説明

セラミックス成形体、及び皮膚血流促進用装身具

【課題】血流促進効果を備え、しかも自由に色をつけることが可能なセラミックス成形体と、そのようなセラミックス成形体を利用して構成された皮膚血流促進用装身具の提供。
【解決手段】ブレスレット1は、顔料で色が付けられた球状のセラミックス成形体2を26個と、各セラミックス成形体2を一列に並べた状態において各セラミックス成形体2の間に一つずつ配置されるビーズ4とを備えている。セラミックス成形体2は、ピロリン酸カルシウム及び焼結助剤を主成分とするセラミックス母材100重量部に対して、五酸化アンチモンを含有する酸化スズである五酸化アンチモン含有酸化スズが0.1〜70重量部配合された原料組成物を、成形、焼成したものである。ブレスレット1の一端に設けられた円柱状磁石5とブレスレット1の他端に設けられた球体状磁石7を磁着させるとブレスレット1が環状になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流促進効果のあるセラミックス成形体と皮膚血流促進用装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲルマニウムを含むセラミックス成形体で作られた装身具(例えば、特許文献1参照。)や黒鉛を含むセラミックス成形体で作られた装身具(例えば、特許文献2参照。)には、それぞれ血流促進効果があることが知られている。
【0003】
ゲルマニウムは、皮膚と接触すると、ゲルマニウムから放出した電子によって皮膚に微弱電流が流れるために血流が促進すると言われている。また、黒鉛は、遠赤外線を放出し、その温熱効果により血流を促進すると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3110113号公報
【特許文献2】特開2002−206125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のゲルマニウムや黒鉛を含むセラミックス成形体で作られた装身具には、以下に述べるような問題があった。
ゲルマニウムや黒鉛を含むセラミックス成形体は、黒や濃いグレーに着色しているため、各種顔料を配合しても、その顔料本来の色が発色せず、所望の色を自由につけることが難しい。そのため、これらセラミックス成形体で作られた装身具には、様々な色をつけて装飾性を持たせることが困難である、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、血流促進効果を備え、しかも自由に色をつけることが可能なセラミックス成形体と、そのようなセラミックス成形体を利用して構成された皮膚血流促進用装身具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載のセラミックス成形体は、ピロリン酸カルシウム及び焼結助剤を主成分とするセラミックス母材100重量部に対して、五酸化アンチモンを含有する酸化スズである五酸化アンチモン含有酸化スズが0.1〜70重量部配合された原料組成物を、成形、焼成してなることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のセラミックス成形体は、請求項1に記載のセラミックス成形体において、顔料が添加されていることを特徴とする。
請求項3に記載のセラミックス成形体は、請求項1又は請求項2に記載のセラミックス成形体において、前記五酸化アンチモン含有酸化スズには、酸化スズに対するモル比で0.5〜2mol%の五酸化アンチモンが配合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載のセラミックス成形体は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体において、前記ピロリン酸カルシウムは、前記セラミックス母材全体に対する重量比で20〜60重量%配合されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載のセラミックス成形体は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のセラミックス成形体において、セラミックス成形体の焼結助剤としては、セラミックス母材全体に対する重量比で、10〜30重量%のベントナイトと、10〜20重量%のカオリンと、20〜55重量%の長石が配合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の皮膚血流促進用装身具は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のセラミックス成形体を備えてなることを特徴とする。
以下、本発明の構成、作用、効果について、さらに詳しく説明する。
【0012】
本発明のセラミックス成形体は、ピロリン酸カルシウムを含有しているので、焼成後はきわめて白色度の高い透明感のある白色体となる。しかも、五酸化アンチモン含有酸化スズが配合されているため、上述のようなセラミックス母材の白色度を阻害しない程度の配合量であっても、十分に血流促進効果を高くすることができる。
【0013】
五酸化アンチモン含有酸化スズを配合することによって血流促進効果が得られることは、発明者が実験的に確認した事実であり、血流促進効果がある理由は、現時点で明確に解明されてはいない。ただし、五酸化アンチモン含有スズには、高効率の遠赤外線放出能があるので、これが血流促進効果を発現させる一因になっている可能性があると推察される。
【0014】
さらに、このセラミックス成形体においては、ピロリン酸カルシウムを配合したことにより、セラミックス成形体の重量を一般的な多くのセラミックス成形体よりも軽くすることができるので、この点でも、装身具としての用途に好適なものとなる。
【0015】
本発明のセラミックス成形体には顔料を配合することができ、その場合、透明感のある白色体となるセラミックス成形体に対して顔料が配合されることとなるので、顔料本来の色を容易に発色させることができるようになり、装飾性の高い様々な色をつけることが可能になる。
【0016】
本発明のセラミックス成形体において、五酸化アンチモン含有酸化スズには、酸化スズに対するモル比で0.5〜2mol%の五酸化アンチモンが配合されていると望ましい。上記のモル比が0.5mol%を下回る場合、五酸化アンチモン含有酸化スズを配合した効果が弱まる傾向がある。一方、上記のモル比が2mol%を上回ると、五酸化アンチモン含有酸化スズの量が多いことに起因して、最終的に得られるセラミックス成形体がグレー系に発色する傾向がある。
【0017】
この点、酸化スズに対するモル比で五酸化アンチモンが0.5〜2mol%の範囲内に調製されていれば、五酸化アンチモン含有酸化スズを配合したことに起因する発色は目視で確認できない程度まで抑制され、且つ、血流促進効果も得ることができる。
【0018】
ピロリン酸カルシウムは、前記セラミックス母材全体に対する重量比で20〜60重量%配合されていると好ましい。上記の重量比が20重量%を下回る場合、他の成分の配合比が相対的に増大するため、最終的に得られるセラミックス成形体の透明度や白色度が低下し、所望の透明感のある白色体にすることができないおそれがある。一方上記重量比が60重量%を上回ると、コスト的にデメリットがある。より詳しくは、ピロリン酸カルシウムは、一般的なセラミックス原料と比較して高価であるため、ピロリン酸カルシウムのセラミックス母材全体に対する配合比が増大すると、その分セラミックス母材のコストが高くなる。この点、重量比が20〜60%の範囲内で配合されていれば、コストを抑えて、セラミックス母材をきわめて白色度の高い透明感のある白色体にすることができる。
【0019】
ベントナイトは、セラミックス成形体の焼結粘性助剤の一つであり、セラミックス母材全体に対する重量比で、10〜30重量%配合されていると好ましい。上記の重量比が10重量%を下回る場合、粘性が不十分となる傾向がある。一方上記重量比が30重量%を上回ると、その他の成分の配合比が相対的に減少するので、例えば、セラミックス母材を所望の透明感のある白色体にすることが難しくなるなどの悪影響が出るおそれがある。
【0020】
カオリンも、セラミックス成形体の焼成温度幅を広げるための焼結助剤の一つであり、セラミックス母材全体に対する重量比で、10〜20重量%配合されていると好ましい。上記の重量比が10重量%を下回る場合、軟化変形する傾向がある。一方上記重量比が20重量%を上回ると、その他の成分の配合比が相対的に減少するので、これもセラミックス母材の透明感や白色度を損ねる要因になるおそれがある。
【0021】
長石も、セラミックス成形体の焼結助剤の一つであり、セラミックス母材全体に対する重量比で、20〜55重量%配合されていると好ましい。上記の重量比が20重量%を下回る場合、他の焼結助剤同様に焼結効果が不十分となる傾向がある。一方上記重量比が55重量%を上回ると、ベントナイトやカオリンの配合比が相対的に減少し、これもまた所望の透明感や白色度を備えるセラミックス母材にすることを困難にするおそれがある。
【0022】
さらに、本発明の皮膚血流促進用装身具によれば、上述のような本発明のセラミックス成形体を備えているので、血流促進効果が発現するものとなり、しかも、様々な顔料で着色することが可能であり見た目に美しい装飾性を付与するができる。さらに重量が軽いため、身に着けても首や手足に負担になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】皮膚血流促進用装身具の一例を示した説明図である。
【図2】(a)は、セラミックス成形体を示した説明図、(b)は、皮膚血流促進用装身具を環状につなげた説明図である。
【図3】皮膚血流速測定結果を示すグラフである。
【図4】T字の孔が空いたセラミックス成形体を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
[1.皮膚血流促進用装身具]
図1に示すブレスレット1は、顔料で色が付けられた球状のセラミックス成形体2を26個と、各セラミックス成形体2を一列に並べた状態において各セラミックス成形体2の間に一つずつ配置されるビーズ4とを備えており、ブレスレット1の一端には円柱状の磁石である円柱状磁石5が備えられ、ブレスレット1の他端には円柱状磁石5と同様の形状である円柱状磁石6と球体状の磁石である球体状磁石7とが備えられている。
【0025】
各セラミックス成形体2には、各セラミックス成形体2の中心を通る貫通孔3が設けられている(図2(a)参照。)。セラミックス成形体2の貫通孔3とビーズ4の貫通孔に紐を通し、各セラミックス成形体2と各ビーズ4とが連結される。さらに、ブレスレット1の一端には円柱状磁石5が、ブレスレット1の他端には円柱状磁石6と球体状磁石7とが連結される(図2(b)参照。)。ブレスレット1は、円柱状磁石5と円柱状磁石6と球体状磁石7とを利用して環状につなげられる。
【0026】
[1−1.皮膚血流促進用装身具の製造方法]
セラミックス母材全体に対する重量比で、15重量%のベントナイトと、10重量%のカオリンと、30重量%の長石と、45重量%のピロリン酸カルシウムの微粉末と、この原料100重量部に対して0.5重量部の五酸化アンチモン含有酸化スズ(五酸化アンチモン含有酸化スズには、五酸化アンチモンが酸化スズに対するモル比で0.9mol%)の微粉末とを混合し、トロンミルの湿式粉砕を8時間〜10時間行った。その後200メッシュのアミに通してスラリーを乾燥させ原料とし、転動造粒法にて半径約3mmのボールを作った。造粒した後、生乾きのボールをドリル刃で直径約1.2mmの貫通孔3を空けて、乾燥した後、1130℃〜1185℃の間で酸化雰囲気中、12時間焼結して表面に鈍い光沢のあるボールを得た。多少の凹凸は六角のラバー内張りミキサーで転動させ表面を磨いた。
【0027】
このボールを研磨後、所期のセラミックス成形体2を得た。そして、セラミックス成形体2の貫通孔3に紐を通して所定の長さになるようにセラミックス成形体2を連結して皮膚血流促進用装身具とした。
[2.皮膚血流速測定試験]
次に、上述のセラミックス成形体が有する血流促進効果を確認するため、以下に説明するような手順で皮膚血流速測定試験を行った。
【0028】
(2−1.皮膚血流速測定試料の製造方法)
皮膚血流速測定試料は、ボールミルにて表1に示す番号0〜6の各種原料を良く混合したのち、プレス機で直径20mm、厚さ4.5mmの円形に成形し、電気炉中1200℃、12時間焼成することによって製造した。
【0029】
【表1】

(2−2.皮膚血流速測定方法)
レーザードップラー ALF21(株式会社 アドバンス)を用いて、右手にコントロール(試料0)を持ち、左手にて各試料を持ち、左右の皮膚血流量を同時測定した。一つの試料につき測定は5回行った。測定は5分間連続して行い、30秒毎の皮膚血流量(V)の平均値をプロットした。
【0030】
(2−3.測定結果)
試料3の測定結果について図3に示す。
図3は、被測定者が試料を持たない状態での皮膚血流が平均値で1.5ml/min/100gであり、この値を100とした場合の、試料3とコントロール(試料0)の各血流量の測定値を算出しプロットしたグラフである。
【0031】
図3に示すように、試料3については、コントロール(試料0)と比較して皮膚血流量(V)が上昇することが明らかとなった。
さらに、表2はコントロール(試料0)と各試料(試料1〜6)の測定値の差を30秒毎に算出し、その差の最小値と最大値を示したものである。
【0032】
【表2】

表2に示すように、試料1(セラミックス母材100重量部に対して五酸化アンチモン含有酸化スズが0.06重量部配合されている。)は、皮膚血流量を促進する効果の明確な向上は認められなかったが、試料2〜試料5においては、セラミックス母材100重量部に対して五酸化アンチモン含有酸化スズが0.125重量部以上配合されることによって、皮膚血流量を促進する効果の向上が認められた。
【0033】
また、試料6のようにシリカゲルを含むセラミックス母材では、皮膚血流量を促進する効果が大幅に低下した。
[3.変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、ブレスレット型の皮膚血流促進用装身具を構成する例を示したが、本発明の皮膚血流促進用装身具は、ブレスレット型のものに限定されるものではない。具体的には、ネックレス型のものであってもよいし、その他身体に身に付ける形態のものであれば、どのような形態のものにでも適用可能である。
【0035】
本発明の皮膚血流促進用装身具の製造方法は、上記実施形態では転動造粒法を用いたが、金型プレス成形方法、押し出し成形方法、鋳込み成形方法であってもよい。
金型プレス成型方法を使用した製造方法について以下に述べる。
【0036】
離型剤と分散液と水等を混合させて転動造粒で顆粒を造り(微粉50%、メッシュ#60〜#80が30%、メッシュ#80〜#100が20%)、プレス成形して貫通孔の空いた球を製造した。貫通孔の空いた珠は、色素により焼成凝縮が異なるが、1130℃〜1185℃の間で適宜焼成して表面に鈍い光沢のある珠とした。多少の凹凸があるので六角のラバー内張りミキサーで転動させ表面を磨いた。
【0037】
押し出し成形方法を使用した製造方法について以下に述べる。
直径11mm口金の矢(芯穴部直径2mm径)で押し出し、乾燥後、湿布で角部の面取りを行い焼成した。焼成後の製造方法は金型プレス成形方法と同様である。
【0038】
鋳込み成形方法を使用した製造方法について以下に述べる。
鋳込み成形方法は、上記の成形方法では困難な例えばハート型のセラミックス成形体を製造する場合に使用される。
【0039】
粘土100重量部に対して28〜35重量%の水分と分散剤とでスラリーを調製した後、石膏型に流し込み成形体とした。製造後、石膏型にあわせ目のバリの仕上げをして焼成した。焼成後の製造方法は金型プレス成形方法と同様である。
【0040】
さらに焼成後の硬い珠に孔を空ける際には、超音波穴あけ機が使用される。超音波穴あけ機によって、セラミックス成形体には、焼成前に形成されていた貫通孔に対して垂直な孔を形成することができ、図4に示すようにT字の孔8が空いたセラミックス成形体を製造することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…ブレスレット、2…セラミックス成形体、3…貫通孔、4…ビーズ、5…ブレスレット1の一端にある円柱状磁石、6…ブレスレット1の他端にある円柱状磁石、7…球体状磁石、8…T字の孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロリン酸カルシウム及び焼結助剤を主成分とするセラミックス母材100重量部に対して、五酸化アンチモンを含有する酸化スズである五酸化アンチモン含有酸化スズが0.1〜70重量部配合された原料組成物を、成形、焼成してなる
ことを特徴とするセラミックス成形体。
【請求項2】
顔料が添加されている
ことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス成形体。
【請求項3】
前記五酸化アンチモン含有酸化スズには、酸化スズに対するモル比で0.5〜2mol%の五酸化アンチモンが配合されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセラミックス成形体。
【請求項4】
前記ピロリン酸カルシウムは、前記セラミックス母材全体に対する重量比で20〜60重量%配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体。
【請求項5】
前記焼結助剤として、前記セラミックス母材全体に対する重量比で、10〜30重量%のベントナイトと、10〜20重量%のカオリンと、20〜55重量%の長石が配合されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のセラミックス成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス成形体を備えてなる
ことを特徴とする皮膚血流促進用装身具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−136404(P2012−136404A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290901(P2010−290901)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(500518407)株式会社鈴木工業所 (4)
【Fターム(参考)】