説明

セルロースエーテル組成物、該組成物の製造方法及び使用並びに無機材料の押出し法及び無機押出し材料

【課題】押出プロセスの際に改善されたプロセス特性、押し出された物体のより高い表面品質並びに押し出された物体の改善された製品特性に関して改善された性質を有する、水保持剤、可塑剤及び潤滑剤として使用するためのセルロースエーテル組成物を含有する添加剤、建築材料及び2mmの最大粒子を有する他の混合物におけるこのセルロースエーテル組成物の使用並びにこれらの添加剤の使用下に無機材料を押し出す方法。
【解決手段】セルロースエーテル組成物が、(A)セルロースエーテル55〜99.8質量%、(B)流動剤0.19〜45質量%及び(C)消泡剤0.01〜25質量%を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機材料を押し出す際に水保持剤、可塑剤及び潤滑剤として使用するためのセルロースエーテル組成物を含有する添加剤に関する。さらに本発明は、建築材料及び他の混合物におけるこのセルロースエーテル組成物の使用並びにこれらの添加剤の使用下で無機材料を押し出す方法に関する。このメチルセルロース組成物の使用は押出しプロセスの際に改善されたプロセス特性、押し出された物体のより高い表面品質並びに押し出された物体の改善される製品特性をもたらす。
【背景技術】
【0002】
無機材料の押出しは何年も前から工業的に応用され、この押出しは、ペースト状の無機混合物を、任意の断面形状のダイ開口部(Duesenmund)を通してのプレスにより成形する方法である。このようにして得られた構成要素は多岐に亘り、特に建築用途において使用されうる。押し出される無機材料は多様な組成を有していてよく、工業的及び経済的に重要であるのは、とりわけ押し出されるセメント材料である。これらのセメント材料は原則的に結合剤としてのセメント、場合によりまた別の結合剤、さらに骨材(砂)及び/又は軽量骨材、場合によりまた繊維及び/又は他の添加剤並びに水保持剤、可塑剤及び潤滑剤としてのセルロースエーテル、特にメチルセルロースを含有する。
【0003】
メチルセルロースは本明細書中で、メチル基を有する全てのセルロースエーテル、例えばメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルロース並びにメチル基だけでなく長鎖の疎水性側鎖も有するセルロースエーテルであると理解される。メチルセルロースの使用量は一般的に0.3〜6%である。
【0004】
材料が経済性の見地に立って押し出されることができ、かつ良好に販売できる質的に価値の高い製品へ加工されることができるかどうかは、異なるパラメーターにより決定される:
1.プロセスパラメーター:材料は、できるだけ少ない圧力並びにできるだけ高い速度でダイ開口部から均質に排出されることができなければならない。そのうえ、この材料は、ダイ開口部から出た後に排出方向に対して横方向のできるだけ少ない変形(ダイ開口部での押し広げ(Aufweitung)、幅膨張(Breitenausdehnung))を有するべきである。
2.製品特性:押し出された材料の表面は決定的な役割を果たす。この表面はひび割れがないべきであり、かつできるだけ滑らかであるべきである。良好な表面特性はとりわけ、通常より長期の押出し期間後に生じるより高い押出し温度の場合に問題になる。押し出された製品の高められた強さ又はより迅速な凝結はさらに望ましい性質でありうる。
【0005】
相応して、押出しプロセス、製品の表面品質及び物理的な製品特性に関して改善された性質を有する、水保持剤、可塑剤及び潤滑剤を見出すという課題が本発明の基礎となっている。
【0006】
WO 01/16048A1(James Hardie)には、押し出されるセメント材料における添加剤として、粘度を高める薬剤(そのようなものとしてとりわけ多様なセルロースエーテルが挙げられる)及び分散剤(そのようなものとしてスルホン化されたメラミン−ホルムアルデヒド−樹脂並びにポリカルボキシレートが挙げられ、これらは通常、流動剤(Fliessmittel)と呼ばれる)の混合物が記載されており、前記混合物は双方の成分の間の協力効果によりセルロースエーテルの節約可能性を達成するという目的を有する。さらに、より良好な表面、より少ない押出し圧及び部分的に高められる押出し速度のような利点が示されている。しかしながら、WO 01/16048A1からは、以下に記載される、3つの成分からなる、すなわち特定の比のセルロースエーテル、流動剤及び消泡剤からなる本発明による混合物が、押し出される材料の調節された(同じコンシステンシーに調整された)水必要量にもかかわらず、さらに以下に挙げられた6つの利点をもたらすことは、当業者には決して明らかではない。
【0007】
EP1266877A2(Shin-Etsu)には、とりわけ増粘剤(セルロースエーテル)及び消泡剤(前記消泡剤はポリエーテル基又はポリエーテル成分を含有する)を含む水硬性混合物が開示されている。ダイ開口部での排出された材料の線状の幅の押し広げ(“スプリングバック;spring back”)が減少されることが観察される。しかしながら、EP 1266877 A2による混合物は、劣悪な押出し特性を有する極めて硬い材料となる。
【0008】
WO 03/024884 A1(Shin-Etsu及びNMB)には、ポリカルボン酸コポリマー及び/又はこれからなる塩と水溶性セルロースエーテル及び消泡剤とからなる混合物が記載されている。第一成分と第二成分、すなわちポリカルボン酸コポリマー又はその塩とセルロースエーテルとの間の混合比は好ましくは50:50〜99:1である。3つの成分の液状混合物の高い貯蔵安定性が特に強調される。
【0009】
しかしながら、セメント結合される材料の押出しにおいてWO 03/024884 A1において推奨される相互の3つの成分の比が、並びに結合剤にセメントが適していないことが明らかになっている。
【特許文献1】WO 01/16048A1(James Hardie)
【特許文献2】EP1266877A2(Shin-Etsu)
【特許文献3】WO 03/024884 A1(Shin-Etsu及びNMB)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、押出しプロセス、製品の表面品質及び物理的な製品特性に関して改善された性質を有する、水保持剤、可塑剤及び潤滑剤を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
3つの成分:セルロースエーテル、ポリカルボキシレートエーテル−流動化剤及び消泡剤相互の特定の混合物が無機混合物中で次の利点、すなわち:
1.より低い押出し圧、
2.より大きい押出し速度、
3.ダイ開口部から出た後の押し出された断面形状のより少ない押し広げ(“線形幅膨張”[%])、
4.材料のより大きな延性及び塑性に付随する、押し出された材料のより強い凝集、
5.より少ないひび割れの形成を伴うより滑らかな表面、及び
6.より大きな圧縮強さ及び曲げ強さ
をもたらすことが目下見出された。
【0012】
これらの利点は、セルロースエーテル組成物中の3つの成分:セルロースエーテル(A)、流動剤(B)及び消泡剤(C)の割合が、セルロースエーテル55〜99.8質量%、流動剤0.19〜45質量%及び消泡剤0.01〜25質量%、好ましくはセルロースエーテル58〜99.5質量%、流動剤0.45〜41.95質量%及び消泡剤0.05〜22質量%、極めて特に好ましくはセルロースエーテル60〜99質量%、流動剤0.9〜39.9質量%及び消泡剤0.1〜20質量%である場合に観察され、その際に質量%はその都度成分(A)、(B)及び(C)の総和に対するものである。
【0013】
故に本発明の対象は、(A)セルロースエーテル55〜99.8質量%、(B)流動剤0.19〜45質量%及び(C)消泡剤0.01〜25質量%を含有しており、無機材料を押し出すための添加剤としてのセルロースエーテル組成物である。
【0014】
特許の保護が請求された比以外のこれら3つの成分の使用は、前記の本発明による結果をもたらさない。
【0015】
好ましくは流動剤とセルロースエーテルとの混合比は30:70〜1:99、特に好ましくは35:65〜1.5:98.5、極めて特に好ましくは40:60〜2:98であり、その際に示された比は質量割合に基づいている。
【0016】
好ましくは消泡剤の割合は、セルロースエーテルに対して、0.05〜20質量%、特に好ましくは0.1〜15質量%、極めて特に好ましくは0.15〜5質量%である。
【0017】
典型的には本発明によるセルロースエーテル組成物は無機材料に対して0.1〜3質量%の量で使用される。
【0018】
無機材料がセメントをベースとする場合には、流動剤の割合はその都度セメントに対して、通常0.01〜4質量%、好ましくは0.01〜3質量%、特に好ましくは0.015〜2質量%である。セルロースエーテルの割合はセメントに対して、通常0.05〜10質量%、好ましくは0.08〜7質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0019】
適しているセルロースエーテル(A)は、特にイオン性セルロースエーテル、例えばスルホエチルセルロース又はカルボキシメチルセルロース及びそれらの塩、又は非イオン性セルロースエーテル、例えばアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルセルロース、特にメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルロース又は同時にメチル基と長鎖の疎水性側鎖とを有するセルロースエーテル並びに前記の製品からなる混合物である。
【0020】
前記セルロースエーテルの粘度は通例、Haake回転粘度計中で20℃での2%溶液中で測定して、400〜200 000mPasである。
【0021】
適している流動剤(B)は、例えばカゼイン、ポリカルボン酸及びそれらの塩、カルボン酸−モノマー又はそれらの塩並びにカルボキシレートエーテル−モノマー、カルボン酸エステル−モノマー、及び他のカルボキシル酸誘導体を架橋するビスアクリレート及び類似のモノマーを含有するポリマーである。好ましくは流動剤は次のものであると理解される:アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及び類似の一官能性及び二官能性の酸並びにそれらの塩、エステル及びエーテルのホモポリマー、コポリマー及びターポリマー。エーテルには例えばポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えばトリエチレングリコールモノアクリレート及びポリエチレングリコールモノアクリレート(200〜2000g/molのポリエチレングリコールモル質量を有する)、しかしまた酸基を有しない不飽和ポリアルキレングリコールエーテルが含まれる。次のものが極めて特に好ましい:アクリル酸及びメタクリル酸、それらの二官能性の酸並びにそれらの塩、エステル及びエーテルのホモポリマー、コポリマー及びターポリマー。エーテルには、例えばポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、例えばトリエチレングリコールモノアクリレート及びポリエチレングリコールモノアクリレート(200〜2000g/molのポリエチレングリコールモル質量を有する)、しかしまた酸基を有しない不飽和ポリアルキレングリコールエーテルが含まれる。
【0022】
流動剤は、本明細書では明らかに、メラミン−スルホネート又はメラミン−ホルムアルデヒドスルホネート、ナフタレンスルホネート、リグニンスルホネート又はそれらの混合物の種類ではないと理解される。
【0023】
特に好ましい流動剤はポリカルボン酸コポリマー及びそれらの塩である。
【0024】
適している消泡剤(C)は、液体又は固体の形の特に純物質又は混合物であり、これらは次のものを含有する:例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースとする、アルキレングリコール−ホモポリマー、アルキレングリコール−コポリマー、アルキレングリコール−ターポリマー及びアルキレングリコール−ブロックコポリマー、アルキレンオキシドの付加物、高級アルコールのアルキレングリコールエーテル、脂肪酸エステル、アルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシド及びアセチレンの付加生成物、リン酸エステル、例えばトリブチルホスフェート、オクチルリン酸ナトリウム等並びに消泡作用を有する全てのポリエーテル基含有化合物又はポリエーテル基含有混合物。
【0025】
例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースとする、アルキレングリコール−ホモポリマー、アルキレングリコール−コポリマー、アルキレングリコール−ターポリマー及びアルキレングリコール−ブロックコポリマー、アルキレンオキシドの付加物、高級アルコールのアルキレングリコールエーテル、脂肪酸エステル、アルキレングリコール脂肪酸エステル等並びに消泡作用を有する全てのポリエーテル基含有化合物又はポリエーテル基含有混合物が特に好ましい。
【0026】
例えばエチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースとする、アルキレングリコール−ホモポリマー、アルキレングリコール−コポリマー、アルキレングリコール−ターポリマー及びアルキレングリコール−ブロックコポリマー、アルキレンオキシドの付加物、高級アルコールのアルキレングリコールエーテル並びに消泡作用を有する全てのポリエーテル基含有化合物又はポリエーテル基含有混合物が極めて特に好ましい。
【0027】
セルロースエーテル組成物は挙げられた成分(A)〜(C)に加えてさらにまた別の添加剤、例えば疎水化剤、再分散粉末、架橋されたアクリレート及び多糖をベースとする超吸収体、潤滑剤(例えばポリエチレンオキシド−ホモポリマー、ポリエチレンオキシド−コポリマー及びポリエチレンオキシド−ターポリマー)、界面活性剤、促進剤、遅延剤、脂肪酸及びそれらのエステル、アクリル酸類及びメタクリル酸類の酸、塩、アミド及びエステルをベースとするポリマー、多糖類、例えば天然デンプン又は誘導体化デンプン、キサンタン、グルカン、ウェラン(Welane)、グァー及び類似の多糖類、それらの誘導体を含めたポリビニルアルコール及びウレタンをベースとするポリマーを含有していてよい。
【0028】
典型的な使用において、本発明によるセルロースエーテル組成物は、結合剤20〜100部、骨材0〜70部、軽量骨材0〜30部、繊維0〜20部及び場合により他の添加剤からなる無機成分の混合物に、無機成分の混合物に対して0.1〜3質量%の量で添加される。
【0029】
結合剤は、本明細書では全ての無機結合剤、例えばセメント、セッコウ、消石灰、生石灰、粘土/ローム、ケイ酸塩、特殊フライアッシュ及びセラミック結合剤、しかし好ましくは全ての種類のセメント及びセッコウ並びに分散結合される結合剤及びセラミック材料であると理解される。
【0030】
骨材は、本明細書では、通常建築材料において使用されるような、全ての種類の砂及び石粉であると理解される。これらは特に砂礫、砕砂及び丸いつぶの砂、砂利、アッシュ及び石英をベースとする粉、石灰(炭酸カルシウム)、ドロマイト、カオリン、大理石、ガラス、多様な種類の建築廃棄物、リサイクル材料、特殊フライアッシュ、粘土、ベントナイト及び他の層状ケイ酸塩である。原則的に多種多様な粒度の骨材は押し出されることができ、要求プロフィールに相応する骨材を構成する際に、特定の性質を最適に調節するために、特定の粒子画分を互いに組み合わせることが可能である。
【0031】
軽量骨材は特に低い密度を有する骨材である。これらは、鉱物質由来、例えばパーライト(膨張粘土)、多泡ガラス(Blaehglas)、膨張したケイ酸カルシウム又は石英もしくは石灰ベースの高多孔質の天然の砂であってよく、しかしまたこれらは有機起源、例えば発泡ポリスチレン、ポリウレタンフォーム、コルク等であってよい。
【0032】
繊維は、本明細書では全ての種類の天然繊維又は合成繊維、例えばセルロース、タケ、ヤシ、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、炭素、ガラス、セラミック及び他の鉱物質繊維をベースとする繊維であると理解される。それらの繊維長及び繊維の太さは、特定の製品特性を達成するために幅広い範囲に亘って変えることができる。
【0033】
セルロースエーテル混合物(前記混合物はセルロースエーテル、ポリカルボキシレートエーテル−流動剤及び消泡剤からなる)の添加は、別個の工程において行われなければならないのではなくて、むしろ少なくとも3つの個々の成分は他のモルタル成分と個々に混合されることもできる。
【0034】
本発明のさらなる対象は、前記のセルロースエーテル組成物を押し出す材料に混合しながら無機材料を押し出す方法である。本発明による対象はその際に無機材料を押し出す方法であり、前記方法は、本発明によるセルロースエーテル組成物0.1〜3質量%を、結合剤20〜100部、骨材0〜70部、軽量骨材0〜30部、繊維0〜20部及び場合により他の添加剤からなる無機成分の混合物に水と共に混合し、かつ均質な材料が得られるまで混合及び/又は混練し、かつこれらの材料を押出しプレス(Strangpresse)のダイ開口部を通して押し出すことにより特徴付けられる。
【0035】
本発明による方法は、全ての原料が任意の順序で互いに混合されることにより実施される。一般的に、全ての乾燥成分はまず最初に乾式予備混合され、ついで特定の量の水に添加され、かつ新たに混合される。しかしながら、乾燥剤をセルロースエーテル混合物の水溶液に添加する(しかしながらこれは通例配合するのが難しいゲルとなる)又は全ての成分及び水を同時に混合することも可能である。同様に10%未満の水分を有する一部又は全ての砂/骨材を混合することが可能である。全ての成分が互いに混合された後で、これらは引き続いて一軸又は二軸スクリュー押出機中で圧縮され、かつ口金を経て押し出される。真空室を備えた押出機及び真空室を備えていない押出機及び冷却を有する押出機又は冷却を有しない押出機を使用することが可能である。混合と押出しとの間に市販のニーダー中での混練工程がさらにまた挿入されることができる。
【0036】
本発明のさらなる対象は、鉱物質材料を押し出すための添加剤として使用されるセルロースエーテル組成物の製造方法であり、前記方法は、(A)セルロースエーテル55〜99.8質量%、(B)流動剤0.19〜45質量%及び(C)消泡剤0.01〜25質量%及び場合により別の添加剤が乾燥した、液状の又はペースト状/ゲル状の状態で混合されることにより特徴付けられる。
【0037】
本発明のさらなる対象は、押出しによりセメント結合された成形体を製造するための添加剤としての本発明によるセルロースエーテル組成物の使用である。
【実施例】
【0038】
次の例は本発明による使用を説明するが、本発明を限定するものではない:
混合及び押出しの実施:ポルトランドセメントCEM I 32,5R 50部、石英粉50部、繊維4.5部及びセルロースエーテル組成物1部(全ての部分が温度調節される(temperiert))をまず最初に流動層ミキサー中で乾式で均質に混合し、引き続いて温度調節された水(量の記載は下記参照)を添加し、材料をさらに混合し、ニーダー中で数分間混練する。引き続いて材料を直ちに温度調節された一軸スクリュー押出機の供給トラフ中へ充填する。材料を、多孔板を通してプレスし、脱気のために真空室に導き、異形押出ダイを通してプレスし、ベルトコンベヤー上に排出する。本発明により押し出される全ての材料は、それらの水必要量に関して排出する材料の常用のコンシステンシーに調節し、本発明によらない例は選択的にまた、上記で引用した特許出願明細書WO 01/16048A1、EP1266877A2及びWO 03/024884 A1において実施されるような参考の水必要量に調節した。
【0039】
例1〜10
試験結果の考察:
例1、2及び3:例2及び3のセルロースエーテル組成物は純セルロースエーテル(例1、本発明によらない)に比較して、これらがWO 03/024884 A1において適していないと記載されているにもかかわらず、圧力減少、速度増大、表面品質、ダイ開口部での線膨張の減少、凝集並びに曲げ強さ及び圧縮強さに関してかなりの改善を示している。例5〜8とは反対である。ここで例4は参考として、純セルロースエーテルの測定値の描写及び参考の繰り返しに利用される。WO 03/024884 A1において推奨されるような比の、材料のコンシステンシーを参考のそれに調節した例5及び7における3つの成分の混合物が、既に除外基準である表面のかなりの劣悪化をまねくことを示している。それに反して参考と同じ水必要量を有する材料を押し出す場合には(例6及び8)、材料は、押出物の形状安定性がもはや保証されていないほど軟らかく、このことは再び除外基準である。
【0040】
試験9〜14は、メチルセルロースのみとの混合物での異なる消泡剤の適性を(EP 1266877 A2に相応する)試験するのに利用される。試験9及び10(消泡剤T):0.28のW/Fで硬すぎる材料をもたらし、かつW/Fが0.30(試験10)に高められる場合であっても、これは極めて僅かに低下するに過ぎない。それゆえ双方の材料は適していない。そのうえ試験10の高い水必要量は極めて低い強さを予測させる。
【0041】
試験11及び12(消泡剤Rhoximat DF 770 DD):0.280の(常用の)W/Fで硬すぎるが、しかしながら材料の硬さを通常の範囲内へ低下させるためにW/Fを0.305に高めると、確かに良好なプロセスパラメーター(圧力、速度、表面、ダイ開口部での押し広げ)がもたらされるが、しかしながら高い水必要量は受け入れることができる強さを妨げる。
【0042】
試験13及び14(Agitan P 803):双方の先行した試験の組の場合に類似していることに気付く。
【0043】
試験15及び16:試験15における参考(メチルセルロース0.9%を有する)に比較して、試験16はメラミンスルホネートをベースとする流動剤の付加的な使用にもかかわらずいかなる重要な改善も示さず、それどころか双方のバッチにおいて同じ水必要量の場合に試験16におけるより軟らかい材料は、メラミンスルホネートをベースとする流動剤の低い有効性を証明することすら示さない。
【0044】
試験17及び18:それに比べてMelflux 2651 Fの使用は水節約のより大きな効果を示す。しかしながら適切なコンシステンシーに水必要量を調整する際に明らかな(不利な)圧力上昇及び表面品質のごく僅かな劣悪化を示している。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

注:
1. A:メチルセルロース、B:流動剤、C:消泡剤、質量割合が記載され、3つの成分の混合物の使用量は鉱物質成分の乾燥質量に対して1%である(試験15の場合を除く)。次の出発物質を使用した:
a)全ての試験におけるメチルセルロースとして:Walocel M-20678(Wolff Cellulosics GmbH、ドイツ連邦共和国)、20℃での粘度、2%水溶液、Haake-回転粘度計、仕様書によれば75〜85000mPas;
b)試験2、3、5〜8、17及び18における流動剤として:Melflux 2651 F(Degussa、ドイツ連邦共和国)、試験16においてメラミンスルホネート、
c)試験9及び10における消泡剤として:消泡剤T(=トリブチルホスフェート、Bayer AG、ドイツ連邦共和国)、試験11及び12において:Rhoximat DF 770 DD(Rhodia)、試験2、3、5〜8、13及び14において:Agitan P 803(Muenzing Chemie、ドイツ連邦共和国)。
【0050】
2. W/Fは水/固体ファクターを意味する。使用される水量は砂及びセメント量に対してのみ計算され、繊維及び添加剤は考慮されない。例えば0.29のW/Fは、砂及びセメント100gにつき水29gが使用されることを意味する。
【0051】
3. 圧力はダイ開口部直前で測定される圧力を意味する。値は少なくとも6つの測定について平均されている。
【0052】
4. ダイ開口部から押し出された材料の出口速度。
【0053】
5. 口金の幅(=100%)に対する幅の線膨張。
【0054】
6. 材料の剛さは、押し出されたばかりの試験片について試験する。これは試験片のコンシステンシーの尺度である。材料が硬すぎて排出される場合には、粒子相互及び粒子と押出機壁とのより高い摩擦が、より高い電力消費、高められた摩滅及び材料の加熱をまねき;材料が軟らかすぎて排出される場合には、これは形状不安定である。このことは、中空異形材の押出しの際に横材(Stege)の破壊をまねくが、しかし原則的により高いW/F−値のためにより低い強さをまねく。
【0055】
7. 凝集は、押し出されたばかりの試験片の内部結合力を意味する。良好な凝集は例えば、押し出された異形材が曲げる/ひねる際にひび割れないか又は常用のものよりも少ないひび割れを示し、かつ押し出されたばかりで依然として可塑性の試験片を(手を用いて)ばらばらに引き裂く(Auseinanderreissen)ために、本発明によらない押し出された試験片の場合よりもはるかにより大きなエネルギー消費が必要であることに関して示している。
【0056】
8. 次の条件下での28日間貯蔵後に測定された強さ:高さ40mmを有する押出しプレス中で室温で溶着したポリエチレン袋中で23±2℃で2日間、プレスの外で同じ条件下でさらに5日間、ついで空気中で23±2℃及び相対湿度50±5%で21日間。
【0057】
9. 比1(V1)は、セルロースエーテル:ポリカルボキシレートエーテル流動剤(粉末に対する):消泡剤の比を意味する。
比2(V2)は、セメントに対するポリカルボキシレートエーテル流動剤[質量%]を意味する。
比3(V3)は、セメントに対するセルロースエーテルの比[質量%]を意味する。
比4(V4)は、100:0〜0:100のポリカルボキシレートエーテル流動剤とセルロースエーテルとの比を意味する。
比5(V5)は、セルロースエーテルに対する消泡剤の比[質量%]を意味する。
【0058】
さらなる注:
10. 省略形:n.g.:測定されない(nicht gemessen)、n.s.b.=有意に決定されることができない(nicht sinnvoll bestimmbar)
11. 押し出される材料の温度は全ての場合に37〜44℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セルロースエーテル55〜99.8質量%、(B)流動剤0.19〜45質量%及び(C)消泡剤0.01〜25質量%を含有していることを特徴とする、無機材料を押し出すための添加剤としてのセルロースエーテル組成物。
【請求項2】
セルロースエーテル(A)が、カルボキシメチルセルロース及びスルホエチルセルロース並びにそれらの塩からなる群からの少なくとも1つのイオン性セルロースエーテルを含有している、請求項1記載のセルロースエーテル組成物。
【請求項3】
セルロースエーテル(A)が、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルヒドロキシブチルセルロース並びにメチル基と長鎖の疎水性側鎖とを有するセルロースエーテルからなる群からの少なくとも1つの非イオン性セルロースエーテルを含有している、請求項1記載のセルロースエーテル組成物。
【請求項4】
流動剤がポリカルボキシレートエーテルの種類からの合成ポリマーである、請求項1から3までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物。
【請求項5】
消泡剤が、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドをベースとするアルキレングリコール−ホモポリマー、アルキレングリコール−コポリマー、アルキレングリコール−ターポリマー及びアルキレングリコール−ブロックコポリマーを含有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物。
【請求項6】
セルロースエーテル組成物が粉末状である、請求項1から5までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物。
【請求項7】
無機材料を押し出す方法において、
請求項1から6までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物を0.1〜3質量%の量で、結合剤20〜100部、骨材0〜70部、軽量骨材0〜30部、繊維0〜20部及び場合により他の添加剤からなる鉱物質混合物に、水と共に混合し、かつ均質な材料が得られるまで混合及び/又は混練し、材料を押出しプレス/押出機のダイ開口部を通して押し出すことを特徴とする、無機材料を押し出す方法。
【請求項8】
(A)セルロースエーテル55〜99.8質量%、(B)流動剤0.19〜45質量%及び(C)消泡剤0.01〜25質量%及び場合により別の添加剤を乾燥状態、液状又はペースト状/ゲル状の状態で混合又は混練することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物の製造方法。
【請求項9】
押出しによりセメント結合された成形体を製造するための添加剤としての、請求項1から6までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物の使用。
【請求項10】
結合剤20〜100部、骨材0〜70部、軽量骨材0〜30部、繊維0〜20部及び場合により他の添加剤並びに請求項1から6までのいずれか1項記載のセルロースエーテル組成物0.1〜3質量%(無機成分に対して)を含有している無機押出し材料。
【請求項11】
結合剤がセメントであり、かつその都度セメントに対して、流動剤の割合が0.01〜4質量%であり、かつセルロースエーテルの割合が0.05〜10質量%である、請求項10記載の無機押出し材料。

【公開番号】特開2007−9165(P2007−9165A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227170(P2005−227170)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(503166780)ヴォルフ セルロシックス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Wolff Cellulosics GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】29656 Walsrode, Germany
【Fターム(参考)】