説明

セラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体およびその製造法

本発明は、セラミックスの分野に該当し、かつ、例えば切削加工ツールのために使用される複合成形体に関する。本発明の課題は、その表面および界面が自由に成形され、かつ大量生産において製造可能である複合成形体を提供することである。前記課題は、グリーンシートから、および射出成形体から成るセラミックス成形体および/または粉末冶金複合成形体によって解決される。さらに、前記課題は、1枚のグリーンシートを金型内に装着するか、または金型上に載置し、続けて少なくとも1つのセラミックス射出成形材料および/または粉末冶金射出成形材料を射出成形によって金型上に施し、かつ/または金型に取り付け、かつ/または金型内に導入し、続けて単一部分または複数部分からの金型を取り外し、かつ/または単一部分または複数部分からの複合成形体部分を該金型から離型し、その際、これらの方法工程を、一度または何度か繰り返すことのできる方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスおよび粉末冶金材料の分野に該当し、かつ、例えば切削加工ツール(硬質脆性特性および延性特性の組み合わせ)、加熱エレメントおよび熱負荷された計器(導電性材料および電気的絶縁性材料の組み合わせ)のために、または歯科用技術における作製物(材料特性および光学的特性)のために使用される複合成形体および、それらの製造法に関する。
【0002】
粉末射出成形は、セラミックス粉末および/または金属粉末および有機可塑剤から成る供給材料を熱可塑性状態においてキャビティに射出し、かつ硬化後に該キャビティの幾何学的形状を取る形状付与法である。該形状付与に続く脱バインダー処理後に、製造されるべき構成部材の最終寸法および特性が最終的な焼結プロセスにおいて生み出される。セラミックスが射出成形される場合、材料および方法によって生じる多岐にわたる利点、例えばセラミックス材料固有の高い剛性、後処理なしに達成可能な表面品質、ならびに幾何学的な成形自由度および複雑性が利用される。従って、コスト要因の材料、焼結および加工を明らかに減らすことができる。方法技術的な利点として、射出成形法は、高い形状複雑性および形状成形に際しての自由度を有する。例えばアンダーカット、鋭いエッジおよび垂直に相互に立っている穴を製造することができる。さらに、焼結に際してほぼ等方的な収縮も示す構成部材の最終輪郭に即した作製を行うことができる。グリーン部材およびスプルーは再循環され得、または製造に際して高温チャネルノズルが使用されるので、材料は非常に高度に利用される。射出成形処理全体を良好に自動化することもできる。
【0003】
これらの利点に基づき、粉末射出成形法は、小型化されたスケールでのその適用において学問的に大いに研究されている。ここでは、サブミリメートル規模およびnm範囲の詳細寸法での非常に微細なスチール粉末およびセラミックス粉末の使用によって作製される(Benzler, T., Piotter, V.: MicroMIM und MicroCIM. Ingenieur-Werkstoffe 8 (1999), 16-17)小型化された構成部材作製の側面は、大きく異なる伝導性セラミックスから成る加熱針を例とした該作製の多機能化の側面と共に広げられる。ここでとりわけ好ましいのは、接合面の極端に小さい公差であり、その結果、接合パターンに特有の焼結力学が、きわめて小さい絶対偏差の大きさと割合をもたらす(Finnah, G., Oerlygsson, G., Piotter, V., Ruprecht, R., Hausselt, J.; Drei Sonderverfahren in einem, 2K-Mikro-Pulverspritzgiessen. Kunststoffe 1.Carl Hanser Verlag (2005), 58-61)。
【0004】
そのうえ、最近では、多成分粉末射出成形の開発が強まってきている。焼結安定性のセラミックスおよび/または金属成形体を得るのに必要不可欠なものとして、材料選択および材料調製のストラテジー、加工および共焼結が述べられていた。
【0005】
とりわけ、組み合わされるべき材料相手の種々の焼結収縮率および割合は、相対的な粒子充填密度の補正によって、かつ脱バインダーおよび焼結を同時に行う熱処理工程を適合させることによって互いに調整されなければならない(Loibl, H., Bleier, H., Gornik, C., Griesmayer, E., Kukla, C., Zlatkov, B.: 2-Komponenten-Pulverspritzgiessen. Oesterrr. Kunststoff-Zeitschrift 34 (2003), 258-260)。多成分粉末射出成形は定着しており、多岐にわたる方法変法が生まれている。そうして、互いに組み合わせられる金属の接合相手は焼結後に相互に移動し続け得ることが示されていた(いわゆるアセンブリ粉末射出成形)(Maetzig, M., Walcher, H.: Assembly moulding of MIM materials. Proceedings EuroPM2006 Vol. 2 (2006), 43-48)。さらに別の良く研究された方法変法は、サンドイッチ射出成形である。この場合、接合相手は、コア−シェルの観点を考慮に入れながら、常に接合相手により完全に被覆された構成部材が生じるように互いに金型ツールに射出成形される。この方法で、例えば耐摩耗性のステンレス被覆を有する金属歯車が製造されていた。(Alcock, J.R., Logan, P.M., Stephenson, D.J.: Surface engineering by co-injection moulding. Surface and Coatings Technology 105 (1998), 65-71)。
【0006】
粉末射出成形の利点と並んで、多成分粉末射出成形はさらなる利点を有する。複数の材料から成る構成部材の形状は、個々の材料間の界面の形に相対的に無関係である。種々の材料は、均等な厚さの層として重なり合っている必要はなく、すなわち、外側の層の製造に際して、界面の輪郭に従う必要がない。それによって、例えば、独立した、および同時に複雑な成形体を製造することができる。当然、それにも関わらず、層の製造と、そこで殊に、自由に選択可能な層厚比を有する非常に厚い層(>0.5mm)の製造も可能である。多成分射出成形により、細孔が閉じられた材料複合体も製造され得、それによって、そのような構成部材は反応媒体中で使用可能となる。または一方で、閉じられた細孔の所望の割合を焼結の間に調節することができる。従って、成形部材全体における特性を悪化させずに、とりわけコストの掛かる高性能材料を、実際に構成部材中で負荷される箇所に局所的に限定することができる。
【0007】
従来技術による多成分粉末射出成形の欠点は、高い煩雑性、ならびに材料の開発および製造に際してのその複雑性、および構成部材における非常に大きいアスペクト比(層厚<0.5mm)の実現に関するその限界にある。
【0008】
広い面積を持つ薄いセラミックス層の製造のために、シート注型は有利なセラミックス形状付与技術である。セラミックス出発粉末は、分散液、液化剤および1つ以上のバインダー成分と一緒に均一にシート注型スラリーへと調製される。次いで、この気泡を含まないスラリーは注型ユニットに導入され、かつ特定の高さに正確に調節された注型ブレードによって平面の注型プレート上に均等に分配される。後続の乾燥処理において、分散液は均等に伸ばされ、その際、シートの高さが下げられる。複数の層が重ねて注型される場合、多層シート注型と呼ばれる。
シート注型スラリーの調製に際して、まずセラミックス粉末は液化剤と一緒に選択された液中に分散される。引き続き、バインダー、可塑剤および湿潤剤が混合される。完成したスラリーは、膨れを回避するために、注型前に良く脱気されなければならない。一般に、セラミックススラリーは容器からキャリアシート上に注型される。一般的に、このキャリアシートは連続的に容器に通される。しかし一方で、容器を動かす方法も存在する。キャリアシート上でセラミックス層が形成され、該層は乾燥路内で乾燥され、かつ自立式の可撓性のセラミックスシートを形成する。層の厚さは、容器の出口スリット高さ、および注型ブレード(ドクターブレード)の高さによって制御される。向流において、乾燥のために温風がシートに吹きつけられ、その結果、製造ラインの最後に可撓性のグリーンシートが存在することになる。これは巻き取ってよく、または切断、型打ち、型押し等によって直接的に後加工してよい。
【0009】
セラミックスシートの強度および可撓性は、本質的にスラリーの組成および殊にバインダーに依存する。バインダーとして使用することができるのは、水溶性ポリマー、水分散性ポリマー、有機溶剤可溶性ポリマー、有機溶剤分散性ポリマーである。グリーンシートの可撓性は、上記バインダーの場合、付加的に軟化剤の添加によって影響を及ぼすことができる。
【0010】
連続的なシート注型により、高い製造能力が達成され得る。本方法は、0.05mm〜1.5mmの範囲内のシート厚さに適している。積層することによって、個々のシートは層複合体へと完全に組み立てられ、その結果、シート注型法は全体的に高い可撓性によって際立つ。
【0011】
公知のように、セラミックスおよび/または粉末金属からの多成分構成部材は、射出成形によってもシート注型を介しても製造される。DE19652223A1には、熱可塑性の形状付与によって製造される、少なくとも2つのセラミックス材料および/または粉末冶金材料と、少なくとも1つの熱可塑性バインダーとから成る複合成形体が記載され、かつ該複合成形体は、その内部に、種々の物質の組成を有し、かつ/または熱可塑性バインダーまたは熱硬化性バインダー中での種々の含量の材料の粒子を有する部分容積が存在していることを特徴とする。
【0012】
US2003/0062660には、セラミックス粉末材料および/または金属粉末材料から多成分粉末射出成形によって作製される、2つ以上の成分から成る成形部材の製造が記載される。
【0013】
しかしながら、純粋な粉末射出成形による、例えば構成部材中に3つ以上の成分を有する複合成形体を実現する際の材料技術的および機械技術的な煩雑性は、限られた形でしか経済的に合理的であると見なされない。相応して高い材料コストと装置コストとが結び付いた製造技術的な特殊化の程度は、フレキシブルに実際の使用するための個々の具体的なケースにおいてのみ適切であり得る。
【0014】
本発明の課題は、その表面の成形が自由であるのみならず、その界面または複合成形体の2つの材料間の界面領域の成形も自由であり、かつセラミックスおよび/または粉末冶金のシート製造法および射出成形法の一般的な欠点によってのみ制限されているセラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体を提供することと、大量生産にも使用可能であり得る、該成形体の簡単で、フレキシブルかつ低コストの製造法を提供することにある。
【0015】
該課題は、請求項の中で記載される本発明によって解決される。好ましい実施態様は、従属請求項の対象である。
【0016】
本発明によるセラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体は、少なくとも1つのセラミックス材料および/または金属材料および/またはバインダー材料(同じ組成物および/または異なる組成物を有する複合成形体の表面を完全にまたは部分的に覆うか、または該複合成形体中に含まれる)からのグリーンシートまたはグリーンシート複合体と、少なくとも形状を決定付けて該グリーンシートまたは該グリーンシート複合体と接合されるセラミックス射出成形体および/または金属射出成形体とから成り、その際、グリーンシートまたはグリーンシート複合体中のセラミックス粉末粒子および/または金属粉末粒子の粒度分布および/または充填密度、ならびに焼結に際してのその収縮挙動は、後続の焼結に際してのセラミックス射出成形体および/または金属射出成形体の収縮挙動に適合させられ、かつ、その際、グリーンシートまたはグリーンシート複合体中で熱可塑性バインダーが使用される場合、射出成形材料の溶融温度および加工温度は、該熱可塑性バインダーの溶融温度より小さい。
【0017】
好ましくは、同じかまたは異なる材料組成物のグリーンシートまたはグリーンシート複合体は、セラミックス射出成形体および/または金属射出成形体を、その外側表面上で覆い、かつ/またはそれらは単一部分または複数部分からの射出成形体のキャビティまたはアンダーカットに配置されており、その際、なお好ましくは、異なる組成物のグリーンシートまたはグリーンシート複合体が用いられる。
【0018】
同様に好ましくは、グリーンシートまたはグリーンシート複合体と射出成形体との間の界面または界面領域は、該グリーンシートまたは該グリーンシート複合体の外側表面と同じ幾何学的形状を有する。
【0019】
さらに好ましくは、グリーンシートまたはグリーンシート複合体と射出成形体とは、力を受けて、または化学的および/または物理的な結合によって互いに接合されている。
【0020】
また好ましくは、グリーンシートまたはグリーンシート複合体は、熱硬化性バインダーを含有する。
【0021】
それにまた好ましくは、グリーンシートまたはグリーンシート複合体は、熱可塑性バインダー、なお好ましくはポリエチレンコポリマーを含有する。
【0022】
同じ層厚および/または異なる層厚のグリーンシートまたはグリーンシート複合体が、セラミックス射出成形体および/または金属射出成形体を、その外側表面上で覆い、かつ/または単一部分または複数部分からの射出成形体のキャビティまたはアンダーカットにおいて覆う場合も好ましい。
【0023】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体が、完全にまたは部分的に一表面にまたは両面に構造を有する場合も好ましく、その際、なお好ましくは、該構造は、さらなる他の材料を含有し、また好ましくは、該構造はポリマーまたは天然物を含有する。
【0024】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体において、および/または射出成形体において、充填物としてガラスまたはガラス様材料が存在する場合、さらに好ましい。
【0025】
外側表面が金属材料からのグリーンシートを有し、その下には金属材料およびセラミックス材料からのグリーンシートが配置されており、その後にセラミックス射出成形体が続くのも同様に好ましい。
【0026】
グリーンシートにおいてのみならず、グリーンシート複合体全体および射出成形体においても、同じ組成物のバインダーが存在する場合、それもまた好ましい。
【0027】
グリーンシートにおいてのみならず、グリーンシート複合体全体および射出成形体においても、単位体積当たりにつき同じ量のバインダーが存在する場合も好ましい。
【0028】
それにさらに、グリーンシートにおいてのみならず、グリーンシート複合体全体においても、組成物に関して、少なくともそれに応じて射出成形体中に含有されており、かつ、そこで最後に残ったバインダーとして該射出成形体から放出されるバインダーが存在する場合、好ましい。
【0029】
本発明による方法の場合、少なくとも1つのセラミックス材料および/または金属材料および/またはバインダー材料からのグリーンシートまたはグリーンシート複合体が、金型に装着されるか、または金型上に載置され、その際、該金型は、完全にまたは部分的に、同じ組成物および/または異なる組成物および/または同じ層厚および/または異なる層厚のグリーンシートまたはグリーンシート複合体により覆われており、かつ、続けて少なくとも1つのセラミックス射出成形材料および/または粉末冶金射出成形材料が、射出成形によって金型上に施され、かつ/または取り付けられ、かつ/または導入され、続けて単一部分または複数部分からの金型が取り外され、かつ/または単一部分または複数部分からの複合成形体部分が該金型から離型され、その際、これらの方法工程が、一度または何度か繰り返され得る。
【0030】
好ましくは、予備成形されたグリーンシートまたはグリーンシート複合体が使用され、なお好ましくは、型打ち、型押し、湾曲、延伸されたグリーンシートまたはグリーンシート複合体が使用される。
【0031】
同様に好ましくは、キャリアシートを有する予備成形されたグリーンシートまたはグリーンシート複合体が使用される。
【0032】
また好ましくは、予備成形されたグリーンシートまたはグリーンシート複合体の製造のための金型は、続けて射出成形金型として使用され、その際、なお好ましくは、分割可能な金型が使用される。
【0033】
さらに好ましくは、種々の材料から合成されるグリーンシート複合体が使用される。
【0034】
それにまた好ましくは、種々の材料からの部分面から成るグリーンシートまたはグリーンシート複合体が使用される。
【0035】
射出成形材料が不連続的に施され、かつ/または取り付けられ、かつ/または導入される場合に好ましい。
【0036】
射出成形材料が少なくとも1つのグリーンシートまたはグリーンシート複合体を有する金型上に施され、かつ/または取り付けられ、かつ/または導入された後に、この複合成形体が該金型から取り外され、続けて1つ以上のさらに別のグリーンシートまたはグリーンシート複合体が複合成形体上に施され、かつ/または取り付けられ、かつ/または導入され、かつ、これらの方法工程が何度か繰り返される場合も同様に好ましい。
【0037】
射出成形材料がグリーンシートまたはグリーンシート複合体上に施され、かつ/または取り付けられ、かつ/または導入される場合も好ましい。
【0038】
金型の充填および/または噴射および/または注入が加圧下または真空によって実施される場合、さらに好ましい。
【0039】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体のためのバインダーとして、熱可塑性バインダーおよび/または熱硬化性バインダーおよび/またはビポリマーバインダーが使用される場合も好ましい。
【0040】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体が射出成形体の取り付け、施与または導入の間に形作られる場合も同様に好ましい。
【0041】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体に、少なくとも相応して射出成形体に導入され、かつ、最後に残ったものとして複合成形体から放出されるバインダーが導入される場合、さらに好ましい。
【0042】
それにまた好ましいのは、複合成形体が脱バインダーされ、かつ焼結される場合である。
【0043】
射出成形材料の金型への注入または射出成形材料のシートへの噴射が、0.3〜200MPaの圧力下で実施される場合も好ましい。
【0044】
本発明による解決法の利点は、薄い構造層および/または機能層が大きな面および広がりによっても実現可能であり、それにより例えば切り離されるべき小型構成部材を大規模に、低コストかつ効果的に事前に作製可能である簡素化されたツール技術にある。本発明による解決法に関して同様に好ましいのは、簡素化された処理方式である。セラミックスおよび/または粉末冶金のグリーンシートまたはグリーンシート複合体は、種々の層厚において製造可能であり、かつ継続処理によって処理され得、例えば型押し、型打ち、小型構造化、シルクスクリーン印刷または積層され得、その際、例えば中間層を施与することも可能である。
グリーンシートまたはグリーンシート複合体が、例えば射出成形ツールに組み込まれる場合、これらのシートは射出成形ツールの幾何学的形状および/または表面形状を取るため、極端に精巧繊細な構造および輪郭が製造可能である。
適している粉末およびバインダー系の選択によっても、本発明により製造される本発明による複合成形体を一工程で焼結できるように処理操作を仕立てることができる。
【0045】
その際、複合成形体の成分の焼結収縮挙動の補正は、共焼結に際して達成可能な焼結緻密化の絶対量に依存して複合体相手の相対的な粒子充填密度を調整することによって行われる。すなわち、本発明による複合成形体の意味における材料複合体(それは温度窓の範囲内では完全に緻密に焼結され得ない。なぜなら、相手に対する温度が低すぎるか、または複合体相手の粉末の粒度分布の違いが大きすぎるからである)は、共通の焼結収縮率に対する非対称の相対的な粒子充填密度の選択によって調節することができる。そのため、焼結後に焼結収縮を高めるか、または残留気孔率を高めるために、粉末粒子を部分的に有機充填剤と置き換える、いわゆるスペースホルダー法も用いてよい。
【0046】
本発明による解決法によって、材料複合構成部材の多成分形状付与の可能性がドラスティックに広げられ、かつ、粉末射出成形処理を1つのコンポーネントに減らし続けることで大量生産能力が達成可能である。殊に、セラミックス粉末材料および/または金属粉末材料、セラミックス供給材料および/または金属供給材料が充填されたグリーンシートの噴射によって薄い機能層を、相応する多成分構成部材へ組み込むことは、従来の多成分射出成形では技術的かつ資金的に達成することができない新規の作製領域における試みである。
【0047】
本発明による解決法により、能動材料複合体および/または受動材料複合体を接合帯域(Fuegezone)中で製造可能とする複合体ストラテジーが実現される。能動材料複合体は、互いに組み合わされる材料または材料複合体の個々の構成部材(ドーピング、元素、相)の化学的な対(化学結合)を特徴とする。この場合、共有結合および/またはイオン結合が接合帯域中で複合体を定着させる。
受動材料複合体は、幾何学的変化(例えばアンダーカット部、かみ合い部、機械的なクランプ締結部)によって、かつ/または粉末充填密度および粉末粒度の変動によって、ならびに接合帯域の界面および/または界面領域の顕微鏡による表面構造(粗い、構造化)によって規定される。この場合、機械的な力は、接合帯域中で複合体を固定する。
【0048】
本発明による複合成形体は、相互に補い合う2つの互いに無関係のストラテジーによって説明可能である。能動複合体は、その材料属性に関して適合し得る、接合帯域中で中間層を持たない少なくとも2つの材料の組み合わせによって直接得られるか、または間接的な方法では種々の部類の材料の混合(段階状システム)と、そのつど異種の材料間の接着促進剤としての(中間層)その使用によって得られる。異種成分を接着促進剤として使用してよく、かつ能動的材料複合体が実現される。受動複合成形体は、化学結合について相互作用しないか、または殆ど相互作用せず、かつ本質的に接合帯域中での該成形体の幾何学的形成によって結合可能である材料の組み合わせを有する。これは、例えば組み合わせられるべき材料を互いに射出成形することによって行うことができる。接合相手に向かって幅がより広くなるピン形の重ね射出成形により、クランプ様の複合体を形成することができる。本発明により、これは例えば有孔性シート面を射出成形に際して充填することによって達成することができる。少なくとも2枚のシートの積層または重ね合わせによって、有孔性領域を深さおよび面について可変に形成することができるので、噴射方向に向かって幅がより広くなる1つ以上の材料固定部が生じる。
【0049】
材料の組み合わせおよび使用されるバインダー系に関して、本発明に鑑みて、本質的に自由に選択可能であるが、しかしながら、プロセス制御が考慮されるべきである。
とりわけ好ましいのは、グリーンシートまたはグリーンシート複合体中のみならず射出成形材料中にも含有されるバインダー系が使用される場合である。それによって、バインダーの放出が明らかにより簡単となり、かつ改善される。異なるバインダーが使用される場合、本発明の特別な一利点は、グリーンシートまたはグリーンシート複合体が、射出成形材料のバインダーの少なくとも1つの構成成分である、いわゆるバックボーンバインダー(Backbone-Bindern)を用いて製造される場合に生じる。これらのバインダー系は、放出されるのに長い時間を必要とする。それによって、射出成形部分中に存在する、容易に放出され得るバインダー割合がまず消失し得、かつグリーンシートまたはグリーンシート複合体は、なお弾性のままである。射出成形材料のバックボーンバインダー割合も放出されて初めて、グリーンシートまたはグリーンシート複合体における割合が続けて消失し、かつ脱バインダーが全体として終了する。そのようなバックボーンバインダーは、例えばポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリエチレンコポリマーである。
【0050】
以下で、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。
【0051】
実施例1
鋼シートおよびセラミックス供給材料からの焼結性複合成形体:
鋼シート(充填度(乾燥)60体積%):
粉末:鋼 430L;d90=16μm;製造元:Sandvik Osprey Ltd.
セラミックス供給材料(充填度:60体積%):
粉末:ZrO2(3モル% Y)Y5−5型;d80=1.97μm;製造元:United Ceramics Ltd.
シート製造のために、有機溶剤(ヘキサン90質量%、ポリエチレンコポリマー9%、アルキルスクシンイミド1%)から合成され、かつ83質量%の鋼粉末430Lを充填したスラリーを製造した。懸濁液の均質化を、ロールミルによる粉砕ボールの使用下で行う。超音波処理(2×30秒)は、スラリー中の粉末凝集物を破壊するのに役立つ。良好に均質化されたスラリーを、シート注型プラントに注型し、かつ乾燥させる。乾燥させた鋼シート(厚さ500μm、幅20cm、長さ1m)を注型プレートから取り出し、かつ、それを射出成形ツールの形状キャビティの輪郭にはめ込み、かつセラミックス供給材料で噴射することができように幾何学的に仕上げる。供給材料製造のために、Y5−5型のセラミックス粉末ZrO2(92質量%)を熱可塑性バインダー(パラフィン45%、LD−ポリエチレン45%、ステアリン酸10%)と、温度(130℃)およびせん断エネルギー作用下で、せん断ロールコンパクター(1時間)にて混ぜ合わせる。均質化された粉末−バインダー混合物を造粒し、かつ、この形で射出成形プロセスに供給する。引き続き、脱バインダー(6K/hの加熱速度による大気雰囲気〜400℃で100時間)および焼結(H2雰囲気 1450℃)を同時に行い、その際、複合体からバインダー相を除去し、かつ理想的な収縮率下でおおよそ接合パターンに相応する材料密度に緻密に焼結する。焼結処理後、少なくとも1MPaの強度を有する耐熱衝撃性のセラミックス複合体が得られる。接合帯域のカット面調整に際して、電子顕微鏡下で連続して閉じた複合帯域が確認される。シートと射出成形物との間の界面は、シートがはめ込まれたキャビティの表面形状を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体であって、該複合成形体の表面を、同じおよび/または異なる組成物および/または層厚で完全にまたは部分的に覆うか、または該複合成形体中に含まれている、少なくとも1つのセラミックス材料および/または金属材料および/またはバインダー材料からのグリーンシートまたはグリーンシート複合体から、および少なくとも形状を決定付けてグリーンシートまたはグリーンシート複合体と接合されるセラミックス射出成形体および/または金属射出成形体とから成るセラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体であって、その際、グリーンシートまたはグリーンシート複合体中のセラミックス粉末粒子および/または金属粉末粒子の粒度および粒度分布および/または充填密度、ならびに焼結に際してのその収縮挙動が、後続の焼結に際してのセラミックス射出成形体および/または金属射出成形体の収縮挙動に適合させられており、かつ、その際、グリーンシート中またはグリーンシート複合体中で熱可塑性バインダーが使用される場合、射出成形材料の溶融温度および加工温度が、該熱可塑性バインダーの溶融温度より小さい、セラミックス複合成形体および/または粉末冶金複合成形体。
【請求項2】
同じまたは異なる材料組成物のグリーンシートまたはグリーンシート複合体が、セラミックス射出成形体および/または金属射出成形体を、その外側表面上で、かつ/または単一部分または複数部分からの射出成形体のキャビティまたはアンダーカットに配置されており、かつ、これを完全に覆うか、または射出成形体内部に配置されている、請求項1記載の複合成形体。
【請求項3】
異なる組成物のグリーンシートまたはグリーシート複合体が、外側表面および複数部分からの射出成形体のキャビティおよびアンダーカットの表面を完全に覆う、請求項2記載の複合成形体。
【請求項4】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体と射出成形体との間の界面または界面領域が、グリーンシートまたはグリーンシート複合体の外側表面と同じ幾何学的形状を有する、請求項1記載の複合成形体。
【請求項5】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体と射出成形体とが、力を加えられて、または化学的および/または物理的な結合を介して互いに接合されている、請求項1記載の複合成形体。
【請求項6】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体が熱硬化性バインダーを含有する、請求項1記載の複合成形体。
【請求項7】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体が熱可塑性バインダーを含有する、請求項1記載の複合成形体。
【請求項8】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体がポリエチレンコポリマーを含有する、請求項7記載の複合成形体。
【請求項9】
同じおよび/または異なる層厚のグリーンシートまたはグリーンシート複合体が、セラミックス射出成形体および/または金属射出成形体を、その外側表面上で覆い、かつ/または単一部分または複数部分からの射出成形体のキャビティまたはアンダーカットにおいて覆う、請求項1記載の複合成形体。
【請求項10】
グリーンシートまたはグリーシート複合体が完全にまたは部分的に一表面上にまたは両面上に構造を有する、請求項1記載の複合成形体。
【請求項11】
前記構造がさらに他の材料を含有する、請求項10記載の複合成形体。
【請求項12】
前記構造がポリマー物質または天然物質を含有する、請求項11記載の複合成形体。
【請求項13】
グリーンシート中またはグリーンシート複合体中および/または射出成形体中に、充填物としてガラスまたはガラス様材料が存在している、請求項1記載の複合成形体。
【請求項14】
外側表面が金属材料からのグリーンシートを有し、その下には金属材料およびセラミックス材料からのグリーンシートが配置されており、その次にセラミックス射出成形体が続く、請求項1記載の複合成形体。
【請求項15】
グリーンシート中のみならず、グリーンシート複合体全体中および射出成形体中にも同じ組成物のバインダーが存在している、請求項1記載の複合成形体。
【請求項16】
グリーンシート中のみならず、グリーンシート複合体全体中および射出成形体中にも単位体積当たりにつき同じ量のバインダーが存在している、請求項1記載の複合成形体。
【請求項17】
グリーンシート中のみならず、グリーンシート複合体全体中にも、組成物に関して、少なくとも相応して射出成形体中に含有されており、かつ、そこで最後に残ったバインダーとして該射出成形体から放出されるバインダーが存在している、請求項1記載の複合成形体。
【請求項18】
セラミックス複合材料および/または粉末冶金複合材料の製造法であって、その際、少なくとも1つのセラミックス材料および/または金属材料および/またはバインダー材料からのグリーンシートまたはグリーンシート複合体を金型内に装着するか、または金型上に載置し、その際、該金型を、完全にまたは部分的に、同じおよび/または異なる組成物および/または同じおよび/または異なる層厚のグリーンシートまたはグリーンシート複合体で覆い、かつ、続けて少なくとも1つのセラミックス射出成形材料および/または粉末冶金射出成形材料を、射出成形によって金型上に施し、かつ/または金型に取り付け、かつ/または金型内に導入し、かつ、続けて単一部分または複数部分からの金型を取り外し、かつ/または単一部分または複数部分からの複合成形体部分を該金型から離型し、その際、これらの方法工程を、一度または何度か繰り返すことができる、セラミックス複合材料および/または粉末冶金複合材料の製造法。
【請求項19】
事前に形成されたグリーシートまたはグリーシート複合体を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
型打ち、型押し、湾曲、延伸されたグリーンシートまたはグリーンシート複合体を使用する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
キャリアシートを有する事前に形成されたグリーシートまたはグリーシート複合体を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
事前に形成されたグリーンシートまたはグリーシート複合体を製造するための金型を、続けて射出成形金型として使用する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
分割可能な金型を使用する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
種々の材料から合成されるグリーンシート複合体を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項25】
種々の材料からの部分面から成るグリーンシートまたはグリーンシート複合体を使用する、請求項18記載の方法。
【請求項26】
射出成形材料を不連続的に施し、かつ/または取り付け、かつ/または導入する、請求項18記載の方法。
【請求項27】
射出成形材料を少なくとも1つのグリーンシートまたはグリーンシート複合体を有する金型上に施し、かつ/または金型に取り付け、かつ/または金型内に導入した後に、この複合成形体を該金型から取り外すか、または該金型を取り外し、続けて1つ以上のさらに別のグリーンシートまたはグリーンシート複合体を複合成形体上に施し、かつ/または複合成形体に取り付け、かつ/または複合成形体中に導入し、かつ、これらの方法工程を何度か繰り返す、請求項18記載の方法。
【請求項28】
射出成形材料をグリーンシートまたはグリーンシート複合体上に施し、かつ/またはグリーンシートまたはグリーンシート複合体に取り付け、かつ/またはグリーンシートまたはグリーンシート複合体中に導入する、請求項18記載の方法。
【請求項29】
金型の充填および/または噴射および/または注入を、加圧下または真空によって実施する、請求項18記載の方法。
【請求項30】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体のためのバインダーとして、熱可塑性バインダーおよび/または熱硬化性バインダーおよび/またはビポリマーバインダーを使用する、請求項18記載の方法。
【請求項31】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体を、射出成形体の取り付け、施与または導入の間に形成する、請求項18記載の方法。
【請求項32】
グリーンシートまたはグリーンシート複合体に、少なくとも相応して射出成形体に導入され、かつ、最後に残ったものとして複合成形体から放出されるバインダーを導入する、請求項18記載の方法。
【請求項33】
複合成形体を脱バインダーし、かつ焼結する、請求項18記載の方法。
【請求項34】
射出成形材料の金型内への充填または射出成形材料のシートへの噴射を、0.3〜200MPaの圧力下で実施する、請求項18記載の方法。

【公表番号】特表2010−515829(P2010−515829A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545886(P2009−545886)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050101
【国際公開番号】WO2008/087064
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【出願人】(509200141)
【氏名又は名称原語表記】Hartmut Walcher
【住所又は居所原語表記】Oberes Fischhaeusle 1, D−72178 Waldachtal, Germany
【出願人】(509200130)
【氏名又は名称原語表記】Marko Maetzig
【住所又は居所原語表記】Haydnweg 5, D−72401 Haigerloch, Germany
【Fターム(参考)】