説明

セグメント接続構造

【課題】対向したセグメントを接続金具の介在によって接続するようにしたセグメント接続構造において、その構成部材の低コスト化を図ることを課題とする。
【解決手段】
一方のセグメント11の接続端面12に設けられた雄側接続金具13は、長ナット17と、その長ナット17にねじ込まれたホールインアンカー18とからなり、ホールインアンカー18は前記長ナット17にねじ結合された雄ねじ部19と、接続端面12から突き出した拡開部21と、その拡開部21の先端部に挿入された拡開クサビ22とからなる。他方のセグメント14の接続端面15に設けられた係止金具20によって雌側接続金具16が構成され、前記拡開クサビ22が係止金具20の底部24に衝合することにより拡開部21の外周部が係止金具20の内周突条23に係止され、引き抜き強度を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下トンネル、立坑等の円筒形構築物を構築する場合に用いられる円筒形コンクリートセグメント、又はその円筒形のコンクリートセグメントを周方向に複数に分割した分割形のコンクリートセグメント(以下、これらのコンクリートセグメントを単に「セグメント」と総称する。)の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているセグメント接続構造において、接続金具の構成が簡単で低コストである一方、強力な結合力を発揮できるものとして、下記の特許文献に開示されたものがある。
【0003】
この場合の接続構造は、一方のセグメントにインサートされた鋼棒の先端部が接続端面に突き出し、その突き出した部分の先端部に楔受穴が設けられ、その楔受穴の周壁に複数の切り込みが軸方向に設けられる。前記楔受穴に楔部材の先端部が挿入されることにより雄側接続部が構成される。また他方のセグメントの接続端面には前記鋼棒の先端部を受入れる継手受穴が設けられ、これによって雌側接続部が構成される。
【0004】
前記の接続構造を用いて隣り合ったセグメントを接続するには、一方のセグメントの雄側接続部を他方のセグメントの雌側接続部に挿入し、挿入方向に衝撃を加えることによって楔部材を継手受穴の底に衝突させると同時に切り込みの部分で楔受穴の周壁を拡開して継手受穴の内周壁に係止させる。これによって両方のセグメントが接続される。
【特許文献1】特開平8−210095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のセグメント接続構造は、部品点数が少なく低コストであり、作業性も良好である利点がある。
【0006】
しかしながら、前記の接続構造は、楔部材が継手受穴の底面に接触した時点において、両接続端面相互の間隔が一定となるよう高い精度で製作する必要がある。その精度が低い場合は、楔部材が押し込まれ楔受穴が拡開された時点で両方の接続端面間に大きな間隔が残ることがある。逆に、楔受穴が完全に拡開されるよりも前に接続端面が当接してしまい接続が不完全になることもある。
【0007】
また、前記の接続構造は、地震等によりセグメント相互を引き離す方向に大きな外力が作用した場合に、拡開状態にある楔受穴の外周面が継手受穴の内面のコンクリートを破壊して接続端面相互間にすき間が生じることがあり、そのすき間から漏水が生じる等の不都合がある。
【0008】
そこで、この発明は低コストでありながら、前記のような不都合を解消したセグメント接続構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、この発明は、図1(a)(b)に示したように、一方のセグメント11の接続端面12に設けられた雄側接続金具13と、他方のセグメント14の接続端面15に設けられた雌側接続金具16によりセグメント11、14相互を接続するセグメントの接続構造を発明の前提とする。
【0010】
前記雄側接続金具13は、一方のセグメント11にインサートされその接続端面12に開放された長ナット17と、その長ナット17の開放端にねじ結合されたホールインアンカー18とから構成される。該ホールインアンカー18は前記長ナット17にねじ結合された雄ねじ部19と、該雄ねじ部19の反対側の端部に設けられ前記接続端面12から突き出した拡開部21と、その拡開部21の先端部に挿入された拡開クサビ22とから構成される。該拡開クサビ22は狭小側先端部を拡開部21の内方に向けて部分的に挿入される。
【0011】
前記雌側接続金具16は、他方のセグメント14にインサートされ接続端面15に開放された係止金具20からなる。該係止金具20の内周面に前記拡開部21の外周部が係合する内周突条23が設けられるとともに内底面に前記拡開クサビ22が突き当たる底部24が設けられる。前記拡開クサビ22が前記底部24との衝突により押し込まれ該拡開部21が拡開することにより前記内周突条23に係止された状態で前記両方の接続端面12、15が相互に当接する構成である。
【0012】
なお、前記係止金具20の底部24を、該係止金具20の底部側ねじ穴38にねじ込んだホローセットねじ33により構成することができる。また、前記接続端面12、15の相互間に弾性シール材36を介在することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記構成のセグメント接続構造に係る発明は、以下の効果がある。
(1)雄側接続金具13の拡開部21を構成するホールインアンカー18は汎用型のものを使用することができるので、構成部材のコストの低減を図ることができる。
(2)セグメント11の搬送時にホールインアンカー18を外しておき施工現場で取付けるようにすれば、搬送時において突き出すものが存在しないのでセグメント11の取り扱い上便利である。
(3)ホールインアンカー18の長ナット17に対するねじ込み量を調整することにより、拡開部21の突き出し長さを正確に設定することができ、精度の高い接続構造を提供することができる。
(4)接続後において、セグメント11、14の間に両者を引き離す方向の外力が作用しても、接続端面12、15間に介在された弾性シール材36の伸縮によってシールが保持され、漏水を防止することができる。
(5)係止金具20の底部側ねじ穴38にホローセットねじ33をねじ込んで底部24を構成することにより、溶接によって底部を構成する場合に比べ構成部材のコストの低減を図ることができる。
(6)コンクリートの打設前においてホローセットねじ33のねじ込み量を調整することにより、接続端面15から係止金具20の底部24(ホローセットねじ33)までの長さを正確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1の場合の接続対象となるセグメントは、図2(a)に示したような、円筒形セグメント11、14の場合と、図2(b)に示したように、円筒形のコンクリートセグメントを周方向に複数に分割した分割形セグメント11’、14’の場合とがある。以下の説明は円筒形コンクリートセグメント11、14の接続構造について説明するが、分割形コンクリートセグメント11’、14’の場合も同様である。
【0016】
前記の各セグメント11、14は、図1(a)に示したように、各セグメント11、14の接続端面12、15及びそれぞれの内周面が補強鋼板25、26によってカバーされている。
【0017】
一方のセグメント11の接続端面12を構成する補強鋼板25に周方向に所定の間隔をおいて開口27が設けられる。その開口27の内面に長ナット17の一端面が溶接され、該長ナット17が接続端面12に開放される。長ナット17の内端部に閉塞用のボルト28がねじ込まれ、長ナット17の内部にコンクリートが侵入することを防止している。
【0018】
前記の開口27からホールインアンカー18の雄ねじ部19が挿入され、長ナット17のねじ穴17aにねじ込まれる。ホールインアンカー18の他端部に設けられた拡開部21が接続端面12から外部に突き出す。前記の長ナット17、ボルト28及びホールインアンカー18によって雄側接続金具13が構成される。
【0019】
前記セグメント11の成形時において、補強鋼板25の接続端面12の内面の所定位置に長ナット17を溶接し、長ナット17の先端部にボルト28をねじ込んで閉塞する。開口27から長ナット17の端部に閉塞栓(図示省略)をねじ込み、その後補強鋼板25を型枠としてコンクリートを打設する。これにより、長ナット17、ボルト28がセグメント11にインサート成形される。
【0020】
なお、セグメント11の接続端面12の外周部にシール用の片側溝30aが設けられる。
【0021】
前記のホールインアンカー18は、鋼棒の一端部に雄ねじ部19が形成され、他端部に拡開部21が設けられる。拡開部21は、図1(b)に示したように、鋼棒の他端部先端に開放されたクサビ穴29の周壁部に、その先端からクサビ穴29の底面に達するスリット31が複数個所に設けられる。また、その外周面に複数の周溝が所要間隔をおいて設けられ、これによって凹凸面32が形成される。
【0022】
前記クサビ穴29の先端開放部にテーパ状の拡開クサビ22が、その狭小側端部を内向きにして部分的に挿入される。この拡開クサビ22は、拡開力を及ぼさず、しかも抜け落ちない程度の力で差し込まれ保持される。このようにして保持された状態における拡開部21からの突き出し長さをa(図1(a)参照)、接続端面12から拡開クサビ22の先端までの長さをAで示す。この突き出し長さAは、雄ねじ部19の長ナット17に対するねじ込み量の調整により正確に出すことができる。
【0023】
前記の拡開部21は、図1(b)において一点鎖線で示したように、拡開クサビ22がクサビ穴29に押し込まれるとスリット31が押し広げられ、拡開部21がテーパ状に拡開される。
【0024】
他方のセグメント14の接続端面15には、前記雄側接続金具13に対応した雌側接続金具16が設けられる。この雌側接続金具16は、接続端面15の補強鋼板26に設けられた開口39の内面に溶接された係止金具20及びその係止金具20の底部24を構成するホローセットねじ33からなり、前記セグメント11の場合と同様にセグメント14にインサートされる。
【0025】
前記係止金具20の内部には前記開口39に通じた開放側ねじ穴34が形成され、また、その反対側端部には前記の開放側ねじ穴34に通じた底部側ねじ穴38が設けられる。その底部側ねじ穴38に前記のホローセットねじ33がねじ込まれる。
【0026】
前記開放側ねじ穴34と底部側ねじ穴38の間の係止金具20内周面において、開放側ねじ穴34に接して内周突条23が設けられ、さらにその内周突条23と底部側ねじ穴38との間に拡開凹部35が設けられる。
【0027】
ホローセットねじ33のねじ込み量を調整することにより、接続端面15から底部24(ホローセットねじ33)までの距離Bを正確に設定することができる。
【0028】
前記開放側ねじ穴34の内径はホールインアンカー18の外径より大きく形成される。内周突条23の内径は、該ホールインアンカー18の拡開部21が通過可能な範囲でその外径に実質的に等しい大きさに形成される。また、拡開凹部35は開放側ねじ穴34の径と同程度の内径をもつように形成される。該拡開凹部35の軸方向長さは前記拡開クサビ22の突き出し長さaと同一長さに形成される。
【0029】
なお、このセグメント14の接続端面15の外周部にも前記のシール用の片側溝30aに対向した片側溝30bが設けられる。セグメント14の製作時においてコンクリートを打設する際に開放側ねじ穴34に閉塞栓をねじ込んでおくことは、セグメント11の場合と同様である。
【0030】
雄側接続金具13を設けたセグメント11及び雌側接続金具16を設けたセグメント14は以上のように構成される。次にその作用について説明する。
【0031】
セグメント11に関してはホールインアンカー18を事前に取付けた状態で施工現場に搬送することができるが、搬送時は外しておき施工現場において取付けることもできる。施工現場において取付けるようにすれば、搬送時においてセグメント11の端面から拡開部21が突き出すことがないので取扱いに便利である。
【0032】
両方のセグメント11、14を接続するに際し、拡開部21の突き出し長さAは、係止金具20の底部24(ホローセットねじ33)までの長さBと、拡開クサビ22の突き出し長さaと、弾性シール材36の圧縮時の厚さc(図3(b)参照)を加えた長さ(A=B+a+c)に設定される。
【0033】
接続作業を行う場合は、予めいずれか一方の接続端面12、15において、その接続端面12又は15に属する全ての開口27又は39の外周を囲む範囲に弾性シール材36が装着される。
【0034】
その後、両方の接続端面12、15を接近させつつ雄側接続金具13の拡開部21を雌側接続金具16の開口39から係止金具20のねじ穴34を経て、拡開クサビ22の拡大側端面がホローセットねじ33に当たるまで差し込む(図1(a)の矢印、図3(a)参照)。拡開クサビ22の先端がホローセットねじ33に当接した状態において接続端面12、15間にすき間a+cが存在し、前記のA=B+a+cの関係が満たされる。
【0035】
また、図3(a)の状態において、拡開クサビ22の露出部分は拡開凹部35の範囲に入る。このとき、拡開クサビ22の外径面と拡開凹部35の内径面との間に径方向すき間bが存在する。
【0036】
さらに、接続を進めるべく両方のセグメント11、14に外力を加え所要の力で衝合させると、拡開クサビ22がホローセットねじ33によって押し込まれる。これにより拡開部21がスリット31の部分において、前記の径方向すき間bの範囲内で径方向外向きに拡開され、その外径面の凹凸面32が内周突条23に係合される(図3(b)参照)。その係合力によって両セグメント11、14の引き抜き力が発生して接続される。
【0037】
また、これと同時に、接続端面12、15が相互に最接近し、弾性シール材36を扁平に圧縮させる(圧縮時の厚さをcで示す。図3(b)参照)。弾性シール材36が厚さcに圧縮された状態における接続端面12、15の相互関係を「特許請求の範囲」においては「接続端面12、15が相互に当接する」と称している。
【0038】
前記の状態において接続端面12、15間が弾性シール材36によりシールされ内部から外部への漏水が防止される。また、両者の片側溝30a、30bが接近して一つのシール溝30が形成される。このシール溝30にパッキン37が装着され(図4(a)参照)、外部からの土砂等の侵入が防止される。
【0039】
前記のセグメント11、14間に、地震等によって両者を引き離す方向の強大な外力が作用し、図4(b)に示したように拡開部21の内周突条23に対する係止位置にずれが生じ、接続端面12、15間が広がった場合は、弾性シール部材36が膨張して接続端面12、15相互間のシール作用を維持する。さらに、前記のように接続端面12、15が広がった状態から、接近する方向の外力が作用した場合は、弾性シール部材36がこれに追従して圧縮されシール作用を維持する。
【0040】
このようにしてセグメント11、14に対する外力の作用に対し、接続部が柔軟に対応しシール作用を維持する。
【0041】
なお、弾性シール材36を用いない場合(c=0)は、特許請求の範囲にいう「接続端面12、15が相互に当接する」とは、文字通り当接するか又は実質上当接することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)実施例1の一部分解断面図、(b)同上の一部拡大断面図
【図2】(a)同上の円筒形セグメントの分解斜視図、(b)同上の分割形セグメントの分解斜視図
【図3】(a)同上の接続途中の一部断面図、(b)同上の接続後の一部断面図
【図4】(a)同上の接続後の一部拡大断面図、(b)同上の接続部の変形状態の一部拡大断面図
【符号の説明】
【0043】
11、11’ セグメント
12 接続端面
13 雄側接続金具
14、14’ セグメント
15 接続端面
16 雌側接続金具
17 長ナット
17a ねじ穴
18 ホールインアンカー
19 雄ねじ部
20 係止金具
21 拡開部
22 拡開クサビ
23 内周突条
24 底部
25 補強鋼板
26 補強鋼板
27 開口
28 ボルト
29 クサビ穴
30 シール溝
30a、30b 片側溝
31 スリット
32 凹凸面
33 ホローセットねじ
34 開放側ねじ穴
35 拡開凹部
36 弾性シール材
37 パッキン
38 底部側ねじ穴
39 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のセグメント(11)の接続端面(12)に設けられた雄側接続金具(13)と、他方のセグメント(14)の接続端面(15)に設けられた雌側接続金具(16)によりセグメント(11、14)相互を接続するセグメント接続構造において、
前記雄側接続金具(13)は、一方のセグメント(11)にインサートされその接続端面(12)に開放された長ナット(17)と、その長ナット(17)の開放端にねじ結合されたホールインアンカー(18)とからなり、該ホールインアンカー(18)は前記長ナット(17)にねじ結合された雄ねじ部(19)と、該雄ねじ部(19)の反対側の端部に設けられ前記接続端面(12)から突き出した拡開部(21)と、その拡開部(21)の先端部に挿入された拡開クサビ(22)とからなり、前記拡開クサビ(22)は狭小側先端部を拡開部(21)の内方に向けて部分的に挿入され、前記雌側接続金具(16)は、他方のセグメント(14)にインサートされ接続端面(15)に開放された係止金具(20)からなり、該係止金具(20)はその内周面に前記拡開部(21)の外周部が係合する内周突条(23)が設けられるとともに内底面に前記拡開クサビ(22)が突き当たる底部(24)が設けられ、前記拡開クサビ(22)が前記底部(24)との衝突により押し込まれ該拡開部(21)が拡開することにより前記内周突条(23)に係止された状態で前記両方の接続端面(12、15)が相互に当接することを特徴とするセグメント接続構造。
【請求項2】
前記ホールインアンカー(18)の拡開部(21)は、その先端面から軸方向に所要長さのクサビ穴(29)が設けられ、そのクサビ穴(29)の周壁に複数のスリット(31)が軸方向に形成され、かつ前記拡開部(21)の外周面に形成された複数の周溝によって凹凸面(32)が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセグメント接続構造。
【請求項3】
前記係止金具(20)の底部(24)が、該係止金具(20)の底部側ねじ穴(38)にねじ込まれたホローセットねじ(33)により構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のセグメント接続構造。
【請求項4】
前記セグメント(11、14)の接続端面(12、15)相互間に弾性シール材(36)が介在されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のセグメント接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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