説明

セッション間端末接続方法、セッション間端末接続装置、及びセッション間端末接続プログラム

【課題】プロトコル定義に違反することなく、2つのセッション間の通信端末の移動を行う。
【解決手段】既存セッション識別情報保存・修正機能部121は、全てのセッションに属する各通信端末が持つセッション情報のセッション識別情報を全て保存する。既存セッション識別情報保存・修正機能部121は、新しいセッション識別情報を、保存しておいたセッション識別情報に修正する。メディア情報行数比較機能部122は、それぞれのセッション情報のメディア情報の行数を比較する。セッション間端末接続機能部120は、比較結果に基づき、行数の多い側のセッション情報を新しいオファーとして採用する。全メディア情報削除機能部123は、行数の少ない側のメディア情報を全て削除し、多い側のメディア情報で置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末を他方のセッションに移動させるセッション間端末接続方法、セッション間端末接続装置、及びセッション間端末接続プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電話等のサービスを提供する通信事業者の通信ネットワークに対し、通信ネットワークにおけるセッション制御をアプリケーション等のコントローラから制御する3PCC(Third Party Call Control)と呼ばれる技術が存在する。3PCCにおいては、これまでは、2つの通信端末間でセッション接続を行う方式を中心に検討が進められてきた。このような流れの中にあって、近年、3PCC制御用のAPI(Application Program Interface)の中に、2通信端末間のセッション接続に加えて、ある2つのセッションの一方のセッションから他方のセッションへと通信端末を移動する命令が定義されるようになった。このような命令を実現する際の方式として、コントローラ側でメディアストリームを終端する方式と、メディアストリームを終端しない3PCCの拡張方式とが考えられる。
【0003】
通信ネットワークにおけるセッション制御をアプリケーション等のコントローラから制御する3PCCの実現方法については、RFC3725に詳しく記載されている(例えば、非特許文献1参照)。RFC3725には、通信プロトコルとして、SIP(Session Initiation Protocol)を用いた場合の3PCCを実現するシーケンスについて、4つのパターンと、それぞれのメリット・デメリットとについて記述されている。
【0004】
図4は、従来技術によるネットワークの構成を示すブロック図である。図において、コントローラ100は、セッション制御用ネットワーク200を介して各通信端末300〜303を制御する。ここで、セッション制御用ネットワーク200は、NGN(Next Generation Network)や、IMS(IP Multimedia Subsystems)に代表されるようなSIPによるセッション制御を行う通信ネットワークを想定している。通信端末300〜303は、一般のIP電話機や、IPテレビ電話機、またSIPによるセッション制御を受け付ける、その他いかなるSIP User Agentをも含む。
【0005】
図5は、RFC3725に記載の4つのシーケンスのうち、最も単純とされる第1のシーケンスを示すシーケンス図である。図において、コントローラ100が通信端末300に対してSIPのINVITEメッセージにSDPに基づくセッション情報を載せずに送る(ステップS001)。これに対して、通信端末300は、自身の望むセッション情報を載せた応答を返す(ステップS002)。
【0006】
コントローラ100は、このセッション情報を載せたINVITEメッセージを通信端末301に送り(ステップS003)、通信端末301から両通信端末で合意に達したセッション情報を受け取ると(ステップS004)、ACKを通信端末301に返し(ステップS005)、このセッション情報を、最後に通信端末300に送る(ステップS006)。これにより、セッションの開始に必要な情報が出揃い、両通信端未間でメディアストリームを載せたRTPメッセージのやり取りが開始される(ステップS007)。
【0007】
このような2つの通信端末を新たに呼び出してセッション接続する方法については、RFC3725を始めとして、実現方法が各方面で論じられてきた。一方、ネットワーク機能を制御するWebサービス形式のAPIとして標準化されているParlay Xでは、このような2つの通信端末間での新規セッション接続の他に、より複雑なセッション制御方法が挙げられている。Parlay Xには、その制御する機能種別に応じて幾つかのパートに分かれており、3PCCを含むセッション制御については、Part 2:Third Party Callに記述されている(例えば、非特許文献2参照)。ここでは、2つの通信端末を新たに呼び出してセッション接続するAPI(makeCallSession)の他に、既存の2つのセッションに属する通信端末を1つずつ選び、一方のセッションの通信端末を他方のセッションの通信端末と再接続するというAPI(transferCallParticipant)が定義されている。
【0008】
これらのセッション制御方法について、図6と図7を参照して説明する。図6は、makeCallSessionのような2つの通信端末間でセッション接続を行う3PCC制御を、通信端未300と通信端未301間、通信端末302と通信端末303間で実行した後のセッションと通信端末との関係を示すブロック図である。前者の組み合わせでは、コントローラ100が通信端末300と通信端末301との間のダイアログ(呼)を関連付けて、セッション400(♯1)としてまとめている。後者の組み合わせでは、同様に、コントローラ100が通信端末302と通信端末303との間のダイアログを関連付けて、セッション401(♯2)としてまとめている。
【0009】
こうして生成された2つのセッション400(#1)とセッション401(#2)との間で、通信端末の移動を行うのがtransferCallSessionの機能である。図7は、一例として、セッション401(#2)に属する通信端末302を、セッション400(#1)に属する通信端末300と接続した場合を示すブロック図である。通信端末302は、コントローラによって通信端末300の属するセッション400(#1)に移動され、一度も切断されることなく、通信端末300と通信端末302との間で通話が継続する。この過程において、セッション401(#2)から通信端未302が離脱したため、セッション401(♯2)は無くなり、通信端末303は、切断されるか、外部のガイダンスサーバ等の別の通信端末へと接続し直される等の処理がコントローラ100によって行われたものとする。同様に、セッション400(#1)に属していた通信端末301も、コントローラによって切断されるか、外部のガイダンスサーバ等の別の通信端末へと接続し直されたものとする。
【非特許文献1】J. Rosenberg, J. Peterson, H. Schulzrinne, and Camarillo, “Best Current Practices for Third Party Call Control (3pcc) in the Session Initiation Protocol (SIP),” IETF RFC 3725, Apr. 2004.
【非特許文献2】Parlay Group. “Open Service Access (OSA); Parlay X Web Services; Part 2: Third Party Call (Parlay X 3), “ETSI ES 202 504-2 v0.0.5, Jun. 2007.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような既存セッション間の通信端末を接続する方法を考える際に課題となるのが、セッションのセッション情報を記述するプロトコルであるSDP(Session Description Protocol)に対する違反である。SDPは、RFC4566(M. Handley, V. Jacobson, and C. Perkins, “SDP: Session Description Protocol,” IETF RFC 4566, Jul. 2006)で定義されたプロトコルであり、SIPにおける要求元からのオファーと要求先からのアンサーによって合意を取る方法については、RFC3264(J. Rosenberg and H. Schulzrinne, “An Offer/Answer Model with the Session Description Protocol (SDP),” IETF REC 3264, Jun. 2002)において定義されている。SDPは、オファーとアンサーのやり取りにより、2つの通信端末間で共通のコーデックを選んで通信できるようにする等、最適なセッション情報を決定するためのプロトコルである。ある通信端末が別の通信端末にSIPのINVITEメッセージを送る場合には、SDPの定義に従った実装を行えば何の問題もないが、3PCCや、セッション間端末接続等のコントローラによってセッション制御を行う場合には、SDPの定義で制限・禁止されている事項に抵触しないよう実現方法を考える必要がある。3PCCにおけるSDPによる制限については、RFC3725に4つのシーケンスごとに記載されている。
【0011】
上述したように、SIP(Session Initiation Protocol)を用いた3PCCによるセッション間端末接続は、RFC3725に記載のシーケンスにより行われる。図8は、図5に示すRFC3725のシーケンスの通信端末301を、通信端末302に置き換えたときのセッション状態を示すシーケンス図である。図5と図8との違いは、図8では、既に通信端未300と通信端未302とがそれぞれ異なるセッションに属しているという点である。そのため、図8の各lNVITEメッセージ(ステップS101、S103)は、セッション確立済み状態におけるINVITE(一般に、re−INVITEと呼ばれる)である。
【0012】
図8に示すシーケンス図について、順を追って説明する。確立済みセッションに属する通信端末300に対し、コントローラ100からセッション情報を載せないINVITEメッセージを送り(ステップS101)、これに対して通信端末300からセッション情報(SDP)のオファーを受け取る(ステップS102)。このオファーを載せたINVITEメッセージを、別の確立済みセッションに属する通信端末302に対して送り(ステップS103)、これに対する応答としてSDPのアンサーを得る(ステップS104)。コントローラ100は、通信端末300に対し、このアンサーを載せたACKを送り(ステップS106)、通信端末300と通信端末302との間でメディアストリームが流れ始める(ステップS107)。
【0013】
このシーケンスによってセッション間端末接続を実現するためには、いくつかの課題が存在している。第1の課題に関して、SDPにおいてセッション識別情報を記述する行(“o=”行)は、RFC3264において、次のように定義されている。即ち、同一のセッションにおいて、セッション識別情報に記述されたセッション情報の発信者の識別子は、不変でなければならず、セッション情報のバージョンを表すシーケンス番号は、インクリメントされなければならない。この条件に対し、図8に示す従来技術によるシーケンスでは、正常に機能しないという問題がある。
【0014】
ステップS102〜S103において、コントローラ100を経由して送られたオファーは、通信端末300から見れば、発信者の識別子が以前のものと変わっていないため問題ない。しかしながら、通信端未302からは、それまでの識別子(この場合、このシーケンスが実行される前に、通信端末302が接続していた相手の通信端末の識別子)とは、別の識別子が送られてきたように見える。このため、RFC3264の規定に違反したことになり、正常に機能しないことが予想される。
【0015】
第2と第3の課題は、RFC3264では、メディア情報を認証する行(“m=”行)について、セッション情報を更新する際に、以前のセッション情報のメディア情報の行数と新しいメディア情報の行数が一致、もしくは増加している必要があり(第2の課題)、行数の一致している分については、以前のメディア情報の記述の順序を変えてはならない(第3の課題)としている点が挙げられる。ここで、メディア情報は、通信端末間で送受信される音声情報や映像情報などのメディアを識別する情報である。SDPに基づく1つのセッションでは複数のメディアを管理することが可能であり、例えば、テレビ会議を行う場合には、音声情報と映像情報とを1つのセッションで管理することが可能である。
【0016】
ここで、メディア行数が増加している場合というのは、以前のメディア情報とメディア情報の記述の順序が一致している場合のみ、最後に新しいメディア情報の行を追加することが許されていることを示す。これらをまとめると、メディア情報の行数は、前回のメディア情報の行数と等しいか、前回よりも増えていなければならず、また、その行の並びについても、同じメディアについては、同じ行番号の行で記述しなければならない。
【0017】
図8に示す例では、この条件下で正常に機能する場合とそうでない場合とがある。正常に機能するのは、通信端末300のセッション情報と通信端末302のセッション情報とで、偶然にもメディア情報の行数が等しいか、あるいは、通信端未300のセッション情報のメディア情報の行数が多く、かつ同じ順序で同一のメディアについて言及していた場合である。これ以外の場合については、通信端末302が新しいオファーを受け取った時点(ステップS103)でRFC3264に違反したこととなり、正常に機能しないという問題がある。
【0018】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、メディアストリームを終端しない3PCC拡張方式において、プロトコル定義に違反することなく、2つのセッション間の通信端末の移動を行うことができるセッション間端末接続方法、セッション間端末接続装置、及びセッション間端末接続プログラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するために、本発明は、SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末のセッション情報を、他方のセッションに属する通信端末のセッション情報に置き換えて通信端末のセッションを移動させるセッション間端末接続装置の、メディア情報行数比較手段が、既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するステップと、セッション間端末接続手段が、メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するステップと、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、セッション間端末接続装置の、メディア情報削除手段が、メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ない側のセッション情報のメディア情報の行を全て削除するステップを備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、セッション間端末接続装置の、既存セッション識別情報保存手段が、既存の2つのセッションのそれぞれのセッション情報中のセッション識別情報を記憶して保存するステップと、既存セッション識別情報修正手段が、2つのセッションのうち一方のセッションに属する通信端末から送信されるセッション情報に含まれるセッション識別情報を、既存セッション識別情報保存手段に記憶された他方のセッションのセッション識別情報に置き換えるステップと、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末のセッション情報を、他方のセッションに属する通信端末のセッション情報に置き換えて通信端末のセッションを移動させるセッション間端末接続装置であって、既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するメディア情報行数比較手段と、メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するセッション間端末接続手段と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ない側のセッション情報のメディア情報の行を全て削除するメディア情報削除手段を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、既存の2つのセッションのそれぞれのセッション情報中のセッション識別情報を記憶して保存する既存セッション識別情報保存手段と、2つのセッションのうち一方のセッションに属する通信端末から送信されるセッション情報に含まれるセッション識別情報を、既存セッション識別情報保存手段に記憶された他方のセッションのセッション識別情報に置き換える既存セッション識別情報修正手段と、を備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末を他方のセッションに移動させるセッション間端末接続装置のコンピュータに、既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するステップと、メディア情報に関する記述の行数の比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するステップと、を実行させることを特徴とするセッション間端末接続プログラムである。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、2つのセッション情報中のメディア情報の行数を比較し、該比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションに属する通信端末を、メディア情報の行数が多い他方のセッションに移動させるようにしたので、メディア情報の行数が、以前と同じか、より増えていなければならないという条件を満たすことができ、プロトコル定義に違反することなく、2つのセッション間の通信端末の移動を行うことができるという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態によるネットワークの構成を示すブロック図である。図において、コントローラ100aは、セッション制御用ネットワーク200を介して各通信端末300〜303のセッションを制御する。ここで、セッション制御用ネットワーク200は、NGN(Next Generation Network)や、IMS(IP Multimedia Subsystems)に代表されるようなSIPによるセッション制御を行う通信ネットワークを想定している。通信端末300〜303は、一般のIP電話機や、IPテレビ電話機、またSIPによるセッション制御を受け付ける、その他いかなるSIP User Agentをも含む。ここで、本発明のセッション間端末接続方法におけるメディア種別については、SDPで許容されているメディア種別全てについて利用可能であり、特に、本発明固有の制限は設けない。
【0028】
図2は、本実施形態によるコントローラ100aの構成を示すブロック図である。図において、コントローラ100aは、SIPの制御を行うため、一般にSIPのアプリケーションサーバとして実現される。コントローラ100aは、セッション制御機能部110と、セッション間端末機能部120とを備える。セッション制御機能部110は、前述した図7に示した従来の3PCCを実現するコントローラ100が有する機能と同等であり、図8に示したシーケンスに代表されるRFC3725における各種3PCCシーケンスを実行する。セッション間端末接続機能部120は、セッション間端末接続を実現する機能であり、前述した第1から第3の課題に対し、既存セッション識別情報保存・修正機能部121、メディア情報行数比較機能部122、全メディア情報削除機能部123を含む。
【0029】
既存セッション識別情報保存・修正機能部121は、コントローラ100aを経由する全てのセッションのセッション情報に含まれるセッション識別情報を保存する。即ち、既存セッション識別情報保存・修正機能部121は、前述した図6で示すようなコントローラ100を介したセッション400(#1)とセッション401(♯2)が存在したとき、それぞれのセッションに属する各通信端末300〜303が持つセッション情報のセッション識別情報を全て保存する。
【0030】
その後、図8に示したようなセッション間端末接続の実行時における通信端末間でのセッション情報のやり取りの際に、既存セッション識別情報保存・修正機能部121は、以前のセッション諭別情報と新しいセッション識別情報との間で不一致が発生しないよう、対象のセッション情報の新しいセッション識別情報を、保存しておいたセッション識別情報に修正する。これにより、第1の課題として述べたセッション識別情報の一致という条件を満たすことができる。なお、既存セッション識別情報保存・修正機能部121によって保存されたセッション識別情報は、セッション識別情報の属するセッション情報のセッションが切断・破棄された場合に削除される。
【0031】
メディア情報行数比較機能部122は、セッション間端未接続機能部120による接続シーケンスの初期において得られた、それぞれのセッション情報のメディア情報の行数を比較する。セッション間端末接続機能部120は、該比較結果に基づき、その行数の多い側のセッション情報を新しいオファーとして採用する。これにより、第2の課題として述べたメディア情報の行数の一致については、RFC3264に記載の「メディア情報の行数は前回のメディア情報の行数と等しいか、前回よりも増えていなければならなない」という条件を常に満たすことができる。
【0032】
但し、上記第2の課題に対する解決手段だけでは、RFC3264の「メディア情報の行の並びについても、同じメディアについては同じ行番号の行で記述しなければならない」という条件を満たすことができない(第3の課題)。例えば、行数の多いメディア情報が、前回の行数の少ないメディア情報に行を足した形ではなく、全ての行の内容がまるで変わってしまっている場合が考えられる。
【0033】
上記第3の課題における条件を満たすため、一度削除した(無効であると印をつけた)メディア情報の行については、全く別のメディア情報の行によって置き換えることで再利用が可能であるというRFC3264記載の別の条件を利用する。即ち、全メディア情報削除機能部123は、行数の少ないメディア情報を持つセッション情報のメディア情報の行を予め全て削除し、行数の多いメディア情報を持つセッション情報を新しいオファーとした場合、少ない側のメディア情報の行を多い側のメディア情報の行で置き換える。この方法により、第3の課題として述べたメディア情報の行の順序の一致についても解決する。
【0034】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図3は、本実施形態によるコントローラ100aの動作例として、セッション間端末接続動作を説明するためのシーケンス図である。これは、前述した図6に示すように、通信端未300と通信端末301間のセッション400(#1)と、通信端末302と通信端末303間のセッション401(#2)とを、前述した図7に示すように、通信端末300と通信端未302間のセッションに変更するよう、セッション間での端未接続を行う例である。
【0035】
まず、コントローラ100aは、それぞれが既に確立済みのセッションに属する通信端末300と通信端末302に対して、セッション情報のオファーを載せないINVITEメッセージを送信する(ステップS201、S202)。それぞれのメッセージに対して、新しいセッション情報のオファーを載せた応答が各通信端未300、302から返ってくる(ステップS203、S204)。なお、このステップS203、S204における応答については特に順序性は必要としないため、図示の例では、ステップS203、S204の順に応答があったように記述しているが、ステップS204、S203の順に応答があってもよい。
【0036】
次に、ステップS203に載せられた新しいオファー(offer1)と、ステップS204に載せられた新しいオファー(offer2)とを、コントローラ100aのメディア情報行数比較機能部122において比較する。ここで、もし、offer2のメディア情報の行数がoffer1のそれと同じか、あるいは、多かった場合には(ステップS205)、ステップS206以降のシーケンスを実行する。
【0037】
一方、offer1のメディア情報の行数のほうが、offer2のそれよりも多かった場合には(ステップS212)、ステップS213以降のシーケンスを実行し、ステップS206〜S210については実行しない。ステップS205以降とステップS212以降は、左右が反転しただけで、基本的には同じシーケンスである。即ち、メディア情報の行数の多い側のセッション情報を新たなオファーとして採用し、このオファーをメディア情報の行数の少なかった側へと送信するようになっている。このため、ここでは、ステップS205〜S211までを説明し、ステップS212以降については説明を省略する。
【0038】
ステップS206以降では、offer2が新しいオファーとして採用されているため、採用されなかったoffer1については、全メディア情報削除機能部123においてメディア情報の全ての行を削除した(無効にした)セッション情報を、アンサー(answer1)としてACKメッセージに載せて通信端末300に送信する(ステップS206)。なお、ここで送信したセッション情報のセッション識別情報については、通信端末302のセッション識別情報が載っていたところを、既存セッション識別情報保存・修正機能部121で保存されていた通信端未301のセッション識別情報に置き換えている。これにより、通信端末300からは、以前と変わらず、通信端未301のセッション識別情報を載せたセッション情報を受け取っていることになり、第1の課題における、セッション識別情報の一致という条件は満たされていることになる。
【0039】
次に、採用されたオファーであるoffer2’を載せたINVITEメッセージをコントローラ100aから通信端末300へと送信する(ステップS207)。ここでも、offer2のセッション識別情報については、通信端末302のものから通信端末301のものへと既存セッション識別情報保存・修正機能部121によって置き換えている(置き換え前をoffer2、置き換え後をoffer2’と記述する)。このoffer2’は、通信端未300のセッション情報(この段階では、answer1)と同じか、それ以上のメディア情報の行を持っており、また、ステップS206において、answer1のメディア情報は全て削除されているため、通信端末300のセッション情報のメディア情報は、answer1からoffer2’へと問題なく置き換えることができる。
【0040】
次に、このoffer2’に対するアンサーをanswer2’とし、このanswer2’を載せた200 OKメッセージを、通信端末300からコントローラ100aへ返送する(ステップS208)。ここで、answer2’のセッション識別情報を、既存セッション識別情報保存・修正機能部121が通信端末300のものから、通信端末303のものへと置き換える。この置き換えた後のアンサーをanswer2と記述する。
【0041】
コントローラ100aは、answer2を載せたACKメッセージを通信端末302へと送信し(ステップS209)、最後に通信端未300に対してACKメッセージを送信する(ステップS210)。これにより、通信端末300と通信端末302との間で新たにメディアストリームの送受信が行われるようになり(ステップS211)、セッション間の端末接続が完了する。
【0042】
上述した実施形態によれば、SIPや、SDP等のプロトコルで定義されている条件を満たしつつ、セッション間端末接続という複雑なセッション制御を実現することが可能となる。これにより、セッション間端末接続APIを提供するゲートウェイ装置のSIPのセッション制御による実現が可能となり、セッション制御アプリケーションの高度化と多様化が促進される。
【0043】
なお、上述した実施形態において、コントローラ100aにおける、セッション制御機能部110、セッション間端末接続機能部120、既存セッション識別情報保存・修正機能部121、メディア情報行数比較機能部122、全メディア情報削除機能部123による機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、セッション間端末接続処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0044】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態によるネットワークの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態によるコントローラ100aの構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態によるコントローラ100aの動作例として、セッション間端末接続動作を説明するためのシーケンス図である。
【図4】従来技術によるネットワークの構成を示すブロック図である。
【図5】RFC3725に記載の4つのシーケンスのうち、最も単純とされる第1のシーケンスを示すシーケンス図である。
【図6】makeCallSessionのような2つの通信端末間でセッション接続を行う3PCC制御を、通信端未300と通信端未301間、通信端末302と通信端末303間で実行した後のセッションと通信端末との関係を示すブロック図ある。
【図7】セッション401(#2)に属する通信端末302を、セッション400(#1)に属する通信端末300と接続した場合を示すブロック図である。
【図8】RFC3725のシーケンスの通信端末301を、通信端末302に置き換えたときのセッション状態を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0046】
100a コントローラ
110 セッション制御機能部
120 セッション間端末接続機能部
121 既存セッション識別情報保存・修正機能部
122 メディア情報行数比較機能部
123 全メディア情報削除機能部
200 セッション制御用ネットワーク
300〜303 通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末のセッション情報を、他方のセッションに属する通信端末のセッション情報に置き換えて通信端末のセッションを移動させるセッション間端末接続装置の、
メディア情報行数比較手段が、前記既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するステップと、
セッション間端末接続手段が、前記メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するステップと、
を備えることを特徴とするセッション間端末接続方法。
【請求項2】
前記セッション間端末接続装置の、
メディア情報削除手段が、前記メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ない側のセッション情報のメディア情報の行を全て削除するステップ
を備えることを特徴とする請求項1記載のセッション間端末接続方法。
【請求項3】
前記セッション間端末接続装置の、
既存セッション識別情報保存手段が、前記既存の2つのセッションのそれぞれのセッション情報中のセッション識別情報を記憶して保存するステップと、
既存セッション識別情報修正手段が、前記2つのセッションのうち一方のセッションに属する通信端末から送信されるセッション情報に含まれるセッション識別情報を、前記既存セッション識別情報保存手段に記憶された他方のセッションのセッション識別情報に置き換えるステップと、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載のセッション間端末接続方法。
【請求項4】
SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末のセッション情報を、他方のセッションに属する通信端末のセッション情報に置き換えて通信端末のセッションを移動させるセッション間端末接続装置であって、
前記既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するメディア情報行数比較手段と、
前記メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するセッション間端末接続手段と、
を備えることを特徴とするセッション間端末接続装置。
【請求項5】
前記メディア情報行数比較手段による比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ない側のセッション情報のメディア情報の行を全て削除するメディア情報削除手段
を備えることを特徴とする請求項4記載のセッション間端末接続装置。
【請求項6】
前記既存の2つのセッションのそれぞれのセッション情報中のセッション識別情報を記憶して保存する既存セッション識別情報保存手段と、
前記2つのセッションのうち一方のセッションに属する通信端末から送信されるセッション情報に含まれるセッション識別情報を、前記既存セッション識別情報保存手段に記憶された他方のセッションのセッション識別情報に置き換える既存セッション識別情報修正手段と、
を備えることを特徴とする請求項4または5記載のセッション間端末接続装置。
【請求項7】
SDPに基づく既存の2つのセッションのそれぞれに属する通信端末のうち、一方のセッションに属する通信端末を他方のセッションに移動させるセッション間端末接続装置のコンピュータに、
前記既存の2つのそれぞれのセッションのセッション情報中のメディア情報に関する記述の行数を比較するステップと、
前記メディア情報に関する記述の行数の比較結果に基づいて、メディア情報の行数が少ないセッションのセッション情報を、メディア情報の行数が多い他方のセッション情報に置き換えるセッション情報として決定するステップと、
を実行させることを特徴とするセッション間端末接続プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−98443(P2010−98443A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266478(P2008−266478)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】