説明

セラミック積層部品

【課題】 従来、目視での認識は不可能であった切断位置不良や面取り加工量の不足不良や過剰不良を、切断工程後または面取り加工後に容易に目視識別できるセラミック積層部品を提供することを目的とする。
【解決手段】 2主面と4側面を有し、面取り加工されたセラミック積層部品であって、少なくとも1主面の4角に、焼成前にマークを備え、前記マークは焼成体の面取り加工後も一部が残存していることを特徴とするセラミック積層部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やワイヤレスLANで使用されているセラミック積層部品に関し、特に未焼成部品の切断位置の認識マーク、及び部品表面の角に設けた面取り研磨量認識マークに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック積層部品は、以下の主要工程を経て作製される。(1)目的とする内部配線構造になるように、セラミックグリーンシートにビアホール形成後、内部配線及びビア配線を導体ペーストのスクリーン印刷により形成し、必要に応じて、最上面に搭載するチップ部品接続用の電極用パターンを、更に、最上面には部品の方向性や、前記搭載部品の位置合わせのためセラミックスと色調が異なっていて、画像処理において容易に識別可能なマークを印刷し、これらの複数枚のセラミックグリーンシートを積層方向の位置合わせを行って積層し、熱圧着により一体化させ、マザー圧着体を得る。ここで、マザー圧着体の最表面周辺部には、個片に切断する際、切断位置を検出するため、切断刃の両端に対応した1対の切断刃位置マークが印刷されている。(2)マザー圧着体を切断機によって、個片へ切断される。切断時は、1対の切断刃位置マークの位置を画像処理により検出し、切断刃が1対のマークに基づいて最適の位置に切断刃が降ろされる。(3)切断後、マザー圧着体から個片にばらした後、焼成する。(4)焼成後、稜部及び角部の面取りをするためバレル研磨を行う。(5)最後に部品表面に必要な端子電極を形成する。
【0003】
特許文献1には、積層セラミックコンデンサに適用した例であるが、前述のマザー圧着体を切断する際、各行列に対応した切断刃位置マークを画像処理して切断位置を設定する方法が記載されている。
図6に特許文献1に示されている従来技術のマザー圧着体の周辺部に設けられた切断刃位置マークの例を示す。
特許文献2には、バレル研磨において、バレル研磨によって研削される領域を規制する規制パターンを設けて、研磨量を安定化する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−78282号公報
【特許文献2】特開2003−309343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記背景技術で述べたように、焼成前にマザー圧着体から個片に切断されるが、切断刃の不具合や、切断刃位置マーク周辺の汚れ、更には前記マークを印刷する際、かすれたり、にじんだりする印刷不良などにより、切断位置の誤認識が発生し、本来切断すべき位置からずれて切断される場合がある。しかし、図6に示す従来技術の例のように、隣接する個片の境界には、切断すべき位置が明示されていないので、位置ずれが小さい場合、目視での認識は困難であった。更に、発生頻度が比較的小さいため、抜き取り検査によって検出は実質不可能であった。従って、切断位置の不良品、つまり外形寸法不良品は、後工程で自動検査など正確に形状が認識できる工程まで認識されることは無かった。
即ち、本来切断工程直後に不良品として排除されるべきものが後工程に流れることで、無駄な費用が発生し、また、不良数が多い場合、再度必要数量の作製が必要となり、納期遅延の問題があった。
【0006】
また、バレル研磨では通常バッチ処理で行われるが、チップ部品と砥石として作用するメディアをポットに入れ、更に水を入れて、密閉したものを自公転させて、遠心力によりメディアがチップ部品に接触し、チップ部品の稜部および角部がほぼ選択的に面取りされる。比較的少量のバッチ処理で行われた後、再度複数バッチが合わされて、大きいロットとなって後工程に進むのが一般的である。この面取り工程においても、あるバッチでメディアの不具合や装置の不具合により本来の面取りが不足または過剰の場合、通常面取りの量が最大0.1mm程度と小さいため、目視での研磨不足の認識は非常に困難であった。複数バッチを合わせたロットにおいて、面取り不十分または過剰な部品が後工程で見つかった場合、不具合品と良品を分別する工程が必要となり、コスト面、納期面で問題が発生していた。
【0007】
そこで、発明者は、前記問題点を鑑み、切断位置不良を、切断工程後に容易に目視により識別できるセラミック積層部品を提供することを目的とする。また、バレル研磨量不良を、バレル研磨工程後、容易に目視認識可能なセラミック積層部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電子部品の主面の最表面には、部品の表裏や方向を識別するためのドットマークや、電子部品表面に他の電子部品を搭載させる際、位置決め用マークが設けられている。これらのマークによって画像処理がなされ、部品の整列や、他の電子部品を搭載させる際の位置決めがされている。
発明者は、マザー圧着体から個片への切断位置不良を感度良く検出するため、従来主に画像処理用に使用されていたマークに注目し、目視検査においても有効活用できないかを検討した。その結果、適当なマークを部品表面に備えることにより、切断位置不良を切断直後に目視で容易に検出できる方法を見出したものである。また、前記マークは、切断工程での不良品検知のみならず、マークの形状を最適化することで、後工程である面取り工程後の面取り量の不足や過剰の不良品検知でも非常に有効であることを見出したものである。
【0009】
つまり、本発明は、2主面と4側面を有し、面取り加工されたセラミック積層部品であって、少なくとも1主面の4角に、焼成前にマークを備え、前記マークは焼成体の面取り加工後も一部が残存していることを特徴とするセラミック積層部品である。
また、マークの形状は90度回転対称であり、対角線が切断ラインと重なるようにするのが好ましい。
更に、マークの形状は正4角形であり、対角線が切断ラインと重なるようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、積層体の最上層の印刷パターンに新規なパターンを追加するのみで、新たな工数を発生すること無く、切断工程後の形状品質確認が容易に可能となり、後工程への不良品流出防止が可能なセラミック積層部品を提供することができる。また、面取り加工後の形状品質確認も容易に確認可能となり、後工程への不良品流出防止が可能なセラミック積層部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者は、マークの位置、形状や色調について検討を行った。
位置に関して、マザー圧着体の行と列に対応した個片に対して、最初に各行または各列を端から順次切断した後、刃とマザー圧着体の相対角度を90度回転させて、同様に端から順次切断される。従って、マークの位置は、各行と各列が交差する位置を中心にするのが好ましい。
形状は、前述のように行と列で90度に、即ち直角に切断するため、90度の回転対称とするのが好ましい。
色調は、目視で明瞭に認識できるのが好ましい。具体的には、後述する実施例1に記載のように、積層部品を構成するセラミックス自体の色調が可視領域の吸収がほとんど無い場合は白色であるため、セラミックグリーンシートも白色に近い色調となる。従って、マーク用の印刷ペーストは、前記セラミックスを主成分として、ほぼ黒色を呈する、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロムなどの複合酸化物を混合して作製するのが好ましい。複合酸化物の粒径や混合量によって、セラミックグリーンシートとのコントラストを調整できる。複合酸化物の混合量が多くなるとコントラストが大きくなり好ましいが、混合量30重量%を超えると、焼成後の部品のセラミックスと焼成後のマーク用印刷ペースト材料との界面の接着力が低下して好ましく無い。従って、より好ましくは混合量10重量%以上25重量%以下である。ここで混合量とは、主成分のセラミックスと合計して100重量%となる量としている。
酸化物が複合であることで、セラミックスとの反応が少なく、呈する黒色が、焼成条件や混合量に関わらず安定して得ることができる。
面取り加工方法としては、湿式バレル研磨の他に、乾式の振動ミルやブラスト処理によっても可能である。
本発明は、2主面と4側面を有し、バレル研磨などで面取り加工されたセラミック積層部品であって、少なくとも1主面の4角に、焼成前にマークを備え、前記マークは焼成体の面取り加工後も一部が残存していて、目視確認可能であるセラミック積層部品である。
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に述べる。
(実施例1)
セラミック材料として、酸化物重量換算で表1に示す組成を使用した。
先ず、仮焼後の組成が表1の組成になるようにAl、SiO、TiO、Bi、CuO、Mn、SrCO、NaCO、KCOの原料粉を秤量し、純水と一緒に、ボールミルで混合し、混合スラリーを得た。前記スラリーにPVAをスラリー重量に対して1重量%添加した後、スプレードライヤーにて乾燥し、平均粒径が約0.1mmの顆粒状の乾燥粉を得た。前記顆粒粉を、連続炉にて最高温度800℃にて仮焼し、目的とする組成の仮焼粉を得た。
次に、仮焼粉を、エタノール中に分散させてボールミルで平均粒径1.2μmまで粉砕し、更に、シート成形用のバインダーであるPVB(ポリビニルブチラール)を仮焼粉重量に対して12wt%、および可塑剤であるDOP(ジオクチルフタレート)7.5wt%を添加し、同一のボールミルにて、溶解・分散を行い、シート成形用のスラリーを得た。前期スラリーを減圧下で、脱泡および一部の溶剤の蒸発を行い、約10000mPa・sの粘度になるように調整した。粘度調整後、ドクターブレードにて、成形幅250mm幅でシート成形を行い、乾燥後約100μmの厚さのセラミックグリーンシートを得た。後工程のハンドリングのため、約200mmの正方形に裁断した。
【0013】
目的とする内部配線構造になるように、セラミックグリーンシートにレーザーによりビアホール形成後、内部配線をAgペーストをスクリーン印刷により形成し、必要に応じて、最上面に搭載するチップ部品接続用の電極用パターンも同時に印刷、形成した。
次に、最上面となるグリーンシートには、部品の方向性確認用や、前記搭載部品の位置合わせ用、そして切断刃位置マーク用、更には切断位置確認用マーク用に、図2に示す形状が印刷されるように、スクリーンマスクを使用して、専用ペーストを用いて、マークを印刷した。専用ペーストは、セラミック材料80重量%に、酸化鉄と酸化マンガンが1:1の重量で反応した複合酸化物20重量%の粉末を混合し、前記合計100重量%に対して、以下添加量として、バインダーとして、エチルセルロースを10重量%、溶剤としてBCA(ブチルカルビトールアセテート)を60重量%添加し、混合した後、3本ロールで約10分混錬して作製した。
尚、実施例では切断刃位置マーク及び切断位置確認用マーク以外の個片の方向性等を確認できる他のマークや、部品表面に形成された電極について、本願発明を特定するものではないため省略している。
各層のグリーンシートの周辺部には、位置合わせ用に用いるパターンが形成させていて、このパターンをカメラで読み取り、画像処理し、位置合わせを行いながら順次積層し、全て層のグリーンシート積層後、温度85℃、圧力15MPaの条件で、10分保持することで熱圧着し、一体化させて、マザー圧着体を得た。
【0014】
得られたマザー圧着体の印刷されていない主面を粘着シートに接着させ、画像処理装置付の切断機で、切断刃位置マークを認識しながら各行を順次切断し、90°回転させて、同様に各列を順次切断し、焼成(収縮)後の個片サイズとして、3.2mm×2.5mmになるように個片サイズに切断した。前記粘着シートは、切断時は個片と剥離しないが、切断後、粘着シートを個片の接着面に対して鋭角に折り曲げることにより剥離可能な粘着層を有するものである。
切断後の個片を確認すると、最上面の4角にマークを容易に目視確認できた。
切断した個片を、焼成セッター上にセットし、最高温度900℃、保持時間1.5時間の条件で焼成した。
焼成体を縦型遠心バレル研磨機でバレル研磨を行った。株式会社チップトン製の型式HS−1−4Vを用いて、1Lの樹脂製ポットにセラミック製の直径3ミリのメディア(型式HS−3:株式会社チップトン製)を1500g、個片を100g、水を1L入れて密閉し、200rpmで20分加工した。加工後、篩で個片を分別し、角の研磨量を投影機にて評価したところ、角のRは48〜53μmであった。
尚、個片100gは3.2mm×2.5mmの個片、約6000個に相当する量である。
主面の4角に形成したマークが角側から一様に研磨され、残存したマーク形状により容易に研磨量が一様であることを確認できた。斜視図を図3に示している。
最後に、無電解めっきにより、個片表面に形成されている焼成後のAg表面にNiとAu層を形成し、端子電極とした。
【0015】
(実施例2)
以下、切断位置確認用マークの形状のみ実施例1と異なる条件で作製した。
スクリーン印刷のマスクに、切断位置確認用マークとして、図4に示すマークが印刷されたマザー圧着体を作製し、個片に切断した。
切断後の位置を目視で容易に確認できた。更に、バレル研磨後の研磨量についても容易に目視確認できた。
【0016】
(実施例3)
以下、切断位置確認用マークの形状のみ実施例1と異なる条件で作製した。
スクリーン印刷のマスクに、切断位置確認用マークとして、図5に示すマークが印刷されたマザー圧着体を作製し、個片に切断した。
切断後の位置を目視で容易に確認できた。更に、バレル研磨後の研磨量についても容易に目視確認できた。
【0017】
(実施例4、比較例)
実施例4として、実施例1において、6個のマザー圧着体を作製した。1個のマザー圧着体には焼成後の個片サイズとして、3.2mm×2.5mmとなる個片が2,000個分含まれている。よって、合計で、12,000個の個片を作製し、切断後の目視検査の時間を測定した。比較例として、切断位置確認用のマークが形成されていないスクリーンマスクを用いて同様の個数の個片を作成し、この場合は目視で容易に切断位置の良否を判断できないので、めっき後の外観検査により切断位置の良否を判断し、検査時間を比較した。実施例4では、1分(約1ミリ秒/個)に対して、比較例では、8.0時間(2.4秒/個)と2,000倍を超える検査能力があることが分かった。
【0018】
(実施例5)
以下、バレル研磨条件のみ実施例1と異なる条件で作製した。
実施例5としてバレル研磨加工時間を10分とした個片を作製し、角の研磨量を評価したところ、Rは23〜26μmであった。また、残存したマーク形状により容易に研磨量が一様であることを確認できた。
実施例1で作製した個片1,000個に対して、実施例5で作製した個片200個を故意に混合した後、目視検査を行ったところ、残存したマーク形状により両者の差は明らかであり、分別可能であることを確認できた。
【0019】
(実施例6)
以下、バレル研磨条件のみ実施例1と異なる条件で作製した。
実施例6としてバレル研磨の水量を350gとして個片を作製し、角の研磨量を評価したところ、Rは75〜80μmであった。また、残存したマーク形状により容易に研磨量が一様であることを確認できた。
実施例1で作製した個片1,000個に対して、実施例6で作製した個片200個を故意に混合した後、目視検査を行ったところ、残存したマーク形状により両者の差は明らかであり、分別可能であることを確認できた。
【0020】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のマザー圧着体の斜視図
【図2】本発明の切断位置認識マークの一例
【図3】本発明のバレル研磨後の個片の斜視図
【図4】本発明の切断位置認識マークの別の一例
【図5】本発明の切断位置認識マークの更に別の一例
【図6】従来技術のマザー圧着体の斜視図
【符号の説明】
【0022】
1 切断刃位置マーク
2 マザー圧着体
3 切断位置確認用マーク
4 バレル研磨後の切断位置確認用マーク
5 焼成後の個片



【特許請求の範囲】
【請求項1】
2主面と4側面を有し、面取り加工されたセラミック積層部品であって、少なくとも1主面の4角に、焼成前にマークを備え、前記マークは焼成体の面取り加工後も一部が残存していることを特徴とするセラミック積層部品。
【請求項2】
前記マークの形状は90度回転対称であり、対角線が切断ラインと重なることを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層部品。
【請求項3】
前記マークの形状は正4角形であり、対角線が切断ラインと重なることを特徴とする請求項2に記載のセラミック積層部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−80601(P2010−80601A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245746(P2008−245746)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】