説明

センサ装置

【課題】検出レンジや応答周波数レンジ等を適宜カスタマイズすることで汎用性を高めることができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】所定のセンサ出力特性を備えたセンサ装置1に外部からセンサ出力特性を調整するための要求信号を入力し、当該センサ装置1が設置される場所や用途に応じてセンサ装置1が備えるべきセンサ出力特性にそれぞれを調整する。これにより、共通のセンサ出力特性を備えたセンサ装置1を複数製造したとしても、様々な車種、用途、搭載位置に応じたセンサ出力特性を各センサ装置1に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの要求に応じて検出レンジ等が調整されるセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両におけるABSやエアバッグシステムに用いられる加速度センサが、例えば特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、検出加速度に応じた電圧信号を出力する加速度トランスジューサと、電圧信号のうち一定の周波数帯域の成分を通過させる第1のフィルタと、電圧信号のうち第1のフィルタとは異なる周波数帯域の成分を通過させる第2のフィルタと、第1、第2のフィルタを通じて得られる各電圧信号のレベルを調整する出力電圧調整手段とを備えた加速度センサが提案されている。
【0003】
このような加速度センサにおいては、第1のフィルタおよび第2のフィルタの帯域通過特性が調整され、さらに出力電圧調整手段によって各フィルタを通じて得られる各電圧信号のレベルが調整される、これにより、1つの加速度トランスジューサの出力に対して1つの応答周波数レンジ特性の検出信号、もしくは応答周波数レンジ特性が異なる複数の検出信号を取得することができるようになっている。
【特許文献1】特開平10−282136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、加速度センサが取り付けられる車種や場所、加速度センサの用途の違いによって、これらの状況に合った検出レンジや応答周波数レンジ等での信号が出力されるように、加速度センサにあらかじめ検出レンジや応答周波数レンジ等のバリエーションを備えておく必要があった。
【0005】
そのため、様々な状況に加速度センサが用いられるようにするためには、いくつもの検出レンジや応答周波数レンジ等のバリエーションをあらかじめ加速度センサに備えなければならず、回路規模の拡大や出力系統の増加という問題が生じてしまう。この場合、あらかじめ必要な検出レンジや応答周波数レンジ等のバリエーションを加速度センサに統合しておく必要があるため、他の用途に加速度センサを用いることができなかった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、検出レンジや応答周波数レンジ等を適宜カスタマイズすることで汎用性を高めることができるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、物理量を検出して物理量に応じた検出信号を出力する検出素子(40)と、前記検出素子(40)から検出信号を入力し、検出信号を処理するためのパラメータとなる第1のセンサ出力特性に従って検出信号を処理するセンサ回路部(50)と、外部から入力される要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性を抽出する通信部(10)と、通信部(10)から第2のセンサ出力特性を入力し、センサ回路部(50)の第1のセンサ出力特性を第2のセンサ出力特性に調整する制御部(30)とを備えていることを特徴とする。
【0008】
これにより、あらかじめセンサ装置に第1のセンサ出力特性が設定されていたとしても、外部からセンサ装置に要求信号を入力することで、センサ装置が用いられる状況に応じた第2のセンサ出力特性を設定するができる。したがって、共通の第1のセンサ出力特性が設定されたセンサ装置を複数製造したとしても、センサ装置の用途に応じた第2のセンサ出力特性を後から設定できるため、センサ装置の汎用性を高めることができる。
【0009】
このように、センサ装置を用途に応じた仕様に変更できることから、従来のように様々なバリエーションや複数の出力系統をセンサ装置に備える必要がなく、様々なバリエーションの回路設計を行う必要もなくなり、回路規模を大きくする必要もない。すなわち、省コストでセンサ装置を製造することができ、省スペースでセンサ装置を設置することができる。
【0010】
このようなセンサ装置において、センサ回路部(50)には、第1のセンサ出力特性として検出素子(40)の検出レンジが設定された増幅回路(52)が備えられており、要求信号に第2のセンサ出力特性として増幅回路(52)における検出レンジが含まれている場合、制御部(30)は増幅回路(52)における検出レンジを要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としての検出レンジに調整することができる。
【0011】
このように、増幅回路(52)における検出レンジを調整することができる。ここで、検出レンジを検出素子(40)の増幅率として調整することができる。すなわち、増幅回路(52)の増幅率を調整することで、検出素子(40)の検出レンジ(感度)を調整することができる。
【0012】
センサ回路部(50)には、第1のセンサ出力特性として検出信号のオフセット値が設定された増幅回路(52)が備えられており、要求信号に第2のセンサ出力特性として増幅回路(52)におけるオフセット値が含まれている場合、制御部(30)は増幅回路(52)におけるオフセット値を要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としてのオフセット値に調整することができる。
【0013】
このように、増幅回路(52)における検出信号のオフセット値を調整することもできる。この場合、例えば、増幅回路(52)を構成するオペアンプ(52b)の基準電位を調整するための抵抗(52d)の抵抗値を変更することにより、オフセット値を調整することが可能である。
【0014】
センサ回路部(50)には、第1のセンサ出力特性として検出信号において所望の周波数帯の成分のみを通過させる応答周波数レンジが設定されたフィルタ回路(53)が備えられており、要求信号に第2のセンサ出力特性としてフィルタ回路(53)の応答周波数レンジが含まれている場合、制御部(30)はフィルタ回路(53)の応答周波数レンジを要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としての応答周波数レンジに調整することができる。
【0015】
このように、フィルタ回路(53)の応答周波数レンジを調整することもできる。この場合、応答周波数レンジを調整するためにフィルタ回路(53)を構成する抵抗(53d)の抵抗値やコンデンサ(53c)の容量値等を調整すれば良い。
【0016】
センサ回路部(50)には、検出信号をA/D変換するA/D変換部(54)と、第1のセンサ出力特性としてA/D変換部(54)にてA/D変換された検出信号が一定の範囲内であるかを判定するための出力オフセット判定値が設定された信号処理部(55)とが備えられており、要求信号に第2のセンサ出力特性として信号処理部(55)の出力オフセット判定値が含まれている場合、制御部(30)は信号処理部(55)の出力オフセット判定値を要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としての出力オフセット判定値に調整することができる。
【0017】
このように、A/D変換されたデジタル信号としての検出信号を信号処理部(55)にて処理するに際し、出力オフセット判定値を調整することができる。
【0018】
センサ回路部(50)には、第1のセンサ出力特性として検出素子(40)の自己診断の際に検出素子(40)から出力させる自己診断出力値が設定された自己診断印加部(51)が備えられており、要求信号に第2のセンサ出力特性として自己診断印加部(51)の自己診断出力値が含まれている場合、制御部(30)は自己診断印加部(51)の自己診断出力値を要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としての自己診断出力値に調整することができる。
【0019】
これによると、検出素子(40)が正常に機能しているかを自己診断する際、自己診断結果の値である自己診断出力値を調整することができる。この場合、例えば、抵抗(51c)の抵抗値を変更することにより、自己診断出力値を調整することが可能である。
【0020】
信号処理部(55)には、第1のセンサ出力特性として検出素子(40)から出力された自己診断出力値が一定の範囲内であるかを判定するための自己診断出力判定値が設定されており、要求信号に第2のセンサ出力特性として信号処理部(55)の自己診断出力判定値が含まれている場合、制御部(30)は信号処理部(55)の自己診断出力判定値を要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としての自己診断出力判定値に調整することができる。このように、自己診断出力値を判定するための自己診断出力判定値を調整することもできる。
【0021】
書き換え可能なメモリ(20)を備え、メモリ(20)には、第1のセンサ出力特性としてIDコードが記憶されており、要求信号に第2のセンサ出力特性としてIDコードが含まれている場合、制御部(30)はメモリ(20)のIDコードを要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としてのIDコードに書き換えることができる。
【0022】
このように、センサ装置のIDコードを別のIDコードに書き換えることができる。これによると、複数のセンサ装置を用いた制御等を行う場合、各センサ装置を識別できるIDコードをそれぞれに割り振ることができる。
【0023】
また、書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、各メモリ(20)にそれぞれ異なるセンサ出力特性が記憶されており、制御部(30)は、各メモリ(20)に記憶された各センサ出力特性を順番にセンサ回路部(50)に調整することができる。
【0024】
これにより、複数のセンサ出力特性を順にセンサ回路部(50)に設定することができる。例えば、センサ装置が搭載される車両の速度の変化、車両の横滑り制御、車両の衝突を検出する際等、各場面に適したセンサ出力特性を車両の走行状態に応じて切り替えることが可能となる。
【0025】
書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、各メモリ(20)にそれぞれ異なるセンサ出力特性が記憶されており、制御部(30)は、外部からの要求に応じて、センサ回路部(50)に設定された第1のセンサ出力特性を各メモリ(20)に記憶されたセンサ出力特性のいずれかに調整することができる。
【0026】
これにより、センサ装置が搭載される状況に応じたセンサ出力特性をセンサ回路部(50)に設定することができる。言い換えると、様々な状況にセンサ装置を用いる事が可能となる。
【0027】
書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、各メモリ(20)に第1のセンサ出力特性の調整の変更履歴が記憶されるようになっており、制御部(30)は、外部からの要求に応じて、各メモリ(20)に記憶された変更履歴を用いてセンサ回路部(50)に設定されたセンサ出力特性を調整することができる。
【0028】
これにより、外部からセンサ装置に要求信号を入力しなくても、メモリ(20)に記憶された過去のセンサ出力特性のデータを用いて、センサ回路部(50)に過去のセンサ出力特性を設定することができる。
【0029】
また、センサ回路部(50)にて処理された検出信号をアナログ信号として外部に出力することもできるし、A/D変換部(54)にてA/D変換された検出信号を通信部(10)を介してデジタル信号として外部に出力することもできる。
【0030】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態では、例えば、車両に搭載され、エアバッグを動作させるために用いられるセンサ装置について説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ装置のブロック図である。この図に示されるように、センサ装置1は、通信部10と、メモリ20と、制御部30と、検出素子40と、センサ回路部50とを備えて構成されている。このうち、センサ回路部50は、自己診断印加部51と、増幅回路52と、フィルタ回路53と、A/D変換部54と、DSP部55とを備えている。
【0034】
また、図2は、図1に示されるセンサ装置1のうち、自己診断印加部51、検出素子40、増幅回路52、フィルタ回路53の各回路図を示したものである。以下、図1および図2を参照して説明する。
【0035】
通信部10は、外部から入力される要求信号を解読し、解読した要求信号の内容を制御部30に入力する通信手段である。このような通信部10は、例えばCANなどのシリアル通信を行う機能を有している。なお、通信部10において、DSIやPSIを用いても良い。
【0036】
この要求信号には、センサ出力特性の内容が含まれている。センサ出力特性とは、センサ装置1において信号処理を行う際のパラメータである。具体的に、センサ出力特性として、検出素子40の検出レンジ(感度)、フィルタ回路53の応答周波数レンジ、増幅回路52に設定される出力オフセット値、増幅回路52に設定されるオフセット値が一定の範囲内であるかを判定するための出力オフセット判定値、自己診断印加部51において自己診断を行うための電圧値を設定する自己診断出力値、センサ装置1から外部に出力される自己診断出力値が一定の範囲内であるかを判定するための自己診断出力判定値、センサ装置1を識別するためのIDコードの各パラメータを指す。このように、要求信号は、センサ回路部50における信号処理のパラメータを含んだ信号である。
【0037】
要求信号には、上記各パラメータの調整値のうちいずれかまたは複数がデータとして含まれている。調整値とは、センサ装置1が取り付けられる車種や場所、用途に応じた最適値を指す。すなわち、通信部10は、要求信号に含まれるセンサ出力特性を抽出するものである。
【0038】
なお、要求信号に含まれるセンサ出力特性は本発明の第2のセンサ出力特性に相当する。他方、センサ装置1が製造された段階において当該センサ装置1に設定されたセンサ出力特性が本発明の第1のセンサ出力特性に相当する。
【0039】
メモリ20は、通信部10に入力された要求信号に含まれるデータや、センサ装置1が製造された際のセンサ出力特性の初回調整値等を格納するための記憶手段である。このようなメモリ20として、例えば書き換え可能な不揮発性メモリが採用される。
【0040】
図1では、メモリ20を一つだけ描いてあるが、複数のメモリ20が備えられていても良い。この場合、各メモリ20に異なるデータを記憶させることができる。例えば、複数のメモリ20のうち一つに、センサ出力特性であるセンサ装置1のIDコードを記憶しておくことができる。
【0041】
制御部30は、通信部10を介して入力される要求信号の内容に従って、自己診断印加部51、検出素子40、増幅回路52、フィルタ回路53等の各調整値を設定する機能を有するものである。制御部30の作動については、後で詳しく説明する。
【0042】
検出素子40は、物理量を検出するものである。本実施形態では、センサ装置1がエアバッグ用に用いられるため、図2に示されるように、検出素子40として車両の加速度を検出する加速度センサ41が採用される。
【0043】
具体的に、加速度センサ41として、静電容量の変化を検出することで加速度を検出するもの、例えばシリコン基板等に対して一般に知られている櫛歯構造を有する梁構造体が形成されており、この梁構造体によって可動電極および固定電極が構成されたものが採用される。そして、図2に示されるように、可動電極と固定電極とが対向配置された第1コンデンサ41aおよび第2コンデンサ41bが直列に接続され、加速度センサ41が構成されている。このような加速度センサ41は、各コンデンサ41a、41bにおける差動容量の変化を出力する。
【0044】
また、図2に示されるように、検出素子40にCV変換部42が備えられている。このCV変換部42は、加速度センサ41の出力、すなわち差動容量の変化を電圧に変換するものであり、オペアンプ42aとCV変換用コンデンサ42bとを有している。オペアンプ42aの反転入力端子には加速度センサ41の各コンデンサ41a、41bの各可動電極が接続されており、オペアンプ42aの反転入力端子と出力端子との間にCV変換用コンデンサ42bが接続されている。
【0045】
CV変換部42の非反転入力端子には、基準電圧を出力するものであって加速度センサ41の出力を自己診断するための自己診断印加部51が接続されている。この自己診断印加部51は、直列接続された抵抗51a、51bと、各抵抗51a、51bの接続点に接続された自己診断調整用抵抗51cと、自己診断調整用抵抗51cに接続されると共に自己診断時にオンされるトランジスタ51dとにより構成されている。
【0046】
このような加速度センサ41、CV変換部42、および自己診断印加部51の構成において、加速度検出の際、自己診断印加部51の各抵抗51a、51bの分圧である基準電圧(例えば2.5V)がCV変換部42の非反転入力端子に入力されるようになっている。そして、CV変換部42のオペアンプ42aの作動によって反転入力端子が基準電圧になるようにバイアスされ、各コンデンサ41a、41bの各可動電極に2.5Vの基準電圧が印加される。したがって、各コンデンサ41a、41bには常に基準電圧の電位差が与えられる。
【0047】
また、加速度センサ41の各コンデンサ41a、41bの各固定電極には、位相差が180°であって振幅が例えば5Vの矩形波電圧Vpがそれぞれ周期的に印加される。これにより、加速度センサ41に加速度が加わると、各コンデンサ41a、41bの各可動電極が変位する。このため、加速度センサ41では、第1コンデンサ41aの容量をC1、第2コンデンサC2の容量をC2としたとき、各コンデンサ41a、41bの可動電極の変位に応じた差動容量変化C1−C2に基づく加速度が検出される。加速度に応じた差動容量の変化C1−C2は、検出信号として加速度センサ41から出力され、CV変換部42の反転入力端子に入力される。そして、CV変換部42にて、CV変換部42のCV変換用コンデンサ42bの容量をCfとしたとき、検出信号は(C1−C2)×5V/Cfに基づく電圧の信号とされる。
【0048】
他方、加速度センサ41の自己診断の際、制御部30によってトランジスタ51dがオンされる。これにより、各コンデンサ41a、41bの各可動電極に入力される基準電圧(例えば2.5V)が、自己診断調整用抵抗51cの抵抗値によってずらされるため、ずらされた基準電圧を元に戻そうとする各コンデンサ41a、41bの差動容量変化C1−C2が自己診断検出信号として加速度センサ41から出力される。
【0049】
増幅回路52は、検出素子40から入力される電圧信号を増幅するものであり、抵抗52a、オペアンプ52b、検出レンジ調整用抵抗52c、オフセット値調整用抵抗52dを備えている。抵抗52aの一端はCV変換部42のオペアンプ42aの出力端子に接続され、他端はオペアンプ52bの反転入力端子に接続されている。また、オペアンプ52bの反転入力端子と出力端子との間に検出レンジ調整用抵抗52cが接続され、オペアンプ52bの非反転入力端子にオフセット値調整用抵抗52dが接続されることで負帰還増幅回路が構成されている。
【0050】
このような増幅回路52では、抵抗52aおよび可変の検出レンジ調整用抵抗52cの抵抗値によって加速度センサ41の検出レンジ(感度)が設定される。また、オフセット値調整用抵抗52dによって基準電圧が設定されることで、加速度センサ41の出力のオフセット値が設定される。
【0051】
本実施形態では、制御部30によって検出レンジ調整用抵抗52cの抵抗値が変更される、すなわち増幅回路52の増幅率が変更されることで加速度センサ41の検出レンジ(感度)が調整され、オフセット値調整用抵抗52dの抵抗値が変更されることで加速度センサ41の出力のオフセット値が調整されるようになっている。
【0052】
フィルタ回路53は、入力される電圧信号のうち所望の周波数帯の成分のみを通過させるものであり、抵抗53a、オペアンプ53b、周波数調整用コンデンサ53c、周波数調整用抵抗53dを備えている。そして、抵抗53aの一端に増幅回路52のオペアンプ52bの出力端子が接続され、他端にオペアンプ53bの反転入力端子に接続されている。また、周波数調整用コンデンサ53cおよび周波数調整用抵抗53dの並列回路がオペアンプ53bの反転入力端子と出力端子との間に接続され、負帰還回路が構成されている。本実施形態では、フィルタ回路53はローパスフィルタとして機能する。フィルタ回路53の出力は、アナログ出力としてセンサ装置1から出力されると共に、A/D変換部54に入力される。
【0053】
このようなフィルタ回路53では、周波数調整用コンデンサ53cおよび周波数調整用抵抗53dの各値によって加速度センサ41の応答周波数レンジが設定される。また、周波数調整用コンデンサ53cおよび周波数調整用抵抗53dの各値が制御部30によって変更されることで、応答周波数レンジが調整されるようになっている。応答周波数レンジを調整することにより、例えばカットオフ周波数を規定することができる。
【0054】
A/D変換部54は、フィルタ回路53から入力されるアナログの電圧信号をデジタル信号に変換するものである。
【0055】
DSP部55は、A/D変換部54から入力されるデジタルの電圧信号を信号処理するものである。このようなDSP部55の機能として、デジタルフィルタや信号のレンジの切り分け等の処理がある。DSP部55の出力は、通信部10を介してデジタル出力としてセンサ装置1の外部に出力される。
【0056】
また、DSP部55は、一定範囲の値を示す出力オフセット判定値および自己診断出力判定値をそれぞれ備えており、フィルタ回路53から入力される電圧信号が出力オフセット判定値の範囲内であるか、自己診断出力判定値の範囲内であるかを判定する。電圧信号が出力オフセット判定値や自己診断出力判定値の範囲内でない場合、DSP部55は異常を示す信号を出力する。なお、DSP部55は、本発明の信号処理部(55)に相当する。
【0057】
以上が、本実施形態に係るセンサ装置1の構成である。なお、センサ装置1は上記各構成要素が例えばゲートアレーによって構成されているものを採用することができる。
【0058】
次に、センサ装置1のセンサ出力特性の調整方法について説明する。以下では、センサ装置1を車両の所望の場所に設置する場合に当該センサ装置1が備えるべきセンサ出力特性となるように、当該センサ装置1のセンサ出力特性を調整する場合について説明する。また、センサ装置1をエアバッグ用に用いるものとし、1台の車両に複数のセンサ装置1を搭載することとする。
【0059】
まず、図1に示されるセンサ装置1を複数製造する。この場合、自己診断印加部51の自己診断調整用抵抗51c、増幅回路52の検出レンジ調整用抵抗52cおよびオフセット値調整用抵抗52d、フィルタ回路53の周波数調整用コンデンサ53cおよび周波数調整用抵抗53dの各値を所定値としてセンサ装置1を複数製造する。すなわち、各センサ装置1それぞれが同じセンサ出力特性を有している。なお、メモリ20にセンサ装置1の製造時の初回調整値を記憶しても良い。
【0060】
次に、各センサ装置1を車両の所定の場所にそれぞれ搭載する。エアバッグ用のセンサ装置1には、フロント用、サイド用、さらにはその中でメイン用、セーフィング用等の様々なバリエーションが存在する。これら各センサ装置1では、車種や車両に設置される場所等に適合したセンサ出力特性が必要であり、各センサ装置1のセンサ出力特性はそれぞれ異なる。したがって、各センサ装置1のセンサ出力特性をそれぞれ調整する。以下では、1台のセンサ装置1のセンサ出力特性の調整について説明する。
【0061】
具体的には、センサ装置1のセンサ出力特性を調整するための調整装置を用いる。図3は、センサ装置1に調整装置2を接続したブロック図である。調整装置2は、センサ装置1のセンサ出力特性を調整するための要求信号を生成するものである。この要求信号には、上述のように、自己診断印加部51の自己診断調整用抵抗51c、増幅回路52の検出レンジ調整用抵抗52cおよびオフセット値調整用抵抗52d、フィルタ回路53の周波数調整用コンデンサ53cおよび周波数調整用抵抗53d、DSP部55の出力オフセット判定値および自己診断出力判定値、センサ装置1のIDコードの各値のいずれかまたは複数が含まれている。
【0062】
このうち、加速度センサ41の検出レンジ(感度)については、「検出レンジの微調整」と「検出レンジのレンジ切り替え」との二段階調整が可能である。検出レンジの微調整とは、加速度センサ41に現在加わっている加速度を検出し、要求信号に含まれる狙い値に合わせることである。他方、検出レンジのレンジ切り替えとは、要求信号に応じて検出レンジ(感度)を切り替えることである。
【0063】
また、応答周波数レンジについては、「応答周波数レンジの微調整」と「応答周波数レンジのレンジ切り替え」との二段階調整が可能である。応答周波数レンジの微調整とは、加速度センサ41に現在加わっている加速度の周波数を検出し、本周波数がカットオフ周波数(例えば−3dB)となるようにフィルタを調整することである。他方、応答周波数レンジのレンジ切り替えとは、要求信号に応じて応答周波数を切り替えることである。
【0064】
そして、調整装置2から調整命令を含んだ要求信号をセンサ装置1に入力する。これにより、要求信号は通信部10に入力されて解読され、解読内容が制御部30に入力される。以下、制御部30の作動を、図4および図5を参照して説明する。図4は、制御部30の作動を示したフローチャートである。図5は、調整装置2等の上位と制御部30とのやりとりを示した図である。
【0065】
ここで、「上位」とは、センサ装置1との接続関係を結ぶ装置である。以下で説明するセンサ出力特性の調整の場合、センサ装置1に対する上位は調整装置2である。また、センサ装置1が車両の加速度を検出してその値を出力するものとして機能する場合、センサ装置1の上位はエアバッグシステムを統括するECUである。
【0066】
まず、上記のようにセンサ装置1が車両に搭載され、センサ装置1に電源が供給されると図4に示されるフローがスタートする。
【0067】
すなわち、ステップ100では、センサ装置1にて通常動作が行われる。通常動作とは、センサ装置1が製造されたときに、当該センサ装置1に設定されたセンサ出力特性の初期値に従って、センサ装置1にて加速度が検出され、当該加速度を示す検出信号が出力される。
【0068】
具体的には、図5に示される通常動作のモードにおいて、本実施形態において上位である調整装置2にてセンサ装置1に通常動作を行わせるコマンドが実行される。そして、通常動作の指令を受けたセンサ装置1では、検出素子40にて加速度が検出され、増幅回路52やフィルタ回路53、DSP部55等により信号処理が行われ、処理結果がレスポンスとして調整装置2に出力される。これにより、調整装置2では、センサ装置1の出力に対する判定や他の装置への出力が行われる。
【0069】
なお、図5に示される「00」等の数値は、上位である調整装置2におけるコマンドを示すものであり、装置によってそれぞれ設定されるものである。
【0070】
そして、ステップ110では、調整命令が受理されたか否かが判定される。つまり、制御部30に要求信号の内容が入力されたか否かが判定される。本ステップにて、要求信号が入力されないと判定されなければ、ステップ100に戻る。これにより、センサ装置1は通常動作を繰り返し行う。他方、本ステップにて要求信号が入力されたと判定された場合、ステップ120に進む。
【0071】
ここで、本ステップ110にて、制御部30に要求信号の内容が入力されたと判定されたということは、図5に示される調整のモードにおいて、上位である調整装置2にてセンサ装置1のセンサ出力特性の調整を行う調整命令、すなわちコマンドが実行されたことによる。この場合、以下の調整項目や狙い値のデータが調整装置2からセンサ装置1に出力される。
【0072】
ステップ120では、要求信号に含まれる調整項目および狙い値が受理される。調整項目とは、センサ装置1の各構成要素のうちパラメータを調整する部位である。例えば、上記の自己診断印加部51の自己診断調整用抵抗51c、増幅回路52の検出レンジ調整用抵抗52cおよびオフセット値調整用抵抗52d等が調整項目に相当する。また、狙い値は、各調整項目の調整値に相当する。
【0073】
そして、「調整項目および狙い値が受理される」とは、要求信号に含まれるこれら調整項目および狙い値が制御部30によってメモリ20に記憶されることを指す。なお、調整項目および狙い値をメモリ20に記憶しない構成の場合、調整項目および狙い値が受理された後、ステップ130に進む。
【0074】
続いて、ステップ130では、調整中ステータスの出力が行われる。すなわち、要求信号を受け取ったセンサ装置1において、ステップ120における調整項目および狙い値が調整されていること、すなわちセンサ装置1から出力される検出信号は無効であることを示す調整中信号が生成される。調整中信号は、制御部30から通信部10を介してデジタル出力される。これにより、調整装置2の誤作動を防止する。
【0075】
すなわち、図5に示される調整のモードにおいて、センサ装置1において調整モードの切替が行われ、本ステップにて調整中ステータス出力が行われる。
【0076】
次に、ステップ140では、調整が行われる。調整とは、ステップ120にて受理された調整項目を狙い値に変更することである。すなわち、図5に示される調整のモードにおける調整実行を指す。
【0077】
具体的には、制御部30によって、自己診断印加部51の自己診断調整用抵抗51cの抵抗値、増幅回路52の検出レンジ調整用抵抗52cおよびオフセット値調整用抵抗52dの各抵抗値、フィルタ回路53の周波数調整用コンデンサ53cの容量値および周波数調整用抵抗53dの抵抗値、DSP部55の出力オフセット判定値および自己診断出力判定値、センサ装置1のIDコードのいずれかまたは複数が変更される。なお、IDコードはメモリ20のデータが書き換えられることで変更される。
【0078】
ステップ150では、調整が正常に終了したか否かが判定される。この場合、フィルタ回路53の出力がA/D変換部、DSP部55、通信部10を介して制御部30に入力され、制御部30にてフィルタ回路53の出力が正常値の範囲内であるかが判定される。そして、調整が正常に終了したと判定された場合、ステップ160に進み、調整が正常に終了していないと判定された場合、ステップ170に進む。
【0079】
ステップ160では、完了通知出力が行われる。すなわち、図5の調整のモードに示されるように、センサ装置1のレスポンスとして、調整が正常に終了したことを示す調整結果が上位に出力される。また、調整中ステータスの出力が解除される。すなわち、調整中信号の出力が停止される。
【0080】
そして、再びステップ100に戻り、加速度を検出する通常動作が行われる。上位では、センサ装置1からの調整結果出力の判定や他の装置への出力が行われる。
【0081】
他方、ステップ170では、異常通知出力が行われる。すなわち、図5の調整のモードに示されるように、センサ装置1のレスポンスとして、調整が正常に終了していないことを示す調整結果が上位に出力される。そして、制御部30の処理は終了する。この場合、制御部30によって、センサ装置1の動作を停止することや、要求信号を入力する前のセンサ出力特性に戻すことが行われる。この後、センサ装置1において、元に戻されたセンサ出力特性に基づいた通常動作が行われるようにしても良い。また、上位では、センサ装置1からの調整結果出力の判定や他の装置への出力が行われる。
【0082】
以上では、1台のセンサ装置1のセンサ出力特性の調整について説明したが、センサ装置1が設置される場所に応じて異なるセンサ出力特性となるように、各センサ装置1の調整が行われる。
【0083】
なお、各センサ装置1を車両に搭載してから、各センサ装置1のセンサ出力特性を調整しても良いし、各センサ装置1のセンサ出力特性を調整した後に各センサ装置1を車両に搭載しても良い。
【0084】
上記のようにして、センサ装置1のセンサ出力特性の調整が行われた後、加速度センサ41が正しい値を出力するかを判定するため、自己診断を行う。具体的には、図5の自己診断のモードに示されるように、上位である調整装置2にてセンサ装置1に自己診断を行わせるためのセルフチェックのコマンドが実行される。これにより、調整装置2から自己診断を行う指令がセンサ装置1に入力される。
【0085】
そして、センサ装置1では、自己診断モード切替がなされる。すなわち、センサ装置1において自己診断が行われており、自己診断中にセンサ装置1から出力された加速度の値は無効であることを示す信号がセンサ装置1から出力される。
【0086】
この場合、制御部30によって、図2に示される自己診断印加部51のトランジスタ51dがオンされる。これに伴い、自己診断調整用抵抗51cの抵抗値が考慮された抵抗51a、51bの分圧がCV変換部42に入力される。これにより、加速度センサ41にずらされた基準電圧が入力されるため、ずらされた基準電圧を元に戻そうとする差動容量変化が自己診断出力として検出される。そして、当該差動容量変化に基づく自己診断出力値が自己診断検出信号としてDSP部55に入力され、DSP部55にて自己診断出力値が設定された範囲内であるかが判定される。この後、自己診断結果が調整装置2に出力され、調整装置2にてその結果が判定されたり、他の装置に出力されたりする。
【0087】
このような自己診断は、センサ装置1が車両に設置されてセンサ装置1のセンサ出力特性が調整された後に実行される場合や、センサ装置1がエアバッグ用として用いられるようにされた後、車両のイグニッションオン時に実行される。
【0088】
以上のように、センサ装置1それぞれに適したセンサ出力特性が調整され、ユーザによって車両が操作される際、センサ装置1はエアバッグシステムの一構成要素として機能する。この場合、センサ装置1の上位は、エアバッグシステムを統括するECUである。
【0089】
そして、車両のイグニッションがオンされると、センサ装置1が車両の加速度を検出するように動く。このとき、上述のように、センサ装置1にて自己診断機能が実行されるようにしても良い。
【0090】
この後、制御部30によって、センサ装置1の通常動作が実行される。すなわち、図5の通常動作のモードに示されるように、センサ装置1と上位であるECUとの間で、信号のやりとりが行われる。つまり、上位であるECUからセンサ装置1に対して通常動作が要求され、センサ装置1では図4に示されるステップ100とステップ110とが繰り返し行われ、センサ装置1から上位であるECUに加速度を示すデジタル信号およびアナログ信号が入力される。
【0091】
このようにして、通常動作が行われる場合においても、センサ装置1のセンサ出力特性の調整が行われる場合もある。この場合、センサ装置1が上位から受け取るコマンドの中に、あらかじめセンサ出力特性の調整が含まれている。そして、センサ装置1にて調整命令が受理されると、そのコマンドに続くデータエリアより、検出レンジ(感度)、オフセット値、応答周波数、自己診断出力の各狙い値が読み出され、センサ装置1の出力が狙い値に最も近くなるように自己調整が実施される。このとき、上位へは、調整中である旨のステータス信号が出力され、上位の誤動作の防止が図られる。調整が完了した際には、調整中ステータス信号が元に戻され、再び、センサ装置1にて通常動作出力が実行される。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、所定のセンサ出力特性を備えたセンサ装置1に外部からセンサ出力特性を調整するための要求信号を入力し、当該センサ装置1が設置される場所や用途に応じてセンサ装置1が備えるべきセンサ出力特性にそれぞれを調整することが特徴となっている。
【0093】
これによると、共通のセンサ出力特性を備えたセンサ装置1を複数製造したとしても、センサ装置1が用いられる状況に応じてセンサ出力特性を変更することができる。このため、従来のようにセンサ装置1の用途に合ったセンサ出力特性を備えたものを製造する必要はなくなり、それぞれの使用に応じてセンサ装置1のラインナップを揃える必要もない。すなわち、1つのセンサ装置1で全てに対応できるようにすることができる。
【0094】
このように、唯一種類、すなわち一種類のセンサ出力特性を備えたセンサ装置1であっても、様々な車種、用途、搭載位置に対応することができ、従来のように様々なバリエーションや複数の出力系統をセンサ装置1に備える必要もない。このため、回路規模を拡大することもなく、省コストでセンサ装置1を製造することができ、省スペースでセンサ装置を設置することができる。
【0095】
また、センサ装置1のセンサ出力特性を調整したとしても、新たに要求信号をセンサ装置1に入力することにより、いつでもセンサ出力特性を調整することができる。このため、車両の走行状態、車両の速度、路面状況、車両の挙動、周囲の状況等に応じて、きめ細かなセンサ出力特性の調整および加速度の検出が可能となる。
【0096】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。本実施形態では、センサ装置1の上位とセンサ装置1との間で交わされる要求信号に含まれるコマンドの例について説明する。図6は、本実施形態において、センサ装置1で取り扱われるコマンドの一覧を示した図である。
【0097】
コマンドは、上位(調整装置2)からセンサ装置1への指令に相当する。
【0098】
コマンド00は、「設定No.」のデータを指し、センサ装置1に設定No.に応じた設定値に切り替え、出力させる。例えば、センサ装置1に複数のメモリ20が備えられ、各メモリ20に異なったセンサ出力特性が設定No.と共に記憶されている場合に当該コマンドが有効である。この場合、センサ装置1から上位に設定値の検出値を出力させる。
【0099】
コマンド01は、「検出レンジ狙い値」のデータを指し、センサ装置1に現在の検出値を狙い値に調整させる。そして、センサ装置1から上位に調整中を示す調整中ステータス出力が出力され、調整完了時にセンサ装置1にて正常終了もしくは調整できない旨のいずれかのレスポンスがなされる。
【0100】
コマンド02は、「検出レンジ」のデータを指し、現在の検出レンジと要求検出レンジの比を算出し、増幅率等を変更させる。そして、センサ装置1にて変更完了もしくは変更できない旨のレスポンスがなされる。
【0101】
コマンド03は、「応答周波数狙い値」のデータを指し、現在の検出周波数を狙い値に調整させる。そして、センサ装置1にて応答周波数狙い値の調整中であることを示す調整中ステータス出力がなされ、調整完了時に正常終了もしくは調整できない旨のいずれかのレスポンスがなされる。
【0102】
コマンド04は、「応答周波数」のデータを指し、現在の応答周波数と要求応答周波数の比を算出させる。そして、センサ装置1にて、フィルタ定数等の変更がなされ、変更完了もしくは変更できない旨のレスポンスがなされる。
【0103】
コマンド05は、「オフセット狙い値」のデータを指し、要求されたオフセット値に調整させる。そして、センサ装置1にてオフセット狙い値の調整中であることを示す調整中ステータス出力がなされ、調整完了時に正常終了もしくは調整できない旨のいずれかのレスポンスがなされる。
【0104】
コマンド06は、「オフセット判定値」のデータを指し、要求されたオフセット判定値に変更させる。そして、センサ装置1にて、オフセット判定値の変更がなされ、変更完了もしくは変更できない旨のレスポンスがなされる。
【0105】
コマンド07は、「自己診断出力狙い値」のデータをさし、要求された自己診断出力値に調整させる。そして、センサ装置1にて自己診断出力狙い値の調整中であることを示す調整中ステータス出力がなされ、調整完了時に正常終了もしくは調整できない旨のいずれかのレスポンスがなされる。
【0106】
コマンド08は、「自己診断判定値」のデータを指し、要求された自己診断判定値に変更させる。そして、センサ装置1にて、自己診断判定値の変更がなされ、変更完了もしくは変更できない旨のレスポンスがなされる。
【0107】
以上のようなコマンドを上位にて実行することにより、センサ装置1のセンサ出力特性の調整を行うことができる。
【0108】
(他の実施形態)
第1実施形態では、検出素子40として加速度センサ41を用いる場合について説明したが、加速度センサ41の他に、信号処理回路や通信機能を具備する圧力センサ、磁界センサ、ジャイロセンサ、日射センサ等の他のセンサに適用することもできる。
【0109】
第1実施形態では、1つの増幅回路52にて検出レンジ(感度)およびオフセット値をそれぞれ調整できるようになっているが、これは一例を示したものである。例えば、検出レンジ(感度)のみを調整できる増幅回路52とオフセット値のみを調整できる増幅回路52とを組み合わせたものを用いても構わない。
【0110】
第1実施形態では、センサ回路部50に自己診断印加部51、増幅回路52、フィルタ回路53、A/D変換部54、DSP部55が備えられているが、これは一例を示すものであって、センサ回路部50にこれらすべてが備えられていなくても良い。例えば、センサ回路部50に増幅回路52のみが備わっている場合や、センサ回路部50に増幅回路52とフィルタ回路53とが備わっている場合等であっても構わない。
【0111】
また、図1に示されるセンサ装置1にはメモリ20が備えられているが、センサ装置1にメモリ20が備えられていない形態であっても構わない。
【0112】
図2に示される加速度センサ41、CV変換部42、自己診断印加部51、増幅回路52、フィルタ回路53の各回路構成は一例を示すものであって、他の回路形態であっても構わない。例えば、フィルタ回路53は、オペアンプ53bを用いずに抵抗とコンデンサとを組み合わせた回路構成のものでも良い。
【0113】
上記各実施形態では、センサ装置1を製造して当該センサ装置1を車両に搭載する際にセンサ装置1のセンサ出力特性を調整したが、要求信号により上記調整を行う時期は、車両搭載時のみではなく、センサ装置1の出荷調整時や車両始動時および走行中でも良い。
【0114】
上記各実施形態では、センサ装置1の出力は、デジタル信号およびアナログ信号の双方であったが、外部要求に応じたアナログ信号のみでも良いし、通信機能を介したデジタル信号のみでも良い。
【0115】
上記各実施形態では、センサ装置1を車両に搭載する場合について説明したが、車両に限らず他のものにセンサ装置1を取り付けても良い。また、取り付けるべきセンサ装置1の数も、状況に合わせた数とすれば良い。
【0116】
例えば、センサ装置1を製造した後、センサ装置1の出荷前に、客先要求に応じて検出レンジ(感度)、オフセット、応答周波数、自己診断出力を調整することができる。これにより、客先の細かな要求に対応することができる。また、調整より前工程では、センサ装置1を同一部品・同一工程にて製造することができ、工程を簡略化することもできる。
【0117】
他方、センサ装置1を統括するECUあるいは車両への組付け時に各々のセンサ装置1のセンサ出力特性を調整することができる。すなわち、車両への組付け後にセンサ装置1のセンサ出力特性の調整(カスタマイズ)を行うことができるため、誤組付け防止や車両・用途に応じたきめ細かな対応が可能となる。
【0118】
また、車両始動時に各々のセンサ装置1を調整する場合、センサ装置1の経年変化を補正することができる。さらに、車両走行時・停止時にセンサ装置1のセンサ出力特性を調整することにより、環境変化による出力変化を補正することができる。
【0119】
そして、センサ装置1を統括するECUの交換時にセンサ装置1のセンサ出力特性を調整することにより、車両とECUとの組み合わせによる誤差を補正することもできる。
【0120】
複数の調整値を切り替える場合や上位からの要求に応じて調整値を切り替える場合、用途に応じて必要であったセンサ装置1の台数を1台に集約できる。すなわち、1台のセンサ装置1を様々な用途に用いることが可能であり、コストダウン、省スペース、省電力を実現できる。
【0121】
上記各実施形態で示されたセンサ出力特性の調整方法に限らず、他の調整方法を採用することもできる。具体的には、加速度センサ41の検出レンジ(感度)の調整方法として、増幅回路52の増幅率を変更する方法の他に、A/D変換部54の変換範囲を変更する方法やDSP部55の出力範囲を変更する方法を採用することができる。
【0122】
また、加速度センサ41の応答周波数レンジの調整方法として、フィルタ回路53のフィルタ定数を変更する方法の他に、A/D変換部54のサンプリング周波数を変更する方法やDSP部55のデジタルフィルタを変更する方法を採用することができる。
【0123】
加速度センサ41の出力のオフセット値の調整方法として、増幅回路52の基準電圧を変更する方法の他に、A/D変換部54の基準電圧を変更する方法やDSP部55の基準値を変更する方法を採用することができる。
【0124】
加速度センサ41の出力オフセット判定値の調整方法として、DSP部55のしきい値を変更する方法の他に、内部アナログ回路の基準電圧を変更する方法や増幅回路52のコンパレータ閾値を変更する方法を採用することができる。
【0125】
加速度センサ41の自己診断出力値の調整方法として、DSP部55の基準値を変更する方法の他に、内部アナログ回路の自励印加電圧を変更する方法、内部アナログ回路の自励印加間隔を変更する方法、出力範囲を変更する方法、内部アナログ回路の増幅率を変更する方法、A/D変換部54の変換範囲を変更する方法等を採用することができる。
【0126】
加速度センサ41の自己診断出力判定値の調整方法として、DSP部55の基準値を変更する方法の他に、内部アナログ回路のコンパレータ閾値を変更する方法や、DSP部55の閾値を変更する方法を採用することができる。
【0127】
上記のような加速度センサ41に係る調整方法は、他のセンサにおいても採用することができる。
【0128】
上記各実施形態のように、センサ装置1にメモリ20を具備することで、当該メモリ20に記憶させたセンサ出力特性により何度でも調整が行えるようにすることもできる。また、センサ装置1に複数のメモリ20を備えることで、初回調整値、実装時調整値、車両始動時値、走行時調整値等のセンサ出力特性を記憶しておくこともできる。
【0129】
また、センサ検出信号出力として、センサ装置1にアナログ出力とデジタル出力とを備え、上記各種調整機能をアナログ回路とデジタル回路との双方に具備し、アナログ出力とデジタル出力とで異なる出力を行う構成とすることもできる。
【0130】
センサ装置1にメモリ20を複数備える場合、各メモリ20に、例えば、車両のスピードに応じたセンサ出力特性、車両の横滑り検出するためのセンサ出力特性、車両の衝突を検出するためのセンサ出力特性等の複数のセンサ出力特性をあらかじめ記憶しておき、各メモリ20に記憶された複数のセンサ出力特性を順番に切り替えても良い。
【0131】
また、センサ装置1にメモリ20を複数備える場合、各メモリ20にそれぞれ異なるセンサ出力特性を記憶させておき、複数の設定値を上位からの要求に応じて切り替えて調整することもできる。他方、各メモリ20に記憶されたセンサ出力特性のうちいずれかを用いて調整することもできる。
【0132】
さらに、センサ装置1にメモリ20を複数備える場合、各メモリ20に調整の変更履歴を記憶させ、1つ前、2つ前、といった過去の設定値を上位からの要求に応じてセンサ装置1に設定することもできる。
【0133】
なお、各図中に示したステップは、機能を実現するための手段に対応するものであり、上記図4に示したフローチャートの各ステップをハードウェアとして構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一実施形態に係るセンサ装置のブロック図である。
【図2】図1に示されるセンサ装置のうち、自己診断印加部、検出素子、増幅回路、フィルタ回路の回路図である。
【図3】センサ装置に調整装置を接続したブロック図である。
【図4】制御部の作動を示したフローチャートである。
【図5】制御部と調整装置等の上位とのやりとりを示した図である。
【図6】第2実施形態において、センサ装置で取り扱われるコマンドの一覧を示した図である。
【符号の説明】
【0135】
1…センサ装置、10…通信部、20…メモリ、30…制御部、40…検出素子、50…センサ回路部、51…自己診断印加部、51c…自己診断調整用抵抗、52…増幅回路、52b…オペアンプ、52c…検出レンジ調整用抵抗、52d…オフセット値調整用抵抗、53…フィルタ回路、53c…周波数調整用コンデンサ、53d…周波数調整用抵抗、54…A/D変換部、55…DSP部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出して前記物理量に応じた検出信号を出力する検出素子(40)と、
前記検出素子(40)から前記検出信号を入力し、前記検出信号を処理するためのパラメータとなる第1のセンサ出力特性に従って前記検出信号を処理するセンサ回路部(50)と、
外部から入力される要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性を抽出する通信部(10)と、
前記通信部(10)から前記第2のセンサ出力特性を入力し、前記センサ回路部(50)の第1のセンサ出力特性を前記第2のセンサ出力特性に調整する制御部(30)とを備えていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記センサ回路部(50)には、前記第1のセンサ出力特性として前記検出素子(40)の検出レンジが設定された増幅回路(52)が備えられており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記増幅回路(52)における検出レンジが含まれている場合、前記制御部(30)は前記増幅回路(52)における検出レンジを前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としての検出レンジに調整するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記センサ回路部(50)には、前記第1のセンサ出力特性として前記検出信号のオフセット値が設定された増幅回路(52)が備えられており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記増幅回路(52)におけるオフセット値が含まれている場合、前記制御部(30)は前記増幅回路(52)におけるオフセット値を前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としてのオフセット値に調整するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサ回路部(50)には、前記第1のセンサ出力特性として前記検出信号において所望の周波数帯の成分のみを通過させる応答周波数レンジが設定されたフィルタ回路(53)が備えられており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記フィルタ回路(53)の応答周波数レンジが含まれている場合、前記制御部(30)は前記フィルタ回路(53)の応答周波数レンジを前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としての応答周波数レンジに調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記センサ回路部(50)には、前記検出信号をA/D変換するA/D変換部(54)と、前記第1のセンサ出力特性として前記A/D変換部(54)にてA/D変換された検出信号が一定の範囲内であるかを判定するための出力オフセット判定値が設定された信号処理部(55)とが備えられており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記信号処理部(55)の出力オフセット判定値が含まれている場合、前記制御部(30)は前記信号処理部(55)の出力オフセット判定値を前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としての出力オフセット判定値に調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記センサ回路部(50)には、前記第1のセンサ出力特性として前記検出素子(40)の自己診断の際に前記検出素子(40)から出力させる自己診断出力値が設定された自己診断印加部(51)が備えられており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記自己診断印加部(51)の自己診断出力値が含まれている場合、前記制御部(30)は前記自己診断印加部(51)の自己診断出力値を前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としての自己診断出力値に調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記信号処理部(55)には、前記第1のセンサ出力特性として前記検出素子(40)から出力された前記自己診断出力値が一定の範囲内であるかを判定するための自己診断出力判定値が設定されており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性として前記信号処理部(55)の自己診断出力判定値が含まれている場合、前記制御部(30)は前記信号処理部(55)の自己診断出力判定値を前記要求信号に含まれる前記第2のセンサ出力特性としての自己診断出力判定値に調整するようになっていることを特徴とする請求項6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
書き換え可能なメモリ(20)を備え、
前記メモリ(20)には、第1のセンサ出力特性としてIDコードが記憶されており、
前記要求信号に前記第2のセンサ出力特性としてIDコードが含まれている場合、前記制御部(30)は前記メモリ(20)のIDコードを前記要求信号に含まれる第2のセンサ出力特性としてのIDコードに書き換えるようになっていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項9】
書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、前記各メモリ(20)にそれぞれ異なるセンサ出力特性が記憶されており、
前記制御部(30)は、前記各メモリ(20)に記憶された各センサ出力特性を順番に前記センサ回路部(50)に調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項10】
書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、前記各メモリ(20)にそれぞれ異なるセンサ出力特性が記憶されており、
前記制御部(30)は、外部からの要求に応じて、前記センサ回路部(50)に設定された前記第1のセンサ出力特性を前記各メモリ(20)に記憶されたセンサ出力特性のいずれかに調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項11】
書き換え可能なメモリ(20)を複数備え、前記各メモリ(20)に前記第1のセンサ出力特性の調整の変更履歴が記憶されるようになっており、
前記制御部(30)は、外部からの要求に応じて、前記各メモリ(20)に記憶された変更履歴を用いて前記センサ回路部(50)に設定されたセンサ出力特性を調整するようになっていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記センサ回路部(50)にて処理された検出信号をアナログ信号として外部に出力するようになっていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記A/D変換部(54)にてA/D変換された検出信号を前記通信部(10)を介してデジタル信号として外部に出力するようになっていることを特徴とする請求項5ないし12のいずれか1つに記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−63471(P2009−63471A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232377(P2007−232377)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】