説明

セメント混和剤及びその製造方法

【課題】セメント組成物の分散保持性に優れたセメント混和剤及びその製法を提供する。
【解決手段】オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜300のポリオキシアルキレン系単量体(I−M)由来の構成単位(I)を必須の構成単位として含む重合体(P)、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)、及び硫酸イオン(SO2−)を必須の構成要素としてなるセメント混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の早期劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量を減らしてその施工性と耐久性を向上させることが強く求められてきた中で、セメント配合物の品質、性能に多大なる影響を与えるセメント混和剤に対する技術革新が盛んに行われている。
【0003】
特にオキシアルキレン基を有するセメント混和剤については、従来のナフタレン系などのセメント混和剤に比べて高い減水性能を発揮するため、多くの提案がある。
例えば、特許文献1には特定の不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体からなる共重合体を含むセメント混和剤が開示されている。該文献では、優れたスランプ保持性能を有するセメント分散剤として、所定の範囲内の重量平均分子量及び所定の範囲内の重量平均分子量からピークトップ分子量を差し引いた値を有するポリカルボン酸系重合体(A)またはその塩を主成分とするセメント分散剤が開示されている。また重合開始剤として、アンモニアまたはアルカリ金属の過硫酸塩、過酸化水素、アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物といった水溶性重合開始剤の使用が開示され、この際、亜硫酸水素ナトリウムなどの促進剤を併用することもできる事が開示されている。一方、過硫酸またはその塩と有機還元性化合物を含む重合開始剤系については記載がなく、また重合開始剤系と得られる重合体の性能の関係についても記載がない。
【0004】
また特許文献2には、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル系単量体と不飽和モノカルボン酸系単量体から導かれた共重合体を主成分とするセメント分散剤が提案され、減水性能の改良が行われてきている。特許文献2には過酸化物と還元剤とを併用するレドックス系重合開始剤で重合を開始させることが好ましく、過酸化物には過硫酸塩が含まれる事が開示されている。一方該文献には、過酸化水素とL−アスコルビン酸との組合せ、過酸化水素とエリソルビン酸との組合せ、過酸化水素とモール塩との組合せ、過硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムとの組合せが特に好ましく、とりわけ好ましい組合せは過酸化水素とL−アスコルビン酸との組合せであると開示されている。このように、過硫酸またはその塩と有機還元性化合物を含む重合開始剤系の優位性については否定的であり、また重合開始剤系と得られる重合体の性能の関係についても記載がない。
【0005】
上記した公知のオキシアルキレン基を有するポリカルボン酸系分散剤においては、分散保持性が不足していて、経時によるセメント組成物の流動性の低下を十分に抑えきれない場合があるのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開平9−86990号公報
【特許文献2】特開2001−220417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリオキシアルキレン鎖を持つ重合体を必須とするセメント混和剤の中でも、従来のものより優れた分散保持性を達成できるセメント混和剤とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来から、オキシアルキレン基を側鎖に有するポリカルボン酸系分散剤が減水性能に秀でることは良く知られている。このようなポリカルボン酸系分散剤は一般的に、オキシアルキレン鎖を持つ単量体とカルボン酸系単量体とを共重合させて得られる。このようなポリマーで優れた分散保持性を達成するためには、カルボン酸系単量体の含有量をなるべく減らす必要があるが、重合性の高いカルボン酸系単量体の量を減らすと共重合体の収率が悪化し、結果として分散性も分散保持性も悪化する傾向にある。
【0009】
本発明者らは、収率良く重合体を得るために重合開始剤系に着目した所、特定の開始剤系を用いると重合体の収率に優れることを見出した。また結果として、その重合体を用いたセメント分散剤がセメント組成物の分散保持性に優れることを見出した。また結果として、従来注目されていなかったアスコルビン酸系化合物が、特定の条件下でセメント組成物の分散保持性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記に示すセメント混和剤、その製造方法、またその混和剤を用いたセメント組成物である。
【0011】
<i> ポリオキシアルキレン基由来の構成単位として、下記(一般式1)
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、式中RおよびRは同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは同一または異なって、炭素数2以上のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表わし、2種以上の場合はブロック状に結合していてもランダム状に結合していても良く、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜300の数を表わし、xは0〜2の整数を表し、yは0または1を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す)で表される構成単位(I)を必須の構成単位として含む重合体(P)、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)、及び硫酸イオン(SO2−)を必須の構成要素としてなるセメント混和剤。
【0014】
<ii> <i>に記載のセメント混和剤であって、重合体(P)に対するアスコルビン酸系化合物(AsA−D)の比が0.001〜5質量%、かつ硫酸イオン(SO2−)が0.01〜10質量%であることが好ましい。
【0015】
<iii> 前記重合体(P)が下記(一般式2)
【0016】
【化2】

【0017】
(但し式中、R、R5、R6は同一または異なって、水素原子、メチル基又は−(CH2)zCOOM基(−(CH2)zCOOMは、−COOMまたはその他の−(CH2)zCOOMと無水物を形成していても良い)を表わし、nは0〜2の整数を表わし、MおよびMは同一または異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表わす)で表わされる、カルボキシル基含有の構成単位(II)を必須の構成単位として含むことが好ましい。
【0018】
<iv> <i>から<iii>の何れかに記載のセメント混和剤において、ポリオキシアルキレン基由来の構成単位(I)が、下記(一般式3)
【0019】
【化3】

【0020】
(但し、式中RおよびRは同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは同一または異なって、炭素数2以上のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表わし、2種以上の場合はブロック状に結合していてもランダム状に結合していても良く、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜300の数を表わし、xは0〜2の整数を表し、yは0または1を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す)で表されるポリオキシアルキレン系単量体(I−M)由来であることが好ましい。
【0021】
<v> <i>から<iv>に記載のセメント混和剤において、カルボキシル基含有の構成単位(II)が下記(一般式4)
【0022】
【化4】

【0023】
(但し式中、R、R5、R6は同一または異なって、水素原子、メチル基又は−(CH2)zCOOM基(−(CH2)zCOOMは、−COOMまたはその他の−(CH2)zCOOMと無水物を形成していても良い)を表わし、nは0〜2の整数を表わし、MおよびMは同一または異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表わす)で表わされるカルボキシル基含有の不飽和単量体(II−M)由来の構成単位であることが好ましい。
【0024】
<vi> 前記重合体(P)の重合時にアスコルビン酸系化合物(AsA−D)及び過硫酸またはその塩(C)を添加すれば、<i>から<v>の何れかに記載のセメント混和剤を好適に製造できる。
【0025】
<vii> <i>から<v>の何れかに記載のセメント混和剤を含んでなるセメント組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、セメント混和剤として使用する際に流動保持性に寄与し、かつ使用する重合体の製造時に収率を向上できる重合開始剤系を用いた重合体の製造方法、その重合体を用いたセメント混和剤、またその混和剤を用いたセメント組成物に関する。本発明のセメント混和剤を用いたセメント組成物は流動性を長時間保持でき、施工性の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
ポリオキシアルキレン基由来の構成単位を必須とする重合体(P)は、前記(一般式1)で示される、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜300のポリオキシアルキレン系単量体由来の構成単位(I)を必須の構成単位として含んでいれば特に制限されないが、ポリオキシアルキレン基は重合体主鎖にグラフトされている構造が好ましい。
【0028】
また(一般式1)におけるオキシアルキレン基の種類は特に制限されないが、AOの炭素数としては、2〜18の範囲内が好ましく、2〜8の範囲がより好ましく、2〜4の範囲がとりわけ好ましい。また、水を媒体とした無機粉体の分散性能の観点からは、オキシアルキレン基の親水性を高める必要があり、オキシアルキレン基中に炭素数2のオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましい。この時、全オキシアルキレン基に占めるオキシエチレン基の比率としては50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
【0029】
また(一般式1)におけるオキシアルキレン基の平均付加モル数は特に制限されないが、平均付加モル数は1〜300が好ましく、無機粉体の分散性向上の観点からは2モル以上が好ましく、さらに好ましくは4モル以上、さらに好ましくは10モル以上、さらに好ましくは20モル以上である。オキシアルキレン鎖の製造の観点からは、オキシアルキレン基の上限は300モルが好ましく、さらに好ましくは200モル以下、さらに好ましくは150モル以下である。
【0030】
また任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物については、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれでも用いることができる。
【0031】
重合体(P)はポリオキシアルキレン基由来の構成単位(I)を有することを必須とし、カルボキシル基含有の構成単位(II)を有するものが、さらに好ましい。構成単位(I)の含有量が低すぎると分散保持性が悪化し、構成単位(II)の含有量が少なすぎると分散性能が発揮されにくいため、各構成単位の比率は、構成単位(I)/構成単位(II)=1〜90/99〜10(mol%)の範囲が好ましく、構成単位(I)/構成単位(II)=5〜60/95〜40(mol%)の範囲がより好ましく、構成単位(I)/構成単位(II)=10〜50/90〜50(mol%)の範囲がとりわけ好ましい(但し、構成単位(I)及び構成単位(II)の合計は100mol%である)。
【0032】
重合体(P)は、さらに後述の単量体(III−M)に由来する構成単位(III)を含むものでもよい。重合体(P)に構成単位(III)を含む場合の各構成単位の比率は、構成単位(I)を必須とするものであれば特に限定はない。ただし構成単位(I)の含有量が低すぎると分散保持性が悪化し、構成単位(II)の含有量が少なすぎると分散性能が悪化するため、各構成単位の比率は、構成単位(I)/(構成単位(II)+構成単位(III))=1〜80/99〜20(mol%)の範囲が好ましく、構成単位(I)/(構成単位(II)+構成単位(IV))=5〜60/95〜40(mol%)の範囲がより好ましく、構成単位(I)/構成単位(I)/(構成単位(II)+構成単位(III))=10〜50/90〜50(mol%)の範囲がとりわけ好ましい(但し、構成単位(I)、構成単位(II)および構成単位(III)の合計は100mol%である)。
<ポリオキシアルキレン基由来の構成単位を含む重合体(P)を得るための単量体>
前記構成単位(I)を与える単量体としては、下記(一般式3)
【0033】
【化5】

【0034】
(但し、式中RおよびRは同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは同一または異なって、炭素数2以上のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表わし、2種以上の場合はブロック状に結合していてもランダム状に結合していても良く、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜300の数を表わし、xは0〜2の整数を表し、yは0または1を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す)で表される不飽和単量体を含む不飽和単量体成分(以下「I−M」とも称する)で表される。
【0035】
不飽和単量体成分(I−M)としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類、シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類、フェノール、フェニルメタノール(ベンジルアルコール)、メチルフェノール(クレゾール)、p−エチルフェノール、ジメチルフェノール(キシレノール)、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、フェニルフェノール、ナフトールなどの炭素数6〜20の芳香族アルコール類のいずれかに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合したポリアルキレングリコール類と(メタ)アクリル酸、クロトン酸とのエステル化物を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステルが好ましい。さらにビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールなどの不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物を挙げることができ、これら1種または2種以上を用いることができる。これらの単量体の中でも特に(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールを用いた化合物が好ましい。なお上記の不飽和エステル類および不飽和エーテル類は、アルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどの炭素数2〜18のアルキレンオキシドの中から選ばれる任意の1種、あるいは2種以上のアルキレンオキシドを付加させてもよい。2種以上を付加させる場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加などのいずれであってもよい。
【0036】
(一般式3)において、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であれば良く、この炭素数1〜20の炭化水素基として具体的には、炭素数1〜20のアルキル基(脂肪族アルキル基又は脂環族アルキル基)、炭素数6〜20のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられるが、炭化水素基の炭素数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、Rが炭化水素基の場合の炭素数としては、1〜18が好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜4がとりわけ好ましく、R2がメチル基あるいは水素原子の場合が最も好ましい。
【0037】
前記構成単位(II)を与える単量体としては、下記(一般式4)
【0038】
【化6】

【0039】
(但し式中、R、R5、R6は同一または異なって、水素原子、メチル基又は−(CH2)zCOOM基(−(CH2)zCOOMは、−COOMまたはその他の−(CH2)zCOOMと無水物を形成していても良い)を表わし、nは0〜2の整数を表わし、MおよびMは同一または異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表わす)で表わされる。
【0040】
その具体例としては、不飽和モノカルボン酸系単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸系単量体として、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が、さらにこれらの無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの塩が、重合性の観点から好ましい。また、これらの単量体は2種類以上併用しても良い。
【0041】
上記単量体(I−M)や(II−M)と異なりかつ(I−M)や(II−M)と共重合可能な不飽和単量体(III−M)をさらに用いることも好ましい。このような単量体(III−M)の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;前記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)オキシアルキレンと前記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;前記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリオキシアルキレンとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート、等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)オキシアルキレンと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリオキシアルキレンとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレンジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)オキシアルキレンジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0042】
請求項1から2に記載のアスコルビン酸系化合物(AsA−D)は、アスコルビン酸及びその誘導体を示す。具体的な例としては、アスコルビン酸の異性体であるL−xylo−AsA(L−アスコルビン酸)、L−アスコルビン酸の異性体であるD−xylo−AsA、L−arabo−AsA、D−arabo−AsA(エリソルビン酸);L−アスコルビン酸及びその異性体のアルカリ金属(Na、Kなど)塩、アルカリ土類金属(Ca、Mgなど)塩、アンモニウム基又は有機アミン基塩;ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル等の、L−アスコルビン酸及びその異性体のエステル;L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等の、L−アスコルビン酸及びその異性体のリン酸エステル及びその塩;モノデヒドロアスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸等の、L−アスコルビン酸及びその異性体の酸化物;等が挙げられる。これらのどの化合物を使用しても良いが、セメント混和剤は水溶液の形で提供される事が多いため、還元性有機化合物(AsA−D)も水溶性であればより好ましい。
【0043】
前記アスコルビン酸系化合物(AsA−D)は、セメント混和剤として使用した際に流動保持性を発揮する。セメント混和剤に必要量添加して用いてもよいが、後述の実施例と比較例に示すとおり、重合体(P)の重合時に添加する方がより効果的である。その際、(AsA−D)は、過硫酸またはその塩(C)との酸化還元反応によりラジカルを発生できるため、開始剤系の構成要素として使用できる。またアスコルビン酸系化合物(AsA−D)と過硫酸またはその塩(C)を含んでなる開始剤系を用いると、重合体(P)の収率が公知の開始剤系より向上することが見出された。
【0044】
アスコルビン酸系化合物(AsA−D)がセメント組成物中で流動保持性を示す機構はまだ明らかではないが、セメント組成物に多量に添加するとセメント組成物硬化体の早期強度が低下することがあった。アスコルビン酸系化合物はグルコン酸に構造が類似しており、グルコン酸、グルコース等の化合物はセメント組成物の硬化を遅延することが知られている。よって、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)も、セメント組成物の初期水和に何らかの影響を及ぼし、セメント組成物の流動保持性を向上させている可能性が考えられる。セメント組成物の流動保持性向上には、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)と硫酸イオンを併用することがより効果的であるが、この原因についてもまだ明らかでない。
【0045】
セメント混和剤中のアスコルビン酸系化合物(AsA−D)の量としては、前記のように多すぎるとセメント組成物硬化体の早期強度が低下することがあり、また少なすぎるとセメント組成物の流動保持性が向上しないため、重合体(P)に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.05〜1質量%がさらに好ましい。
【0046】
請求項1に記載の硫酸イオン(SO2−)は、セメント混和剤に硫酸などを用いて必要量添加して用いてもよいが、重合体(P)の重合時にアスコルビン酸系化合物(AsA−D)と共に、過硫酸またはその塩として添加し、還元して硫酸イオンを発生させると効率的である。
【0047】
請求項6に記載の過硫酸とは、ペルオキソ硫酸(HSO)とペルオキソ二硫酸(H)を示す。過硫酸またはその塩(C)としては、過硫酸のアルカリ金属(Na、Kなど)塩、アルカリ土類金属(Ca、Mgなど)塩、アンモニウム基又は有機アミン基塩が挙げられ、これらの1種以上を用いればよい。化合物の安定性の面からはペルオキソ硫酸よりもペルオキソ二硫酸が好ましく、反応装置を腐食しないためには酸よりも塩が好ましい。よって、ペルオキソ二硫酸の塩がより好ましい化合物である。
【0048】
セメント混和剤中の硫酸イオン(SO2−)の量としては、多すぎるとセメント組成物の硬化に影響があることが知られており、また少なすぎるとセメント組成物の流動保持性が向上しないため、重合体(P)に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。またセメント混和剤中で、硫酸イオンが硫酸ナトリウムなどの塩になって析出することがある。これらは硫酸イオンとは言えないが、硫酸イオン由来の化合物であり、撹拌等で容易に再溶解できることから、セメント混和剤中の硫酸イオン(SO2−)の量に組み入れて計算する。
【0049】
請求項6に示す、前記重合体(P)の重合時に使用するアスコルビン酸系化合物(AsA−D)および過硫酸またはその塩(C)の比((AsA−D)/C)は、重合体(P)の収率やそれを用いたセメント混和剤の性能に影響するため、重要である。アスコルビン酸系化合物(AsA−D)と過硫酸またはその塩(C)を併用することにより、単量体(I−M)の重合速度が向上し、結果として重合体(P)を短時間で収率よく得られる。また後述の実施例と比較例で示すように、単量体(I−M)と単量体(II−M)を共重合する際、本願記載の開始剤系と公知の開始剤系を比較すると、本願記載の開始剤系では単量体(I−M)と単量体(II−M)共に重合速度が速く、組成の均一な共重合体が短時間に高収率で得られた。一方公知の開始剤系では、単量体(I−M)と単量体(II−M)の重合速度の差が大きく、得られた共重合体の組成が不均一になったり、重合速度の速い単量体が消尽した所で重合が終了して収率が悪化することがあった。結果として、本願記載の開始剤系により得られた重合体を用いたセメント混和剤は、公知の開始剤系により得られた重合体を用いたセメント混和剤よりも、セメント組成物の流動保持性に優れるものとなった。
【0050】
((AsA−D)/C)は重合体(P)の合成に用いる単量体(I−M)、(II−M)、(III−M)の種類によって最適比が異なるが、モル比で((AsA−D)/C)=1/0.25〜1/20が好ましく、1/2〜1/10がより好ましく、1/1〜1/5が更に好ましい。
【0051】
本発明の重合体(P)を得るには、前記単量体成分を重合させれば良く、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)および過硫酸またはその塩(C)を含む重合開始剤系を用いて重合することがより好ましい。共重合は、溶液重合や塊状重合などの公知の方法で行なうことができる。また共重合は回分式、半回分式、管型連続式、撹拌槽型連続式、およびそれらの複数の組み合わせのどの方法でも行なうことができる。
共重合の際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族或いは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられるが、原料単量体及び得られる重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0052】
本発明の重合体(P)の製造方法においては、重合の際に必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。重合の際に連鎖移動剤を用いると、得られる重合体(P)の分子量調整が容易となる。
【0053】
連鎖移動剤としては、分子量の調整ができる化合物であればよく、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等を用いることができる。
【0054】
さらに、重合体(P)の分子量調整のためには単量体(III−M)として連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。具体的には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のαβ−不飽和ジカルボン酸化合物、およびその誘導体、ならびにそれらの塩(さらに詳しくは、誘導体の例としては、例えば、炭素数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;炭素数1〜30のアミンとのハーフアミド類;炭素数1〜30のアミノアルコールとのハーフアミド類もしくはハーフエステル類;前記アルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均1〜300モル付加させた化合物(x)とのハーフエステル類;前記化合物(x)の片末端の水酸基をアミノ化した化合物とのハーフアミド類;炭素数2〜18のグリコールもしくはこれらグリコールの平均付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;炭素数2〜18のグリコールもしくはこれらグリコールの平均付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとマレアミド酸とのハーフアミド類;等が挙げられ、塩の例としては、例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩);アリルアルコール、アリルスルホン酸(塩)等のアリル化合物、およびそれらの平均付加モル数2〜300で炭素数2〜18のアルキレンオキサイド付加物;メタリルアルコール、メタリルスルホン酸(塩)等のメタリル化合物、およびそれらの平均付加モル数2〜300で炭素数2〜18のアルキレンオキサイド付加物;等が挙げられる。
【0055】
なお、前記例示した連鎖移動剤のうち2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。前記連鎖移動剤は、重合の際に、常に反応系中に存在するようにすることが好ましい。特に、前記連鎖移動剤としてチオール系連鎖移動剤あるいは低級酸化物およびその塩を用いる場合には、連鎖移動剤を一括投入せずに、滴下等により連続的に投入するか、分割投入するなど、長時間かけて添加することが有効である。
【0056】
前記連鎖移動剤を反応系中に供給する際には、酸化性の原料と異なるラインで供給することが好ましく、特に前記連鎖移動剤としてチオール系連鎖移動剤あるいは低級酸化物およびその塩を用いる場合には、酸化性の原料と異なるラインで供給することが有効である。
【0057】
例えば、チオール系連鎖移動剤を過硫酸またはその塩(C)と同じラインで供給した場合、両者が反応し、過硫酸またはその塩(C)が反応開始剤として作用する前に活性を失ってしまうことになる。
【0058】
重合温度に特に制限はないが、あまり温度が低すぎると単量体の溶解性が低下することがあり、高温では単量体や反応生成物が分解する恐れがあるため、重合温度は0〜200℃が好ましく、20〜150℃がより好ましく、40〜100℃が最も好ましい。
【0059】
重合圧力はラジカル重合反応に対する影響が小さいため任意でよいが、溶媒や単量体の沸点に合わせて適宜選ばれ、0.01〜10atmが好ましい。
【0060】
重合時間は、0.5〜12時間の範囲が適当であるが、好ましくは0.5〜10時間、さらに好ましくは1〜8時間の範囲が良い。重合時間が、この範囲より、短すぎたり長すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0061】
重合をpH5以上で行なった場合、重合率の低下が起こると同時に、共重合性が悪くなり、セメント混和剤として用いた際に分散性が低下する。他方で、重合中にpHが低すぎると原料単量体や生成重合体が分解することがある。よって、重合中の系のpHは1〜5が好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属および二価金属の水酸化物および炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行なうことができる。
【0062】
このようにして得られた重合体(P)は、そのままでもセメント分散剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、さらに重合体(P)をアルカリ性物質で中和して用いても良い。このようなアルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン等が好ましいものとして挙げられる。
【0063】
重合体(P)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で1,000〜500,000の範囲が適当であるが、5,000〜300,000の範囲が好ましく、10,000〜200,000の範囲がより好ましい。この重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント分散剤が得られる。ただしGPC法は相対分子量測定法であるため、上記に示した値は、後に示す特定のGPC条件で測定した値とする。
【0064】
本発明の重合体(P)は、各種水硬性材料、即ち、セメント及び石膏等のセメント以外の水硬性材料に分散剤として用いることができる。そして、水硬性材料と水と重合体(P)とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。上記の水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であるが、使用するセメントには特に限定はない。たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加しても良い。又、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0065】
本発明の重合体(P)を含むセメント組成物において、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比にはとりたてて制限はなく、単位水量100〜185kg/m3、使用セメント量250〜800kg/m3、水/セメント比=10〜70重量%、好ましくは単位水量120〜175kg/m3、使用セメント量270〜800kg/m3、水/セメント比=20〜65%が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0066】
本発明の重合体(P)を含むセメント組成物において、重合体(P)の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜2.0%、好ましくは0.02〜1.0%、より好ましくは0.05〜0.5%となる比率の量を添加すれば良い。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では性能的に不十分であり、逆に2.0%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。又、本発明の重合体(P)は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0067】
本発明の重合体(P)は、水溶液の形態でそのままセメント分散剤の主成分として使用することができるが、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。さらに、公知のセメント分散剤と組み合わせて使用しても良い。併用可能な公知のセメント分散剤としては、特に限定はなく、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系(特開平1−113419号公報参照)等が挙げられる。又、ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、(a)成分としてポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/又はその塩、(b)成分としてポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/又はその加水分解物及び/又はその塩、(c)成分としてポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテル系化合物とポリオキシアルキレン系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩からなるセメント用分散剤(特開平7−267705号公報参照);A成分として(メタ)アクリル酸のポリオキシアルキレンエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤(特許公報第2508113号参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステルあるいはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体(特開昭62−216950号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体(特開平1−226757号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体(特公平5−36377号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体(特開平4−149056号公報参照);(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、分子中にアミド基を有するαβー不飽和単量体からなる共重合体(特開平5−170501号公報参照);ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体(特開平6−191918号公報参照);アルコキシポリオキシアルキレンモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体あるいはその加水分解物又はその塩(特開平5−43288号公報参照);ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体あるいはその塩又はそのエステル(特公昭58−38380号公報参照);ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報参照);スルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び必要に応じてこれと共重合可能な単量体からなる共重合体あるいはその塩(特開昭62−119147号公報参照);アルコキシポリオキシアルキレンモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−271347号公報参照);アルコキシポリオキシアルキレンモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物(特開平6−298555号公報参照);ポリオキシアルキレンモノエステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体及び(メタ)アリルスルホン酸系単量体の中から選ばれる1種以上の単量体との共重合体(特開平7−223852号公報参照);等が挙げられる。尚、上記公知のセメント分散剤は、複数の併用も可能である。
【0068】
尚、上記公知のセメント分散剤を併用する場合、本発明の重合体(P)と公知のセメント分散剤との配合重量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。
【0069】
さらに、本発明の重合体(P)からなるセメント分散剤は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)と組み合わせて使用することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、バラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アビトース、リポーズ、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、たとえば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。尚、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0070】
特に好適な実施形態としては、次の<1>〜<7>が挙げられる。
<1> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、ii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、i)のセメント分散剤に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
<2> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等参照)、iii)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、i)のセメント分散剤とii)の共重合体との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。尚、iii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、i)のセメント分散剤とii)の共重合体との合計量に対して0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
<3> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。尚、i)のセメント分散剤とii)のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
<4> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。尚、i)のセメント分散剤とii)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
<5> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、i)のセメント分散剤とii)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10:90〜99.99:0.01の範囲が好ましく、50:50〜99.9:0.1の範囲がより好ましい。この組み合わせからなるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
<6> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。尚、i)のセメント分散剤とii)の遅延剤との配合重量比としては、50:50〜99.9:0.1の範囲が好ましく、70:30〜99:1の範囲がより好ましい。
<7> i)本発明の共重合体(P)からなるセメント分散剤、ii)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。尚、促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。尚、i)のセメント分散剤とii)の促進剤との配合重量比としては、10:90〜99.9:0.1の範囲が好ましく、20:80〜99:1の範囲がより好ましい。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。尚、例中、特にことわりのない限り、%は重量%を、又、部は重量部を表すものとする。
<重合体の分子量および分子量分布測定条件>
装置: Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム: TSKgel ガードカラム(内径6.0×40mm)+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL(各内径7.8×300mm)
検出器: 示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液: アセトニトリル/酢酸ナトリウム(50mM)イオン交換水溶液=40/60(容積%)の混合溶液に酢酸を加えてpH6.0に調整したもの
流量: 1.0ml/分
カラム・検出器温度: 40℃
測定時間: 45分
試料液注入量: 100μl(試料濃度0.5wt%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル: 東ソー(株)製ポリエチレングリコール Mp=272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470の9点を使用
検量線: 上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成
解析法: 得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて水平に安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。ただしモノマーピークやモノマー由来の不純物ピークがポリマーピークに一部重なって測定された場合、当該ピークとポリマーピークの重なり部分の最凹部あるいは屈曲点において垂直分割して分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。また複数種類のモノマーピークが検出された場合は、最も大きい分子量のモノマーピークが除外されるように、ポリマーとモノマーのピークを分割した。ダイマー以上のオリゴマーが検出された場合はポリマー部に含めた。また、(ポリマーピークの面積)/(ポリマーピークの面積+モノマーピークの面積)の比を「ポリマー分」とし、ポリマー収率の目安とした。
<実施例1−1>
反応装置は温度計、高さ2.5cm幅11cmの羽根を備えた撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えた内径16cmの3Lガラス製反応装置とし、特に記載のない限り反応条件は反応温度58℃、撹拌速度200rpm、系内への窒素導入量100mL/分とした。3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシドの平均付加モル数50)517.826g、アクリル酸0.935g、水267.241gを反応装置内に仕込み、58℃まで加温した。続いてアクリル酸31.238gと水82.759gの混合水溶液を3時間、過硫酸アンモニウム3.07gに水を加えて合計50gに調整した水溶液を3.5時間、L−アスコルビン酸0.889gと3−メルカプトプロピオン酸2.142gに水を加えて合計50gに調整した水溶液を3.5時間かけて、それぞれ反応装置内に均一速度で滴下した。ただし、加温開始から滴下開始までの時間は2時間以内になるよう調整した。すべての滴下終了後更に1時間58℃を維持して重合反応を完結させ、冷却して実施例1−1のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<実施例1−2から1−3>
実施例1−1と同様にして3−メルカプトプロピオン酸の量のみを変更し、実施例1−2から1−3のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<比較例1−1>
反応装置は温度計、高さ2.5cm幅11cmの羽根を備えた撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えた内径16cmの3Lガラス製反応装置とし、特に記載のない限り反応条件は反応温度58℃、撹拌速度200rpm、系内への窒素導入量100mL/分とした。3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシドの平均付加モル数50)517.826g、アクリル酸0.935g、水267.241gを反応装置内に仕込み、58℃まで加温した。続いてアクリル酸31.238gと水82.759gの混合水溶液を3時間、過硫酸アンモニウム3.07gに水を加えて合計50gに調整した水溶液を3.5時間、3−メルカプトプロピオン2.142gに水を加えて合計50gに調整した水溶液を3.5時間かけて、それぞれ反応装置内に均一速度で滴下した。ただし、加温開始から滴下開始までの時間は2時間以内になるよう調整した。すべての滴下終了後更に1時間58℃を維持して重合反応を完結させ、冷却して比較例1−1のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<比較例1−2から1−3>
比較例1−1と同様にして3−メルカプトプロピオン酸の量のみを変更し、比較例1−2から1−3のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<比較例2−1>
反応装置は温度計、高さ2.5cm幅11cmの羽根を備えた撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えた内径16cmの3Lガラス製反応装置とし、特に記載のない限り反応条件は反応温度58℃、撹拌速度200rpm、系内への窒素導入量100mL/分とした。3−メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキシド付加物(エチレンオキシドの平均付加モル数50)517.826g、アクリル酸0.935g、水267.241gを反応装置内に仕込み、58℃まで加温した。続いて反応装置内に30%過酸化水素水1.525gに水を加えて合計22.879gに調整した水溶液を添加し、58℃まで加温した。続いてアクリル酸31.238gと水59.880gの混合水溶液を3時間、L−アスコルビン酸0.592gと3−メルカプトプロピオン酸1.785gに水を加えて合計100gに調整した水溶液を3.5時間かけて、それぞれ反応装置内に均一速度で滴下した。ただし、加温開始から滴下開始までの時間は2時間以内とした。すべての滴下終了後更に1時間58℃を維持して重合反応を完結させ、冷却して比較例2−1のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<比較例2−2から2−3>
比較例2−1と同様にして3−メルカプトプロピオン酸の量のみを変更し、比較例2−2から2−3のセメント混和剤を得た。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<比較例3−1>
比較例1−1と同様にして比較例3−1のセメント混和剤を得た。ただし、3−メルカプトプロピオン酸の量を変更し、重合温度を70℃とし、またアクリル酸水溶液の滴下時間を5時間、過硫酸水溶液の滴下時間を5.5時間、3−メルカプトプロピオン酸水溶液の滴下時間を5.5時間に変更した。得られたポリマーの物性を表1に示した。
<実施例2−1>
比較例3−1で製造した重合体水溶液の半量に、L−アスコルビン酸0.444gを溶解し、実施例2−1のセメント混和剤を得た。
<重合結果>
表1に示した重合結果から、実施例1−1から1−3は、同程度のMwの比較例1−1から1−3および比較例2−1から2−3と比較してポリマー分が多く、ポリマーの収率が良いことが明らかとなった。また実施例1−2と比較例3−1を比較すると、ポリマー分はほぼ同程度か実施例1−2がやや優れ、重合時間はそれぞれ4.5h、7hであり、実施例1−2が生産性に優れることが明らかであった。
【0072】
【表1】

【0073】
<固形分測定>
性能試験に用いる重合体は、下記の手順で不揮発分を測定し、不揮発分をセメント混和剤として濃度を計算した。
【0074】
アルミカップにセメント混和剤水溶液を約0.5g量り採り、イオン交換水約1gを加えて均一に拡げた。これを窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥し、乾燥前後の重量差から不揮発分を測定した。
<コンクリート試験>
以下に示すコンクリート原料、配合、混練法により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料の混練を実施した。実施例1−1から1−3、実施例2−1、比較例1−1から1−3、比較例2−1から2−3、比較例3−1で得られたセメント混和剤を用いて、所定のスランプフロー値を得るための混和剤添加量と、混練直後、混練15分後および混練30分後のスランプ値、スランプフロー値および空気量を評価した。セメント質量に対するセメント混和剤の配合量は混和剤の不揮発分量で計算し、質量%表示で表2に示した。また必要に応じてAE剤であるMA303(ポゾリス物産製)の有姿1wt%水溶液を必要量配合し、空気量を4プラスマイナス0.5%に調整した。
<使用原料>
セメントは宇部三菱セメント社、住友大阪セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。粗骨材には青梅産砕石、細骨材には小笠山産山砂、君津産山砂を8/2で混合して使用した。練り水には上水道水を用いた。
<コンクリート配合>
単位セメント量 : 170.0 Kg/m
単位水量 : 320.0 Kg/m (ポリマー、AE剤などの混和剤を含む)
単位細骨材量 : 846.0 Kg/m
単位粗骨材量 : 942.0 Kg/m
水セメント比(W/C): 53.1%
細骨材率(s/a): 48.0%
<材料の練り混ぜ>
セメント、細骨材、粗骨材をミキサー内に仕込み、10秒間混練した。混練を止め、所定量の水と混和剤をミキサー内に仕込み、すぐに120秒間混練した。練り上がったフレッシュコンクリートを排出し、評価試験を行った。また評価試験においては、水と混和剤を仕込んだ後の混練開始時間をゼロ分とした。
<フレッシュコンクリートの評価>
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプ値、スランプフロー値、空気量の測定を以下の方法により実施した。
スランプ値 : JIS A 1101−1998
スランプフロー値 : JIS A 1150−2001
空気量 : JIS A 1128−1998
評価結果を表2に示した。
<コンクリート評価結果>
実施例1−2、比較例1−2、比較例2−2で得られた重合体は、表1に示したようにMwが約3万とほぼ同一であり、これらをセメント混和剤として用いて性能を比較した。表2に示したコンクリート試験結果から、混練直後のコンクリートでは、同一の混和剤添加量でほぼ同一のスランプ値・スランプフロー値であり、同程度の流動性が得られることがわかった。一方、流動性の経時安定性を示すスランプロス値・フローロス値(その測定時間でのスランプ値・フロー値と、練り上がり直後のスランプ値・フロー値の差)を比較すると、実施例1−2は比較例1−2、比較例2−2に対してスランプロス値・フローロス値が小さく、コンクリートの流動性を長時間保持する性能が高いことが明らかとなった。
【0075】
実施例1−2、実施例2−1(比較例3−1にL−アスコルビン酸を加えたもの)、比較例3−1は何れもポリマー分は同等である。表2に示したコンクリート試験結果から、混練直後のコンクリートでは、同一の混和剤添加量でほぼ同一のスランプ値・スランプフロー値であり、同程度の流動性が得られることがわかった。一方、スランプロス値・フローロス値は 実施例1−2 < 実施例2−1 < 比較例3−1 という結果であった。実施例2−1 < 比較例3−1 であるからL−アスコルビン酸は流動保持性の向上に寄与している。また、実施例1−2 < 実施例2−1 であるから、L−アスコルビン酸を共重合体(P)の製造時に添加した実施例1−2が、より流動保持性に優れることがわかった。
【0076】
【表2】

【0077】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン基由来の構成単位として、下記(一般式1)
【化1】

(但し、式中RおよびRは同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは同一または異なって、炭素数2以上のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表わし、2種以上の場合はブロック状に結合していてもランダム状に結合していても良く、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜300の数を表わし、xは0〜2の整数を表し、yは0または1を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す)で表される構成単位(I)を必須の構成単位として含む重合体(P)、アスコルビン酸系化合物(AsA−D)、及び硫酸イオン(SO2−)を必須の構成要素としてなるセメント混和剤。
【請求項2】
重合体(P)に対するアスコルビン酸系化合物(AsA−D)の比が0.001〜5質量%、かつ硫酸イオン(SO2−)が0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載のセメント混和剤。
【請求項3】
前記重合体(P)が下記(一般式2)
【化2】

(但し式中、R、R5、R6は同一または異なって、水素原子、メチル基又は−(CH2)zCOOM基(−(CH2)zCOOMは、−COOMまたはその他の−(CH2)zCOOMと無水物を形成していても良い)を表わし、nは0〜2の整数を表わし、MおよびMは同一または異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表わす)で表わされる、カルボキシル基含有の構成単位(II)を必須の構成単位として含むことを特徴とする、請求項1から2の何れかに記載のセメント混和剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン基由来の構成単位(I)が、下記(一般式3)
【化3】

(但し、式中RおよびRは同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、AOは同一または異なって、炭素数2以上のオキシアルキレン基の1種又は2種以上を表わし、2種以上の場合はブロック状に結合していてもランダム状に結合していても良く、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1〜300の数を表わし、xは0〜2の整数を表し、yは0または1を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す)で表されるポリオキシアルキレン系単量体(I−M)由来であることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のセメント混和剤。
【請求項5】
カルボキシル基含有の構成単位(II)が下記(一般式4)
【化4】

(但し式中、R、R5、R6は同一または異なって、水素原子、メチル基又は−(CH2)zCOOM基(−(CH2)zCOOMは、−COOMまたはその他の−(CH2)zCOOMと無水物を形成していても良い)を表わし、nは0〜2の整数を表わし、MおよびMは同一または異なって、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表わす)で表わされるカルボキシル基含有の不飽和単量体(II−M)由来の構成単位であることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のセメント混和剤。
【請求項6】
前記重合体(P)の重合時にアスコルビン酸系化合物(AsA−D)及び過硫酸またはその塩(C)を添加して製造することを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載のセメント混和剤の製造方法。
【請求項7】
請求項1から5の何れかに記載のセメント混和剤を含んでなるセメント組成物。

【公開番号】特開2007−99530(P2007−99530A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287894(P2005−287894)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】