説明

セラミックケースの製造方法

【課題】キャビティ部の底部の変形や、亀裂等による気密不良発生を防止して軽薄短小化の要求に対応できるセラミックケースの製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック原料粉末14を加圧成形して凹部を設ける成形体15を形成し、焼成してキャビティ部13を設けるセラミックケース10の製造方法において、ダイス16の壁面とで形成される空間に原料粉末を充填した後、加圧してダイス16の中に成形体15を形成する工程と、第1下パンチ18と、ダイス16の上面が面一となるまでダイス16を下降させると共に、成形体15の外周部からの拘束を解放し膨張させて上縁に取り出す工程と、凹部内の第2下パンチ19との間に通気性を持たせると共に、ダイス16の上面が第2下パンチ19の上面と面一となるまでダイス16を上昇させ成形体をダイス16の上縁で持ち上げて第2下パンチ19から離脱させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や、水晶振動子等の電子部品を収納するための電子部品収納用パッケージに用いられるセラミックケースの製造方法に関し、より詳細には、電子部品を載置し囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を備えた箱形の基体や、平板状の基体に電子部品を載置した後、この電子部品を囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を備えた箱形のキャップとして用いられるセラミックケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、半導体受光素子、水晶振動子等の電子部品を収納するための電子部品収納用パッケージには、これを搭載させた装置、例えば、ビデオカメラや、携帯電話等の電子装置の高精度化に伴い、気密信頼性の高いアルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック製からなるセラミックケースを用いるのが好適となっている。また、この電子部品収納用パッケージには、装置の小型化によるパッケージの軽薄短小化の要求に伴い、比較的大きい外形寸法の電子部品を囲繞するための外形を確保すると共に、電子部品を収納可能だけのキャビティ部の深さを確保しながら全体の高さを低くすることが求められている。これを達成させるためには、セラミックケースのキャビティ部の壁面となる土手部の土手幅がパッケージとしたときに気密性を確保でき、セラミックケースの外形寸法が過大にならない程度の大きさにすると共に、キャビティ部の底部となるセラミックケースの底厚みを薄くすることが必要となっている。そして、このようなセラミックケースを作製するためには、焼成前の成形体をセラミックグリーンシートを積層して形成することがキャビティ部となる凹部の狭い土手幅と、キャビティ部となる凹部の深い深さとの関係から積層成形が難しいのと、成形するためのコストアップから、一般的にはセラミック原料粉末を加圧成形して成形体を形成している。そして、この成形体は、高温でセラミックを焼結させてセラミックケースとしている。
【0003】
図3(A)〜(E)を参照しながら、従来のセラミックケースの製造方法を説明する。従来より上記のセラミックケースの製造方法では、セラミックケース成形体50を造粒された顆粒状のセラミック原料粉末51を加圧成形して形成する粉末プレス成形機を用いて形成している。この粉末プレス成形機は、摺動部分や、加圧部分が超硬合金(WC:タングステンカーバイト)等で作製されたダイス52と、上パンチ53及び第1下パンチ54と、第1下パンチ54を貫通する第2下パンチ55を備えている。
図3(A)に示すように、セラミック原料粉末51は、セラミックケース成形体50の外形壁面部分を形成するためのダイス52の壁面と、ダイス52の中に上面を挿入させいずれの場合にも不動状態である第1下パンチ54及びこの第1下パンチ54の上面より突出しダイス52の中に上面を挿入させる第2下パンチ55で形成される空間に充填している。なお、この充填では、セラミック原料粉末51がダイス52の上面で面一になるようにフィーダー56をダイス52上で水平方向に往運動させてフィーダー56の下部からセラミック原料粉末51を空間に落下させる(図3(E)参照)と共に、フィーダー56の復運動でセラミック原料粉末51をかきならしてダイス52の上面と面一となるようにしている。また、上パンチ53は、フィーダー56が往復運動する間、フィーダー56の邪魔にならない位置の上部に停止している。
【0004】
次に、図3(B)に示すように、ダイス52の中のセラミック原料粉末51は、第2下パンチ55をダイス52の中で若干(c分)下に下げると共に、上パンチ53を下降させてダイス52の中に挿入させ、上パンチ53と、不動の第1下パンチ54及び下降を停止させた第2下パンチ55で加圧してセラミックケース成形体50をダイス52の中に作製している。なお、第2下パンチ55をダイス52の中で若干(c分)下に下げるのは、セラミックケース成形体50の凹部の底部と土手部の加圧後の密度を均一にして焼成後の変形をできるだけ小さくするためのものである。次に、図3(C)に示すように、ダイス52は、下降して上パンチ53の下面当たりまで下げた所で、上パンチ53は、上昇を開始すると共に、第2下パンチ55は、下降を開始してセラミックケース成形体50から離脱を開始している。そして、図3(D)に示すように、更に、ダイス52は、下降を進めると共に、第2下パンチ55も下降(d分)を行って、セラミックケース成形体50をダイス52、第1下パンチ54、及び第2下パンチ55の上面を面一とする上面に取り出している。これと共に、フィーダー56は、セラミックケース成形体50を成形位置から水平方向に押し出すために、ダイス52上で往運動を開始している。また、上パンチ53は、フィーダー56の邪魔にならない位置の上部まで上昇している。次に、図3(E)に示すように、セラミックケース成形体50は、フィーダー56の先端で押されて成形位置から押し出されると共に、ダイス52が上昇、及び第2下パンチ55が上昇(c+d分)して図3(A)で説明したダイス52の中に空間を形成し、この中にフィーダー56の下部からセラミック原料粉末51を落下させている。
【0005】
そして、図示しないが、上記のセラミック成形体50は、例えば、セラミック原料粉末51がアルミナの場合には、大気中の約1550℃程度の温度で焼成してセラミックケースとしている。また、上記のセラミック成形体50は、例えば、セラミック原料粉末51が窒化アルミニウムの場合には、窒素雰囲気中の約1700℃程度の温度で焼成してセラミックケースとしている。
【0006】
従来のセラミックケースの製造方法には、セラミック原料粉末のダイス内への充填に際して、フィーダー内部上方に原料粉末を均一に充填させる加圧機構を設けた粉末成形装置を用いてキャビティ部を設けたセラミックケース成形体を形成した後、セラミックケース成形体をダイス、第1下パンチ、及び第2下パンチの上面を面一とする上面に取り出すのが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】実開平6−592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したような従来のセラミックケースの製造方法は、次のような問題がある。
従来のセラミックケースの製造方法は、凹部を設けるセラミックケース成形体を凹部の開口側が下になるようにしてセラミック原料粉末を加圧成形して形成する粉末プレス成形機を用いて形成した後、セラミックケース成形体をダイス、第1下パンチ、及び第2下パンチの上面を面一とする上面に取り出している。この取り出しにおいては、第2下パンチの上面を凹部の底面より離脱させ下降させて不動の第1下パンチの上面と面一すると共に、ダイスを下降させてダイス、第1下パンチ、及び第2下パンチの上面を面一としているので、セラミックケース成形体の凹部の開口部に一時的に真空状態が発生することとなっている。これにより、例えば、セラミックケース成形体の凹部の外形寸法が4.25mm×5.20mm程度と大きく、底厚みが0.2mm程度と薄い場合には、凹部の底部が真空内部側に引かれて30μm程度の大きな反りが発生したり、セラミックケース成形体自体に亀裂等が発生したりしている。このようなセラミックケース成形体の反りによる変形や、亀裂等は、焼成後のセラミックケースにも変形や、亀裂等を発生させるので、電子部品を収納するためのセラミックケースのキャビティ部の気密信頼性の低下となると共に、キャビティ部の容積を確保できる電子装置の小型化によるパッケージの軽薄短小化の要求に対応できなくなっている。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、キャビティ部の底部の変形や、亀裂等による気密不良発生を防止して軽薄短小化の要求に対応できるセラミックケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係るセラミックケースの製造方法は、ダイスと、上パンチ及び第1下パンチと、第1下パンチを貫通する第2下パンチを備える粉末プレス成形機でセラミック原料粉末を加圧成形して凹部を設ける成形体を形成し、焼成して電子部品を囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を設けるセラミックケースの製造方法において、ダイスの壁面と、ダイスの中に上面を挿入させる第1下パンチ及び第1下パンチの上面より突出しダイスの中に上面を挿入させる第2下パンチで形成される空間にセラミック原料粉末を充填した後、セラミック原料粉末を上パンチと、第1下パンチ及び第2下パンチで加圧してダイスの中に成形体を形成する工程と、第2下パンチが不動状態のまま第1下パンチの上面と、ダイスの上面が面一となるまでダイスを下降させると共に、上パンチを上昇させて成形体の外周部からの拘束を解放し成形体を膨張させてダイスの上縁に取り出す工程と、ダイスの上縁に取り出した成形体の凹部内の第2下パンチとの間に通気性を持たせると共に、ダイスの上面が第2下パンチの上面と面一となるまでダイスを上昇させ成形体をダイスの上縁で持ち上げて第2下パンチから離脱させる工程を有する。
【0011】
ここで、上記のセラミックケースの製造方法は、成形体の膨張が0.2〜0.5%であるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1又はこれに従属する請求項2記載のセラミックケースの製造方法は、ダイスの壁面と、ダイスの中に上面を挿入させる第1下パンチ及び第1下パンチの上面より突出しダイスの中に上面を挿入させる第2下パンチで形成される空間にセラミック原料粉末を充填した後、セラミック原料粉末を上パンチと、第1下パンチ及び第2下パンチで加圧してダイスの中に成形体を形成する工程と、第2下パンチが不動状態のまま第1下パンチの上面と、ダイスの上面が面一となるまでダイスを下降させると共に、上パンチを上昇させて成形体の外周部からの拘束を解放し成形体を膨張させてダイスの上縁に取り出す工程と、ダイスの上縁に取り出した成形体の凹部内の第2下パンチとの間に通気性を持たせると共に、ダイスの上面が第2下パンチの上面と面一となるまでダイスを上昇させ成形体をダイスの上縁で持ち上げて第2下パンチから離脱させる工程を有するので、セラミックケースの成形体の凹部に真空状態が発生するのを防止でき、成形体の凹部の底厚みが薄い場合であっても、凹部の底部に変形や、亀裂等の発生を防止することができ、焼成後のセラミックケースのキャビティ部に変形や、亀裂等を発生させることがなく、電子部品を収納するためのセラミックケースの気密信頼性を維持して装置の小型化によるパッケージの軽薄短小化の要求に対応することができるセラミックケースの製造方法を提供することができる。
【0013】
特に、請求項2記載のセラミックケースの製造方法は、成形体の膨張が0.2〜0.5%であるので、適度の膨張によって、成形体を取り出す途中で破壊させることなく膨張させてセラミックケース成形体をダイスの上縁に確実に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施するための最良の形態について説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るセラミックケースの製造方法で作製されるセラミックケースの説明図、A−A’線縦断面図、図2(A)〜(F)はそれぞれ同セラミックケースの製造方法の説明図である。
【0015】
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係るセラミックケースの製造方法で作製されるセラミックケース10は、例えば、アルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等からなるセラミック原料粉末をプレス成形した後、高温で焼成して形成する気密信頼性の高いセラミック製からなっている。また、このセラミックケース10は、形状を限定するものではないが、例えば、四角形状の周囲に土手部11を設けた箱形からなり土手部11の内周側壁面と、底部12の上面とで電子部品を囲繞するためのキャビティ部13を形成している。このセラミックケース10は、通常、半導体素子、半導体受光素子、水晶振動子等の電子部品のうち比較的外形寸法が大きな電子部品をキャビティ部13に気密に収納するパッケージとして用いられ、これを電子装置に組み込んで機能させるのに用いられている。
【0016】
この電子装置は、装置全体の小型化から、パッケージにも軽薄短小化を求めている。そこで、パッケージとするためのセラミックケース10には、電子部品を囲繞するための電子部品の縦横寸法に依存するキャビティ部13の大きさを確保すると共に、電子部品を収納するための電子部品の厚さに依存するキャビティ部13の深さを確保しながら全体の高さを低くすることが求められることとなる。このためにセラミックケース10は、キャビティ部13の壁面となるセラミックケース10の土手部11の土手幅をパッケージとしたときに気密性を確保しながらセラミックケース10の外形寸法が過大とならない程度の大きさにしている。また、セラミックケース10は、キャビティ部13の底部12であるセラミックケース10の底厚みをパッケージとしたときに気密性を確保しながらできるだけ薄くしてパッケージとしたときの全体の高さを低くして軽薄短小化に対応させている。これを達成させた上記のセラミックケース10には、例えば、キャビティ部13の縦横の大きさを4.25mm×5.20mm程度、キャビティ部13の深さを0.45mm程度とし、土手幅を0.24mm程度、底厚みを0.2mm程度とするものであっても、キャビティ部13の底部12の反りが±10μm程度の中に抑えられ、全く亀裂等の発生のないものとなっている。
【0017】
次に、図2(A)〜(F)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係るセラミックケース10の製造方法を説明する。
このセラミックケース10の製造方法では、例えば、セラミックの一例であるアルミナ(Al)や、窒化アルミニウム(AlN)等からなるセラミック原料粉末14を粉末プレス成形機で加圧成形してセラミックケース成形体15を形成している。そして、このセラミックケース10の製造方法では、セラミックケース成形体15を高温(例えば、アルミナの場合には、大気中の約1550℃程度、窒化アルミニウムの場合には、窒素雰囲気中の約1700℃程度)で焼成することでセラミックケース10が作製されることとなっている。
【0018】
上記のセラミックケース成形体15の形成に用いられるセラミック原料粉末14は、セラミック粉末と、バインダー等を混合した水溶液をスプレードライヤーで乾燥して球体顆粒状の造粒粉末としている。また、セラミックケース成形体15の形成に用いられる粉末プレス成形機は、耐磨耗性に優れる超硬合金等で加圧部分や、摺動部分が作製されたダイス16と、上パンチ17及び第1下パンチ18とから構成されている。そして、第1下パンチ18側には、第1下パンチ18の中央部に設けられた貫通孔に嵌合して設けられる第2下パンチ19を備えている。ダイス16には、平面視して略中央部分にセラミックケース成形体15の外形寸法と同一寸法形状の貫通孔が設けられ、この貫通孔の内壁と上パンチ17及び第1下パンチ18の外周壁が嵌合状態となっている。上記の粉末プレス成形機は、これが稼動中のいずれの状態の場合にあっても第1下パンチ18が不動であり、ダイス16、第2下パンチ19,及び上パンチ17が可動することになっている。第1下パンチ18は、セラミックケース10の土手部11となるセラミックケース成形体15の土手部分を上パンチ17とで加圧して形成するために設けられている。第2下パンチ19は、セラミックケース10のキャビティ部13となるセラミックケース成形体15の凹部を上パンチ17とで加圧して形成するために設けられている。
【0019】
図2(A)に示すように、このセラミックケース10の製造方法においては、セラミックケース成形体15の形成にセラミック原料粉末14をダイス16の中に設けられる空間に充填している。この空間は、セラミックケース成形体15の外形壁面部分を形成するためのダイス16の内周側壁面と、ダイス16の中に上面を挿入させる不動状態の第1下パンチ18、及びこの第1下パンチ18の上面より突出しダイス16の中に上面を挿入させる第2下パンチ19で形成されている。この空間には、フィーダー20をダイス16上で水平方向に往運動させてフィーダー20の下部開口からセラミック原料粉末14を落下させた(図1(F)参照)後、フィーダー20が元の位置に戻る復運動でセラミック原料粉末14をかきならしてダイス16の上面と面一となるようにして充填している。
【0020】
なお、このフィーダー20による空間へのセラミック原料粉末14の充填では、セラミック原料粉末14が球体顆粒状の造粒粉末であるので、空間内に安息角でもって流入して充填密度を均一にしながら満たすことができると共に、ダイス16の上面より盛り上がったセラミック原料粉末14をフィーダー20内に戻しながらダイス16の上面と面一にすることができる。また、フィーダー20が往復運動してダイス16の空間にセラミック原料粉末14を充填する間、上パンチ17は、フィーダー20との衝突を回避するために邪魔にならない位置の上部に停止している。
【0021】
次いで、図2(B)に示すように、このセラミックケース成形体15の形成では、第2下パンチ19をダイス16の中で若干(a分)下に下げると共に、上パンチ17を下降させてダイス16の中に挿入させ、ダイス16の中のセラミック原料粉末14を上パンチ17と、不動状態の第1下パンチ18及び下降を停止させた第2下パンチ19で加圧している。そして、ダイス16の中には、セラミック原料粉末14の球体顆粒状の造粒粉末を潰して固めたセラミックケース成形体15を作製している。第2下パンチ19の立設構造は、空気圧で立設位置を決める浮遊体となっているので、空気圧の調整で容易にその位置を下げたり上げたりさせることができる。なお、第2下パンチ19をダイス16の中で若干(a分)下に下げるのは、セラミック原料粉末14をダイス16の空間内で流動させながら加圧して球体顆粒状の造粒粉末の潰れ具合を向上させセラミックケース成形体15の底部分と土手部分の加圧後の密度を均一にして焼成したときに発生する変形をできるだけ小さくするためのものである。
【0022】
次いで、図2(C)に示すように、このセラミックケース成形体15の形成では、第1下パンチ18、及び第2下パンチ19を不動のままとした状態でダイス16の下降を開始させてダイス16の上面をセラミックケース成形体15の底部分となる表面に面一としてダイス16の中から上パンチ17を外部に取りだしている。
【0023】
更に、図2(D)に示すように、セラミックケース成形体15の形成では、第1下パンチ18、及び第2下パンチ19を不動のままとした状態でダイス16の下降を進め、第1下パンチ18の上面と、ダイス16の上面が面一となるまでダイス16を下降させている。また、このダイス16の下降と共に、このセラミックケース成形体15の形成では、上パンチ17を上昇させてセラミックケース成形体15の外周部からの拘束を解放している。これによって、セラミックケース成形体15には、膨張を発生させることができ、膨張して若干大きくなったセラミックケース成形体15をダイス16の上縁に乗せるように取り出している。
【0024】
次いで、このセラミックケース成形体15の形成では、セラミックケース成形体15の凹部表面と、第2下パンチ19との間に通気性を持たせている。通気性は、セラミックケース成形体15の膨張による第2下パンチ19との間にできる僅かな隙間に第1下パンチ18の上面と、セラミックケース成形体15の土手部分の接触部から空気が流入したり、外周部からの拘束を解放されたセラミックケース成形体15の僅かな通気性をもつ厚みを介して空気が流入したりして第2下パンチ19との間の真空状態が解放されることによる。
【0025】
そして、図2(E)に示すように、このセラミックケース成形体15の形成では、ダイス16の上昇を開始してダイス16の上面が第2下パンチ19の上面と面一となるまで上昇させている。この上昇によって、セラミックケース成形体15は、ダイス16の上縁に乗せられて持ち上げられ第2下パンチ19から離脱させている。更に、ダイス16と、第2下パンチ19の面一上面には、水平方向に往運動するフィーダー20がセラミックケース成形体15に接近することとなる。
【0026】
次いで、図2(F)に示すように、このセラミックケース成形体15の形成では、フィーダー20が更に往運動をして先端で当接させながらセラミックケース成形体15をダイス16の上面端部側に押し出している。これと共に、ダイス16は、更に上昇すると共に、第2下パンチ19を若干(a分)上昇させ、次のセラミックケース成形体15を形成するための空間をダイス16の中に形成している。そして、この空間には、上部に設けられたホース21を介して流入するセラミック原料粉末14をフィーダー20の下部に設けられる開口を介して充填している。この後は、図2(A)で説明した状態に戻ることの繰り返しでセラミックケース成形体15が作製されている。
【0027】
次に、図示しないが、凹部を設けたセラミックケース成形体15は、セラミック原料粉末14が例えばアルミナの場合には、大気中の約1550℃程度の温度で焼成して電子部品を囲繞して収納するためのキャビティ部13を設けた気密信頼性の高いセラミックケース10としている。また、上記の凹部を設けたセラミック成形体15は、セラミック原料粉末14が例えば窒化アルミニウムの場合には、窒素雰囲気中の約1700℃程度の温度で焼成して電子部品を囲繞して収納するためのキャビティ部13を設けた気密信頼性の高いセラミックケース10としている。
【0028】
ここで、上記のセラミックケース成形体15の膨張は、0.2〜0.5%であるのがよい。この膨張が0.2%〜0.5%の範囲の中にある場合には、セラミックケース成形体15は、適度の膨張によって、ダイス16の内壁から取り出す途中で破壊させることなく膨張させてセラミックケース成形体15をダイス16の上縁に確実に取り出すことができると共に、ダイス16と、第2下パンチ19の間の隙間に落下させることなく確実にフィーダー20の先端でダイス16上に押し出すことができる。セラミックケース成形体15の膨張が0.2%を下まわる場合には、セラミックケース成形体15の凹部表面と、第2下パンチ19との間に通気性を持たせることが難しくなり、セラミックケース成形体15をダイス16の上縁で持ち上げる時に、セラミックケース成形体15の凹部表面と、第2下パンチ19との間が真空状態となって凹部の底部に反りによる変形や、亀裂等が発生しやすくなる。また、セラミックケース成形体15の膨張が0.5%を上まわる場合には、ダイス16の内壁から取り出してダイス16の上縁に取り出す途中での破壊が発生しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のセラミックケースの製造方法で作製されるセラミックケースは、電子部品を載置し囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を備えた箱形の基体や、平板状の基体に電子部品を載置した後、この電子部品を囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を備えた箱形のキャップとしてセラミックパッケージに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係るセラミックケースの製造方法で作製されるセラミックケースの説明図、A−A’線縦断面図である。
【図2】(A)〜(F)はそれぞれ同セラミックケースの製造方法の説明図である。
【図3】(A)〜(E)はそれぞれ従来のセラミックケースの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10:セラミックケース、11:土手部、12:底部、13:キャビティ部、14:セラミック原料粉末、15:セラミックケース成形体、16:ダイス、17:上パンチ、18:第1下パンチ、19:第2下パンチ、20:フィーダー、21:ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスと、上パンチ及び第1下パンチと、該第1下パンチを貫通する第2下パンチを備える粉末プレス成形機でセラミック原料粉末を加圧成形して凹部を設ける成形体を形成し、焼成して電子部品を囲繞して気密に収納するためのキャビティ部を設けるセラミックケースの製造方法において、
前記ダイスの壁面と、該ダイスの中に上面を挿入させる前記第1下パンチ及び該第1下パンチの上面より突出し前記ダイスの中に上面を挿入させる前記第2下パンチで形成される空間に前記セラミック原料粉末を充填した後、前記セラミック原料粉末を前記上パンチと、前記第1下パンチ及び前記第2下パンチで加圧して前記ダイスの中に前記成形体を形成する工程と、
前記第2下パンチが不動状態のまま前記第1下パンチの上面と、前記ダイスの上面が面一となるまで前記ダイスを下降させると共に、前記上パンチを上昇させて前記成形体の外周部からの拘束を解放し前記成形体を膨張させて前記ダイスの上縁に取り出す工程と、
前記ダイスの上縁に取り出した前記成形体の前記凹部内の前記第2下パンチとの間に通気性を持たせると共に、前記ダイスの上面が前記第2下パンチの上面と面一となるまで前記ダイスを上昇させ前記成形体を前記ダイスの上縁で持ち上げて前記第2下パンチから離脱させる工程を有することを特徴とするセラミックケースの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセラミックケースの製造方法において、前記成形体の膨張が0.2〜0.5%であることを特徴とする電子部品収納用セラミックケースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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