説明

センサ構成

【解決手段】鉄製目標物の近接度を検出するために利用されるセンサ構成と方法が提供され、そのセンサ構成は、磁界源及びホール効果機器を含むセンサ本体を備えており、その磁界源は、電磁ソレノイドである。本発明は、限定されるわけではないが、燃料噴射ポンプの分野で特別な利用性がある。その分野では、機関の動作に影響を与えることなく、機関のシリンダーに分配される燃料の量を決定することが必要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ構成に関し、特に、鉄製“目標物”のセンサ構成への近接度を検出するためのセンサ構成に関する。また、本発明は、かかるセンサ構成を有する内燃機関の燃料噴射ポンプの特定アプリケーションに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物、いわゆる“目標物”の位置を監視する必要性がある応用対象というのは多く存在する。かかる応用の1つとしては、圧縮点火内燃機関に使用されるようなロータリー燃料噴射分配ポンプ、あるいはディーゼル機関として知られているものに使用されるそれである。
【0003】
分配燃料ポンプの一般的構造的構成は、当該技術分野では知られているものであり、例えば、本出願人の欧州特許EP1356196に開示されており、軸について回動可能である吸込み制御式調量バルブを備えており、燃料ポンプの1つ以上のポンプ素子に供給される燃料の量を制御している。吸込み制御式調量バルブの角度位置は、吸込み制御式調量バルブの軸から半径方向に延びる制御アームであって、制御リンクを介して、燃料ポンプが搭載される車両のスロットル及び速度制御機構に接続されている制御アームにより制御される。
【0004】
内燃機関を信頼性をもって制御するために、機関に分配される燃料の量と、機関が動作する際の負荷とを決定する設備を有することが必要となる。機関に分配される燃料の量を決定できる1つの方法は、調量バルブの位置を測定することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料噴射ポンプにおいて、ポンプハウジングの内部容量部と、更にそれに基づく吸込み制御式調量バルブの直接的な環境というのは、吸込み制御式調量バルブの位置決定を困難にしている燃料に晒されている。例えば容量式、誘導式、及び光学式センサのようないわゆる近接度センサのように、市販品の電子部品サプライヤーからいくつかの非接触位置センサを得ることができるものの、かかる技術を、とりわけ自動車燃料噴射ポンプに関わる湿潤で、汚く、化学的に厳しい環境に適用するには困難がある。
【0006】
例えば、そのようなセンサは、燃料ポンプのハウジング内に収容するには物理的に大きすぎたり、センサの正確性が、ポンプが製造される金属材料や、ポンプのハウジング内を巡回する燃料の特性にさえ悪影響を受ける可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記背景に対して、本発明は、第一の様相として、鉄製目標物の近接度を検出するためのセンサ構成であって、磁界源及びホール効果機器を含むセンサモジュールを備え、前記磁界源は、電磁ソレノイドであることを特徴とするセンサ構成を提供する。
【0008】
本発明の利点は、電磁ソレノイドにより、鉄製目標物を検出するのに可変磁界が利用できるということであり、つまり、ソレノイドにより生成された磁界強度は、センサ構成の周囲状況に合わせるように調整可能であるということである。更に、ホール効果機器は、素早い応答時間を有しており、大きなヒステリシスにも影響を受けない。
【0009】
本発明の本質的なことではないが、検知の正確性を最大にするために、前記ホール効果機器は、前記電磁ソレノイドの長手軸と揃って配列されており、それによりホール効果機器は、最大の磁界強度を有する領域に晒されている。更に、電磁ソレノイドとホール効果機器とは、物理的に互いに分離して構成することが可能であるが、都合よく、搭載が容易なよう、単一パッケージとして合体していてもよい。
【0010】
好適な実施形態においては、前記センサ構成は、ホール効果機器により提供される電気的出力信号が、電磁ソレノイドを流れる電流を制御するように構成された制御システムを含んでいる。
【0011】
特に有益な特徴というのは、鉄製目標物の近接度に拘わらずに実質的に一定の磁界強度を生成するために、ソレノイドが、可変電流を呈するように構成されるということである。このように、磁界強度は、所定のレベルに設定され、それにより、鉄製目標物とホール効果機器との間にかなりの距離があるときでも、その鉄製目標物の位置を正確に感知でき、一方、目標物が、ホール効果機器に近接しているときでも、磁界強度は、鉄製目標物の動きに悪影響を与えない。
【0012】
その結果、センサ構成と鉄製目標物との間の磁気的引きつけを回避しつつ、センサ構成は、信号干渉にさほど過敏ではない。
ホール効果機器と鉄製目標物の間の磁界強度を実質的に一定レベルに維持するために、制御システムは、閉ループ回路を含んでいる。
【0013】
第二の様相おいて、本発明は、制御アームを有する吸込み制御式調量バルブを含むと共に、センサ構成と前記制御アームに関連した鉄製目標物の間の距離を検出するための上で規定のセンサ構成を含む燃料噴射ポンプ、特に、ロータリー分配燃料噴射ポンプを含んでいる。
【0014】
本発明の第三の様相によれば、センサ構成の操作方法であって、前記ソレノイドと前記鉄製目標物の間の空隙の電磁界の強さを前記ホール効果機器により検出し、前記ホール効果機器は、対応する信号電圧を出力し、比較器がその電圧をプリセット電圧と比較して前記ソレノイドに駆動電流を出力し、それにより前記信号電圧が前記プリセット電圧より低い場合には前記駆動電流を増加させたレベルで出力し、前記信号電圧が前記プリセット電圧より高い場合には前記駆動電流を減少させたレベルで出力し、前記駆動電流のレベルは、電流感知機器により測定され、当該電流感知機器は、前記鉄製目標物の位置を示すように解釈され得る信号を出力することを特徴とする方法が提供される。
【0015】
好適には、その方法は、前記比較器に供給する前に前記信号電圧を増幅する更なるステップを備える。比較器は、演算増幅器である。
好適には、その方法は、前記ソレノイドに供給する前に前記駆動電流を増幅する更なるステップを備える。
【0016】
好適には、その方法は、前記電流感知機器からの出力を機関管理システムに供給する更なるステップを備え、前記機関管理システムは、前記駆動電流を前記鉄製目標物の位置を示すものに変換する。
【0017】
本発明の第一の様相の好適な、及び/又は選択的な特徴は、本発明の第二の様相に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明をより容易に理解するために、以下、例として図1が参照される。
【図1】図1は、本発明の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明によるセンサ構成は、制御ユニット6に電気的に接続されるセンサモジュール4を含んでいる。図1には示されていないが、センサ構成2は、圧縮点火内燃機関の一部を形成しており、その結果、制御ユニット6は、データ接続10を介して機関管理システム(EMS)8と対面しており、それによりEMS8は、センサ構成2から、機関の制御に使用するためのセンサデータを集めることができる。
【0020】
図1で分かるように、吸込み制御式調量バルブ12は、分配燃料ポンプ14(図1においては、部分的にのみ示されている)の本体により受け入れられ、吸込み制御式調量バルブ12の長手軸Aから半径方向に延びている制御アーム16を含んでいる。図1には示されていないが、制御アーム16は、燃料ポンプ14のスロットル及び速度制御リンクに接続されており、それにより吸込み制御式調量バルブ12の角度位置は、機関により要求される燃料分配のレベルに応じて、制御可能となっている。
【0021】
センサモジュール4は、更に、電磁ソレノイド22の一端に搭載されたホール効果機器20を含んでおり、その素子は、ソレノイド22の長手軸Bと揃うように位置付けされている。制御アーム16の一端は、そのホール効果機器20に対して接近離反する動きが可能であり、それによりそれらの間の可変空隙Gが決まる。故に、制御アーム16は、ホール効果機器20に対して、強磁性体の“目標物”を規定していることになる。
【0022】
ホール効果機器20は、空隙Gに存在する磁界強度を検出し、その空隙Gのサイズに比例する電圧を、第一電気的接続30を介して制御ユニット6に出力するように動作可能である。ホール効果機器20から出力された電圧に応じて、制御ユニット6は、第二電気的接続32を介して、ソレノイド22に対して、ソレノイド駆動電流を供給する。
【0023】
制御ユニット6は、ホール効果機器20から出力された電圧を受け取り、その電圧をデジタル回路が受け入れられるレベルに増幅する第一増幅器40を含んでいる。ここで、図1においては、第一増幅器40は、制御ユニット6の一部として示されているが、それと異なり、ホール効果機器20に対して一体の一部であってもよいことに注意すべきである。
【0024】
制御ユニット6は、当該技術分野において知られているように、反転入力42及び非反転入力46を有する演算増幅器44を含む閉ループ回路を形成している。第一増幅器40から出力された電圧は、反転入力42に入力され、また、非反転入力46は、空隙G内に所定強度の磁界を誘導するように設定された電圧を受ける。非反転入力46での電圧は、以下、“設定点”を称される。
【0025】
演算増幅器44は、反転入力42と非反転入力46に現れる各電圧の差を増幅し、電流測定抵抗50を通して、増幅ソレノイド駆動電流信号を、接続32を介して電磁ソレノイドに出力する。電流測定抵抗50は、ソレノイド駆動電流信号を電圧に変換し、その電圧は、制御ユニット6の出力として、データ接続10を介してEMS8に送られる。ここで、演算増幅器44は、概ね0から1アンペアの範囲の十分な電流をソレノイド22に供給するために、電流増幅機能を有している。
【0026】
以下、センサ構成の機能をより詳細に説明する。
電磁ソレノイド22は、演算増幅器44の非反転入力46での設定点電圧により決定される、空隙G内に磁界を誘導する。しかしながら、吸込み制御式調量バルブ12の回動により、制御アーム16とホール効果機器20の間は変化し、それにより空隙Gのサイズが変化し、従って、空隙G内の磁界の強さが変化する。
【0027】
制御アーム16が、ホール効果機器20の方へ動くと、空隙Gのサイズが小さくなり、磁界強度は、増加傾向となり、それにより、演算増幅器44の反転入力42における電圧が上昇する。故に、演算増幅器44は、電気的接続32を介して電磁ソレノイド22に送られる駆動電流信号を減らすことにより、反転入力42及び非反転入力46に現れる電圧差を減らすように動作する。その結果、制御ユニット6は、磁界強度を減らして、設定点により決定されたレベルにまで戻す。
【0028】
このようにソレノイド22への電流を減らすことには、制御アーム16が、ホール効果機器20に非常に接近するまで動いても、磁界強度が、制御アーム16の動きに影響を与えるようなレベルにまで上昇しないことが保証される、という利点がある。この利益、永久磁石が使用されたならば得られない。なぜなら、磁界強度は制御不能であって、空隙が狭まることにより、制御アーム16が磁気的引きつけによりホール効果機器20に“吸着”してしまうという結果となる潜在性があるからである。
【0029】
更なる利点は、以下のようなものである。つまり、制御アーム16が動いて空隙Gが狭まったときに駆動電流は大幅に減じるのであるから、燃料ポンプ14の内部環境で起こるであろう燃料の動きにより、ホール効果機器20における金属粒子のような鉄系異物を清浄できる、ということである。
【0030】
反対に、制御アーム16がホール効果機器20から離れるように動きと、磁界強度は、減少傾向となり、それにより演算増幅器44の反転入力42における電圧は減少する。故に、演算増幅器44は、電磁ソレノイド22に送られる駆動電流信号を増やすことにより、反転入力42及び非反転入力46に現れる電圧差を減らすように動作する。故に、このセンサ構成は、空隙Gを増加させるように調整して、磁界強度を設定点により決定されるレベルに維持する。かかる環境下でソレノイド電流を増加させることにより、センサ構成2には、制御アーム16の広範な動きが、磁気的干渉に対して低感度で、かつ信頼性を持って検出できる、という利点が生じる。
【0031】
付随的に、電磁ソレノイド22に対する駆動電流信号の閉ループ制御により、EMS8に出力される電圧は、センサ構成2の調整を無益とし、正確に計測することをできなくするようなその急変環境における温度変化に対して無感である。
【0032】
更なる改良としては、制御ユニット6は、駆動電流信号を周期的に無効とするように構成できるし、あるいは、反対の極性を有する比較的小さな電流を流すように構成することもでき、そのいずれによってもセンサ構成の自己清浄が推進される。
【0033】
上では記述していないが、そのセンサ構成は、燃料ポンプ内の適当な受容空間内、例えば、燃料ポンプの金属製本体により画定される孔内に搭載されるように配置され、それによりホール効果機器20は、制御アーム16の動きを検出できる適当な位置にとなるようポンプ内に突出する。このようにセンサ構成を搭載することにより、そのセンサ構成2の各電気的接続を、孔を介してポンプの外へ都合よく導くことができ、このことは密封という観点から利点がある。あるいは、センサ構成をポンプの内部環境に晒さず、代わりに、鉄製制御アーム16を検出できるよう、ポンプの非鉄製ハウジングを通して“監視”できるようにセンサ構成を配置することもできる。
【0034】
燃料ポンプへの応用という特定の例を参照してセンサ構成が記述されてきたが、本発明は、鉄の目標物の近接度の検出が必要ないかなるアプリケーションへも応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製目標物の近接度を検出するためのセンサ構成であって、
磁界源及びホール効果機器を含むセンサモジュールを備え、
前記磁界源は、電磁ソレノイドであることを特徴とするセンサ構成。
【請求項2】
前記電磁ソレノイドは、前記磁界の強度が、センサ構成の周囲状況に適合するように調整可能なように、可変磁界を誘導するように制御可能であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ構成。
【請求項3】
前記ホール効果機器は、前記電磁ソレノイドの長手軸と揃って配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサ構成。
【請求項4】
前記ホール効果機器及び前記電磁ソレノイドは単一パッケージとして配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ構成。
【請求項5】
前記センサ構成は、前記ホール効果機器からの電気的出力信号を受け取り、前記電磁ソレノイドの駆動電流信号を供給する制御ユニットを含んでいることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサ構成。
【請求項6】
前記制御ユニットは、前記ホール効果機器の電気的出力信号を受け取るように配置され、前記電磁ソレノイドの駆動電流信号を変調するように動作し、それにより前記ホール効果機器と前記鉄製目標物の間の領域における磁界強度を実質的に一定レベルに維持する閉ループ制御回路を含んでいることを特徴とする請求項5に記載のセンサ構成。
【請求項7】
前記制御システムは、前記電磁ソレノイドへの駆動電流信号を周期的に無効とするように構成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のセンサ構成。
【請求項8】
制御アームを有する吸込み制御式調量バルブを含むと共に、前記制御アームに関連した鉄製目標物の位置を検出するための請求項1乃至7のいずれかに記載のセンサ構成を含む燃料噴射ポンプ。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載のセンサ構成の操作方法であって、
前記ソレノイドと前記鉄製目標物の間の空隙の電磁界の強さを前記ホール効果機器により検出し、前記ホール効果機器は、対応する信号電圧を出力し、比較器がその電圧をプリセット電圧と比較して前記ソレノイドに駆動電流を出力し、それにより前記信号電圧が前記プリセット電圧より低い場合には前記駆動電流を増加させたレベルで出力し、前記信号電圧が前記プリセット電圧より高い場合には前記駆動電流を減少させたレベルで出力し、前記駆動電流のレベルは、電流感知機器により測定され、当該電流感知機器は、前記鉄製目標物の位置を示すように解釈され得る信号を出力することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記比較器に供給する前に前記信号電圧を増幅する更なるステップを備えた請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ソレノイドに供給する前に前記駆動電流を増幅する更なるステップを備えた請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記電流感知機器からの出力を機関管理システムに供給する更なるステップを備え、前記機関管理システムは、前記駆動電流を前記鉄製目標物の位置を示すものに変換することを特徴とする請求項9,10又は11のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−515694(P2011−515694A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501298(P2011−501298)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050285
【国際公開番号】WO2009/118555
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510119821)デルファイ・テクノロジーズ・ホールディング・エス.アー.エール.エル. (45)
【Fターム(参考)】