説明

センサヘッド及び変位測定器

【課題】省配線、省電力、省スペースを図った変位測定器を提供する。
【解決手段】複数の各センサヘッド2は、被測定物に光を斜め照射する光照射部11、光の照射に伴う被測定物からの反射光を受光する受光部14、受光部14の光信号をデジタル信号に変換する変換部15、補正処理用の補正データを記憶する補正データ記憶部16、変換後のデジタル信号に基づいて変位データを演算する変位データ演算部17aと補正データによって変位データを補正処理する変位データ補正部17bとを有する処理部17、補正処理後の変位データを出力する変位データ出力部18とを本体に一体に備えて一つの制御部3に電気的に配線接続され、個々に自身のセンサヘッド2を特定する識別情報を補正処理後の変位データに付加して制御部3へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の傾斜角度を有して被測定物の測定面に光を照射し、この光の照射に伴う被測定物の測定面からの反射光(散乱光も含む)を受光し、この受光状態に基づいて被測定物の測定面の変位量を測定するためのセンサヘッド及び変位測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三角測量の原理に基づいて被測定物の測定面の変位量を測定する装置として変位測定器が知られている。この変位測定器は、被測定物の測定面に光を照射し、この光の照射に伴うポジションセンサ(受光素子)の受光面上で検出された反射光の受光位置に基づいて被測定物の測定面の変位量を測定するものである。
【0003】
この種の変位測定器としては、例えば下記特許文献1に開示されるものが知られている。図7は特許文献1に開示される変位測定器の一例を示すブロック構成図である。図7に示す変位測定器51は、センサヘッド52と処理手段53とが電気的に配線接続されて構成される。センサヘッド52は、光源駆動回路54によって駆動される光源55と、光源55からの光を被測定物Wの測定面Waに照射する投光レンズ56と、光の照射に伴う被測定物Wの測定面Waからの反射光を集光する受光レンズ57と、受光レンズ57により集光される光を受光する受光素子58と、受光素子58が受光した光を電気信号に変換して増幅する一対の増幅器59,60とを備えている。また、処理手段53は、センサヘッド52の増幅器59,60からの信号を増幅する一対の増幅器61,62と、増幅器61,62からの信号を処理して被測定物Wの測定面Waの変位量を測定する演算手段63とを備えている。
【0004】
この変位測定器51では、光源駆動回路54によって駆動される光源55からの光を投光レンズ56で細く絞り、センサヘッド52から被測定物Wの測定面Waに光を照射すると、測定面Waの表面に光スポットができる。この光スポットから反射した光(散乱した光も含む)をセンサヘッド52の受光レンズ57で集光し、受光素子58としてのポジションセンサ上に光スポットの像を作る。この像は、被測定物Wが変位すると、ポジションセンサ上を移動する。これにより、ポジションセンサからは像の位置と明るさに対応した電流が出力される。この出力電流は、電圧変換された後に処理手段53に出力される。処理手段53では、センサヘッド52からのアナログの電圧信号を増幅器61,62で増幅してデジタル信号に変換した後に演算手段63に入力し、演算手段63がその和と差の信号を作って除算し、この除算した結果に対して補正処理を施すことにより、被測定物Wの測定面Waの変位量を測定している。
【0005】
この種の変位測定器の用途として、測定対象の反りやうねりを測定したり、また、移動機構と測定対象との距離を測定し、その測定値をもとに移動量を制御するなどがあるが、複数箇所を同時に測定する必要のある場合はもちろんのこと、測定する箇所や領域が多い場合には、測定にかかる時間を少なくするために、複数の変位測定器を配備し、測定箇所を分担させることが多い。これは測定対象がより大きな場合や、複数の移動機構を備える装置で変位測定器が使用される場合に顕著な傾向と言える。
【0006】
例えばこの種の変位測定器51を、液晶表示パネルの製造装置に採用した場合には、ガラス基板を貼り合わせるための接着剤を噴射する複数のノズルのそれぞれにセンサヘッド52を取り付け、各センサヘッド52毎に処理手段53を電気的にケーブルで配線接続し、さらに各処理手段53を外部ホストとなる端末装置(パソコンなど)に電気的にケーブルで配線接続する。そして、液晶表示パネルを製造するにあたっては、所定の大きさに切除された2枚のガラス板の一方の外周部分に対し、各ノズルから接着剤を噴射して塗布し、2枚のガラス板間の距離を一定に保ってその外周部分を接着剤で貼り合わせた後、2枚のガラス板間の空間部分に液晶が注入される。
【0007】
ここで、各ノズルからガラス板表面までの距離の変位量を測定するため、各ノズル毎に設けられるセンサヘッド52は、被測定物Wとしてのガラス板に光を投光する。この光の投光に伴うガラス板の表面からの反射光(散乱光を含む)を受光レンズ57で集光し、ポジションセンサ上に光スポットの像を作り、ポジションセンサからの像の位置と明るさに対応した電流を電圧変換し、対応する処理手段53に出力する。各処理手段53では、対応するセンサヘッド52からの電圧信号を増幅してデジタル信号に変換した後、その和と差の信号を作って除算し、その結果に補正処理を施して各ノズル毎にガラス板との間の高さを測定し、測定結果を端末装置に送る。そして、端末装置に送られた測定結果に応じて各ノズルとガラス基板との距離を制御することで接着剤の塗布量を管理していた。
【特許文献1】特開平11−237208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の変位測定器51では、複数のセンサヘッド52が個々に処理手段53と1対1対応で配線接続され、さらに各処理手段53がパラレルI/Oを介して個々に外部ホストである端末装置に配線接続される構成なので、センサヘッド52の数だけ配線数が増え、センサヘッド52と処理手段53との間の結線に手間を要していた。
【0009】
また、従来の変位測定器51では、センサヘッド52と処理手段53とを対をなして構成する必要があり、センサヘッド52のみでは変位データを得ることができなかった。さらに、センサヘッド52と処理手段53とが対をなす構成なので、処理手段53がセンサヘッド52と同数だけ必要となり、処理手段53による消費電力が嵩むという問題があった。しかも、センサヘッド52と同数の処理手段53を設置するためには、十分な設置スペースを確保する必要があり、装置の占有スペースが大きくなるという問題があった。
【0010】
さらに、センサヘッド52を増設する場合には、増設する数分のセンサヘッド52と処理手段53とを1対1対応でケーブル接続した上で各処理手段53を端末装置に配線接続する必要があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、単体構成で変位データを得ることができるセンサヘッドを提供するとともに、このセンサヘッドを複数用いた場合に省配線、省電力、省スペースを図ることができる変位測定器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたセンサヘッドは、所定の傾斜角度を有して被測定物Wの測定面Waに光を照射する光照射部11と、
前記光照射部の光の照射に伴う前記被測定物の測定面からの反射光を受光する受光部14と、
前記受光部からの光信号をデジタルの電気信号に変換する変換部15と、
補正処理で使用する補正データを記憶する補正データ記憶部16と、
前記変換部からのデジタルの電気信号に基づいて変位データを演算する変位データ演算部17aと、前記補正データ記憶部に記憶された補正データによって前記変位データを補正処理する変位データ補正部17bとを有する処理部17と、
前記補正処理後の変位データを出力する変位データ出力部18とを本体に一体に備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載された変位測定器は、請求項1に記載されたセンサヘッド2を複数備え、
前記複数のセンサヘッドが一つの制御部3に電気的に配線接続された変位測定器1であって、
前記複数のセンサヘッドは、個々に自身のセンサヘッドを特定する識別情報を前記補正処理後の変位データに付加して前記制御部へ出力することを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載された変位測定器は、請求項2の変位測定器において、
前記制御部3は、前記複数のセンサヘッド2からの前記識別情報が付加された補正処理後の変位データを保持するデータ保持部3aと、
外部ホスト4からの要求に従って、前記データ保持部に保持されたデータを送信するデータ送信部3bとを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載された変位測定器は、請求項2又は3の変位測定器において、
前記制御部3は、前記複数のセンサヘッド2による変位測定に関わる表示を行う表示部3eを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のような処理手段との配線接続が不要なセンサヘッドを提供し、単体構成で変位データを得ることができる。また、本発明の変位測定器によれば、一つの制御部で複数のセンサヘッドを同時に制御することができ、従来に比べて省スペース、省配線、省電力を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係るセンサヘッドを含む変位測定器のブロック構成図、図2は本発明に係るセンサヘッドのブロック構成図、図3は本発明に係るセンサヘッドの外観図、図4は本発明に係るセンサヘッドの変位検出原理の説明図、図5は本発明に係る変位測定器の制御部の一例を示す外観正面図、図6は図5の制御部の外観背面図である。
【0018】
図1に示すように、本例の変位測定器1は、複数のセンサヘッド2(2-1,2-2,・・・,2-n)が一つの制御部3に電気的に配線接続された構成である。そして、変位測定器1の制御部3は、外部ホストとしての端末装置4に対し、相互に通信可能に接続されている。
【0019】
複数の各センサヘッド2(2-1,2-2,・・・,2-n)は、図3に示すように、小型にユニット化されたヘッド本体2aの端部からケーブル2bが引き出されており、このケーブル2bの先端のコネクタ2cを介して制御部3に着脱可能に配線接続される。
【0020】
各センサヘッド2(2-1,2-2,・・・,2-n)は、被測定物Wの測定箇所に応じて配置され、図2に示すように、光照射部11、投光レンズ12、結像レンズ13、受光部14、変換部(O/E,A/D)15、補正データ記憶部16、処理部17、変位データ出力部18を備えている。
【0021】
光照射部11は、図3に示すように、被測定物Wの測定面Waに対し、所定の傾斜角度θを有して光ビーム(投光ビーム)を放射している。光照射部11から放射された光ビーム(投光ビーム)は、図4に示すように、投光レンズ12で絞られてヘッド本体2aの先端面2aaから所定距離L0の被測定物Wの表面Waに対して所定の傾斜角度で照射され、基準位置Pで照射点をつくる。
【0022】
受光部14は、ポジションセンサと称する光検出素子で構成され、光照射部11から被測定物Wの測定面Waへの光ビームの照射に伴う被測定物Wの測定面Waからの反射光(散乱光を含む)を結像レンズ13を介して受光している。
【0023】
さらに説明すると、受光部14は、図4に示すように、光照射部11から投光レンズ12を介しての光ビームの照射に伴う照射点から反射(散乱を含む)した光ビーム(反射ビーム)が結像レンズ13で集光され、光検出素子上の位置に照射点の像をつくる。この像は、被測定物Wが上下に移動すると、光検出素子上を移動し、この移動量に対応した光信号を出力する。すなわち、図4に示すように、受光部14は、光ビームの照射点位置が基準位置PよりΔLだけ高い位置Qにあるときに、この変位距離+ΔLに対応した光信号を出力する。これに対し、光ビームの照射点位置が基準位置PよりΔLだけ低い位置Rにあるときには、この変位距離−ΔLに対応した光信号を出力する。
【0024】
変換部15は、受光部14からの変位距離に応じた光信号をアナログの電気信号に変換する光/電気変換部(O/E)と、この光/電気変換部で変換されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に変換するA/D変換部とを有しており、デジタルの電気信号を処理部17に入力している。
【0025】
補正データ記憶部16は、例えば直線性補正データなど、補正処理で使用する各種補正データを記憶している。
【0026】
直線性補正データは、真値との差分データであり、正確な測定値を得るために変位データに加算処理される。ここで言う真値とは、例えばレーザ干渉計など、本例の変位測定器1よりも高精度の測長器の値であり、専用治具にて1台1台差分データを計測し、予め補正データ記憶部16に記憶されている。
【0027】
なお、本例において、補正処理後の変位データとは、単純平均処理、移動平均処理などの統計処理も実施した後のものである。
【0028】
処理部17は、変位データ演算部17aと、変位データ補正部17bとを備えている。変位データ演算部17aは、前述した特許文献1などに開示される周知の手法により、変換部15で変換されたデジタルの電気信号から変位データを演算している。
【0029】
変位データ補正部17bは、変位データ演算部17aが演算した変位データを、補正データ記憶部16に記憶された補正データに基づいて補正処理している。
【0030】
変位データ出力部18は、処理部17の変位データ補正部17bによって補正処理された補正処理後の変位データに特定の識別情報を付加している。この識別情報は、変位データがどのセンサヘッド2に関するデータかを特定するためのヘッダ情報であり、例えば各センサヘッド2のヘッド番号を2値化したデータ(例えばヘッド番号1=0000、ヘッド番号2=0001、ヘッド番号3=0010等)が用いられる。この識別情報がヘッダ情報として付加された補正処理後の変位データは、制御部3から所定周期で与えられるクロック信号に同期したシリアル通信により制御部3に送られる。
【0031】
次に、制御部3は、図5及び図6に示すような筐体21を本体としている。この筐体21の背面21aには、図6に示すように、一つの制御部3に対して複数のセンサヘッド2を電気的に配線接続するためのセンサヘッド接続部22が設けられている。
【0032】
さらに説明すると、図6の例では、筐体21の背面21aの上段に4個、下段に5個並んで合計9個のセンサヘッド接続部22が併設されており、9台のセンサヘッド2の接続が可能である。また、筐体21の背面21aには、制御部3と外部ホストとしての端末装置4との間を電気的に配線接続するための例えばUSB端子からなる外部装置接続部23が設けられている。さらに、筐体21の背面21aには、筐体21の正面21bに設けられる電源スイッチ24をオンしたときに制御部3の各部に駆動電源を供給するための電源が入力される電源端子25が設けられている。
【0033】
上記筐体21を本体とする制御部3は、図1に示すように、データ保持部3a、データ送信部3b、受信部3c、表示制御部3d、表示部3e、センサヘッド選択部3fを備えている。
【0034】
データ保持部3aは、各センサヘッド2から取得したデータ(識別情報が付加された補正処理後の変位データ)を保持するものである。さらに説明すると、データ保持部3aは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array )を搭載し、各センサヘッド2に所定周期で同時にクロック信号を与え、これに同期して各センサヘッド2の変位データをシリアル通信によりパラレルイメージの数値データとしてレジスタに保持し、各センサヘッド2からの変位データをシリアル/パラレル変換してラッチしている。
【0035】
データ送信部3bは、外部ホストとしての端末装置4から送信要求指令が入力されたときに、センサヘッド選択部3fからの選択信号に基づくセンサヘッド2の変位データを、データ保持部3aに保持されたレジスタから読み出して端末装置4に送信している。この端末装置4に送信される変位データのデータサイズは一定であり、使用しないチャンネルの変位データについてはデータが0に書き換えられて端末装置4に送信される。
【0036】
受信部3cは、外部ホストとしての端末装置4からの各種指令(送信要求指令や後述する各種条件の指令など)を受信している。
【0037】
表示制御部3dは、各センサヘッド2の変位測定結果(データ保持部3aに保持されたデータ内容)に応じて表示部3eの各種表示制御を行っている。
【0038】
表示部3eは、筐体21の正面21bに設けられ、例えばLED等の発光素子が所定間隔おきに配置して構成される。この表示部3eは、例えば変位量、受光量、アラーム、選択チャンネル等のセンサヘッド2による変位測定に関わる各種表示を行っている。さらに説明すると、図5の例における表示部3eは、変位量表示領域31、受光量表示領域32、アラーム表示領域33、選択チャンネル表示領域34の4つの表示領域を有する。
【0039】
変位量表示領域31には、図5に示すように、発光素子が等間隔で9個配置されている。この9個の発光素子の両端に配置した2個の発光素子の外側には、測定範囲のマイナス側のフルスケールを超えたことを示す「FAR」アラームと、測定範囲のプラス側のフルスケールを超えたことを示す「NEAR」アラームの指標文字を設けている。この変位量表示領域31では、センサヘッド選択部3fによって選択された一つのチャンネルのセンサヘッド2に関して、変位データの値が測定範囲のマイナス側のフルスケールを超えたときに「FAR」アラームの指標文字に隣接した発光素子(図5の左端の発光素子)が点灯し、変位データの値が測定範囲のプラス側のフルスケールを超えたときに「NEAR」アラームの指標文字に隣接した発光素子(図5の右端の発光素子)が点灯し、変位データの値が測定範囲内にあるときには測定範囲を中央の残り7個の発光素子で7分割した場合に相当する位置の発光素子を点灯している。
【0040】
なお、全てのセンサヘッド2が選択されている場合には、予め設定された代表チャンネル(例えばCH1)の変位量の大きさに応じて発光素子が点灯することにより、代表チャンネルの変位量をバー表示している。
【0041】
受光量表示領域32には、図5に示すように、変位量表示領域31と並行して、発光素子が等間隔で9個配置されている。この9個の発光素子の両端に配置した2個の発光素子の外側には、測定対象から得られる受光量が小さく、予め設定された閾値以下であることを示す「DARK」アラームと、測定対象から得られる受光量が大きく、変換部15が許す入力レベルを超えることを示す「OVER」アラームの指標文字を設けている。この受光量表示領域32では、センサヘッド選択部3fによって選択された一つのチャンネルのセンサヘッド2に関して、受光量が小さく、予め設定された閾値以下のときに「DARK」アラームの指標文字に隣接した発光素子(図5の左端の発光素子)が点灯し、受光量が大きく、変換部15が許す入力レベルを超えるときに「OVER」アラームの指標文字に隣接した発光素子(図5の右端の発光素子)が点灯し、受光量が閾値より大きくて変換部15が許す入力レベルより小さいときに中央の残り7個の発光素子を受光量に応じてバーグラフ状に点灯している。
【0042】
アラーム表示領域33には、図5に示すように、アラームを示す指標文字「ALARM」の右横に発光素子が各チャンネル表示「CH1」、「CH2」、・・・、「CH9」と対応した位置に9個配置されている。このアラーム表示領域33では、異常が発生したチャンネルに対応した発光素子を点灯表示している。
【0043】
選択チャンネル表示領域34には、図5に示すように、選択チャンネルを示す指標文字「SELECT」の右横に、アラーム表示領域33と並行して、発光素子が各チャンネル表示「CH1」、「CH2」、・・・、「CH9」と対応した位置に9個配置されている。この選択チャンネル表示領域34では、センサヘッド選択部3f又は外部ホストとしての端末装置4からの要求によって選択されたセンサヘッド2のチャンネル(ヘッド番号に相当)に対応する発光素子を点灯表示している。
【0044】
なお、図5の例では、各表示領域を発光素子を等間隔に配置して構成しているが、変位量、受光量、アラームを発生したチャンネル、選択チャンネルを個々に数値表示するように構成しても良い。その際、選択された全てのチャンネルの変位量や受光量を数値表示することもできる。
【0045】
センサヘッド選択部3fは、複数のセンサヘッド2から所望のセンサヘッドの選択を行うもので、選択するセンサヘッド2を示す選択信号をデータ送信部3bに出力している。図5の例では、筐体21の正面21bの略中央下部に配置されたロータリスイッチによってセンサヘッド選択部3fが構成される。このロータリスイッチによるセンサヘッド選択部3fでは、操作部の矢印を記号Fや数字1〜9のいずれかに合わせることによりセンサヘッド2の選択を行っている。例えば操作部の矢印を数字「3」に合わせた場合には、「CH3」に接続されたセンサヘッド2を選択するように選択信号がデータ送信部3bに出力される。また、操作部の矢印を記号「F」に合わせた場合には、「CH1」〜「CH9」に接続された全てのセンサヘッド2を選択するように選択信号がデータ送信部3bに出力される。なお、センサヘッド選択部3fは、図5に示すロータリスイッチに限らず、ディップスイッチなどで構成することもできる。
【0046】
次に、外部ホストとしての端末装置4は、例えばパソコンなどで構成され、制御部3の外部装置接続部23と配線接続され、制御部3との間での高速シリアル通信を可能としている。端末装置4は、制御部3から変位データを取得する際に、制御部3に変位データの送信要求指令を出力しており、この送信要求指令に対して制御部3から送信される変位データを取得している。そして、この取得した各センサヘッド2毎の変位データを一括管理している。また、端末装置4は、各センサヘッド2や制御部3に対し、各種条件(例えば使用するセンサヘッド2のチャンネル選択、変位データの平均処理回数、アラーム出力条件、代表チャンネルの選択、変位データ表示範囲など)を必要に応じてコマンド形式で指令を送信している。
【0047】
次に、上記構成による変位測定器1を用いて被測定物Wの変位量を測定する場合の一連の動作について説明する。センサヘッド2の光照射部11から投光レンズ12を介して被測定物Wの測定面Waに光ビーム(投光ビーム)が放射されると、この光ビームの放射に伴う被測定物Wの測定面Waからの反射光(散乱光も含む)が結像レンズ13を介して受光部14に受光される。受光部14が受光した光は、変換部(O/E,A/D)15により、受光量に応じたアナログの電気信号に変換され、さらにこのアナログの電気信号がデジタルの電気信号に変換されて処理部17に送られる。
【0048】
処理部17において、変位データ演算部17aは、変換部15で変換されたデジタルの電気信号から変位データ(変位量)を演算する。また、変位データ補正部17bは、この演算された変位データに対し、補正データ記憶部16に記憶された補正データに基づいて補正処理する。以上の処理が各センサヘッド2毎に行われる。
【0049】
その後、各センサヘッド2における補正処理後の変位データは、識別情報(ヘッド番号)が付与された固定長のデータとして、制御部3から所定周期で与えられるクロック信号に同期して変位データ出力部18から出力され、制御部3のデータ保持部3aに保持される。そして、制御部3は、外部ホストである端末装置4からの送信要求指令を受信部3cが受信すると、データ保持部3aに保持された補正処理後の変位データを、データ送信部3bから高速シリアル通信で端末装置4に送信する。
【0050】
また、制御部3の表示部3eの各表示領域31,32,33,34には、上述した各センサヘッド2の変位測定結果に基づく各種表示がなされる。すなわち、変位量表示領域31では、選択された一つのチャンネル又は代表チャンネルのセンサヘッド2の変位量の大きさに応じて発光素子が点灯し、変位量がバーグラフ表示される。受光量表示領域32では、選択された一つのチャンネル又は選択チャンネルのセンサヘッド2の受光量の大きさが飽和レベルに応じて発光素子が点灯し、受光量がバーグラフ表示される。アラーム表示領域33では、異常発生したチャンネルに対応した発光素子が点灯し、アラーム表示される。選択チャンネル表示領域34には、選択されたチャンネルに対応した発光素子が点灯し、選択チャンネルが表示される。
【0051】
そして、本例の変位測定器1を前述した液晶表示パネルの製造システムに採用した場合には、端末装置4が制御部3から取得した複数のセンサヘッド2の変位データに基づき、一つ一つセンサヘッド2が取り付けられたノズル毎に接着剤の噴出量を制御することができる。
【0052】
このように、本例によれば、従来のような処理手段との配線接続が不要なセンサヘッドを提供することができる。しかも、センサヘッド単体構成で被測定物の変位測定を行って変位データを得ることができる。
【0053】
そして、本例の変位測定器によれば、上記効果に加え、一つの制御部で複数のセンサヘッドを同時に制御することができ、従来に比べて省スペース、省配線、省電力を図ることができる。また、センサヘッドを増設する場合、従来の構成では、増設する数分のセンサヘッドと処理手段とを1対1対応でケーブル接続した上で各処理手段を端末装置に配線接続する必要があったが、本例の構成によれば、増設する数分のセンサヘッドを一つの制御部にケーブル接続するだけの作業でセンサヘッドの増設を行うことができる。
【0054】
さらに、本例の変位測定器では、各センサヘッドによる変位測定結果に基づいて変位量、受光量、アラーム、選択チャンネルの各種表示を行うので、これらの表示にて各センサヘッドの状態を目視確認することができる。
【0055】
ところで、本例の変位測定器1は、上述した液晶表示パネルの製造システムにおける複数の各ノズルからガラス板までの高さ測定に限らず、例えばセンサヘッド2を被測定物(例えば半導体シリコンウェハ)の表面上に配置して被測定物表面の平坦度を測定したり、センサヘッド2を被測定物の表裏面から挟み込むように配置して被測定物の厚さを測定したり、さらにはハードディスクの接触子が上下移動する距離の測定など様々な測定分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るセンサヘッドを含む変位測定器のブロック構成図である。
【図2】本発明に係るセンサヘッドのブロック構成図である。
【図3】本発明に係るセンサヘッドの外観図である。
【図4】本発明に係るセンサヘッドの変位検出原理の説明図である。
【図5】本発明に係る変位測定器の制御部の一例を示す外観正面図である。
【図6】図5の制御部の外観背面図である。
【図7】特許文献1に開示される従来の変位測定器の一例を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 変位測定器
2(2-1,2-2,・・・,2-n) センサヘッド
3 制御部
3a データ保持部
3b データ送信部
3c 受信部
3d 表示制御部
3e 表示部
3f センサヘッド選択部
4 端末装置(外部ホスト)
11 光照射部
12 投光レンズ
13 結像レンズ
14 受光部
15 変換部(O/E,A/D)
16 補正データ記憶部
17 処理部
17a 変位データ演算部
17b 変位データ補正部
18 変位データ出力部
31 変位量表示領域
32 受光量表示領域
33 アラーム表示領域
34 選択チャンネル表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の傾斜角度を有して被測定物(W)の測定面(Wa)に光を照射する光照射部(11)と、
前記光照射部の光の照射に伴う前記被測定物の測定面からの反射光を受光する受光部(14)と、
前記受光部からの光信号をデジタルの電気信号に変換する変換部(15)と、
補正処理で使用する補正データを記憶する補正データ記憶部(16)と、
前記変換部からのデジタルの電気信号に基づいて変位データを演算する変位データ演算部(17a)と、前記補正データ記憶部に記憶された補正データによって前記変位データを補正処理する変位データ補正部(17b)とを有する処理部(17)と、
前記補正処理後の変位データを出力する変位データ出力部(18)とを本体に一体に備えたことを特徴とするセンサヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載されたセンサヘッド(2)を複数備え、
前記複数のセンサヘッドが一つの制御部(3)に電気的に配線接続された変位測定器(1)であって、
前記複数のセンサヘッドは、個々に自身のセンサヘッドを特定する識別情報を前記補正処理後の変位データに付加して前記制御部へ出力することを特徴とする変位測定器。
【請求項3】
前記制御部(3)は、前記複数のセンサヘッド(2)からの前記識別情報が付加された補正処理後の変位データを保持するデータ保持部(3a)と、
外部ホスト(4)からの要求に従って、前記データ保持部に保持されたデータを送信するデータ送信部(3b)とを備えたことを特徴とする請求項2記載の変位測定器。
【請求項4】
前記制御部(3)は、前記複数のセンサヘッド(2)による変位測定に関わる表示を行う表示部(3e)を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の変位測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−304215(P2008−304215A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149389(P2007−149389)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】