説明

セルロースステープルファイバーおよび充填材としてのその利用

本発明は、多葉な(multilobal)セルロースステープルファイバーの、充填材としての利用の関する。さらに、本発明は、セルロースステープルファイバーに関し、(1)このファイバーの断面は3つ以上の小葉を有し、(2)このファイバーの繊度は1.0〜30dtexであり(好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく(特に5.6〜10dtex)、特に好ましくは6.0dtexより大きい(特に6.3〜10dtex))、(3)このファイバーの湿度係数(wet modulus)は以下の式を満たし:湿度係数(cN/tex)≧0,5√T(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)、(4)このファイバーの正常状態(conditioned state)での引っ張り強さは以下の式を満たす:引っ張り強さ(cN/tex)≧1.3√T+2T(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、繊維製品(例えば、羽毛布団、クッション、枕、マットレス、張り椅子用のフリース、衣類など)の充填材の分野およびその分野に特に有用な材料に関する。
【0002】
繊維製品の充填材が特別な要求を満たさなければならないことは公知である。特に、大容量であると同時に低密度であること、ならびに断熱、水分吸着および水分移動に関して適切な特性であることが望まれている。
【0003】
WO99/16705には、ポリエステル繊維とリヨセル繊維との不織混合物からなる充填材が提案されている。リヨセル繊維は、水溶性の第三アミンオキシド(特にN−メチル−N−モルフォリン−N−オキシド(NMMO))中でのセルロース溶液から紡績したセルロースファイバーである。
【0004】
EP1067227A1には、ポリエステル繊維およびビスコース繊維の混合繊維フリースが充填材として開示されている。
【0005】
単一の繊維タイプからなるか、繊維混合物からなるか、または他の材料(例えばダウン)との繊維混合物からなる公知の充填材は、これらの特性に関してなお完全には満足されていない。
【0006】
本発明は、このような材料によってかなえられるべき要求を非常に満足した充填材を提供することを目的とする。
【0007】
このような目的は、独立請求項1に記載のセルロースステープルファイバーを用いる1つの局面に従って達成される。
【0008】
さらなる局面において、本発明の目的は、多葉な(multilobal)セルロースステープルファイバー、特に本発明に係るセルロースステープルファイバーを充填材として使用することによって達成される。
【0009】
本発明のさらなる局面は、多葉な(multilobal)セルロースステープルファイバー、特に本発明に係るセルロースステープルファイバーを含む充填材に関する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に開示されている。
【0011】
本発明は、多葉なセルロースステープルファイバーが種々の繊維製品用途(羽毛布団、クッション、枕、マットレス、張り椅子用のフリース、衣類など)の充填材として非常に適切であることを見出したことに基づいている。
【0012】
「多葉な」セルロースステープルファイバーによって、ファイバーの断面は3つ以上の小葉を示していることが理解されるべきである。このようなファイバーは、セルロース紡糸液を、金型(spinneret)から紡績することによって生成され得る。この金型の開口は3つ以上の小葉を示しており、それぞれにおける小葉の長さと幅との間の比は好ましくは2:1以上である。よって、生成されたファイバーは、複数のファイバーにわたって実質的に同一な断面を示す。
【0013】
多葉なセルロースステープルファイバーを生成するためのプロセスが、例えばEP−A0301874に記載されている。しかし、この文献は、単にこのようなファイバーの、吸水製品(例えばタンポン)のための使用を開示するに過ぎない。
【0014】
複数の小葉状の開口を有する金型を介して紡糸液を紡績することによってセルロースステープルファイバーを製造するためのさらなるプロセスが、WO04/85720に開示されている。
【0015】
JP−A61−113812およびTreiber E., Chemiefasern 5 (1967), 344−348(”Verzug, Verstreckung und Querschnittsmodifizierung beim Viskosespinnen”)には、複数の小葉状の開口を有する金型を介して紡糸液を紡績することによるセルロース系の(無限の)フィラメントの製造が開示されている。(無限の)フィラメントの特性は、特にクリンピング特性に関して、ステープルファイバーの特性とは明らかに異なっている。
【0016】
多葉なセルロースステープルファイバーを充填材として特に有用にする特性スペクトルを、このファイバーが有していることが示され得る。特に、この種の繊維は、高い曲げ強度(flexural stiffness)、高い嵩、高い反発能および高い水分吸着能を示す。
【0017】
好ましくは、本発明に従って使用される多葉なセルロースステープルファイバーの繊度は、1.0〜30dtexであり、好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく(特に5.6〜10dtex)、特に好ましくは6.0dtexより大きい(特に6.3〜10dtex)。
【0018】
この場合において、繊度の好適な範囲は、充填材の想定の用途に依存する。衣類の充填材として使用される場合、1dtex〜5dtexの範囲での低いデシテックス、好ましくは約3dtex〜4dtexであることが有利である。繊維の適用に典型的な繊度は、約3.3dtexの範囲である。
【0019】
羽毛布団、クッションなどの充填材の分野では、5.0dtexより大きい〜10dtexの範囲の繊度が好ましい。ここで、典型的な繊度は、約6.7dtexの範囲である。
【0020】
以下のようなセルロースステープルファイバーが充填材として特に有用である:
・ファイバーの断面が3つ以上の小葉を有している
・ファイバーの繊度が、1.0〜30dtexであり、好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく(特に5.6〜10dtex)、特に好ましくは6.0dtexより大きい(特に6.3〜10dtex)
・ファイバーの湿度係数(wet modulus)が以下の式を満たす:湿度係数(cN/tex)≧0,5√T(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)
・ファイバーの正常状態(conditioned state)での引っ張り強さは以下の式を満たす:引っ張り強さ(cN/tex)≧1.3√T+2T(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)。
【0021】
この特性の組合せを有するファイバーは、当該分野においてこれまでに開示されていない。
【0022】
この多葉なセルロースステープルファイバーは、いわゆる「モーダル」繊維である。用語「モーダル繊維」は、BISFA(Bureau for the International Standardization of Man−Made−Fibers)の規定に従う一般的な名称であり、高い湿強度(wet tenacity)および高い湿度係数(すなわち、5%の湿度条件下で繊維の伸長に必要とされる力)を有するセルロースファイバーであることが理解されるべきである。
【0023】
本発明に従う多葉なセルロースステープルファイバーは、このファイバーを充填材として特に有用にする特性スペクトルを有している。特に、一般的なモーダル繊維と比較にして高い曲げ強度が意図される。例えば、繊度6.5dtexを有する一般的なモーダル繊維は0.35mN mm/texの曲げ強度を示すが、本発明に従う多様なモーダル繊維は、同一の繊度を有し、0.44mN mm/texの曲げ強度を示す。
【0024】
曲げ強度は、出願人によって開発された方法によって測定される。この測定値は、繊度に基づいて、線測定範囲に対する力の勾配の関係として示される。
【0025】
測定を実施するために、調整済み(conditioned)のファイバーが、クランピングバー(clamping bar)中に押し込まれ(clamped)、裁断機を用いて正確に5mm長に裁断される。クランピングバーは、電動ギアによって一定速度で上方へ移動される。これにより、ファイバーは、力センサに適応される小さなセンサ板上にプレスされる。ファイバーが硬いほど、測定される力はより大きい。
【0026】
測定の可能性の欠落に起因して、曲げ強度の算出に有効な力が付与されない。しかし、特定の測定範囲においてファイバーの相対的な比較を行い得る。これにより、通路にわたって測定されかつファイバーの繊度に関する力の線測定範囲において、勾配が測定される。
【0027】
本発明に従うセルロースステープルファイバーにおいて、繊維断面の面積Fと繊維断面の周辺長Uとの間の数値関係は、好ましくは1.7:1〜3.5:1である。この実施形態において、線断面の小葉は比較的密集しかつ短い。繊維の繊維断面の面積と繊維の周辺との間の数値関係は、繊維断面の微細写真からソフトウエアに基づく計算によって決定され得る。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、繊維断面の面積は、その断面中に描かれる最も大きな正三角形の面積の、2.30倍以上、好ましくは2.50倍以上、特に好ましくは2.70倍以上である。このことは、ファイバーの小葉の形態がより独特な発展をなしたかのようである。繊維断面の面積と描かれ得る最大の正三角形の面積との間の比は、WO04/85720に詳細に記載されている方法によって測定される。この比は、以下で「δ因子」とよばれる。
【0029】
本発明に従う多葉なセルロースステープルファイバーは非常に高い水分吸着能を示すことが示され得る。
【0030】
好ましくは、本発明に従うファイバーは、6.0g/gより高いSyngina吸着能を示し、好ましくは6.5g/gより高く、特に好ましくは6.8g/gより高い。
【0031】
Syngina吸着能は、WO04/85720に開示される試験法に従って算出される。
【0032】
EDANA試験法ERT350.0−02に従って吸着能が測定される場合、4.5g/g以上の値が得られる。
【0033】
セルロース系テープルファイバーの充填材としての使用について、ファイバーが滑りを増大させる物質(特にシリコーン)をその表面上に呈する場合、さらに有利である。このような物質はそれ自体公知の様式で、処理および最終工程後の紡糸浴中でのファイバーの生成の間に適用され得る。滑りを増大させる物質(特にシリコーン)の量は、ファイバー重量に基づいて0.3重量%〜3.0重量%であることが有利である。
【0034】
本発明に従う多葉なモーダル繊維は、充填材として好適であるだけではなく、1.0dtex〜5.0dtexの一般的な繊度範囲での他の繊維適用(例えば毛糸など)にもまた使用され得る。これにより、例えば膨大かつ嵩高い毛糸が生成され得る。このような毛糸は、増大したエアロック、改善した網羅面積(area coverage)、良好な水分移動および増大した断熱によって特徴付けられる。
【0035】
本発明に従うセルロースステープルファイバーはさらに、カーペットまたはカーペット一体フロア(carpeted floor)の材料として極めて有用である。この場合では、このファイバーの繊度範囲は好ましくは約6.0dtex以上である。
【0036】
葉状の断面を有していないモーダル繊維の生成についてのプロセスは、例えば、AT287.905Bから知られる。このようなプロセスを実施する場合に、もしも多葉(好ましくは3葉の開口)を有する金型が使用されれば、本発明に従う多葉なモーダル繊維が生成され得る。好ましくは、小葉の長さと幅の比が3:1より小さい開口を有する金型が使用される。
【0037】
多葉なセルロースステープルファイバー、特に本発明に従う多葉なモーダル繊維を用いることによって得られ得る充填材は、フリース、繊維ボール(fibre ball)、打綿の形態、または当業者に公知の他の形態で存在し得る。
【0038】
好ましい実施形態において、本発明に従う充填材は、本質的には、多葉なセルロースステープルファイバーからなる。
【0039】
しかし、多くの適用について、いくつかの成分(すなわち、一方で多葉なセルロースステープルファイバー、他方でさらなる材料(例えばさらなる繊維および/またはさらなる充填用成分))の使用が充填材として好適である。
【0040】
さらなる成分として使用され得る繊維は、好ましくは、合成繊維(特に、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリ乳酸繊維);天然繊維(特に綿、カポック、靱皮繊維、サイザル、絹);人工セルロース系繊維(特にビスコース繊維、モーダル繊維、リヨセル繊維);および/または動物の毛(特に羊毛、ウマの毛、ウサギ毛、ラクダの毛およびカシミア)からなる群より選択され得る。
【0041】
さらなる成分について、繊維形態ではないが、ダウンおよびフェザーからなる群より選択される材料が選択され得る。
【0042】
ポリエステル繊維および/またはダウンが本発明に従う充填材へのさらなる成分として特に好ましい。
【0043】
いくつかの成分が使用される場合、多葉なセルロースステープルファイバーは、全充填材に基づいて、好ましくは20重量%〜90重量%の量で存在する。
【0044】
いくつかの成分が充填材として使用される場合、当業者は種々のアセンブリを認識している。
【0045】
先ず、成分は、別のものと混合されていわゆる「緊密な混合物(intimate mixture)」として存在し得る。
【0046】
さらに、種々のフリース様の層を構成するアセンブリが知られている。多葉なセルロースステープルファイバー(純粋な材料として、または別の成分と混合されたものとして)が、3つのフリース様の層の少なくとも1つに使用される。
【0047】
本発明に従う充填材において、多葉なセルロースステープルファイバーはまた、修飾された形態(例えば、炎症遅延剤(例えば、Messrs.ClariantによるExolit(登録商標)5060)を含むこと、炎症遅延剤を用いて処理すること、または炎症遅延形態に修飾することによる、固有の炎症遅延剤)で使用され得る。この観点において、いわゆるセルロース/クレーナノ複合材料を形成することが有利である。ここで、このナノ複合材料のクレー成分は、修飾されていないクレーおよび修飾されたクレー(例えば、疎水性に修飾されたクレーまたは親水性に修飾されたクレー)からなる群より選択される材料を含む。このクレー成分は、好ましくはモンモリロナイトまたは修飾されたヘクトライト(hectorite)クレーもしくは修飾されていないヘクトライトクレーを含み得る。
【0048】
多葉なセルロースステープルファイバーはさらに、キトサンおよびキトサン系ポリマーからなる群より選択される化合物によって修飾され得る。特に、キトサンで繊維を被覆することによって繊維を修飾することが有利である。キトサン系ポリマーを用いてリヨセル繊維を修飾することが、WO2004/007818から公知である。
【0049】
キトサンまたはキトサン系ポリマーで多葉なセルロースステープルファイバーは、キトサンの公知の特性(すなわち、抗菌活性、創傷治癒に対する有効な効果、悪臭抑制特性および抗アレルギー性特性)を示し、これらのファイバーを充填材として特に有用にする。
【0050】
以下において、本発明は、実施例および図面によってより詳細に記載される。
【0051】
図1および2は、それぞれ実施例1〜3に従って作成された本発明に従う多葉なモーダル繊維の繊維断面を示す。
【0052】
図3は、実施例4に従って作成された多葉なモーダル繊維の繊維断面を示す。
【0053】
〔実施例〕
〔実施例1〕
R−18含量が93%のビスコースパルプを、240g/lの水酸化ナトリウムを含有する溶解用アルカリ溶液(mashing lye)を用いて、35℃で攪拌しながらアルカリ化した。パルプの添加およびスラリーの放出(discharge)を、ポンプを用いて行った。スラリーをプレスして、33%セルロースおよび17%水酸化ナトリウムを含むアルカリ化セルロースを得た。
【0054】
アルカリ化セルロースのフリースを粉砕(shred)した。このアルカリ化セルロースを30℃の温度で熟成し、その結果、硫化させる前のセルロースの銅粘度は16mPa.sであった。セルロースに基づいて38%のCSの添加によって、硫化プラント内において、塊を循環させながら硫化を28℃で2時間行った。希水酸化ナトリウム溶液でキサントゲネートを溶解し、6.1%セルロース、6.5% NaOHおよび36%CSを有するビスコースを得た。
【0055】
このビスコースを3回濾過し、そして脱気した。セルロースに基づいて3.0%の、マントル構造をもたらす変性剤(エトキシ化アミン)を、紡績の1時間前にビスコースに添加した。このビスコースを、紡績γ値57まで熟成した。紡績の間の粘度は80鋼球落下・秒(ball−fall second)であった。このビスコースを、三葉構造の孔(trilobal hole)を625個有する金型(この金型は各々72×33μmの小葉(長さ対幅の比が2.18)を3つ有している。)を介して、以下の組成を有する紡糸浴へ市販の紡績デバイス上で紡いだ:
70g/l 硫酸
90g/l 硫酸ナトリウム
55g/l 硫酸亜鉛。
【0056】
紡糸浴の温度は40℃であった。凝固しかつ部分的に再生したフィラメント鎖は青白い帯黄色であり、これを、第1のまち(G1)を超えて95℃の第2浴へ移し、G1と第2のまち(G2)との間で75%まで伸ばした。最終的なドローオフ速度は20m/分であった。
【0057】
紡績した短繊維(tow)を長さ60mmのステープルに切断し、次いで、希硫酸中で完全に再生し、その後酸を含まなくなるまで熱水で洗浄し、希アルカリ溶液で脱硫し、再度洗浄し、希次亜塩素酸ナトリウム溶液で脱色し、再度洗浄し、シリコーンエマルジョンで仕上げて、圧縮しそして乾燥した。
【0058】
このファイバーは6.8dtexの繊度を有し、以下の特性を有した:
繊維強度(正常状態) 29cN/tex
繊維強度(湿潤状態) 17cN/tex
伸長(正常状態) 16%
伸長(湿潤状態) 18%
湿度係数 3.75cN/tex/5%
Syngina値(WO04/85720に従う試験法) 7.0g/g
水分保持能 62%
繊維断面積と繊維周囲長との比 2.1:1
δ値 2.6。
【0059】
図1は実施例1に従って紡績したファイバーの繊維断面を示す。
【0060】
〔実施例2〕
R−18含量が97.5%のユーカリパルプを、220g/lの水酸化ナトリウムを含有する溶解用アルカリ溶液を用いて、50℃で攪拌しながらアルカリ化した。スラリーのさらなる処理および硫化を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。希水酸化ナトリウム溶液でキサントゲネートを溶解し、6.3%セルロース、6.2% NaOHおよび36%CSを有するビスコースを得た。
【0061】
ビスコースのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。このビスコースを、三葉構造の孔を625個有する金型(この金型は各々72×33μmの小葉(長さ対幅の比が2.18)を3つ有している。)を介して、以下の組成を有する紡糸浴へ市販の紡績デバイス上で紡いだ:
72g/l 硫酸
90g/l 硫酸ナトリウム
53g/l 硫酸亜鉛。
【0062】
紡糸浴の温度は42℃であった。紡績したフィラメントのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。
【0063】
このファイバーは7.6dtexの繊度を有し、以下の特性を有した:
繊維強度(正常状態) 30cN/tex
繊維強度(湿潤状態) 19cN/tex
伸長(正常状態) 17%
伸長(湿潤状態) 20%
湿度係数 3.5cN/tex/5%
Syngina値(WO04/85720に従う試験法) 6.8g/g
水分保持能 61%
繊維断面積と繊維周囲長との比 1.9:1
δ値 2.55。
【0064】
〔実施例3〕
R−18含量が94%のハードウッドパルプを、220g/lの水酸化ナトリウムを含有する溶解用アルカリ溶液を用いて、45℃で攪拌しながらアルカリ化した。スラリーのさらなる処理および硫化を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。希水酸化ナトリウム溶液でキサントゲネートを溶解し、5.9%セルロース、6.1% NaOHおよび36%CSを有するビスコースを得た。
【0065】
ビスコースのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。このビスコースを、三葉構造の孔を625個有する金型(この金型は各々70×30μmの小葉(長さ対幅の比が2.33)を3つ有している。)を介して、以下の組成を有する紡糸浴へ市販の紡績デバイス上で紡いだ:
68g/l 硫酸
95g/l 硫酸ナトリウム
55g/l 硫酸亜鉛。
【0066】
紡糸浴の温度は37℃であった。紡績したフィラメントのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。
【0067】
このファイバーは7.6dtexの繊度を有し、以下の特性を有した:
繊維強度(正常状態) 30cN/tex
繊維強度(湿潤状態) 19cN/tex
伸長(正常状態) 18%
伸長(湿潤状態) 20%
湿度係数 4.1cN/tex/5%
Syngina値(WO04/85720に従う試験法) 6.85g/g
水分保持能 62%
繊維断面積と繊維周囲長との比 2.5:1
δ値 2.8。
【0068】
図2は実施例3に従って紡績したファイバーの繊維断面を示す。
【0069】
〔実施例4〕
R−18含量が97.5%のユーカリパルプを、220g/lの水酸化ナトリウムを含有する溶解用アルカリ溶液を用いて、50℃で攪拌しながらアルカリ化した。スラリーのさらなる処理および硫化を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。希水酸化ナトリウム溶液でキサントゲネートを溶解し、6.1%セルロース、6.2% NaOHおよび36%CSを有するビスコースを得た。
【0070】
ビスコースのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。このビスコースを、三葉構造の孔を625個有する金型(この金型は各々70×30μmの小葉(長さ対幅の比が2.33)を3つ有している。)を介して、以下の組成を有する紡糸浴へ市販の紡績デバイス上で紡いだ:
72g/l 硫酸
95g/l 硫酸ナトリウム
53g/l 硫酸亜鉛。
【0071】
紡糸浴の温度は42℃であった。紡績したフィラメントのさらなる処理を、実施例1に記載のものと同じ様式で行った。
【0072】
このファイバーは7.6dtexの繊度を有し、以下の特性を有した:
繊維強度(正常状態) 27cN/tex
繊維強度(湿潤状態) 18cN/tex
伸長(正常状態) 10%
伸長(湿潤状態) 12%
湿度係数 6.5cN/tex/5%
Syngina値(WO04/85720に従う試験法) 6.3g/g
水分保持能 74%
繊維断面積と繊維周囲長との比 2.6:1
δ値 2.6。
【0073】
図3は実施例4に従って紡績したファイバーの繊維断面を示す。
【0074】
〔実施例5〕
実施例1に従う三葉構造のモーダルステープルファイバーを用いてフリースを生成し、羽毛布団の充填材として使用した。
【0075】
これにより、
a)実施例1に従って生成したファイバー100%のフリース
b)実施例1に従って生成したファイバー70%およびポリエステル繊維30%のフリース
c)実施例1に従って生成したファイバー50%およびポリエステル繊維50%のフリース
を生成した。
【0076】
いずれの場合も、フリースは優れたなめらかさ(evenness)を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に従う多葉なモーダル繊維の繊維断面を示す。
【図2】本発明に従う多葉なモーダル繊維の繊維断面を示す。
【図3】本発明に従う多葉なモーダル繊維の繊維断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースステープルファイバーであって、
・該ファイバーの断面は3つ以上の小葉を有し、
・該ファイバーの繊度は1.0〜30dtexであり、好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく、特に5.6〜10dtexであり、特に好ましくは6.0dtexより大きく、特に6.3〜10dtexであり、
・該ファイバーの湿度係数は以下の式:
湿度係数(cN/tex)≧0,5√T
(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)
を満たし、
・該ファイバーの正常状態での引っ張り強さは以下の式:
引っ張り強さ(cN/tex)≧1.3√T+2
(ここで、Tはdtexでのファイバーの繊度である)
を満たす
セルロースステープルファイバー。
【請求項2】
請求項1に記載のセルロースステープルファイバーであって、該ファイバーの断面積Fと該ファイバー断面の周囲長Uとの間の数値関係が好ましくは1.7:1〜3.5:1である、セルロースステープルファイバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセルロースステープルファイバーであって、該ファイバーの断面積が、この断面中に描かれ得る最大の正三角形の面積の2.30倍以上、好ましくは2.50倍以上、特に好ましくは2.70倍以上である、セルロースステープルファイバー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバーであって、該ファイバーのSyngina吸着能が、6.0g/gより高く、好ましくは6.5g/gより高く、特に好ましくは6.8g/gより高い、セルロースステープルファイバー。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバーであって、該ファイバーは、ファイバーが滑りを増大させる物質(特にシリコーン)をその表面上に呈している、セルロースステープルファイバー。
【請求項6】
キトサンおよびキトサン系ポリマーからなる群より選択される化合物によって修飾されている、請求項1〜5のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバー。
【請求項7】
炎症遅延剤、好ましくは疎水性に修飾されたクレーまたは親水性に修飾されたクレーによって修飾されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバー。
【請求項8】
充填材としての、セルロースステープルファイバーの使用。
【請求項9】
羽毛布団、クッション、枕、マットレス、張り椅子用のフリース、衣類などの充填材としての、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記セルロースステープルファイバーの繊度は1.0〜30dtexであり、好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく、特に5.6〜10dtexであり、特に好ましくは6.0dtexより大きく、特に6.3〜10dtexである、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
前記セルロースステープルファイバーが、キトサンおよびキトサン系ポリマーからなる群より選択される化合物によって修飾されている、請求項8〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記セルロースステープルファイバーが、炎症遅延剤、好ましくは疎水性に修飾されたクレーまたは親水性に修飾されたクレーによって修飾されている、請求項8〜11のいずれか1つに記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバーが使用されている、請求項8〜12のいずれか1つに記載の使用。
【請求項14】
羽毛布団、クッション、枕、マットレス、張り椅子用のフリース、衣類などのための充填材であって、セルロースステープルファイバーを含んでいる、充填材。
【請求項15】
前記セルロースステープルファイバーの繊度は1.0〜30dtexであり、好ましくは3.0dtexより大きく、より好ましくは5.0dtexより大きく、特に5.6〜10dtexであり、特に好ましくは6.0dtexより大きく、特に6.3〜10dtexである、請求項14に記載の充填材。
【請求項16】
前記セルロースステープルファイバーが、キトサンおよびキトサン系ポリマーからなる群より選択される化合物によって修飾されている、請求項14または15に記載の充填材。
【請求項17】
前記セルロースステープルファイバーが、炎症遅延剤、好ましくは疎水性に修飾されたクレーまたは親水性に修飾されたクレーによって修飾されている、請求項14〜16のいずれか1つに記載の充填材。
【請求項18】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のセルロースステープルファイバーが使用されている、請求項14〜17のいずれか1つに記載の充填材。
【請求項19】
特にフリースの形態において、実質的に前記セルロースステープルファイバーから構成される、請求項14〜18のいずれか1つに記載の充填材。
【請求項20】
さらなる繊維および/またはさらなる充填用成分をさらに含んでいる、請求項14〜18のいずれか1つに記載の充填材。
【請求項21】
前記さらなる繊維および/または前記さらなる充填用成分が、合成繊維(特に、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリ乳酸繊維);天然繊維(特に綿、カポック、靱皮繊維、サイザル、絹);人工セルロース系繊維(特にビスコース繊維、モーダル繊維、リヨセル繊維);および/または動物の毛(特に羊毛、ウマの毛、ウサギ毛、ラクダの毛およびカシミア)からなる群より選択され得る、請求項20に記載の充填材。
【請求項22】
前記さらなる充填用成分が、ダウンおよびフェザーからなる群より選択される材料が選択される、請求項20または21に記載の充填材。
【請求項23】
繊維ボールの形態である、請求項14〜22のいずれか1つに記載の充填材。
【請求項24】
種々のフリース様の層から構成され、該層の少なくとも1つが、前記多葉なセルロースステープルファイバーを含んでいる、請求項14〜22のいずれか1つに記載の充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−523258(P2008−523258A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544683(P2007−544683)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000493
【国際公開番号】WO2006/060835
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(594191087)レンツィング・アクチエンゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Lenzing AG
【住所又は居所原語表記】Werkstrasse 2 4860 Lenzing Austria
【Fターム(参考)】