説明

セルロース前駆体を炭化することにより炭素の繊維テクスチャーを得ること

【解決手段】 セルロース前駆体から炭素の繊維テクスチャーを得る方法は:
・粘性溶液またはセルロース溶液でセルロースフィラメント(12)を紡糸すること;
・前記セルロースフィラメントを水(21)の洗浄に供すること;
・洗浄、非乾燥セルロースフィラメントを少なくとも1つの有機ケイ素添加物のエマルジョン水(41)で含浸すること;
・含浸セルロースフィラメントを乾燥すること;
・含浸、乾燥セルロースフィラメントからなる繊維テクスチャーを得ること;および
・炭化の前に含浸、乾燥セルロースフィラメントからなる繊維テクスチャーを得ること
粉工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース前駆体を炭化することによって炭素繊維テクスチャーを得ることに関する。
【発明の開示】
【0002】
“繊維テクスチャー”は、ここでヤーン、平行に延ばしたフィラメントまたはヤーンから作られる単一方向のシートおよび織り、編み込みまたは撚り込むかによって得られるような二次元(2D)または三次元(3D)繊維シートのような種々の型のテクスチャーを設計するのに用いられる。
【0003】
それらの低熱伝導率の理由で、セルロース前駆体炭素繊維は特にアブレーション材料、典型的にノズルおよび/またはロケットエンジンの燃焼チャンバー用内壁ライニング、を製造するために用いられる。用語“アブレーション材料”は操作において高温でガス流に曝されることによって漸進的に侵食される材料を意味するために用いられる。セルロース前駆体炭素繊維の他の適用は存在し、または予想することができる。
【0004】
近年まで、使用されるセルロース前駆体は著しい機械的特性を持つ炭素繊維を得ることを可能にした。典型的に、調達される炭素繊維は約600メガパスカル(MPa)の牽引での破壊強さおよび約40ギガパスカル(GPa)のヤングモジュラスを持っていた。また、そのような炭素繊維のコストは高く、特にポリアクリロニトリル前駆体で得られる高強度炭素繊維のコストより10〜15倍であった。
【0005】
US特許出願No.2002/0182138,No.2002/0182139およびUSP No.6,967,014、ここに引用して取り込まれる内容、に述べられている方法は、比較的に低コストのセルロース前駆体から強化タイヤに用いられているレイヨンのような工業的に市販されている種類の炭素繊維を得ることを可能にし、かつセルロース前駆体炭素繊維の機械的特性を改良することを可能にする。典型的に、少なくとも1200MPaの牽引での破壊強さおよび約40GPaまたはかなりそれ以上のヤングモジュラスは得ることができる。
【0006】
これら公知の方法は、炭化前にパークロロエチレンのような有機溶媒中の有機ケイ素の溶液で前駆体繊維を含浸することからなる。使用される前記セルロース前駆体は、繊維が油で被覆される、その油はヤーンの生産の間にヤーンが特に紡績に供される繊維操作を促進するように置かれる、ヤーンまたは織られた布である。有機ケイ素添加物で含浸する前に油を除去するかまたは仕上げすることが必要または少なくとも好ましい。テトラクロロエチレン型の溶媒のような有機溶媒を用いる洗浄によってなされる。油を除去するかまたは有機ケイ素を溶解するために用いられる溶媒は、環境問題を起こし、かつそれらは再利用するためにコストが費やす。
【0007】
本発明の目的および概要
本発明の目的は、それらの欠点に対処するためであり、この目的のために本発明はセルロース前駆体から炭素の繊維セクスチャーを得る方法を提供し、その方法は:
・粘性溶液またはセルロース溶液でセルロースフィラメントを紡糸すること;
・前記セルロースフィラメントを水の洗浄に供すること;
・洗浄、非乾燥セルロースフィラメントを少なくとも1つの有機ケイ素添加物のエマルジョン水で含浸すること;
・含浸セルロースフィラメントを乾燥すること;
・含浸、乾燥セルロースフィラメントからなる繊維テクスチャーを得ること;および
・炭化容器を連続的に通過することによって前記繊維テクスチャーを炭化すること
からなる工程を含むことに注目すべきである。
【0008】
本発明の主要な有益さは、有機ケイ素添加物を水媒体に使用することを可能にし、それによって使用が前述の困難さを惹起する有機溶媒を必要しなくなる。出願人は、エマルジョン水中の有機ケイ素添加物が紡糸後で乾燥前に乾燥ビスコースフィラメント上より洗浄したビスコースのフィラメント上に非常に均一な状態で堆積できることを見出した。
【0009】
本発明の一つの典型例において、少なくとも1つのヤーンまたは単一方向の繊維シートが得られ、それは含浸、乾燥セルロースフィラメントからなり、かつ前記ヤーンまたは単一方向の繊維シートは張力下で炭化される。張力下での炭化の結果として、機械的特性の非常に本質的な改良が実現できる。また、その望ましくない変形を回避するために炭化布に課される制約はヤーンまたは単一方向の繊維シートを炭化するときに存在せず、それによって炭化により適する温度特性を使用できる。
【0010】
本発明の別の典型例において、二次元(2D)または三次元(3D)繊維テクスチャーが得られ、それは含浸、乾燥セルロースフィラメントからなり、かつそのテクスチャーは炭化される。炭化は、張力下で遂行されてもよい。
【0011】
エマルジョン水は、5重量%〜50重量%の有機ケイ素添加物を含んでもよい。
【0012】
エマルジョン水によって含浸した後乾燥前に、前記フィラメントは乾燥フィラメントの10重量%〜50重量%の範囲にある液体量を有するように圧搾されてもよい。
【0013】
有益には、乾燥後に前記フィラメントに存在される有機ケイ素添加物量はフィラメントの総重量を基準にして約1.5重量%〜約15重量%の範囲である。
【0014】
ヤーンは、炭化前に複数の含浸、乾燥フィラメントを撚ることによって形成されてもよい。
【0015】
単一方向の繊維シートは、炭化前に、本質的に互いに平行に配列された複数の含浸、乾燥フィラメント、または含浸、乾燥フィラメントで形成され、かつ本質的に互いに平行に配列された複数のヤーンで形成されてもよい。
【0016】
2Dまたは3D繊維テクスチャーは炭化前に、含浸、乾燥フィラメントを織る、編むまたは撚り合わせることによって得てもよい。
【0017】
炭化前に、空気中での緩和または安定化の段階が200℃以下、好ましくは160℃〜190℃の範囲にある温度で遂行できる。
【0018】
有益には、炭化工程は緩慢な熱分解の段階、これに続く高温での最終炭化を含む。
【0019】
緩慢な熱分解の段階の間に、温度は360℃〜750℃の範囲にある値まで漸進的に上昇される。
【0020】
ヤーンまたは単一方向のシートを炭化する場合、張力は熱分解後の長手寸法の変化が−30%〜+40%の範囲になるように加えてもよい。
【0021】
2Dまたは3D繊維テクスチャーを炭化する場合、加えられる張力および選択される温度特性は文献WO 01/42543に開示されるようにしてもよく、それによって均衡した機械的および熱的特性が保持される。2Dまたは3D繊維構造にも本質的に張力を加えることができ、それによってよこ糸およびたて糸方向で異なる特性が得られる。
【0022】
最終炭化段階は、1000℃〜2800℃の範囲にある高温での熱処理によって遂行される。
【0023】
繊維テクスチャーがヤーンまたは単一方向の繊維シートの形態の場合、張力は最大200%の長手方向に伸長を得るようにこの最終炭化段階の間に前記繊維テクスチャーに加えられてもよい。1200MPa以上、ことによると2500MPaと同様な高さの牽引での破壊強度を有し、かつ40GPa以上、ことによると350GPaと同様な高さであるヤングモジュラスを有する。
【0024】
繊維テクスチャーが2Dまたは3Dテクスチャーである場合、最終炭化段階は文献WO 01/42543に開示されているのと同様になされてもよく、または本質的に張力下でなされてもよい。
【0025】
最終炭化段階が少なくとも2500℃の温度で、かつ好ましくは100%に等しい伸長でなされた場合、さらに次の熱処理は繊維テクスチャーの炭素繊維で炭素ウィスカーを発達させることを引き起こすために、2500℃以上の温度でかつ少なくとも15分間、好ましくは少なくとも30分間なされてもよい。
【0026】
本発明は、限定されない指摘によって挙げられる以下の説明を読み、かつ図面を参照してより理解されるであろう。
【0027】
本発明の実施の概要
図1の方法の第1工程10は、ビスコースまたはセルロースの溶液で複数のフィラメントを紡糸することからなる。有益には、前記ビスコースはレイヨンヤーンを作るために用いられ、かつテキスタイル産業または強化タイヤで一般に普及した使用であるそれら、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%のα−セルロース量を含むビスコース、と同タイプである。セルロース溶液は、n−メチルモルホリン酸化物型の溶媒中のセルロースのようで用いられてもよい。
【0028】
セルロース紡糸はよく知られている。紡糸口金11(図2)を委ねたときに、ヤーン12が得られ、複数のフィラメント、典型的には数百フィラメント、例えば1000からなり、それによって1Kフィラメントビスコースヤーンを形成する。
【0029】
ヤーン12は、デフレクターロール22,42間のヤーン経路上でノズル21を通して水を噴射することによって洗浄される(工程20)。
【0030】
前記ロール22,42間で、ヤーンはひきつづく懸濁水の有機ケイ素でそれに含浸する前に、その水量を減少させるためにロール31,32間を通過することによって任意に圧搾されてもよい(工程30)。圧搾が実行されると、ヤーンの乾燥重量の10%〜75%の範囲にある水量が得られるようになる。
【0031】
洗浄、非乾燥ヤーンは、浴41を通過することによってエマルジョン水の有機ケイ素添加物で含浸される(工程40)。良好な機械的特性を持つ炭素ヤーンを得るために次のビスコースの炭化を増大させる種々の有機ケイ素添加物は、出願人の名前の前記引用文献US 2002/0182138およびUS 2002/0182139に述べられている。したがって、有機ケイ素は次の群から選ばれるポリシランであってもよい。
【0032】
・環状、直鎖または分岐鎖で、かつメチル基および/またはフェニル基によって置換され、250〜10000の範囲、有益には2500〜5000の範囲の数平均分子量であるポリヒドロシロキサン;および
・架橋、環状、直鎖または分岐鎖であり、250〜10000の範囲の数平均分子量を存在し、式SiO4(Q4モチーフと称す)のモチーフおよび式SiOXY(OR’)Zのモチーフ、ここで
・x、y、およびzはx+y+z=4および1≦x≦3,0≦y≦3,0≦z≦3のような数である;
・Rは水素または直鎖もしくは分岐鎖であり、1〜10の炭素原子を有するアルキル基を表し、y≧2の場合、同じモチーフで異なるRを有することができる;および
・R’はRとは無関係で、水素、または直鎖もしくは分岐鎖であり、1〜10炭素原子を有するアルキル基を表し、z≧2の場合、同じモチーフで異なるR’を有することができる;
によって置換されるオリゴマーおよび樹脂;
・前記式SiOXY(OR’)Zでzはゼロに近似的に等しいにて1000以下の数平均分子量を表すオリゴマー;および
・前記式SiOXY(OR’)Zでyはゼロに近似的に等しいにて2000以上の数平均分子量を表す樹脂
であることがわかる。
【0033】
特に、有機ケイ素化合物は式SiO4(Q4モチーフと称す)のモチーフ、式SiO3−OH(Q3モチーフと称す)のモチーフ、および式O−Si−R3(Mモチーフを称す)のモチーフ、有益にはn1によって置換されるQ4モチーフ、n2によって置換されるQ3モチーフ、n3によって置換されるMモチーフ、ここで2≦n1≦70,3≦n2≦50,3≦n3≦50、2500〜5000の範囲にある数平均分子量を表す、からなるシロキサン樹脂でもよい。
【0034】
有機ケイ素化合物は、また部分水素化有機シリケートのオリゴマーから選択され、有益には部分水素化アルキルシリケートのオリゴマーから選択され、好ましくは部分水素化エチルシリケートのオリゴマーから選択されてもよい。
【0035】
典型的には、有機ケイ素添加物の量は懸濁水の重量の5%〜50%である。
【0036】
セルロースの脱水を促進するための無機化合物は炭素率を増加するために併合できることに気付くべきである。そのような化合物は、ルイス塩基または酸、例えばアンモニウム燐酸または塩化物である。そのような目的は、塩酸(HCl)の雰囲気下の緩和を引き続き進行することによってなすことができる。
【0037】
浴41に委ねたときに、含浸ヤーンは圧搾ロール51,52間を通過することによって圧搾される(工程50)。これらは、液体量をヤーンの乾燥重量の10%〜50%の範囲にある値まで減少するために配置される。
【0038】
圧搾後、含浸ヤーンは加熱ロール61,62に亘って1回以上通過することによって乾燥される(工程60)。
【0039】
乾燥後、有機ケイ素添加物量はヤーン上に乾燥ヤーンの総重量を基準にして1.5重量%〜15重量%の範囲で存在する。
【0040】
含浸、乾燥ヤーン12は、それから撚り装置に取り込み、撚りヤーン72を形成する(工程70)。ヤーン12はメータ当たり20曲がり目(tpm)〜100tpmの割合で撚ることができる。撚りヤーンの大きな重量は、ヤーン12のような複数のヤーンと共に撚ることによってまた得ることができる。
【0041】
もたらされるヤーン72は、リール81に捲回されることによって貯蔵される(工程80)。
【0042】
緩和および熱分解(工程90および100)の目的のために、ヤーンはリール81から引き出され、かつ緩和用空気のトンネル炉91および窒素の熱分解トンネル炉93の順に挿入される。緩和段階の間に、フィラメントの内部応力は除去されるか、または少なくとも非常に漸減し、ヤーンの安定性をもたらす。ヤーン72は、複数の段階で温度を上昇することによって緩慢な熱分解に供される。次のことを請け負うことができる:
a)ヤーンを炉91中の空気、200℃以下の値、好ましくは160℃〜190℃の範囲にある温度上昇で、かつヤーンが0.5時間〜2時間の範囲にある期間この温度で維持される、緩和の第1段階;および
b)例えば
・炉93を通り抜けた後、200℃〜300℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・240℃〜350℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・240℃〜350℃の範囲にある温度での工程;
・300℃〜400℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・330℃〜450℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・340℃〜500℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・350℃〜550℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
・炉93の放置する前に、360℃〜750℃の範囲にある値まで温度を上昇する工程;
を含む緩慢な熱分解の第2段階。
【0043】
そのような温度特性は、それ自身新規ではないことを気付くべきである。参照は、R. Baconによる“炭素繊維レイヨン前駆体”、炭素の化学および物理 Walker Thrower Editions Marcel Dekker, Vol. 9の文献を挙げることができる。
【0044】
炉93は、ヤーンが順に通過する複数の区域に細分化されている。各区域の温度は、温度センサ(図示せず)により配信される情報の働きで電気ヒータ抵抗素子(94のような)に出力することによって制御される。密閉箱は、炉の入口および出口に供されてもよい。この炉は、炭化のガス副生物を排気するためのダクト95および窒素のような不活性掃引ガスを炉に供給するためのダクト96が存在してもよい。
【0045】
炉の区域数およびその温度は、予め確立された温度上昇特性に従うように選択され、緩慢な熱分解の間の工程の数は8以外にでき、かつ特に炉の区域の数を限定するように連続の工程を組み合わせることによって8より少なくできることに気が付く。
【0046】
炉93を通る総通過時間は、例えば10分間〜2時間30分間の範囲であってもよい。
【0047】
有益には、ヤーン72の緩慢な熱分解は張力下で遂行される。この目的のために、ヤーン72は2つの駆動ロール97a,97bの間を上流から炉91の入口に向けて通過し、かつもたらされた炭素ヤーン92は2つの駆動ロール98a,98bの間を上流から炉91の出口に向けて通過する。駆動ロールの速度は、いかなる滑りを回避しながら、望ましい伸長を得るように選択される。
【0048】
束縛のない状態での熱分解の間に、ヤーンはその初期寸法の30%〜40%の大きい面積収縮の課題がある。牽引は、少なくとも一部で長さ方向の収縮を打ち消すことによって、収縮を完全に打ち消すことでさえ、ヤーンに対して作用され、かつヤーンを初期状態から長くすることを可能にする。緩慢な熱分解の間のヤーンの長さ寸法の変化は、−30%〜+40%の範囲にあり、これは上流ロール97a,97bを基準にして下流ロール98a,98bの異なる制御によって得られる。
【0049】
ヤーン92は、熱分解と連続して、またはことによるとリール上での中間貯蔵の後に、高温で最終炭化処理に供される(工程110)。処理は、1200℃〜2800℃の範囲にある温度、数分で炭化炉にて遂行され、ヤーンを伸長する、ここでヤーンの伸長は例えば0%〜200%の範囲にある、ことを随伴してもよい。これは炭素ヤーンを構成する。2500℃以上、炭素繊維クリープ、において炭素が僅かに組織化を存在するので、炭素ヤーンは特に容易ではない。炭素格子の履歴は、したがって削除され、かつクリープがグラファイト面の再組織化を殆ど完全に導く。高温処理は、不活性雰囲気下、例えば窒素下で遂行される。
【0050】
ヤーンを伸長することが望ましいならば、一対の駆動ロール113,114間を上流から炉の入口に、一対の駆動ロール間を下流から炉の出口に、通過することを引き起こし、前記上流および下流ロールは望ましい伸長の目的から異なる回転速度で駆動する。
【0051】
もたらされるヤーンは、次の使用のためにリール121に貯蔵される(工程120)。
【0052】
ヤーン72を炭化することの最適な条件を選択するための能力および張力下での炭化を履行する事実は高い機械的特性、すなわち1200MPa〜2500MPaの範囲にある牽引破壊強度および40GPa〜350GPaの範囲にあるヤングモジュラスを有する炭素ヤーンを得ることを可能にすることを気付くべきである。
【0053】
また、2500℃以上の温度、好ましくは少なくとも100%の等しい伸長下で最終炭化処理に供されたヤーンの繊維は、黒鉛化可能になるのみならず、2500℃以上の温度、≧15分間、好ましくは≧30分間の期間なされる次の加熱処理の間に内部炭素ウィスカーを発達する。そのような次の加熱処理はバッチで遂行されてもよい。図4は、2800℃、2分間、連続処理中に200%の伸長下にて加熱処理に供され、ひきつづき2800℃、約1時間バッチ処理でさらに加熱処理によるセルロース前駆体の炭素繊維の発達されたそのようなウィスカーを示す。
【0054】
前述の説明はヤーンの炭化に関するが、本発明は単一方向のシートを形成すること、炭化することに適用可能である。そのようなシートは、本質的に互いに平行に配置されたフィラメントまたはヤーン、各ヤーンはそれ自身複数のフィラメントからなる、により構成されてもよい。したがって、シートはそれにつづく連続炭化のために複数のヤーン72から形成されてもよい。
【0055】
例1
“スーパー2”型レイヨンヤーンは、紡糸口金の出口で1000フィラメントを束ねることによって形成した。このヤーンは、水で洗浄した。非圧搾、非乾燥ヤーンは、水60重量%と、製造業者ローディアシリコンからRhodorsil EMUL 55(シリコンを基材とする)およびRhodorsil EMUL 1803として販売されるエマルジョンの等しい材料の混合物40重量%とから構成されるエマルジョン水の浴を通過することによって含浸した。このヤーンは、圧搾し、それから撚りヤーンを得るための撚り装置に取り込む前に120℃の加熱ロールを通過させることにより乾燥した。有機ケイ素添加物量はヤーンの総重量を基準として約5重量%であった。
【0056】
そのような方法で得られたヤーンは、空気の炉に180℃、90分間連続的に通過することによって緩和し、それから窒素雰囲気の熱分解炉を連続的に通過させることによって熱分解した。熱分解炉は、約同長さで、210℃、250℃、280℃、310℃および370℃にそれぞれセットされた温度を持つ6区域に細分化されていた。ヤーンは、約1時間、熱分解炉に置いた。緩和および熱分解の間に、ヤーンは空気雰囲気の炉に入れた初期状態を基準にして熱分解炉の出口で10%の伸長を存在するように、出口速度を入口速度の10%高くして引き出す張力に供した。ヤーンは、つづいて伸長することなく炭化炉に連続的に通過させることによって高温度で炭化した。
【0057】
下記表1は、熱分解炉の異なる温度に対する炭素モノフィラメントを測定した牽引破壊強度およびヤングモジュラスの値を表示した。
【表1】

【0058】
例2(比較)
例1と同様に1000フィラメントを束ねることによって得られたレイヨンヤーンは、洗浄後に乾燥し、エマルジョンによる含浸をせずに繊維注油に供し、それにより取り扱いに適するヤーンにした。注油後に、ヤーンは熱的に緩和し、かつ張力を加えずに例1のように同じ温度履歴を適用することによって熱分解(収縮なしで熱分解)した。熱分解ヤーンは、つづいて伸長せずに1200℃で炭化した。
【0059】
炭素モノフィラメントの測定は、580MPaの牽引破壊強度、38GPaのヤングモジュラスおよび1.5%の牽引で破壊伸長を表示した。
【0060】
例3(比較)
手順は、注油ヤーンが熱的緩和および熱分解前にテトラクロロエチレンの溶液中の、フランス製造業者ローディオによって資料RTV121として提供される有機ケイ素添加物で含浸した以外、例2と同様であった。含浸は、有機ケイ素の量をヤーンに乾燥ヤーン重量の3%存在するようになされた。
【0061】
測定が炭素モノフィラメントに実行され、1125MPaの牽引破壊強度、40GPaのヤングモジュラスおよび2.8%の牽引で破壊伸長を表示した。
【0062】
前記例は、非常に十分な改良が有機ケイ素組成物での含浸を含まない方法(例2)と比較したとき、本発明を履行することによって炭素繊維の機械的特性が得られることを示す。
【0063】
多少の改良は、また説明の序文で述べられた技術状態と同様な、レイヨンヤーンを乾燥した後遂行されるそのような含浸を含む方法(例3)との比較で気が付く。この改良は、環境および再利用に関して主要な問題を惹起するテトラクロロエチレン型溶媒を頼るのを回避することの明白な有益さによって随伴される。
【0064】
図5に示すような本発明に係る方法の別の典型例において、含浸、乾燥ヤーンは図1の参照で前述した同様な工程10〜80を遂行することによって得られ、貯蔵される。
【0065】
そのようなヤーンは織り、編み込みまたは撚り込む(工程130)かによって2Dまたは3D繊維テクスチャー、例えば2D織り布、を得るために用いられる。
【0066】
含浸、乾燥セルロース繊維で形成されたヤーンで作られる繊維テクスチャーは緩和(工程140)および熱分解(工程150)の工程に順次供される。
【0067】
繊維構造の緩和および熱分解は、ヤーンに対して前述した、すなわち空気中、200度以下の温度、好ましくは160℃〜190℃の範囲での緩和、およびある場合張力なしまたはより平衡な織物を得るために繊維テクスチャーに加えられる適度な張力のみおよび第2の場合、非平衡織物を得るために長手方向で織物を初期状態より長くすることをもたらす張力で、温度が360℃〜750℃の範囲にある値に漸進的に上昇される間の緩慢な熱分解、ように遂行できる。
【0068】
緩和および熱分解は、繊維テクスチャーをUS特許第6967014に述べられているように空気条件の緩和用容器および窒素条件の熱分解用トンネル炉を連続的に運ぶことによって遂行できる。次の緩和、熱分解は:
−布の温度を250℃〜350℃の範囲にある値をもたらすための初期段階、初期段階は10℃/分〜60℃/分の範囲にある第1平均速度での温度上昇を含み;
−布の温度を350℃〜500℃の範囲にある値に上昇するための中間段階、この中間段階は前記第1平均速度より低く、かつ2℃/分〜10℃/分の範囲にある第2平均速度での温度上昇を含み;
−布の温度を500℃〜750℃の範囲にある値に上昇するための最終段階、この最終段階は前記第2平均速度より速く、かつ5℃/分〜40℃/分の範囲にある第3平均速度での温度上昇を含み、
を含む。
【0069】
熱分解につづいて、高温での加熱処理により最終炭化は繊維テクスチャーが伸長に供しない以外、図1の工程110と同様に1200℃〜2800℃の範囲にある温度(工程160)で熱分解炉にて遂行することができる。
【0070】
もたらされた炭素繊維テクスチャーは次の使用のために貯蔵される(工程170)。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る方法の一形態での連続工程を示すフロー図。
【図2】炭化前にビスコースフィラメントの初期処理を示す高度な図。
【図3】予備処理ビスコースフィラメントからなるヤーンの連続炭化を示す高度な図。
【図4】セルロース前駆体から得られ、かつ伸長下で高温炭化処理を受け、その後さらに高い温度処理が続く炭素繊維を示す顕微鏡写真。
【図5】本発明に係る方法の他の形態での連続工程を示すフロー図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース前駆体から炭素の繊維テクスチャーを得る方法であって、工程:
・粘性溶液またはセルロース溶液でセルロースフィラメントを紡糸すること;
・前記セルロースフィラメントを水の洗浄に供すること;
・洗浄、非乾燥セルロースフィラメントを少なくとも1つの有機ケイ素添加物のエマルジョン水で含浸すること;
・含浸セルロースフィラメントを乾燥すること;
・含浸、乾燥セルロースフィラメントからなる繊維テクスチャーを得ること;および
・前記繊維テクスチャーを炭化すること
を含む方法。
【請求項2】
前記エマルジョン水は、5〜50重量%の有機ケイ素添加物を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エマルジョン水による含浸後、乾燥前に前記フィラメントは乾燥フィラメントの10〜50重量%の範囲にある水量を得るように圧搾される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機ケイ素添加物量は、乾燥後のフィラメントの総重量を基準にして1.5〜15重量%の範囲にある請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
乾燥後炭化前に、ヤーンは複数の含浸、乾燥フィラメントを撚ることによって形成される請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
乾燥後炭化前に、本質的に互いに平行に配置される複数の含浸、乾燥フィラメントを含む単一方向の繊維シートが形成される請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項7】
炭化の前に、本質的に互いに平行に配置される複数のヤーンを含む単一方向のシートが形成される請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記炭化は、温度が360℃〜750℃の範囲にある値まで漸進的に上昇する間、緩慢な熱分解の段階を含む請求項6〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
緩慢な熱分解の間に、張力は熱分解後の長手寸法の変化が−30%〜+40%の範囲になるように前記ヤーンまたは前記単一方向のシートに加えられる請求項8記載の方法。
【請求項10】
炭化の前に、二次元または三次元繊維テクスチャーは含浸されかつ乾燥されたフィラメントから形成されたヤーンを織る、編むまたは撚り合わせることによって形成される請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記炭化は、温度が360℃〜750℃の範囲にある値まで漸進的に上昇する間、緩慢な熱分解の段階を含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
緩慢な熱分解段階の後に、最終炭化の段階は1200℃〜2800℃の範囲にある高温度での熱処理によってなされる請求項8,9または11記載の方法。
【請求項13】
高温最終炭化の段階の間に、張力は長手方向に200%以下の伸長を得るように前記繊維テクスチャーに加えられる請求項12記載の方法。
【請求項14】
2500℃より高い温度での最終炭化段階につづいて、繊維テクスチャーは2500℃より高い温度で少なくとも15分間の継続時間にてさらに熱処理に供され、前記ヤーンまたは単一方向のシートの炭素繊維内でウィスカーの発達を引き起こす請求項12記載の方法。
【請求項15】
緩慢な熱分解の前に、緩和段階が200℃より低い温度で空気中にてなされる請求項8,9または11いずれか記載の方法。
【請求項16】
前記緩和段階は160℃〜190℃の範囲にある温度でなされる請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−523261(P2008−523261A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544902(P2007−544902)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056524
【国際公開番号】WO2006/061386
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】