説明

セグメントの継手構造

【課題】構造が簡単、安価であり、セグメントどうしの接合強度を一定に維持する。
【解決手段】セグメントの継手構造は、雄型継手5が、頭部9aを接合面4aから離間して接合面4aに固定されたボルト(棒状部材)9と、パイプに設けた貫通穴10aを介してボルト9の頭部側に装着されたガイド部材10と、ボルト9の基部側に装着されてガイド部材10を接合面4aから離間させて頭部9a側に保持させるスペーサ11とを備え、雌型継手6が、一端側のガイド部材10を挿入可能な溝幅から他端側のスペーサ11を挿入可能な溝幅まで徐々に溝幅を小さくしたスリット12を有し、スリット12に挿入されたボルト9の頭部9aを、接合面4bと反対の裏面側でガイド部材10を介して係止する係止部材13と、係止部材13の裏面側に固定され、ガイド部材10のボルト9の直径方向への所定以上の拡大変形を規制する拘束部材14とを備えた構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの覆工用として使用されるセグメントの隣接するものどうしを接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセグメントの継手構造として、隣接して接合される一対のセグメントのうちの一方のセグメントの接合面に、軸部に頭部側から順に複数の皿バネ、平座金、スペーサを装着したボルトを立設して雄型継手を構成すると共に、他方のセグメントの接合面に、切欠部を設けた係止板を、接合面に設けた凹部に前記切欠部の開口側を連絡させて設けて雌型継手を構成し、セグメントの接合面どうしを接合する際には、他方のセグメントの接合面の前記凹部に一方のセグメントのボルトが挿入されるようにして、各セグメントの接合面どうしを突き合わせた後に、一方のセグメントを他方のセグメントに対してそれらの接合面に沿う方向に相対移動させて、前記雄型継手のボルトを前記雌型継手の係止板の切欠部に嵌入させることにより、前記ボルトの頭部と接合面との間に嵌入された前記係止板の裏面側に、前記頭部を前記皿バネの押圧力によって係止させるようにした継手構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−120391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記セグメントの継手構造は、前記雄型継手のボルトを雌型継手の係止板の切欠部に嵌入し易くするために、前記切欠部の開口部側にテーパ面を形成すると共に開口部側の裏面に凹状に湾曲した案内面を形成する一方、前記平座金の係止板と接触する側の外周部が円弧状に形成され、また、皿バネも複数個使用されているので、雄型継手と雌型継手を構成する部材の構造が複雑となり、それらの製作が容易ではなく、高価となる問題がある。また、前記ボルトに大きな引張り軸力が作用した場合には、前記皿バネが限界まで圧縮されてセグメントどうしの接合強度が低下するために、セグメントどうしの接合面間に隙間が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造が簡単、安価であり、セグメントどうしの接合強度を安定に維持することができるセグメントの継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によるセグメントの接合構造は、隣接する一対のセグメントの接合面どうしを突き合わせて、それらの接合面に沿う方向に各セグメントを相対的に摺動させ、一方のセグメンの接合面に設けた雄型継手を他方のセグメントの接合面に設けた雌型継手に係合させることにより前記セグメントどうしを接合するセグメントの継手構造であって、前記雄型継手が、軸部に軸部より大径の頭部を有し該頭部が接合面から離間した状態とされて該接合面に固定された棒状部材と、前記セグメントの移動方向に沿った軸長を有すると共に横断面が接合面側に凸となる円弧板状部を有し、該円弧板状部の中央に設けた貫通穴を介して前記棒状部材における軸部の前記頭部側に装着されたガイド部材と、前記棒状部材における軸部の基部側に装着されて前記ガイド部材を接合面から離間させて前記頭部側に保持させ筒状のスペーサとを備え、また、前記雌型継手が、前記セグメントの移動方向に延長して形成され、かつ一端側の前記ガイド部材を挿入可能な溝幅から他端側の前記スペーサを挿入可能な溝幅まで徐々に溝幅を小さくしたテーパ状のスリットを、前記接合面に沿って固定された板状部材に形成してなり、前記スリットにその一端側から前記軸部を挿通されて他端側まで移動された前記雄型継手の棒状部材の頭部を、前記接合面と反対の裏面側において前記ガイド部材を介して係止する係止部材と、該係止部材の裏面側に固定して設けられ、前記ガイド部材の円弧方向における両端部が前記棒状部材の直径方向へ所定以上拡大変形するのを規制する拘束部材とを備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明においては、一対のセグメントをそれらの接合面どうしを突き合わせて該接合面に沿って相対的に移動させて接合する際には、一方のセグメントの雄型継手のガイド部材が、そのセグメントの接合面側の円弧外周面を、他方のセグメントの雌型継手の係止部材におけるスリットのテーパ状の内側縁に係合されて周方向に調芯されながら前記スリットに沿って案内されて移動し、弾性変形量を増しながら雄型継手の棒状部材にその頭部を介して引張力を付加する。これにより、前記棒状部材が、曲げ力を受けることなく、前記接合面に対して垂直状態を保持しながら断面に均等に作用する引張力によって、その頭部を前記ガイド部材を介して前記係止部材にしっかりと係止させる。
また、前記雄型継手の棒状部材が大きな引張力を受けることにより前記ガイド部材が異常に弾性変形しようとする場合、前記ガイド部材の両側に位置して係止部材に設けられている拘束部材がガイド部材の一定以上の弾性変形を抑えるので、前記係止部材に対する棒状部材の係止によるセグメントどうしの結合強度が低下するおそれがない。
【0007】
前記セグメントの接合構造において、前記雄型継手の棒状部材が頭付のボルトであり、前記ガイド部材が円形断面の鋼製パイプで形成されていることが好ましい。
このようにすると、前記雄型継手のガイド部材を、既存の鋼製パイプを切断してその中央にボルトを挿通させる穴をあけるだけで極めて安価に製作することができると共に、セグメントの大きさに合わせて、ボルトやパイプの大きさを選定することにより、セグメントの接合強度を容易に調整することができる。
【0008】
また、前記セグメントの接合構造において、前記係止部材のスリットを、その溝幅が広い一端側が前記接合面の外端部に開口して形成されている構成とすることができる。
このにようにすると、セグメントの接合面どうしを突き合わせる際に、雄型継手の棒状部材と雌型継手の係止部材におけるスリットとの、前記接合面に沿う移動方向における位置合わせが不要となり、セグメントの接合作業を容易、迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるセグメントの接合構造によれば、一対のセグメントをそれらの接合面どうしを突き合わせて該接合面に沿って相対的に移動させて接合する際に、一方のセグメントの雄型継手のガイド部材が、そのセグメントの接合面側の円弧外周面を、他方のセグメントの雌型継手の係止部材におけるスリットに係合されて周方向に調芯され、かつ前記スリットに沿って移動して弾性変形量を増しながら、雄型継手の棒状部材にその頭部を介して引張力を付加するので、前記棒状部材が、曲げ力を受けることなく断面に均等に作用する引張力によって、その頭部を前記ガイド部材を介して前記係止部材にしっかりと係止させることができ、これにより、一対のセグメントの接合面どうしを、前記雌型継手の係止部材に対する前記雄型継手の棒状部材の係止によって強固に接合させることができる。
【0010】
また、前記雄型継手の棒状部材が大きな引張力を受けることがあっても、前記係止部材の拘束部材がガイド部材の一定以上の弾性変形を抑えるので、前記係止部材に対するガイド部材の係止によるセグメントどうしの結合強度を常に安定に維持させることができる。
さらに、前記雄型継手は棒状部材に円弧板状部を有するガイド部材と筒状のスペーサを装着してセグメントの接合面に取り付けたものであり、前記雌型継手は板状部材にテーパ状のスリットを形成した係止部材を主要部としてセグメントの接合面に設けたものであって、それらの継手の構成部材に格別の機械加工を施す必要がないので、継手構造が簡単であり、容易にかつ安価に製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態に係るセグメントの継手構造ついて添付図面を参照して説明する。
図1において、1はシールド工法によってトンネルの内壁に構築されるトンネル覆工体を形成する鋼製セグメント(セグメント)である。この鋼製セグメント1は、周知のように、薄肉の長方形状の鋼板を円弧面状に湾曲して形成されたスキンプレート2の外周辺に沿って主桁板3と継手板4を結合し、さらに、それらの内側に図示しない補強桁板や補強リブ板を設けて円弧版状に形成されている。
【0012】
前記鋼製セグメント1におけるトンネル周方向の一方(図1で左方)の接合面4aを有する継手板4には、その長手方向(トンネル軸方向)の一端部側(図1で下端部側)に雄型継手5が設けられ、その長手方向の他端部側(図1で上端部側)に雌型継手6が設けられている。また、前記鋼製セグメント1におけるトンネル周方向の他方(図1で右方)の接合面4bを有する継手板4には、その長手方向の一端部側(図1で下端部側)に前記雌型継手6が設けられ、その長手方向の他端部側(図1で上端部側)に前記雄型継手5が設けられている。
【0013】
前記雄型継手5は、図2(a)に示すように、前記継手板4における幅方向(鋼製セグメントの厚さ方向、トンネルの直径方向)の中央に接合面4a,4bに直交してあけた貫通穴7の中心に、中心を合わせて継手板4の裏面側に溶接等によって固定した袋ナット8と、前記継手板4の接合面4a,4b側から前記貫通穴7を通して前記袋ナット8に螺合されたボルト(棒状部材)9と、該ボルト9の頭部9a側に位置されて軸部8bに装着された円筒状のガイド部材10と、前記貫通穴7に挿入されると共に、前記ボルト9の軸部9bに前記袋ナット8とガイド部材10との間に位置して装着され、前記ガイド部材10が頭部9aに一体の座金9cに、常時当接された状態を保持する円筒状のスペーサ11とを備えている。
【0014】
前記ガイド部材10は、円形断面の鋼製パイプを所定長さに切断して、その軸方向の中央であり、かつ軸心を通る直径方向に、前記ボルト9の軸部9bが挿通されるボルト穴10aをあけて形成され、その軸方向を前記継手板4の長手方向に合わせて前記ボルト9に装着されている。
なお、前記スペーサ11は、その内端側を前記貫通穴7に挿入して前記袋ナット8の端面に当接させる代わりに、短尺に形成して前記接合面4aに当接させるようにすることもできる。
【0015】
前記雌型継手6は、図2に示すように、前記継手板4における幅方向の中央において長手方向に沿って所定長さのスリット12を設けてなり、継手板4の一部をもって構成された係止部材13と、該係止部材13の裏面13a側(継手板4の裏面4c側)において、前記スリット12を囲むようにして前記係止部材13に固着して設けられた拘束部材14とを備えている。
前記スリット12は、図3に示すように、前記継手板4の長手方向(図3で左右方向)における外端側(図3で左端側)の溝幅H1が前記ガイド部材10を丁度挿通し得る大きさとされ、内端側(図3で右端側)の溝幅H2が前記スペーサ11を丁度挿通し得る大きさに設定され、外端側から内端側に向けて溝幅が徐々に小さくなるテーパ状に形成されている。
【0016】
前記拘束部材14は、前記スリット12における継手板4の幅方向の両側に、スリットの外端側の溝幅H1より僅かに広く間隔をあけて継手板4の長手方向に向けて配置され、係止部材13の裏面側に延出して固定された一対の平行な拘束板14a,14aと、該拘束板14a,14aのスリット12と反対側の端部どうしを連結する連結板14bと、前記ボルト9の頭部9aから離間されて前記拘束板14a,14aと連結板14bの両端部に連結された側板14c,14cとによりスリット12側が開口された凹部14dを有する箱形に構成されている。
【0017】
前記ボルト9の軸部9bにおける前記袋ナット8の端面から座金9cの端面までの長さLは、前記継手板4,4の接合面4a,4bどうしが突き合わせられて、前記ガイド部材10が前記係止部材13のスリット12の溝幅H1の入口側部に挿入されたときに、前記ガイド部材10の袋ナット8側の一部分が前記スリット12の裏面側内部にあって、ガイド部材10が円形断面を保った自由状態にあり、また、前記ガイド部材10が前記係止部材13のスリット12の溝幅H2の奥側部に挿入されたときに、前記ガイド部材10の袋ナット8側の一部分が前記スリット12から殆ど脱出して係止部材13の裏面に当接されているのと近い状態となって、前記ガイド部材10が前記ボルト9の軸方向に扁平に圧縮されて、前記ボルト9に所定の軸力(引張力)が作用するような長さに設定されている。
【0018】
次に、前記構成のセグメントの継手構造によってトンネルの周方向に隣接する鋼製セグメント1,1どうしを接合する方法について説明する。
先ず、図1に矢印イで示すように、一方の鋼製セグメント1における継手板4の一方の接合面4aを、他方の鋼製セグメント1における他方の継手板4の他方の接合面4bに平行に整列するように接近させる。そして、図3に示すように、トンネル軸方向(図3で左右方向)において、一方の接合面4aに設けた雄型継手5のボルト9の中心位置を、他方の接合面4bに設けた雌型継手6のスリット12の溝幅H1を有する入口側部の位置Aに合わせると共に、同様に、一方の接合面4aに設けた雌型継手6(図3には示されていないが、図3に示す状態とは反対となっている)のスリット12の溝幅H1を有する入口側部の位置Aを、他方の接合面4bに設けた雄型継手5のボルト9の中心位置に合わせる。
【0019】
しかる後に、前記鋼製セグメント1,1を相対的にトンネル周方向に移動させて接合面4a,4bどうしを突き合わせて(図4(a)参照)から、鋼製セグメント1,1を相対的にトンネル軸方向(矢印ロの方向)に移動させると、前記雄型継手5のボルト9に装着されたガイド部材10が、その袋ナット8側の円弧外周面を前記雌型継手6のスリット12の裏面側の内側縁に係合、案内されて、スリット12の入口側部の位置Aから中間部の位置Bを経て奥側部の位置Cまで移動する。この間に、前記ガイド部材10は、前記位置Aにあってボルト9の軸方向における長さL1を有する円形断面の状態(図4(a)参照)から、溝幅がテーパにしたがって狭まったスリット12内に袋ナット8側の一部を嵌入されて、円弧外周面がスリット12の内側縁に当接する前記位置Bにおいて、ボルト9の軸方向に短径L2を有する楕円形状断面に圧縮された状態となり(図4(b)参照)、さらに、溝幅がテーパに従って最も狭まったスリット12の奥部の位置Cにおいて、前記袋ナット8側の円弧外周面がスリット12から殆ど脱出され、スリット12の裏面側で前記係止部材13(継手板4)に当接した状態に殆ど等しくなって、ボルト9の軸方向に短径L3を有する楕円形状断面に一層圧縮された状態となる(図4(c)参照)。
【0020】
このように、前記ガイド部材10がスリット12の裏面側においてその入口側部から奥側部に押し込まれると、前記係止部材13のスリット12のテーパが、係止部材13の裏面側に前記入口側部が低く奥側部が高くなるテーパ面が形成されているのと同様な機能を果たすので、この機能によって、前記ガイド部材10が徐々にボルト9の軸方向に弾性的に圧縮変形され、その圧縮力の反力によって前記ボルト9に軸方向に一定の軸力が付加された状態とされ、前記係止部材13のスリット12の裏面側において、前記雄型継手5のボルト9の頭部9aが前記雌型継手6の係止部材13に前記ガイド部材10を介して係止される。これにより、前記鋼製セグメント1,1の継手板4,4どうしが前記雌型継手6の係止部材13に対する雄型継手5のボルト9の係止によって接合される。
【0021】
前記において、前記雄型継手5のガイド部材10は、その袋ナット8側(接合面4a側)の円弧外周面が前記係止部材13のスリット12の内側縁に係合されて周方向に調芯されながら、スリット12の長手方向に沿って終端の位置Cまで案内されて移動し、弾性変形量を増しながら前記ボルト9にその頭部9aを介して軸力を付加する。これにより、前記ボルト9は、曲げ力を受けることがなく、接合面4a,4bに対して垂直状態を保持しながら、断面に均等に作用する軸力によって、その頭部9aを前記ガイド部材10を介して雌型継手6の係止部材13にしっかりと係止させる。
また、前記雄型継手5のボルト9が大きな軸力を受けると、前記ガイド部材10が異常に圧縮されて扁平に変形して、鋼製セグメント1,1どうしの接合面4a,4b間に隙間が生じることが考えられるが、前記ガイド部材10の両側に位置して係止部材13に設けられている前記拘束部材14の一対の拘束板14a,14aが、圧縮されて扁平に変形したガイド部材10の長径部分に当接して一定以上の弾性変形を抑えるので、前記係止部材13に対するボルト9の係止にる鋼製セグメント1,1どうしの結合強度が低下してそれらの接合面4a,4b間に隙間が生じるおそれはない。
【0022】
以上説明したように、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造1は、前記雄型継手5が、軸部9bに軸部9bより大径の頭部9aを有し該頭部9aが接合面4aから離間した状態とされて該接合面4aに固定されたボルト9と、前記セグメント1の移動方向ロに沿った軸長を有すると共に横断面が接合面4a側に凸となる円弧板状部を有し、該円弧板状部の中央に設けた貫通穴10aを介して前記ボルト9における軸部9bの前記頭部9a側に装着されたガイド部材10と、前記ボルト9における軸部9bの基部側に装着されて前記ガイド部材10を接合面4aから離間させて前記頭部9a側に保持させる円筒状のスペーサ11とを備え、また、前記雌型継手6が、前記セグメント1の移動方向ロに延長して形成され、かつ一端側の前記ガイド部材10を挿入可能な溝幅から他端側の前記スペーサ11を挿入可能な溝幅まで徐々に溝幅を小さくしたテーパ状のスリット12を、前記接合面4bに沿って固定された板状部材に形成してなり、前記スリット12にその一端側から前記軸部9bを挿通されて他端側まで移動された前記雄型継手5のボルト9の頭部9aを、前記接合面4bと反対の裏面側において前記ガイド部材10を介して係止する継手板4からなる係止部材13と、該係止部材13の裏面側に固定して設けられ、前記ガイド部材10の円円弧方向における両端部が前記ボルト9の直径方向へ所定以上拡大変形するのを規制する拘束板14a,14aを有する拘束部材14とを備えた構成とされている。
【0023】
したがって、前記実施の形態に係るセグメントの継手構造によれば、一対の鋼製セグメント1,1をそれらの接合面4a,4bどうしを突き合わせて、該接合面4a,4bに沿って相対的に移動させて接合する際に、一方の鋼製セグメント1の雄型継手5におけるガイド部材10が、その袋ナット8側の円弧外周面を、他方の鋼製セグメント1の係止部材13のスリット12の内側縁に係合されて周方向に調芯され、かつスリット12の長手方向に沿って終端の位置Cまで案内されて移動して弾性変形を増しながら、前記ボルト9にその頭部9aを介して軸力を付加するので、前記ボルト9は、曲げ力を受けることなく、断面に均等に作用する軸力によってその頭部9aを前記ガイド部材10を介して前記係止部材13にしっかりと係止させることができ、これにより、前記鋼製セグメント1,1の継手板4,4どうしを前記雌型継手6の係止部材13に対する雄型継手5の前記ボルト9の係止によって強固に接合させることができる。
【0024】
また、前記雄型継手5のボルト9が大きな引張力を受けることがあっても、前記拘束部材14の一対の拘束板14a,14aが、前記ガイド部材10の一定以上の弾性変形を抑えるので、前記係止部材13に対する前記ガイド部材10の係止による鋼製セグメント1,1どうしの結合強度を常に安定に維持させることができる。
前記雄型継手5はボルト9に円弧板状を有するガイド部材10と円筒状のスペーサ11を装着して継手板4に取り付けたものであり、前記雌型継手6は主要部が継手板4にテーパ状のスリット12を設けられたものであり、それらの継手5,6の構成部材に格別の機械加工を施す必要がないので、継手構造が簡単であり、容易にかつ安価に製作することができる。
【0025】
また、前記セグメントの継手構造においては、前記雄型継手5のガイド部材10を円形断面の鋼製パイプで形成し、これを頭付のボルトに装着する構成とされているので、既存の鋼製パイプを切断してその中央に前記ボルト9を挿通させる貫通穴10aをあけるだけで極めて安価に製作することができると共に、セグメント1の大きさに合わせて、ボルト9やパイプの大きさを選定することにより、セグメント1,1の接合強度を容易に調整することができる。
前記円形断面の鋼製パイプからなるガイド部材10に代え、図2(b)に示すように、短尺の円形断面の鋼製パイプをその軸方向に沿う分割線によって周方向に複数に分割して、軸方向(継手板4の長手方向)に所定長さを有する円弧状板(ガイド部材)10Aを形成し、該円弧状板10Aの中央にボルト9を挿通させるボルト穴10aを貫通させて設け、円弧状板10Aの凸部側を袋ナット8側に向けた状態で前記ボルトの軸部9bに装着する構成のガイド部材としてもよい。この円弧状板10Aからなるガイド部材においても、前記円形断面の鋼製パイプからなるガイド部材10と略同様の作用、効果を奏することができる。前記ガイド部材10Aを使用する場合には、ボルト9の長さが短くなり、鋼製セグメント1の接合面4aからの突出量を小さくすることができる。
なお、図2(b)に示す雄型継手5の座金9cは、円弧状板10Aの軸方向に沿う矩形状に形成されている。
【0026】
図5は、鋼製セグメント1をトンネルの周方向に接合して鋼製セグメントのリングを完結する際に、トンネルの周方向における左右に平面視で台形状間隔をあけて隣接された一対の既設の鋼製セグメント1A,1A間に、平面視で台形状の鋼製セグメント(一般に、「K型セグメント」と呼ばれている)1Kを挿入して、その両側の継手板4,4を既設の鋼製セグメント1A,1Aの継手板4,4に接合する場合に、図2(b)に示す円弧状板10Aからなるガイド部材を有する雄型継手5を適用したものである。
【0027】
前記鋼製セグメント1A,1Aの継手板4,4には、台形状間隔の広い側(図5で下側)において、継手板4,4の外端に溝幅の広い側を開口させてスリット12が設けられて前記雌型継手6,6が形成され、また、台形状間隔の狭い側(図5で上側)において、前記継手板4,4に雄型継手5,5が設けられている。一方、鋼製の前記K型セグメント1Kの両側の継手板4,4には、台形の底辺側(トンネル周方向におけるセグメント幅が広い側)に雄型継手5,5が設けられ、台形の上辺側(トンネル周方向におけるセグメント幅が狭い側)に、継手板4,4の外端に溝幅の広い側を開口させてスリット12が設けられて前記雌型継手6,6が形成されている。
【0028】
なお、前記K型セグメント1Kに設ける雄型継手5の場合は、ボルト9がK型セグメント1Kの台形の底辺側をその幅方向に貫通させて配置される通しボルトとして形成され、その継手板4,4から突き出した両端側にスペーサ11、ガイド部材10A、座金10cを装着して、通しボルトの外端部にナット(頭部)15を螺合させて固定する構成とされている。この構成では、前記通しボルトが長尺となるため、比較的小さいK型セグメント1Kに採用することができるが、大きなK型セグメント1Kの場合には、図6に示すように、短尺のボルト9,9を継手板4,4に固着して、その継手板4,4からの突出部分に前記スペーサ11、ガイド部材10A、座金10cを装着して、ボルト9の外端部にナット15を螺合させて固定させる構成とするのがよい。
【0029】
前記K型セグメント1Kを隣接の一対の鋼製セグメント1A,1Aと接合する場合は、K型セグメント1Kと鋼製セグメント1A,1Aの各継手板4をトンネル直径方向に位置を合わせておいて、K型セグメント1Kを鋼製セグメント1A,1Aに対してトンネル軸方向(図5で矢印ハ方向)に移動させて接合させるが、前記の通り、鋼製セグメント1A,1Aの台形状間隔の広い側における継手板4,4とK型セグメント1Kのセグメント幅の狭い側の継手板4,4に、それらの外端に雌型継手6のスリット12の溝幅の広い側が開口されると共に、鋼製セグメント1A,1Aの台形状間隔の狭い側における継手板4,4とK型セグメント1Kのセグメント幅の広い側の継手板4,4に、それらの外端側に雄型継手5を設けた構成とされている。
【0030】
したがって、図1に示す鋼製セグメント1,1の継手構造のように、前記各雌型継手6のスリット12の長手方向における位置Aでの、スリット12と雄型継手5のボルト9との位置合わせをする作業を必要とせず、単に、K型セグメント1Kをトンネル軸方向に移動させるだけで、各鋼製セグメント1A,1Kどうしの雌型継手6のスリット12に雄型継手5のボルト9が挿入され、雌型継手6の係止部材13に雄型継手5のボルト9に螺合したナット15が、前記ガイド部材10Aを介して係止されるので、セグメントの接合作業を円滑、かつ迅速に行うことができる。
なお、K型セグメント1Kを鋼製セグメント1Aに接合する場合に、前記円弧状板のガイド部材10Aに代えて、鋼製パイプからなるガイド部材10を使用することもできる。
【0031】
なお、前記実施の形態に係るセグメントの接合構造においては、鋼製セグメント1,1の継手板4,4の接合面4a,4bに、それぞれ雄型継手5と雌型継手6とを1個ずつ設けたが、これに限らず、一方の接合面4aに雄型継手5と雌型継手6のうちの一方を2個設け、他方の接合面4bに雄型継手5と雌型継手6のうちの他方を2個設けるようにしてもよく、継接合面4a,4bにそれぞれ設ける雄型継手5または雌型継手6の継手の個数も2個に限られない。また、前記雌型継手6の係止部材13を前記継手板4で兼用させたが、これに限らず、係前記止部材13を継手板4とは別に形成して継手板4に取り付けるようにすることもできる。
また、前記雄型継手5と雌型継手6を継手板4ではなく主桁板3,3に設けて、鋼製セグメント1,1どうしをトンネル軸方向に接合させるセグメントの接合構造とすることもできる。
【0032】
さらに、前記実施の形態に係るセグメントの接合構造においては、鋼製セグメント1,1どうしまたは鋼製セグメント1A,1Kどうしを接合する場合に適用した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、鋼製セグメントの内側にコンクリートを充填させてなる合成セグメントや、コンクリートセグメントにも適用して同様な作用、効果を得ることができる。コンクリートセグメントに適用する場合には、セグメントの接合面に前記雄型継手5や雌型継手をインサート金具によって設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造の接合前の状態を示す斜視図である。
【図2】同じく接合初期における状態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造における雌型継手を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造の各接合段階における状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るセグメントの継手構造をK型セグメントの接合に適用する場合における接合前の状態を示す斜視図である。
【図6】同じくK型セグメントに設ける雄型継手の他の例を示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 鋼製セグメント(セグメント)
1K K型セグメント(セグメント)
2 スキンプレート
3 主桁板
4 継手板
4a,4b 接合面
5 雄型継手
6 雌型継手
7 貫通穴
8 袋ナット
9 ボルト(棒状部材)
9a 頭部
9b 軸部
10 ガイド部材
10A 円弧状板(ガイド部材)
11 スペーサ
12 スリット
13 係止部材
14 拘束部材
14a 拘束板
15 ナット(頭部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する一対のセグメントの接合面どうしを突き合わせて、それらの接合面に沿う方向に各セグメントを相対的に移動させ、一方のセグメンの接合面に設けた雄型継手を他方のセグメントの接合面に設けた雌型継手に係合させることにより前記セグメントどうしを接合するセグメントの継手構造であって、
前記雄型継手は、軸部に軸部より大径の頭部を有し該頭部が接合面から離間した状態とされて該接合面に固定された棒状部材と、前記セグメントの移動方向に沿った軸長を有すると共に横断面が接合面側に凸となる円弧板状部を有し、該円弧板状部の中央に設けた貫通穴を介して前記棒状部材における軸部の前記頭部側に装着されたガイド部材と、前記棒状部材における軸部の基部側に装着されて前記ガイド部材を接合面から離間させて前記頭部側に保持させる筒状のスペーサとを備え、また、前記雌型継手は、前記セグメントの移動方向に延長して形成され、かつ一端側の前記ガイド部材を挿入可能な溝幅から他端側の前記スペーサを挿入可能な溝幅まで徐々に溝幅を小さくしたテーパ状のスリットを、前記接合面に沿って固定された板状部材に形成してなり、前記スリットにその一端側から前記軸部を挿通されて他端側まで移動された前記雄型継手の棒状部材の頭部を、前記接合面と反対の裏面側において前記ガイド部材を介して係止する係止部材と、該係止部材の裏面側に固定して設けられ、前記ガイド部材の円弧方向における両端部が前記棒状部材の直径方向へ所定以上拡大変形するのを規制する拘束部材とを備えていることを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
前記雄型継手の棒状部材が頭付のボルトであり、前記ガイド部材が円形断面の鋼製パイプで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記係止部材のスリットは、その溝幅が広い一端側が前記接合面の外端部に開口して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセグメントの継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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