説明

セラミックス製熱交換器

【課題】硫酸などの高温腐食性流体下でも熱交換効率が高く、かつ構造信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供する。
【解決手段】セラミックスブロックに複数個の流路を一列とする列を数列平行に形成し、隣接する列毎に前記流路を流体Aと流体Bとが流れる流路とし、これらの流路には隣接する列毎に異なる流体Aおよび流体Bを対向流として流し、流体Aと流体Bとの熱交換を行うセラミックス製熱交換器で、熱交換部は、複数のセラミックスブロックをシール材を介して積み重ね、積み重ね方向の両端部を端板とタイロッドとからなる締結手段により連結して一体化し、端板の外面側に前記タイロッドの軸方向の熱膨張を吸収する熱膨張吸収手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力産業、航空宇宙、化学産業等で適用されるセラミックス製熱交換器に係り、特に核熱を利用して水原料から大量の水素と酸素を製造する熱化学ISプロセス法水素製造装置の熱交換器として好適なセラミックス製熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力産業、航空宇宙、化学産業および一般産業の広い産業分野で各種熱交換器が使用されている。特に、耐高温や耐腐食性が要求される熱交換器では熱交換部にセラミックスブロックが採用される。ここでは、その一例として、約950℃の核熱を利用して水原料から大量の水素と酸素を製造する熱化学ISプロセス法水素製造装置に用いる熱交換器について説明する。
【0003】
ISプロセスは基本的に下記の3つのサブシステムからなる反応である。
【化1】

【0004】
この3つのサブシステムのうち、硫酸分解反応とヨウ化水素分解反応とは、吸熱反応で熱交換器を介して高温ガス炉等から供給される高温ヘリウムガス等と熱交換して加熱される。
【0005】
硫酸は金属類を腐食させるため、熱交換部には耐腐食性が要求される。さらに、使用温度が400℃〜800℃以上と高いので、硫酸プラント等で一般に使用されるポリテトラフルオロエチレン系材料と金属との組み合わせを使用できない等の課題がある。
【0006】
そこで、従来では高温耐食性および高温強度の両面から、セラミックスブロックを適用して、硫酸分解反応を行う硫酸蒸発器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この提案では、同文献の明細書[0011]〜[0015]及び図2、図3〜図11等に示されるように、高温ヘリウムガスを収容する圧力容器の底部に接続された硫酸供給管により、下部プレナムに供給された約455℃の硫酸を熱交換部に貫流させ、上部プレナム部を経て硫酸ガス排出管から排出するようになっている。
【0008】
熱交換部は、それぞれ直行する2組の流路Aと流路を有するセラミックスブロックと、セラミックスブロックの外周に配設された複数枚の仕切り板と、仕切り板を包含するように配置された内筒とで構成されている。
【0009】
熱交換部の上部には、圧力容器から内筒に延在するヘリウム入口ノズルが設けられ、高温熱交換系統から供給される約689℃の高温ヘリウムガスが熱交換部の上部室に流入する。流入した高温ヘリウムガスは仕切り板と内筒とで仕切られた各室を蛇行しながらセラミックスブロックの一方の流路を流れ、他方の流路を流れる硫酸と熱交換される。そして、熱交換部の下部室から圧力容器に流出したヘリウムガスは、ヘリウム出口ノズルから高温熱交換系統に戻る。
【特許文献1】特開2005−61785号公報(明細書[0011]〜[0015]及び図2、図3〜図11等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
セラミックスブロックの製法としては、一般的には粉末を成形後、成形体を所定の寸法に加工し、その後焼結する方法が適用される。セラミックスは高温強度も高く、使用雰囲気に合った適切な材料選択で、しかも耐食性も有する。また、熱交換器に使用する場合には、熱伝導率が大きいことも選択因子である。硫酸を使用する熱化学ISプロセス法水素製造装置用の熱交換器としては、硫酸との耐食性および耐熱性が要求される。
【0011】
硫酸製造などの硫酸プラントでは、温度が約200℃程度と低く、ポリテトラフルオロエチレンやガラスなどの耐食材を金属にコーティングして使用しているのが現状である。
【0012】
しかし、400℃以上の熱化学ISプロセス法水素製造装置用熱交換器では、ポリテトラフルオロエチレン等も使用できないので、硫酸との耐食性および耐熱性の面から、炭化珪素や窒化珪素等のセラミックス熱交換器が提案されている。但し、セラミックスは弾性材料である金属と比較して、構造材として使用するには種々の課題がある。
【0013】
すなわち、第1の課題は、セラミックスが脆性材料であるため靭性値が低く、脆い材料である点である。したがって、応力集中や微小クラックが起点になって亀裂進展が起こり易く、時には破壊に至ることもある。
【0014】
第2の課題は、接合が困難な点である、冶金的接合方法としては、(1)ロー付け、(2)反応焼結、(3)常圧焼結等がある。この課題としては、信頼性のある接合には炉が必要であり、接合体の大きさが現有する炉の設備容量の制約を受ける。さらに、接合部に欠陥や強度不均一がある場合には、強度低下のみならず、前述した応力集中による亀裂進展の恐れもある。
【0015】
第3の課題は、セラミックスの線膨張係数が約4E−6/℃のように、例えばステンレス鋼(18E−6/℃)、あるいはインコネル等(15E−6/℃)等の金属製構造材に比較して小さく、高温下では大きな熱膨張差を生じる。
【0016】
特に、硫酸蒸発器においては、上述の問題点が顕著となる。すなわち、特許文献1に示されている従来の熱交換部においては、一方の流路の加工制限上、複数のセラミックスブロックを接合して一体化される。したがって、一体化の大きさは接合する炉の大きさに制限される。もし、炉を使用しない接着等の簡易接合では、母材と同等な高温強度を得ることができない。さらに、接合部は強度不連続部になり、応力集中で破壊する恐れがある。
【0017】
また、一方の流路と他方の流路とは直交しており、例えば一方の流路を流れるヘリウムガスと他方の流路を流れる硫酸との仕切りが容易である反面、管状流路同士の直交流では対向面積が見掛け上、点接触状態となって小さく、熱交換熱量が低下する。また、仕切り板とセラミックスブロック、仕切り板と内筒との熱膨張差が問題になる。
【0018】
すなわち、内筒はステンレス鋼などの金属である端板に取り付けられので、内筒や仕切り板の材質はステンレス鋼などの金属が好ましい。仕切り板と内筒とを例えばステンレス鋼製とした場合には、セラミックスブロックの外周と仕切り板の内周とにギャップが生じ、この部分からヘリウムが漏洩し、結果的に交換熱量を低下させる。この熱膨張差によるヘリウムガスの漏洩を回避するには、何らかの熱膨張吸収手段を設ける必要がある。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、硫酸などの高温腐食性流体下でも熱交換効率が高く、かつ構造信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の目的を達成するために、請求項1に係る発明では、セラミックスブロックに複数個の流路を一列とする列を数列平行に形成し、隣接する列毎に前記流路を流体Aと流体Bとが流れる流路とし、これらの流路には隣接する列毎に異なる前記流体Aおよび前記流体Bを対向流として流し、前記流体Aと前記流体Bとの熱交換を行うセラミックス製熱交換器であって、前記熱交換部は、複数のセラミックスブロックをシール材を介して積み重ね、積み重ね方向の両端部を端板とタイロッドとからなる締結手段により連結して一体化し、前記端板の外面側に前記タイロッドの軸方向の熱膨張を吸収する熱膨張吸収手段を設けた構成としたことを特徴とするセラミックス製熱交換器を提供する。
【0021】
請求項2に係る発明では、前記各セラミックスブロックの接合端部の少なくともいずれか一方に、端部側に向って次第に拡径するテーパ部を設け、前記テーパ部外周に嵌合するテーパリングと、このテーパリングの外周に配設され、前記テーパリングの端部に当接する段部を有するフランジと、前記フランジ同士を締結する複数本のタイロッドとを備えたセラミックス製熱交換器を提供する。
【0022】
請求項3に係る発明では、複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記タイロッドと同系またはこれよりも熱膨張係数の大きい材質からなるスペーサを、前記端板と前記タイロッド先端部間に介挿したセラミックス製熱交換器を提供する。
【0023】
請求項4に係る発明では、複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記端板は、熱膨張係数の異なる複数枚の板をシール部材を介して積層する構成としたセラミックス製熱交換器を提供する。
【0024】
請求項5に係る発明では、前記熱交換部がセラミックスブロックで構成された熱交換器であって、前記セラミックスブロック端部の軸方向所定の位置に大径頭部を形成し、この大径頭部に当接するシール部材と、このシール材を大径頭部に押し付けるばねと、これらシール材およびばねの外周側に配置され、軸方向の熱膨張差を吸収するベローズを有するヘリウム入口容器とを備えたセラミックス製熱交換器を提供する。
【0025】
請求項6に係る発明では、複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記シール材を前記流体Aまたは前記流体Bの少なくともいずれか一方の流路の外周側に配設したセラミックス製熱交換器を提供する。
【0026】
請求項7に係る発明では、複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記シール材は、前記流体Aおよび前記流体Bの流路に連通する孔を有する孔開き板であるセラミックス製熱交換器を提供する。
【0027】
請求項8に係る発明では、軸方向に複数の流路を形成したセラミックスブロックの両端に端板を配接し、この端板を複数本のタイロッドでシール材を介してセラミックスブロックに締結接合したセラミックス製熱交換器であって、前記端板と前記セラミックスブロックとの接合面に所定の直径差で相噛み合う段差部を設け、この直径差で相噛み合う前記段差部間に形成された空間部に、軸方向に開口部を有するシールリングを装着したセラミックス製熱交換器を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、流体Aと流体Bとを対向流として流し、これら流体Aと流体Bとの熱交換を行う熱交換を行う熱交換部は、複数のセラミックスブロックをシール材を介して積み重ね、積み重ね方向の両端部を端板とタイロッドとからなる締結手段により連結して一体化し、端板の外面側にタイロッドの軸方向の熱膨張を吸収する熱膨張吸収手段を設けた構成としたことにより、セラミックスブロックは焼結炉等の製造設備に依存することなくシール材を介して積層することで、熱交換容量に応じた所定の大きさを実現することができる。そして、熱膨張吸収手段を介してセラミックスブロックを連結一体化したので、高温使用時のセラミックスブロックとタイロッドとの熱膨張差が生じても、確実にシールすることができる。よって、本発明によれば、硫酸などの高温腐食性流体下でも熱交換効率が高く、かつ構造信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るセラミックス製熱交換器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、核熱を利用して水原料から大量の水素と酸素を製造する熱化学ISプロセス法水素製造装置のセラミックス製熱交換器を例として説明する。
【0030】
[第1実施形態(図1〜図8)]
図1は、本発明の第1実施形態によるセラミックス製熱交換器の構成を示す全体構成図である。まず、図1を参照して、熱化学ISプロセス法水素製造装置のセラミックス製熱交換器の全体構成を概略的に説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態のセラミックス製熱交換器は、縦長筒状の圧力容器1を有する。この圧力容器1は、例えば円筒状胴部1aの上下端部に半球状の上鏡部1bおよび下鏡部1cを設けた密閉容器として構成されている。下鏡部1cにはスカート状の支持部16が設けられ、この支持部1dにより圧力容器1が所定の設置床上に直立状態で固定設置される。
【0032】
圧力容器1の円筒状胴部1aの周壁部上側には、第1の熱交換用流体である高温ヘリウムガスaを導入するためのヘリウム入口ノズル2が設けられている。ヘリウム入口ノズル2の外部には、図示省略のヘリウム供給管が接続されている。ヘリウム入口ノズル2の内部は、曲管状のヘリウム導入管2aに接続され、このヘリウム導入管2aは、圧力容器1内の上部空間側に導かれて、ヘリウム入口容器2bに連結されている。ヘリウム入口容器2bは、後述する熱交換部6のヘリウム入口2cに接続され、ヘリウムガスaは熱交換部6内を下方に向って流下するようになっている。
【0033】
また、圧力容器1の下鏡部1cには、第2の熱交換用流体である硫酸bを導入するための硫酸導入部3が設けられている。硫酸導入部3の外部には、図示省略の硫酸供給管が接続されている。硫酸導入部3の内部には垂直な硫酸導入管3aが接続され、この硫酸導入管3aは、圧力容器1内の底部側に設けられた下部プレナム3bに連結されている。下部プレナム3bは、熱交換部6に接続され、硫酸bは熱交換部6内を上方に向って上昇するようになっている。
【0034】
また、圧力容器1の上鏡部1bの上方には、熱交換後のヘリウムガスaを排出するためのヘリウム出口ノズル4が設けられている。このヘリウム出口ノズル4には、熱交換部6内を流下して硫酸bとの熱交換後に熱交換部6からヘリウム出口2dを介して圧力容器1内に排出されたヘリウムガスaが、圧力容器1内で上昇流となって導かれ、外部に排出されて図示省略のヘリウムガス供給部側に還流するようになっている。
【0035】
さらに、圧力容器1の上鏡部1bの上方には、熱交換後の硫酸bを排出するための硫酸排出部5が設けられている。このヘリウム出口ノズル4には、熱交換部6内を上昇してヘリウムガスaとの熱交換によってガス化した硫酸ガスbが、上部プレナム3cを経て硫酸ガス排出管3dに導かれ、外部に排出されて図示省略の硫酸処理部へ送られるようになっている。
【0036】
圧力容器1の内部中央位置には、第1の流体であるヘリウムガスaと、第2の流体である硫酸bとを熱交換するための熱交換部6が設置されている。この熱交換部6は、上下方向に沿う多数の熱交換用流路が隣接配置で形成された複数体、例えば2体のセラミックスブロック7,8を上下に積層した縦長円柱状のものであり、上下のセラミックスブロック7,8の接合部には、両者の接合面を気密にシールするためのシール材10が設けられている。
【0037】
上側のセラミックスブロック(上側ブロック)7の上端部は、水平な金属製の上側端板11によって上方から保持され、また下側のセラミックスブロック(下側ブロック)8の下端部は、水平な金属製の下側端板12によって下方から支持され、これら上側端板11と下側端板12とが、セラミックスブロック7,8の周囲に配設された複数本の縦長な金属製タイロッド13によって連結一体化されている。
【0038】
即ち、各タイロッド13の上端側にはねじ部が形成され、このねじ部が上側端板11を貫通して上方に突出し、締結手段としてのナット14によって締結されている。上側端板11とナット14との間には、セラミックスブロック7、8と金属製タイロッド13との熱膨張差を吸収する熱膨張吸収手段15として、例えば複数の皿ばね又はコイルばね等のスプリング材が設けられている。
【0039】
同様に、各タイロッド13の下端側にもねじ部が形成され、このねじ部が下側端板12を貫通して下方に突出し、締結手段としてのナット16によって締結されている。下側端板12とナット16との間にも、熱膨張吸収手段17として、例えば複数の皿ばね、コイルばね等のスプリング材、又は弾性素材等からなる筒状体が設けられている。
【0040】
上側端板11及び下側端板12は、それぞれ支持機構18,19によって圧力容器1内に固定されている。
【0041】
このように、熱交換部6はセラミックス製の上側ブロック7と下側ブロック8とをシール材10を介して積み重ねた構成のものであり、上側ブロック7の上端側には段部9aを介して大径頭部9が一体に形成されている。なお、下側ブロック8は、上側ブロック7の下側胴部分と同一径であり、上下方向全体に亘って一定径となっている。
【0042】
次に、図2〜図7を参照してセラミックス製熱交換器の構成を詳細に説明する。図2は、上側ブロック7及び下側ブロック8によって構成される熱交換部6を拡大して示す構成図(側面図)である。図3〜図7は、各セラミックスブロック7,8に形成される熱交換用流路を示す説明図である。図3は、図2のA−A矢視図(平面図)であり、図4は、図2のB矢視図(大径頭部9の横断面図)であり、図5は、図2のC−C矢視図(上側ブロック横断面図)である。図6は、上側ブロック7の一部を切欠した切断部付き斜視図であり、図7は、下側ブロック8の一部を切欠した切断部付き斜視図である。
【0043】
これらの図3〜図7に示すように、セラミックスブロック7,8には、複数個の流路20,21を一列とする列が複数列(例えば9列)平行に形成され、これらの流路20,21は隣接する列毎に異なる流体A(ヘリウムガスa:第1の流体(外側5列))および流体B(硫酸:第2の流体(内側4列))を対向流として流す流路構成をなしている。即ち、流体Aの列からなる流路(列A)はヘリウム流路20とされ、流体Bの列からなる流路(列B)は硫酸流路21とされており、これらが交互に配置されている。
【0044】
このように、セラミックスブロック7,8には、隣接する列毎にヘリウムガスa(流体A)の流路20と硫酸(流体B)の流路21とが形成され、セラミックスブロック7,8のヘリウム入口2c及びヘリウム出口2dが形成された上下端部では、ヘリウム流路20は閉塞し、硫酸流路21のみが開口する構成となっている。すなわち、上側ブロック7の上端部の大径頭部9の周側面には、図2および図6に示すように、ヘリウム流路(列A)に連通する横孔からなるヘリウム入口2cが開口し、また下側ブロック8の下端の周側面には、図2および図7に示すように、ヘリウム流路(列A)に連通する横孔からなるヘリウム出口2dが開口している。
【0045】
図8(a)は、セラミックスブロック7、8と上側端板11および下側端板12との接合構成を一部断面として示す側面図である。この図8(a)に示すように、上側ブロック7の大径頭部9の外周面には、ヘリウム入口2cが開口しており、このヘリウム入口2cを覆うようにヘリウム入口容器2bが形成されている。ヘリウム入口容器2bは、金属製の上側端板11と、この上側端板の下方に対向して配置された補助端板22と、ヘリウム導入管2aの先端部とによって形成され、上側端板11の周縁部を密閉空間とし、ヘリウム入口2cへのヘリウムガス供給を行うようになっている。
【0046】
図8(b)、(c)は、上側ブロック7の大径頭部9と、上側端板11および補助端板22との間のシール構造を示している。すなわち、図8(b)に組立前状態として示すように、上側端板11の下面周囲部には下向き垂下枠11aが形成され、上側ブロック7の大径頭部9を囲む構成となっている。また、この下向き垂下枠11aの内側に位置する上側端板11の下面には、下向きに開口するリング状のシール溝11bが形成されている。そして、このシール溝11bの位置に対応して、リング状のシール部材23が配置されている。このシール部材23は、例えば金、または他の金属への金メッキを施して構成したものである。
【0047】
また、図8(b)に示すように、補助端板22の上面周囲部には、上側ブロック7の大径頭部9を縦壁22aが設けられ、この縦壁22aの内側に位置する補助端板22の上面にはリング状のシール溝22bが形成されている。このシール溝22bの位置に対応して、中空材からなるOリング状のシール部材24が配置されている。このシール部材24は、例えばインコネルに銀メッキを施して構成したものである。
【0048】
そして、図8(c)に組立て後の状態を示すように、上側端板11をセラミックスブロック7の大径頭部11に接合した場合には、シール部材23が潰れた状態となり、シール溝11b内に充填して、上側端板11と大径頭部11との間を気密にシールし、各流体の仕切りが確実に行われる。なお、補助端板22と上側ブロック7の大径頭部9との間のシール部材24も、上記同様にシールされる。
【0049】
なお、図8(c)に示すように、シール部材23の外周位置に、セラミックス製である大径頭部11の外周側隅角部を保護するために、金属製のクッション材25を配置することが望ましい。
【0050】
なお、本実施形態において、セラミックスブロック7,8の材質については、流体が硫酸の場合には炭化珪素または窒化珪素が望ましい。これらの耐食性および高温強度や熱伝導率の点から適している。
【0051】
また、硫酸導入管3aおよび硫酸ガス排出管3dの圧力容器1の貫通部には、熱膨張差吸収機能を有するシール機構が装備されている。
【0052】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
図示省略の硫酸供給系から供給された約455℃の硫酸bは、硫酸導入管3aから下部プレナム3bに流入し、セラミックスブロック7,8に形成された硫酸流路(列B)21を貫流し、下向きの対向流として流通する高温ヘリウムaで加熱されたセラミックスブロック7,8の流路壁面を介しての熱交換により加熱され、上部プレナム3cに流出し、硫酸ガス流出管3dから図示しないブンゼン反応系統に排出される。
【0054】
一方、図示しない高温ガス炉熱交換系統から供給される約689℃の高温ヘリウムガスaは、圧力容器1のヘリウム入口ノズル2からヘリウム導入管2aを経て熱交換部6のヘリウム入口容器2bに流入する。ヘリウム入口容器2bの両側は、それぞれ端板と上側ブロック7に形成された大径頭部9でシール部材23を介してシールされている。すなわち、ヘリウム入口容器2bの一端は、上側ブロック7に形成された大径頭部9でシール部材23を介してシールされている。そして、ヘリウム入口容器2bに流入した高温ヘリウムガスaは、上側ブロック7の上部側面に形成されたヘリウム入口2cから各ヘリウム流路20に分流してセラミックスブロック7,8内を下向きに貫流し、下側ブロック8の下部側面に形成されたヘリウム出口2dから圧力容器1内に流出する。流出したヘリウムガスaは、セラミックスブロック7,8を余熱しながら圧力容器1内を上昇し、ヘリウム出口ノズル4から高温ガス炉熱交換系統に戻る。
【0055】
以上の大実施形態によれば、セラミックスブロック7に複数個の流路を一列とする列を数列形成し、隣接する列毎にヘリウム(流体A)aと硫酸(流体B)bの流路を形成し、セラミックスブロック7,8のヘリウム入口2c、またはヘリウム出口2dが形成された端部ではヘリウム流路20は閉塞し、硫酸流路21のみが開口するように構成したので、セラミックスブロック7,8内のヘリウムガスaと硫酸bとの熱交換は対向流熱交換が可能となり、その結果、直交流に比較して対向面積が大きくなる。
【0056】
また、従来構造と異なり、仕切り板や内筒も不要で、熱膨張差などによるヘリウムの漏洩も大幅に低減できる。さらに、ヘリウム入口容器2bの一端は、上側ブロック7に形成された大径頭部9でシール部材23を介してシールされているため、上側ブロック7との径方向熱膨張差は大径頭部9とシール部材23とのすべりにより吸収できるので、高温でも確実にヘリウムガスaをシールすることができる。したがって、熱交換面積が大きく、ヘリウムガスaのバイパス漏洩も低減できるので、熱交換効率が格段に向上する。
【0057】
また、熱交換部6は、複数のセラミックスブロック7,8をシール材10を介して積み重ね、セラミックスブロック7、8の最上下部にクッション部材23,24を介して配設された端板11,12同士を、タイロッド13で熱膨張吸収手段15,17を介してセラミックスブロックを連結一体化したので、セラミックスブロック7,8は焼結炉等の製造設備に依存することなく、シール材10を介して積層することで、熱交換容量に応じた所定の大きさを実現できるようになる。
【0058】
そして、熱膨張吸収手段15,17を介してセラミックスブロック7,8を連結一体化したので、高温使用時のセラミックスブロック7,8とタイロッド13との熱膨張差が生じても、確実にシールすることができる。
【0059】
なお、タイロッド13の材質としては、高温強度が大きく、かつ線膨張係数がステンレス鋼やインコネルよりも小さく、セラミックスブロック7,8に比較的近いモリブデンやモリブデン合金、またはチタン合金、タングステン等が適している。
【0060】
また、拡端板11,12の材質も、その線膨張係数がセラミックスブロック7,8と上部プレナム3cや下部プレナム3bの中間値にあるチタン合金、またはモリブデンやモリブデン合金が、径方向の熱膨張差を小さくできる点から望ましい。
【0061】
さらに、タイロッド13の締結により、端板11,12が変形してセラミックスブロック7,8に片当りし、ヘルツ応力による応力集中で生じる圧痕や傷が亀裂進展による破壊を招く恐れがあるが、セラミックスブロック7,8と端板11,12との間にはクッション材25を介挿することにより、応力集中が緩和され、構造健全性を向上することができる。なお、クッション材25の材質としては、耐高温、硫酸bに対する耐食性および展延性が要求される。これを満たす材質としては、金が適切である。なお、クッション材25が硫酸bに接しない個所では銀でもよい。
【0062】
以上で説明したように、本実施形態によれば、硫酸などの高温腐食性流体下でも熱交換効率が高く、かつ構造健全性にすぐれた高信頼性のセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0063】
[第2実施形態(図1、図9、図10)]
本実施形態では、各セラミックスブロック7,8の接合端部の少なくともいずれか一方に、端部側に向って次第に拡径するテーパ部30、31を設け、テーパ部30、31の外周に嵌合するテーパリング32,33と、このテーパリング32,33の外周に配設され、テーパリング32,33の端部に当接する段部34,35を有するフランジ36,37と、フランジ36,37同士を締結する複数本のタイロッド38とを備えたセラミックス製熱交換器について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成部品には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図9は、本実施形態の一構成例として、セラミックスブロック7,8同士の締結手段としての締結部を示す詳細図である。
【0065】
図9に示すように、本実施形態では、各セラミックスブロック7,8の端部にテーパ部31,32がそれぞれ形成されている。このテーパ部31,32の外周には、テーパリング32,33が嵌合している。
【0066】
さらに、テーパリング32,33の外周には、テーパリング32,33の端部に当接する段部34,35を有するフランジ36,37が配設され、このフランジ36,37同士は、複数本のタイロッド38により、熱膨張吸収手段39を介して締結されている。
【0067】
熱膨張吸収手段39としては、例えば複数の皿ばね、コイルばね等のスプリング材、又は弾性素材等からなる筒状体が適用されている。
【0068】
このような構成によると、セラミックスブロック7,8とテーパリング32,33とがテーパ嵌合しているので、締結による曲げモーメントも作用せず、テーパ部30,31には圧縮応力が生じるので、脆性材料であるセラミックスブロック7,8の破壊を抑制することができる。
【0069】
さらに、フランジ36,37とテーパリング32,33の端部とは、段部34,35で当接しているので、フランジ36,37とテーパリング32,33との材質の違いによる径方向熱膨張差を吸収することができる。また、軸方向の熱膨張差は熱膨張吸収手段39により吸収される。
【0070】
なお、テーパリング32,33の材質には、セラミックスブロック7,8と線膨張係数が近いものが適しており、セラミックスブロッ7,8と同一材質が最適であるが、線膨張係数が近いモリブデンやモリブデン合金でも、熱膨張吸収手段39の吸収必要熱変形量を小さくすることができる。
【0071】
また、テーパリング32,33を少なくとも周方向に2分割にすることで、セラミックブロック7,8のテーパ側の端面からテーパリング32,33およびフランジ36,37を取り付けることができる。
【0072】
図10は本実施形態における第2構成例を示している。図10に示すように、この例は、図9における各セラミックスブロック7,8の端部に形成されたテーパ部20,31の外周に嵌合するテーパリング32,33とフランジ36、37とを一体化した構成のものである。このテーパリング32,33とフランジ36、37とを一体化した部分同士が複数本のタイロッドで締結されている。
【0073】
このような構成によっても、図9に示した第1構成例と同様に、セラミックスブロックとテーパリングとがテーパ嵌合しているので、締結による曲げモーメントも作用せず、テーパ部には圧縮応力が生じる。したがって、脆性材料であるセラミックスブロック7,8の破壊を抑制することができる。
【0074】
以上で説明したように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、さらに製作性や構造健全性が向上するので、熱交換効率が高く、かつ高信頼性のセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0075】
なお、テーパリングの材質はセラミックスブロックと同一であることが望ましい。また、テーパリングは少なくとも周方向2分割であることが望ましい。また、テーパリングの材質はモリブデンまたはモリブデン合金のいずれかであることが望ましい。
【0076】
[第3実施形態(図1、図11〜図13)]
本実施形態では、複数個のセラミックスブロック7,8を分解可能なシール材10を介して積み重ね、この積み重ねたセラミックスブロック7,8の外側に端板11,12を配設し、これらの端板11,12間を複数本のタイロッド13で締結して各セラミックスブロック7,8を連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、タイロッド13と同系またはこれよりも熱膨張係数の大きい材質からなるスペーサ40を、端板12とタイロッド13の先端部間に介挿したセラミックス製熱交換器について説明する。
【0077】
上述の第1、第2実施形態のように、複数のセラミックスブロック7,8をシール材10を介して締結一体化する構成において、炭化珪素や窒化珪素等のセラミックスは線膨張係数が約4E−6/℃とステンレス鋼やインコネル等金属構造材に比較して小さく、高温下では大きな熱膨張差を生じる。従って、タイロッド13の材質としては、高温強度が大で、かつ線膨張係数がステンレス鋼やインコネルよりも小さく、セラミックスブロックに比較的近いモリブデンやモリブデン合金、またはチタン合金、タングステン等が適している。参考に500℃での線膨張係数を下記する。
【0078】
・ステンレス鋼 18E−6/℃
・インコネル 15E−6/℃
・チタン合金 10E−6/℃
・モリブデン 6E−6/℃
【0079】
セラミックスブロック7,8の両端に端板11,12を配設し、これらの端板11,12を複数本のタイロッド13でシール材10を介してセラミックスブロック7,8に締結接合して硫酸ガスをシールする必要があるが、金属であるタイロッド13とセラミックスブロック7,8との間には大きな熱膨張差を生じる。仮に端板11,12の材質がモリブデン、タイロッドの長さが1500mm、温度が500℃とすると、軸方向の熱膨張差は約1.4mmにもなる。
【0080】
この場合、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、大きな軸方向の熱膨張差を、熱膨張吸収手段17としての皿ばねを使用して吸収することになる。しかし、高温時のばね力の減少による締結力の低下は、シール面圧の低下に繋がり、漏洩の原因になる。
【0081】
一方、金属である端板11,12とセラミックスブロック7,8との間にも大きな熱膨張差を生じる。仮に端板の材質がステンレス鋼、シール材10の半径が200mm、温度が500℃とすると、半径熱膨張差は約1.3mmにもなる。
【0082】
一般に用いられるメタルOリングや金属ガスケットでは、この大きな半径熱膨張差をシール面の滑りで吸収することになる。シール接触面の滑りはシール面圧の低下や接触状態の変化によって漏洩の原因になる。
【0083】
本実施形態では、このような事情に鑑み、高温環境下でも熱膨張を吸収できる熱膨張吸収構造を実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供するものである。
【0084】
図11は、本実施形態によるセラミックス製熱交換器の軸方向の熱膨張吸収構造を示している。
【0085】
図11に示すように、セラミックスブロック7,8はシール材10を介して積み重ね、上側ブロック7の最上部に上側端板11を配設し、下側ブロック8の最下部に下側端板12を配設した構成となっている。上下の端板11,12同士はタイロッド13で連結され、セラミックスブロック7,8が一体化されている。
【0086】
このような構成のもとで、本実施形態では、セラミックスブロック7,8とタイロッド13との熱膨張差を吸収する熱膨張吸収手段15として、上側端板11側に例えば皿ばね、板ばね、あるいはコイルばね等が設けられている。
【0087】
また、セラミックスブロック7,8とタイロッド13との熱膨張差を吸収する他の熱膨張吸収手段として、下側端板12側に、タイロッ13ドよりも熱膨張係数が大きい材質からなるスペーサ40が設けられている。このスペーサ40は、例えば下側端板12とタイロッド13の下端部との間に介挿されている。
【0088】
このスペーサ40は、高温環境下において、タイロッド13と熱膨張差を生じ、この熱膨張差が皿ばねのばね定数の減少分だけ皿ばねをたわませ、シール面圧の低下を防ぐ効果がある。
【0089】
また、図12(a),(b)に示すように、スペーサ40の長さをm、熱膨張係数をαs、セラミックスブロック7,8の長さをL、熱膨張係数をαc、タイロッド13の熱膨張係数をαtとした時、mが略L(αt−αc)/(αs−αt)になるようにすることにより、セラミックスブロック7,8とタイロッド13との熱膨張差をゼロにすることができ、皿ばねを使用しなくてもよくなる。皿ばねを使用した場合には、常温時よりもシール面圧を高くすることができる。
【0090】
なお、図11に示す構成では、スペーサ40が皿ばねと反対側に配設されているが、皿ばね側の端板11とタイロッド13の先端部との間に介挿させてもよい。
【0091】
また、タイロッド13の材質をセラミックスブロック7,8と同系のセラミックスとすることにより、熱膨張差をゼロにすることができる。その場合、セラミックス製タイロッド13aは、ねじ部を設けて締結部材として使用することが困難であるため、図13に示すように、セラミックス製タイロッド13aの先端部に次第に拡径するホルダ43を形成し、内面にテーパが形成された2つ割りのテーパリング42をホルダ43の外周面側に介在させて、テーパリング42による外周面を一定外径状とする。このテーパリング42を金属製の締結部材である筒状のホルダ43に挿入することにより、セラミックス製タイロッド13aの先端部をホルダ43の一端側に保持させる。なお、ホルダ43の他端側には雌ねじ44が形成されている。
【0092】
一方、金属製の短いタイロッド13bを備え、この金属製のタイロッド13bの先端に形成した雄ねじ45aをホルダ43に羅合させる。これにより、セラミックス製のタイロッド13aと金属製タイロッド13bとを連結することができ、セラミックスブロック締結部材として構成することができる。
【0093】
以上で説明したように、本実施形態によれば、高温下での熱膨張をも吸収できる熱膨張吸収構造を実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0094】
[第4実施形態(図1、図14)]
本実施形態では、複数個のセラミックスブロック7,8を分解可能なシール材10を介して積み重ね、この積み重ねたセラミックスブロックの外側に端板11を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、端板11は、熱膨張係数の異なる複数枚の金属製板11a,11b、11c‥をシール部材46a,46b,46c‥を介して積層する構成としたセラミックス製熱交換器について説明する。
【0095】
なお、第1実施形態と同一の構成部品には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0096】
図14はセラミックスブロック7,8の締結手段を示す詳細図である。図14に示すように、本実施形態では、熱膨張係数の異なる複数枚の金属製板11a,11b、11cが積層され、これらの金属製板11a,11b、11cにはセラミックスブロック7,8側に向って次第に熱膨張係数が段階的に小さくなる構成とされている。このような構成により、端板11に対して、セラミックスブロックの径方向の熱膨張によるシール材10の滑りを小さくすることができる。
【0097】
なお、図14には、端板11を3枚の板11a,11b、11cの積層構成とした例を示しているが、端板11の板積層枚数については、特に限定されない。
【0098】
以上で説明したように、本実施形態によれば、高温下での熱膨張差をも吸収できる熱膨張吸収機構を実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0099】
[第5実施形態(図1、図15)]
本実施形態では、熱交換部6がセラミックスブロック7,8で構成された熱交換器であって、セラミックスブロック端部の軸方向所定の位置に大径頭部9を形成し、この大径頭部9に当接するシール部材24と、このシール部材24を大径頭部9に押し付けるばね50と、これらシール部材24およびばね50の外周側に配置され、軸方向の熱膨張差を吸収するベローズ51を有するヘリウム入口容器2bとを備えたセラミックス製熱交換器について説明する。
【0100】
なお、本実施形態において、シール部材24及びヘリウム入口容器2bについては、図8(a),(b)に示したシール部材24及びヘリウム入口容器2bと同一構成のものである。その他の構成について、第1〜第4実施形態と同一の構成部品には図1〜図4と同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0101】
図15に示すように、本実施形態のヘリウム入口容器2bは第1実施形態で示したヘリウム入口容器2bと略同様の機能を果すものであるが、大径頭部9に当接するシール部材24と、このシール部材24を大径頭部9に押し付けるばね(例えば皿ばね)50と、これらシール部材24およびばね50の外周側に配置され、軸方向の熱膨張差を吸収するベローズ51を有する構成としたことにより、ばね50及びベローズ51等により、高温時にセラミックスブロック7、8とヘリウム入口容器2bとの熱膨張差によるシール面圧の低下が有効に防止される効果がある。
【0102】
即ち、上側ブロック7の大径頭部9にヘリウム入口容器2bが配設され、容器上側端は上側端板11に気密に接続され、容器下側端は上側ブロック7に形成された大径頭部9にシール部材24を介して当接し、さらにシール部材24はヘリウム入口容器2bに内包されている皿ばね50により大径頭部9に押し付けられており、高温時にセラミックスブロックとヘリウム入口容器2bとの熱膨張差によりシール面圧の低下が効果的に防止される。
【0103】
なお、本実施形態では、ばね50として皿ばねを適用しているが、板ばね、コイルばね等を適用することもできる。また、ヘリウム入口容器2bにはベローズ51が備えられており、軸方向の熱膨張差または皿ばね締付時のたわみを吸収し、ヘリウム入口容器2bを形成する役割を担っている。
【0104】
以上で説明したように、本実施形態によれば、高温下での熱膨張差をも吸収できる熱膨張吸収機構を実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0105】
[第6実施形態(図1、図16〜図20)]
本実施形態では、複数個のセラミックスブロック7,8を分解可能なシール材10を介して積み重ね、この積み重ねたセラミックスブロック7,8の外側に端板11,12を配設し、これらの端板11,12間を複数本のタイロッド13で締結して各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、金属製のシール材10を流体Aまたは流体Bの少なくともいずれか一方の流路20,21の外周側に配設したセラミックス製熱交換器について説明する。
【0106】
図16(a),(b)は、本実施形態に係るセラミックス製熱交換器のセラミックスブロック接合面のシール材の配置図である。
【0107】
この図16(a),(b)に示すように、セラミックスブロック7,8にはヘリウム流路20と硫酸流路21とが列毎に配置されている。そして、この例では、各ヘリウム流路20および各硫酸流路21毎に対応して、全ての流路の外周部にそれぞれ対応してシール材10が複数配設されている。各シール材10の形状を図17〜図19に示している。
【0108】
図17(a),(b)に示すシール材10は、平板ドーナツリング状で、その内周は流路20,21の内周側に突出している。セラミックスブロック7,8の上下面には、加圧時にシール材10の一部が入り込むリング状の溝穴部61が形成されている。
【0109】
このようなシール材10によれば、所定の締め付け力でシール材10を締め付けることによって、シール材10の流路20,21の内周縁との接触部が面圧集中を受け、流路20,21の内周縁がシール材10の溝穴61に食い込み、シール面圧を高くすることができる。
【0110】
また、この食い込みによって、流路20,21に作用する差圧での変形や移動を抑制することができる。さらに、セラミックスブロック7,8のシール材当接面に溝を形成することによって、溝孔61の縁部にも面圧集中してシール効果および変形や移動の抑制効果がより向上する。なお、溝穴61に代えて突起を設けても同一作用効果を呈する。
【0111】
図18(a),(b)に示すシール材10は、リング径状の内周側に板厚方向に幅広状に突出する突出部62を有し、セラミックスブロック7,8には、その突出部62が流路20,21の内周側に嵌合する傾斜面63を有する構成としたものである。これにより、流路20,21に作用する差圧で突出部62の変形や移動を確実に抑制することができ、またシール材10をセラミックスブロック7,8に取り付ける際には、突出部62がガイドになるので、取り付け作業性が向上する。
【0112】
図19(a),(b)に示すシール材10は、図18(a),(b)に示したシール材10の変形例であり、流路内周に嵌合する突出部64をブッシュとして形成したものである。これにより、取り付け作業性がより向上する。また、ブッシュ状の突出部64が圧力により流路20,21の内壁に押し付けられるので、シール性が一層向上する。
【0113】
なお、以上の説明ではシール材10を全流路20,21に配置したが、図20(a),(b)に示すように、硫酸流路21、ヘリウム流路20のいずれか一方に配置する構成としてもよい。この場合には、外周側にセラミックスブロック7,8の外形に沿う第2のシール材65が装着されるようになっている。
【0114】
また、全流路20,21に配置する代わりに、流体列毎にシール材10を配置してもよい。
【0115】
なお、以上のシール材10の材質としては、硫酸機器用セラミックス製熱交換器では耐食性およびシール性の観点から、金または金被着金属が最適である。また耐食性の点では炭化珪素、窒化珪素被着金属も使用することができる。
【0116】
また、硫酸機器以外のセラミックス製熱交換器におけるシール材10の材質としては、その機器の使用条件に適合する材質を選択することができる。
【0117】
なお、シール材10としては、弾性復元機構を有するメタルシールすなわち、メタルオーリング、メタルCリング、ヘリコフレックス、レジリエントシール等を適宜利用することができる。
【0118】
以上のように、本実施形態によれば、硫酸などの高温腐食性流体下でも使用できるシールを実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【0119】
なお、シール材10は平板ドーナツリングであることが望ましい。また、セラミックスブロックのシール当接面に溝または突起のいずれかを形成することが望ましい。また、シール材10は、その内周に板厚方向に突出する突出部を設け、その突出部を流路内周に嵌合する構成とすることが望ましい。また、シール材10は、弾性復元機構を有するメタルシールであることが望ましい。
【0120】
[第7実施形態(図1、図21、図22)]
本実施形態では、複数個のセラミックスブロック7,8を分解可能なシール材10を介して積み重ね、この積み重ねたセラミックスブロック7,8の外側に端板11,12を配設し、これらの端板11,12間を複数本のタイロッド13で締結して各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、シール材10は、流体Aおよび流体Bの流路20、21に連通する多数の孔70を有する孔開き板であるセラミックス製熱交換器について説明する。
【0121】
図21(a),(b)は、本実施形態によるセラミックス製熱交換器のシール材10の一構成例を示す図である。このシール材10は、流体Aおよび流体Bの流路20,21に連通する孔70を有し、シール材10をセラミックスブロック7,8間に配置して、セラミックスブロックを締結することで、容易に流路20,21を隔離シールすることができる。
【0122】
図22(a),(b)は本実施形態によるセラミックス製熱交換器のシール材10の他の構成例を示す図である。このシール材10は、流路20,21に嵌挿するブッシュ状の突出部71が形成されている。これにより、流路20,21の差圧によるシール材10の差圧での変形や移動を確実に抑制できるようになっている。
【0123】
また、シール材10をセラミックスブロック7,8に取付ける際には、突出部がガイドになるので取り付け作業性が向上する。
【0124】
本実施形態におけるシール材10の材質としては、硫酸機器用セラミックス製熱交換器では耐食性およびシール性の観点から金または金被着金属が最適である。また耐食性の点では炭化珪素、窒化珪素被着金属も使用することができる。
【0125】
また、硫酸機器以外のセラミックス製熱交換器におけるシール材10の材質としては、その機器の使用条件に適合する材質を選択することができる。
【0126】
以上で説明したように、本実施形態によれば、第6実施形態の作用効果に加えて、さらに取り付け作業性が向上する効果が奏される。
【0127】
なお、本実施形態において、シール材10の材質は、金または金被着金属のいずれか一方であることが望ましい。また、シール材10の材質は炭化珪素または窒化珪素のいずれかを被着した金属であることが望ましい。
【0128】
[第8実施形態(図1、図23)]
本実施形態では、軸方向に複数の流路20,21を形成したセラミックスブロック7,8の両端に端板11,12を配接し、これらの端板11,12を複数本のタイロッド13でシール材10を介してセラミックスブロック7,8に締結接合したセラミックス製熱交換器であって、端板11,12とセラミックスブロック7,8との接合面に所定の直径差で相噛み合う段差部80を設け、この直径差で相噛み合う段差部80間に形成された空間部81に、軸方向に開口部82を有するシールリング83を装着したセラミックス製熱交換器について説明する。
【0129】
図23は、セラミックス製熱交換器における端板11,12とセラミックスブロック7,8との接合部のシール構造を示す図である。
【0130】
このシール構造では、端板11,12とセラミックスブロック7,8との接合面に、所定の直径差で相噛み合う段差部80が設けられ、この直径差で相噛み合う段差部80間に形成された空間部81に、軸方向に開口部を有するシールリング83が装着されている。
【0131】
金属である端板11,12およびセラミックスブロック7,8には、熱交換時に大きな熱膨張差が生じる。本実施形態のシール構造によれば、この大きな半径熱膨張差をシールリングの弾性変形で吸収することができる。
【0132】
即ち、シールリング83のそれぞれの先端がセラミックスブロック7,8および端板11,12の段差部80に当接して流体がシールされる。そして、半径方向の熱膨張差は、その当接部が滑りや変形することなく、シールリング83自体の弾性変形で吸収できるので、シール接触面の滑りによるシール面圧の低下や、接触状態の変化に起因する漏洩を抑止することができる。なお、開口部82については、高圧側になるように設置した方がよりシール性能向上が図れる。
【0133】
以上で説明したように、本実施形態によれば、高温下での熱膨張差をも吸収できるシールを実現して、高性能でかつ製作性に優れた信頼性の高いセラミックス製熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の第1実施形態を示すセラミックス製熱交換器の断面図。
【図2】本発明の第1実施形態による熱交換部を構成するセラミックスブロックの外観図。
【図3】図2のA−A線に沿う矢視図。
【図4】図2のB−B線に沿う断面図。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図。
【図6】本発明の第1実施形態によるセラミックスブロックの上部の流路構成を示す斜視図。
【図7】本発明の第1実施形態によるセラミックスブロックの下部の流路構成を示す斜視図。
【図8】(a)は本発明の第1実施形態によるセラミックス製熱交換器を構成する熱交換部の部分断面図、(b)は(a)の要部を示す組立前の拡大断面解図、(c)は(a)の要部を示す組立後の拡大断面解図。
【図9】本発明の第2実施形態の一構成例を示す締結部要部を示す断面図
【図10】本発明の第2実施形態の変形例を示す断面図。
【図11】本発明の第3実施形態を示すセラミックス製熱交換器の軸方向の熱膨張吸収構造を示す構成図。
【図12】(a)は図11に示した熱膨張吸収手段の一例を示す拡大断面図、(b)は(a)の平面図。
【図13】本発明の第3実施形態による締結手段であるタイロッドの変形例を示す断面図。
【図14】本発明の第4実施形態によるセラミックス製熱交換器の軸方向の熱膨張吸収構造を示す説明図。
【図15】本発明の第5実施形態によるセラミックス製熱交換器の軸方向の熱膨張吸収構造を示す断面図。
【図16】(a)は本発明の第6実施形態によるセラミックス製熱交換器のセラミックスブロック接合面のシール材配置図、(b)は(a)のD−D線断面図。
【図17】(a)は本発明の第6実施形態によるシール材の一例を示す構成図、(b)は(a)の要部拡大図。
【図18】(a)は本発明の第6実施形態によるシール材の変形例を示す構成図、(b)は(a)の要部拡大図。
【図19】(a)は本発明の第6実施形態によるシール材の他の変形例を示す構成図、(b)は(a)の要部拡大図。
【図20】(a)は本発明の第6実施形態によるシール材の他の配置図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図21】(a)は本発明の第7実施形態によるセラミックス製熱交換器のシール材の一例を示す構成図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【図22】(a)は本発明の第7実施形態の変形例によるセラミックス製熱交換器のシール材の一例を示す構成図(b)は(a)のG−G線断面図。
【図23】本発明の第8実施形態によるセラミックス製熱交換器のシール構造を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0135】
1 圧力容器
2 ヘリウム入口ノズル
3 硫酸導入部
4 ヘリウム出口ノズル
6 熱交換部
7,8 セラミックスブロック
10 シール材
11 上側端板
12 側端板
13 タイロッド
14 ナット
15 熱膨張吸収手段
16 ナット
17 熱膨張吸収手段
18,19 支持機構
20 ヘリウム流路
21 硫酸流路
23 シール部材
24 シール部材
30,31 テーパ部
32,33 テーパリング
34,35 段部
36,37 フランジ
38 タイロッド
11a,11b,11c 金属製板
46a,46b,46c シール部材
50 ばね
51 ベローズ
70 孔
80 段差部
81 空間部
82 開口部
83 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスブロックに複数個の流路を一列とする列を数列平行に形成し、隣接する列毎に前記流路を流体Aと流体Bとが流れる流路とし、これらの流路には隣接する列毎に異なる前記流体Aおよび前記流体Bを対向流として流し、前記流体Aと前記流体Bとの熱交換を行う熱交換部を有するセラミックス製熱交換器であって、前記熱交換部は、複数のセラミックスブロックをシール材を介して積み重ね、積み重ね方向の両端部を端板とタイロッドとからなる締結手段により連結して一体化し、前記端板の外面側に前記タイロッドの軸方向の熱膨張を吸収する熱膨張吸収手段を設けた構成としたことを特徴とするセラミックス製熱交換器。
【請求項2】
前記各セラミックスブロックの接合端部の少なくともいずれか一方に、端部側に向って次第に拡径するテーパ部を設け、前記テーパ部外周に嵌合するテーパリングと、このテーパリングの外周に配設され、前記テーパリングの端部に当接する段部を有するフランジと、前記フランジ同士を締結する複数本のタイロッドとを備えた請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項3】
複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記タイロッドと同系またはこれよりも熱膨張係数の大きい材質からなるスペーサを、前記端板と前記タイロッド先端部間に介挿した請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項4】
複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記端板は、熱膨張係数の異なる複数枚の板をシール部材を介して積層する構成とした請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換部がセラミックスブロックで構成された熱交換器であって、前記セラミックスブロック端部の軸方向所定の位置に大径頭部を形成し、この大径頭部に当接するシール部材と、このシール材を大径頭部に押し付けるばねと、前記シール材を内包し、軸方向熱膨張差吸収用ベローズを有するヘリウム入口容器とを備えた請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項6】
複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記シール材を前記流体Aまたは前記流体Bの少なくともいずれか一方の流路の外周側に配設した請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項7】
複数個のセラミックスブロックを分解可能なシール材を介して積み重ね、この積み重ねた前記セラミックスブロックの外側に端板を配設し、これらの端板間を複数本のタイロッドで締結して前記各セラミックスブロックを連結一体化したセラミックス製熱交換器であって、前記シール材は、前記流体Aおよび前記流体Bの流路に連通する孔を有する孔開き板である請求項1記載のセラミックス製熱交換器。
【請求項8】
軸方向に複数の流路を形成したセラミックスブロックの両端に端板を配接し、この端板を複数本のタイロッドでシール材を介してセラミックスブロックに締結接合したセラミックス製熱交換器であって、前記端板と前記セラミックスブロックとの接合面に所定の直径差で相噛み合う段差部を設け、この直径差で相噛み合う前記段差部間に形成された空間部に、軸方向に開口部を有するシールリングを装着した請求項1記載のセラミックス製熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−317106(P2006−317106A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141767(P2005−141767)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】