説明

セラミックスを金属に結合するための二重遷移結合部

本発明は、アドバンストセラミックスと金属化合物等の熱膨張係数の異なる材料を結合するための効果的な手段に関する。さらに、本発明は、炉管、および異なる2種の材料間にある、結合材料間に実質的に傾斜した熱膨張係数を提供するように組成的に傾斜している結合部を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、熱膨張係数の異なる材料の結合に関し、より具体的には、炉管、および装置内の異なる2種の材料間にある、機能的または組成的に傾斜しており、実質的に傾斜した熱膨張係数(CTE)を提供する結合部を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油およびガス精製所は、流体の処理においてパイプおよび管(以降「管」と呼ばれる)のシステムを使用することが多い。多くの用途において、配管は、処理される流体を輸送するための導管としてだけではなく、化学工場処理設備の不可欠な構成要素、例えば分解炉管としても使用される。
【0003】
従来技術の分解炉は、一般に、複数の高合金(金属)反応炉管を含む、耐火物で裏打ちされた火室を備え、反応炉管の内部を通して、分解される炭化水素原料が、好適な量の希釈蒸気とともに流動する。顕熱および分解熱は、主に、火室の床および/または壁に位置するバーナーからの放射熱により供給される。この熱は、合金反応ライン(反応炉管)を通って、中で流動する炭化水素原料中に移動し、炭化水素の分解に必要なエネルギーを提供する。
【0004】
さらに、現在構築されているような分解炉は、約1625°Fの最大バルク流体温度でミリ秒の滞留時間を提供し、その放射加熱反応炉管に関しては、金属材料で構築されている。耐火材料で裏打ちされ得る火室自体は、反応炉管の金属材料が耐えることができる熱負荷よりも大きい熱負荷を供給することができる。反応炉管が構築される元の金属材料のこの最高使用温度は、その容量(可能な限り高くなるべきである)およびその滞留時間(可能な限り短くなるべきである)に関して、上述の反応炉管の性能を制限し、ひいては(例えばエチレンおよびプロピレン等の有用なオレフィン系生成物種の可能な限り高い収率を達成するための)選択性を制限する。
【0005】
熱分解プロセスにおいて反応炉管が暴露される比較的高い温度を考慮すると、そのような管の構築には、金属材料が好ましい材料であった。反応器の設計者は、より高い最大使用温度限界を有する材料の使用から得られる、プロセスにおけるより高い容量およびより高い選択性を追求するに伴い、反応炉管が製造される元の金属合金の特性を徐々に改善してきた。
【0006】
従来の反応炉管は、ニッケル含有合金から構築され、その大部分は、18〜38重量パーセントのクロム、18〜48重量パーセントのニッケル、残りが鉄、すなわち鋼、および合金化添加剤という範囲内でクロム、ニッケルおよび鉄を含む組成物から調製される。これらの合金は、一般に1100°Fを超え2000°Fまで、またはそれ以上の高温で運転される工業プロセスにおいて使用される。一般に、上記反応炉管の最大使用温度の増加を目的とした反応炉管用ニッケル含有合金の開発は、例えば、改善された品質のオーステナイトニッケル−クロム鋼を生成するための慎重な組成および微細構造の制御により達成されていた。例えば、Kleemanの米国特許第6,409,847号(参照することによりその内容が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。しかしながら、最善のニッケル含有オーステナイト鋼および合金でも、2100°F程度の最大使用温度しか有していない。
【0007】
しかしながら、高い分解温度では、従来の反応炉管中のニッケルは、管の内側でのコークス形成の触媒として作用し、「触媒コークス」と呼ばれる特定の形態のコークスを生成する。コークスはまた、熱分解自体、すなわち、反応物質集団中に生成されるコークス前駆体材料に対する時間および温度(特に非常に高温の壁温度)の作用の結果として、金属管の壁に形成する。触媒コークスとは異なる形成メカニズムおよび異なる構造の両方を有するこの種のコークスは、「熱分解コークス」として知られる。熱分解により形成されたコークスは、反応炉管内の触媒コークスの上に積層する。時間、温度およびコークス前駆体材料の関数である熱分解コークスの堆積の量は、管の長さに沿って増加し、時間、温度および前駆体が増加したレベルとなる反応管の出口端で最大となる。分解領域におけるコークス形成の総括的な議論の最近の例に関しては、例えば、「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」、S.WautersおよびG.B.Marin、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(10)、2379〜91、「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」に対するコメント、Lyle F.Albright、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(24)、6210〜12、ならびに「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」に対するコメントへの回答、Marie−Francoise S.G.Reyniers、Sandra Wauters、およびGuy B.Marin、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(24)、6213〜14を参照されたい。
【0008】
コークス形成は、いくつかの理由から、プロセスにとって有害である。反応炉管の内側へのコークスの堆積は、炭化水素の流動経路を制限し、システム圧力降下の増加および処理量の低下をもたらす。平均炭化水素分圧がより高いと、プロセスの選択性が低減され、極端な場合には、コークスは、(並列反応炉管の間の)流量の不均衡分布をもたらし、最終的には、炉容量の低下をもたらし得る。さらに、炉管の内側へのコークスの積層により、反応器管の壁の外側と、反応器管内を流動するバルク流体との間の熱伝達に対する抵抗が増加する。結果として、同じ温度および/または管内を流動する炭化水素流体の変換を維持するためには、外側燃焼排ガス温度、焼成速度および外側管壁温度を上昇させる必要がある。結果的に、反応器管の壁の外側温度は、管が製造される元の材料の最大使用限界に達する可能性があり、そのような状況下では、コークス(基本的に炭素)を酸化炭素の混合物に変換するために、炉をシャットダウンして、蒸気および空気の混合物を管に通過させることによりコークスを除去する必要がある。このプロセスは、「デコーキング」として知られる。デコーキングは、有価物を消費し、従来のニッケル含有金属合金反応炉管の場合、管の寿命を低下させる。管の寿命は、摩耗、熱疲労、および内部酸化物保護層への損傷を含むがこれらに限定されない、様々なメカニズムにより低下される。
【0009】
反応炉管に使用される材料を変えることによりコーキングを低減する試みが、従来技術において見出される。例えば、従来技術は、反応炉管構造へのケイ素セラミックスの使用を説明している。例えば、Winklerらの米国特許第2,018,619号は、ケイ素粉末から作製された反応管を使用する、炭化水素の発熱性変換のための装置を記載しており、Endterらの米国特許第2,987,382号は、セラミック管内で気体反応を行うための炉を記載しており、Coppolaらの米国特許第4,346,049号は、炉管を形成するための炭化ケイ素粉末圧密体を記載しており、Williamsらの米国特許第5,254,318号は、高圧改質反応器用の裏打ちされた管を記載している。欧州特許出願公開第1018563号は、17〜26wt.%のCrおよび2〜6wt.%のAlを含有する希土類酸化物粒子分散強化(ODS)鉄合金を含む加熱炉管、ならびに、プロセス中コーキングおよび浸炭の問題が発生する箇所においてそのような加熱管を使用および製造する方法を開示している。
【0010】
炉管組成物のより最近の革新としては、より耐熱性のニッケル不含材料、例えば、1300°F以上の温度での炭化水素原料の分解に使用するための、セラミックスおよび/または酸化物分散強化(「ODS」)合金が挙げられ、例えば、参照によりその全内容が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0147794号を参照されたい。
【0011】
化学工場処理設備において使用される様々な管は、異なる材料要件を有する。例えば、炉の放射部内に位置する反応炉管は、原料の分解温度を超える温度に耐えることが必要とされる。過剰分解または非選択的分解を防止するためには、原料のみが特定の時間分解温度を超える温度となることが非常に重要である。しかしながら、炉管は、炭化水素ガスを輸送するための移送管および交差管等の他の管に接続されている。交差管および移送管は、炉管が暴露される程の熱には暴露されないため、それらの組成は、炉管の組成とは極めて異なってもよい。より高い温度に耐え、容量を増加させ、より高い選択性を提供することができる炉管を提供するための、セラミックス、金属等の様々な材料の混合物の使用は、様々な処理設備コンポーネントにおいて、セラミックスと金属合金とを互いに結合させる必要性を常にもたらしていた。
【0012】
さらに、金属/合金とセラミック材料との結合には問題がある。結合は、結合される2つのコンポーネントまたは材料間の制御された界面の形成とみなすことができる。2つの主要な理由から、すなわち、まず適切または有利な化学反応が確実に生じるようにするため(例えば、ろう付け操作において濡れ性および接合を確実とするため、または拡散接合において十分な拡散を提供するため)、ならびに、第2に、可能な場合は、熱膨張係数(CTE)の差を打ち消すために、界面の制御が重要である。
【0013】
例えば、炭化ケイ素(SiC)および鉄クロムニッケル合金の結合は、材料が(約2000°Fを超える温度で)有害に反応し、比較的低融点のNiケイ化物を形成するため、成功しない。そのような反応は、ろう付けもしくは拡散接合等の接合手順の間、または使用中に生じ得る。さらに、これらの材料は、非常に異なる熱膨張係数(CTE)を有する。2種の材料が直接合わせられ、(例えばろう付けまたは拡散接合により)結合される場合、破損の可能性が高い(接合領域が数平方ミリメートルを超える場合)。
【0014】
CTE不整合の影響を克服することが知られている様々な手法がある。これらは、単一中間層、二重中間層および可撓性中間層の使用を含む。これらの中間層は、2つの主コンポーネント間を接合している。完全傾斜または機能傾斜材料または中間層もまた提案されている。Fernieら、Welding and Metal Fabrication、5(1991) 179〜194。
【0015】
2種の異なる材料、例えばアドバンスト(すなわち工業用)セラミックスおよび金属合金を組み合わせて、機能傾斜材料(FGM)を生成することは、当技術分野において知られており(例えば、Pietrzakら、Journal of the European Ceramic Society、27(2007)、1281〜1286頁およびRuysら、Journal of the European Ceramic Society、21(2001)、2025〜2029頁を参照されたい)、従来技術において開示された方法は、ある程度実用性が見出されているものの、欠点を有している。同様に、2種のセラミックスをベースとした機能傾斜材料の生成が実証されている(C.S.Lee、X.F.ZhangおよびG.Thomas:「Novel joining of dissimilar ceramics in the Si−Al system using polytypoid functional gradients」、Acta Mater.、2001、49、3775〜3780)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,409,847号
【特許文献2】米国特許第2,018,619号
【特許文献3】米国特許第2,987,382号
【特許文献4】米国特許第4,346,049号
【特許文献5】米国特許第5,254,318号
【特許文献6】欧州特許出願公開第1018563号
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0147794号
【特許文献8】米国特許第3,671,198号
【特許文献9】米国特許第4,499,055号
【特許文献10】米国特許第5,427,655号
【特許文献11】米国特許第3,403,722号
【特許文献12】米国特許第3,910,347号
【特許文献13】米国特許第4,356,151号
【特許文献14】米国特許第5,271,827号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」、S.WautersおよびG.B.Marin、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(10)、2379〜91
【非特許文献2】「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」に対するコメント、Lyle F.Albright、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(24)、6210〜12
【非特許文献3】「Kinetic Modeling of Coke Formation during Steam Cracking」に対するコメントへの回答、Marie−Francoise S.G.Reyniers、Sandra Wauters、およびGuy B.Marin、Industrial&Engineering Chemistry Research、41(24)、6213〜14
【非特許文献4】Fernieら、Welding and Metal Fabrication、5(1991) 179〜194
【非特許文献5】Pietrzakら、Journal of the European Ceramic Society、27(2007)、1281〜1286頁
【非特許文献6】Ruysら、Journal of the European Ceramic Society、21(2001)、2025〜2029頁
【非特許文献7】C.S.Lee、X.F.ZhangおよびG.Thomas:「Novel joining of dissimilar ceramics in the Si3N4−Al2O3 system using polytypoid functional gradients」、Acta Mater.、2001、49、3775〜3780
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、異なる熱膨張係数を有する異なる材料、例えばアドバンストセラミックスと金属材料を結合して、例えば化学工場処理設備における使用のための改善された管を提供することが、当業界において依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第1の材料Aから第1の金属材料Bへの遷移を含む、装置内の2種の材料間の結合部を製造する方法であって、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bは、前記装置の動作温度で(または前記材料の結合プロセス中に)適合せず(任意の化学的または熱機械的理由から)、前記方法は、
i)前記第1の材料Aから第2の材料Cへの第1の遷移であって、第2の材料Cは、前記装置の動作温度で、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第2の材料Cとの間の前記第1の遷移は、第1の材料Aと第2の材料Cとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように機能的に傾斜している、第1の遷移と、
ii)第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移であって、第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように機能的に傾斜している第2の遷移と
を含み、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、炭化水素原料をオレフィン系炭化水素生成物に熱分解するための炉と共に使用するための炉要素であって前記炉の動作温度で適合しない(任意の化学的または熱機械的理由から)第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと、前記炉の動作温度で、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で機能的に傾斜している第2の材料Cとを有する結合部を含み、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、炉要素に関する。
【0021】
炭化水素原料をオレフィン系炭化水素生成物に分解するための方法であって、複数の反応炉管を備える熱分解炉内で、少なくとも約1300°Fの温度で炉内の前記炭化水素を分解するステップを含み、少なくとも1つの前記反応炉管は、前記温度で適合しない(任意の化学的または熱機械的理由から)第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと、前記温度で第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で機能的に傾斜している第2の材料Cとを有する結合部を備え、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、方法。
【0022】
本発明の新規な独創的二重遷移結合部は、異なる熱膨張係数を有する異なる材料、例えば、炭化ケイ素系セラミックスおよび鉄−クロム−ニッケル系合金等の結合を、炭化ケイ素と金属合金との間に材料の少なくとも2つの機能傾斜遷移部(すなわち傾斜部)を提供することにより可能とする。
【0023】
新規結合部/設計は、(AからCを経てBへの)連続的組成変化、すなわち「傾斜」、および傾斜した熱膨張係数を特徴とする。したがって、異なる材料間の有害な化学反応が防止され、特有のCTE不整合もまた克服される。本発明の結合部は、実効的に最も必要とされる箇所に優れた耐熱性および強度を有する炉管を提供するために、炭化水素分解炉内に(または所望により炉の外側に)戦略的に位置付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第2の材料であるアルミナAlにより傾斜させた、2種の末端部材料、すなわち炭化ケイ素と鉄−クロム−ニッケル系合金との間の二重遷移結合部の実施形態の側面平面図である。
【図2】本発明の実践において有用な分解炉管の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の発明を実施するための形態は、本発明を例示するために示されるものであり、いかなる様式でも、添付の特許請求の範囲を制限するように解釈されるべきではない。
【0026】
本発明の設計は、化学処理装置、例えば炭化水素分解に必要な装置において必要とされる温度で、または結合プロセス中に化学的または熱機械的に適合しない、異なる熱膨張係数を有する異なる材料、例えば炭化ケイ素系セラミックスおよび鉄−クロム−ニッケル系合金の間の、新規な二重遷移「結合部」を提供する。
【0027】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の材料Aは、生産用高性能反応炉管に使用される、または使用され得る材料のいずれであってもよい。高性能反応炉管(すなわち、従来実践されていた温度より大幅に高い反応炉管温度での熱分解による炭化水素の分解プロセス用)の製造に有用な材料の例には、セラミックス、アドバンストセラミックス、セラミック系複合材、金属間化合物および/または酸化物分散強化材料(すなわち「ODS」)等が含まれる。
【0028】
セラミック材料は、一般に、熱の作用により形成される無機非金属材料として定義される。しかしながら、本発明の実践により関連しているのは、工業用、工学用またはアドバンストセラミック材料である。これらは、一般に、B、C、N、O、Al、Si、ZrおよびTiの比較的単純な組合せに基づいている。工業用/工学用/アドバンストセラミック材料(以降「アドバンストセラミック材料」と呼ばれる)には、アルミナ(Al)およびジルコニア(ZrO)等の酸化物;炭化ケイ素SiC、炭化ホウ素BCおよび炭化タングステン(WC)系等の炭化物、TiBおよびZrB等のホウ化物、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(Si)およびSiAlON等の窒化物、ならびにTiSi等のケイ化物等の非酸化物;ならびに酸化物および非酸化物の任意の組合せ(セラミックマトリックス複合材、CMCと呼ばれる)等の複合材を含む3つの概略的な分類がある。これらの材料は、焼結(S)、ホットプレス(HP)および反応接合(RB)を含むがこれらに限定されないいくつかの手法で、製造/形成して成形され得る。例えば、炭化ケイ素(SC)は、焼結(SSC)、常圧焼結(PSSC)、ホットプレス(HPSC)および反応接合(RBSC)され得る。また、これらの材料は、噴霧されても、または液体もしくは気体反応を介して形成されてもよい。
【0029】
第1の材料Aは、SiC系セラミック材料、窒化ケイ素(Si)系材料、アルミナ系、二ホウ化マグネシウム(MgB)、ステアタイト(ケイ酸マグネシウム)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)系、およびこれらの材料の任意の複合材/組合せを含むがこれらに限定されない、広範な任意のアドバンストセラミック材料を含み得る。本発明の具体的な一実施形態によれば、第1の材料Aは、任意の形態の炭化ケイ素、例えばPSSC、SSCまたはHPSCである。
【0030】
本発明において有用なセラミック材料は、管状構造に成形され得る既知のアドバンストセラミック材料のいずれかであり、任意の形態の炭化ケイ素(SiC)材料を含むが、これに限定されない。SiC管の例には、Saint−Gobain Advanced Ceramics社(旧Carborundum社)からHexoloy(登録商標)SAの商品名で販売されている管、およびW.Haldenwanger Technische Keramik GmbH&Co.KGからHalsic−Sの商品名で販売されている管が含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の金属材料Bは、分解された炭化水素の処理において、または反応器への原料輸送に使用される配管の製造のための、当技術分野において知られた任意の金属材料であってもよい。処理配管を作製するために使用される材料は、従来の金属材料、例えば25Cr35Ni金属を包含する。しかしながら、プロセスにおけるより高い容量およびより高い選択性を提供する改善された反応器設計は、反応炉管が製造される元の改善された金属合金から得られている。
【0032】
本発明の実施形態によれば、本発明の第1の金属材料Bは、金属合金である。金属合金の例には、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、鉄合金、ニッケル合金、チタン合金、および同様の合金(例えば、25Cr35Ni、オーステナイトステンレス鋼およびIncoloy(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明の具体的な一実施形態によれば、第1の金属材料Bは、鉄−クロム−ニッケル系合金である。
【0033】
セラミックスおよび金属合金等の異なる材料を互いに結合させることに関連した問題は、異なる材料は通常、異なる熱膨張係数(CTE)を有するという点である。CTEは、温度変化に対する物質の寸法的応答、すなわち加熱された場合にどれ程材料が膨張するかを表す指標である。一般に、ただし常にではないが、金属は、所与の(正の)温度変化に対して、セラミックスより膨張する。
【0034】
したがって、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bは、互いに直接結合された場合、異なる割合で膨張および収縮する(例えば、SiCおよびFeCrNi(鉄−クロム−ニッケル系合金)のCTEは、それぞれ、約3.5×10−6−1および約14×10−6−1である)。接合中、または使用時の加熱サイクル中に界面において蓄積された合応力は、ほぼ確実に破損を引き起こすか、または良くても非常に複雑で潜在的に危険な応力系をもたらす。
【0035】
異なる材料の結合を目指して、機能傾斜材料(FGM)の使用について従来技術において研究されている。FGMは、体積にわたり徐々に変化する組成および構造を特徴とし、それに対応した材料特性の変化がもたらされる。FGMは、特定の機能および用途のために設計され得る。当技術分野において知られているように、様々なアプローチを使用してFGMを製造することができ、プロセスは、バルク粒子加工、予成形加工、層加工、押出、噴霧および溶融加工を含む。FGMの製造において、材料の「遷移」が存在し、これは、1つの材料または組成物から別の材料または組成物への段階的変化または変遷を提供する。本発明の具体的実施形態によれば、1つの材料から別の材料への段階的変化(すなわち、「傾斜」または「傾斜した」)を利用して、2種の材料間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数が実現される。本発明の文脈内において、FGM(複数を含む)は、異なる熱膨張係数を有する2種の異なる材料または組成物の間の「結合部」または接続部を作製するために使用される。
【0036】
本発明の第2の材料Cは、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の機能傾斜材料、または傾斜部を作製するために必要な材料を提供する。本発明の第2の材料Cは、FGMの作製のための遷移的材料として有用な材料または化合物から作製され、アルミナ、ジルコニアおよびスピネル(アルミン酸マグネシウム、MgAl)等であるがこれらに限定されない材料および化合物を含む。本発明の具体的な一実施形態によれば、第2の材料Cは、アルミナである。
【0037】
本発明の実施形態によれば、第2の材料Cは、材料Aおよび第1の金属材料Bの中間のCTEを有する材料または組成物である。例として、材料Aが約3.5×10−6−1のCTEを有するSiCであり、第1の金属材料Bが約14×10−6−1のCTEを有する鋼である場合、第2の材料Cは、SiCおよび鋼のCTEの中間、すなわち、3.5×10−6−1から14×10−6−1の間のいずれかのCTEを有する材料または組成物である。
【0038】
本発明は、2種の異なる材料間の結合部を製造する方法を含み、この場合一方はセラミック、他方は金属である。セラミック−金属結合部を生成するためのいくつかの方法が、当技術分野において知られている。これらは、一般に、機械的方法または化学的方法として分類され得る。両方とも、コンポーネントの最終的要件に依存して、利点および欠点を有する。多くの場合、最大の問題は、熱膨張係数(CTE)の不整合の問題である。
【0039】
様々な材料間のCTE不整合の問題を克服するための従来の手段は、中間層のCTEがセラミックおよび金属のCTEの中間であるような、2種の材料間に結合された中間層または体積の使用を含んでいた。最も単純な中間層は、単一の材料である。いくつかの場合においては、2つ以上の中間層が使用され得る。別の選択肢は、柔軟性中間層(例えば、バネまたは発泡体様)の使用である。熱膨張係数の不整合を防止するための別の選択肢は、好適に傾斜した材料の層を含む。固体傾斜層の深度は、通常、CTE不整合の程度に依存して、その直径のかなりの割合(またはさらにその倍数)である。そうでなければ、応力の蓄積が、接合温度からの冷却時に接合部の破損を引き起こすか、または早期破損に寄与する。
【0040】
本発明は、実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する、少なくとも2つの傾斜部(例えば、2つの別個の中間層)、すなわち「二重遷移」の使用に基づくより複雑な設計の使用を企図する。2つの傾斜部は、互いに結合される異なる末端部材料(すなわち、第1の材料Aおよび第1の金属材料B)間に、傾斜材料の二重遷移を提供する(本明細書において、3つ以上の傾斜部、例えば、第1の金属材料Bと第3の材料Dとの間の遷移、および/または第1の材料Aと第4の材料Eとの間の遷移の使用が企図される)。本発明の結合部設計は、優れた耐熱衝撃性、化学的耐久性、高強度および靱性を提供する。使用中、結合された材料の高温端部は、炭化水素分解に必要な温度より高い温度に暴露され、例えば交差管または移送管を構成するより低温の端部材料は、炭化水素分解に必要な温度より低い温度を経験する。したがって、本発明は、従来の金属材料から作製された管に結合されながらも、より高い温度に耐え、容量を増加させ、より高い選択性を提供することができる炉管を提供することができ、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の反応性の問題、およびCTEの不整合に関連した問題を克服する。
【0041】
図1は、2種の異なる末端部材料間の二重遷移結合部1の具体的実施形態を示し、一方の末端部材料は炭化ケイ素(SiC)であり、他方の末端部材料は鉄−クロム−ニッケル(Fe−Cr−Ni)系合金である。炭化ケイ素の使用は、高性能反応炉管の構築において使用され得る材料の例示であり、本発明の好ましい実施形態によれば、炭化ケイ素は、本発明の第1の材料Aである。鉄クロムニッケル金属合金は、現在の使用時の要求に対応するために反応炉管の構築において一般的に使用される材料であり、本発明の具体的実施形態によれば、第1の金属材料Bが、鉄クロムニッケル系合金である。
【0042】
図1は、炭化ケイ素と鉄クロムニッケル合金との間の熱膨張係数の不整合から生じる問題を克服するために必要なコンポーネント材料の例を示す。炭化ケイ素および鉄クロムニッケル合金の直接的結合は、2種の材料が反応して比較的低い融点のNiケイ化物を形成するため、(必要とされる使用温度に対しては)達成することができない。それらはまた、非常に異なるCTEを有し、これが大型部品の直接的結合を阻害する。したがって、これらの材料を結合するための現在の方法は、炭化水素原料の分解に必要な温度に対応しない。
【0043】
本発明者らは、高性能炉管の炭化ケイ素から、移送管および/または交差管の従来のFeCrNi系金属合金への「二重遷移」を提供する結合部を作製することにより、この問題を解決した。図1に示されるように、本発明の傾斜組成物は、機能傾斜部品1(「FMG1」)および機能傾斜部品2(「FMG2」)を利用して、異なる材料間に2つの傾斜部または遷移部分を提供することで作製される。傾斜部または遷移部分は、互いから連続的または半連続的に傾斜して、本発明の結合部の傾斜中間層または体積を形成する、一連の材料から作製される。傾斜部は、互いに接合されると、炭化ケイ素と鉄クロムニッケル系合金との間に遷移を提供する。二重遷移結合部の本実施形態において、図1にそれぞれ結合部1a、結合部2aおよび結合部3aとして示される3つの接合領域がある。本発明の実施形態によれば、結合部1aおよび結合部2aは、化学薬品(すなわち拡散助剤)を使用した、または使用しない一軸拡散接合に基づく技術を使用して生成される。当技術分野において知られているように、拡散接合、またはより具体的には固相拡散接合は、数分から数時間の範囲の期間の加圧を使用して、2つの名目上平坦な界面を高温(母材の完全融点の約50%〜90%)で結合することができるプロセスである。当技術分野において知られているように、拡散接合助剤の使用をこのプロセスにおいて利用してもよい。また、ここでは熱間静水圧加圧(HIPing)も企図される。
【0044】
結合部3aは、当業者に知られているように、ろう付け、または拡散ろう付けの技術により作製され得る。別の選択肢によれば、結合部3aは、同じく当業者に知られている技術により溶接される。
【0045】
再び図1を参照すると、機能傾斜材料1(FMG1)、すなわち傾斜部が、炭化ケイ素(第1の材料A)を第2の材料C、すなわちAlに至るまで完全に傾斜させることにより作製される。材料の傾斜は、当技術分野において知られているように、セラミック加工経路を使用して連続的または半連続的に形成される。これらの加工経路は、例えば、粉末混合および焼結、液相または気相浸透、押出および焼結、ならびに噴霧の使用を含み得る。本発明の具体的な一実施形態によれば、アルミナ(すなわち、いくつかの形態の酸化アルミニウムのいずれか、Al、酸化アルミニウムとしても知られる)が第2の材料Cであり、これは炭化ケイ素とNi含有合金との間の中間材料として導入される。アルミナの使用には2つの有益な効果があり、第一に、アルミナは、炭化ケイ素と鉄クロムニッケル金属合金との間の不浸透性バリアを形成し、第二に、アルミナは、中間的な熱膨張係数を有する。それぞれ、炭化ケイ素は、約3.5×10−6−1のCTEを有し、Alは、約8.0×10−6−1のCTEを有し、「FeCrNi」は、約14×10−6−1のCTEを有する。
【0046】
連続的傾斜が行われる場合、材料は、遊離粉末の適切な混合および焼結により連続的に傾斜し得る。例えば、100パーセントの炭化ケイ素が出発点となり、互いに混合されたSiCおよびAlの量を調整することにより徐々に低下され、最終的に端面、すなわち結合部2aが100パーセントのアルミナとなる。半連続的傾斜が行われる場合、材料は、互いの上に積層され互いに接合された個別層を使用することにより、半連続的に傾斜する。半連続的傾斜は、例えば、100パーセントの炭化ケイ素および0パーセントのアルミナを含有する第1の個別層から開始し、90パーセントの炭化ケイ素および10パーセントのアルミナを含有する第2の個別層、80パーセントの炭化ケイ素および20パーセントのアルミナを含有する第3の個別層、70パーセントの炭化ケイ素および30パーセントのアルミナを含有する第4の個別層等と続き、最終的に100パーセントのアルミナおよび0パーセントの炭化ケイ素の個別層が存在するまで層を提供する。同様に、傾斜プロセスの材料のパーセントにおいて他の変形例が可能であることが理解される。
【0047】
半連続的傾斜プロセスにおいて、次に、100パーセントのアルミナおよび0パーセントのFe−Cr−Niの個別層に続き、例えば90パーセントのアルミナおよび10パーセントのFe−Cr−Niを含有する層、80パーセントのアルミナおよび20パーセントのFe−Cr−Niを含有するさらなる個別層等へとこの順番で進み、最終的に100パーセントのFe−Cr−Niおよび0パーセントのアルミナの個別層が存在するまで個別層を提供することにより、第2の遷移部品すなわちFGM2または第2の傾斜部(図1を参照)が作製され、これが鉄クロムニッケル金属合金にろう付けされ得る。同様に、傾斜プロセスの材料のパーセントにおいて他の変形例が可能であることが理解される。
【0048】
半連続的傾斜プロセスの場合のように、連続的傾斜プロセスにおいて、第2のまたは二重遷移層、すなわち傾斜部は、結合部2aから開始し、100パーセントのアルミナから傾斜プロセスが開始して、鉄クロムニッケル系合金材料のみとなるまで量が減少し続け、それによりSiCからAlおよびAlからFe−Cr−Ni系金属合金への独特の二重遷移が提供される。
【0049】
重要なことに、本明細書に示した傾斜プロセスのいずれかにより、SiC/AlおよびAl/Fe−Cr−Ni含有合金の間に有害な反応が生じない。
【0050】
図1に示されるように、FGM2は、例えば、従来の粉末加工および焼成、溶解浸透技術、押出ならびに溶射等の当業者に知られた技術のいずれかを使用して作製することができる。本発明の好ましい実施形態は、FeCrNi合金の使用である。他の材料、例えばNiアルミナイドも使用することができる。アルミナイドは、Fe−Cr−Ni系合金よりも高い温度能力を有し、溶解浸透され得る。
【0051】
図2は、本発明の実践において有用な分解炉2の概略図を示す。炉2は、予熱対流部4および放射部6を備える。放射部6は、燃料ライン(図示せず)を介して燃料が供給される壁バーナー8および床バーナー10を備える。本発明の炉は、壁バーナーのみ、床バーナーのみ、またはこれらの組合せを備えてもよく、分解反応を実現するために十分な放射熱を提供するのに十分な数で存在する。バーナーにより生成された高温燃焼後ガスは、遷移送気管12から炉2の放射部6を出て、対流部4を通って上方に進み、送気管14から炉を出る。
【0052】
本発明において、原料は、供給管16を通って炉の対流部4に進入し、第1の交換器(対流バンクまたは対流バンドルとしても知られる)18において、約200°Fから約1000°Fの範囲の温度に予熱される。任意選択的に、希釈蒸気が別個の供給管22を通って対流部4に進入し、第2の交換器17において、約700°Fから約1200°Fの範囲の温度に予熱される。予熱された原料および予熱された希釈蒸気は、次いで互いに混合され、対流部4に第3の交換器19に向けて再び進入し、ここで2種の混合蒸気が約900°Fから約1450°Fの範囲の温度に加熱される。管20(一般に交差管と呼ばれる)内の混合物は、次いで炉2の放射部6に向かう。代替の配置は、これに限定されないが、希釈蒸気の完全な削除を含み、この場合、原料は交換器18から管20に直接移動し、交換器17および19、ならびに別個の供給管22は必要とされないか、または、原料は予熱されず、この場合、管16内の原料は、交換器17からの予熱された希釈蒸気と直接混合し、交換器18は削除される。この点まで、交差管20は、当業者に周知のような従来の金属材料を含む。
【0053】
本発明の熱分解炉への原料は、これらに限定されないが、エチレンおよび他の高級オレフィン等のより低飽和度の生成物を生成するための、プロパン、ブタン、ナフサ、軽油、または上記のいずれかの任意の組合せ等の、当技術分野において一般に分解される原料のいずれかを含み得る。コークス形成に対するそのような高い耐性を有する炉反応器管はまた、重質原料、例えば減圧蒸留軽油等の分解に特に効果的である。特に好ましいのは、本発明のプロセスを使用してエタンを選択的にエチレンに分解するための熱分解プロセスであり、これにより、例えば、エタン変換率を、従来の炉の65%〜75%の範囲からより大幅に高いレベルに、例えば約85%〜約90%のオーダーに改善することができる。
【0054】
二重遷移結合部24は、完全に本発明の実施形態を含む。結合部24は、異なる材料の交差管20(当業者に周知のような従来の金属材料を含む)および反応炉管26を結合する。本発明の反応炉管(複数を含む)26は、好ましくは、本明細書に開示される材料、セラミックスまたは酸化物分散強化材料(ODS)、例えば米国特許出願公開第2004/0147794号に記載のもの等を含む。
【0055】
本発明の反応炉管の全長の構築材料としてセラミックまたは高強度ニッケル不含材料を使用することにより、従来実践されていた温度よりも大幅に高い温度で分解プロセスを実行することが可能となる。例えば、従来の炉管内の分解は、一般に、せいぜい2100°Fの外側管表面温度に制限されていたが、本発明の実践において、セラミックおよび/またはODS材料で構築された管を使用することにより、外側管表面温度は、少なくとも約2300°Fとなり得る。管が本発明によるセラミック材料で構築される場合は、さらにより高い外側管表面温度、すなわち最高約2900°F等の温度を使用することができる。
【0056】
したがって、本発明は、約1300°Fを超える、好ましくは約1450°Fを超える、より好ましくは約1600°Fを超える反応器出口温度で、および約0.02秒〜約0.50秒、好ましくは約0.04秒〜約0.25秒の範囲の滞留時間で、炭化水素原料を分解するためのプロセスを提供する。
【0057】
図2は、反応炉管26の形状が直線単一通過管である実施形態を示す。しかしながら、反応炉管は、当業者に知られている任意の構成、例えばオフセット構成、水平構成または蛇行構成であってもよい。示された形状の反応炉管26の長さは、好ましくは、約20フィート〜約40フィートである。しかしながら、反応管の長さは、形状、直径および炉容量に基づき変動し得る。
【0058】
反応炉管26はまた、炉の放射部内での加熱による管の熱膨張を相殺するための手段を備えてもよい。Wallaceの米国特許第3,671,198号に見られるようなピグテール、およびDiNicolantonioらの米国特許第4,499,055号に見られるようなオフセットの使用を含むがこれらに限定されない、熱膨張を相殺するための既知の手段のいずれかを、本発明の実践に使用することができる。当然ながら、バネおよび/または平衡錘を含むがこれらに限定されない、当業者に知られている他の手段もまた、本発明から逸脱せずに使用することができる。
【0059】
反応炉の内径は、一定またはスエージ加工されていてもよい。示された反応炉管26の外径は、好ましくは、約1.25インチ〜約5.00インチ、最も好ましくは約1.75インチ〜約3.00インチであり、内径は、外径よりも約0.30インチ〜約1.00インチ小さい範囲である。しかしながら、反応管の直径および寸法は、当業者に知られている様式で変動し得る。反応炉管がスエージ加工されている実施形態において、反応器入口の内径は、約1.00インチ〜約2.00インチの範囲であってもよく、反応器出口の内径は、約1.15インチ〜約2.50インチの範囲であってもよく、一方から他方に滑らかに遷移している。しかしながら、反応管の直径および寸法は、当業者に知られている様式で変動し得る。
【0060】
所望の長さに依存して、反応炉管26は、単一管として構築されてもよく、または、互いに結合された2つ以上の管を含んでもよい。当然ながら、本発明の他の実施形態において、管の長さは変動してもよく、等しいまたは近似的に等しい必要はない。
【0061】
図2を参照すると、反応炉管26が放射炉部6を出るに伴い、構築材料は、本発明の二重遷移結合部29により、従来の金属材料に再び変化する。結合部29は、異なる材料の移送管28(当業者に周知のような従来の金属材料を含む)および反応炉管26を結合する。遷移結合部29は、結合部24と同様、1つの材料または組成から別の材料または組成に連続的または半連続的に傾斜する、一連の材料から作製される少なくとも2つの遷移部分を含む。材料の傾斜部分は、互いに接合されると、移送管28(および交差管20)の従来の金属材料と反応炉管26のセラミック材料との間に、機能傾斜材料(FGM)を提供する。本発明の遷移結合部29および24は、そのサイズまたは形状に関して制限されず、本明細書において、エルボ管、「T」字管、減少管等におけるその使用が企図される。
【0062】
再び図2を参照すると、本発明の二重遷移結合部29は、炉反応器管26を管28(一般に移送管と呼ばれる)に接続する。移送管28は、反応生成物ガスを急冷手段30に移送し、ここでさらなる反応を防止するために上述の反応生成物ガスが約1000°F未満の温度に急冷される。多くの場合、最大エネルギー効率を達成する目的で、それより大幅に低い温度までの急冷が実践される。急冷手段30は、当業者に知られている周知の構造のいずれかを有し得る。例えば、Woebckeらの米国特許第5,427,655号、Woebckeの米国特許第3,403,722号、Woebckeの米国特許第3,910,347号、Woebckeの米国特許第4,356,151号、およびWoebckeの米国特許第5,271,827号を参照されたい。急冷後、分解された生成物は、管32を介して下流側の処理に送られる。
【0063】
図2は単に概略であることに留意されたい。制御システム、強制通風機、誘導通風機、対流部内の実用対流バンドル(例えば、ボイラー用水の予熱および超高圧蒸気の過熱用)等の詳細は、必要に応じて当業者に理解され、それらが本明細書において明示的に記載されていないことは、それらが発明を実施するための形態に含まれないことを暗示するものではない。
【0064】
ある特定の好ましい実施形態において本発明を説明したが、当業者に明らかな全ての変形例が、添付の特許請求の範囲を含む本発明の精神および範囲内に包含されることが意図される。上記で参照された特許、特許出願および出版物は全て、参照によりその全内容が本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料Aから第1の金属材料Bへの遷移を含む、装置内の2種の材料間の結合部を製造する方法であって、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bは、前記装置の動作温度で適合せず、前記方法は、
i)前記第1の材料Aから第2の材料Cへの第1の遷移であって、第2の材料Cは、前記装置の動作温度で、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第2の材料Cとの間の前記第1の遷移は、第1の材料Aと第2の材料Cとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように傾斜している、第1の遷移と、
ii)第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移であって、第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように傾斜している第2の遷移と
を含み、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、方法。
【請求項2】
第1の材料Aが、セラミックス、アドバンストセラミックス、セラミックマトリックス複合材、金属間化合物および酸化物分散強化材料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の材料Aが、炭化ケイ素系セラミックス、窒化ケイ素系材料、アルミナ系材料、ケイ酸マグネシウム、およびジルコニア、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の材料Aが、Al、ZrO、SiC、BC、WC、BN、Si、SiAlON、MgAl(スピネル)およびMgBからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の材料Aが複合材料である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の金属材料Bが少なくとも1種の金属材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の金属材料Bが、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、鉄合金、ニッケル合金、チタン合金およびコバルト合金からなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の金属材料Bが鉄クロムニッケル系合金である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと同じではなく、アルミナ、ジルコニアおよびスピネルからなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の材料Aが炭化ケイ素系であり、第1の金属材料Bが鉄クロムニッケル系であり、第2の材料Cがアルミナである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の遷移が、従来の粉末加工および焼成、バルク粒子加工、予成形加工、層加工、溶解浸透技術、押出および溶射、拡散接合、溶射、加熱押出、ならびに拡散接合ろう付けからなる群から選択される少なくとも1種のプロセスにより実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2の遷移が別の金属材料をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移が、別の金属材料をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
別の金属材料が、鉄系、ニッケル系、チタン系、コバルト系、およびパラジウム系材料および合金からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素原料をオレフィン系炭化水素生成物に熱分解するための炉と共に使用するための炉要素であって、前記炉の製造および/または動作温度で適合しない第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと、前記炉の動作温度で、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で傾斜している第2の材料Cとを有する結合部を含み、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、炉要素。
【請求項16】
第2の材料Cが、第1の材料Aから前記第2の材料Cへの第1の遷移、および第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移により、前記第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で機能的に傾斜している、請求項15に記載の要素。
【請求項17】
第1の材料Aが、セラミックス、アドバンストセラミックス、セラミックマトリックス複合材、金属間化合物および酸化物分散強化材料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項15に記載の要素。
【請求項18】
第1の材料Aが、炭化ケイ素系材料、窒化ケイ素系材料、アルミナ系材料、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウムおよびジルコニアからなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項17に記載の要素。
【請求項19】
第1の材料Aが、Al、ZrO、SiC、BC、WC、BN、Si、SiAlON、MgAl(スピネル)およびMgBからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載の要素。
【請求項20】
第1の材料Aが複合材料である、請求項19に記載の要素。
【請求項21】
第1の金属材料Bが少なくとも1種の金属材料である、請求項15に記載の要素。
【請求項22】
第1の金属材料Bが、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、鉄合金、ニッケル合金、およびチタン合金からなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項21に記載の要素。
【請求項23】
第1の金属材料Bが鉄クロムニッケル系合金である、請求項22に記載の要素。
【請求項24】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと同じではなく、アルミナ、ジルコニアおよびスピネルからなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項15に記載の要素。
【請求項25】
第1の材料Aが炭化ケイ素であり、第1の金属材料Bが鉄クロムニッケル系合金であり、第2の材料Cがアルミナである、請求項15に記載の要素。
【請求項26】
第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移が、別の金属材料を含有する第2の材料Cをさらに含む、請求項16に記載の要素。
【請求項27】
別の材料が、鉄系、ニッケル系、チタン系、コバルト系およびパラジウム系材料および合金からなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項26に記載の要素。
【請求項28】
炭化水素原料をオレフィン系炭化水素生成物に分解するための方法であって、複数の反応炉管を備える熱分解炉内で、少なくとも約1300°Fの温度で炉内の前記炭化水素を分解するステップを含み、少なくとも1つの前記反応炉管は、前記温度で適合しない第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと、前記温度で第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの両方と適合し、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように、第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で傾斜している第2の材料Cとを有する結合部を備え、ただし、前記結合部は少なくとも2つの傾斜部を含有する、方法。
【請求項29】
第2の材料Cが、第1の材料Aから前記第2の材料Cへの第1の遷移、および第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移により、前記第1の材料Aと第1の金属材料Bとの間で機能的に傾斜している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第1の材料Aが、セラミックス、アドバンストセラミックス、セラミックマトリックス複合材、金属間化合物および酸化物分散強化材料からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
第1の材料Aが、窒化ケイ素系材料、アルミナ系材料、ケイ酸マグネシウムおよびジルコニアからなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
第1の材料Aが、Al、ZrO、SiC、BC、WC、BN、Si、SiAlON、MgAl(スピネル)およびMgBからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
第1の材料Aが複合材料である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
第1の金属材料Bが少なくとも1種の金属材料である、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
第1の金属材料Bが、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、鉄合金、ニッケル合金、およびチタン合金からなる群から選択される少なくとも1種の材料である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1の金属材料Bが鉄クロムニッケル系合金である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bと同じではなく、アルミナ、ジルコニアおよびスピネルからなる群から選択される少なくとも1種の金属材料である、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
第1の材料Aが炭化ケイ素であり、第1の金属材料Bが鉄クロムニッケルであり、第2の材料Cがアルミナである、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
第2の材料Cと第1の金属材料Bとの間の第2の遷移が、別の化合物を含有する第2の材料Cをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
別の化合物が、鉄系、ニッケル系、チタン系、コバルト系、およびパラジウム系材料および合金からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の金属材料Bと第3の材料Dとの間の第3の遷移であって、前記第1の金属材料Bと前記第3の材料Dとの間の実質的に傾斜した組成および/または熱膨張係数を有する傾斜部を提供するように傾斜している第3の遷移をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する、請求項15に記載の炉要素。
【請求項44】
第2の材料Cが、第1の材料Aおよび第1の金属材料Bの熱膨張係数の中間の熱膨張係数を有する、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−504508(P2013−504508A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528842(P2012−528842)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/047691
【国際公開番号】WO2011/031623
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(503282220)ストーン アンド ウェブスター プロセス テクノロジー インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】