説明

セメント押出成形用混和剤及びセメント押出成形物

【課題】本発明は、セメント押出成形用混和剤として安価で押出成形時における流動性、押出成形物の保形性に優れる新規な粉体状のセメント押出成形用混和剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明のセメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダー(A)、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)、消泡剤(C)およびシリカ粉末(D)を含むことを特徴とする。また本発明のセメント押出成形物は、セルロース系バインダー(A)、粉末状消泡剤(C−1)および水を含有するセメント系組成物に、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)をシリカ粉末(D)に吸収させた粉粒状の混合物を添加し、押出成形したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント押出成形用混和剤及びそれを加えて押出成形を行ったセメント押出成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント押出成形体は普通ポルトランドセメントを始めとする水硬性物質、珪砂等の骨材、必要に応じて用いられる補強用繊維、軽量骨材等の各種組成物に水を加え粘土様の高粘性物質を作成し押出成形機を用いて平板、中空体等の所望の形状に製造されてきた。セメント系押出成形体を得るための成形用無機繊維として石綿(アスベスト)が系内への保形性導入を目的にセメント組成物中に混合使用されてきたが、石綿自体に発癌性が認められ使用が制限されるに至り、石綿に替わる押出成形用増粘剤としてメチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどのセルロース系バインダーが優れた可塑性と保水性により成形物に高い成形性が導入することができるため幅広くセメント系押出成形用混和剤として使用されている。
【0003】
しかしながらセルロース系バインダーは出発原料としてコットンリンターや天然パルプ等の天然由来のセルロース繊維を用い反応工程、洗浄工程、粉砕工程等の繁雑な生産工程を経て製造される半合成天然高分子であるため非常に高価であるという問題点が存在する。さらにセルロース系バインダー自身の高い粘着性のため得られた成形物の滑り性と離形性が劣り、表面の平滑性が得られにくいとの欠点や押出速度の低下等による作業工程上の問題点、製造時の押出圧の上昇等による製造設備への負担増加などが認められてきた。
【0004】
これらの問題点を回避するためセルロース系バインダーの一部を比較的安価な化学合成品である減水剤に置き換えられて使用することが試みてこられてきた。例えば、特許文献1にはセルロース系バインダーとナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤及び/又はメラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤を併用して押出成形用助剤として系内に添加したセメント押出組成物が開示され、特許文献2にはポリカルボン酸系減水剤およびポリエーテル型非イオン性消泡剤を併用して用いられる押出成形助剤が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−36055号公報
【特許文献2】特許3002346号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のセルロース系バインダーとナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤及び/又はメラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤との併用系では減水剤のセメント粒子、骨材等への分散効果により押出成形時の流動性には大きな効果が認められ減水剤を用いない系と比較し製造時の押出速度の向上や生産時の押出圧の低下が確認されるものの、同時に減水剤の分散効果に起因する気泡連衡性等により成形品への保形性効果に関しては若干の効果は確認されるものの大きな効果は認められなかった。また、成形品における寸法変化等の大きな問題点も併せて確認された。
特許文献2に記載のセルロース系バインダー、ポリカルボン酸系減水剤、エーテル型非イオン性消泡剤の併用系では消泡剤の系内への気泡連衡性調整効果によりセルロース系バインダー、減水剤併用系において問題となった押出成形品の寸法変化等の保形性に関して著しい改善がみられた。しかしながら、通常セルロース系バインダーは粉末として減水剤は固形分10−60重量%程度の水溶液状態で市販されているため、セルロース系バインダー使用系よりセルロース系バインダーと減水剤併用系の検討を行う場合、通常粉体用原料ホッパーよりセルロース系バインダーを押出組成物系内に投入を行うがセルロース系バインダーと減水剤の併用系ではセルロース系バインダー用原料ホッパーなどの既存の押出製造設備では水溶液である減水剤の添加ができず新たに減水剤を用いるための受け入れタンク、計量装置、移送装置等の減水剤投入用の大規模な専用設備が必要となる。また、セルロース系バインダーと減水剤を併用使用する場合個別に計量後2成分を系内に投入するため安定に均一な押出組成物を得ることが難しい。さらに減水剤が水溶液であることに起因する在庫用の大規模倉庫の確保や製品納入時の運送費等のコスト面、減水剤自身に関する経時変化等による成分変質などの貯蔵安定性に関する大きな問題点が残り満足ができるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決しセメント押出成形用混和剤として安価で押出成形時における流動性、押出成形物の保形性に優れる新規な粉体状のセメント押出成形用混和剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点を解決するため鋭意検討した結果、あらかじめ減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤、消泡剤を必要に応じてシリカ粉末に吸着させ粉粒状としセルロース系バインダーに混合した組成物を含む粉体状の押出成形用混和剤が安価で押出成形時における流動性や押出成形物の保形性に優れる新規なセメント押出成形用混和剤であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち本発明のセメント押出成形用混和剤は、セルロース系バインダー(A)、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)、消泡剤(C)およびシリカ粉末(D)を含むことを特徴とする。
また本発明のセメント押出成形物は、セルロース系バインダー(A)、粉末状消泡剤(C−1)および水を含有するセメント系組成物に、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)をシリカ粉末(D)に吸収させた粒粉状の混合物を添加し、押出成形したもの、或いはセルロース系バインダー(A)と水を含有するセメント系組成物に、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)、液状消泡剤(C−2)をシリカ粉末(D)に吸収させた粒粉状の混合物を添加し、押出成形したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明における押出成形用混和剤に用いるセルロース系バインダーとしてはアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースなどのセルロース系バインダーが優れた可塑性と保水性により高い成形性を成形物に得ることができることから好ましく、具体的には一般的に市販されているメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースが適する。セルロース系バインダーの粘度としては20℃、1%水溶液をB型粘度計で測定したところ100〜40000mPa・sを示すものが適性を示すが、中でも8000−40000mPa・sの高い粘性を示すセルロース系バインダーが優れた可塑性と保水性により高い保形性を成形物系内に導入することができるため使用添加量を低減できるという点より比較的水溶液粘度が高い値を示すセルロース系バインダーが最も好ましい。優れた流動性、保形性を示す押出成形物を得るためのセルロース系バインダーの添加量としては水硬性物質、骨材等の合計量に対して0.1−10.0重量%程度が一般的に使用されているが、コスト等の面を考慮に入れると添加量としては0.2−3.0重量%程度が望ましい。セルロース系バインダーの添加量が少なすぎる場合は十分な流動性、保形性を系内に導入できないことから優れた押出成形物を得ることができず、セルロース系バインダーの添加量が多すぎる場合は不必要にコスト高となるためである。
【0010】
本発明における押出成形用混和剤には、必要に応じてセルロース系バインダーに類似の成形性効果が期待できる他の水溶性バインダーを併せて使用することができる。他の水溶性バインダーとしてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル化デンプン、キサンタンガム、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いる減水剤としては一般に市販されているポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤が使用できる。
上記の減水剤においてはナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤が安全衛生面で指摘のあるホルマリンを製造原料として含むため、上記のホルマリンを製造原料として含まず単量体組成、重合体鎖長の検討により得られた押出成形物の養生時の凝結時間調節が可能である点や比較的他の減水剤に比べて減水分散効果の温度依存性が小さいことからポリカルボン酸系減水剤が望ましい。
【0012】
本発明に用いるノニオン系界面活性剤としては高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級脂肪族エチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、高級脂肪酸ソルビタンエステルらの単独もしくはそれらの組み合わせによる併用系が本発明時の押出成形時の減水剤と同様の効果が確認されることから使用が可能である。ゆえに押出成形時の流動性効果発現には減水剤、ノニオン系界面活性剤の単独使用、減水剤とノニオン系界面活性剤の併用使用いずれの場合においてもよい。優れた流動性、保形性を示す押出成形物を得るための押出成形用組成物に対する減水剤及び/またはノニオン系界面活性剤の添加量としては水硬性物質、骨材等の合計量に対して0.05−5.0重量%程度が一般的に使用されるが、コスト等の面を考慮に入れると添加量としては0.1−3.0重量%程度が望ましい。減水剤、ノニオン系界面活性剤を併用する場合添加比率は上記範囲内であれば特に制限されるものではない。これら減水剤及び/またはノニオン系界面活性剤の減水分散効果を系内に導入することにより水硬性物質や骨材を安定に分散させ押出成形時の流動性に大きな効果が認められ、減水剤及び/またはノニオン系界面活性剤を用いない系と比較し製造時の押出速度の向上や生産時の押出圧の低下が確認されるものである。
【0013】
本発明における押出成形用混和剤に用いる消泡剤としては市販されているエチレンオキシド、プロピレンオキシドを主成分とするポリオキシアルキレン系消泡剤、鉱物油系消泡剤もしくは変性シリコーン系等が使用可能である。これら消泡剤の中では粉体状消泡剤や液状消泡剤の両方が使用することができる。これらの消泡剤を押出成形用混和剤中組成中に用いることで消泡剤の系内への気泡連衡性調整効果によりセルロース系バインダー、減水剤併用系において問題となった押出成形時の成形品の表面性や寸法変化等の保形性の点で著しい改善がみられる。上記の消泡剤を併用使用することも可能である。優れた押出成形物を得るための消泡剤の添加量としては水硬性物質、骨材等の合計量に対して0.001−4.0重量%程度が必要であるが、コスト等の面を考慮に入れると添加量としては0.002−2.0重量%程度が望ましい。消泡剤の添加量が少なすぎる場合は保形性を系内に導入できないことから優れた押出成形物を得ることができず、消泡剤の添加量が多すぎる場合は流動性が打ち消される程度まで気泡連衡性調整効果を発揮し押出成形が不能となるためである。
【0014】
本発明における押出成形用混和剤に用いるシリカ粉末としては多孔質シリカ微粉末、シリカフラワー、シリカフューム、タルク、ベントナイト、雲母、ゼオライト、パーライト、高炉スラグ、フライアッシュ、ガラス、クレー等の一般的なシリカ系粉体が使用可能である。これらの中では比表面積が大きく吸油量に優れる多孔質シリカ微紛末の使用が望ましい。多孔質シリカ微粉末は含水珪酸、湿式シリカ、乾式シリカ、合成シリカ等の状態で各方面にて粉粒化剤として用いられているが、本発明においても最適なシリカ粉末の内の一つとして用いられる。多孔質シリカ微粉末の本発明における役割は液状の減水剤、消泡剤、ノニオン系界面活性剤の吸収による粉体化のため、多孔質シリカ微粉末の表面積の小さいものが適することよりBET法による比表面積が50−400m/g、コールターカウンター法による平均粒子径が30μm以下の非晶質二酸化珪素含有量が90重量%以上のものが好ましい。
【0015】
本発明において消泡剤として粉末状消泡剤を用いる場合は減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤をシリカ粉末に吸収させ粉粒状とする必要がある。これらの減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤とシリカ粉末による複合材の製造方法としては公知の製造方法を用いることができる。例えば減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤の30−80重量%の水溶液を作成し攪拌機付き混合用ファイバーミキサーに加え、さらに粉末シリカを加えて攪拌を加え十分に減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤水溶液をシリカ粉末に吸収させる。次いで得られた混合物を送風定温乾燥機等で乾燥後、ハンマーミル等を用いて粉砕し振動篩機等の分級工程を行った後減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤とシリカ粉末による複合材とする製造方法である。また、以下に述べる製造方法でもよい。ナウタミキサー混合機、ヘンシェルミキサー混合機、リボンミキサー混合機等にあらかじめ脱水しておいた減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤を系内に加え、さらにシリカ粉末を投入し攪拌下シリカ粉末に減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤を吸収させる。シリカ粉末に減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤を吸収させる際、減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤が流動性を持つ液体状である必要がある。このため減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤が室温で固体の場合、製造工程時系内温度を減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤の軟化点以上まで上昇させる必要がある。吸収工程終了後、得られた生成物をハンマーミル等で粉砕し振動篩機等の分級工程を行った後減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤とシリカ粉末による複合材とする製造方法である。シリカ粉末の吸油能力によるが減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤とシリカ粉末の混合比率(減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤とシリカ粉末:シリカ粉末)は1:0.5−1:99で製造されるのが好ましく、より好ましくは1:0.8−1:9である。
【0016】
本発明において消泡剤として液状消泡剤を用いる場合は減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤と液状消泡剤をシリカ粉末に吸収させ粉粒状とする必要がある。これらの複合体の製造方法としては上記と同様の製造方法にて対応が可能であるが、減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤、液状消泡剤、多孔質シリカ微粉末を含む混合状態で同時にシリカ粉末に吸収粉末化して目的の複合体を得る製法、減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤と液状消泡剤を個別にシリカ粉末に吸収粉末化して目的の複合体を得る製法のどちらを選択してもよい。
【0016】
本発明における最終的なセメント押出成形用混和剤を得る方法としては上記の製造方法により得られた複合体とセルロース系バインダー等とをナウタミキサー混合機やリボンミキサー混合機を用いて均一混合することにより最終的なセメント押出成形用混和剤とする。
【0017】
本発明により得られた押出成形用混和剤はセメント押出成形物に使用されるが、二水石膏、半水石膏を主成分とする石膏系成形物に対しても使用可能である。
【0018】
本発明により得られた押出成形用混和剤は一般的なセメント押出組成物に添加される。セメント押出組成物としてはセメント材料に普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等が使用され、骨材には通常の珪砂等が使用される。また、必要に応じて成形物の強度向上用に安全衛生面で影響がなく使用可能なガラス繊維等の無機繊維、パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維、軽量化材であるパーライト等の無機軽量骨材、ポリスチレン系等の有機発泡剤、有機質中空微小球等の有機軽量化材、さらには凝結時間調整剤である凝結遅延剤や凝結促進剤、流動化剤、分離低減剤、防錆剤、膨張剤、ポリマー混和剤、着色剤等を本発明に影響のでない範囲で必要により添加可能である。
【実施例】
【0019】
以下に本発明について具体的に実施例等を挙げ説明を行うが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0020】
(1)シリカ粉末を用いた複合体の製造方法
表1に記載の添加剤固形分配合組成で減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤及び/又は液状消泡剤の約60重量%水溶液を作成し、あらかじめ多孔質微小シリカ粉末を加えてあるファイバーミキサー(松下電器産業製MX−X53)に加え室温条件下10分間攪拌を加えることにより粗大粒子を細かく粉砕させながら多孔質微小シリカ粉末に十分減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤及び/又は液状消泡剤を吸収させた。攪拌終了後、送風定温乾燥機(東洋製作所製RRS620DA)中で系内温度を80℃に保ち十分乾燥させた後、100メッシュの篩を通過させることにより目的とする複合体1−7を得た。なお、本発明に関する複合体の製造方法は上記製造方法に限定されるものではない。
【0021】
【表1】

表中、添加剤1:マリアリムA−20(減水剤;日本油脂(株)製:ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル−無水マレイン酸系誘導体にてなるポリカルボン酸系減水剤)
添加剤2:マイテイ3000S(減水剤;花王製:ポリカルボン酸系減水剤)
添加剤3:MYL−10(ノニオン系界面活性剤;日光ケミカルズ製:ラウリン酸ポリエチレングリコール)
添加剤4:プルロニックL−61(液状消泡剤;旭電化製:ポリオキシアルキレン系消泡剤)
添加剤5:カープレックス#80(多孔質微小シリカ粉末;シオノギ製薬製:平均粒子径0.023μm、比表面積193m/g)
【0022】
(2)セメント押出成形評価
上記に述べた複合体1−7を用いた本発明である押出成形用混和剤を用いて行ったセメント押出成形評価結果を実施例1−9として、本発明品を用いないセメント押出成形評価結果を比較例1−5として表2、表3に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。また、セメント押出成形評価を行った際使用した材料は以下のものを使用し評価を行った。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント製)
(2)骨材(珪砂):シリカフラワー#200(瑞浪シリカ製)
(3)軽量骨材(パーライト):ハットリパーライト(ハットリ製)
(4)ポリプロピレン繊維:PZL(大和紡績製)
(5)故紙解砕物:PS(日本製紙製)
(6)セルロース系バインダー:マーポローズME−300000(松本油脂製薬製:ヒドロキシエチルメチルセルロース(20℃1重量%水溶液粘度10300mPa・s(B型粘度計30rpm)))
(7)粉末消泡剤:SNデフォーマー14HP(サンノプコ製:ポリエーテル系消泡剤)
(8)減水剤:マリアリムA−20(減水剤;日本油脂(株)ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル−無水マレイン酸系誘導体にてなるポリカルボン酸系減水剤)
(9)水:水道水
(10)複合物1−7:本発明品
【0023】
セメント押出成形評価としては以下の押出製造方法により成形物を作成し、表2、3に記載のセメント押出成形評価を行った。
【0024】
押出成形板製造方法
水以外の材料をレディゲミキサー(マツボー製M20)内に入れ、5分間攪拌を加え十分に混合した。次いで所定量の水を2分間で噴霧することによりセメント押出成形評価用材料を全て混合した。実施例1−9に用いる押出成形用混和剤はあらかじめセルロース系バインダー、粉末消泡剤、複合物1−7を所定の割合で均一に混合したものを用いた。また、比較例4,5で使用した減水剤は水溶液のためレディゲミキサー内で水を噴霧して混合する際に水にあらかじめ加え、水量を調節の上噴霧した。混合終了後、10Lの双腕ニーダー(本田鉄工製HBN−10D)にて3分間で十分混合を行った後、粘土様の高粘性物質を作成した。得られた粘土様の高粘性物質を真空押出成形機(本田鉄工製DE−50D)を用いて押出成形しセメント成形板を作成した。なお、真空押出成形機の系内温度を30℃真空度−0.096MPa以下に保ちダイス形状は40mm×10mmを使用し平板状の成形板を得た。この際、表2、3に記載のセメント押出成形に関する表面状態、吐出状態等の評価を行った。得られたセメント成形板を70℃で12時間一次養生を行い、さらに170℃で10時間オートクレーブ養生を行った後、養生後のセメント成形板を用いて表2、3に記載のセメント成形板に関する曲げ強度の測定を行った。なお、押出成形板製造並びに押出成形板に関する評価は室温を25℃に、湿度を30%に保たれた室内にて作業を行った。
【0025】
表面状態評価方法
セメント押出成形時にダイスより押出されるセメント成形板を目視により観察し以下の評価基準により表面状態の評価を行った。
○:セメント成形板の表面が平滑で良好
△:セメント成形板の表面に凹凸がやや見られる。
×:セメント成形板の表面に凹凸が見られる。もしくはセメント成形板にひび割れが見られる。
【0026】
吐出状態評価方法
セメント押出成形時にダイスより押出されるセメント成形板を目視により観察し以下の評価基準により吐出状態の評価を行った。
○:セメント成形板が安定に真っ直ぐに押出される
△:セメント成形板が押出される際やや押出速度に変化が見られる。
×:セメント成形板が押出される際押出速度に変化が見られ安定にセメント成形板が押出されない。
【0027】
寸法精度評価方法
セメント押出成形時にダイスより押出されたセメント成形板の寸法を精査しダイス寸法と比較することにより以下の評価基準により寸法精度の評価を行った。
○:セメント成形板の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以下
△:セメント成形板の幅、厚みの誤差が共に0.2mm以上0.3mm以下
×:セメント成形板の幅、厚みの誤差が共に0.3mm以上
【0028】
押出圧評価方法
セメント押出成形時に真空押出成形機に取り付けてある圧力計を目視により観察し押出圧の評価を行った。
【0029】
押出速度評価方法
セメント押出成形時に真空押出成形機より押出される際のセメント成形板の流れる速度を測定し押出速度の評価を行った。
【0030】
押出成形物硬度評価方法
セメント押出成形時にダイスより押出されたセメント成形板をクレー硬度計(日本碍子製)を用いて硬度を測定することにより押出成形物硬度評価の評価を行った。なお、表2、3に記載の数値が高いほど硬度が高いものを示す。
【0031】
曲げ強度評価方法
オートクレーブ養生後のセメント成形板をJIS R5201の評価方法に準じて測定を行い曲げ強度の評価を行った。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
表2、3より明らかなように従来の押出成形用混和剤を用いて押出成形を行った場合(比較例1−5)に比べて、本発明品を用いて押出成形を行った場合(実施例1−9)はハンドリング面に優れかつ押出成形時における流動性、押出成形物の保形性に優れることが確認された。
【発明の効果】
【0035】
本発明はあらかじめ減水剤及び/又はノニオン系界面活性剤、消泡剤を必要に応じてシリカ粉末に吸着させ粉粒状としセルロース系バインダーに混合した組成物を含む粉体状のセメント押出成形用混和剤である。本発明品はセメント押出成形用混和剤として使用する際、粉体として取り扱いに簡単で安価にセメント押出成形することができ、かつ従来技術に比べて優れた押出成形時の流動性や押出成形物の保形性を系内に導入することができる新規なセメント押出成形用混和剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系バインダー(A)、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)、消泡剤(C)およびシリカ粉末(D)を含むことを特徴とするセメント押出成形用混和剤。
【請求項2】
セルロース系バインダー(A)がアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のセメント押出成形用混和剤。
【請求項3】
減水剤(B−1)がポリカルボン酸系減水剤(1)、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤(2)、リグニンスルホン酸系減水剤(3)、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系減水剤(4)からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のセメント押出成形用混和剤。
【請求項4】
ノニオン系界面活性剤(B−2)が高級アルコールエチレンオキシド付加物、高級脂肪族エチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、高級脂肪酸ソルビタンエステルらからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のセメント押出成形用混和剤。
【請求項5】
セルロース系バインダー(A)、粉末状消泡剤(C−1)および水を含有するセメント系組成物に、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)をシリカ粉末(D)に吸収させた粉粒状の混合物を添加し、押出成形したことを特徴とするセメント押出成形物。
【請求項6】
セルロース系バインダー(A)と水を含有するセメント系組成物に、減水剤(B−1)及び/又はノニオン系界面活性剤(B−2)、液状消泡剤(C−2)をシリカ粉末(D)に吸収させた粉粒状の混合物を添加し、押出成形したことを特徴とするセメント押出成形物。

【公開番号】特開2006−232651(P2006−232651A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84749(P2005−84749)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】