説明

セクタ駆動装置

【課題】 小型のセクタ駆動装置を提供する。
【解決手段】 開口3を備えた基板2と、支軸6、7、8を中心にして前記開口の一部を閉じる閉位置と前記開口から退避した退避位置との間を揺動するセクタ10、20、30を複数備えたセクタ駆動装置1であって、前記複数のセクタのそれぞれが前記閉位置にあるときに、該セクタの背部と前記開口の縁部との間に隙間a、b、cが生じると共に、前記セクタの動作と連動して前記支軸を中心に揺動し、前記隙間を遮蔽する複数の補助セクタ15、25、35を更に備える。本発明によると基板を小さく形成できるので小型のセクタ駆動装置とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に組込まれて使用されるセクタ駆動装置に関する。より詳細には、複数のセクタを備えるセクタ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にカメラ等の撮像装置には、シャッタ装置や絞り装置等のように羽根(セクタ)を駆動する装置が内蔵されている。シャッタ装置はシャッタ羽根を揺動させて基板に形成されている撮影用の開口を開閉する。絞り装置は絞り羽根を揺動させて基板(地板と称する場合もある)に形成されている開口を通過する光を絞って光量を調整する。撮像装置は近年、急速に小型化されている。よって、これに対応して撮像装置に内蔵するセクタ駆動装置についてもより一層の小型化を図ることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1は従来の絞り装置について開示している。この絞り装置は開口の一部を閉じる絞り羽根を開口の周部に複数配置している。また、絞り羽根を揺動させるための駆動リングを備えている。各絞り羽根はピンを2個ずつ備え、一方のピンを基板に嵌合させて支軸とし、他方のピンを駆動リングの長穴(カム溝)に挿入している。この絞り装置は駆動リングで絞り羽根を揺動させて所望の絞り状態を形成する。
【0004】
【特許文献1】特開2003−57715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の絞り装置は幅が広い複数の絞り羽根を用い、それぞれの絞り羽根を異なる支軸(ピン)を中心に揺動させる。そのため基板が一定面積以上に大きくなってしまうので小型化することが困難である。また、各絞り羽根がピンを2個ずつ有しており、それぞれが基板と駆動リングとに係合している。この絞り装置は多数のピンを含むので、ピンを配置する場所の確保及びピン位置を調整することが必要となる。この絞り装置は配置するピン数が多いという点でも小型化が困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は小型のセクタ駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、開口を備えた基板と、支軸を中心にして前記開口の一部を閉じる閉位置と前記開口から退避した退避位置との間を揺動するセクタを複数備えたセクタ駆動装置であって、前記複数のセクタのそれぞれが前記閉位置にあるときに、該セクタの背部と前記開口の縁部との間に隙間が生じると共に、前記複数のセクタの動作と連動して前記支軸を中心に揺動し、前記隙間を遮蔽する複数の補助セクタを更に備えるセクタ駆動装置によって達成できる。
【0008】
本発明のセクタ駆動装置は、開口の縁部との間に隙間が生じる程度の幅のセクタと前記隙間を遮蔽する補助セクタとにより前記開口を閉じる状態を形成する。これにより各セクタを小さく、特に幅を狭い形状にできる。よって、本発明によると基板を小さく形成できるので、小型のセクタ駆動装置とすることができる。
【0009】
また、前記複数のセクタが前記閉位置にあるときに、該複数のセクタによって前記開口よりも小さな開口が形成されてもよい。
【0010】
また、前記複数のセクタ及び前記複数の補助セクタのそれぞれには該セクタ及び該補助セクタを揺動させる駆動ピンとの係合用の長穴が形成されており、同じ支軸に軸支された組となる前記セクタ及び前記補助セクタの前記長穴は同じ前記駆動ピンに係合し、前記セクタの長穴が、前記補助セクタよりも前記退避位置から前記閉位置までの移動量が大きくなるように形成されてもよい。
【0011】
また、前記組となる前記セクタの長穴及び前記補助セクタの長穴が、前記セクタ及び前記補助セクタが前記退避位置で互いに重なるように形成されてもよい。そして、前記基板に外周部の一部を切欠いた狭幅部分が形成されており、組となる前記セクタ及び前記補助セクタが前記狭幅部分を前記退避位置とするように配置してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、複数のセクタを備えているセクタ駆動装置の小型化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る一実施形態を説明する。ここではセクタ駆動装置の一実施例として絞り装置を示す。図1は、実施例に係る絞り装置1が全開状態であるときの要部構成を示した図である。図2は、同装置1が小絞り状態にあるときの要部構成を示した図である。
【0014】
絞り装置1は、開口3を備えた基板2と、この基板2に揺動自在に軸支される6枚の絞り羽根10、15、20、25、30、35とを備えている。この絞り装置1で、後述する小絞り開口を形成する本来の絞り羽根に相当するものは10、20、30の3枚である。残りの羽根15、25、35は補助羽根として機能する。以下では絞り羽根10、20、30をそれぞれ第1セクタ10、第2セクタ20、第3セクタ30と称する。同様に、補助羽根15、25、35をそれぞれ第1補助セクタ15、第2補助セクタ25、第3補助セクタ35と称する。なお、図1、2では、説明のために第1補助セクタ15、第2補助セクタ25、第3補助セクタ35の部分を破線で示している。また、基板2の基本形状は円板状である。この基板2は開口3に対する所定の接線と平行な直線で外周部の一部を切断し、点線で示した部分4が切欠かれた形状となっている。このように基板2に切欠部分4を設けていることについては後述する。
【0015】
基板2の片面側には、第1の支軸6、第2の支軸7、第3の支軸8の3本が立設されている。これらの支軸6、7、8は、例えば開口3の中心回りに略120°の間隔で配置されている。第1の支軸6には、前述した第1セクタ10及び第1補助セクタ15が揺動自在に軸支されている。同様に、第2の支軸7には、前述した第2セクタ20及び第2補助セクタ25が揺動自在に軸支されている。第3の支軸8には、前述した第3セクタ30及び第3補助セクタ35が揺動自在に軸支されている。
【0016】
第1セクタ10には、上記支軸6と係合する丸穴11と、揺動のための長穴12が形成されている。また、第1補助セクタ15には、上記支軸6と係合する丸穴16と、揺動のための長穴17が形成されている。図3を参照して、第1セクタ10と第1補助セクタ15との関係について説明する。図3(A)は図1で示す全開状態での第1セクタ10及び第1補助セクタ15を取り出して示した図であり、図3(B)は図2で示す小絞り状態での第1セクタ10及び第1補助セクタ15を取り出して示した図である。
【0017】
第1セクタ10の長穴12及び第1補助セクタ15の長穴17は、同一の駆動ピン41と係合している。駆動ピン41は図4で示す駆動リング40に固定されている。駆動リング40はモータ50のロータ51と係合している。駆動リング40に固定された駆動ピン41は、第1の位置41−1と第2の位置42−2の範囲を移動可能である。なお、駆動リング40に固定された他の駆動ピン42は第2セクタ20の長穴22及び第2補助セクタ25の長穴27に係合し、駆動ピン43は第3セクタ30の長穴32及び第3補助セクタ35の長穴37に係合するように配置されている。
【0018】
図3(A)で示すように、駆動ピン41が第1の位置41−1にあるときには、第1セクタ10及び第1補助セクタ15が開口3に掛からない(閉じない)退避位置に移動されて全開状態を形成する(図1参照)。一方、図3(B)で示すように、駆動ピン41が第2の位置41−2となったときには、第1セクタ10及び第1補助セクタ15が開口3の一部を閉じる位置に移動されて小絞り状態を形成する(図2参照)。
【0019】
ここで、図3(A)と図3(B)とを比較すると、第1セクタ10の移動量が第1補助セクタ15より大きいことが確認できる。前述したように第1セクタ10が小絞り開口を形成する絞り羽根である。この第1セクタ10は絞り羽根として機能する他の2枚のセクタ20、30と協働して開口3よりも小さい領域(小絞り開口、図2のST)を形成して小絞り状態を形成する。長穴12は、駆動ピン41の移動に伴って第1補助セクタ15よりも第1セクタ10が大きく移動(位置変化)するように形成されている。具体的には、図3(A)で示すように、全開状態にあるときに第1セクタ10の長穴12は第1補助セクタ15の長穴22よりも開口3側への傾斜が大きく形成されている。よって、駆動ピン41が位置41−1から位置41−2へ向けて移動するときに、長穴12の内壁を駆動ピン41が押し出す状態となるので、第1セクタ10の移動量が第1補助セクタ15の移動量よりも大きくなる。
【0020】
上記で説明した第1セクタ10及び第1補助セクタ15と駆動リング40との組の関係は、他の第2セクタ20と第2補助セクタ25との組、第3セクタ30と第3補助セクタ35との組についても同様である。すなわち、第2セクタ20の長穴22及び第2補助セクタ25の長穴27に駆動リング40の駆動ピン42が係合し、これらのセクタを揺動させる。また、第3セクタ30の長穴32及び第3補助セクタ35の長穴37に駆動リング40の駆動ピン43が係合し、これらのセクタを揺動させる。よって、図4で示す駆動リング40を駆動して、駆動ピン41〜43が第1の位置(それぞれ(−1)で示す位置)に来ると図1で示す全開状態が形成され、駆動ピン41〜43が第2の位置(それぞれ(−2)で示す位置)に来ると図2で示す小絞り状態が形成される。
【0021】
ところで、小絞り状態を示している図2を詳細に検討すると、例えば第1セクタ10の背部側(小絞り開口の一部を形成する側に対して反対側)と開口3の縁部との間に隙間が発生している。この隙間の一部は第3セクタ30により遮蔽されるが隙間aが残っている。隙間aを第1補助セクタ15が遮蔽している。同様に、第2セクタ20の背部側に発生する隙間bを補助セクタ25が遮蔽し、また第3セクタ30の背部側に発生する隙間cを補助セクタ35が遮蔽している。
【0022】
一般にセクタ駆動装置は、使用するセクタの大きさ(特に幅)及びセクタの揺動範囲に応じて基板面積(基板の外形)が規定されてしまう。本実施例の絞り装置1では、上記のように第1セクタ10、第2セクタ20及び第3セクタ30が、従来の補助セクタを設けない場合のセクタよりも幅が狭くなっている。そして、小絞り状態を形成したときに各セクタの背部に発生する隙間a〜cを補助セクタ15、25、35で遮蔽するという構成を採用する。補助セクタ15、25、35は、隙間を遮蔽するだけであるのでセクタ10、20、30も同様に幅が狭く形成される。よって、基板2を小さく形成できるので、絞り装置1は小型化を促進することができる。
【0023】
そして、図1で示すように、組をなす第1セクタ10の長穴12と第1補助セクタ15の長穴17は退避位置で互いに重なるように形成されている。同様に第2セクタ20の長穴22と第2補助セクタ25の長穴27も退避位置で互いに重なるように形成され、第3セクタ30の長穴32と第2補助セクタ35の長穴37も退避位置で互いに重なるように形成されている。このようにセクタと補助セクタが退避位置にあるとき、すなわち全開状態のときに基板2上でセクタが余分なスペースを取らない構造としたことによっても絞り装置1は小型化されている。
【0024】
さらに図1を参照して、基板2に形成した前述の切欠部分4について説明する。絞り装置1を撮像装置等に組込むときには、周辺の部品との配置関係も調整して可能な限り撮像装置の小型化を図る必要がある。このように基板2に切欠部分4を設けることにより、撮像装置内での基板2の占有部分を減少させて他の部品を効率良く配置できる。しかし、絞り装置1側から見ると切欠部分4を形成した基板2の残り部分は狭くなってしまう。この部分を狭幅部分2aという。この狭幅部分2aをセクタの退避位置に設定することは一般に困難である。
【0025】
ところが、絞り装置1で使用する各セクタ10,20,30及び補助セクタ15,25,35は前述したように従来のセクタと比較して特に幅が狭く、開口3を開いたときに重なった状態となる。よって、この狭幅部分2aを退避位置とすることができる。図示した例では、第2セクタ20及び第2補助セクタ25の組が狭幅部分2aを退避位置としている。
【0026】
以上説明した絞り装置1は、それぞれを小さく形成したセクタ10、20、30及び補助セクタ15、25、35によって小絞り状態を形成するようにしているので従来よりも基板2の外形を小さく形成できる。その結果、絞り装置1の小型化を図ることができる。また、1つの支軸に2枚のセクタを軸支するので、使用するセクタ数に対して支軸数を低減している。よって、この点でも構造を簡素化して小型化を図ることができる。
【0027】
上記実施例では、セクタ及び補助セクタをそれぞれ3枚、合計6枚のセクタを揺動させる絞り装置について説明したが、基板2や開口3のサイズに応じてセクタと補助セクタ組の数を適宜に増減することができる。
【0028】
また、上記実施例ではセクタ駆動装置として絞り装置を例示しているのでセクタが前記開口3を閉じる状態を小絞り状態としている。セクタ駆動装置をシャッタ装置とする場合には、前記開口3を閉じる状態を開口3を完全に閉じる全閉状態とすればよい。
【0029】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例に係る絞り装置が全開状態であるときの要部構成を示した図である。
【図2】実施例に係る絞り装置が小絞り状態にあるときの要部構成を示した図である。
【図3】(A)は図1で示す全開状態での第1セクタ及び第1補助セクタを取り出して示した図であり、(B)は図2で示す小絞り状態での第1セクタ及び第1補助セクタを取り出して示した図である。
【図4】セクタ及び補助セクタ揺動させる駆動リングについて示した図である。
【符号の説明】
【0031】
1 絞り装置(セクタ駆動装置)
2 基板
3 開口
6、7、8 支軸
10 第1セクタ
15 第1補助セクタ
20 第2セクタ
25 第2補助セクタ
30 第3セクタ
35 第3補助セクタ
a、b、c 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備えた基板と、支軸を中心にして前記開口の一部を閉じる閉位置と前記開口から退避した退避位置との間を揺動するセクタを複数備えたセクタ駆動装置であって、
前記複数のセクタのそれぞれが前記閉位置にあるときに、該セクタの背部と前記開口の縁部との間に隙間が生じると共に、
前記複数のセクタの動作と連動して前記支軸を中心に揺動し、前記隙間を遮蔽する複数の補助セクタを更に備えることを特徴とするセクタ駆動装置。
【請求項2】
前記複数のセクタが前記閉位置にあるときに、該複数のセクタによって前記開口よりも小さな開口が形成されることを特徴とする請求項1に記載のセクタ駆動装置。
【請求項3】
前記複数のセクタ及び前記複数の補助セクタのそれぞれには該セクタ及び該補助セクタを揺動させる駆動ピンとの係合用の長穴が形成されており、
同じ支軸に軸支された組となる前記セクタ及び前記補助セクタの前記長穴は同じ前記駆動ピンに係合し、
前記セクタの長穴が、前記補助セクタよりも前記退避位置から前記閉位置までの移動量が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセクタ駆動装置。
【請求項4】
前記組となる前記セクタの長穴及び前記補助セクタの長穴が、前記セクタ及び前記補助セクタが前記退避位置で互いに重なるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載のセクタ駆動装置。
【請求項5】
前記基板に外周部の一部を切欠いた狭幅部分が形成されており、組となる前記セクタ及び前記補助セクタが前記狭幅部分を前記退避位置とするように配置されている特徴とする請求項4に記載のセクタ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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