説明

セメント用添加剤及びセメント組成物

【課題】セメント凝結への影響が小さく、セメント組成物に対する高い初期流動性能と流動保持性の両方を兼ね備えたセメント用添加剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される単量体(a)及び一般式(2)で示される単量体(b)を必須構成単量体とする水溶性ビニル共重合体(A)を含有するセメント用添加剤。


[R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基;aは0または1;A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基;nはA1Oの平均付加モル数で1〜300の数。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント用添加剤及びこれを用いたセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の超高層化技術等の発展に伴い、コンクリートの高強度化の必要性から、様々なセメント用添加剤の開発が行われてきた。これらの内、コンクリート中の水分を低減することでコンクリートの高強度化を図る添加剤として、スルホアルキル(メタ)アクリレート類やスルホアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類を必須構成単量体とする重合体が提案されている(特許文献1)。
しかし、この重合体はリグニン系等の従来の分散剤に比べて、セメント組成物の流動性が経時的に低下しにくいものではあるが、現場への運搬や打設等に要する時間と照らし合わせると、決して十分なものではなく、また初期流動性も従来の分散剤と比較して高いとは言い難いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−119147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、セメント凝結への影響が小さく、セメント組成物に対する高い初期流動性能と流動保持性の両方を兼ね備えたセメント用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、一般式(1)で示される単量体(a)及び一般式(2)で示される単量体(b)を必須構成単量体とする重量平均分子量が、5,000〜300,000の水溶性ビニル共重合体(A)を含有するセメント用添加剤並びに該セメント用添加剤、セメント、水及び骨材を含有するセメント組成物である。
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基;aは0または1;A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基;nはA1Oの平均付加モル数を表す1〜300の数であり、nが2以上の場合のn個のA1Oは同一でも異なっていてもよい。Mはf価のカチオンを表し、fは1または2の整数である。]
【0008】
【化2】

【0009】
[式中、R3とR4はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基;bは0または1;A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基;mはA2Oの平均付加モル数を表す1〜300の数であり、mが2以上の場合のn個のA2Oは同一でも異なっていてもよい。R5は炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【発明の効果】
【0010】
本発明のセメント用添加剤は、従来のものよりセメント分散性が高いため、少量添加でより高い流動性を示すセメント組成物が得られる。しかも、得られたセメント組成物の流動性は長時間にわたり流動性が低下しにくく変化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における単量体(a)を表す上記の一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。(a)の重合性の観点から、R1として好ましいのは水素原子であり、セメント分散性の観点からR2として好ましいのはメチル基である。
【0012】
また、A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、1,2−または1,3−オキシプロピレン基、1,2−、1,3−または1,4−オキシブチレン基が挙げられる。これらの内、セメント分散性の観点から好ましいのはオキシエチレン基と1,2−オキシプロピレン基であり、特に好ましいのは1,2−オキシプロピレン基である。
nはA1Oの平均付加モル数を表し、通常1〜300の数であり、セメント組成物の流動性と流動保持性の観点から、好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜15、とりわけ好ましくは5〜10である。また、
nが2以上の場合、n個のA1Oは同一でも異なっていてもよく、異なる場合は−(A1O)n−はランダム付加、ブロック付加または交互付加のいずれの付加形式でもよい。
【0013】
aは0または1であり、単量体(a)の重合性の観点から好ましくは0である。
【0014】
一般式(1)においてMで表される1価または2価のカチオンとしては、プロトン、アルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム及びリチウム)カチオン、アルカリ土類金属(例えばカルシウム、マグネシウム及びバリウム)カチオン、炭素数1〜24の有機アミンにプロトンが付加した有機アミンカチオン及びアンモニアが挙げられる。
【0015】
有機アミンカチオンを構成する炭素数1〜24の有機アミンとしては、炭素数1〜20の脂肪族モノ又はジアミン、炭素数4〜24の脂環式モノ又はジアミン、炭素数4〜10の複素環式モノ又はジアミン、炭素数2〜24のアルカノールアミン及びこれらの炭素数2〜4のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物等が挙げられる。
【0016】
炭素数1〜20の脂肪族モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルオクチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン及びジメチルセチルアミン等のアルキル基の炭素数が1〜18のモノ−、ジ−又はトリ−アルキルアミンが挙げられる。
炭素数2〜20の脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン及び1,10−ジアミノデカン等が挙げられる。
炭素数4〜24の脂環式モノアミンとしては、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロオクチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン及びN−エチルシクロヘキシルアミン等のシクロアルキル基の炭素数が4〜12のシクロアルキルアミン及びこれらのアルキル(炭素数1〜6)置換体が挙げられる。
炭素数4〜24の脂環式ジアミンとしては、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン及び4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン等が挙げられる。
【0017】
炭素数4〜10の複素環式モノアミンとしては、モルホリン等が挙げられ、炭素数4〜10の複素環式ジアミンとしてはピペラジン等が挙げられる。
炭素数2〜24のアルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のヒドロキシアルキル基の炭素数が2〜8のモノ−、ジ−又はトリ−ヒドロキシアルキルアミンが挙げられる。
【0018】
これらのAO付加物におけるAOとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドが挙げられる。
これらの内、水溶性の観点から好ましいのはエチレンオキサイドである。AOの付加モル数は、通常、活性水素基(水酸基またはアミノ基)1個当り1〜5モルであり、セメント分散性の観点から、好ましくは1又は2モルである。
これらのAO付加物の具体例としては、ジヒドロキシエチルヘキシルアミン、ヒドロキシエチルメチルヘキシルアミン等が挙げられる。
【0019】
Mのうち、セメント分散性の観点から好ましいものは、アルカリ金属カチオン、有機アミンカチオンであり、さらに好ましいのは、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アルカノールアミンにプロトンが付加したカチオン、特に好ましいのはナトリウムカチオン及びトリエタノールアミンにプロトンが付加したカチオンであり、セメント凝結への影響が小さいという観点からナトリウムカチオンとトリエタノールアミンにプロトンが付加したカチオンとを20/80〜40/60のモル比で併用するのがとりわけ好ましい。
【0020】
単量体(a)の具体例としては、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル、(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル、エチレングリコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノクロトン酸エステルの硫酸エステル、(ポリ)エチレングリコールモノアリルエーテルの硫酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールモノアリルエーテルの硫酸エステル、(ポリ)ブチレングリコールモノアリルエーテルの硫酸エステル、エチレングリコールのエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物のモノアリルエーテルの硫酸エステル及びこれらの塩が挙げられる。
好ましいのは、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル塩及び(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル塩、更に好ましくは(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル塩、特に好ましくはポリプロピレングリコールモノメタクリル酸エステルの硫酸エステル塩である。
【0021】
単量体(a)の製造方法は、例えば(メタ)アクリル酸又はクロトン酸等に触媒(アルカリ性触媒又は酸性触媒)の存在下でAOを付加し、硫酸化剤により硫酸エステルとし、必要により塩にする方法、及びポリアルキレングリコールモノ硫酸エステル(塩)と(メタ)アクリル酸又はクロトン酸等とをエステル化する方法等が挙げられ、合成時の収率の観点から好ましいのはAO付加後に硫酸エステル化する方法である。
【0022】
硫酸化剤としては、発煙硫酸、硫酸、クロル硫酸及びスルファミン酸等が挙げられ、好ましいのはクロル硫酸である。また、塩にする方法としては、前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水及び前記有機アミン等で中和する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明における単量体(b)を表す上記の一般式(2)において、R3とR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基である。(b)の重合性の観点から、R3として好ましいのは水素原子であり、セメント分散性の観点からR4として好ましいのはメチル基である。
【0024】
また、A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、具体的にはオキシエチレン基、1,2−または1,3−オキシプロピレン基、1,2−、1,3−または1,4−オキシブチレン基が挙げられる。
これらのうち、セメント分散性の観点から好ましいのはオキシエチレン基と1,2−オキシプロピレン基であり、特に好ましいのはエチレン基である。
mはA2Oの平均付加モル数を表し、通常1〜300の数であり、セメント組成物の流動性と流動保持性の観点から、好ましくは10〜100、さらに好ましくは15〜70、特に好ましくは30〜60、とりわけ好ましくは40〜50である。
また、mが2以上の場合、m個のA2Oは同一でも異なっていてもよく、異なる場合は−(A2O)m−はランダム付加、ブロック付加又は交互付加のいずれの付加形式でもよい。
【0025】
bは0または1であり、単量体(b)の重合性の観点から、好ましくは0である。
【0026】
5は炭素数1〜30の炭化水素基であり、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基及びアリールアルキル基等が挙げられる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ウンデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、デセニル基、ドデセニル基、イコセニル基、ペンタコセニル基、トリアコンテニル基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、アントリル、フェナントリル、ピレニル及びピラントリル等が挙げられる。
アルキルアリール基としては、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、クメニル、メシチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、ノナデシルフェニル基、テトラコシルフェニル基等が挙げられる。
アリールアルキル基としては、ベンジル基、ジフェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルプロピル基、トリフェニルメチル基等が挙げられる。
【0027】
炭素数1〜30の炭化水素基のうち、セメント分散性の観点から、アルキル基とアルケニル基が好ましく、さらに好ましいのはアルキル基、特に好ましいのはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基であり、とりわけ好ましいのはイソプロピル基とn−ブチル基である。
【0028】
単量体(b)の製造方法としては、例えばアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等とをエステル化する方法、アルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸メチル等とをエステル交換する方法等が挙げられる。
なお、fが2の場合、単量体(a)のモル数は1個の2価金属カチオンに2個のC=C部分を含む有機基を加えた分子量を2で除した値を採用するものとする。
【0029】
水溶性ビニル共重合体(A)における 該単量体(a)と該単量体(b)のモル比(a)/(b)は、セメント組成物の流動性と流動保持性の観点から0.025〜2であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜1、特に好ましくは0.1〜0.3である。
【0030】
本発明の水溶性ビニル共重合体(A)は、構成単量体として、上記の単量体(a)と単量体(b)以外に、さらに(メタ)アクリル酸(塩)(c)を含んでいてもよい。構成単量体として(c)を含むことによりセメント分散性がさらに向上する。
【0031】
この目的で併用する単量体(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらのアクリル酸塩及びメタクリル酸塩が挙げられる。
このアクリル酸、メタクリル酸の塩を構成するカチオンとしては、前記一般式(1)におけるMとして例示した1価または2価のカチオンと同様のカチオンが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0032】
水溶性ビニル共重合体(A)は、構成単量体として、単量体(a)、単量体(b)、および必要により単量体(c)以外の単量体(d)をさらに含んでいてもよい。
【0033】
このような単量体(d)としては、(a)、(b)、(c)と共重合しうるビニル単量体であって、共重合して得られる共重合体が水溶性となる単量体であれば特に限定されない。
単量体(d)としては、例えば以下のアニオン性親水性単量体(d1)、カチオン性親水性単量体(d2)、非イオン性親水性単量体(d3)及び疎水性単量体(d4)が挙げられる。
【0034】
アニオン性親水性単量体(d1)としては、以下の単量体(d11)〜(d13)、およびこれらの塩が挙げられる。
塩を構成するカチオンとしては、前記一般式(1)におけるMとして例示した1価または2価のカチオンと同様のカチオンが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0035】
(d11)カルボン酸基含有単量体としては以下の(d111)〜(d113)が挙げられる。
(d111)モノカルボン酸系単量体:
クロトン酸等。
(d112)ジカルボン酸系単量体:
マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びフマル酸等。
(d113)ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜12)エステル:
マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、シトラコン酸モノエチル及びフマル酸モノブチル等。
【0036】
(d12)スルホン酸基含有単量体としては以下の(d121)と(d121)が挙げられる。
(d121)芳香族スルホン酸系単量体:
スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸及び(メタ)アクリルアミドベンゼンスルホン酸等。
(d122)脂肪族スルホン酸系単量体:
ビニルスルホン酸及び(メタ)アリルスルホン酸等のアルケニルスルホン酸;スルホメチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリロキシプロパンスルホン酸等のスルホアルキル若しくはヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリレート系単量体;並びに2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の(メタ)アクリルアミドアルキル(炭素数2〜6)スルホン酸系単量体。
【0037】
(d13)リン酸基含有単量体:
ヒドロキシエチルメタクリレートのモノリン酸エステル(以下HEPと略記)、ヒドロキシプロピルメタクリレートのモノリン酸エステル及びヒドロキシブチルメタクリレートのモノリン酸エステル等のヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレートのリン酸エステル。
【0038】
カチオン性親水性単量体(d2)としては、以下の単量体(d21)と(d22)が挙げられる。
(d21)第4級アンモニウム塩基含有単量体:
トリメチル(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウムクロライド、トリエチル(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウムクロライド、ジメチルベンジル(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウムクロライド及びジメチル(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリルアミド系第4級アンモニウム塩基含有単量体。
(d22)アミノ基含有単量体:
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜4)(メタ)アクリレート並びにこれらの(メタ)アクリレートに対応するアミノ基含有(メタ)アクリルアミド等。
【0039】
非イオン性親水性単量体(d3)としては以下の単量体(d31)と(d32)が挙げられる。
(d31)(ポリ)アルキレン(炭素数2〜3)グリコールモノ(メタ)アクリレート:
ドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2〜100)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリ(重合度2〜100)エチレンプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等。
(d32)アミド基含有非イオン性単量体:
アミド基含有非イオン性単量体[(メタ)アクリルアミド及びN−メチロール(メタ)アクリルアミド等]等。
【0040】
疎水性単量体(d4)としては、以下の単量体(d41)〜(d45)が挙げられる。
(d41)炭素数1〜18のアルキル又はアルケニルを有するアルキル若しくはアルケニル(メタ)アクリレート:
メチル、エチル、n−及びイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−及びtert−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、2−メチルウンデシル、トリデシル、2−メチルドデシル、テトラデシル、2−メチルトリデシル、ペンタデシル並びに2−メチルテトラデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アリル、オクテニル、デセニル、ドデセニル(メタ)アクリレート等のアルケニル(メタ)アクリレート。
(d42)芳香族炭化水素系単量体:
スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン系単量体。
(d43)脂肪族炭化水素系単量体:
エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等の炭素数2〜24のオレフィン;ブタジエン及びイソプレン等の鎖状ジエン。
(d44)脂環式炭化水素系単量体:
シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビシクロペンタジエン及びリデンノルボルネン等の炭素数5〜18の脂環式不飽和炭化水素。
(d45)カルボン酸のアルケニルエステル:
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル及び酢酸アリル等の炭素数2〜18のカルボン酸の炭素数2〜4のアルケニルエステル。
【0041】
本発明の水溶性ビニル共重合体(A)の重量平均分子量(以下Mwと略記)は、セメント組成物の流動性と流動保持性の観点から、通常5,000〜300,000であり、好ましくは10,000〜200,000、特に好ましくは30,000〜100,000である。本発明におけるMwはゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコールを基準とする方法で測定したものである。
【0042】
本発明における(A)は公知の製造方法で製造することができ、例えば、溶媒中で単量体を重合開始剤の存在下に重合させる方法(特開昭62−119147号公報等に記載の重合法等)で製造できる。
【0043】
重合溶媒としては、水及び有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン及びエチルトルエン等)、脂肪族炭化水素類(シクロヘキサン、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びデカリン等)、エステル類(酢酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)等が挙げられる。
特に水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びこれらの混合溶媒が好ましい。
【0044】
重合開始剤としては、アゾ系[2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等]並びに過酸化物系[t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等]等の有機系重合開始剤;過硫酸のアンモニウム塩又ははアルカリ金属塩及び過酸化水素等の無機系重合開始剤;が挙げられる。
これらの内好ましいのは無機系重合開始剤、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド及び2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレートである。
【0045】
また、重合促進剤及び/又は連鎖移動剤を併用することも可能である。
重合促進剤としては亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられ、連鎖移動剤としてはメルカプト化合物(ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、1−メルカプトグリセリン及びメルカプトコハク酸等)等が挙げられる。
【0046】
重合温度は、通常30〜150℃、好ましくは50〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合により得ることもできる。
さらに、共重合の様式としては、ランダム付加重合、交互共重合、グラフト共重合、ブロック共重合のいずれでもよい。
【0047】
本発明のセメント用添加剤は、通常、水溶性ビニル共重合体(A)以外に水および/または 有機溶媒を含有する。
水としては、水道水、イオン交換水等、不純物の含量が管理できているものを用いることが好ましい。
有機溶媒としては、重合溶媒で挙げたものが用いることができる。
【0048】
セメント用添加剤における水溶性ビニル共重合体(A)の含有量は、作業性と経済性の観点から、10〜60重量%が好ましく、更に好ましくは30〜50重量%である。
【0049】
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント用添加剤、セメント、水及び骨材を必須成分とするものであり、例えば日本土木学会制定のコンクリート標準示方書や建築学会制定の日本建築学会が作成した建築工事標準仕様書に準じた公知の設備及び公知の手法で作製することができる。
セメント用添加剤の添加手段は、普通一般に行われているセメント用混和材料の場合と同様でよく、例えば、予め混練水にセメント用添加剤を混和した後他の原材料を投入することもできるし、他の原材料とともに一括して、ミキサーに投入してもよい。
【0050】
本発明のセメント組成物に使用されるセメントとしては、通常の水硬性セメント[普通ポルトランドセメント、特殊ポルトランドセメント(早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及びビーライトセメント)並びに混合セメント(高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメント)等]等が挙げられる。
混練水としては、海水、河川水、湖沼水、水道水、工業用水及び脱イオン水等が挙げられる。
骨材としては、細骨材と粗骨材とがある。細骨材としては、JIS A5308:1998の付属書1(規定)レディ−ミクストコンクリート用骨材に準拠される骨材等が使用でき、川砂、陸砂、山砂、海砂及び砕砂等が挙げられる。粗骨材としては、JIS A5308:1998の付属書1(規定)レディーミクストコンクリート用骨材に準拠される骨材等が使用でき、川砂利、陸砂利、山砂利及び砕石等が挙げられる。
【0051】
さらに本発明のセメント組成物には、公知のセメント用混和材及び混和剤を添加することができる。混和材としては、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム及び膨張材等が挙げられる。混和剤としては、本発明のセメント用添加剤以外の従来の減水剤(AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤)、空気連行剤(AE剤)、起泡剤(発泡剤)、消泡剤(抑泡剤及び破泡剤)、硬化促進剤(急結剤)、硬化遅延剤、防錆剤、増粘剤、ポリマーセメントコンクリート又はポリマーモルタル用のポリマーディスパージヨン及びその他の混和剤等が挙げられる。
【0052】
フライアッシュとしてはJIS A6201:1999コンクリート用フライアッシュに準拠するもの、高炉スラグとしてはJIS A6206:1997コンクリート用高炉スラグ微粉末に準拠するもの、シリカフュームとしてはJIS A6207:2000コンクリート用シリカフュームに準拠するもの等が使用できる。また、膨張材としては、カルシウムサルフォアルミネート及び生石灰[例えば、デンカCSA(電気化学工業社製)及びアサノジプカル(太平洋マテリアル製)]等が挙げられる。
【0053】
本発明のセメント用添加剤以外の従来の減水剤としては、リグニンスルホン酸塩(ナトリウム等のアルカリ金属塩及びカルシウム等のアルカリ土類金属塩等;以下の化合物の塩についても同様)、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:5〜20)、メラミンホルマリン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:5〜20)、ポリカルボン酸塩(数平均分子量:5000〜6万)、アミノスルホン酸ホルマリン縮合物塩(縮合度:2〜20)及びポリオキシアルキレン基(例えばアルキレン基の炭素数が2及び/又は3のポリオキシアルキレン基)含有ポリカルボン酸塩(数平均分子量:1万〜60万)[例えば、コンクリート混和剤の開発技術、(株)シーエムシー、1995年発行に記載のもの]等が挙げられる。
【0054】
空気連行剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩及び樹脂酸塩(アビエチン酸塩等)等が挙げられる。
【0055】
起泡剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びタンパク系起泡剤等が挙げられる。
消泡剤としては、エステル系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリコーン系消泡剤及び粉末消泡剤[例えば、新・界面活性剤入門、三洋化成工業(株)、1981年発行に記載されたものやSNデフォーマー14HP及びSNデフォーマー11−P(サンノプコ社製)]等が挙げられる。
【0056】
硬化促進剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、塩化カルシウム及びその他の公知の硬化促進剤等が挙げられる。
硬化遅延剤としては、糖類及びオキシカルボン酸塩等が挙げられる。防錆剤としては、亜硝酸塩等が挙げられる。増粘剤としては、ポリアクリルアミド及びセルロースエーテル等が挙げられる。ポリマーセメントコンクリート又はポリマーモルタル用ポリマーディスパージヨンとしては、スチレンブタジエンゴムラテックス、エチレン酢酸ビニル及びポリアクリル酸エステルエマルション等が挙げられる。その他の混和剤としては、公知のモルタル又はコンクリート用混和剤[例えば、コンクリート混和剤の開発技術、(株)シーエムシー、1995年発行に記載のもの]等が挙げられる。
【0057】
本発明のセメント用添加剤の、セメントの重量に基づく添加量は、固形分[水溶性ビニル共重合体(A)の量]として、セメントに対して通常0.02〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%となるような添加量である。
セメント組成物を構成するセメント、水及び骨材の使用量は、特に制限はなく、通常使用される量(例えば、上記セメント日本土木学会制定のコンクリート標準示方書に記載されている量)であればよい。公知のセメント用混和材及び混和剤の使用量は、特に制限はなく、通常使用される範囲であればよい。
【0058】
本発明のセメント組成物(モルタル及びコンクリート等)の施工方法は従来の場合と同様でよい。また、硬化又は養生方法としては、気乾養生、湿空養生、水中養生又は加熱促進養生(蒸気養生及びオートクレーブ養生)のいずれでもよく、また、各々の併用でもよい。
【実施例】
【0059】
以下、製造例と実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。以下において特記しない限り、部は重量部を表す。
【0060】
製造例1
四つ口フラスコに予め水375部を仕込んだ後、100℃で窒素流入下、還流条件下で、ポリプロピレングリコール(重合度=9)モノメタクリル酸エステルの硫酸エステルナトリウム塩 (a−1)8.5部、ポリプロピレングリコールの硫酸エステルトリエタノールアミン塩(a−2)20部、n−ブトキシポリエチレングリコール(重合度=45)メタクリレート(b−1)360部、メタクリル酸(c−1)86部、水37.6部、メルカプトエタノール0.4部を予め混合した単量体溶液と、10重量%過硫酸ナトリウム水溶液90.4部をそれぞれ別の滴下ロートから2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに10重量%過硫酸ナトリウム水溶液22.6部を30分かけて滴下し、その後100℃で1時間保持して熟成を行った。40℃まで冷却後、水酸化ナトリウム13.3g、トリエタノールアミン99.3g、および濃度を40重量%に調整するための水373gを投入し、本発明のセメント用添加剤としてビニル共重合体の40重量%水溶液(A−1)を得た。
【0061】
製造例2〜8
表1に記載の 単量体、メルカプトエタノール、水酸化ナトリウム、トリエタノール、濃度を40重量%または35重量%に調整するための水のそれぞれの部数(重量部)で実施例1と同様にして、本発明のセメント用添加剤としてビニル共重合体の40重量%水溶液(A−2)〜(A−5)、および35重量%水溶液(A−6)〜(A−8)を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
使用した単量体の組成を以下に示す。
(a−1):ポリプロピレングリコール(重合度=9)モノメタクリル酸エステルの硫酸エステルナトリウム塩
(a−2):ポリプロピレングリコール(重合度=9)モノメタクリル酸エステルの硫酸エステルトリエタノールアミン塩
(a−3):ポリプロピレングリコール(重合度=3)モノメタクリル酸エステルの硫酸エステルナトリウム塩
(b−1):n−ブトキシポリエチレングリコール(重合度=45)メタクリーレート
(b−2):メトキシポリエチレングリコール(重合度=10)メタクリーレート
(b−3):メトキシポリエチレングリコール(重合度=22)メタクリーレート
(c−1):メタクリル酸
(d−1):アクリルアミド
【0064】
得られたビニル共重合体の重量平均分子量(Mw)の値も表1に示す。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により以下の条件で測定した。
測定機器:Waters社製 GPCシステム[ポンプ;Model510、検出器:waters410]
溶離液:種類 水/メタノール[70/30(体積比)]+酢酸ナトリウム[5g/リットル(対水/メタノール)]
流速:1.0(ml/min)
カラム:TSKgel G3000(7.8mmID.×30cm)PWXL+TSKGel G6000PWXL(7.8mmID.×30cm )
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール[重量平均分子量:2.4×104、5.0×104、1.0
7×105、2.5×105、5.4×105及び9.0×105(東ソー株式会社製 TSK標準ポリエチレンオキシド SE−2、SE−5、SE−8、SE−30、SE−70及びSE−150)]。
【0065】
比較製造例1
四つ口フラスコに予め水375部を仕込んだ後、100℃で窒素流入下、還流条件下で、ポリプロピレングリコール(重合度=9)モノメタクリル酸エステルの硫酸エステルナトリウム塩(a−1)8.5部 、ポリプロピレングリコールの硫酸エステルトリエタノールアミン塩(a−2)20部、n−ブトキシポリエチレングリコール(重合度=45)メタクリレート(b−1)360部、メタクリル酸(c−1)86部、水37.6部、メルカプトエタノール0.04部を予め混合した単量体溶液と、10重量%過硫酸ナトリウム水溶液90.4部をそれぞれ別の滴下ロートから2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに10重量%過硫酸ナトリウム水溶液22.6部を30分かけて滴下し、その後100℃で1時間保持して熟成を行った。40℃まで冷却後、水酸化ナトリウム13.3g、トリエタノールアミン99.3g、および濃度を40重量%に調整するための水1881gを投入し、重量平均分子量400,000のビニル共重合体の20重量%水溶液(A’−1)を得た。
【0066】
比較製造例2 四つ口フラスコに水1309部を仕込んだ後、100℃で窒素流入下、還流条件下で、メトキシポリオキシエチレン(重合度=9)メタクリレート496部(40モル%)、メタクリル酸172部(60モル%)、メルカプトエタノール1部及び水619部を予め混合した単量体溶液と、過硫酸ナトリウム14.3部及び水225重量部を予め混合した開始剤水溶液を各々3時間で連続滴下し、その後100℃で1時間保持し熟成を行い、40℃まで冷却後、水酸化ナトリウム80g及び水719.7gを投入し、比較用のセメント用添加剤として重量平均分子量10,000のビニル共重合体の20重量%水溶液(QA’−2)を得た。
【0067】
比較製造例3
四つ口フラスコに水401部を仕込んだ後、95℃で窒素流入下、2−スルホエチルメタクリレートナトリウム塩90部(30モル%)、アクリル酸ナトリウム90部(68モル%)、メトキシポリオキシエチレン(重合度=10)アクリレート20部(2モル%)及び水300部を予め混合した単量体溶液と、過硫酸アンモニウム3.3部及び水62.7重量部を予め混合した開始剤水溶液を各々2時間で連続滴下し、滴下終了後、更に過硫酸アンモニウム1.65部及び水31.35重量部を予め混合した開始剤水溶液を1時間滴下した。その後95℃で1時間保持し熟成を行い、比較用のセメント用添加剤として重量平均分子量9,000のビニル共重合体の20重量%水溶液(A’−3)を得た。
【0068】
実施例1〜8及び比較例1〜3
上記で得られた本発明のセメント用添加剤(A−1)〜(A−8)、並びに比較用のセメント用添加剤(A’−1)〜(A’−3)について、以下の方法で流動性及び凝結性を評価した結果を表2に示す。
(1)評価用モルタルの調製
表2に示す配合処方で、JIS R5201−1997の10.4.3練混ぜ方法に準拠して、評価用モルタルを調製した。セメント用添加剤は、固形分としてセメントに対して0.30重量%の量を、予め表2に記載の量の水に溶解させておいて添加した。
また、モルタルの空気量を2〜3重量%に調整するために、セメントに対して0.02重量%(0.09部)の消泡剤[SNデフォーマー398:サンノプコ(株)製]をセメント用添加剤と同様の方法で添加した。
なお、セメント用添加剤の添加量は水の一部とみなし、セメント用添加剤の投入量に合わせ水の投入量も調整した。
ブランクとして、セメント用添加剤を添加しないもの(普通ポルトランドセメント450部、JIS標準砂1350部、水180部及びSNデフォーマー398 0.09部)も同様に調製した。
【0069】
(2)フロー試験(流動性)
JIS R5201−1997「11.フロー試験」に準拠したフロー試験によりフロー値(mm)を測定した。但し、フローコーンを取り去った後に落下運動は加えない。
さらに、練混ぜ開始から30分、60分及び90分経過した時点について高速で30秒間 混練した後にフロー値を測定した。フロー値は、数値が大きい程、流動性が良好であることを意味する。
【0070】
(3)凝結性
JIS R5201−1997「8.凝結試験」に準拠して、凝結の始発時間及び終結時間を得た。なお、セメント用添加剤を含まないブランクの始発時間は4時間40分、終結時間9時間であった。
始発時間と終結時間が早いほど、凝結が速やかに起こることを示し、始発、終結ともブランクに値に近いほうがセメントの凝結に与える影響が小さいことを意味する。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から、本発明のセメント用添加剤(A−1)〜(A−8)は、比較用のセメント用添加剤(A’−1)〜(A’−3)に比べ、初期(0分)の流動性が高く、更に経時での流動性低下率が小さいことから流動保持性にも優れることが分かる。
また、比較用のセメント用添加剤(A’−2)に比べ、流動保持性に優れる上、始発、終結時間ともブランク値に近いことから、セメントの凝結遅延性も小さいことが分かる。
重量平均分子量が本発明の範囲外である比較例1は、初期流動性が非常に低い。スルホン基含有単量体を含まない重合体である比較例2は、初期流動性、流動保持性が低い上、セメントの凝結遅延性が大きい。本発明の単量体(a)とは異なるスルホン基含有単量体を必須成分とする重合体である比較例3は、初期流動性、流動保持性が低い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のセメント用添加剤は、従来のセメント用添加剤よりも優れた流動性、流動保持性を示し、セメントの凝結への影響が少ない。従って、本発明のセメント用添加剤を使用したモルタルやコンクリートは作業性に優れている。このため、本発明のセメント用添加剤は、モルタル、無筋コンクリート、鉄筋コンクリート及びプレストレストコンクリート等に好適である。このようなモルタルやセメントは、建築用、土木用、道路用、かんがい排水用及び河海用等の広い分野で制限なく適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される単量体(a)と下記一般式(2)で示される単量体(b)を必須構成単量体とする重量平均分子量が、5,000〜300,000の水溶性ビニル共重合体(A)を含有するセメント用添加剤。
【化1】

[式中、R1とR2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基;aは0または1;A1Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基;nはA1Oの平均付加モル数を表す1〜300の数であり、nが2以上の場合のn個のA1Oは同一でも異なっていてもよい。Mはf価のカチオンを表し、fは1または2の整数である。]
【化2】

[式中、R3とR4はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基;bは0または1;A2Oは炭素数2〜4のオキシアルキレン基;mはA2Oの平均付加モル数を表す1〜300の数であり、mが2以上の場合のn個のA2Oは同一でも異なっていてもよい。R5は炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【請求項2】
該水溶性ビニル共重合体(A)が、構成単量体として、さらに(メタ)アクリル酸またはその塩(c)を含む請求項1記載のセメント用添加剤。
【請求項3】
該水溶性ビニル共重合体(A)中の該単量体(a)と該単量体(b)のモル比〔(a)/(b)〕が0.025〜2となる請求項1または2記載のセメント用添加剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のセメント用添加剤、セメント、水および骨材を含有するセメント組成物。

【公開番号】特開2010−47464(P2010−47464A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171540(P2009−171540)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】