説明

スロットマシンと電源装置

【課題】 不正な設定変更操作を確実に阻止するとともに、正規の設定変更操作時の作業効率を向上する。
【解決手段】 正面方向(A)に開口した筐体1bと、筐体1bの開口を開閉可能に覆う前扉1aと、筐体1b内部に設けられ、設定確率を変更する場合に操作される操作部が配置された電源装置9と、を備えるスロットマシン1であって、操作部を操作不能に覆うカバー10と、カバー10と係合し、正面方向(A)に沿って、進退可能な棒材であって、筐体1b内部から所定の位置まで引出される間は、少なくともカバー10の開放を制限するとともに、所定の位置まで引出されたときには、この制限を解除する引出棒11と、を備え、引出棒11を、前扉1aが閉状態において、所定の位置まで引出し不能とした構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンと、このスロットマシンに備える電源装置に関し、特に、内部抽せんにおける抽せん確率を設定変更可能なスロットマシンと、設定変更に関連する操作部を有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシンやパチンコ機等の遊技機は、ゲームの結果獲得される遊技媒体が有価価値を有するがため、遊技媒体を窃取する不正行為の対象となっている。
このような不正行為は、ゴト行為と称され、例えば、遊技機の扉などの隙間より、ピアノ線やセル等を挿入して、メダル等の遊技媒体を獲得する行為などが知られている。
また、最近では、スロットマシンにおいて、大当たりの抽せん確率の設定変更に関連する操作部を不正に操作する行為が見受けられる。
【0003】
一般的な抽せん確率の設定変更は、設定キースイッチ(シリンダ部)に対応する設定キーを挿入・回転し、オン状態とした後に、電源スイッチをオンすることで、スロットマシンを設定可能状態とすることができるようになっている。
このような電源スイッチや設定キースイッチなどの抽せん確率の設定変更に関する操作部は、通常スロットマシンの各回路基板等に電源を供給する電源装置に備えられている。
電源装置は、スロットマシン筐体内部に配置され、筐体が施錠可能な前扉に覆われることで、操作不能となっており、設定変更の権限を有する遊技場の管理者などが、スロットマシンの前扉を開放することで、はじめて外部に露出され、設定変更の操作を行うことができるようになっている。
【0004】
このような構成からなるスロットマシンの操作部に対して、不正行為者は、スロットマシンの前扉と筐体の隙間、又は、前扉を僅かにこじ開けた隙間などの限られたスペースを利用し、そこからピアノ線やセル、偽造した設定キー等の異物を挿入して、電源スイッチや設定キースイッチを巧みに操作する。
このような不正行為に対する対策として、以下のような技術が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1〜3記載の発明では、電源装置の操作部を操作不能に覆うカバーと、このカバーに当接し、開閉を制限する制限手段が、前扉の裏面側に設けられている。
これにより、前扉が閉じられているときには、制限手段がこのカバーに当接し、カバーの開閉を制限するため、前述のようなスロットマシンの前扉と筐体の隙間から、異物が挿入されても、カバーが開閉できないようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−65493号公報
【特許文献2】実用新案登録第3124730号公報
【特許文献3】特開2008−73327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの発明はいずれも、前扉の裏面側から突出した突出物を設ける構成であるため、権限を有する遊技場の管理者が、前扉を開放して行う正規の設定変更においては、この突出物が操作の邪魔となり、作業効率を低下させるおそれがあった。
【0008】
また、これらの発明では、カバーの開閉を規制する突出物は、カバー表面を押圧する構成からなるため、前扉が僅かに開放されただけでも、カバーの開閉の制限が解除されるため、前扉を僅かにこじ開けて行う不正操作に十分対処できないことが懸念される。
【0009】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、棒材をスロットマシン筐体内部から外部に引出さなければ、カバーが開放できない構成としている。これにより、前扉が十分に開放されていないときは、棒材が前扉裏面に当接し、カバーが開放できないため、操作部が不正に操作されることを阻止することができる。
また、棒材は、スロットマシン筐体内部に収容可能又は、取外すことができるため、遊技場の管理者が正規に行う設定変更操作時の邪魔になることもなく、作業効率を向上できる画期的なスロットマシンと電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のスロットマシンは、正面方向に開口した筐体と、前記筐体の正面方向開口を開閉可能に覆う前扉と、前記筐体内部に設けられ、抽せん確率を設定変更する場合に操作される操作部が配置された所定の装置と、を備えるスロットマシンであって、前記操作部を操作不能に覆うカバーと、このカバーと係合し、正面方向に沿って、進退可能な棒材であって、前記筐体内部から所定の位置まで引出される間は、少なくとも前記カバーの開放を制限するとともに、前記所定の位置まで引出されたときには、この制限を解除する引出棒と、を備え、前記引出棒を、前記前扉が閉状態において、前記所定の位置まで引出し不能とした構成としてある。
【0011】
また、本発明の電源装置は、正面方向に開口した筐体と、前記筐体の正面方向開口を開閉可能に覆う前扉と、を備えるスロットマシンの前記筐体内部に設けられ、抽せん確率を設定変更する場合に操作される操作部が配置された電源装置であって、前記操作部を操作不能に覆うカバーと、このカバーと係合し、正面方向に沿って、進退可能な棒材であって、前記筐体内部から所定の位置まで引出される間は、少なくとも前記カバーの開放を制限するとともに、前記所定の位置まで引出されたときには、この制限を解除する引出棒と、を備え、前記引出棒を、前記前扉が閉状態において、前記所定の位置まで引出し不能とした構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のような構成からなる本発明のスロットマシンと電源装置によれば、不正な設定変更操作を確実に阻止するとともに、正規の設定変更操作時の作業効率を向上できるスロットマシンと電源装置の提供をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るスロットマシン及びこのスロットマシンに備える電源装置の好ましい実施形態について、図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスロットマシンを示す概略正面図であり、図2は、当該スロットマシンの内部構成を示す概略斜視図である。
これらの図に示すように、本実施形態のスロットマシン1は、従来のスロットマシンと同様に、スロットマシン1に備えられた複数のリール41a,41b,41cを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
【0014】
[スロットマシン本体]
具体的には、本実施形態のスロットマシン1は、遊技者が対座する正面方向(A)に開口した筐体1bと、筐体1bの正面方向(A)開口を開閉可能に覆う前扉1aから構成されている。
前扉1aは、図1及び図2に示すように、スロットマシン1の筐体1bにヒンジ等を介して開閉自在に取り付けられる扉体で、この前扉1aに遊技操作に係る各装置等が備えられてスロットマシン1の正面部を構成している。
なお、以下の説明において、左右、上下、手前、奥など方向を示す場合、正面方向(A)に対座する遊技者からみた方向としてある。
【0015】
前扉1aの中央右側には、スロットマシン遊技に使用するメダルを投入するメダル投入口2が配置され、所定数(例えば、3枚)のメダルが投入されることで、ゲーム可能な状態にすることができる。
前扉1aの中央左側には、スタートレバー3が設けられている。
スタートレバー3は、ゲーム可能な状態において、操作されることで、スロットマシン遊技が開始され、リール41a,41b,41cが回転開始するスタート手段である。
前扉1aの中央部には、各リール41に対応して停止ボタン5a,5b,5cが設けられており、遊技者により、各停止ボタン5が押下操作されることで、回転している各リール41を停止させることができる。
【0016】
前扉1aの中央上側には表示窓6が設けられており、停止状態にある各リール41に表された縦方向に連続する3つの図柄が、当該表示窓6を介して視認できるようになっている。
前扉1aの下部には、メダル払出口7aが設けられ、メダルが当該メダル払出口7aから払出されるようになっている。
【0017】
筐体1bの中央には、リール41a,41b,41cと、各リール41を回転させる図示しないステッピングモータ及び回転位置を検出するセンサなどを備えるドラムユニット4が設けられている。
さらに、筐体1bの下部には、メダルを貯留・払出するメダル払出装置7が設けられ、各リール41に表された縦方向に連続する3つの図柄の組合せが所定の組合せで停止表示された場合、所定数のメダルが上記のメダル払出口7aから払出されるようになっている。
また、筐体1bの上部には、上記の各装置を制御することでスロットマシン遊技の進行を管理し、制御手段として機能する主基板とこれを収容する樹脂ケースとからなる主基板ユニット8が設けられている。
そして、筐体1b内部であって、メダル払出装置7の左側には、本発明の電源装置9が設けられている。
【0018】
[電源装置]
以下、本発明の電源装置9について、複数の実施形態を挙げて詳述する。
本実施形態の電源装置9は、上記の各装置に適した電源を生成し、供給するとともに、操作により、大当たりとなる抽せん確率を設定変更可能な操作部を備えている。
電源装置9は、鋼板を加工して筐体状に形成したもので、図示しない電源基板等が内蔵されている。
本実施形態の操作部としては、例えば、後述する第一実施形態を説明する図3に示すように、電源スイッチ9aや設定キースイッチ9bがあり、これらは、電源装置9の正面方向(A)に集中して配置されている。これらの操作部を操作して行う設定確率の変更は、以下の通りである。
【0019】
例えば、まず、設定キースイッチ9bに対応する設定キーを挿入してオン操作し、その後、電源スイッチ9aをオンすると、スロットマシン1が設定変更可能な状態となる。この状態で、図示しない確率切替スイッチやスタートレバー3を押下操作すると、所望する確率に設定される。
【0020】
このような電源スイッチ9aや設定キースイッチ9bは、前扉1aと筐体1bの隙間からピアノ線やセル、偽造した設定キー等の異物を挿入し、又は前扉1aを僅かにこじ開け、不正に操作されることがある。
そこで、本実施形態の電源装置9は、これらの操作部を操作不能に覆う本発明のカバー10と、このカバー10とに係合する本発明の引出棒11とが設けられ、このような不正な操作を阻止できるようになっている。
以下、各実施形態に係る電源装置9について、図を参照して説明する。
【0021】
[第一実施形態]
図3は、第一実施形態に係る電源装置の概略斜視図であり、図4は、図3におけるC−C断面図である。
カバー10は、開閉可能な扉体として構成され、ヒンジ10aを軸として電源装置9に取付けられている。カバー10は、透明な樹脂で成形されている。
カバー10は、図3(a)に示すような閉状態で、電源スイッチ9aと設定キースイッチ9bを操作不能に覆い、図3(c)に示すような開状態で、これらを操作可能に露出させる。
【0022】
また、カバー10には、引出棒11が挿通可能な当接孔100が設けられており、この当接孔100を介して、カバー10と引出棒11は係合している。
本実施形態の当接孔100は、図3(b)に示すようなL字状の切欠部であって、当接溝100aと切欠溝100bとからなる。
【0023】
当接溝100aは、引出棒11を上方から挟むように設けられている。このため、カバー10を開放しようとすると、同図に示すように、引出棒11の右側面11aが当接溝100aの右内側面に当接し、カバー10の開放が制限される。
一方、切欠溝100bは、当接溝100aの下方に位置し、カバー10の右外縁と連通されている。このため、引出棒11を図3(c)に示すように垂下方向(B)に押下げ、この位置で、カバー10を開放すると、カバー10は引出棒11に制限されず、開放することできる。
また、引出棒11のフック112が嵌入するフック穴101が設けられている。
【0024】
引出棒11は、電源装置9の奥行きとほぼ同じ長さを有し、角柱状に形成された鋼材である。
電源装置9の正面側には、引出棒11が挿通可能な挿通孔92が開口され、引出棒11は、この挿通孔92を介して、電源装置9から引出され、又押し込まれて電源装置9に収容される。
【0025】
電源装置9の右側面には、引出棒11と一体に形成された操作端111が突出している。この操作端111は、指で摘んで操作可能に形成されている。
また、操作端111は、電源装置9の右側面に開口されたガイド溝91に沿って、操作することができる。
【0026】
ガイド溝91は、正面ガイド溝91aと垂直ガイド溝91bとからなる。正面ガイド溝91aは、正面方向(A)に沿って開口され、垂直ガイド溝91bは、電源装置9の正面方向側に位置し、正面ガイド溝91aと連通するとともに、この正面ガイド溝91aから垂下方向(B)に沿って開口されている。
【0027】
操作端111を、正面ガイド溝91aに沿って前後に操作すると、引出棒11が、電源装置9から引出され、又は電源装置9に押し込まれる。
一方、操作端111を、正面ガイド溝91aに沿って、正面方向(A)に操作した後、垂直ガイド溝91bに沿って、垂下方向(B)に操作すると、引出棒11が、垂下方向(B)に移動する。
すなわち、引出棒11が垂下方向(B)に移動した状態では、引出棒11はカバー10の切欠溝100bに位置することから、カバー10は引出棒11に制限されず、開放することできる。
【0028】
このように、正面方向(A)と垂下方向(B)の二方向に操作しなければ、カバー10を開放することができないため、前扉1aと筐体1bの隙間や、前扉1aを僅かにこじ開けた隙間などの限られたスペースで行う不正操作をより困難にすることができる。
なお、ガイド溝91から異物が挿入され、内蔵された電源基板等を不正に操作される場合がある。そこで、図3(c)に示すように、引出棒11が収容される空間を独立させるシールド板96を設けてある。これにより、異物の電源基板等までの到達を阻止できる。
【0029】
次に、本実施形態に係る引出棒11の取り付け状態について、図4を参照して説明する。
図4(a)は、引出棒11が、電源装置9に収容された状態であって、カバー10が閉状態を示し、図4(b)は、引出棒11が、前扉1aに当接するまで正面方向(A)に引出された状態を示している。また、図4(c)は、引出棒11が、正面方向(A)に引出され、さらに、垂下方向(B)に移動された状態であって、カバー10が開状態を示している。
【0030】
図4(a)に示すように、引出棒11は、電源装置9に収容された状態において、垂下方向(B)に移動可能な浮動台93、固定台95、上記のシールド板96と電源装置9の筐体に囲まれた角筒状の空間に配置されている。
また、引出棒11は、バネ12を介して、浮動台93に取り付けられ、バネ12によって正面方向(A)と反対側(筐体1bの奥側)に付勢されている。
このため、操作端111を、正面ガイド溝91aに沿って正面方向(A)に操作し、引出棒11を電源装置9から引出そうとしても、引出棒11は筐体1bの奥側に戻されてしまう。その結果、前扉1aと筐体1bの隙間や、前扉1aを僅かにこじ開けた隙間などの限られたスペースで行う引出棒11の引出しは、困難となり、不正操作を抑止できる。
【0031】
そのうえ、操作端111は、引出棒11の筐体1b奥側(後端部側)に形成されている。
これにより、操作端111を摘んで、正面方向(A)に操作するときには、筐体1bの奥側に手を伸ばさざるを得ないことから、限られたスペースで行う引出棒11の引出しをより困難にさせている。
【0032】
さらに、図4(b)に示すように、操作端111を、正面ガイド溝91aに沿って正面方向(A)に操作すると、引出棒11が、電源装置9から引出されるが、前扉1aが閉状態や前扉1aが僅かに開いている状態にあるときには、引出棒11のフック112が前扉1aの裏面に当接する。
同図に示すように、この当接位置では、操作端111は、垂直ガイド溝91bにまで至らないため、引出棒11を垂下方向(B)に移動させることができない。
【0033】
すなわち、前扉1aと筐体1bの隙間からピアノ線やセル、偽造した設定キー等の異物を挿入し、又は前扉1aを僅かにこじ開けて、引出棒11を引出しても、カバー10を開放可能な位置まで、引出棒11を引出すことができないため、不正な設定変更操作を阻止することができる。
言い換えると、垂直ガイド溝91bに至るまで、操作端111を操作し、この垂直ガイド溝91bに沿って垂下方向(B)に操作するまでは、カバー10の閉状態を維持することができる。
また、本実施形態では、電源装置9を、前扉1aが開閉するヒンジ側(筐体1b左側)に配置してある。このように配置したのは、前扉1aのヒンジ側は、前扉1aの開閉動作において、正面方向(A)の移動範囲が狭いことから、前扉1aを十分大きく開放しなければ、引出棒11の前扉1aの裏面への当接を回避できないためである。これにより、限られたスペースで行う不正操作を抑止できる。
【0034】
一方、図4(c)に示すように、前扉1aが開状態においては、操作端111を、さらに正面ガイド溝91aに沿って、正面方向(A)に操作することができる。
そして、操作端111を、垂直ガイド溝91bまで至らしめた後、この垂直ガイド溝91bに沿って垂下方向(B)に操作すると、これに伴い、浮動台93が固定台95の側面に摺接しつつ下方に移動し、引出棒11を垂下方向(B)に移動させることができる。
これにより、カバー10を開放させることができる。
遊技場の管理者による設定変更操作では、このように前扉1aを開状態として行うことから、引出棒11の引出しが何ら妨げられることなく、円滑な作業が担保される。
【0035】
また、設定変更の作業中において、引出棒11が引出された状態では、作業の邪魔になることもある。このようなときには、カバー10を開放させた状態で、上記の逆の操作をすることで、引出棒11を電源装置9に収容させることもできる。これにより、設定変更操作時の作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、浮動台93の下部には、バネ93aの一端側が取り付けられている。バネ93aの他端側は、電源装置9の底部を形成してなる固定台94に固着されている。その結果、図4(c)に示すように、引出棒11が垂下方向(B)に移動されている位置では、縮んだ状態であり、上方の復元力が引出棒11に作用している。また、このときには、バネ12も縮み、引出棒11を筐体1b奥側に付勢させる復元力も作用している。
このため、引出棒11を電源装置9に収容させようとして、操作端111を、垂直ガイド溝91b沿って、上方に操作する際には、垂下方向(B)に操作するよりも、少ない力で操作することができるとともに、バネ12の復元力によって、引出棒11を自動的に収容させることができる。
これにより、設定変更の作業中における引出棒11の収容や、設定作業終了後に引出棒11を収容する際の労力が軽減され、作業効率が向上する。
【0037】
このように、本実施形態の電源装置9は、前扉1aと筐体1bの隙間や、前扉1aを僅かにこじ開けた隙間などの限られたスペースで行う不正な設定変更操作を確実に阻止するとともに、正規の設定変更操作時の作業効率が向上する。
【0038】
[第二実施形態]
次に、異なる実施形態の電源装置9について説明する。
図5は、第二実施形態に係る電源装置9の概略斜視図であり、図6は、図5におけるD−D断面図である。
各図に示す電源装置9は、主にカバー10及び引出棒11の構成が上述した第一実施形態と異なっている。その他の構成部分は、第一実施形態とほぼ同様となっており、同様の構成部分については、図中で第一実施形態と同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施形態のカバー10は、第一実施形態と同様に扉体として構成され、ヒンジ10aを軸として電源装置9に開閉可能に取付けられている。
当接孔100は、図5(b)に示すように、引出棒11が挿通するコ字状の切欠部として形成されている。
このようにカバー10は、当接孔100を介して、引出棒11と係合しているが、本実施形態の当接孔100は、カバー10の右外縁と連通されていることから、引出棒11によって制限されずに、カバー10を開放できる。
【0040】
そこで、本実施形態のカバー10は、図5(c)に示すように、カバー10の裏面側に爪部102を突設してある。
この爪部102は、図6(a)に示すように、カバー10が閉状態にあるときに、電源装置9内部のシールド板96に設けられた爪部963と係止可能に構成されている。
すなわち、カバー10を閉じ、カバー10の裏面側を電源装置9の正面に当接させることで、爪部102と爪部963とが係止した状態となり、カバー10を電源装置9から脱離不能とすることができる。
そして、この係止状態は、図5(b),(c)に示すように、引出棒11を反時計回りに90度回転するとともに、電源装置9から引出すことで、係止状態を解除することができる。なお、この係止状態の解除についての詳細な説明は後述する。
【0041】
本実施形態の引出棒11は、正面方向(A)を軸として回転可能な丸棒材からなり、操作端111を正面方向側に形成してある。
操作端111には、軸方向に沿って、引出棒11の半径方向に延出したつまみ部111aを設けてある。これにより、引出棒11を回転させる際の操作が容易となる。
【0042】
次に、引出棒11の取り付け状態について、図6を参照して説明する。
図6(a)は、引出棒11が、電源装置9に収容された状態であって、カバー10が閉状態を示し、図6(b)は、引出棒11を、反時計回りに90度回転させた状態を示している。また、図6(c)は、引出棒11が正面方向(A)に引出され、操作端111が前扉1aの裏面に当接した状態を示し、図6(d)は、引出棒11が、さらに引出され、爪部102と爪部963との係止状態が解除された状態を示している。
【0043】
図6(a)に示すように、引出棒11は、電源装置9に収容された状態において、シールド板96と電源装置9の筐体に囲まれた角筒状の空間に配置されている。
また、引出棒11は、バネ12を介して、シールド板96の奥側面に取り付けられ、バネ12によって正面方向(A)と反対側(筐体1bの奥側)に付勢されている。
【0044】
引出棒11には、軸方向に沿って、引出棒11の半径方向に延出したキー113と、突起部114が設けてある。
シールド板96には、爪部963と、この爪部963の奥側に爪おこし部962が設けられている。この爪おこし部962は、突起部114の斜面114aが摺接する斜面962aを有している。
さらに、シールド板96には、キー溝961が開口されている。このキー溝961は、引出棒11の外径より僅かに大きな内径を有するとともに、キー113が挿通可能なように水平左側のみを切り欠いてある。
すなわち、図6(a)に示すように、例えば、キー113が上方(90度)に位置する場合において、操作端111を正面方向(A)に操作し、引出棒11を電源装置9から引出そうとしても、キー113の手前側がキー溝961の壁面に当接し、引出棒11が引出し不能となる(引出制限手段)。
【0045】
従って、引出棒11を引出すためには、図6(b)に示すように、まず、操作端111のつまみ部111aを反時計回りに90度回転し、キー113をキー溝961の切り欠きに位置するように位置合わせを行い、その後、操作端111を正面方向(A)に操作することで、キー113をキー溝961に挿通させることができる。このように、正面方向(A)の操作のみならず、つまみ部111aを回転操作し、位置合わせを行わなければ、カバー10を開放することができないため、前扉1aと筐体1bの隙間や、前扉1aを僅かにこじ開けた隙間などの限られたスペースで行う不正操作が困難となる。
【0046】
そのうえ、キー113をキー溝961に挿通させ、さらに、操作端111を正面方向(A)に操作し、引出棒11を電源装置9から引出しても、図6(c)に示すように、前扉1aが閉状態や僅かに開いている状態にあるときには、操作端11が前扉1aの裏面に当接する。
この当接位置では、同図に示すように、爪部102と爪部963との係止状態が解除されないため、カバー10は開放不能な状態となっている。
すなわち、前扉1aと筐体1bの隙間からピアノ線やセル、偽造した設定キー等の異物を挿入し、又は前扉1aを僅かにこじ開けて、引出棒11を引出しても、爪部102と爪部963との係止状態が解除される位置まで、引出棒11を引出すことができないため、カバー10を開放することができない。
【0047】
一方、図6(d)に示すように、前扉1aが開状態においては、さらに、操作端111を正面方向(A)に操作し、引出棒11を電源装置9から十分に引出すことができる。
その結果、突起部114の斜面114aが、爪おこし部962の斜面962aに当接する。この当接位置は、前扉1aが開状態であるときにのみ達することができる。
さらに、引出棒11を引出すと、突起部114の斜面114aに沿って、爪おこし部962が押し上げられる。これにより、同図に示すように、爪部102と爪部963との係止状態が解除され、カバー10を開放することができる(解除手段)。
【0048】
すなわち、突起部114(斜面114a)が爪おこし部962(斜面962a)に当接するまで、引出棒11が引出される間は、爪部102と爪部963との係止状態が維持され、カバー10は、電源装置9に脱離不能に係止されている。
一方、突起部114(斜面114a)が爪おこし部962(斜面962a)に当接し、さらに、引出棒11が引出されると、係止状態が解除され、カバー10を開放することができる。
また、カバー10を開放した後、引出棒11は、バネ12の復元力で、電源装置9に自動的に収容されるため、引出棒11が設定変更作業の邪魔になることはない。
【0049】
[第三実施形態]
次に、異なる実施形態の電源装置9について説明する。
図7は、第三実施形態に係る電源装置9の概略斜視図である。
同図に示す電源装置9は、主にカバー10及び引出棒11の構成が前述の実施形態と異なっている。その他の構成部分は、前述の実施形態とほぼ同様となっており、同様の構成部分については、図中で同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0050】
本実施形態のカバー10は、図7に示すように、上下方向にスライドするスライド体として構成されている。
図7(a)は、カバー10が下方にスライドされた閉状態を示し、図7(b)は、カバー10が上方にスライドされた開状態を示している。
本実施形態の当接孔100は、引出棒11が挿通可能な丸孔として形成されており、この当接孔100を介して、カバー10と引出棒11は係合している。
【0051】
引出棒11は、第二実施形態と同様、丸棒材からなり、操作端111を正面方向側に形成してある。また、操作端111には、つまみ部111aを設けてある。
このつまみ部111aは、引出棒11を電源装置9に押し込んだときに、カバー10の表面に当接するようになっている。
本実施形態の引出棒11は、電源装置9と係合することなく、別体として設けてあり、電源装置9の挿通孔92を介して、電源装置9から引出したり、又は押し込んで収容したりできる。
また、本実施形態のシールド板96は、引出棒11の外径より僅かに大きな内径を有する円筒状に形成され、引出棒11を円滑に出し入れできる。
【0052】
このような構成からなる本実施形態の電源装置9では、図7(a)に示すように、カバー10が閉状態にあり、引出棒11が、電源装置9に収容されているときに、カバー10を上方にスライドさせ、開状態にしようとすると、当接孔100の内壁面が引出棒11の外周に当接し、スライドが制限される。
一方、操作端111を、正面方向(A)に操作し、引出棒11を電源装置9から引出し、図7(b)に示すように、さらに電源装置9から引抜くことで、制限が解除され、カバー10を開放することができる。
なお、引出棒11は、前扉1aが開状態である場合に限り、電源装置9から引抜き可能であり、扉1aが閉状態や僅かに開いている状態にあるときには、操作端111が、前扉1aの裏面に当接し、カバー10の上方へのスライドを制限するようになっている。
【0053】
また、引抜いた引出棒11は、別置きしておけばよいことから、特に、設定変更作業の邪魔になることはない。
このように、本実施形態では、簡易な構成で、不正な設定変更操作を確実に阻止するとともに、正規の設定変更操作時の作業効率を向上できる。
【0054】
以上、本発明のスロットマシン及びこのスロットマシンに備える電源装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るスロットマシン及びこのスロットマシンに備える電源装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明のスロットマシンでは、カバー10と引出棒11を電源装置9に設けたが、メダル払出装置7や、筐体1b側に設けることもできる。
この場合、極端には、カバー10が筐体1bの正面開口全体を覆うとともに、引出棒11をこれに係合させる構成とすることもできる。
【0055】
また、第一実施形態のカバー10は、扉体として構成したが、左方にスライドすることで、開状態となるスライド体とすることもできる。この場合、他の構成は全く同じ構成とすることができ、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0056】
また、各実施形態の引出棒11は、前扉1aの裏面に当接するまで引出し可能な余地を設けたが、前扉1aが閉状態において、当初から前扉1aの裏面に当接するように、引出棒11を正面方向に伸長することもできる。
【0057】
また、各実施形態のスロットマシンは、遊技媒体をメダルとするスロットマシンとしたが、これに限らず、パチンコ玉を遊技媒体とするパチロット,パロットなどの回胴式遊技機も本発明の適用対象とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、設定確率を変更可能な機能を有するスロットマシンに広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るスロットマシンを示す概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスロットマシンの内部構成を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る電源装置の概略斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る電源装置の断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る電源装置の概略斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る電源装置の断面図である。
【図7】本発明の第三実施形態に係る電源装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 スロットマシン
1a 前扉
1b 筐体
2 メダル投入口
3 スタートレバー
4 ドラムユニット
41a,41b,41c リール
5(5a,5b,5c) 停止ボタン
6 表示窓
7 メダル払出装置
7a メダル払出口
8 主基板ユニット
9 電源装置
10 カバー
100 当接孔
11 引出棒
12 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面方向に開口した筐体と、前記筐体の正面方向開口を開閉可能に覆う前扉と、前記筐体内部に設けられ、抽せん確率を設定変更する場合に操作される操作部が配置された所定の装置と、を備えるスロットマシンであって、
前記操作部を操作不能に覆うカバーと、
このカバーと係合し、正面方向に沿って、進退可能な棒材であって、
前記筐体内部から所定の位置まで引出される間は、少なくとも前記カバーの開放を制限するとともに、
前記所定の位置まで引出されたときには、この制限を解除する引出棒と、を備え、
前記引出棒を、前記前扉が閉状態において、前記所定の位置まで引出し不能としたことを特徴としたスロットマシン。
【請求項2】
前記引出棒を、正面方向と反対側に付勢する付勢手段を備えた請求項1記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記引出棒を、正面方向を軸として回転可能に設けるとともに、
所定の回転角以外で、この引出棒の引出が制限される引出制限手段を備える請求項1又は2記載のスロットマシン。
【請求項4】
前記引出棒が、引出しに際して操作される操作端を有し、
前記操作端を、正面方向に対して後端部側に形成した請求項1〜3のいずれか一項に記載のスロットマシン。
【請求項5】
前記所定の装置を、前記引出棒が収容可能に形成するとともに、
収容された前記引出棒は、この装置から引出されるとともに、引出された前記引出棒は、この装置に押し込まれて収容される請求項1〜4のいずれか一項に記載のスロットマシン。
【請求項6】
前記カバーに、前記所定の装置内に挿入されることで、このカバーをこの装置に脱離不能に係止させる爪部を設け、
前記引出棒を前記所定の位置まで引出したときに、前記爪部の係止を解除する解除手段を備える請求項1〜5のいずれか一項に記載のスロットマシン。
【請求項7】
前記カバーを、回動されることで開閉する扉体又は、正面方向と異なる方向にスライドされることで開閉するスライド体として設けるとともに、
前記カバーに開口された前記引出棒が挿通可能な孔であって、前記引出棒がこの孔に挿入されているときに前記カバーを開放すると、この孔内壁側に引出棒外壁が当接し、当該開放を制限する当接孔を設けた請求項1〜6のいずれか一項に記載のスロットマシン。
【請求項8】
前記引出棒を、前記所定の位置まで引出した後、さらに、正面方向と直交する所定の位置に移動操作可能に設け、
前記当接孔を、前記引出棒がこの位置に移動可能な大きさに開口するとともに、前記引出棒をこの位置に移動した状態で前記カバーが開放可能となるよう、この当接孔の一部を切欠いてカバー外縁と連通させた請求項7記載のスロットマシン。
【請求項9】
正面方向に開口した筐体と、前記筐体の正面方向開口を開閉可能に覆う前扉と、を備えるスロットマシンの前記筐体内部に設けられ、抽せん確率を設定変更する場合に操作される操作部が配置された電源装置であって、
前記操作部を操作不能に覆うカバーと、
このカバーと係合し、正面方向に沿って、進退可能な棒材であって、
前記筐体内部から所定の位置まで引出される間は、少なくとも前記カバーの開放を制限するとともに、
前記所定の位置まで引出されたときには、この制限を解除する引出棒と、を備え、
前記引出棒を、前記前扉が閉状態において、前記所定の位置まで引出し不能としたこと特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−63653(P2010−63653A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232914(P2008−232914)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】