説明

セラミック構成要素を低変形拡散溶接するための方法

【課題】非酸化物焼結セラミックから作製された構成要素を互いに接合させて、継ぎ目なしのモノリスを形成させる接合方法を提供する。
【解決手段】 セラミック構成要素を接合するための方法であって、接合される前記構成要素が焼結された非酸化物セラミックからなり、前記構成要素を遮蔽ガス雰囲気存在下の拡散溶接プロセスにおいて互いに接触させ、少なくとも1600℃、好ましくは1800℃を超える、特に好ましくは2000℃を超える温度をかけ、適当であれば荷重をかけて、ほとんど変形が無い状態で接合させてモノリスを形成させ、前記接合される構成要素の、力が加えられた方向における塑性変形が、5%未満、好ましくは1%未満となるようにする接合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック構成要素を低変形拡散溶接するための方法、その方法により製造されるモノリス、およびそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック構成要素は一般に、摩耗、腐食および高い熱負荷が発生するプラントや機械工学分野で使用される。セラミックスの硬度、化学的安定性および高温安定性は、鋼のそれらの性質に比較すれば、はるかに優れている。さらに、工業用セラミックスの代表である炭化ケイ素は、極端に熱伝導率が高い(鋼の熱伝導率の4倍)という特別な利点を有している。このことから、この材料は、ノズル、バルブ、軸面シール(axial face seal)および滑り接触ベアリングにおいて使用されるだけではなく、反応器、たとえばチューブバンドル熱交換器やディーゼル微粒子フィルターの中でも使用されることが予定される。それらの用途の多くにおいては、設計上の理由からセラミック構成要素が極めて複雑な形状をとらねばならない。その設計が、利用可能なセラミック成形方法にマッチしないことも多く、そのため、個々の構成成分を接合させる必要が生じてくる。その結果、文献にはセラミックの接合に関する膨大な研究結果が開示されており、その多くはSiCセラミックの接合に関するものである。用いる方法に応じて、文献では「拡散溶接(diffusion welding)」、「反応焼結(reaction bonding)」または「ソルダリング(soldering)」という用語が用いられている。ソルダリングと反応焼結では、接合パートナーの間の界面に継ぎ目が残るが、それに対して拡散溶接では、接合パートナーが継ぎ目なしの構成要素に成形できるように適用することが可能である。このタイプの継ぎ目なしの構成要素は、「モノリス」と記述されることもある。
【0003】
焼結されたSiC構成要素を拡散溶接する課題についての基本原理は、はやくも1980年代にはトーマス・ムーア(Thomas Moore)によって開示されている。非特許文献1の中の論文「フィージビリティ・スタディ・オブ・ザ・ウェルディング・オブ・SiC(Feasibility study of the Welding of SiC)」の中で彼が述べている事柄は、拡散溶接を用いてα−SiCの研磨した平面プレートの間に安定で凝集性の接合が可能となるのは、加える温度と圧力が充分に高く、接合される構成要素が、圧縮力のかかる方向に約25%の塑性変形をすることが可能である場合のみに限る、ということである。この論文では、塑性変形なしで、焼結されたSiCの継ぎ目なし溶接接合をすることは不可能である、ということを結論としている。温度1950℃、圧力13.8MPa、(時間は2時間)で熱間圧縮させた後であっても、接合されてかなり変形したプレートの間には継ぎ目がある。温度を下げたとしても、継ぎ目なし接合に関しては結果が改良されるようにはないし、熱間静水圧プレスを用いることにより、拡散溶接の際の圧力を上げて138MPaとしても、報告にもあったように、満足のいく接合を作ることはできない。構成要素の間で観察される凝集接合が不完全であるのは、SiCの焼結活性が不充分であることが原因である。
【0004】
特許文献1(1990)には、凝集性の継ぎ目なしSiC接着を得るための方法として、熱間静水圧プレスを用いて少し予備焼結されたSiC構成要素を拡散溶接することが記載されている。そこでは、SiCのβ−変態と、多孔性が85%にも上る構成要素のより高い焼結活性とに特に重点が置かれている。1700℃を超える温度と150MPaを超える圧力が好ましい。多孔質な構成要素の高密度化が接合の間にも起きているために、それによって、高度な塑性変形が生じる。
【0005】
全体の塑性変形のレベルを依然として低く保ちながら、それにもかかわらず高品質の接合を達成するためには、この文献に開示されている加工物のバルクを、かなり低い温度での「ソルダリング」および「反応焼結」接合方法に的をしぼることになる。今日の最新技術は、セラミック構成要素を、室温で接着剤を用いて接合させるか、約1000℃前後の温度領域で金属またはガラスのソルダーを用いて接合するか、または約1400℃での反応焼結によってそれらを組み立てて構成要素とするかである。この文脈においては、過去においてさらに複雑な構成要素、たとえばプレート型熱交換器を製造するために使用されてきた方法である、特にケイ素浸透SiC(Si−SiC)の反応焼結について言及すべきである。
【特許文献1】米国特許第4,925,608号明細書
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ(J.Am.Ceram.Soc.)第68巻、第6号、C151〜C153(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、接合の継ぎ目は依然として構成要素の弱点である。この部分での破損に伴うケイ素の分解、軟化、放出は、熱的、腐食的または摩耗的に高い負荷がかかる場合、初期の段階でも起きる。今日においてさえ、焼結されたSiC(SSiC)を継ぎ目なしで、変形がほとんど無いように接合させるのは不可能であると考えられている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、非酸化物焼結セラミックから作製された構成要素を互いに接合させて、継ぎ目なしのモノリスを形成させ、そして接合の間の塑性変形を低いレベルに保って、モノリスの輪郭線がすでに目的とする構成要素の輪郭に相当しているようにすることを可能とする方法を提供することである。したがって、それに続けて難しい加工をする必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、その目的は以下の事実に基づいて達成される、すなわち、遮蔽ガス雰囲気存在下の拡散溶接方法において、接合させる構成要素を互いに接触させ、少なくとも1600℃の温度と、適当であれば荷重をかけて、ほとんど変形なく接合させてモノリスを形成させるが、ここで接合させる構成要素の、力のかかる方向への塑性変形を、5%未満、好ましくは1%未満とする。
【0009】
拡散溶接は、好ましくは熱間圧縮方法である。
【0010】
材料科学の分野においては、高温域における塑性変形に対する抵抗性は、高温クリープ抵抗と呼ばれている。クリープ速度として知られているものが、クリープ抵抗の尺度として使用される。驚くべきことには、焼結されたセラミック構成要素を継ぎ目なし接合するための、接合プロセスにおける塑性変形を最小限とするための中心パラメーターとして、接合させる材料のクリープ速度を使用することが可能であることが見出された。
【0011】
市場で入手できる焼結されたSiC材料(SSiC)のほとんどは、モノモーダルな粒径分布と約5μmの粒径とを有する類似のミクロ構造を有している。したがって、それらは、1700℃を超える上述の接合温度において、充分に高い焼結活性を有している。しかしながら、それらは、低変形接合をするには低すぎる、類似のクリープ抵抗も有している。その結果、これまでは、好結果な拡散溶接方法においても、常に高い程度の塑性変形が観察されていた。SSiC材料のクリープ抵抗は一般に顕著に違うものではないので、そのクリープ速度は、これまで、SSiCの接合に使用することが可能な変動パラメーターだとは考えられてはいなかった。
【0012】
SSiCのクリープ速度は、ミクロ構造形成を変化させることによって、広い範囲にわたって変えることができるということが、今や見出されたのである。SSiC材料の低変形接合は、ある種のタイプのものを使用することによってのみ達成することが可能である。
【0013】
セラミック材料のクリープ抵抗は、一般に、2つの方策によってかなり高くすることができる。
・ミクロ構造の粗大化:ミクロ構造を粗大化させると、クリーププロセスにおいて起きる物質移動のための拡散経路がかなり長くなり、その結果クリープ速度が極端に遅くなる。文献によれば、粒径とは3の羃乗の逆数関係があるとされている。この関係については、酸化アルミニウムや窒化ケイ素のような材料に関して、精力的に報告が行われてきた。
・ナノ粒子:ナノテクノロジーを使用することにより、セラミックの結晶粒界において使用した場合に、高温および場合によっては荷重のある状態におけるセラミックのクリープ速度をかなり低くするセラミックナノ粒子を得ることができる。一例を挙げれば、酸化物セラミックの代表例として、酸化アルミニウムのクリープ速度(単位1/s、これは変形速度と呼ばれることもある)は、粒子を用いたドーピングをすることによって、2桁下げることが可能である。同様な効果は窒化ケイ素材料の場合にも認められ、非酸化物セラミックスにも適用可能であろうと考えられる。
【0014】
いずれの方策とも同様に、焼結活性のあるクリープ抵抗性材料を製造し、それらから製造される構成要素が低変形接合されることを可能とするのに、適している。
【0015】
接合される構成要素の内の少なくとも1つが、その接合プロセスにおけるクリープ速度が、常に2×10−41/sより低い、好ましくは常に8×10−51/sより低い、特に好ましくは常に2×10−51/sより低いような材料からなるのが好ましい。
【0016】
セラミック材料は、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、およびそれらの混合物からなる群より選択するのが好ましい。
【0017】
接合される構成要素の少なくとも1つが、バイモーダルな粒径分布を有し平均粒径が5μmよりも大きい、焼結された炭化ケイ素(SSiC)であるのが好ましく、この場合、その材料には、最高35容積%まで、好ましくは15%未満、特に好ましくは5%未満のさらなる材料構成要素、たとえばグラファイト、炭化ホウ素またはその他のセラミック粒子、好ましくはナノ粒子が含まれていてもよい。
【0018】
本発明による方法に特に適した、バイモーダルな粒径分布を有する焼結されたSiCは、5μmより大きく、好ましくは20μmより大きく、特に好ましくは50μmより大きい平均粒径を有するSSiCである。したがって、この材料の平均粒径は、通常の焼結された、ほんの約5μmの平均粒径を有する微粒(fine−grained)のSiCの場合に比較すると、10倍〜100倍も大きい。この理由から、粗粒(coarse−grained)の焼結された炭化ケイ素(SSiC)として知られているものは、微粒のSSiCよりもかなり高いクリープ抵抗を有する。このタイプの新しいSiC材料のクリープ速度に関して、詳しく述べた文献は見あたらない。図1は、各種の温度において粗粒のSSiC(平均粒径約200μm)のクリープ速度が低いことを示すもので、同一の荷重条件下で、微粒のSSiC変種(平均粒径5μm)と比較したものであり、そのような微粒SSiCとしては、たとえば、イーエスケイ セラミクス ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー(ESK Ceramics GmbH & Co.KG)からエカシック(EKasic、登録商標)の名称で販売されているものが挙げられる。
【0019】
本発明による方法は、1600℃を超える、特に1800℃を超える、特に好ましくは2000℃を超える温度で実施するのが好ましい。この方法は、10kPaを超える、好ましくは1MPaを超える、特に好ましくは10MPaを超える圧力で実施するのが好ましい。その温度保持時間は、好ましくは少なくとも10分、特に好ましくは少なくとも30分である。
【0020】
本発明による方法を用いて、複雑な形状のセラミック構成要素を製造し、極度に高い耐熱安定性、耐腐食性または耐摩耗性を有する、プラントおよび機械工学のための、ほぼ正味の形状の構成要素を形成することが可能である。これまでシールやソルダーの継ぎ目が弱点となっていた反応器を、継ぎ目なしのモノリスとして製造することが今や可能となったのである。
【0021】
したがって、この方法を使用することによって、たとえば、極度に高い耐熱安定性と耐腐食性を有する焼結されたSiCセラミックから、プレート型熱交換器を製造することが可能となる。プレート型熱交換器はすでに、Si浸透SiCセラミック(Si−SiC)から反応焼結法を用いて製造されている。しかしながら、耐腐食性が万能ではないので、使用可能な用途がかなり限定される。
【0022】
同様にして、フィルターや、特にセラミックミクロ反応器を、焼結されたSiCセラミックからのモノリスとして製造することも今や可能となった。特に、交差流用に設計されたチャンネルを有するミクロ反応器もまた、SSiCモノリスとして成形することが可能となった。
【0023】
さらなる用途としては、たとえば炉や反応器のための、導電性SSiCセラミックから製造した加熱要素なども挙げられる。
【0024】
核融合炉のための、ライニング、衝撃保護手段または第1壁構成要素などの用途も考えられる。炉筒ロール、炉保持手段、およびバーナーの構成要素などの、高温技術のための複雑な形状の、その他の高クリープ抵抗性の構成要素もまた形成することができる。多かれ少なかれ複雑さを有する構造構成要素、たとえば変形のためのツール(deformation tool)、プレート、チューブ、フランジ、気密容器などを、この方法で、絶縁性または導電性の非酸化物セラミックから接合させることができる。
【0025】
本発明の方法が、対応の構成要素に継ぎ目なしの接合を与えることを始めて可能としたので、本発明は、少なくとも1つの継ぎ目なしの接合を有する非酸化物セラミックから製造される構成要素にも関する。
【0026】
その構成要素は、継ぎ目なしの接合の部分で4点法により測定して、好ましくは150MPaを超える、特に好ましくは250MPaを超える曲げ破壊強度を有している。
【0027】
本発明による構成要素の曲げ破壊強度は、継ぎ目なしの接合領域においても、構成要素の基本材料と同程度に高いのが特に好ましい。
【0028】
その構成要素は好ましくは構造的な構成要素または機能的な構成要素であって、好ましくは、容器、チューブ、反応器、ライニング、バルブ、熱交換器、加熱要素、めっき(plating)、摩擦構成要素、たとえば滑り接触ベアリングまたは軸面シール、ブレーキ、クラッチ、ノズルまたは変形のためのツールなどである。
【0029】
本発明はさらに、本発明による方法を用いて構造的な構成要素および機能的な構成要素として製造された構成要素、たとえば、容器、反応器、ライニング、バルブ、熱交換器、変形のためのツール、ノズル、めっきなどの使用にも関する。
【0030】
前記構成要素が、特に粗粒のSSiC−セラミック(平均粒径は50μmを超える)からなる場合には、特に有利である。低変形接合がより容易になるだけではなく、結果として構成要素の耐腐食性もかなり改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下において、実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0032】
<実施例1:粗粒のSSiC構成要素の拡散溶接>
【0033】
焼結された粗粒のSiC(平均粒径約200μm)から製造した、大きさ50mm×35mm×5mmの研磨した板を、ホットプレス中で積み重ねて、スタックを形成させる。窒素雰囲気、温度2150℃、荷重11.4MPaそして保持時間45分の接合サイクルにすると、力が加えられた方向における塑性変形は1%未満となる。接合された構成要素は、継ぎ目なしのモノリスとなる。このSSiC材料のクリープ速度は、2150℃で、2×10−51/s未満である。
【0034】
この接合サイクルを使用することによって、たとえば、図2に示すようなミクロ反応器をモノリスとして製造することができる。チャンネル方向に対して45度での研磨試験片では、このモノリスは均質な粗粒のSSiCからなり、そのチャンネルには何の変形もなく、また継ぎ目も無いことがわかる。
【0035】
<実施例2:異なったタイプのSSiCから製造した構成要素の拡散溶接>
【0036】
各種の焼結SiCグレードから作った大きさ50×35×5mmの研磨した板を、ホットプレス中で積み重ねて、スタックを形成させる。いずれの場合においても、粗粒(平均粒径約200μm)および微粒SSiC材料(平均粒径約5μm)からなる2枚のプレート、ならびに、最初は中程度の粒径(約50μm)のSSiC複合材料からなる2枚のプレートは、接合されたモノリスに使用される。そのスタックに、窒素雰囲気下、温度2,150℃で、45分間、11.4MPaの荷重をかけた。
【0037】
図3に、6枚の構成要素から接合させたモノリスの研磨試験片を示す。この構成要素では、微粒のSiC材料が元々存在していた部分(図の左側の2枚のプレート)だけに、力をかけた方向と平行に約15%の塑性変形がある。粗粒のSiC材料(図の右側の2枚のプレート)および中程度の粒径を有するSSiC材料(中央の2枚のプレート)は、接合の際に寸法的には安定したままである(変形1%未満)。この例から、選択した各種のグレードのSiCから製造した構成要素でも、相互の間に継ぎ目なしに接合することができ、ほとんど変形なしにモノリスを形成することが可能である、ということがわかる。
【0038】
図示した研磨試験片では、顕微鏡で見ても、どの接合部分にも境界は認められない。研磨試験片をエッチングさせて、結晶粒界を露出させても、継ぎ目は認められない。代わりに、図4にも見られるように、粗粒のSSiC構成要素の上では、2枚のプレートの結晶粒が互いの中に成長して、それにより、構成要素の界面がとけ込んでしまっている。対になった同一の材料の間で形成される接合面、および異種のタイプのSiC構成要素の間で形成される接合面でも、同じ現象が起きている。良好な接合の結果として、極めて高い機械的強度が得られる。この構成要素から製造された曲げ試験片の強度は、4点曲げ試験で290MPaを超える。
【0039】
さらに、図3から、極めて高温におけるこの接合サイクルの間に、3種すべてのSSiC材料のミクロ構造がより粗くなっていることがわかる。
【0040】
<実施例3:異なったタイプのSSiCから製造した構成要素の拡散溶接>
【0041】
本発明に従って、各種の焼結SiCグレードから作った大きさ50mm×35mm×5mmの研磨した板を、ホットプレスで積み重ねて、スタックを形成させた。いずれの場合においても、粗粒(平均粒径約200μm)および微粒SSiC材料(平均粒径約5μm)からなる2枚のプレート、ならびに、最初は中程度の粒径約50μmを有するSSiC複合材料からなる2枚のプレートは、接合されたモノリスに使用される。実施例2に比較して、より低い温度の1800℃で、窒素雰囲気下、この場合も荷重は11.4MPaで45分間、このスタックを処理する。
【0042】
この温度における微粒のSSiCのクリープ速度は、充分に低く、すべてのSSiC構成要素が互いに低変形接合される。微粒のSSiCも含めてすべてのSSiCグレードで、力が加えられた方向における塑性変形が1%未満となる。すべてのSSiC材料のクリープ速度は、1800℃において、2×10−51/s未満である。
【0043】
温度が低いにもかかわらず、顕微鏡で調べても、図5に示した研磨試験片では、接合の継ぎ目はまったく見あたらない。ミクロ構造の粗大化もない。結晶粒が共に成長することもない。代わりに、その接合サイクルが、構成要素の界面を結晶粒界の中に転化させ、それが多結晶モノリスの一部となっている。エッチング処理をして界面を露出させると、隣接する結晶粒界の面が認められる。したがって、この構成要素はモノリスを形成している。接合強度は200MPaを超える。
【0044】
<実施例4:微粒のSiC構成要素の、その場での粗大化と拡散溶接>
【0045】
微粒の焼結されたSiC(平均粒径約5μm)から製造した、大きさ50mm×35mm×5mmの研磨した板を、ホットプレス中で積み重ねて、スタックを形成させる。温度2150℃、窒素雰囲気の接合サイクルを実施し、その材料を、平均粒径50μmを有する粗粒のSSiCの中に30分間同時コンディショニングさせることにより転化させ、さらにその後で最大荷重11.4MPaをかけ、45分間保持すると、力が加えられた方向における塑性変形が1%未満となる。同時粗大化を行ったこのSSiC材料のクリープ速度は、2150℃において2×10−51/s未満である。
【0046】
<実施例5:炭化ホウ素の結晶粒界粒子との拡散溶接>
【0047】
粒子強化炭化ホウ素から製造した研磨プレート(50mm×50mm×6mm)をホットプレス中で積み重ねて、スタックを形成させる。2150℃で、窒素雰囲気下、荷重8MPa、保持時間45分の接合サイクルを実施すると、力が加えられた方向における塑性変形が5%となる。この材料の2150℃におけるクリープ速度は、8×10−51/s未満である。
【0048】
得られる構成要素は継ぎ目なしのモノリスである。図6に、その構成要素の研磨試験片を示す。顕微鏡で調べても、接合部分には継ぎ目はまったく認められない。互いに面している構成要素の結晶粒が共に成長するということもない。代わりに、その接合サイクルが、構成要素の界面を結晶粒界の中に転化させ、それが多結晶モノリスの一部を形成している。隣接する結晶粒界の面は、エッチング処理をして界面を露出させることによって見ることができる(図7)。
【0049】
<比較例6:微粒のSSiC構成要素の拡散溶接>
【0050】
焼結されたSiC(平均粒径約5μm)から製造された大きさ50mm×35mm×5mmの研磨プレートをホットプレス中で積み重ねて、スタックを形成させる。温度2150℃、窒素雰囲気下、荷重11.4MPaで保持時間10分間の接合サイクルを使用すると、力が加えられた方向における塑性変形が約12%である、強く塑性変形された構成要素が得られる。このSiC材料のクリープ速度は、2150℃で、約2×10−41/sである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】SiC材料の温度に対するクリープ速度の関係を示すグラフ。
【図2】粗粒のSSiCから製造された、交差流においてガスを誘導するために設計された、シールおよび継ぎ目の無いモノリシックミクロ反応器(45度切断)を示す図。
【図3】2150℃において、6枚のSSiC構成要素から継ぎ目なしに接合されたモノリス。3種類の焼結されたSiC材料を使用。寸法は最初の平均粒径を示す図。
【図4】SSiC構成要素の継ぎ目なし接合を示す拡大図。
【図5】1800℃において、6枚のSSiC構成要素から継ぎ目なしに接合された構成要素。3種類の焼結されたSiC材料を使用。寸法は最初の平均粒径を示す図。
【図6】2種の構成要素から拡散溶接された、BC部分における接合の研磨試験片の拡大図。
【図7】2種の構成要素から拡散溶接された、BC部分における接合のエッチングした研磨試験片の拡大図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックの構成要素を接合するための方法であって、
接合される前記構成要素が焼結された非酸化物セラミックのみからなり、前記構成要素を、遮蔽ガス雰囲気存在下の拡散溶接の工程において互いに接触させ、少なくとも1600℃、好ましくは1800℃を超える、特に好ましくは2000℃を超える温度の下、ほとんど変形がない状態で接合させて、適当であれば荷重をかけて、モノリスを形成させ、前記接合される構成要素に力が加えられた方向における前記接合される構成要素の塑性変形が、5%未満、好ましくは1%未満となるようにする、接合方法。
【請求項2】
使用される前記拡散溶接が熱間圧縮法である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
接合される前記構成要素の少なくとも1種が、接合プロセスの間に、常に2×10−41/sより低い、好ましくは常に8×10−51/sより低い、特に好ましくは常に2×10−51/sより低いクリープ速度を有する非酸化物セラミックのみからなる、請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
接合される前記構成要素の少なくとも1種が、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素またはそれらの混合物、特に好ましくは炭化ケイ素のみからなる、請求項1から3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
接合される前記構成要素の少なくとも1種が、バイモーダルな粒径分布を有し、平均粒径が5μmよりも大きく、好ましくは20μmより大きく、特に好ましくは50μmより大きい粗粒の焼結された炭化ケイ素のみからなり、35容積%までの他の材料の構成要素、たとえばグラファイト、炭化ホウ素または他のセラミック粒子を含んでいてもよい、請求項4に記載の結合方法。
【請求項6】
1600℃を超える、好ましくは1800℃を超える、特に好ましくは2000℃を超える温度、及び、10kPaを超える、好ましくは1MPaを超える、特に好ましくは10MPaを超える荷重で実施し、その温度保持時間は、好ましくは10分、特に好ましくは30分を超える、請求項1から5のいずれかに記載の結合方法。
【請求項7】
継ぎ目なしの接合を有する非酸化物セラミックから製造される、構成要素。
【請求項8】
前記継ぎ目なしの接合は、この領域で、4点法により測定して、150MPaより大きく、特に好ましくは250MPaより大きい曲げ破壊強度を有する、請求項7に記載の構成要素。
【請求項9】
前記継ぎ目なしの接合の前記領域における前記曲げ破壊強度は、前記構成要素の基本材料と同程度に高い、請求項7または8に記載の構成要素。
【請求項10】
容器、チューブ、反応器、ロール、ホルダー、ライニング、バルブ、熱交換器、加熱要素、めっき、摩擦構成要素、例えば、滑り接触ベアリングまたは軸面シール、ブレーキ、クラッチ、ノズル、または変形のためのツールである、請求項7、8または9に記載の構成要素。
【請求項11】
構造的な構成要素または機能的な構成要素として、滑り接触ベアリングまたは軸面シール、ブレーキ、クラッチ、ノズルまたは変形のためのツールのような容器、チューブ、反応器、ライニング、バルブ、熱交換器、加熱要素、めっき、摩擦構成要素を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法により製造される構成要素の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−83057(P2006−83057A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265478(P2005−265478)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(505036009)イーエスケイ セラミクス ゲーエムベーハー アンド カンパニー カーゲー (6)
【Fターム(参考)】