて位置検出分解能を大幅に低下させるといった問題点を解決する。
【0016】
また、本発明では、陰電極及び陽電極ストリップを絶縁基板の両面に且つそれぞれの電極を直交する方向で配置することができるため、各電極ストリップ間の距離を大きくでき且つそれぞれの陽陰電極ストリップの先端部が絶縁基板の四辺に配置できることから十分なスペースが取れる。この結果、10[cm]四方の素子をパッチワーク手法によって接続、大面積化が可能になり、MSGC素子のように狭い幅の陽電極ストリップを長くプリントする必要がないため、大面積化の課題も解決する。
【0017】
従来品のMPGC素子では、絶縁基板を貫通する多数のスタッドピンの加工及び絶縁基板表面の陰電極ストリップに開けられる円形絶縁帯とスタッドピンとの同心加工及びスタッドピンの成形加工には極めて高度な微細加工技術を必要とし、製作歩留まりと高い製作コストが課題であった。本発明では絶縁基板の両面に設けた陽陰電極ストリップと大きなスルーホールで構成され、絶縁基板を使った直線電極のプリントとスルーホールの組合せのシンプルな構造であり、製作を容易にする効果が得られる。また、スルーホールの断面形状及びアスペクト比(絶縁基板厚さ/スルーホール径の比)によってその性能に影響を与えないことから、汎用のプリント基板加工技術を用いた製作を可能にし、低い製造コストが実現でき、従来のMPGC素子が有する微細加工の困難性、高コスト及び低い歩留まりの課題を解決する。
【0018】
従来品では、絶縁基板を薄くし、また、電極ピッチを小さくすると、1本の電極線に流れた信号電流が電磁誘導及びキャパシタンス結合によって他の電極線に誘導電流が流れる現象、即ちクロストークが問題であった。本発明は電極ストリップ間にガード電極を設け、総てのガード電極を電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは総てのガード電極にその両側の電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加することでクロストークを十分小さくして、クロストークによる雑音の上昇課題を解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1には、絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が円形のスルーホールを設けた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図1の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0020】
図2には、絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が楕円形のスルーホールをそれぞれ2個設けた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図2の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0021】
図3は、図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール列間の陰電極ストリップをそれぞれ2本に分けて配置し、スルーホール列を挟んだ2本の陰電極ストリップからの電気信号を加算して出力する構造にした本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す。図3の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、7は2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップを示す。
【0022】
図4には、図2の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップの間に第3の電極としてガード電極を設け、それぞれのガード電極を電気的直流結合でグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを低減させてS/Nを向上させた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図4の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、8はガード電極を示す。
【0023】
図5には、図3の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図5の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、7は2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップを示す。
【0024】
図6には、図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール形状を円形にして、且つそれぞれのスルーホール位置を陰電極ストリップの面内に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図6の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0025】
図7には、図6の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板上にプリントしてそれぞれの陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように、背面絶縁基板を絶縁基板の背面に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示されている。図7の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、9は陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板を示す。
【0026】
図8には、図7の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップ間に第3の電極としてガード電極を設け、それぞれのガード電極を電気的直流結合でグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを低減させてS/Nを向上させた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図8の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、8はガード電極、9は陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板を示す。
【0027】
図9は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が四角形のスルーホールが示される。図9において、1は絶縁基板、2は円形スルーホールを示す。
【0028】
図10は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールを示す。図10において、1は絶縁基板、2は円形テーパー付きスルーホールを示す。図11は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が表面側開きの台形のスルーホールが示される。図11において、1は絶縁基板、2は円形テーパー付きスルーホールを示す。
【0029】
図12は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が長方形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールが示される。図12において、
1は絶縁基板、2は長方形テーパー付きスルーホールを示す。
【0030】
図13は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が楕円形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールが示される。図13において、
1は絶縁基板、2は楕円形テーパー付きスルーホールを示す。
【0031】
図14は、二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子の大面積化の方法を示した図で、図では4枚のセンサー素子をパッチワーク手法で張り合わせた場合の構成が示されている。図14において、10は1枚目のセンサー素子、11は2枚目のセンサー素子、12は3枚目のセンサー素子、13は4枚目のセンサー素子、14は図15でセンサー素子の背面を拡大した部分、15は図16でセンサー素子の表面を拡大した部分を示す。
【0032】
図15は、図14の14部分のセンサー素子背面における接続部を拡大して示した図であり、陽電極ストリップの端部に設けたボンディングパット間をそれぞれボンディングワイヤで接続することにより、1枚目と2枚目のセンサー素子を張り合わせている。図15において、1aは1枚目センサー素子、1bは2枚目センサー素子、2aは1枚目センサー素子の陽電極ストリップ、2bは2枚目センサー素子の陽電極ストリップ、16aは1枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、16bは2枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、17はボンティングワイヤを示す。
【0033】
図16は、図14の15部分のセンサー素子表面における接続部を拡大して示した図であり、陰電極ストリップの端部間をそれぞれボンディングワイヤで接続することにより、2枚目と4枚目のセンサー素子を張り合わせている。
図16において、1bは2枚目センサー素子、1dは4枚目センサー素子、3bは2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、3dは4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、4bは2枚目センサー素子のスルーホール、4dは4枚目センサー素子のスルーホール、7bは2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、7dは4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、17.ボンティングワイヤを示す。
【0034】
図17は、発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を用いた中性子イメージングセンサーの構成と作動原理を示した図である。図17において、18は発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子、19はドリフトプレート、20は圧力容器、21はヘリウム−3混合ガス、22は陽電極ストリップのための正高電圧源、23は陰電極ストリップのための負高電圧源、24はドリフトプレートのための負高電圧源、25は陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、26は陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、27は外部から圧力容器内に入射する中性子、28はプロトン、29はトリトン、30は電子群、31は電子なだれで発生したイオン対雲を示す。
【実施例】
【0035】
一例として、本発明を中性子イメージングセンサーに応用した場合の構成及び作動原理は図17に示した通りである。中性子イメージングセンサーでは二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子18、ドリフトプレート19、圧力容器20、封入されたヘリウム−3混合ガス21、陽電極のための正高電圧源22、陰電極のための負高電圧源23、ドリフトプレートのための負高電圧源24、陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力25及び陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力26から構成される。
【0036】
外部から圧力容器内に入射する中性子27がヘリウム−3原子21と核反応して、プロトン28とトリトン29が放出されて、混合ガスが電離される。電離により発生した電子群30はドリフトプレートに印加された負電圧24の電界によって、放射線センサー素子18面方向に移動する。センサー素子表面の極近傍で陽電極と陰電極間の強力な電界勾配によって電子が電子なだれを起こすことによりガス増幅されて、電子なだれで発生したイオン対雲31がそれぞれ放射線センサー素子の陽陰電極へ高速で移動して、両電極に逆極性の電流パルスを発生させる。それぞれの陽電極ストリップ及び陰電極ストリップから出力される電流パルス25及び26をモニターすることによって、個々の中性子の検出位置を計測することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、絶縁基板背面に幅50[μm]以下の陽電極ストリップを、また絶縁基板表面に陰電極ストリップを陽電極ストリップと直交する方向に配置し、陽電極ストリップの極近傍の強電界勾配の下でガス中の電子を増倍させて放射線を検出する原理に基づいた二次元放射線センサー素子であって、二次元のそれぞれの電気パルス出力が同等でかつ大きな信号を与え、高い信号対雑音比が得られ、かつ汎用な基板加工技術をもって製作可能な、低コストの多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が円形のスルーホールを設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0039】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0040】
【図2】絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が楕円形のスルーホールをそれぞれ2個設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0041】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0042】
【図3】図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール列間の陰電極ストリップをそれぞれ2本に分けて配置した構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0043】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、7.2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップ。
【0044】
【図4】図2の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面にガード電極を設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0045】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、8.ガード電極。
【0046】
【図5】図3の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0047】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、7.2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップ。
【0048】
【図6】図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール形状を円形にした構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0049】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0050】
【図7】図6の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板上にプリントした構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示した図である。
【0051】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、9.陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板。
【0052】
【図8】図7の放射線センサー素子にガード電極が設けられた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0053】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、8.ガード電極、9.陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板。
【0054】
【図9】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0055】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形スルーホール。
【0056】
【図10】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0057】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形テーパー付きスルーホール。
【0058】
【図11】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0059】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形テーパー付きスルーホール。
【0060】
【図12】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0061】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.長方形テーパー付きスルーホール。
【0062】
【図13】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0063】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.楕円形テーパー付きスルーホール。
【0064】
【図14】本発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子の大面積化の方法を示した図である。
【0065】
(符号の説明)
10.1枚目のセンサー素子、11.2枚目のセンサー素子、12.3枚目のセンサー素子、13.4枚目のセンサー素子、14.図15でセンサー素子の背面を拡大した部分、15.図16でセンサー素子の表面を拡大した部分。
【0066】
【図15】図14の14部分のセンサー素子背面における接続部を拡大して示した図である。
【0067】
(符号の説明)
1a.1枚目センサー素子、1b.2枚目センサー素子、2a.1枚目センサー素子の陽電極ストリップ、2b.2枚目センサー素子の陽電極ストリップ、16a.1枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、16b.2枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、17.ボンティングワイヤ。
【0068】
【図16】図14の15部分のセンサー素子表面における接続部を拡大して示した図である。
【0069】
(符号の説明)
1b.2枚目センサー素子、1d.4枚目センサー素子、3b.2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、3d.4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、4b.2枚目センサー素子のスルーホール、4d.4枚目センサー素子のスルーホール、7b.2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、7d.4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、17.ボンティングワイヤ。
【0070】
【図17】本発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を用いた中性子イメージングセンサーの構成と作動原理を示した図である。
【0071】
(符号の説明)
18.発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子、19.ドリフトプレート、20.圧力容器、21.ヘリウム−3混合ガス、22.陽電極ストリップのための正高電圧源、23.陰電極ストリップのための負高電圧源、24.ドリフトプレートのための負高電圧源、25.陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、26.陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、27.外部から圧力容器内に入射する中性子、28.プロトン、29.トリトン、30.電子群、31.電子なだれで発生したイオン対雲。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エックス線または中性子散乱を用いた物質の構造解析実験において、高速応答性能、広い計測レンジ及び高位置検出分解能が要求されるエックス線及び中性子インメージング計測に用いられる一次元あるいは二次元放射線センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
電離ガスを用いたエックス線または中性子を計測するためのイメージングセンサーでは、それらから得られる一次電離電荷が3×10-15クーロン[C]以下と極めて微少であるため、センサー内で高電圧電場により電子増倍した後、電気信号として取出している。上記の原理を用いた放射線センサーとしては、次のものがある。
【0003】
(1)直径20[μm]程度の極めて細い金属線を数ミリメートル間隔で縦横に張り、それぞれの縦線出力をX軸信号として、横線出力をY軸信号とした構造のマルチワイヤ比例計数管(MWPC)型放射線センサー。
【0004】
(2)絶縁基板表面上に幅10[μm]程度の陽電極ストリップを、そして両脇に50[μm]程度の絶縁ギャップを介して陽電極ストリップを挟む形で幅100[μm]程度の陰電極ストリップを配置した電極対を多数並べ、背面には陽電極ストリップと直交する方向に表面の陽電極と同じピッチでバックストリップを配置して、それぞれの陽電極ストリップ出力をX軸信号として、それぞれのバックストリップの出力をY軸信号とした構造のマイクロストリップガスカウンタ(MSGC)型放射線センサー。
【0005】
(3)縁基板背面に多数本の陽電極ストリップを数100[μm]間隔で配置し、それぞれの陽電極ストリップの長さ方向数100[μm]間隔でストリップ真上の絶縁基板にそれを貫通する直径50[μm]以下の円柱状の金属製スタッドピンを陽電極ストリップと電気的に接合する形で成形し、また表面のスタッドピンの真上に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップを配置して、その陰電極ストリップとスタッドピンが重なる部分にスタッドピンと同心で幅100[μm]程度のドーナツ状絶縁ギャップを設け、それぞれの陽電極出力をX軸信号、それぞれの陰電極出力をY軸信号とした構造のマイクロピクセルガスカウンター(MPGC)型放射線センサー。
【0006】
又、本発明の背景技術には、更に次のものものがある。
(1) MWPC原理に基づいた二次元位置検出型検出器が中性子小角散乱
実験装置のために製作された。その検出器の有感面積は640x640mm2である。中性子検出効率と高位置分解能の性能を得るため、そして視差を最小にするため、混合ガスは190kPa 3He + 100kPa CF4にし、そして有感体積を30mm厚さにした。検出器の最大中性子計数率の設計は105イベント/秒である。計算上の中性子検出効率は2Åの中性子で60%であり、そしてアノードグリッドにおける測定された中性子エネルギー分解能は代表的で20%(半値幅)であった。有感面で検出された中性子の位置は、ワイヤ対ワイヤ法(高い分解能の5x5mm2はワイヤ座標によって定義された)を使って決定された。16チャンネルの電荷型前置増幅器/増幅器/コンパレーターモジュールは、チャンネル感度が0.1V/fC、ノイズラインの幅が0.4fCそしてチャンネル間クロストークが5%以下の性能を持ったものが開発された(非特許文献1)。
【0007】
(2) 我々はマイクロチップ モジュール(MCM)技術を用いて、検出
面積5cm x 5cmの二次元マイクロストリップ ガス チェンバ(MSGC)を開発した。それは17mmの薄い素子基板、200 mmのピッチの254アノードと255バックストリップを有している。MSGCは、500ピン以上を持った大きなピングリッドアレイ(PGA)パッケージにマウントされている。それは読出し電子回路と組み合わされたイメージングMSGCからの大量の信号を容易に接続することを可能にする。本誌において、我々は強烈なX線線源の近くで作動するX線イメージング検出器としてのMSGCの能力について報告する。高輝度X線の下での安定な作動を得るために、約20mm素子基板と約1015W/squareの表面抵抗が解決策であることがわかった。表面抵抗の制御はポリイミド素子基板の表面に有機チタンをコーティングすることで行った。この改善により、MSGCが107Hz/mm2の高計数率の下で約103秒間安定に作動した。また、MSGCはX線発生器からの中程度輝度のX線の下で数ヶ月間作動した。この測定において、ヒットした電極の位置を記録するだけのシンプルな読取り法を用い、約60mmRMS位置分解能を有した高品質デジタルX線イメージングを達成した(非特許文献2)。
【0008】
(3) X線、ガンマ線及び荷電粒子のイメージングのために、斬新なガスを用いた検出器Micro Pixel Chamber(mu-PIC)が開発された。そのmu-PICは、大面積検出器が容易に生産できる両面プリント回路基板を基本にして製作される。0.4mmピッチ、3cmx3cm面積の mu-PICを用いた作動テストは成功裡に行われた。ガスゲインと安定性はこのテストで測定された。103のガスゲインにおける5日間の連続作動テストで、アノードとカソード間放電はおろかゲインの減少さえなかった。また、107cps/mm2の輝度のX線照射までゲインの低下は観測されなかった(非特許文献3)。
【非特許文献1】著者:Knott,-R.B.; Watt,-G.; Boldeman,-J.W.; Smith,-G.C.; et al.題名:A large 2D PSD for thermal neutron detector.発行所(書名):Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-SectionA,-Accelerators,Spectrometers.発行日:(21 Jun 1997). 該当頁:v.392(1-3). P.62-67
【非特許文献2】著者:Toru Tanimori; Atsuhiko Ochi; Seiji Minami, Tomofumi Naga.題名:Development of an imaging microstrip gas chamber with a 5cm x tcm area based on multi-chip module technology. 発行所(書名):Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-Section-A 381 (1996).受理日:(6 May 1996). 該当頁: P.280-288
【非特許文献3】著者:Ochi Atsuhiko; Nagayoshi Tsutomu; Koishi Satoshi, Tanimori,-Toru; et al.題名:Development of micro pixel chamber.Nuclear-Instruments-and-Methods-in-Physics-Research.-Section-A,-Accelerators,-Spectrometers,-Detectors-and-Associated-Equipment (1 Feb 2002) v. 478(1-2) 発行日:(1 Feb 2002). 該当頁: p. 196-199
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エックス線または中性子散乱を用いた物質の構造解析実験に用いられるエックス線及び中性子インメージングセンサには、数100[μm]の極めて高い位置検出分解能と6桁以上のダイナミックレンジ、高い信号対雑音比(S/N)、その上、広い検出面積が求められる。これらを実現するためには、先ず、電極ピッチを1[mm]以下の狭い間隔で配置し、且つ電極間隔が作動中に位置的に変動しないことが要求される。また、高い S/Nを得るには、エックス線及び中性子から得られる一次電離電荷が極少であることから、大きなガス増幅率を達成することはもとより、センサー内で発生した電気信号を損失無く信号電極から取出せる構造のセンサーが必要である。
【0010】
従来のMWPC型放射線センサーでは直径20[μm]程度の極めて細い金属線を1[mm]以下の等間隔で広い面積に張ることは技術的に困難であり、この結果、高速電荷収集及び位置検出分解能の向上には限界があった。また、空間に極めて細い金属線を狭い間隔で長く張った場合に検出器の振動により金属線が揺らいで出力信号が不安定になる、金属線が接触するなどの問題があった。
【0011】
MSGC型放射線センサーでは、絶縁基板表面上に50[μm]程度の狭い絶縁間隔で電極が配置されている結果、絶縁基板表面近傍のイオン群の移動に伴う絶縁基板背面のバックストリップへの電気誘導が表面の電極列の遮蔽によって大きく減損し、バックストリップ信号が極めて小さくなり、S/Nが悪く、高い解像度のイメージング計測が困難であった。また、陽電極ストリップはガス増幅を大きくするために、そのストリップ幅を10[μm]前後の細い金属薄膜を用いなければならず、現在の微細加工技術をもってしても長さ10[cm]以上のストリップを加工することが難しく、大面積の素子の製作ができないなどの課題があった。
【0012】
MPGC型放射線センサーでは、絶縁基板表面にはそれぞれの貫通スタッドピンと重なる部分にスタッドピントと同心で200[μm]程度の円形の穴を開けた帯状の陰電極ストリップを設ける必要がある。貫通スタッドピンと円形絶縁帯の中心がずれると、電界強度分布に偏りが生じて放電の原因になるため、総ての貫通スタッドピンと円形絶縁帯を高い精度で同心加工することが極めて重要である。例えば50x50[mm]の小さな有効検出面積の素子を製作する場合でも、スタッドピンのピッチが400[μm]のメッシュでは絶縁基板の全面に基板を貫通した直径50[μm]以下の円柱状のスタッドピンを15,000本以上形成し、総てのスタッドピンと円形絶縁帯との同心加工誤差を数マイクロメートル以下にする必要があり、製作するには極めて高度な加工技術を要し、また、貫通スタッドピンの形成には複雑な多数の加工工程を必要とする結果、MPGC型放射線センサーの製作コストが高くなるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置、あるいは陰電極ストリップと陽電極ストリップを逆転配置し、絶縁基板に大きなスルーホールを多数設けることによって、放射線により電離ガス中に発生した電子及びイオンが両電極間を自由に移動できる素子基板構造を採用する。この構造により、陽陰電極ストリップを非接触で直交する形に配置することができ、陽陰電極部があたかもガス中に浮いて配置されているような効果を得ることができる。この結果、電離ガス中の電子群とイオン群がそれぞれ陽陰電極ストリップに収集することが可能になり、イオンが絶縁基板に溜まることなく、陽陰電極ストリップには同じ波形で極性が異なった大きな電気信号パルスを発生させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、絶縁基板の表面上と背面にプリントした電極ストリップと絶縁基板に開けた直径50から150[μm]程度のスルーホールのシンプルな組合せで構成されるため、電極ピッチを200[μm]以下にすることも十分可能であり、電極間隔が振動等により変化することもなく、MWPC素子が有する課題を解決できる。
【0015】
本発明は、絶縁基板表面上に陰電極ストリップ、絶縁基板背面に陽電極ストリップを配置、あるいは陰電極ストリップと陽電極ストリップを逆転配置し、絶縁基板に多数の大きなスルーホールを設けることによって、電離ガス中の電子及びイオンが両電極間を自由に移動可能になり、この結果、ガス増幅が生じる陽陰電極部がガス中に浮いて配置されているような効果をもたらし、入射した電子群は陰電極ストリップと極細の陽電極ストリップ間に印加された高電圧により形成された陽電極ストリップ近傍の非常に高い電界勾配によってガス増幅されて、発生した電子とイオン雲がそれぞれ陽陰電極ストリップに電荷収集される。このことによって、陽電極ストリップと陰極ストリップに電気誘導される信号電流を等しくすることができて、従来品のMSGC素子のようにバックストリップに誘導される信号電流が減損してS/Nを低下させて位置検出分解能を大幅に低下させるといった問題点を解決する。
【0016】
また、本発明では、陰電極及び陽電極ストリップを絶縁基板の両面に且つそれぞれの電極を直交する方向で配置することができるため、各電極ストリップ間の距離を大きくでき且つそれぞれの陽陰電極ストリップの先端部が絶縁基板の四辺に配置できることから十分なスペースが取れる。この結果、10[cm]四方の素子をパッチワーク手法によって接続、大面積化が可能になり、MSGC素子のように狭い幅の陽電極ストリップを長くプリントする必要がないため、大面積化の課題も解決する。
【0017】
従来品のMPGC素子では、絶縁基板を貫通する多数のスタッドピンの加工及び絶縁基板表面の陰電極ストリップに開けられる円形絶縁帯とスタッドピンとの同心加工及びスタッドピンの成形加工には極めて高度な微細加工技術を必要とし、製作歩留まりと高い製作コストが課題であった。本発明では絶縁基板の両面に設けた陽陰電極ストリップと大きなスルーホールで構成され、絶縁基板を使った直線電極のプリントとスルーホールの組合せのシンプルな構造であり、製作を容易にする効果が得られる。また、スルーホールの断面形状及びアスペクト比(絶縁基板厚さ/スルーホール径の比)によってその性能に影響を与えないことから、汎用のプリント基板加工技術を用いた製作を可能にし、低い製造コストが実現でき、従来のMPGC素子が有する微細加工の困難性、高コスト及び低い歩留まりの課題を解決する。
【0018】
従来品では、絶縁基板を薄くし、また、電極ピッチを小さくすると、1本の電極線に流れた信号電流が電磁誘導及びキャパシタンス結合によって他の電極線に誘導電流が流れる現象、即ちクロストークが問題であった。本発明は電極ストリップ間にガード電極を設け、総てのガード電極を電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは総てのガード電極にその両側の電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加することでクロストークを十分小さくして、クロストークによる雑音の上昇課題を解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1には、絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が円形のスルーホールを設けた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図1の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0020】
図2には、絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が楕円形のスルーホールをそれぞれ2個設けた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図2の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0021】
図3は、図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール列間の陰電極ストリップをそれぞれ2本に分けて配置し、スルーホール列を挟んだ2本の陰電極ストリップからの電気信号を加算して出力する構造にした本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す。図3の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、7は2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップを示す。
【0022】
図4には、図2の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップの間に第3の電極としてガード電極を設け、それぞれのガード電極を電気的直流結合でグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを低減させてS/Nを向上させた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図4の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、8はガード電極を示す。
【0023】
図5には、図3の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図5の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は楕円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、7は2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップを示す。
【0024】
図6には、図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール形状を円形にして、且つそれぞれのスルーホール位置を陰電極ストリップの面内に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図6の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力を示す。
【0025】
図7には、図6の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板上にプリントしてそれぞれの陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように、背面絶縁基板を絶縁基板の背面に配置した構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示されている。図7の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、9は陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板を示す。
【0026】
図8には、図7の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップ間に第3の電極としてガード電極を設け、それぞれのガード電極を電気的直流結合でグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを低減させてS/Nを向上させた構造の本発明における二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子が示される。図8の素子において、1は絶縁基板、2は陽電極ストリップ、3は陰電極ストリップ、4は陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5は陽電極ストリップ信号出力、6は陰電極ストリップ信号出力、8はガード電極、9は陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板を示す。
【0027】
図9は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が四角形のスルーホールが示される。図9において、1は絶縁基板、2は円形スルーホールを示す。
【0028】
図10は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールを示す。図10において、1は絶縁基板、2は円形テーパー付きスルーホールを示す。図11は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が円形、軸方向断面が表面側開きの台形のスルーホールが示される。図11において、1は絶縁基板、2は円形テーパー付きスルーホールを示す。
【0029】
図12は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が長方形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールが示される。図12において、
1は絶縁基板、2は長方形テーパー付きスルーホールを示す。
【0030】
図13は、スルーホールの断面形状を示した図で、径方向断面が楕円形、軸方向断面が背面側開きの台形のスルーホールが示される。図13において、
1は絶縁基板、2は楕円形テーパー付きスルーホールを示す。
【0031】
図14は、二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子の大面積化の方法を示した図で、図では4枚のセンサー素子をパッチワーク手法で張り合わせた場合の構成が示されている。図14において、10は1枚目のセンサー素子、11は2枚目のセンサー素子、12は3枚目のセンサー素子、13は4枚目のセンサー素子、14は図15でセンサー素子の背面を拡大した部分、15は図16でセンサー素子の表面を拡大した部分を示す。
【0032】
図15は、図14の14部分のセンサー素子背面における接続部を拡大して示した図であり、陽電極ストリップの端部に設けたボンディングパット間をそれぞれボンディングワイヤで接続することにより、1枚目と2枚目のセンサー素子を張り合わせている。図15において、1aは1枚目センサー素子、1bは2枚目センサー素子、2aは1枚目センサー素子の陽電極ストリップ、2bは2枚目センサー素子の陽電極ストリップ、16aは1枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、16bは2枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、17はボンティングワイヤを示す。
【0033】
図16は、図14の15部分のセンサー素子表面における接続部を拡大して示した図であり、陰電極ストリップの端部間をそれぞれボンディングワイヤで接続することにより、2枚目と4枚目のセンサー素子を張り合わせている。
図16において、1bは2枚目センサー素子、1dは4枚目センサー素子、3bは2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、3dは4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、4bは2枚目センサー素子のスルーホール、4dは4枚目センサー素子のスルーホール、7bは2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、7dは4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、17.ボンティングワイヤを示す。
【0034】
図17は、発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を用いた中性子イメージングセンサーの構成と作動原理を示した図である。図17において、18は発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子、19はドリフトプレート、20は圧力容器、21はヘリウム−3混合ガス、22は陽電極ストリップのための正高電圧源、23は陰電極ストリップのための負高電圧源、24はドリフトプレートのための負高電圧源、25は陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、26は陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、27は外部から圧力容器内に入射する中性子、28はプロトン、29はトリトン、30は電子群、31は電子なだれで発生したイオン対雲を示す。
【実施例】
【0035】
一例として、本発明を中性子イメージングセンサーに応用した場合の構成及び作動原理は図17に示した通りである。中性子イメージングセンサーでは二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子18、ドリフトプレート19、圧力容器20、封入されたヘリウム−3混合ガス21、陽電極のための正高電圧源22、陰電極のための負高電圧源23、ドリフトプレートのための負高電圧源24、陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力25及び陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力26から構成される。
【0036】
外部から圧力容器内に入射する中性子27がヘリウム−3原子21と核反応して、プロトン28とトリトン29が放出されて、混合ガスが電離される。電離により発生した電子群30はドリフトプレートに印加された負電圧24の電界によって、放射線センサー素子18面方向に移動する。センサー素子表面の極近傍で陽電極と陰電極間の強力な電界勾配によって電子が電子なだれを起こすことによりガス増幅されて、電子なだれで発生したイオン対雲31がそれぞれ放射線センサー素子の陽陰電極へ高速で移動して、両電極に逆極性の電流パルスを発生させる。それぞれの陽電極ストリップ及び陰電極ストリップから出力される電流パルス25及び26をモニターすることによって、個々の中性子の検出位置を計測することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、絶縁基板背面に幅50[μm]以下の陽電極ストリップを、また絶縁基板表面に陰電極ストリップを陽電極ストリップと直交する方向に配置し、陽電極ストリップの極近傍の強電界勾配の下でガス中の電子を増倍させて放射線を検出する原理に基づいた二次元放射線センサー素子であって、二次元のそれぞれの電気パルス出力が同等でかつ大きな信号を与え、高い信号対雑音比が得られ、かつ汎用な基板加工技術をもって製作可能な、低コストの多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が円形のスルーホールを設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0039】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0040】
【図2】絶縁基板の背面に陽電極ストリップ、そして絶縁基板表面に陽電極ストリップと直交する方向に帯状の陰電極ストリップをそれぞれ配置し、陰電極ストリップと陽電極ストリップが格子状に配置された絶縁基板の升目部分に径方向断面が楕円形のスルーホールをそれぞれ2個設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0041】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0042】
【図3】図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール列間の陰電極ストリップをそれぞれ2本に分けて配置した構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0043】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、7.2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップ。
【0044】
【図4】図2の放射線センサー素子にあって、絶縁基板背面にガード電極を設けた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0045】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、8.ガード電極。
【0046】
【図5】図3の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0047】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.楕円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、7.2本に分けて配置した内のもう1本の陰電極ストリップ。
【0048】
【図6】図2の放射線センサー素子にあって、スルーホール形状を円形にした構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0049】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力。
【0050】
【図7】図6の放射線センサー素子にあって、陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板上にプリントした構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示した図である。
【0051】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、9.陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板。
【0052】
【図8】図7の放射線センサー素子にガード電極が設けられた構造の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を示す図である。
【0053】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.陽電極ストリップ、3.陰電極ストリップ、4.陰電極ストリップの面内に配置した円形スルーホール、5.陽電極ストリップ信号出力、6.陰電極ストリップ信号出力、8.ガード電極、9.陽電極ストリップをプリントした背面絶縁基板。
【0054】
【図9】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0055】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形スルーホール。
【0056】
【図10】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0057】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形テーパー付きスルーホール。
【0058】
【図11】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0059】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.円形テーパー付きスルーホール。
【0060】
【図12】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0061】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.長方形テーパー付きスルーホール。
【0062】
【図13】スルーホールの断面形状を示した図である。
【0063】
(符号の説明)
1.絶縁基板、2.楕円形テーパー付きスルーホール。
【0064】
【図14】本発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子の大面積化の方法を示した図である。
【0065】
(符号の説明)
10.1枚目のセンサー素子、11.2枚目のセンサー素子、12.3枚目のセンサー素子、13.4枚目のセンサー素子、14.図15でセンサー素子の背面を拡大した部分、15.図16でセンサー素子の表面を拡大した部分。
【0066】
【図15】図14の14部分のセンサー素子背面における接続部を拡大して示した図である。
【0067】
(符号の説明)
1a.1枚目センサー素子、1b.2枚目センサー素子、2a.1枚目センサー素子の陽電極ストリップ、2b.2枚目センサー素子の陽電極ストリップ、16a.1枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、16b.2枚目センサー素子の陽電極ストリップ端部のボンディングパット、17.ボンティングワイヤ。
【0068】
【図16】図14の15部分のセンサー素子表面における接続部を拡大して示した図である。
【0069】
(符号の説明)
1b.2枚目センサー素子、1d.4枚目センサー素子、3b.2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、3d.4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、4b.2枚目センサー素子のスルーホール、4d.4枚目センサー素子のスルーホール、7b.2枚目センサー素子の陰電極ストリップ、7d.4枚目センサー素子の陰電極ストリップ、17.ボンティングワイヤ。
【0070】
【図17】本発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を用いた中性子イメージングセンサーの構成と作動原理を示した図である。
【0071】
(符号の説明)
18.発明の二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子、19.ドリフトプレート、20.圧力容器、21.ヘリウム−3混合ガス、22.陽電極ストリップのための正高電圧源、23.陰電極ストリップのための負高電圧源、24.ドリフトプレートのための負高電圧源、25.陽電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、26.陰電極ストリップからの多チャンネル高速信号パルス出力、27.外部から圧力容器内に入射する中性子、28.プロトン、29.トリトン、30.電子群、31.電子なだれで発生したイオン対雲。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板背面に少なくとも1本以上の幅50[μm]以下の陽電極ストリップを、また絶縁基板表面に少なくとも1本以上の陰電極ストリップを陽電極ストリップと直交する方向に配置し、陽電極ストリップの極近傍の強電界勾配の下でガス中の電子を増倍させ、それぞれの陽電極ストリップまたは陰電極ストリップから、あるいはその両方から放射線検出電気信号を出力させて放射線を検出する原理に基づいた一次元または二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子において、電子及びイオンを自由に通過させる目的で陽電極ストリップ及び陰電極ストリップがプリントされていない絶縁基板面に少なくとも1個以上の径方向断面が円形、楕円形及び四角形等をしたスルーホール(貫通孔)を設けた構造を特徴とした多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項2】
請求項1の放射線センサー素子であって、スルーホール列とスルーホール列の間に配置される陰電極ストリップを2本に分けてプリントし、スルーホール列を挟む陰電極ストリップ2本からの放射線検出電気信号を加算して1チャンネルの信号として出力させた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項3】
請求項1の放射線センサー素子であって、絶縁基板背面の陽電極ストリップと陽電極ストリップとの間に第3の電極ラインを配置して、これらを電気的直流結合によりグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項4】
請求項1の放射線センサー素子であって、スルーホール列とスルーホール列の間に配置されるストリップを3本に分けてプリントし、その中央のストリップを電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは中央ストリップにその両側の陰電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加し、中央ストリップを陰電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の放射線センサー素子であって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、また陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項6】
請求項目1の放射線センサー素子であって、絶縁基板表面に設けた陰電極ストリップの面内にスルーホールを配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項7】
請求項6の放射線センサー素子であって、陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように絶縁基板背面に配置プリントするか、あるいは陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板の上にプリントして、それぞれの陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように背面絶縁基板を絶縁基板の裏面に配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項8】
請求項7の放射線センサー素子であって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップとの間に第3の電極ラインを配置して、これらを電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは第3電極ラインにその両側の陽電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加し、第3電極ラインを陽電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の放射線センサー素子であって、絶縁基板に設けられるスルーホールが円形、四角形及び楕円形等の径方向断面形状とストレート形、背面開口テーパー形及び表面開口テーパー形等の軸方向断面形状のいずれかの組合せた形状の多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を平面上に少なくとも2枚以上並べて、各々の放射線センサー素子の陽電極ストリップ間及び陰電極ストリップ間を電気的に接続し、複数枚の放射線センサー素子をパッチワーク的に張り合わせて1枚の大きな面積の放射線センサー素子として作動するように構成した多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項1】
絶縁基板背面に少なくとも1本以上の幅50[μm]以下の陽電極ストリップを、また絶縁基板表面に少なくとも1本以上の陰電極ストリップを陽電極ストリップと直交する方向に配置し、陽電極ストリップの極近傍の強電界勾配の下でガス中の電子を増倍させ、それぞれの陽電極ストリップまたは陰電極ストリップから、あるいはその両方から放射線検出電気信号を出力させて放射線を検出する原理に基づいた一次元または二次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子において、電子及びイオンを自由に通過させる目的で陽電極ストリップ及び陰電極ストリップがプリントされていない絶縁基板面に少なくとも1個以上の径方向断面が円形、楕円形及び四角形等をしたスルーホール(貫通孔)を設けた構造を特徴とした多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項2】
請求項1の放射線センサー素子であって、スルーホール列とスルーホール列の間に配置される陰電極ストリップを2本に分けてプリントし、スルーホール列を挟む陰電極ストリップ2本からの放射線検出電気信号を加算して1チャンネルの信号として出力させた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項3】
請求項1の放射線センサー素子であって、絶縁基板背面の陽電極ストリップと陽電極ストリップとの間に第3の電極ラインを配置して、これらを電気的直流結合によりグラウンドに接続し、陽電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項4】
請求項1の放射線センサー素子であって、スルーホール列とスルーホール列の間に配置されるストリップを3本に分けてプリントし、その中央のストリップを電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは中央ストリップにその両側の陰電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加し、中央ストリップを陰電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の放射線センサー素子であって、陽電極ストリップを絶縁基板の表面に、また陰電極ストリップを絶縁基板の背面に配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項6】
請求項目1の放射線センサー素子であって、絶縁基板表面に設けた陰電極ストリップの面内にスルーホールを配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項7】
請求項6の放射線センサー素子であって、陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように絶縁基板背面に配置プリントするか、あるいは陽電極ストリップを新たな背面絶縁基板の上にプリントして、それぞれの陽電極ストリップがスルーホールの開口面を横切るように背面絶縁基板を絶縁基板の裏面に配置した構造を特徴とする多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項8】
請求項7の放射線センサー素子であって、絶縁基板背面の陽電極と陽電極ストリップとの間に第3の電極ラインを配置して、これらを電気的直流結合によりグラウンドに接続するか、あるいは第3電極ラインにその両側の陽電極ストリップに印加されている電圧と同等の直流電圧を直接印加し、第3電極ラインを陽電極ストリップ間のクロストークを減じるためのガード電極として用いた多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の放射線センサー素子であって、絶縁基板に設けられるスルーホールが円形、四角形及び楕円形等の径方向断面形状とストレート形、背面開口テーパー形及び表面開口テーパー形等の軸方向断面形状のいずれかの組合せた形状の多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子を平面上に少なくとも2枚以上並べて、各々の放射線センサー素子の陽電極ストリップ間及び陰電極ストリップ間を電気的に接続し、複数枚の放射線センサー素子をパッチワーク的に張り合わせて1枚の大きな面積の放射線センサー素子として作動するように構成した多次元位置検出マイクロストリップガスカウンタ型放射線センサー素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2005−55306(P2005−55306A)
【公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−286612(P2003−286612)
【出願日】平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願人】(000004097)日本原子力研究所 (55)
【Fターム(参考)】
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