説明

センサ装置の製造方法

【課題】簡易な設備でセンサチップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤを保護し得るセンサ装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第2工程にて凹部23内に組み付けられたセンサチップ40の各パッド42a〜42fおよび回路チップ50の各パッド51a〜51hやボンディングパッド21a〜21dを、第3工程にてボンディングワイヤ61〜69によりそれぞれ電気的に接続する。そして、第4工程にて、有機溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液80を、ボンディングワイヤ61〜69等が浸漬するように凹部23内に注入し、第5工程にて、各ターミナル21に所定の電圧を印加することでコロイド溶液80内に電位勾配を発生させて、帯電粒子を電気泳動によりボンディングワイヤ61〜69の表面に付着させて、保護膜71〜79を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップが被測定媒体にさらされるセンサ装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、センサチップが被測定媒体にさらされるセンサ装置では、センサチップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤ等を被測定媒体から保護する必要がある。そのため、下記特許文献1に開示される圧力センサ装置では、ボンディングワイヤを介してターミナルに電気的に接続された圧力検出素子がケースの凹部内にダイボンディングされており、この凹部内にフッ素ゲルやフッ素ゴムなどからなる保護部材を充填することで、ボンディングワイヤ等を封止して保護している。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるようなセンサ装置の構成では、例えば、高圧の被測定媒体の圧力等の物理量を測定する場合、高圧環境下のために空気が保護部材に溶け込んで当該保護部材中に気泡が発生する場合がある。このように保護部材中に気泡が発生した後に減圧されて気泡が膨張すると、この気泡にクラックが生じることとなり、ボンディングワイヤ近傍に発生した気泡にクラックが生じると、ボンディングワイヤが断線してしまうという懸念がある。
【0004】
このため、下記特許文献2に開示される半導体圧力センサでは、センサチップと導体部とを電気的に接続するボンディングワイヤとして金とパラジウムから構成された合金を採用している。これにより、アルミ基材からなるボンディングパッドからボンディングワイヤ中へのアルミの拡散が抑制されて、ボンディングワイヤを極力太くすることなく、当該ボンディングワイヤの強度を向上させている。
【0005】
また、下記特許文献3に開示される半導体圧力センサ装置では、センサチップ及びボンディングワイヤを被覆するために凹部に充填された保護部材が、下層側の第1の保護部材とこの第1の保護部材よりも上層側の第2の保護部材との2層構造となっている。そして、下層側の第1の保護部材は、電気的絶縁性を有し且つ比較的高いヤング率のフッ素系の接着性ゴム材料により構成され、上層側の第2の保護部材は、電気的な絶縁性を有し且つ比較的低いヤング率のフッ素系のゲル材料により構成され、両保護部材は、20℃のガソリンに浸漬されたときの飽和膨潤率が7重量%以下に設定されている。これにより、環境中の薬品や水分による保護部材内の気泡発生を防止している。
【0006】
また、下記特許文献4に開示される半導体圧力センサ装置では、パッドを構成するAl膜の表面に第1保護膜を成膜し、この第1保護膜のコンタクトホール部分を除去した後に、さらに第2保護膜を形成してこの第2保護膜のコンタクトホール部分を除去する。そして、スパッタ法により第2保護膜の表面にAu膜を成膜した後、Au膜および第2保護膜の上部を削り取ることで、第2保護膜の開口部の側壁面と第2保護膜の開口部から露出した第1保護膜およびAl膜との表面にのみ、Au膜が形成された構成となる。このように構成されるAu膜の表面にボンディングワイヤを接合することで、腐食媒体がAlで構成されたボンディング用のパッドに浸入することを防止して、ボンディング箇所での電気的な接続構造の耐久性能の劣化を防止している。
【0007】
また、下記特許文献5に開示される半導体装置では、電極配線を含む基板全面にプラズマ窒化膜およびCVD酸化膜を形成した後、電極配線上の所定の位置を開口し、蒸着法により金を蒸着した後に金膜のボンディングパッド部以外をエッチングすることで、ボンディングパッド部における水の侵入を抑制するとともに当該ボンディングパッド部の腐食を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−194682号公報
【特許文献2】特開2004−257950号公報
【特許文献3】特開2005−283587号公報
【特許文献4】特開2007−024777号公報
【特許文献5】特開平01−318240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2に開示されるような構成のセンサ装置では、上述のようにボンディングワイヤの材料として金とパラジウムから構成された合金を採用するため、単一材料のボンディングワイヤを採用する場合と比較して、専用のワイヤ成形設備が必要となり、製造コストの低減を図ることが困難になるという問題がある。また、上記特許文献3に開示されるような構成のセンサ装置では、飽和膨潤率が特定された2種類の保護部材を採用するため、単一の保護部材を採用する場合と比較して、材料費が増大するだけでなく、2種類の保護部材を混ぜることなく充填する専用の設備が必要となり、製造コストの低減を図ることが困難になるという問題がある。また、上記特許文献4,5に開示されるような構成のセンサ装置では、蒸着等により金属薄膜を形成するため、大掛かりな真空設備が必要となるだけでなく、ランニングコストが増加し、製造コストの低減を図ることが困難になるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡易な設備でセンサチップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤを保護し得るセンサ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のセンサ装置の製造方法では、被測定媒体にさらされてこの被測定媒体の物理量に応じた信号をターミナルを介して出力するセンサチップを有するセンサ装置の製造方法であって、前記センサチップを組み付けるための凹部が形成されてこの凹部内に前記ターミナルの一部が露出するケースを用意する第1工程と、前記凹部内に前記センサチップを組み付ける第2工程と、前記センサチップの入出力端子と対応する前記ターミナルの一部とをボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続する第3工程と、溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液を、前記ボンディングワイヤが浸漬するように前記凹部内に注入する第4工程と、前記ターミナルに所定の電圧を印加することで前記コロイド溶液内に電位勾配を発生させて、前記帯電粒子を電気泳動により前記ボンディングワイヤの表面に付着させる第5工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のセンサ装置の製造方法において、前記センサチップは、前記被測定媒体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサチップであることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のセンサ装置の製造方法において、前記第2工程では、前記センサチップからの信号を処理する回路チップと当該センサチップとを前記凹部内に組み付け、前記第3工程では、前記回路チップの入出力端子と、対応する前記センサチップの入出力端子および前記ターミナルの一部とをボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ装置の製造方法において、前記溶媒が揮発性の有機溶媒であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置の製造方法において、前記帯電粒子が二酸化チタンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、第2工程にて凹部内に組み付けられたセンサチップの入出力端子と対応するターミナルの一部とを、第3工程にてボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続する。そして、第4工程にて、溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液を、ボンディングワイヤが浸漬するように凹部内に注入し、第5工程にて、ターミナルに所定の電圧を印加することでコロイド溶液内に電位勾配を発生させて、帯電粒子を電気泳動によりボンディングワイヤの表面に付着させる。
【0017】
このように、ターミナルに所定の電圧を印加するだけで、ボンディングワイヤの表面に帯電粒子の付着による保護膜が成膜されるので、ボンディングワイヤを容易に保護することができる。特に、従来、ボンディングワイヤを保護するために使用していたフッ素ゲル等の保護部材が不要になるだけでなく、スパッタや蒸着等のための大掛かりな専用設備等が不要になり、ボンディングワイヤ等を保護するための設備が簡易化されるので、センサ装置の製造コストの低減を図ることができる。
したがって、簡易な設備でセンサチップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤを保護することができる。
【0018】
請求項2の発明では、センサチップは、被測定媒体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサチップであるため、高圧の被測定媒体が測定対象となるセンサ装置であっても、センサチップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤを簡易な設備で容易に保護することができる。
【0019】
請求項3の発明では、第2工程にて凹部内に組み付けられた回路チップの入出力端子と、対応するセンサチップの入出力端子およびターミナルの一部とを、第3工程にてボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続する。これにより、第4工程にて、溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液を、ボンディングワイヤが浸漬するように凹部内に注入し、第5工程にて、ターミナルに所定の電圧を印加することで、センサチップおよび回路チップを電気的に接続するボンディングワイヤと、回路チップおよびターミナルを電気的に接続するボンディングワイヤとの表面に帯電粒子が付着する。
【0020】
このため、センサチップからの信号を処理する回路チップを被測定媒体にさらされる凹部に配置する場合であっても、回路チップの入出力端子に接続されるボンディングワイヤを簡易な設備で容易に保護することができる。
【0021】
請求項4の発明では、溶媒が揮発性の有機溶媒であるため、第5工程にて帯電粒子をボンディングワイヤの表面に付着させた後の溶媒の蒸発、すなわち、溶媒の除去を容易に実施することができる。
【0022】
請求項5の発明では、帯電粒子が二酸化チタンであるため、他の帯電粒子と比べて分散性が良好であって入手性および安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る圧力センサの構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1のケースをポート側端面側から見た図である。
【図3】図2の凹部近傍を拡大して示す図である。
【図4】図3に示す4−4線の切断面に相当する断面図である。
【図5】圧力センサの製造工程の流れを示す工程図である。
【図6】図5の第2工程を説明するための説明図である。
【図7】図5の第3工程を説明するための説明図である。
【図8】図5の第4工程を説明するための説明図である。
【図9】図5の第5工程を説明するための説明図である。
【図10】第5工程の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るセンサ装置を圧力センサに適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る圧力センサ10の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1のケース20をポート側端面22側から見た図である。図3は、図2の凹部23を拡大して示す図である。図4は、図3に示す4−4線の切断面に相当する断面図である。なお、図3および図4では、説明の便宜上、各保護膜71〜79等の太さを誇張して図示している。また、図2,図3および後述する図6,図7,図9,図10では、説明の便宜上、保護部材25の図示を省略している。
【0025】
本実施形態に係る圧力センサ10は、自動車のインテークマニホールドに取り付けられて、このインテークマニホールド内の被測定媒体の物理量としてその圧力を検出するセンサ装置として用いられる。この圧力センサ10は、図1に示すように、主に、外部と接続される複数のターミナル21がインサート成形されたケース20と、圧力検出用のセンサチップ(圧力センサチップ)40と、このセンサチップ40から出力される信号の増幅等の処理を行う回路チップ50と、センサチップ40へ被測定媒体を導入する圧力導入孔34を有するポート部30とを備えている。
【0026】
ケース20は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やエポキシ樹脂等の樹脂材料を、金型を用いて成形してなるものである。このケース20のポート側端面22には、センサチップ40および回路チップ50を設置するための凹部23が設けられている。
【0027】
各ターミナル21は、例えば銅などの導電材料により構成されており、一側端部が凹部23内に露出し、他側端部が図略の外部機器に接続可能に開口部24内に突出するように、それぞれ配置されている。図3に示すように、各ターミナル21の凹部23内に露出する一側端部は、金メッキなどが施されることで、ボンディングパッド21a〜21dとして機能するように構成されている。なお、ボンディングパッド21aは、電気トリム用パッドであり、ボンディングパッド21bは、電源用パッドであり、ボンディングパッド21cは、出力用パッドであり、ボンディングパッド21dは、GND用パッドである。
【0028】
ポート部30は、センサチップ40に被測定媒体を導くものであり、ケース20のポート側端面22を覆うようにケース20に対して一端31が接着剤等によって連結されている。これに伴い、ケース20のポート側端面22とポート部30との間に圧力検出室33が形成されている。また、ポート部30の他端32は、ケース20とは反対側の方向へ突出しており、その内部には突出先端から上記圧力検出室33に通じる圧力導入孔34が形成されている。そして、インテークマニホールド内の吸気などの被測定媒体が、圧力導入孔34を介して圧力検出室33に導入されて、この被測定媒体の圧力がセンサチップ40によって検出されるようになっている。
【0029】
このように形成されるポート部30は、上記ケース20と同様に、PBT、PPSなどの樹脂材料を、金型を用いて成形してなるものである。また、ポート部30は、その外周部には図略のOリングが設けられており、このOリングを介してインテークマニホールドの吸気管に対して気密に取り付け可能に構成されている。
【0030】
センサチップ40は、シリコン半導体チップであって、図4に示すように、歪み部としてのダイアフラム41と、このダイアフラム41に拡散抵抗などにより形成されたブリッジ回路などを備えており、被測定媒体の圧力に応じたダイアフラム41の変位(歪み)に基づく圧力信号を回路チップ50へ出力するように構成されている。また、センサチップ40の表面には、入出力端子として、パッド42a〜42fなどが形成されている。このように構成されるセンサチップ40は、ケース20の凹部23に固定されたガラス台座43上に接着固定されている。
【0031】
回路チップ50は、MOSトランジスタ素子などが形成されたシリコン半導体チップとして構成されるチップで、センサチップ40に対する駆動信号を出力し、センサチップ40から入力される圧力信号を演算・増幅処理して外部へ出力する等の機能を有する制御回路を備えたものである。また、回路チップ50の表面には、入出力端子として、パッド51a〜51hなどが形成されている。このように構成される回路チップ50は、ケース20の凹部23内のセンサチップ40の近傍に配置されている。
【0032】
そして、センサチップ40のパッド42a〜42eと回路チップ50のパッド51a〜51eとは、ボンディングワイヤ61〜65を介して電気的に接続されている。また、センサチップ40のパッド42fとターミナル21のボンディングパッド21aは、ボンディングワイヤ66を介して電気的に接続されている。また、回路チップ50のパッド51f〜51hとターミナル21のボンディングパッド21b〜21dは、ボンディングワイヤ67〜69を介して電気的に接続されている。なお、各ボンディングワイヤ61〜69は、金線から構成されている。
【0033】
そして、これら各ボンディングワイヤ61〜69と、センサチップ40のパッド42a〜42fと、回路チップ50のパッド51a〜51hとは、被測定媒体等からの保護や防食などを目的として、その表面が、後述する保護膜71〜79等により被覆保護されている。
【0034】
また、ケース20の凹部23の底部には、圧力検出室33の気密性を確保するために、フッ素ゴムからなる保護部材25が充填されている(図4参照)。
【0035】
次に、上述のように構成される圧力センサ10の製造工程について、図5〜図9を用いて説明する。図5は、圧力センサ10の製造工程の流れを示す工程図である。図6は、図5の第2工程を説明するための説明図である。図7は、図5の第3工程を説明するための説明図である。図8は、図5の第4工程を説明するための説明図である。図9は、図5の第5工程を説明するための説明図である。
【0036】
まず、上述したケース20、ポート部30、センサチップ40および回路チップ50をそれぞれ用意する(第1工程)。次に、図6に示すように、第1工程によって用意したケース20の凹部23内に、センサチップ40および回路チップ50を組み付ける(第2工程)。
【0037】
続いて、ワイヤボンディングによって、図7に示すように、センサチップ40のパッド42a〜42eと回路チップ50のパッド51a〜51eとを、ボンディングワイヤ61〜65により電気的に接続し、センサチップ40のパッド42fとターミナル21のボンディングパッド21aとを、ボンディングワイヤ66により電気的に接続し、回路チップ50のパッド51f〜51hとターミナル21のボンディングパッド21b〜21dとを、ボンディングワイヤ67〜69により電気的に接続する(第3工程)。
【0038】
次に、酸性の揮発性有機溶媒に、帯電粒子として二酸化チタンのナノコロイド粒子を分散させて界面動電電位を発生させたコロイド溶液80を作製し、このコロイド溶液80を、図8に示すように、各ボンディングワイヤ61〜69および各パッド42a〜42f,51a〜51hが浸漬するように、凹部23内に注入する(第4工程)。
【0039】
続いて、コロイド粒子(帯電粒子)を電気泳動により各ボンディングワイヤ61〜69等の表面に付着させて成膜するために、各ターミナル21に所定の電圧を印加する(第5工程)。具体的には、まず、ボンディングパッド21a,21bに正電圧が印加されるとともにボンディングパッド21c,21dに負電圧が印加されるように、各ターミナル21に所定の電圧を印加する。
【0040】
コロイド溶液80内には各ボンディングワイヤ61〜69およびパッド42a〜42f,51a〜51hが浸漬しているので、当該コロイド溶液80内に電位勾配が発生する。このため、コロイド粒子が、帯電している極性と逆の電圧が印加された導電部、すなわち、ボンディングワイヤ64〜67と、センサチップ40のパッド42d〜42fと、回路チップ50のパッド51d,51e,51gと、ボンディングパッド21a,21bとの表面に電気泳動により付着することとなる。このコロイド粒子の付着により、図9に示すように、ボンディングワイヤ64〜67の表面が保護膜74〜77により被覆保護されるとともに、各パッド42d〜42f、51d,51e,51g、21a,21cの表面が保護膜(図示略)により被覆保護される。
【0041】
保護膜74〜77等が成膜されると、ボンディングパッド21a,21bに負電圧が印加されるとともにボンディングパッド21c,21dに正電圧が印加されるように、すなわち、上記成膜時と逆の極性の電圧が印加されるように、各ターミナル21に所定の電圧を印加する。
【0042】
これにより、コロイド粒子が、ボンディングワイヤ61〜63,68,69と、センサチップ40のパッド42a〜42cと、回路チップ50のパッド51a〜51c,51f,51hと、ボンディングパッド21b,21dとの表面に電気泳動により付着することとなる。このコロイド粒子の付着により、ボンディングワイヤ61〜63,68,69の表面が保護膜71〜73,78,79により被覆保護されるとともに、各パッド42a〜42c,51a〜51c,51f,51h,21c,21dの表面が保護膜(図示略)により被覆保護される。なお、上記所定の電圧は、例えば、各ボンディングワイヤ61〜69の表面に成膜される保護膜71〜79の厚さが、1〜4μmとなる程度に設定されている。
【0043】
次に、凹部23内の溶媒(コロイド溶液80)を蒸発させることで当該溶媒を除去する(第6工程)。ここで、本実施形態では、溶媒を高温環境にさらすことで蒸発させているが、これに限らず、例えば、溶媒を直接加熱することで蒸発させてもよいし、送風機等による送風により溶媒の蒸発させてもよい。
【0044】
続いて、上述のように各保護膜71〜79等が成膜された状態の凹部23の底部にフッ素ゴムからなる保護部材25を充填する(第7工程)。これにより、凹部23の底部におけるケース本体とターミナルとの隙間等が保護部材25により塞がれて、圧力検出室33の気密性が確保される。なお、本第7工程は、充填する保護部材の特性に応じて、ワイヤボンディング処理を実施する第3工程の後であって、コロイド溶液80を凹部23内に注入する第4工程の前に実施してもよい。
【0045】
そして、このようにセンサチップ40および回路チップ50が組み付けられたケース20に対して、そのポート側端面22を覆うようにポート部30を組み付けることで、図1に示す圧力センサ10が完成する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る圧力センサ10の製造方法では、第2工程にて凹部23内に組み付けられたセンサチップ40の各パッド42a〜42fおよび回路チップ50の各パッド51a〜51hやボンディングパッド21a〜21dを、第3工程にてボンディングワイヤ61〜69によりそれぞれ電気的に接続する。そして、第4工程にて、有機溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液80を、ボンディングワイヤ61〜69等が浸漬するように凹部23内に注入し、第5工程にて、各ターミナル21に所定の電圧を印加することでコロイド溶液80内に電位勾配を発生させて、帯電粒子を電気泳動によりボンディングワイヤ61〜69の表面に付着させて、保護膜71〜79を成膜する。
【0047】
このように、各ターミナル21に所定の電圧を印加するだけで、ボンディングワイヤ61〜69の表面に帯電粒子の付着による保護膜71〜79が成膜されるので、ボンディングワイヤ61〜69を容易に保護することができる。特に、従来、ボンディングワイヤを保護するために使用していたフッ素ゲル等の保護部材が不要になるだけでなく、スパッタや蒸着等のための大掛かりな専用設備等が不要になり、ボンディングワイヤ等を保護するための設備が簡易化されるので、圧力センサ10の製造コストの低減を図ることができる。
したがって、センサチップ40や回路チップ50を被測定媒体にさらされる凹部23に配置する場合であっても、簡易な設備でセンサチップ40や回路チップ50の各パッドに接続されるボンディングワイヤ61〜69等を保護することができる。
【0048】
特に、センサチップ40は、被測定媒体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサチップであるため、高圧の被測定媒体が測定対象となる圧力センサ10であっても、センサチップ40の各パッドに接続されるボンディングワイヤを簡易な設備で容易に保護することができる。
【0049】
また、帯電粒子を分散させる溶媒が揮発性の有機溶媒であるため、第5工程にて帯電粒子をボンディングワイヤ61〜69等の表面に付着させた後の第7工程における溶媒の蒸発、すなわち、溶媒の除去を容易に実施することができる。なお、製造設備等に応じて、揮発性の有機溶媒に代えて、帯電粒子を分散させて界面動電電位を発生させることが可能な溶媒を採用してもよい。
【0050】
さらに、帯電粒子が二酸化チタンであるため、他の帯電粒子と比べて分散性が良好であって入手性および安全性を高めることができる。なお、製造設備等に応じて、例えば、酸化亜鉛等を帯電粒子として採用してもよい。
【0051】
図10は、第5工程の変形例を説明するための説明図である。
上述した第5工程では、ボンディングパッド21a,21bに負電圧を、ボンディングパッド21c,21dに正電圧を印加することで、図10に示すように、ボンディングワイヤ61〜63,68,69等の表面に保護膜71〜73,78,79等を成膜した後、ボンディングパッド21a,21bに正電圧を、ボンディングパッド21c,21dに負電圧を印加することで、残りのボンディングワイヤ64〜67等の表面に保護膜74〜7等を成膜してもよい。
【0052】
本実施形態の変形例として、本実施形態に係る圧力センサの製造方法を、回路チップ50を除いた圧力センサ10に適用してもよい。
このように構成される圧力センサ10であっても、第2工程にて凹部23内に組み付けられたセンサチップ40の各パッドと対応するボンディングパッドとを、第3工程にてボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続し、第4工程にてコロイド溶液80をボンディングワイヤ等が浸漬するように凹部23内に注入し、第5工程にて各ターミナル21に所定の電圧を印加することで、ボンディングワイヤ等の表面に保護膜を成膜することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本実施形態に係るセンサ装置の製造方法は、インテークマニホールド内の被測定媒体の圧力を検出する圧力センサの製造方法に適用されることに限らず、他の被測定媒体の圧力を検出する圧力センサの製造方法に適用されてもよいし、温度センサ等、被測定媒体の物理量を測定するセンサチップ等が当該被測定媒体や腐食雰囲気など保護すべき雰囲気中にさらされるセンサ装置の製造方法に適用されてもよい。
【0054】
(2)各ボンディングワイヤ61〜69は、金線から構成されることに限らず、上述した保護膜が表面に成膜可能な導電部材から構成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…圧力センサ(センサ装置)
20…ケース
21…ターミナル
21a〜21d…ボンディングパッド(ターミナルの一部)
23…凹部
30…ポート部
40…センサチップ
42a〜42f…パッド(入出力端子)
50…回路チップ
51a〜51h…パッド(入出力端子)
61〜69…ボンディングワイヤ
71〜79…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定媒体にさらされてこの被測定媒体の物理量に応じた信号をターミナルを介して出力するセンサチップを有するセンサ装置の製造方法であって、
前記センサチップを組み付けるための凹部が形成されてこの凹部内に前記ターミナルの一部が露出するケースを用意する第1工程と、
前記凹部内に前記センサチップを組み付ける第2工程と、
前記センサチップの入出力端子と対応する前記ターミナルの一部とをボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続する第3工程と、
溶媒に帯電粒子を分散させたコロイド溶液を、前記ボンディングワイヤが浸漬するように前記凹部内に注入する第4工程と、
前記ターミナルに所定の電圧を印加することで前記コロイド溶液内に電位勾配を発生させて、前記帯電粒子を電気泳動により前記ボンディングワイヤの表面に付着させる第5工程と、
を備えることを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項2】
前記センサチップは、前記被測定媒体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサチップであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記センサチップからの信号を処理する回路チップと当該センサチップとを前記凹部内に組み付け、
前記第3工程では、前記回路チップの入出力端子と、対応する前記センサチップの入出力端子および前記ターミナルの一部とをボンディングワイヤによりそれぞれ電気的に接続することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒が揮発性の有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項5】
前記帯電粒子が二酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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