説明

セパレータ用プラグ装置

【課題】 高価なセラミック製コーンの長さを更に長くすることなしに、厳しい腐食性環境における塩害を防止することができるセパレータ用プラグ装置の提供。
【解決手段】 雌ねじ部11、12を有する固定ナットと1、該固定ナット1の先端側に嵌着されてコンクリート5に嵌め殺しにされるセラミックス製の筒状のコーン2とで構成され、固定ナット1が金属で構成され、該金属製固定ナット1の表面全体にフッ素樹脂コートが施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ用プラグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セパレータ用プラグ装置としては、筒状の雌ねじ部分を有する金属製固定ナットと、該固定ナットの先端側に嵌着されてコンクリートに嵌め殺しにされるセラミックス製の筒状のコーンとで構成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−279841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来例のセパレータ用プラグ装置にあっては、強度を確保するため固定ナットが金属製であったため、以下に述べる問題点があった。
即ち、本来かぶり部分を構成するコーンを塩害に強いセラミック製とすることにより、鉄筋コンクリートの腐食性(塩害)を防止するようにしているが、更に厳しい腐食性環境(例えば、かぶりを越えて塩水が浸透する環境)においては、高価なセラミック製コーンの長さをさらに長くする必要がある。
従って、材料コストが高くつくという問題があった、
【0004】
本発明の解決しようとする課題は、高価なセラミック製コーンの長さを更に長くすることなしに、厳しい腐食性環境における塩害を防止することができるセパレータ用プラグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、雌ねじ部を有する固定ナットと、該固定ナットの先端側に嵌着されてコンクリートに嵌め殺しにされる筒状のコーンとで構成され、前記コーンがセラミックスで構成され、前記固定ナットが金属で構成され、該金属製固定ナットの表面全体にフッ素樹脂コートが施されていることを特徴とする手段とした。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のセパレータ用プラグ装置において、前記フッ素樹脂コートを施す前処理として、化成処理が行われていることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項3記載の発明は、請求項1に記載のセパレータ用プラグ装置において、前記フッ素樹脂コートを施す前処理として、ダクロタイズド処理が行われていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明では、上述のように、金属製固定ナットの表面全体にフッ素樹脂コートが施されている構成とすることで、高価なセラミック製コーンの長さを更に長くすることなしに、厳しい腐食性環境における塩害を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0009】
請求項2記載の発明では、上述のように、フッ素樹脂コートを施す前処理として、化成処理が行われていることで、金属表面に硫化物や酸化物の皮膜を形成させ、これにより、その後に施工されるフッ素樹脂コートの密着性を向上させることができ、従って、高い耐腐食性が得られるようになる。
【0010】
請求項3記載の発明では、上述のように、フッ素樹脂コートを施す前処理として、ダクロタイズド処理が行われることで、金属亜鉛を3価クロムで結合し金属製固定ナットの表面に数十層に積層された亜鉛フレークを相互に結びつけて皮膜を形成すると同時に、無水クロム酸が金属製固定ナットの金属素地表面を酸化して化学的に結合し、強固な密着力を生じ、高い耐腐食性を有する皮膜を形成させる。
従って、その後にフッ素樹脂コートを施工することにより、高い耐腐食性が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、この実施例1のセパレータ用プラグ装置を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1はこの実施例のセパレータ用プラグ装置を示す斜視図、図2は実施例のセパレータ用プラグ装置を示す断面図、図3は実施例のセパレータ用プラグ装置の使用状態を示す断面図である。
【0014】
このセパレータ用プラグ装置は、図1、2に示すように、固定ナット1と、筒状のコーン2と、軸足ボルト3と、セパレータ4と、を主な構成として備えている。
【0015】
さらに詳述すると、前記固定ナット1は、図3に示すように、コーン2をセパレータ4の両端部に連結させる役目をなすもので、金属で円筒状に形成され、その軸心孔の両端にセパレータ4の両端雄ねじ部41を螺合連結する雌ねじ部11と、軸足ボルト3の基端側雄ねじ部31を螺合連結する雌ねじ部12が一体に又は独立して形成されている。
【0016】
そして、この金属製固定ナットの表面全体にフッ素樹脂コートが施されており、このフッ素樹脂コート施工の前処理として、化成処理が行われている。
即ち、フッ素樹脂コート施工の前処理として行われるこの化成処理は、硫化や酸化等の化学反応を薬品溶液中で起こし、固定ナット1の金属表面に硫化物や酸化物の被膜を形成させることにより、耐食性や塗装下地として密着性を高める表面処理方法である。
【0017】
また、前記コーン2は、コンクリート5内に埋め殺しにされ、図2に示すように、コンクリート5のかぶりk部分を形成する役目をなすもので、セラミックスで軸心孔21を有する円筒状に形成されていて、固定ナット1の先端側に嵌着され、その端面が係止フランジ部13に当接係止された状態で位置決め固定されている。
【0018】
前記軸足ボルト3は、コーン2の先端面に当接係止されたコンクリート型枠板6を固定する役目をなすもので、コーン2の先端側からその軸心孔21内に差し込んでその基端に形成された雄ねじ部31を固定ナット1の雌ねじ部12に螺合して連結させるようになっている。
【0019】
また、この軸足ボルト3の先端側には、ホームタイ7を螺合する雄ねじ部32が形成され、この雄ねじ部32の先端部には、該軸足ボルト3を回転操作可能な断面方形のスパナ掛け部33が切欠形成されている。
【0020】
次に、この実施例の作用・効果を説明する。
この実施例では上述のように構成されるため、図3に示すように、コンクリート型枠板6に形成された挿通孔61に軸足ボルト3を挿通させ、その先端雄ねじ部32にホームタイ7を螺合する。そして、打設したコンクリート5が固まった後、軸足ボルト3に対するホームタイ7の螺合状態を解除させることにより、コンクリート型枠板6を取り外す。
【0021】
そして、コンクリート型枠板6を取り外した後、固定ナット1の雌ねじ部12に螺合された軸足ボルト3を、その先端部に形成されたスパナ掛け部33にスパナを掛けて螺合状態を解除させて引き抜く。
【0022】
次に、図示を省略したが、コーン2の軸心孔21内を清掃した後、その中に止水栓を圧入し、最後に棒等でコンクリート5の表面より約mm窪むまで押し込むことにより、止水作業を完了する。
【0023】
この実施例1では、上述のように、金属製固定ナット1の表面全体にフッ素樹脂コートが施されている構成とすることで、高価なセラミック製コーンの長さを更に長くすることなしに、厳しい腐食性環境における塩害を防止することができるようになるという効果が得られる。
【0024】
さらに、フッ素樹脂コートを施す前処理として、化成処理が行われていることで、金属表面に硫化物や酸化物の皮膜を形成させ、これにより、その後に施工されるフッ素樹脂コートの密着性を向上させることができ、従って、高い耐腐食性が得られるようになるという効果が得られる。
【0025】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0026】
この実施例2は、実施例1におけるセパレータ用プラグ装置の変形例を示すものであり、フッ素樹脂コートを施す前処理として、ダクロタイズド処理が行われている点が、前記実施例1とは相違したものである。
【0027】
即ち、このダクロタイズド処理には、ダクロディップ(登録商標)という処理液が用いられる。この処理液は、金属亜鉛フレーク、無水クロム酸、グリコール等の分散水溶液で構成されている。
まず、ダクロディップ中に被処理物である金属製固定ナット1を浸漬した後、焼き付け炉中で約300℃に加熱することによって六価クロムがグリコール等の有機物によって還元され、水不溶性アモルファスのnCrO3・mCr2O3を生成し、これがバインダーとなって、数十層に積層された亜鉛フレークを相互に結び付けて被膜を形成する。同時にダクロディップ中の無水クロム酸が金属素地表面を酸化して化学的に結合し、強固な密着力を生じる。
ダクロタイズド処理被膜の防錆機構は、亜鉛粒子のコントロールされた自己犠牲保護作用(Controlled Galvanic Protection)と、クロム酸による素地面の不働体化(Passivation)および亜鉛フレークと、クロム化合物の障壁作用(Barrier Effect)によって構成され、これらによって他にみられない優れた耐蝕性を示す。
【0028】
従って、この実施例2では、上述のように、フッ素樹脂コートを施す前処理として、ダクロタイズド処理が行われることで、金属亜鉛を3価クロムで結合し金属製固定ナット1の表面に数十層に積層された亜鉛フレークを相互に結びつけて皮膜を形成すると同時に、無水クロム酸が金属製固定ナット1の金属素地表面を酸化して化学的に結合し、強固な密着力を生じ、高い耐腐食性を有する皮膜を形成させる。
従って、その後にフッ素樹脂コートを施工することにより、高い耐腐食性が得られるようになる。
【0029】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0030】
例えば、実施例では、コーン2をセラミックスで形成したが、耐腐食性に優れた合成樹脂等で形成させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例のセパレータ用プラグ装置を示す斜視図である。
【図2】実施例のセパレータ用プラグ装置を示す断面図である。
【図3】実施例のセパレータ用プラグ装置の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 固定ナット
11 雌ねじ部
12 雌ねじ部
13 係止フランジ部
2 筒状のコーン
21 軸心穴
3 軸足ボルト
31 雄ねじ部
32 雄ねじ部
33 スパナ掛け部
4 セパレータ
41 雄ねじ部
5 コンクリート
6 コンクリート型枠板
7 ホームタイ
k かぶり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部を有する固定ナットと、該固定ナットの先端側に嵌着されてコンクリートに嵌め殺しにされる筒状のコーンとで構成され、
前記コーンがセラミックスで構成され、
前記固定ナットが金属で構成され、該金属製固定ナットの表面全体にフッ素樹脂コートが施されていることを特徴とするセパレータ用プラグ装置
【請求項2】
請求項1に記載のセパレータ用プラグ装置において、
前記フッ素樹脂コートを施す前処理として、化成処理が行われていることを特徴とするセパレータ用プラグ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のセパレータ用プラグ装置において、
前記フッ素樹脂コートを施す前処理として、ダクロタイズド処理が行われていることを特徴とするセパレータ用プラグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168843(P2010−168843A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13798(P2009−13798)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ホームタイ
【出願人】(594017994)ゼン技研株式会社 (17)
【出願人】(509026574)
【Fターム(参考)】