説明

セキュリティシステムおよび監視方法

【課題】 浸入者に気づかれにくく、汎用性の高いセキュリティシステムおよび監視方法を提供する。
【解決手段】 圧力センサ部31は、圧力センサ付き絨毯1の内部に複数行複数列に配置された複数の圧力センサで構成される。この圧力センサ部31は、その表面に加えられる圧力を検知して制御部33に出力する。記憶部32は、初期学習モードにおいて、圧力センサ部31から出力された圧力値を初期値として記憶する。制御部33は、検知動作モードにおいて、圧力センサ部31から出力される圧力値が記憶部32に記憶された初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に、異常検知したことを示すデータ信号をモデム部34に出力する。モデム部34は、制御部31から受けたデータ信号を電力搬送波(周波数50〜60Hz)に重畳して電源プラグ2に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セキュリティシステムおよび監視方法に関し、特に、電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いたセキュリティシステムおよび監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設されている電力線を利用してデータ通信を行なうことができる電力線通信(PLC:Power Line Communication)技術は、商用電源の電力線上の電力搬送波(50〜60Hz)に高周波(たとえば、10〜450kHz)のデータ信号を重畳してデータ通信を行なうものである。データ信号に割当てられる周波数帯域が拡張されてデータ通信の高速化が進めば、インターネットに接続することも可能になる。この電力線通信技術を用いる場合、電源コンセントが設置された部屋であればどこからでもデータ通信を行なうことができ、新規配線を敷設する工事が不要で汎用性が高いというメリットがある。
【0003】
近年、一般家庭においても防犯用のセキュリティシステムへの関心が高まりつつある。たとえば、下記の特許文献1には、建造物の状況を遠隔地において容易に監視することができる監視制御装置が開示されている。これによると、建造物の所定の位置に少なくとも1つ設置され、建造物内の状況を検出するセンサと、前記センサの出力信号をデジタルデータに変換するデータ変換手段と、前記デジタルデータを読取り、この読取りデータを蓄積するパソコンと、前記パソコンに蓄積されたデジタルデータをインターネットを介して送信するデータ送信手段と、前記データ送信手段によって送信されたデジタルデータを受信して、該デジタルデータをセキュリティ情報として蓄積する蓄積サーバとが設けられる。
【0004】
しかしながら、建造物内に設置されたパソコンをインターネット接続する必要があり、汎用性が低い。そこで、電力線通信技術を用いた汎用性の高いセキュリティシステムがいくつか提案されている。
【0005】
たとえば、下記の特許文献2には、不意の来訪者があった場合の無人対応を実現し、留守中における無人状態でのセキュリティを確立するセルフセキュリティシステムが開示されている。これによると、セキュリティを必要とする箇所に取付けられたセンサを介して得られる当該センサ固有のIDを、電力線ネットワークを介して受信するセキュリティ監視手段と、あらかじめ登録済みの前記センサ固有のIDと当該センサ設置箇所との対応に基づき状況の把握を行ない、当該把握された状況を携帯電話端末にメール送信するセルフセキュリティサービス提供手段とが設けられる。
【0006】
また、下記の特許文献3には、異常事態が発生した時点でシステムを作動させることができ、また、専用線の設置工事が不要で設置の自由度が高いセキュリティシステムが開示されている。これによると、映像情報や音声情報などの監視情報を電力線を通信媒体として送信装置から受信装置へ配信することによって異常状態の有無を監視するセキュリティシステムにおいて、温度センサ部や音声センサ部などで構成される異常検知部によって、周囲に異常が発生しているか否かを検知する。
【0007】
また、下記の特許文献4には、簡易な構成で防犯機能・証拠取得機能を備え、一般個人住宅や小規模事業所等の使用に適した高機能な防犯装置が開示されている。これによると、家庭用ビデオカメラにより撮影された不法侵入者を検知して警報装置に警報を発生させるとともに、遠隔のセンタ側端末に公衆回線を介して不法浸入を通知する。
【特許文献1】特開2003−23678号公報
【特許文献2】特開2003−331371号公報
【特許文献3】特開2002−373389号公報
【特許文献4】特開2002−183845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来より電力線通信技術を用いた汎用性の高いセキュリティシステムが提案されており、浸入者に気づかれにくく、汎用性の高い防犯用のセキュリティシステムの実現が求められている。
【0009】
それゆえに、この発明の主たる目的は、浸入者に気づかれにくく、汎用性の高いセキュリティシステムおよび監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るセキュリティシステムは、電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いたセキュリティシステムであって、複数行複数列に配置される複数の圧力センサで構成され、その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部と、圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された初期値と圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、圧力センサから出力される圧力値が初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する制御部と、電力線上の電力搬送波にデータ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するモデム部を備えたものである。
【0011】
この発明に係る他のセキュリティシステムは、電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いたセキュリティシステムであって、その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部と、圧力センサ部から出力される圧力値が所定値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する制御部と、電力線上の電力搬送波にデータ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するモデム部とを備えたものである。
【0012】
好ましくは、さらに、圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶する記憶部が設けられる。制御部は、記憶部に記憶された初期値と圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、圧力センサから出力される圧力値が初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する。
【0013】
また好ましくは、圧力センサ部は、複数行複数列に配置される複数の圧力センサで構成される。
【0014】
この発明に係る監視方法は、電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いた監視方法であって、その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶するステップと、記憶された初期値と圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、圧力センサから出力される圧力値が初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を生成するステップと、電力線上の電力搬送波にデータ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、圧力センサ部から出力される圧力値が変動した場合に、所定の相手先に異常検知したことが通知される。不審人物の浸入を検知するための圧力センサ部は絨毯などの一般家電に搭載されるため、浸入者に気づかれにくい。また、電力線通信技術を用いることによって、汎用性の高いセキュリティシステムおよび監視方法が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、この発明の一実施の形態によるセキュリティシステムの概略構成を示すブロック図である。図1において、このセキュリティシステムは、圧力センサ付き絨毯1と、圧力センサ付き絨毯1に接続された電源プラグ2と、ベッド3と、ベッド3の下部に設置された赤外線センサ4と、赤外線センサ4に接続された電源プラグ5と、電力線ネットワークに接続された電力線6と、電力線6に接続されたコンセント7,8と、電力線6に接続されたPLCモデム9とを備える。PLCモデム9は、通信ケーブル10を介して通信網11に接続される。
【0017】
圧力センサ付き絨毯1、電源プラグ2およびコンセント7は、部屋Aに設置される。ベッド3、赤外線センサ4、電源プラグ5およびコンセント8は、部屋Bに設置される。電力線6は、各部屋に電力供給を行なうための配電線である。電力線通信においては、電力線6が通信路として使用される。PLCモデム6は、たとえば集合住宅の電気室や屋外の電柱などに設置される。また、図示しないが、部屋の内部にPLCモデム6を設置してもよい。
【0018】
このセキュリティシステムは、部屋Aに不審人物21が侵入した場合や、部屋Bに不審人物22が浸入した場合に、電力線6、PLCモデム9、通信ケーブル10および通信網11を介してセキュリティ会社や利用者に通知する構成になっている。
【0019】
図2は、図1に示した圧力センサ付き絨毯1の内部の構成を示すブロック図である。図2において、この圧力センサ付き絨毯1は、圧力センサ部31と、記憶部32と、制御部33と、モデム部34とを含む。圧力センサ付き絨毯1は、圧力センサ部31の表面に加えられる圧力の初期値を記憶するための初期学習モードと、圧力センサ部31の表面に加えられる圧力の変動を検知するための検知動作モードとを有する。
【0020】
圧力センサ部31は、圧力センサ付き絨毯1の内部に複数行複数列に配置された複数の圧力センサで構成される。この圧力センサ部31は、その表面に加えられる圧力を検知して制御部33に出力する。
【0021】
記憶部32は、初期学習モードにおいて、圧力センサ部31から出力された圧力値を制御部33を介して受け、初期値として記憶する。これにより、圧力センサ付き絨毯1の上に置かれた家具などによる圧力値が初期値として記憶される。
【0022】
制御部33は、検知動作モードにおいて、記憶部32に記憶された初期値を読出して圧力センサ部31から出力される圧力値と比較する。そして、圧力センサ部31から出力される圧力値が初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に、異常検知したことを示すデータ信号をモデム部34に出力する。このデータ信号は、利用者やセキュリティ会社などの通知先の情報(メールアドレスなど)、圧力センサ部31に固有のID情報などを含む。利用者やセキュリティ会社などの通知先の情報、圧力センサ部31に固有のID情報は、記憶部32に予め格納され、制御部33によって読出される。
【0023】
なお、異常検知したと判断するための圧力のしきい値は任意に設定することができる。これにより、たとえばしきい値よりも体重が軽い室内用ペットが部屋Aに浸入した場合は異常検知したとは判断されず、しきい値よりも体重が重い不審人物21が部屋Aに浸入した場合に異常検知したと判断されるようにすることができる。
【0024】
モデム部34は、制御部31から受けたデータ信号を電力搬送波(周波数50〜60Hz)に重畳して電源プラグ2に出力する。このモデム部34は、異常検知したことを利用者の携帯電話機やセキュリティ会社のパソコンに電子メールを送信して通知する機能を有する。ただし、通知方法は電子メールに限定されず、たとえば警報を鳴らすようにしてもよい。
【0025】
また、利用者は携帯電話機などから圧力センサ部31を遠隔操作することができる。利用者は圧力センサ部31のオン/オフ制御を指令するデータ信号を送信する。モデム部34は、電源プラグ2を介して受けた電力搬送波からデータ信号を分離して制御部33に与える。制御部33は、モデム部34から受けたデータ信号に応答して圧力センサ31をオン/オフ制御する。
【0026】
図3は、電力搬送波に重畳されたデータ信号を示す図である。図3に示すように、周波数50〜60Hzの電力搬送波に高周波(たとえば、10〜450kHz)のデータ信号が重畳される。
【0027】
図4は、図2に示した圧力センサ付き絨毯1の動作を示すフローチャートである。図4を参照して、ステップS1において、制御部33は、利用者からの指令に応じて圧力センサ部31をオンにする。次にステップS2において、制御部33は、圧力センサ部31の表面に加えられる圧力の初期値を記憶部31に格納する初期学習動作を実行する(初期学習モード)。
【0028】
初期学習モードが終了すると検知動作モードに移行し、ステップS3において、制御部33は、記憶部32に記憶された初期値を読出して圧力センサ部31から出力される圧力値と比較する。そして、圧力センサ部31から出力される圧力値が初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合は、異常検知したと判断して、ステップS4に進む。
【0029】
ステップS4において、制御部33は、異常検知したことを示すデータ信号をモデム部34に出力する。モデム部34は、電力線6を介してセキュリティ会社および利用者に異常検知したことを通知する。
【0030】
図1に戻って、PLCモデム9は、電力線6を介して受けた電力搬送波からデータ信号を抽出し、通信ケーブル(光ファイバなど)10を介して通信網11に与える。これにより、不審人物が浸入したことがセキュリティ会社のパソコンや利用者の携帯電話機に通知される。セキュリティ会社との契約時に、圧力センサ部31に固有のID情報および自宅の住所を登録しておくことによって、不審人物が浸入した際に警備員の出動を要請することができる。また、利用者の携帯電話機に通知することによって、不審人物が浸入したことを利用者が外出先で知ることができる。なお、引越しをした場合などでもセキュリティ会社に登録した住所を変更をするだけで、容易に契約変更することができる。
【0031】
部屋Bにおいて、赤外線センサ4はベッド3の下部など、侵入者に気づかれにくい場所に設置される。この赤外線センサ4は、たとえば電灯と一体化されたものであってもよい。赤外線センサ4は、所定の範囲に線状または面状(図では線状)の赤外線ビームを放射する。赤外線センサ4の構成は、図2に示した圧力センサ付き絨毯1の構成と同様である。赤外線ビームを浸入者が横切った場合、赤外線センサ4が不審人物の浸入を感知する。この場合も、圧力センサ付き絨毯1が異常検知した場合と同様に、不審人物が浸入したことがセキュリティ会社および利用者に通知される。
【0032】
以上のように、この一実施の形態では、不審人物の浸入を検知するためのセンサが絨毯や電灯などの一般家電に搭載されるため、浸入者に気づかれにくい。また、電力線通信技術を用いることによって、汎用性の高いセキュリティシステムおよび監視方法が実現できる。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の一実施の形態によるセキュリティシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した圧力センサ付き絨毯の内部の構成を示すブロック図である。
【図3】電力搬送波に重畳されたデータ信号を示す図である。
【図4】図2に示した圧力センサ付き絨毯の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 圧力センサ付き絨毯、2 電源プラグ、3 ベッド、4 赤外線センサ、5 電源プラグ、6 電力線、7,8 コンセント、9 PLCモデム、10 通信ケーブル、11 通信網、21,22 不審人物、31 圧力センサ部、32 記憶部、33 制御部、34 モデム部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いたセキュリティシステムであって、
複数行複数列に配置される複数の圧力センサで構成され、その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部、
前記圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶する記憶部、
前記記憶部に記憶された前記初期値と前記圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、前記圧力センサから出力される圧力値が前記初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する制御部、および
前記電力線上の電力搬送波に前記データ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するモデム部を備える、セキュリティシステム。
【請求項2】
電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いたセキュリティシステムであって、
その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部、
前記圧力センサ部から出力される圧力値が所定値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する制御部、および
前記電力線上の電力搬送波に前記データ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するモデム部を備える、セキュリティシステム。
【請求項3】
さらに、前記圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記初期値と前記圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、前記圧力センサから出力される圧力値が前記初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を出力する、請求項2に記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記圧力センサ部は、複数行複数列に配置される複数の圧力センサで構成される、請求項2または請求項3に記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
電力線を利用してデータ通信を行なう電力線通信技術を用いた監視方法であって、
その表面に加えられる圧力を検知する圧力センサ部から出力される圧力値の初期値を記憶するステップ、
記憶された前記初期値と前記圧力センサ部から出力される圧力値とを比較して、前記圧力センサから出力される圧力値が前記初期値よりも所定のしきい値以上大きくなった場合に異常検知したことを示すデータ信号を生成するステップ、および
前記電力線上の電力搬送波に前記データ信号を重畳して、所定の相手先に異常検知したことを通知するステップを含む、監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−26063(P2007−26063A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207005(P2005−207005)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】