説明

センサデータ伝送システム

【課題】校正データなどを任意の伝送器に転送可能なセンサデータ伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B2)と、前記センサ(A1)とセンサ(A2)を接続するディジタル信号伝送線を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデータ伝送システムに関し、詳しくは現場に配置された計測機器に校正データを含む情報を伝送するためのセンサデータ伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
計測機器は、電圧・電流・抵抗・周波数・温度・圧力・などの各種の物理量を測定するために、製造メーカーや各種研究機関や官公庁など、多方面で広く用いられている。
これらの計測機器の測定性能は、一般的には時間の経過に伴なって所定の設計仕様範囲から外れる方向に低下していく。
【0003】
そこで、個々の計測機器の現在の性能が所定の設計仕様範囲内に収まっているか否かを確認するために、それぞれの国家基準値に基づき値付けされた各種の標準機器による定期的な校正作業が行われている。
【0004】
図4(a,b)は計測機器(例えばpH計・・・以下センサという)1で測定した測定対象(図示省略)のデータをコネクタ2を介して伝送器3に送っている状態を示している。
ここで図4(a)で示すものはセンサ1からのアナログ信号をそのまま伝送器3に送っており、図4(b)で示すものはセンサ1からのアナログ信号をセンサ1内に組込まれたA/D変換器でディジタル信号に変換し、そのデータを伝送器3にディジタル信号として転送している。また、メモリを併せ持っており、そのメモリには各種の情報を保存することが可能である。
【0005】
図5は図4(b)で示すセンサを複数個現場に配置し、校正が必要になったセンサを交換するための伝送システムを示すものである。校正に際しては先に述べたように国家基準値に基づいた標準機器を使用する必要があり、現場でのセンサの校正は校正機器の持ち運びや機器の設置スペースの問題がある。
【0006】
そのため図5に示すように、
(イ)交換すべきセンサ(a1)と同等のセンサ(a2)を校正設備の整った試験室で校正する。
(ロ)校正して得られたデータをセンサ(a2)内のメモリに書き込む。
(ハ)校正済みセンサ(a2)を現場の保守対象のセンサ(a1)と交換する。
(ニ)コネクタ接続後、センサ(a2)のメモリ内のデータを伝送器(b1)に自動で書き込む。
【0007】
以上の操作により、現場での校正作業を減らすことができる。
この場合、現場の伝送器(b1)と試験室内の伝送器(b2)は制御レベルのネットワークで接続されておらず、独立した状態にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−064643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、図4(b)に示すセンサおよび図5に示す伝送システムを用いれば、センサの校正を試験室で行い、現場ではセンサの交換を行なうのみで保守作業を終了することができる。
図4(b)のセンサを用いたシステムは、設置環境条件の悪い場所において、保守作業時間を短縮できる利点がある。一方、以下の問題点がある。
【0010】
(a)コスト
イ)センサとメモリおよびA/D変換器は一体であるため、センサ全体のコストが高くなる。
ロ)センサ寿命でセンサを破棄する場合は、メモリおよびA/D変換器も破棄しなければならない。そのため、不経済である。
ハ)メモリなどいくつかの機能は、センサ側と伝送器側に重複して搭載されている。
【0011】
(b)耐環境性
イ)センサ内のメモリおよびA/D変換器は、プロセスに非常に近いため、設置環境の影響を受けやすい。特に、熱環境の影響を受けやすく、精度や寿命の悪化が顕著となる。
【0012】
(c)独自規格
イ)図4(a)に示すセンサでは、たとえばpHセンサと伝送器は異なるメーカ間でも接続が可能である。一方、図4(b)に示すセンサは、ディジタル伝送が独自規格であるため、異なるメーカ間の接続が不可能である。この点で、図4(b)に示すセンサはユーザの利便性が悪い。
【0013】
(d)判別性
イ)情報がセンサ内のメモリにあるため、一見しただけではセンサの持つ情報がわからない。種類が多く、多様な履歴を持つpHセンサを扱っている場合は、誤ったセンサに交換する危険性がある。
【0014】
したがって本発明は、センサの校正を試験室で実施できる利便性を残しながら、上述の問題を解決したものである。具体的には、図4(a)に示す従来の汎用センサ・伝送器を用い、校正データなどを任意の伝送器に転送可能なセンサデータ伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、請求項1記載のセンサデータ伝送システムの発明においては、
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B2)と、前記伝送器(B1)と伝送器(B2)を接続するディジタル信号伝送線を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2においては、
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたA/D変換器と、このA/Dに接続されたPC(演算装置)と、このPCと前記伝送器(B1)を接続したことを特徴とする。
請求項3においては、
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B2)と、この伝送器(B2)に記憶された校正データを含む情報を書込む書込み手段と、を備え、この書込み手段に書込まれたデータを前記伝送器(B1)に入力するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
現場と試験室に伝送器を設置して、校正データを含む情報をディジタル伝送により現場の伝送器に送信するようにしたので、センサ自身に校正を含む情報を持つ回路が不要なので、コストを低減することができる。
【0018】
センサとともにメモリおよびA/D変換器を破棄する必要がなく、地球環境保護の観点で優れている。
回路が不要なので、耐環境性能、特に熱環境による寿命への影響がない。
たとえばpHセンサと伝送器は異なるメーカ間でも接続が可能である。したがって、汎用性、利便性が高い。
【0019】
請求項2によれば、汎用のPCを用いて校正を含む情報を現場の伝送器に伝送するので、試験室側の伝送器が不要となる。
請求項3によれば、校正を含む情報を書込んだラベルプリンタ等を用いて出力し情報を持ち運びするので、伝送線が不要となり、書込み手段に文字情報としてタグNoを付加すれば複数の保守対象センサを取り違えることなく扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態の一例を示すセンサデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図2】他の実施例を示すセンサデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図3】他の実施例を示すセンサデータ伝送システムの構成を示す図である。
【図4】センサ単体の構成を示す図である。
【図5】従来のセンサデータ伝送システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態の一例を示すセンサデータ伝送システムの構成図である。本実施例においてはセンサとして従来例で説明した図4(a)に示す汎用の(A/D変換器を内蔵しない)ものを使用する。
【0022】
図1において、1はプロセス現場に配置された校正すべき対象のセンサ(A1)であり、このセンサはコネクタ2およびアナログ伝送線を介して伝送器3(B1)に接続されている。センサ(A2)は校正設備の整った試験室に配置され、プロセス現場に配置された校正すべき対象のセンサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサである。(B2)はセンサ(A2)にコネクタ2およびアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器である。なお、図中の制御装置5は本発明とは関係ないが、DCS制御の接続例を示すものである。
【0023】
これら、伝送器(B1)と、(B2)はディジタル伝送線8により接続されている。
上述の構成において、はじめ(イ)において、校正設備の整った試験室に配置されたセンサ(A2)の校正が行われる。この校正データはアナログ伝送により伝送器(B2)に送信され(ロ)において、この伝送器のメモリに記憶される。
【0024】
次に(ハ)において、校正されたセンサ(A2)がプロセス現場に運ばれ、センサ(A1)と交換される。最後に伝送器(B2)のメモリに記憶されたセンサ(A2)の校正データがディジタル伝送線8を介して伝送器(B1)に伝送されてコピーされる。
このようにシステムを設計することにより、従来の汎用センサと伝送器を用いて校正データなどを任意の伝送器に転送することができる。
なお、プロセス現場に複数のセンサがある場合は校正対象のセンサのタグNoを用いてセンサを特定するものとする。
【0025】
図2は本発明の他の実施例を示すシステム構成図である。図1と異なる点は校正設備の整った試験室に配置されたセンサ(A2)の校正データをA/D変換器4およびPC(パソコン)6を介して伝送器(B1)に取込んでいるところである。
【0026】
即ち、プロセス制御においてはいろいろな目的のために多数のパソコンが使用されている。この実施例では試験室に配置されたセンサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)を用いて複数のPC6により校正データを取込んでいる例を示している。
なお、一点差線で囲った部分はセンサ(A2)の校正データをPC6aを介して伝送器(B1)に取込んでいる例を示すもので各種のPCが利用できることを示している。
【0027】
図3は更に他の実施例を示すもので、この例では校正を含む情報を書込んだ書込み手段(例えばラベルプリンタ)を用いて校正データを含む情報を持ち運びするように構成したものである。
即ち、センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)は試験室で(イ)において校正されその校正データは、伝送器(B2)のメモリに記憶される。
次に(ロ)において記憶されたデータはラベルプリンタ7によって出力される。
【0028】
次に(ハ)においてセンサ(A2)がプロセス現場に運ばれてセンサ(A1)と交換される。同様に、ラベルに記載避けた校正データをプロセス現場に配置した伝送器(B1)に入力する。
このようにシステムを設計することにより、従来の汎用センサと伝送器を用いて校正データなどをプロセス現場に配置された伝送器(B1)に入力すれば、伝送線が不要となり、ラベルプリンタに文字情報としてタグNoを付加すれば複数の保守対象センサを取り違えることなく扱うことができる。
【0029】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。実施例では計測器としてpHを用いたが圧力計や温度計あるいは流量計であってもよい。また、実施例では校正データの持ち運び手段としてラベルを用いたがラベルのかわりに、ハンディーターミナルを用いても、同様の処理が可能である。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0030】
1 センサ
2 コネクタ
3 伝送器
4 A/D変換器
5 制御装置
6 PC(パソコン)
7 ラベルプリンタ
8 ディジタル伝送線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B2)と、前記伝送器(B1)と伝送器(B2)を接続するディジタル信号伝送線を備えたことを特徴とするセンサデータ伝送システム。
【請求項2】
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたA/D変換器と、このA/D変換器に接続されたPC(演算装置)と、このPCと前記伝送器(B1)を接続したことを特徴とするセンサデータ伝送システム。
【請求項3】
プロセス現場に配置された少なくとも一つのセンサ(A1)と、このセンサ(A1)にアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B1)と、校正設備の整った試験室に配置された前記センサ(A1)と同等の仕様を備えたセンサ(A2)と、このセンサにアナログ伝送線を介して接続されたディジタル出力が可能な伝送器(B2)と、この伝送器(B2)に記憶された校正データを含む情報を書込む書込み手段と、を備え、この書込み手段に書込まれたデータを前記伝送器(B1)に入力するように構成したことを特徴とするセンサデータ伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−160102(P2010−160102A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3634(P2009−3634)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】