セラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子
【課題】耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子を提供すること。
【解決手段】セラミックヒータは、発熱部21と一対のリード部22とを有するヒータパターン2をセラミック基板上に形成してなる。発熱部21は、一対の発熱接合端部211を有する。各リード部22は、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221を有する。発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。セラミック基板をヒータパターン2が形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
【解決手段】セラミックヒータは、発熱部21と一対のリード部22とを有するヒータパターン2をセラミック基板上に形成してなる。発熱部21は、一対の発熱接合端部211を有する。各リード部22は、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221を有する。発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。セラミック基板をヒータパターン2が形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等を加熱するためのセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の内燃機関の排気系には、排ガス等の被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサが配設されている。ガスセンサには、ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータが内蔵されている。
セラミックヒータとしては、例えば、通電により発熱する発熱部とその発熱部に通電するためのリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成したものがある。
【0003】
近年、ガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)、使用温度の高温化等の要求により、発熱部の比抵抗を小さくする傾向がある。
例えば、特許文献1では、発熱部及びリード部をそれぞれ異なる材料で構成し、発熱部の比抵抗をリード部の比抵抗よりも小さくしたセラミックヒータが開示されている。このセラミックヒータは、異なる材料によって発熱部及びリード部を形成することから、例えば、発熱部の端部とリード部の端部とを重ね合わせることにより、両者を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記セラミックヒータでは、次のような問題があった。
すなわち、発熱部とリード部とは、それぞれ異なる材料によって構成する。そのため、セラミックヒータの通電時に、発熱部とリード部との線膨張の差によって両者の接合部に応力が発生し、その接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生するおそれがあった。特に、ガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)、使用温度の高温化等の要求が高まれば高まるほど、この問題がより顕著に表れることになる。
【0006】
また、セラミックヒータを製造するに当たっては、例えば、セラミック基板上に発熱部用の導体ペースト及びリード部用の導体ペーストを印刷する。このとき、発熱部とリード部との接合部については、発熱部用の導体ペーストとリード部用の導体ペーストとを重ね合わせるように印刷する。そのため、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生し、そのダレが周囲に伸展することにより、セラミックヒータに短絡が発生するおそれがあった。
また、上述したとおり、発熱部とリード部とは、それぞれ異なる材料によって構成する。そのため、導体ペーストの焼成時に、発熱部とリード部との焼成による収縮率の差によって両者の接合部に応力が発生し、その接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、通電により発熱する発熱部と該発熱部に通電するための一対のリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
上記発熱部は、上記一対のリード部にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部を有し、
上記各リード部は、上記発熱部の上記発熱接合端部に接合されるリード接合端部を有し、
上記発熱部と上記リード部とは、上記発熱接合端部と上記リード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されており、
上記セラミック基板を上記ヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、上記接合部の幅方向の両側における上記発熱部の上記発熱接合端部の輪郭と上記リード部の上記リード接合端部の輪郭との交差部分に、上記ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0009】
本発明の他の態様は、上記セラミックヒータを備えていることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項10)。
【発明の効果】
【0010】
上記セラミックヒータにおいて、発熱部とリード部とは、発熱接合端部とリード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されている。そして、セラミック基板をヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部の幅方向の両側における発熱部の発熱接合端部の輪郭とリード部のリード接合端部の輪郭との交差部分に、ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されている。
これにより、セラミックヒータの耐久性を高めることができ、かつ、短絡の発生を防止することができる。
【0011】
すなわち、発熱部とリード部との接合部分であって、セラミックヒータの通電時(以下、単に通電時という)に応力が発生しやすい接合部の両側に、ヒータパターンを内側に凹ませた凹部が形成されている。そのため、通電時において、接合部に発生する応力を凹部によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータの耐久性を高めることができる。
【0012】
また、セラミックヒータを製造するに当たって、例えば、セラミック基板上に発熱部用及びリード部用の導体ペーストを印刷してヒータパターンを形成する場合に、発熱部の発熱接合端部とリード部のリード接合端部とを重ね合わせて形成する接合部において、両者を精度よく重ねて印刷することができる。つまり、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生しても、そのダレを接合部の両側に形成された凹部内に留まらせて押さえ込み、周囲に伸展することを抑制することができる。これにより、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止することができる。
【0013】
また、発熱部とリード部との接合部分であって、セラミック基板上に印刷した導体ペーストの焼成時(以下、単に焼成時という)に応力が発生しやすい接合部の両側に凹部が形成されている。そのため、接合部に発生する応力を凹部によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータの耐久性を高めることができる。
【0014】
上記ガスセンサ素子は、上述したとおり、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータを備えている。これにより、耐久性・信頼性に優れたガスセンサ素子を得ることができる。
【0015】
このように、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの構造を示す説明図。
【図2】実施例1における、セラミック基板及びヒータパターンを示す平面図。
【図3】実施例1における、発熱部とリード部との接合部分を拡大して示す説明図。
【図4】実施例1における、セラミック基板の幅方向の断面を示す説明図。
【図5】実施例1における、ガスセンサ素子の構造を示す断面説明図。
【図6】実施例1における、ガスセンサ素子の構造を示す斜視展開図。
【図7】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図8】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図9】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図10】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図11】実施例3における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記セラミックヒータにおいて、上記接合部は、発熱部の発熱接合端部上にリード部のリード接合端部を重ね合わせて形成してもよいし、リード部のリード接合端部上に発熱部の発熱接合端部を重ね合わせて形成してもよい。
【0018】
また、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁に弧状の曲線を有する構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、通電時において、発熱部とリード部との接合部に発生する応力をより一層分散・緩和することができる。また、焼成時においても同様の効果が期待できる。これにより、接合部を起点とするクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0019】
また、上記ヒータパターンの長手方向における上記リード部の上記リード接合端部の先端から上記発熱部の上記発熱接合端部の先端までの接合領域の長さをLとし、該接合領域の抵抗をR1、上記発熱部の上記発熱接合端部の先端から上記リード部側へ距離Lまでのリード領域の抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係である構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、発熱部とリード部との接合部分である接合部における異常発熱や接合部を起点とするクラックを防止することができる。
【0020】
また、上記接合領域の抵抗R1と上記リード領域の抵抗R2との関係がR1>R2の場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。また、発熱部とリード部との接合部分である接合部において異常発熱が生じ、接合部を起点とするクラックが発生するおそれがある。
【0021】
また、上記ヒータパターンにおける上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁から上記ヒータパターンの長手方向に突出してなる凸部を有する構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積を十分に確保することができる。これにより、接合部における異常発熱や接合部を起点とするクラックの発生を抑制することができる。
【0022】
また、上記凸部の上記長手方向の長さをS、上記接合部から上記凸部を除いた部分の上記長手方向の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係であり、かつ、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmである構成とすることができる(請求項5)。
この場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積をより一層十分に確保することができる。
【0023】
上記のS=a×M+bの関係式において、aが0.3未満の場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じた場合に、両者の接合面積を十分に確保することができないおそれがある。また、aが0.5を超える場合には、接合面積が必要以上に大きくなり、コストの増大につながるおそれがある。また、bが0.2mmを超える場合には、接合面積が必要以上に大きくなり、コストの増大につながるおそれがある。
【0024】
また、上記接合部は、上記発熱部の上記発熱接合端部上に上記リード部の上記リード接合端部を重ね合わせてなり、該リード接合端部の幅は、上記発熱接合端部の幅よりも小さい構成とすることができる(請求項6)。
この場合には、例えば、セラミック基板上に導体ペーストを印刷してヒータパターンを形成する場合に、発熱部の発熱接合端部上にリード部のリード接合端部を精度よく重ねて印刷することが容易となる。また、上側に重ねて印刷したリード部のリード接合端部にダレやニジミが発生しても、そのダレやニジミが発熱部の発熱接合端部よりも外側に伸展することを抑制することができる。その結果、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止することができる。
【0025】
また、上記発熱部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を11〜14重量部含有している構成とすることができる(請求項7)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0026】
また、上記発熱部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が11重量部未満の場合には、焼成時において、焼結性が低下し、剥離やクラックが発生するおそれがある。
また、上記発熱部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が14重量部を超える場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。
【0027】
また、上記リード部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を7〜10重量部含有している構成とすることができる(請求項8)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0028】
また、上記リード部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が7重量部未満の場合には、焼成時において、焼結性が低下し、剥離やクラックが発生するおそれがある。
また、上記リード部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が10重量部を超える場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。
【0029】
また、上記ヒータパターンは、導体ペーストを印刷することによって形成されている構成とすることができる(請求項9)。
この場合には、発熱部とリード部との接合部分である接合部における印刷時の導体ペーストのダレを抑制し、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止するという上述の効果を有効に発揮することができる。
【0030】
上記ガスセンサ素子としては、例えば、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して排ガスフィードバックシステムに使用されるA/Fセンサに内蔵するA/Fセンサ素子、排ガス中の酸素濃度を測定するO2センサ素子、排気管に設置する三元触媒の劣化検知等に利用されるNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサ素子等がある。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
セラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子にかかる実施例について、図を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、図1〜図4に示すごとく、通電により発熱する発熱部21と発熱部21に通電するための一対のリード部22とを有するヒータパターン2をセラミック基板11上に形成してなる。
【0032】
発熱部21は、一対のリード部22にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部211を有する。各リード部22は、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221を有する。発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。
セラミック基板11をヒータパターン2が形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
以下、これを詳説する。
【0033】
なお、本例では、セラミック基板11の長手方向を長手方向X、セラミック基板11の幅方向を幅方向Y、セラミック基板11の厚み方向を厚み方向Zとして説明する。
また、ヒータパターン2(発熱部21、リード部22)の長手方向、幅方向、厚み方向は、セラミック基板の長手方向X、幅方向Y、厚み方向Zと同様の方向である。
【0034】
本例のセラミックヒータ1は、図5、図6に示すごとく、ガスセンサ素子3に内蔵されている。
ガスセンサ素子3としては、例えば、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して排ガスフィードバックシステムに使用されるA/Fセンサに内蔵するA/Fセンサ素子、排ガス中の酸素濃度を測定するO2センサ素子、排気管に設置する三元触媒の劣化検知等に利用されるNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサ素子等がある。
【0035】
同図に示すごとく、ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性の固体電解質体31を有する。固体電解質体31は、ジルコニアを主成分とする材料からなる。
固体電解質体31の一方の面には、被測定ガス側電極32が設けられている。また、固体電解質体31の他方の面には、基準ガス側電極33が設けられている。被測定ガス側電極32及び基準ガス側電極33は、白金を主成分とする材料からなる。
【0036】
また、固体電解質体31における被測定ガス側電極32の側には、ガス透過性のアルミナ多孔体からなる多孔質の拡散抵抗層35と電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなるスペーサ層36とが積層されている。拡散抵抗層35は、被測定ガス(排ガス)を導入して被測定ガス側電極32に接触させることができるよう構成されている。
また、拡散抵抗層35及びスペーサ層36における固体電解質体31とは反対の側には、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる遮蔽層37が積層されている。
【0037】
また、固体電解質体31における基準ガス側電極33の側には、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる基準ガス室形成層34が積層されている。基準ガス室形成層34には、切欠部341が設けられており、この切欠部341内に基準ガス室340が形成されている。基準ガス室340は、基準ガス(大気)を導入して基準ガス側電極33に接触させることができるよう構成されている。
また、基準ガス室形成層34における固体電解質体31とは反対の側には、セラミックヒータ1が積層されている。
【0038】
また、固体電解質体31の一方の面に設けられた被測定ガス側電極32は、導電性の接続リード321、さらにスペーサ層36及び遮蔽層37にそれぞれ形成されたスルーホール368、378を介して、電極パッド322に電気的に接続されている。なお、各スルーホール368、378内には、導体(図示略)が配設されている。
また、固体電解質体31の他方の面に設けられた基準ガス側電極33は、導電性のリード部331、さらに固体電解質体31、スペーサ層36及び遮蔽層37にそれぞれ形成されたスルーホール319、369、379を介して、電極パッド332に電気的に接続されている。なお、各スルーホール319、369、379内には、導体(図示略)が配設されている。
【0039】
次に、セラミックヒータ1について詳細に説明する。
図1に示すごとく、セラミックヒータ1は、セラミック基板11と、そのセラミック基板11と基準ガス質形成層34(図5)との間に配置されたセラミック絶縁層12とを積層してなる。セラミック基板11及びセラミック絶縁層12は、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる。
【0040】
図1、図2に示すごとく、セラミック基板11の一方の表面111には、ヒータパターン2が形成されている。ヒータパターン2は、導体ペーストを印刷することによって形成されている。また、ヒータパターン2は、セラミック絶縁層12と対面するように形成されている。
また、ヒータパターン2は、通電により発熱し、ガスセンサ素子3を活性温度まで加熱するための発熱部21と、発熱部21に通電するための一対のリード部22とを有する。
【0041】
本例では、発熱部21は、白金を主成分とする材料からなる。また、発熱部21は、主成分である白金の他に、アルミナを含有している。アルミナの含有量は、白金の含有量を100重量部とした場合、11〜14重量部である。
また、リード部22は、白金を主成分とする材料からなる。また、リード部22は、主成分である白金の他に、アルミナを含有している。アルミナの含有量は、白金の含有量を100重量部とした場合、7〜10重量部である。
【0042】
また、発熱部21は、セラミック基板11の長手方向Xにおける一方の端部に形成されている。発熱部21の両端部には、一対のリード部22にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部211が設けられている。
また、一対のリード部22は、セラミック基板11の長手方向Xに形成されている。また、一対のリード部22は、セラミック基板11の幅方向Yにおいて互いに平行に配置されている。各リード部22の一方の端部には、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221が設けられている。
【0043】
そして、図3、図4に示すごとく、発熱部21とリード部22とは、一対の接合部23において接合されている。接合部23は、発熱部21の発熱接合端部211とリード部22のリード接合端部221とを重ね合わせることによって形成されている。本例では、発熱部21の発熱接合端部211上にリード部22のリード接合端部221を重ね合わせることによって形成されている。
【0044】
また、図3に示すごとく、セラミック基板11をヒータパターン2が形成されている表面111に対して鉛直方向(厚み方向Z)から見た場合のヒータパターン形状(以下、単にヒータパターン形状という)において、発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222が円弧状の曲線となっている。
また、接合部23の幅方向(幅方向Y)の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
【0045】
また、図4に示すごとく、ヒータパターン2の長手方向(長手方向X)において、リード部22のリード接合端部221の先端から発熱部21の発熱接合端部211の先端までの接合領域Aの長さをLとする。そして、この接合領域Aの抵抗をR1、発熱部21の発熱接合端部211の先端からリード部22側へ距離Lまでのリード領域Bの抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係を満たしている。
また、セラミック基板11の表面111に形成された発熱部21は、一対のリード部22、さらにはセラミック基板11に形成された一対のスルーホール119を介して、セラミック基板11の他方の表面112に配設された一対の電極パッド29に電気的に接続されている。なお、各スルーホール119内には、導体28が配設されている。
【0046】
次に、セラミックヒータ1及びガスセンサ素子3の製造方法について説明する。
まず、セラミックヒータ1を構成するセラミック基板11及びセラミック絶縁層12となる各アルミナシートを成形する。また、セラミック基板11となるアルミナシートには、スルーホール119となる貫通孔を形成しておく。
このアルミナシートは、例えば、アルミナ粉末にSiO2、MgO、CaO等の焼結助剤を混合し、さらに有機バインダ等を混合して調整されたスラリーをドクターブレード法等の成形方法によって50〜500μmの厚さに成形する。
【0047】
次いで、セラミック基板11となるアルミナシートの一方の表面に、ヒータパターン2となる導体ペーストを印刷する。具体的には、発熱部21となる導体ペーストを印刷した後、リード部22となる導体ペーストを印刷する。そして、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23については、発熱部21となる導体ペースト上にリード部22となる導体ペーストを重ねて印刷する。
【0048】
ここで、発熱部21となる導体ペーストは、例えば、主成分となる白金粉末100重量部にアルミナ粉末を11〜14重量部混合し、さらにアクリル樹脂等の有機バインダ、DBPやDOP等の可塑剤、ターピネオール等の有機溶媒等を混合し、ペースト状に調整したものである。
また、リード部22となる導体ペーストは、例えば、主成分となる白金粉末100重量部にアルミナ粉末を11〜14重量部混合し、さらにアクリル樹脂等の有機バインダ、DBPやDOP等の可塑剤、ターピネオール等の有機溶媒等を混合し、ペースト状に調整したものである。
【0049】
また、セラミック基板11となるアルミナシートの他方の表面に、電極パッド29となる導体ペーストを印刷する。また、予め形成しておいた貫通孔に導体28となる導体ペーストを充填する。
そして、セラミック基板11及びセラミック絶縁層12となるアルミナシートを積層し、ヒータ積層体を作製する。
【0050】
また、ガスセンサ素子3を構成する固体電解質体31となるジルニコアシートを成形し、そこへ被測定ガス側電極32、基準ガス側電極33等となる導体ペーストを印刷する。また、ガスセンサ素子3を構成する基準ガス室形成層34、拡散抵抗層35、スペーサ層36、遮蔽層37となる各アルミナシートを成形する。そして、これらのシートを積層し、センサ積層体を作製する。
【0051】
次いで、このセンサ積層体に上述のヒータ積層体を積層し、全体を熱圧着して素子積層体を作製する。そして、素子積層体を所定の条件で焼成する。
これにより、本例のセラミックヒータ1(図1〜図4)を内蔵してなるガスセンサ素子3(図5)が得られる。
【0052】
次に、本例のセラミックヒータ1及びそれを用いたガスセンサ素子3における作用効果について説明する。
本例のセラミックヒータ1において、発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。そして、ヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
これにより、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができ、かつ、短絡の発生を防止することができる。
【0053】
すなわち、発熱部21とリード部22との接合部分であって、セラミックヒータ1の通電時に応力が発生しやすい接合部23の両側に、ヒータパターン2の側面200を内側に凹ませた凹部24が形成されている。そのため、通電時において、接合部23に発生する応力を凹部24によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部23を起点としてヒータパターン2やセラミック基板11にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができる。
【0054】
また、セラミックヒータ1を製造するに当たって、セラミック基板11上に発熱部21用及びリード部22用の導体ペーストを印刷してヒータパターン2を形成する場合に、発熱部21の発熱接合端部211とリード部22のリード接合端部221とを重ね合わせて形成する接合部23において、両者を精度良く重ねて印刷することができる。つまり、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生しても、そのダレを接合部23の両側に形成された凹部24内に留まらせて押さえ込み、周囲に伸展することを抑制することができる。これにより、セラミックヒータ1における短絡の発生を防止することができる。
【0055】
また、発熱部21とリード部22との接合部分であって、セラミック基板11上に印刷した導体ペーストの焼成時に応力が発生しやすい接合部23の両側に凹部24が形成されている。そのため、接合部23に発生する応力を凹部24によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部23を起点としてヒータパターン2やセラミック基板11にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができる。
【0056】
また、本例のセラミックヒータ1において、ヒータパターン形状における発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222に弧状(円弧状)の曲線を有する。そのため、通電時において、発熱部21とリード部22との接合部23に発生する応力をより一層分散・緩和することができる。また、焼成時においても同様の効果が期待できる。これにより、接合部23を起点とするクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0057】
また、ヒータパターン2における接合領域Aの抵抗をR1、リード領域Bの抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係である。これにより、通電時において、良好な発熱特性が得られ、ガスセンサ素子3の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23における異常発熱や接合部23を起点とするクラックを防止することができる。
【0058】
また、発熱部21は、白金を主成分とし、かつ、その主成分である白金の含有量を100重量部とした場合、アルミナを11〜14重量部含有している。また、リード部は、白金を主成分とし、かつ、その主成分である白金の含有量を100重量部とした場合、アルミナを7〜10重量部含有している。これにより、通電時において、良好な発熱特性が得られ、ガスセンサ素子3の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0059】
また、ヒータパターン2は、発熱部21用及びリード部22用の導体ペーストを印刷することによって形成されている。これにより、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23における印刷時の導体ペーストのダレを抑制し、セラミックヒータ1における短絡の発生を防止するという上述の効果を有効に発揮することができる。
【0060】
また、本例のガスセンサ素子3は、上述したとおり、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ1を内蔵している。これにより、耐久性・信頼性に優れたガスセンサ素子3を得ることができる。
【0061】
このように、本例によれば、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ1及びそれを用いたガスセンサ素子3を提供することができる。
【0062】
(実施例2)
本例は、図7〜図10に示すごとく、ヒータパターン2における発熱部21及びリード部22の構成を変更したセラミックヒータ1の例である。
【0063】
図7に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が円弧状の曲線となっている。一方、リード部22のリード接合端部221は、その端縁222が幅方向Yに平行な直線となっている。
図8に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線となっている。一方、リード部22のリード接合端部221は、その端縁222が円弧状の曲線となっている。
【0064】
図9に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線部分とその両側の円弧状の曲線部分とからなっている。リード部22のリード接合端部221の端縁222も同様である。
図10に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線部分とその両側の傾斜した直線部分とからなっており、先端に近づくほど発熱接合端部211の幅が小さくなっている。リード部22のリード接合端部221の端縁222も同様である。
【0065】
そして、図7〜図10に示すいずれの例においても、その他は、実施例1と同様の構成であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0066】
(実施例3)
本例は、図11に示すごとく、ヒータパターン2における発熱部21及びリード部22の構成を変更したセラミックヒータ1の例である。
本例では、同図に示すごとく、ヒータパターン形状における発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222からヒータパターン2の長手方向(長手方向X)に突出してなる凸部213、223を有する。凸部213、223は、発熱接合端部211及びリード接合端部221の幅方向(幅方向Y)の中央付近から長手方向Xに突出して形成されている。
【0067】
また、凸部213、223の長手方向(長手方向X)の長さをS(S1、S2)、接合部23から凸部213、223を除いた部分の長手方向(長手方向X)の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係を満たす。なお、この関係式において、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmである。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0068】
本例の場合には、セラミックヒータ1の製造時において、発熱部21及びリード部22の長手方向(長手方向X)の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積を十分に確保することができる。これにより、接合部23における異常発熱や接合部23を起点とするクラックの発生を抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0069】
1 セラミックヒータ
11 セラミック基板
2 ヒータパターン
21 発熱部
211 発熱接合端部
22 リード部
221 リード接合端部
23 接合部
24 凹部
3 ガスセンサ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサ素子等を加熱するためのセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の内燃機関の排気系には、排ガス等の被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサが配設されている。ガスセンサには、ガスセンサ素子を加熱するためのセラミックヒータが内蔵されている。
セラミックヒータとしては、例えば、通電により発熱する発熱部とその発熱部に通電するためのリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成したものがある。
【0003】
近年、ガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)、使用温度の高温化等の要求により、発熱部の比抵抗を小さくする傾向がある。
例えば、特許文献1では、発熱部及びリード部をそれぞれ異なる材料で構成し、発熱部の比抵抗をリード部の比抵抗よりも小さくしたセラミックヒータが開示されている。このセラミックヒータは、異なる材料によって発熱部及びリード部を形成することから、例えば、発熱部の端部とリード部の端部とを重ね合わせることにより、両者を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−342622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記セラミックヒータでは、次のような問題があった。
すなわち、発熱部とリード部とは、それぞれ異なる材料によって構成する。そのため、セラミックヒータの通電時に、発熱部とリード部との線膨張の差によって両者の接合部に応力が発生し、その接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生するおそれがあった。特に、ガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)、使用温度の高温化等の要求が高まれば高まるほど、この問題がより顕著に表れることになる。
【0006】
また、セラミックヒータを製造するに当たっては、例えば、セラミック基板上に発熱部用の導体ペースト及びリード部用の導体ペーストを印刷する。このとき、発熱部とリード部との接合部については、発熱部用の導体ペーストとリード部用の導体ペーストとを重ね合わせるように印刷する。そのため、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生し、そのダレが周囲に伸展することにより、セラミックヒータに短絡が発生するおそれがあった。
また、上述したとおり、発熱部とリード部とは、それぞれ異なる材料によって構成する。そのため、導体ペーストの焼成時に、発熱部とリード部との焼成による収縮率の差によって両者の接合部に応力が発生し、その接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様は、通電により発熱する発熱部と該発熱部に通電するための一対のリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
上記発熱部は、上記一対のリード部にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部を有し、
上記各リード部は、上記発熱部の上記発熱接合端部に接合されるリード接合端部を有し、
上記発熱部と上記リード部とは、上記発熱接合端部と上記リード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されており、
上記セラミック基板を上記ヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、上記接合部の幅方向の両側における上記発熱部の上記発熱接合端部の輪郭と上記リード部の上記リード接合端部の輪郭との交差部分に、上記ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータにある(請求項1)。
【0009】
本発明の他の態様は、上記セラミックヒータを備えていることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項10)。
【発明の効果】
【0010】
上記セラミックヒータにおいて、発熱部とリード部とは、発熱接合端部とリード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されている。そして、セラミック基板をヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部の幅方向の両側における発熱部の発熱接合端部の輪郭とリード部のリード接合端部の輪郭との交差部分に、ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されている。
これにより、セラミックヒータの耐久性を高めることができ、かつ、短絡の発生を防止することができる。
【0011】
すなわち、発熱部とリード部との接合部分であって、セラミックヒータの通電時(以下、単に通電時という)に応力が発生しやすい接合部の両側に、ヒータパターンを内側に凹ませた凹部が形成されている。そのため、通電時において、接合部に発生する応力を凹部によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータの耐久性を高めることができる。
【0012】
また、セラミックヒータを製造するに当たって、例えば、セラミック基板上に発熱部用及びリード部用の導体ペーストを印刷してヒータパターンを形成する場合に、発熱部の発熱接合端部とリード部のリード接合端部とを重ね合わせて形成する接合部において、両者を精度よく重ねて印刷することができる。つまり、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生しても、そのダレを接合部の両側に形成された凹部内に留まらせて押さえ込み、周囲に伸展することを抑制することができる。これにより、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止することができる。
【0013】
また、発熱部とリード部との接合部分であって、セラミック基板上に印刷した導体ペーストの焼成時(以下、単に焼成時という)に応力が発生しやすい接合部の両側に凹部が形成されている。そのため、接合部に発生する応力を凹部によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部を起点としてヒータパターンやセラミック基板にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータの耐久性を高めることができる。
【0014】
上記ガスセンサ素子は、上述したとおり、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータを備えている。これにより、耐久性・信頼性に優れたガスセンサ素子を得ることができる。
【0015】
このように、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、セラミックヒータの構造を示す説明図。
【図2】実施例1における、セラミック基板及びヒータパターンを示す平面図。
【図3】実施例1における、発熱部とリード部との接合部分を拡大して示す説明図。
【図4】実施例1における、セラミック基板の幅方向の断面を示す説明図。
【図5】実施例1における、ガスセンサ素子の構造を示す断面説明図。
【図6】実施例1における、ガスセンサ素子の構造を示す斜視展開図。
【図7】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図8】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図9】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図10】実施例2における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【図11】実施例3における、発熱部とリード部との接合部を拡大して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記セラミックヒータにおいて、上記接合部は、発熱部の発熱接合端部上にリード部のリード接合端部を重ね合わせて形成してもよいし、リード部のリード接合端部上に発熱部の発熱接合端部を重ね合わせて形成してもよい。
【0018】
また、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁に弧状の曲線を有する構成とすることができる(請求項2)。
この場合には、通電時において、発熱部とリード部との接合部に発生する応力をより一層分散・緩和することができる。また、焼成時においても同様の効果が期待できる。これにより、接合部を起点とするクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0019】
また、上記ヒータパターンの長手方向における上記リード部の上記リード接合端部の先端から上記発熱部の上記発熱接合端部の先端までの接合領域の長さをLとし、該接合領域の抵抗をR1、上記発熱部の上記発熱接合端部の先端から上記リード部側へ距離Lまでのリード領域の抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係である構成とすることができる(請求項3)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、発熱部とリード部との接合部分である接合部における異常発熱や接合部を起点とするクラックを防止することができる。
【0020】
また、上記接合領域の抵抗R1と上記リード領域の抵抗R2との関係がR1>R2の場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。また、発熱部とリード部との接合部分である接合部において異常発熱が生じ、接合部を起点とするクラックが発生するおそれがある。
【0021】
また、上記ヒータパターンにおける上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁から上記ヒータパターンの長手方向に突出してなる凸部を有する構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積を十分に確保することができる。これにより、接合部における異常発熱や接合部を起点とするクラックの発生を抑制することができる。
【0022】
また、上記凸部の上記長手方向の長さをS、上記接合部から上記凸部を除いた部分の上記長手方向の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係であり、かつ、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmである構成とすることができる(請求項5)。
この場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積をより一層十分に確保することができる。
【0023】
上記のS=a×M+bの関係式において、aが0.3未満の場合には、セラミックヒータの製造時において、発熱部及びリード部の長手方向の形成位置にずれが生じた場合に、両者の接合面積を十分に確保することができないおそれがある。また、aが0.5を超える場合には、接合面積が必要以上に大きくなり、コストの増大につながるおそれがある。また、bが0.2mmを超える場合には、接合面積が必要以上に大きくなり、コストの増大につながるおそれがある。
【0024】
また、上記接合部は、上記発熱部の上記発熱接合端部上に上記リード部の上記リード接合端部を重ね合わせてなり、該リード接合端部の幅は、上記発熱接合端部の幅よりも小さい構成とすることができる(請求項6)。
この場合には、例えば、セラミック基板上に導体ペーストを印刷してヒータパターンを形成する場合に、発熱部の発熱接合端部上にリード部のリード接合端部を精度よく重ねて印刷することが容易となる。また、上側に重ねて印刷したリード部のリード接合端部にダレやニジミが発生しても、そのダレやニジミが発熱部の発熱接合端部よりも外側に伸展することを抑制することができる。その結果、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止することができる。
【0025】
また、上記発熱部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を11〜14重量部含有している構成とすることができる(請求項7)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0026】
また、上記発熱部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が11重量部未満の場合には、焼成時において、焼結性が低下し、剥離やクラックが発生するおそれがある。
また、上記発熱部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が14重量部を超える場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。
【0027】
また、上記リード部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を7〜10重量部含有している構成とすることができる(請求項8)。
この場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られ、例えばガスセンサ素子の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0028】
また、上記リード部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が7重量部未満の場合には、焼成時において、焼結性が低下し、剥離やクラックが発生するおそれがある。
また、上記リード部は、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料の含有量が10重量部を超える場合には、通電時において、良好な発熱特性が得られないおそれがある。
【0029】
また、上記ヒータパターンは、導体ペーストを印刷することによって形成されている構成とすることができる(請求項9)。
この場合には、発熱部とリード部との接合部分である接合部における印刷時の導体ペーストのダレを抑制し、セラミックヒータにおける短絡の発生を防止するという上述の効果を有効に発揮することができる。
【0030】
上記ガスセンサ素子としては、例えば、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して排ガスフィードバックシステムに使用されるA/Fセンサに内蔵するA/Fセンサ素子、排ガス中の酸素濃度を測定するO2センサ素子、排気管に設置する三元触媒の劣化検知等に利用されるNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサ素子等がある。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
セラミックヒータ及びそれを用いたガスセンサ素子にかかる実施例について、図を用いて説明する。
本例のセラミックヒータ1は、図1〜図4に示すごとく、通電により発熱する発熱部21と発熱部21に通電するための一対のリード部22とを有するヒータパターン2をセラミック基板11上に形成してなる。
【0032】
発熱部21は、一対のリード部22にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部211を有する。各リード部22は、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221を有する。発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。
セラミック基板11をヒータパターン2が形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
以下、これを詳説する。
【0033】
なお、本例では、セラミック基板11の長手方向を長手方向X、セラミック基板11の幅方向を幅方向Y、セラミック基板11の厚み方向を厚み方向Zとして説明する。
また、ヒータパターン2(発熱部21、リード部22)の長手方向、幅方向、厚み方向は、セラミック基板の長手方向X、幅方向Y、厚み方向Zと同様の方向である。
【0034】
本例のセラミックヒータ1は、図5、図6に示すごとく、ガスセンサ素子3に内蔵されている。
ガスセンサ素子3としては、例えば、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管に設置して排ガスフィードバックシステムに使用されるA/Fセンサに内蔵するA/Fセンサ素子、排ガス中の酸素濃度を測定するO2センサ素子、排気管に設置する三元触媒の劣化検知等に利用されるNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサ素子等がある。
【0035】
同図に示すごとく、ガスセンサ素子3は、酸素イオン伝導性の固体電解質体31を有する。固体電解質体31は、ジルコニアを主成分とする材料からなる。
固体電解質体31の一方の面には、被測定ガス側電極32が設けられている。また、固体電解質体31の他方の面には、基準ガス側電極33が設けられている。被測定ガス側電極32及び基準ガス側電極33は、白金を主成分とする材料からなる。
【0036】
また、固体電解質体31における被測定ガス側電極32の側には、ガス透過性のアルミナ多孔体からなる多孔質の拡散抵抗層35と電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなるスペーサ層36とが積層されている。拡散抵抗層35は、被測定ガス(排ガス)を導入して被測定ガス側電極32に接触させることができるよう構成されている。
また、拡散抵抗層35及びスペーサ層36における固体電解質体31とは反対の側には、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる遮蔽層37が積層されている。
【0037】
また、固体電解質体31における基準ガス側電極33の側には、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる基準ガス室形成層34が積層されている。基準ガス室形成層34には、切欠部341が設けられており、この切欠部341内に基準ガス室340が形成されている。基準ガス室340は、基準ガス(大気)を導入して基準ガス側電極33に接触させることができるよう構成されている。
また、基準ガス室形成層34における固体電解質体31とは反対の側には、セラミックヒータ1が積層されている。
【0038】
また、固体電解質体31の一方の面に設けられた被測定ガス側電極32は、導電性の接続リード321、さらにスペーサ層36及び遮蔽層37にそれぞれ形成されたスルーホール368、378を介して、電極パッド322に電気的に接続されている。なお、各スルーホール368、378内には、導体(図示略)が配設されている。
また、固体電解質体31の他方の面に設けられた基準ガス側電極33は、導電性のリード部331、さらに固体電解質体31、スペーサ層36及び遮蔽層37にそれぞれ形成されたスルーホール319、369、379を介して、電極パッド332に電気的に接続されている。なお、各スルーホール319、369、379内には、導体(図示略)が配設されている。
【0039】
次に、セラミックヒータ1について詳細に説明する。
図1に示すごとく、セラミックヒータ1は、セラミック基板11と、そのセラミック基板11と基準ガス質形成層34(図5)との間に配置されたセラミック絶縁層12とを積層してなる。セラミック基板11及びセラミック絶縁層12は、電気的絶縁性を有すると共に緻密でガスを透過させないアルミナからなる。
【0040】
図1、図2に示すごとく、セラミック基板11の一方の表面111には、ヒータパターン2が形成されている。ヒータパターン2は、導体ペーストを印刷することによって形成されている。また、ヒータパターン2は、セラミック絶縁層12と対面するように形成されている。
また、ヒータパターン2は、通電により発熱し、ガスセンサ素子3を活性温度まで加熱するための発熱部21と、発熱部21に通電するための一対のリード部22とを有する。
【0041】
本例では、発熱部21は、白金を主成分とする材料からなる。また、発熱部21は、主成分である白金の他に、アルミナを含有している。アルミナの含有量は、白金の含有量を100重量部とした場合、11〜14重量部である。
また、リード部22は、白金を主成分とする材料からなる。また、リード部22は、主成分である白金の他に、アルミナを含有している。アルミナの含有量は、白金の含有量を100重量部とした場合、7〜10重量部である。
【0042】
また、発熱部21は、セラミック基板11の長手方向Xにおける一方の端部に形成されている。発熱部21の両端部には、一対のリード部22にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部211が設けられている。
また、一対のリード部22は、セラミック基板11の長手方向Xに形成されている。また、一対のリード部22は、セラミック基板11の幅方向Yにおいて互いに平行に配置されている。各リード部22の一方の端部には、発熱部21の発熱接合端部211に接合されるリード接合端部221が設けられている。
【0043】
そして、図3、図4に示すごとく、発熱部21とリード部22とは、一対の接合部23において接合されている。接合部23は、発熱部21の発熱接合端部211とリード部22のリード接合端部221とを重ね合わせることによって形成されている。本例では、発熱部21の発熱接合端部211上にリード部22のリード接合端部221を重ね合わせることによって形成されている。
【0044】
また、図3に示すごとく、セラミック基板11をヒータパターン2が形成されている表面111に対して鉛直方向(厚み方向Z)から見た場合のヒータパターン形状(以下、単にヒータパターン形状という)において、発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222が円弧状の曲線となっている。
また、接合部23の幅方向(幅方向Y)の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
【0045】
また、図4に示すごとく、ヒータパターン2の長手方向(長手方向X)において、リード部22のリード接合端部221の先端から発熱部21の発熱接合端部211の先端までの接合領域Aの長さをLとする。そして、この接合領域Aの抵抗をR1、発熱部21の発熱接合端部211の先端からリード部22側へ距離Lまでのリード領域Bの抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係を満たしている。
また、セラミック基板11の表面111に形成された発熱部21は、一対のリード部22、さらにはセラミック基板11に形成された一対のスルーホール119を介して、セラミック基板11の他方の表面112に配設された一対の電極パッド29に電気的に接続されている。なお、各スルーホール119内には、導体28が配設されている。
【0046】
次に、セラミックヒータ1及びガスセンサ素子3の製造方法について説明する。
まず、セラミックヒータ1を構成するセラミック基板11及びセラミック絶縁層12となる各アルミナシートを成形する。また、セラミック基板11となるアルミナシートには、スルーホール119となる貫通孔を形成しておく。
このアルミナシートは、例えば、アルミナ粉末にSiO2、MgO、CaO等の焼結助剤を混合し、さらに有機バインダ等を混合して調整されたスラリーをドクターブレード法等の成形方法によって50〜500μmの厚さに成形する。
【0047】
次いで、セラミック基板11となるアルミナシートの一方の表面に、ヒータパターン2となる導体ペーストを印刷する。具体的には、発熱部21となる導体ペーストを印刷した後、リード部22となる導体ペーストを印刷する。そして、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23については、発熱部21となる導体ペースト上にリード部22となる導体ペーストを重ねて印刷する。
【0048】
ここで、発熱部21となる導体ペーストは、例えば、主成分となる白金粉末100重量部にアルミナ粉末を11〜14重量部混合し、さらにアクリル樹脂等の有機バインダ、DBPやDOP等の可塑剤、ターピネオール等の有機溶媒等を混合し、ペースト状に調整したものである。
また、リード部22となる導体ペーストは、例えば、主成分となる白金粉末100重量部にアルミナ粉末を11〜14重量部混合し、さらにアクリル樹脂等の有機バインダ、DBPやDOP等の可塑剤、ターピネオール等の有機溶媒等を混合し、ペースト状に調整したものである。
【0049】
また、セラミック基板11となるアルミナシートの他方の表面に、電極パッド29となる導体ペーストを印刷する。また、予め形成しておいた貫通孔に導体28となる導体ペーストを充填する。
そして、セラミック基板11及びセラミック絶縁層12となるアルミナシートを積層し、ヒータ積層体を作製する。
【0050】
また、ガスセンサ素子3を構成する固体電解質体31となるジルニコアシートを成形し、そこへ被測定ガス側電極32、基準ガス側電極33等となる導体ペーストを印刷する。また、ガスセンサ素子3を構成する基準ガス室形成層34、拡散抵抗層35、スペーサ層36、遮蔽層37となる各アルミナシートを成形する。そして、これらのシートを積層し、センサ積層体を作製する。
【0051】
次いで、このセンサ積層体に上述のヒータ積層体を積層し、全体を熱圧着して素子積層体を作製する。そして、素子積層体を所定の条件で焼成する。
これにより、本例のセラミックヒータ1(図1〜図4)を内蔵してなるガスセンサ素子3(図5)が得られる。
【0052】
次に、本例のセラミックヒータ1及びそれを用いたガスセンサ素子3における作用効果について説明する。
本例のセラミックヒータ1において、発熱部21とリード部22とは、発熱接合端部211とリード接合端部221とを重ね合わせてなる接合部23において接合されている。そして、ヒータパターン形状において、接合部23の幅方向の両側における発熱部21の発熱接合端部211の輪郭とリード部22のリード接合端部221の輪郭との交差部分に、ヒータパターン2が内側に凹んだ凹部24が形成されている。
これにより、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができ、かつ、短絡の発生を防止することができる。
【0053】
すなわち、発熱部21とリード部22との接合部分であって、セラミックヒータ1の通電時に応力が発生しやすい接合部23の両側に、ヒータパターン2の側面200を内側に凹ませた凹部24が形成されている。そのため、通電時において、接合部23に発生する応力を凹部24によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部23を起点としてヒータパターン2やセラミック基板11にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができる。
【0054】
また、セラミックヒータ1を製造するに当たって、セラミック基板11上に発熱部21用及びリード部22用の導体ペーストを印刷してヒータパターン2を形成する場合に、発熱部21の発熱接合端部211とリード部22のリード接合端部221とを重ね合わせて形成する接合部23において、両者を精度良く重ねて印刷することができる。つまり、一方の導体ペーストの上に重ねて印刷した他方の導体ペーストにダレが発生しても、そのダレを接合部23の両側に形成された凹部24内に留まらせて押さえ込み、周囲に伸展することを抑制することができる。これにより、セラミックヒータ1における短絡の発生を防止することができる。
【0055】
また、発熱部21とリード部22との接合部分であって、セラミック基板11上に印刷した導体ペーストの焼成時に応力が発生しやすい接合部23の両側に凹部24が形成されている。そのため、接合部23に発生する応力を凹部24によって効果的に分散・緩和することができる。これにより、接合部23を起点としてヒータパターン2やセラミック基板11にクラックが発生することを抑制することができ、セラミックヒータ1の耐久性を高めることができる。
【0056】
また、本例のセラミックヒータ1において、ヒータパターン形状における発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222に弧状(円弧状)の曲線を有する。そのため、通電時において、発熱部21とリード部22との接合部23に発生する応力をより一層分散・緩和することができる。また、焼成時においても同様の効果が期待できる。これにより、接合部23を起点とするクラックの発生をさらに抑制することができる。
【0057】
また、ヒータパターン2における接合領域Aの抵抗をR1、リード領域Bの抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係である。これにより、通電時において、良好な発熱特性が得られ、ガスセンサ素子3の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23における異常発熱や接合部23を起点とするクラックを防止することができる。
【0058】
また、発熱部21は、白金を主成分とし、かつ、その主成分である白金の含有量を100重量部とした場合、アルミナを11〜14重量部含有している。また、リード部は、白金を主成分とし、かつ、その主成分である白金の含有量を100重量部とした場合、アルミナを7〜10重量部含有している。これにより、通電時において、良好な発熱特性が得られ、ガスセンサ素子3の急速昇温化(早期活性化)を図ることができる。また、焼成時において、良好な焼結性が得られる。
【0059】
また、ヒータパターン2は、発熱部21用及びリード部22用の導体ペーストを印刷することによって形成されている。これにより、発熱部21とリード部22との接合部分である接合部23における印刷時の導体ペーストのダレを抑制し、セラミックヒータ1における短絡の発生を防止するという上述の効果を有効に発揮することができる。
【0060】
また、本例のガスセンサ素子3は、上述したとおり、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ1を内蔵している。これにより、耐久性・信頼性に優れたガスセンサ素子3を得ることができる。
【0061】
このように、本例によれば、耐久性に優れ、短絡の発生を防止することができるセラミックヒータ1及びそれを用いたガスセンサ素子3を提供することができる。
【0062】
(実施例2)
本例は、図7〜図10に示すごとく、ヒータパターン2における発熱部21及びリード部22の構成を変更したセラミックヒータ1の例である。
【0063】
図7に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が円弧状の曲線となっている。一方、リード部22のリード接合端部221は、その端縁222が幅方向Yに平行な直線となっている。
図8に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線となっている。一方、リード部22のリード接合端部221は、その端縁222が円弧状の曲線となっている。
【0064】
図9に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線部分とその両側の円弧状の曲線部分とからなっている。リード部22のリード接合端部221の端縁222も同様である。
図10に示す例では、ヒータパターン形状において、発熱部21の発熱接合端部211は、その端縁212が幅方向Yに平行な直線部分とその両側の傾斜した直線部分とからなっており、先端に近づくほど発熱接合端部211の幅が小さくなっている。リード部22のリード接合端部221の端縁222も同様である。
【0065】
そして、図7〜図10に示すいずれの例においても、その他は、実施例1と同様の構成であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0066】
(実施例3)
本例は、図11に示すごとく、ヒータパターン2における発熱部21及びリード部22の構成を変更したセラミックヒータ1の例である。
本例では、同図に示すごとく、ヒータパターン形状における発熱部21の発熱接合端部211及びリード部22のリード接合端部221は、その端縁212、222からヒータパターン2の長手方向(長手方向X)に突出してなる凸部213、223を有する。凸部213、223は、発熱接合端部211及びリード接合端部221の幅方向(幅方向Y)の中央付近から長手方向Xに突出して形成されている。
【0067】
また、凸部213、223の長手方向(長手方向X)の長さをS(S1、S2)、接合部23から凸部213、223を除いた部分の長手方向(長手方向X)の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係を満たす。なお、この関係式において、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmである。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0068】
本例の場合には、セラミックヒータ1の製造時において、発熱部21及びリード部22の長手方向(長手方向X)の形成位置にずれが生じても、両者の接合面積を十分に確保することができる。これにより、接合部23における異常発熱や接合部23を起点とするクラックの発生を抑制することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0069】
1 セラミックヒータ
11 セラミック基板
2 ヒータパターン
21 発熱部
211 発熱接合端部
22 リード部
221 リード接合端部
23 接合部
24 凹部
3 ガスセンサ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱部と該発熱部に通電するための一対のリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
上記発熱部は、上記一対のリード部にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部を有し、
上記各リード部は、上記発熱部の上記発熱接合端部に接合されるリード接合端部を有し、
上記発熱部と上記リード部とは、上記発熱接合端部と上記リード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されており、
上記セラミック基板を上記ヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、上記接合部の幅方向の両側における上記発熱部の上記発熱接合端部の輪郭と上記リード部の上記リード接合端部の輪郭との交差部分に、上記ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁に弧状の曲線を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターンの長手方向における上記リード部の上記リード接合端部の先端から上記発熱部の上記発熱接合端部の先端までの接合領域の長さをLとし、該接合領域の抵抗をR1、上記発熱部の上記発熱接合端部の先端から上記リード部側へ距離Lまでのリード領域の抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係であることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁から上記ヒータパターンの長手方向に突出してなる凸部を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項4に記載のセラミックヒータにおいて、上記凸部の上記長手方向の長さをS、上記接合部から上記凸部を除いた部分の上記長手方向の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係であり、かつ、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmであることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記接合部は、上記発熱部の上記発熱接合端部上に上記リード部の上記リード接合端部を重ね合わせてなり、該リード接合端部の幅は、上記発熱接合端部の幅よりも小さいことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記発熱部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を11〜14重量部含有していることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記リード部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を7〜10重量部含有していることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターンは、導体ペーストを印刷することによって形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセラミックヒータを備えていることを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項1】
通電により発熱する発熱部と該発熱部に通電するための一対のリード部とを有するヒータパターンをセラミック基板上に形成してなるセラミックヒータであって、
上記発熱部は、上記一対のリード部にそれぞれ接合される一対の発熱接合端部を有し、
上記各リード部は、上記発熱部の上記発熱接合端部に接合されるリード接合端部を有し、
上記発熱部と上記リード部とは、上記発熱接合端部と上記リード接合端部とを重ね合わせてなる接合部において接合されており、
上記セラミック基板を上記ヒータパターンが形成されている面に対して鉛直方向から見た場合のヒータパターン形状において、上記接合部の幅方向の両側における上記発熱部の上記発熱接合端部の輪郭と上記リード部の上記リード接合端部の輪郭との交差部分に、上記ヒータパターンが内側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁に弧状の曲線を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターンの長手方向における上記リード部の上記リード接合端部の先端から上記発熱部の上記発熱接合端部の先端までの接合領域の長さをLとし、該接合領域の抵抗をR1、上記発熱部の上記発熱接合端部の先端から上記リード部側へ距離Lまでのリード領域の抵抗をR2とした場合、R1≦R2の関係であることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターン形状における上記発熱部の上記発熱接合端部及び上記リード部の上記リード接合端部の少なくとも一方は、その端縁から上記ヒータパターンの長手方向に突出してなる凸部を有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項4に記載のセラミックヒータにおいて、上記凸部の上記長手方向の長さをS、上記接合部から上記凸部を除いた部分の上記長手方向の長さをMとした場合、S=a×M+bの関係であり、かつ、a=0.3〜5、b=0〜0.2mmであることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記接合部は、上記発熱部の上記発熱接合端部上に上記リード部の上記リード接合端部を重ね合わせてなり、該リード接合端部の幅は、上記発熱接合端部の幅よりも小さいことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記発熱部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を11〜14重量部含有していることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記リード部は、白金、金、パラジウム、レニウム又はこれらの混合材料を主成分とし、かつ、該主成分の含有量を100重量部とした場合、アルミナ、ジルコニア、チタニア又はこれらの混合材料を7〜10重量部含有していることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラミックヒータにおいて、上記ヒータパターンは、導体ペーストを印刷することによって形成されていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のセラミックヒータを備えていることを特徴とするガスセンサ素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−51069(P2013−51069A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187367(P2011−187367)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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