説明

セラミック部品の製造方法

【課題】素子に応じたキャビティを形成し、小型化を図ることができるセラミック部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のレーザ加工工程では、焼結後にセラミック基体部となるべき未焼結セラミック成形体41〜43と、焼結後に導体部となるべき未焼結導体49とを接触させて配置した状態で、レーザL1の照射により未焼結セラミック成形体41,42の一部を除去する。これにより、素子を搭載可能な非貫通凹部であるキャビティ20を未焼結セラミック成形体41,42に形成する。レーザ加工工程の後に行われる焼成工程では、未焼結セラミック成形体41〜43及び未焼結導体49を同時に加熱して焼結させる。その結果、セラミック部品10を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基体部と導体部とを備え、セラミック基体部に素子を搭載可能なキャビティが形成されたセラミック部品を製造する方法に係り、特にはそのキャビティの形成方法に特徴を有するセラミック部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や、水晶振動子、水晶発振器、圧電振動子、表面弾性波フィルタなどの電子部品素子を収容するための小型のセラミックパッケージが各種提案されている。この種のセラミックパッケージは、電子部品素子を収納するためのキャビティ(非貫通凹部)を有し、そのキャビティの一部(例えば、底面)に、電子部品素子と接続するための端子が設けられている。このセラミックパッケージにおいて、複数のセラミック焼結層を積層することでキャビティが形成される。具体的には、例えば、図18に示されるセラミックパッケージ70のように、貫通孔71が形成された上層側のセラミック焼結層72と貫通孔が形成されていない下層側のセラミック焼結層73とを積層することにより、キャビティ74が形成されている。また、セラミックパッケージ70には、外部基板に接続するためのパッド部、ビア導体、内層導体パターンなどの導体部(図示略)も形成されている。
【0003】
ここで、従来のセラミックパッケージ70の製造方法を例示する。
【0004】
具体的には、まず、アルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製する。そしてこのスラリーを従来周知の手法によりシート状に成形して、セラミックグリーンシートを作製する。そして、セラミックグリーンシートに対して従来周知のパンチング(打ち抜き)加工を施すことによって、ビア導体用の貫通孔等を形成する。
【0005】
次に、従来周知のペースト印刷装置を用いて、タングステン等を主成分とする導体ペーストを貫通孔内に充填する。さらに、スクリーン印刷法に従って、セラミックグリーンシートの表面に導体ペーストを塗布する。なおここでは、形成すべき回路配線に応じた所定パターンのマスクを用い、導体ペーストを所定パターン状に印刷形成する。そして、セラミックグリーンシートに対して従来周知のパンチング(打ち抜き)加工を施すことによって、キャビティ用の貫通孔を形成する。
【0006】
その後、複数のセラミックグリーンシートを積層し、従来周知のラミネート装置を用いて厚さ方向に所定の荷重を加えることにより、これらを圧着、一体化してセラミックグリーンシート積層体を形成する。
【0007】
その後、この積層体をアルミナが焼結しうる所定の温度に加熱する焼成工程を行う。この焼成を経ると、各セラミックグリーンシート及び導体ペーストが焼結して、セラミックパッケージ70が得られる。
【0008】
なお、セラミックグリーンシートを積層して焼成することによりスルーホール導体や内層導体パターンを形成した積層型電子部品が特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開昭63−136697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のセラミックパッケージ70の製造方法において、単層構造では非貫通のキャビティ74を形成することができない。このため、複数のセラミックグリーンシートを積層してキャビティ74を形成している。すなわち、キャビティ74を形成するためには、最低二層以上のセラミックグリーンシートが必要であり、段差を有す複雑な形状のキャビティを形成する場合にはさらに多くのセラミックグリーンシートが必要となる。具体的には、キャビティが二段構造の場合には三層以上、キャビティが三段構造の場合には四層以上のセラミックグリーンシートが必要となる。このため、グリーンシートの積層時にキャビティの形成位置がずれてしまうといった問題が懸念される。また、セラミックパッケージが厚くなるため、セラミックパッケージの小型化を図ることが困難となってしまう。さらに、セラミックパッケージに形成されるキャビティは、セラミックグリーンシートの厚みに応じた深さとなるため、電子部品素子に応じた最適な深さのキャビティを形成することが困難となる。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、素子に応じたキャビティを形成し、小型化を図ることができるセラミック部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、セラミック基体部と導体部とを備えるセラミック部品の製造方法であって、焼結後に前記セラミック基体部となるべき未焼結セラミック成形体と、焼結後に前記導体部となるべき未焼結導体とを接触させて配置した状態で、レーザ照射により前記未焼結セラミック成形体の一部を除去することにより、素子を搭載可能な非貫通凹部であるキャビティを前記未焼結セラミック成形体に形成するレーザ加工工程と、前記レーザ加工工程の後、前記未焼結セラミック成形体及び前記未焼結導体を同時に焼結させる焼成工程とを含むことを特徴とするセラミック部品の製造方法がある。
【0012】
従って、手段1に記載のセラミック部品の製造方法によると、レーザ照射によって未焼結セラミック成形体の一部が除去されて、素子を搭載可能な非貫通凹部であるキャビティが形成される。このようにすると、従来のようにセラミックグリーンシートの厚さに依存することなく素子に応じた適切な厚さのキャビティを形成することができるため、セラミック部品の薄型化が可能となる。またこの場合、レーザ照射による微細加工が可能であるため、小型サイズ(水平方向の縦横のサイズが例えば1mm以下)のキャビティを正確に形成することができる。
【0013】
前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体としての単層品のセラミックグリーンシートに対してレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成してもよい。この場合、従来技術のように積層構造を採用しなくてもキャビティを形成することができるため、積層時の位置ズレがなくキャビティを高い位置精度で形成することができる。
【0014】
また、前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体としての複数のセラミックグリーンシートを積層一体化してなるセラミックグリーンシート積層体を作製し、そのセラミックグリーンシート積層体に対してレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成してもよい。このように、セラミックグリーンシートを積層した後にキャビティを形成すると、従来技術のような積層時の位置ズレがなくキャビティを高い位置精度で形成することができる。
【0015】
前記キャビティの内壁面上には前記素子を接続するための端子が形成されていてもよい。この場合、キャビティ内に素子を収納した状態で内壁面上の端子に素子を容易に接続することができる。
【0016】
前記キャビティの底面には段部が配置されるとともに、前記段部上には前記素子を接続するための端子が形成されていてもよい。この場合、キャビティ内に素子を収納した状態で段部上の端子に素子を容易に接続することができる。
【0017】
前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体における前記キャビティが形成されるべき領域に形成された貫通穴部に前記未焼結導体を充填し、この状態で前記未焼結セラミック成形体と前記穴部に充填した前記未焼結導体とに対するレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成するとともに、前記キャビティの内壁面の一部に前記端子となるべき端子用未焼結導体を露出させてもよい。このようにすれば、前記キャビティの内壁面上に端子を容易に形成することができる。
【0018】
前記レーザ加工工程で用いられるレーザの種類は特に限定されないが、例えば、YAGレーザであることが好ましい。
【0019】
また、前記レーザ加工工程において、前記レーザによる加工屑を除去しながらレーザ加工を行うことが好ましい。このようにすれば、キャビティ内に加工屑が溜まるといった問題を回避することができる。
【0020】
前記セラミック部品としては、素子を搭載するためのセラミックパッケージを挙げることができる。セラミックパッケージの具体例としては、例えば、水晶振動子用パッケージ、表面弾性波フィルタ用パッケージ、MPUパッケージ、C−MOS用パッケージ、CCD用パッケージ、LED用パッケージなどを挙げることができる。また、前記水晶振動子をキャビティに収納する場合には、前記キャビティの段部上の端子に前記水晶振動子を接続することが好ましい。このように、キャビティの段部上の端子に水晶振動子を接続することにより、水晶振動子の下面がキャビティの底面に触れることなく水晶振動子を確実に振動させることができ、適切な信号を得ることができる。
【0021】
前記未焼結セラミック成形体と未焼結導体とを接触して配置させる方法としては、印刷法に限定されるものではなく、例えば、シート状に形成した未焼結導体を未焼結セラミック成形体に圧着させて配置させてもよいし、導電性材料を未焼結セラミック成形体上に塗布することによって未焼結導体を配置させてもよい。
【0022】
前記セラミック基体部を形成する材料の好適例としては、アルミナ、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化ほう素、窒化珪素、低温焼成セラミックなどを挙げることができる。また、セラミック基体部の形成材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のセラミック誘電体材料を選択してもよい。
【0023】
前記未焼結導体に含まれる導電性金属粉末は、セラミック基体部の焼成温度よりも高融点である必要がある。例えば、セラミック基体部がいわゆる高温焼成セラミック(例えばアルミナ等)からなる場合には、未焼結導体中の金属粉末として、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)等やそれらの合金が選択可能である。セラミック基体部がいわゆる低温焼成セラミック(例えばガラスセラミック等)からなる場合には、未焼結導体中の金属粉末として、銅(Cu)、銀(Ag)等やそれらの合金が選択可能である。
【0024】
前記セラミック部品としては、セラミックパッケージ以外にセラミックコンデンサなどの電子部品を挙げることができる。また、一般的なセラミックパッケージのように平板形状の部品に限定されるものではなく、より立体的な形状(例えばキューブ状、球状など)のセラミック部品に本発明を具体化してもよい。またこの場合、未焼結セラミック成形体としては、シート成形品に限定されるものではなく、プレス成形品などを用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施の形態のセラミックパッケージ及びその製造方法を図面に基づき詳細に説明する。図1は、セラミックパッケージ10を示す概略断面図である。また、図2は、セラミックパッケージ10の上面図であり、図3は、セラミックパッケージ10の下面図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態のセラミックパッケージ10(セラミック部品)は、水晶振動子11(素子)を実装するための装置である。このセラミックパッケージ10は、上面12及び下面13を有する矩形平板状の部材であり、そのサイズは、例えば、縦1.4mm×横2.0mm×高さ0.51mmである。本実施の形態のセラミックパッケージ10は、3層のセラミック焼結層14,15,16(セラミック基体部)からなる多層構造を有しており、各セラミック焼結層14〜16は、いずれもアルミナ焼結体からなる。
【0027】
図1及び図2に示されるように、セラミックパッケージ10は、上面12において開口するキャビティ20を備えている。本実施の形態のキャビティ20は平面視で略矩形状を呈しており、その外形寸法は、例えば縦1.0mm×横1.5mm×深さ0.34mmに設定されている。
【0028】
本実施の形態のキャビティ20は、二段構造となっており、底面21の一部(図では左側)に段部22が配置されている。そして、そのキャビティ20の段部22上には、水晶振動子11に接続するための一対の端子23が形成されている。水晶振動子11は、各端子23にはんだ付けにより接続される。このように、キャビティ20内において、段部22上の端子23に水晶振動子11を接続することにより、水晶振動子11の先端がキャビティ20の底面21から離れた状態で収納される。
【0029】
セラミックパッケージ10におけるキャビティ20の外周部の上面には、キャビティ20を取り囲むようにシール用メタライズ層25が設けられている。このメタライズ層25上には、図示しないめっき層やロウ材層が設けられるとともに、そのロウ材層等を介して図示しないキャップが取り付けられる。このキャップによってキャビティ20の開口が塞がれる。
【0030】
セラミックパッケージ10において、セラミック焼結層14とセラミック焼結層15との界面には内層導体パターン26が形成され、セラミック焼結層15とセラミック焼結層16との界面には内層導体パターン27が形成されている。また、セラミック焼結層16の下面には、メタライズ層からなるパッド部28が複数個設けられている。このセラミックパッケージ10の各パッド部28は、セラミックパッケージ10を図示しない他の基板上に実装する際に、複数の基板側端子に対して接合される。
【0031】
セラミックパッケージ10において、シール用メタライズ層25は、セラミック焼結層14に形成されたビア導体30を介して内層導体パターン26に接続され、内層導体パターン26は、セラミック焼結層15,16に形成されたキャスタレーション31(端面スルーホール導体)を介してパッド部28に接続されている。また、端子23は、セラミック焼結層15に形成されたビア導体30を介して内層導体パターン27に接続され、内層導体パターン27は、セラミック焼結層15,16に形成されたキャスタレーション31(端面スルーホール導体)を介してパッド部28に接続されている。なお、キャスタレーション31は、凹溝部32の表面上に、メタライズ層を設けた構造を有しており、セラミックパッケージ10の外周面における各コーナー部に配置されている。
【0032】
本実施の形態のセラミックパッケージ10において、端子23、メタライズ層25、内層導体パターン26,27、パッド部28、ビア導体30、及びキャスタレーション31は、例えばタングステンを主体とするメタライズ金属からなる導体部である。
【0033】
次に、上記構造のセラミックパッケージ10を製造する方法について図4〜図13に基づいて説明する。なお、本実施の形態のセラミックパッケージ10は、多数個取りの手法で製造される。
【0034】
まず、未焼結セラミック成形体を準備する準備工程を実施する。具体的には、セラミック粉末としてのアルミナ粉末、有機バインダ、溶剤、可塑剤等を混合してスラリーを作製する。そしてこのスラリーを従来周知の手法(例えばドクターブレード法やカレンダーロール法)によりシート状に成形して、図4に示すようなセラミックグリーンシート41,42,43(未焼結セラミック成形体)を3枚作製する。
【0035】
そして、穴あけ工程では、打ち抜き治具(上型44,下型45)を用いてパンチング加工を行い、セラミックグリーンシート41の複数箇所に貫通孔46,47を形成する(図5参照)。セラミックグリーンシート41と同様に、パンチング(打ち抜き)加工によってセラミックグリーンシート42,43の複数箇所に貫通孔46,47を形成する(図6参照)。各セラミックグリーンシート41,42,43において、貫通孔46は、ビア導体30を形成するための孔部であり、貫通孔47は、キャスタレーション31を形成するための孔部である。
【0036】
続く導体部形成工程では、貫通孔46,47内にそれぞれ導体部を形成する。より具体的にいうと、まず従来周知のペースト印刷装置によるビアメタライズ充填を行って、貫通孔46内にタングステンペースト49を充填する(図7参照)。即ち、貫通孔46を完全にタングステンペースト49で満たすようにする。次いで、キャスタレーション印刷を行って、貫通孔47の内周面にタングステンペースト49を付着させる(図8参照)。従って、貫通孔47内は完全にタングステンペースト49で満たされていなくてもよく、貫通孔47の中心部は空洞状になっている。なお、上記のようにビアメタライズ充填後にキャスタレーション印刷を行ってもよいほか、キャスタレーション印刷後にビアメタライズ充填後を行ってもよい。そして次に、セラミックグリーンシート41,42,43の上にタングステンペースト49をパターン印刷する(図9参照)。これらの印刷層は、後に端子23、メタライズ層25、内層導体パターン26,27、パッド部28となるべき部分である。
【0037】
この後に、積層工程を行い、セラミックグリーンシート43の上にセラミックグリーンシート42及びセラミックグリーンシート41を順次積層し、従来周知のラミネート装置を用いて厚さ方向に所定の荷重を加えることにより、これらを圧着、一体化してセラミックグリーンシート積層体50を形成する(図10参照)。
【0038】
そして、レーザ加工工程では、レーザ照射装置を用いてセラミックグリーンシート積層体50にレーザL1を照射することにより、非貫通凹部であるキャビティ20を形成する(図11参照)。なおここでは、レーザ出力を調整しつつレーザL1の照射点を走査することにより、キャビティ20の底面21に段部22を形成するとともに、その段部22の上面に、後に端子23となるタングステンペースト49のパターンを露出させている。またこのとき、図示しない吸引装置やブロー装置を用いて、レーザ照射による加工屑を除去しながらキャビティ20を形成している。本実施の形態のキャビティ20は、その深さがセラミックグリーンシート41,42の2層分の厚さとほぼ等しくなるよう形成されている。ただし、水晶振動子11のサイズに応じて、セラミックグリーンシート41,42の2層分の厚さよりも浅くキャビティ20を形成してもよいし、その2層分の厚さよりも深くキャビティ20を形成してもよい。
【0039】
続く溝入れ工程では、従来周知のブレード装置を用いることにより、製品領域の外形線に沿ってセラミックグリーンシート積層体50の表面及び裏面に断面V字状の分割溝52を格子状に形成する(図12参照)。なお、本実施の形態では、各貫通孔47の中心を通るよう複数の分割溝52が形成される。
【0040】
その後、セラミックグリーンシート積層体50をアルミナが焼結しうる所定の温度(例えば1500℃〜1800℃程度の温度)に加熱する焼成工程を行う。この焼成を経ると、各セラミックグリーンシート41,42,43が焼結して大判のセラミックパッケージ101が得られる(図13参照)。また、タングステンペースト49の焼結によって、端子23、メタライズ層25、内層導体パターン26,27、パッド部28、ビア導体30、及びスルーホール導体58が形成される。なお、ここで得られるセラミックパッケージ101は、セラミックパッケージ10となるべき製品領域を平面方向に沿って縦横に複数配列した構造の多数個取り用パッケージである。
【0041】
さらに、セラミックパッケージ101の端子23、メタライズ層25、パッド部28、及びスルーホール導体58に対して電解めっきを行ってそれら表面にめっき層を形成する。そして、セラミックパッケージ101を分割溝52に沿って分割することにより、図1のセラミックパッケージ10が複数同時に得られる。なお、分割溝52は、スルーホール導体58のある貫通孔47の中心を通るよう形成されている。このため、分割溝52でセラミックパッケージ101を切断することによって、セラミックパッケージ10のコーナー部(セラミック焼結層15,16の側面)にキャスタレーション31が形成される。
【0042】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0043】
(1)本実施の形態の場合、複数のセラミックグリーンシート41〜43を積層一体化してなるセラミックグリーンシート積層体50を作製し、そのセラミックグリーンシート積層体50に対してレーザ照射を行うことにより、キャビティ20を形成している。この場合、従来技術のように積層時の位置ズレがなくキャビティ20を高い位置精度で形成することができる。また、レーザ照射による微細加工が可能であるため、水晶振動子11に応じたキャビティ20を正確に形成することができる。
【0044】
(2)本実施の形態のセラミックパッケージ10では、キャビティ20の底面21に段部22が配置されるとともに、その段部22上には水晶振動子11を接続するための端子23が形成されている。この場合、キャビティ20の段部22上の端子23に水晶振動子11を接続することにより、キャビティ20内においてその底面21から水晶振動子11が浮いた状態となる。従って、本実施の形態のセラミックパッケージ10を用いれば、水晶振動子11を確実に振動させることができ、適切な信号を得ることができる。
【0045】
(3)本実施の形態の場合、レーザ加工工程において、レーザ照射による加工屑を除去しながらキャビティ20を形成しているので、キャビティ20内に加工屑が溜まるといった問題を回避することができる。
【0046】
(4)本実施の形態の製造方法では、従来技術のようにセラミックグリーンシートのパンチング加工によってキャビティ20を形成する必要がないため、そのパンチング加工を行うための金型が不要となる。また、セラミックパッケージ10の設計変更を行う場合、従来技術のような金型の作製期間が不要となり、レーザ照射位置等の調整によって迅速に対応することができる。
【0047】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、3層構造のセラミックパッケージ10に具体化したが、図14に示されるように、単層構造のセラミック焼結層17(セラミック基体部)からなるセラミックパッケージ10Aに具体化してもよい。このセラミックパッケージ10Aも、上記実施の形態と同様に、上面12において開口するキャビティ20Aを備えている。そして、キャビティ20Aにおける内壁面の一部に素子を接続するための端子23Aが露出している。この端子23Aは、セラミック焼結層17の厚さ方向に延設され、下面13に設けられたパッド部28に接続されている。また、セラミックパッケージ10Aにおけるキャビティ20の外周部の上面には、キャビティ20を取り囲むようにシール用メタライズ層25が設けられており、メタライズ層25は、ビア導体24を介して下面13に設けられたパッド部28に接続されている。
【0049】
図14のセラミックパッケージ10Aを製造する場合、まず、未焼結セラミック成形体として単層品のセラミックグリーンシート44(未焼結セラミック成形体)を準備し、パンチング加工を行うことにより、セラミックグリーンシート44の複数箇所に貫通穴部61,62を形成する(図15参照)。なお、貫通穴部61は、ビア導体24を形成するための穴部であり、キャビティ20Aが形成されるべき領域R1の外側に形成される。また、貫通穴部62は、端子23Aを形成するための穴部であり、キャビティ20Aが形成されるべき領域R1に形成されている。そして、貫通穴部61,62内にタングステンペースト49を充填し、さらに、セラミックグリーンシート44の上にタングステンペースト49をパターン印刷する(図16参照)。続くレーザ加工工程では、セラミックグリーンシート44と貫通穴部62に充填したタングステンペースト49とに対してレーザL1を照射することにより、キャビティ20Aを形成する(図17参照)。またこのとき、キャビティ20Aの内壁面の一部に端子23Aとなるべきタングステンペースト49(端子用未焼結導体)を露出させる。なお、このレーザ加工工程においても、レーザ照射による加工屑を除去しながらキャビティ20Aを形成している。この後、上記実施の形態と同様に分割溝52の溝入れ工程、焼成工程を行い、さらにめっき工程や分割工程を行うことでセラミックパッケージ10Aを製造する。
【0050】
このようにセラミックパッケージ10Aを製造すれば、従来のようにセラミックグリーンシート44の厚さに依存することなく素子11Aに応じた適切な厚さのキャビティ20Aを形成することができるため、セラミックパッケージ10Aの薄型化が可能となる。またこの場合、従来技術のように積層構造を採用しなくてもキャビティ20Aを形成することができるため、積層時の位置ズレがなくキャビティ20Aを高い位置精度で形成することができる。さらに、キャビティ20Aの内壁面上には素子11Aを接続するための端子23Aが形成されているので、キャビティ20A内に素子11Aを収納した状態で内壁面上の端子23Aに素子11Aを容易に接続することができる。
【0051】
・上記実施の形態において、セラミックパッケージ10に形成するキャビティ20は、縦1.0mm×横1.5mmのサイズであったが、このサイズは適宜変更することができる。上記実施の形態の製造方法によれば、レーザ加工による微細加工が可能であるため、例えば、縦横のサイズが1.0mm以下の小型のキャビティを形成することができる。また、上記実施の形態のキャビティ20は、平面視で略矩形状であったが、搭載する素子形状に応じて適宜変更してもよい。例えば、細長いスリット形状のキャビティを形成してもよいし、円形のキャビティを形成してもよい。
【0052】
・上記実施の形態において、貫通孔46,47をパンチング加工によって形成したが、レーザ加工やドリル加工などの手法によって形成してもよい。特にレーザ加工で貫通孔46,47を形成する場合、キャビティ20の加工時のレーザ照射装置を用いることができるため、装置コストを抑えることが可能となる。また、共通のレーザ加工装置を用いれば、各工程での位置合わせを簡素化することが可能となる。
【0053】
・上記実施の形態におけるレーザ加工工程ではYAGレーザを用いたが、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ等の他の種類のレーザを用いてもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、セラミックパッケージ10,10Aに具体化していたが、セラミックコンデンサなどの他のセラミック部品に本発明を適用してもよい。
【0055】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)セラミック基体部と導体部とを備えるセラミック部品の製造方法であって、焼結後に前記セラミック基体部となるべき未焼結セラミック成形体と、焼結後に前記導体部となるべき未焼結導体とを接触させて配置した状態で、レーザ照射により前記未焼結セラミック成形体の一部を除去することにより、素子を搭載可能な非貫通凹部であるキャビティを前記未焼結セラミック成形体に形成するレーザ加工工程と、前記レーザ加工工程の後、前記未焼結セラミック成形体及び前記未焼結導体を同時に焼結させる焼成工程とを含み、前記レーザ加工工程において、前記レーザによる加工屑を除去しながらレーザ加工を行うことを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【0056】
(2)技術的思想(1)において、前記レーザ加工工程で形成される前記キャビティは、縦横のサイズが1.0mm以下であることを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【0057】
(3)技術的思想(1)または(2)において、前記レーザ加工に用いられるレーザはYAGレーザであることを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態のセラミックパッケージを示す断面図。
【図2】本実施の形態のセラミックパッケージを示す上面図。
【図3】本実施の形態のセラミックパッケージを示す下面図。
【図4】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図5】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図6】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図7】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図8】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図9】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図10】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図11】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図12】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図13】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図14】別の実施の形態のセラミックパッケージを示す断面図。
【図15】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図16】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図17】セラミックパッケージの製造方法を説明するための断面図。
【図18】従来のセラミックパッケージを示す概略断面図。
【符号の説明】
【0059】
10,10A…セラミック部品としてのセラミックパッケージ
11…素子としての水晶振動子
11A…素子
14〜17…セラミック基体部としてのセラミック焼結層
20,20A…キャビティ
21…キャビティの底面
22…段部
23,23A…導体部としての端子
24…導体部としてのビア導体
25…導体部としてのシール用メタライズ層
26,27…導体部としての内層導体パターン
28…導体部としてのパッド部
30…導体部としてのビア導体
31…導体部としてのキャスタレーション
41〜44…未焼結セラミック成形体としてのセラミックグリーンシート
49…未焼結導体としてのタングステンペースト
50…セラミックグリーンシート積層体
62…貫通穴部
R1…領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基体部と導体部とを備えるセラミック部品の製造方法であって、
焼結後に前記セラミック基体部となるべき未焼結セラミック成形体と、焼結後に前記導体部となるべき未焼結導体とを接触させて配置した状態で、レーザ照射により前記未焼結セラミック成形体の一部を除去することにより、素子を搭載可能な非貫通凹部であるキャビティを前記未焼結セラミック成形体に形成するレーザ加工工程と、
前記レーザ加工工程の後、前記未焼結セラミック成形体及び前記未焼結導体を同時に焼結させる焼成工程と
を含むことを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体としての単層品のセラミックグリーンシートに対してレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体としての複数のセラミックグリーンシートを積層一体化してなるセラミックグリーンシート積層体を作製し、そのセラミックグリーンシート積層体に対してレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成することを特徴とする請求項1に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティの内壁面上には前記素子を接続するための端子が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項5】
前記キャビティの底面には段部が配置されるとともに、前記段部上には前記素子を接続するための端子が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項6】
前記レーザ加工工程において、前記未焼結セラミック成形体における前記キャビティが形成されるべき領域に形成された貫通穴部に前記未焼結導体を充填し、この状態で前記未焼結セラミック成形体と前記穴部に充填した前記未焼結導体とに対するレーザ照射を行うことにより、前記キャビティを形成するとともに、前記キャビティの内壁面の一部に前記端子となるべき端子用未焼結導体を露出させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項7】
前記セラミック部品は、水晶振動子用セラミックパッケージであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセラミック部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−69620(P2010−69620A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236001(P2008−236001)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】