説明

センサ

【課題】強い振動環境下においても長期にわたって高い測定精度を維持しうる接触センサの提供。
【解決手段】ハウジング42と、プローブ44と、プローブ44に固定され、ハウジング42の内部に配置される接続子48と、接続子48と当接することにより導通する端子49と、接続子48が端子49に当接するようにプローブ44を付勢する第一付勢手段53と、第一付勢手段53による端子49への接続子48の当接を解除する解除手段45と、ハウジング42の内部であって、少なくとも端子49と接続子48との周囲を満たす絶縁性を備えるオイル80と、オイル80をハウジング42内部に留める封止手段70と、端子49と接続子48との当接の解除状態において、ハウジング42に設けられる保持孔62と係合し、プローブ44をハウジング42に対して固定する固定部材60と
を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、センサに関し、特に、物との接触をプローブにより検知するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、一般的な従来のタレット旋盤の一例を示す外観斜視図である。同図に示すようにタレット旋盤1は、主軸2及びタレット3を備える。
【0003】
主軸2は、ベッド4に設けられる主軸台5に支持され、主軸チャック6にて物(図示せず)を把持し回転する。
【0004】
タレット3は、タレット刃物台7、インデックス機構8、及びタレットスライド9からなる。
【0005】
タレット刃物台7は、回転軸の周囲に複数の工具取り付け面10を有し、インデックス機構8によって回転可能に支持されている。工具取り付け面10には、バイトやドリルなどの工具11が工具ステーション11aを介して装着される。
【0006】
なお、主軸2の回転軸とタレット刃物台7の回転軸とを結ぶ直線は、図中に示すX軸(水平面内)に平行である。
【0007】
インデックス機構8は、タレットスライド9に設置され、モータ駆動によって、タレット刃物台7を回転させることで特定の工具取り付け面10を物側に位置させることができる。
【0008】
ここで、タレット旋盤などの工作機械には、物を主軸から取り外すことなく機内で物の寸法を計測する機能が設けられることがある。この機能を用いることにより、物を機外に取り出すことなく寸法計測を行えるため、工作機械の作業効率を向上させることができる。また、温度変化などの機内の環境変化による物や機体の変位を計測し工作機械に対する制御量を校正することで高い寸法精度を維持できる。
【0009】
例えば、タレット刃物台7の工具取り付け面10に工具ステーション11aまたは同様の取付具を介してセンサを取り付け、物12の直径などを計測する機能を有するタレット旋盤1が存在する。
【0010】
また、物の直径の両端の位置を計測することで物の直径を直接的に計測する機構を有するタレット旋盤も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
図11は、物12の直径を直接的に計測するための機構を備えた従来のタレット刃物台7の一例を示す概要図である。同図(A)は前面図であり、同図(B)は上面図である。
【0012】
同図(A)及び同図(B)に示すタレット旋盤1は、タレット刃物台7の前方でタレット刃物台7の中心の非回転部材に旋回可能に支持されるアーム15を備えている。また、アーム15の先端部にはセンサ20が取り付けられている。
【0013】
このアーム15の長さは、タレット刃物台7が主軸2に近接した際に、物12の直径の両端(P1とP2)のうち、主軸2の回転軸を挟んでタレット刃物台7とは反対側の一端(P2)の位置をセンサ20が計測可能な長さである。
【0014】
タレット旋盤1は、このような構成を採用することにより、同図(B)に示すように、物12の直径の両端であるP1およびP2の位置を計測することができる。このようにして得たP1とP2との差分から物12の直径を求めることができる。
【0015】
これらタレット旋盤での機内計測に利用される従来のセンサ20の構造について図を参照して説明する。
【0016】
図12は、機内計測に利用されるセンサの構造の一例を示す断面図である。
【0017】
センサ20は、棒状のプローブの傾動により物との接触を検知するセンサであって、ハウジング22と、プローブ24と、接続子26a、26bおよび26cと、端子28、29および30と、バネ25とを備える。
【0018】
ハウジング22は、中空円柱状の筐体であり、内部に各部が収容される。ハウジング22は、工具ステーション111aなどの取付具に直接に取り付けられる。
【0019】
プローブ24は、ハウジング22の内部から外部にわたって突出状に配置される棒状の剛体であり、ハウジング22に対して傾動可能に備えられる。
【0020】
バネ25は、ハウジング22の一面に対し、プローブ24が遠ざかる方向に付勢力を備えている。また、前記付勢力は、接続子26a、26bおよび26cが端子28、29および30のそれぞれに押接されているが、プローブ24の先端が物12に僅かに触れただけで、三つある接続子26a、26bおよび26cと端子28、29および30との押接状態の少なくとも一つが解除される程度の付勢力である。
【0021】
接続子26a(26b、26c)は、端子28(29、30)と接触することによって導通を確保することのできる円柱形状の金属部材であり、プローブ24の中間部に3個固定されている。接続子26a(26b、26c)は、プローブ44の軸に対し垂直に固定されている。接続子26a(26b、26c)は、同一の円周上で均等に配置されており、隣接する接続子26aおよび26b(26bおよび26c、26cおよび26a)が互いになす角は120度である。つまり、接続子26a(26b、26c)は、プローブ24の軸に対し放射状均等となるようにプローブ24に固定されている。
【0022】
端子28(29、30)は、接続子26a(26b、26c)と接触することによって導通を確保する部材であって、V字状に配置された二つの円柱状の電極28aおよび28b(29aおよび29b、30aおよび30b)で構成されている。二つの電極28aおよび28b(29aおよび29b、30aおよび30b)は相互に絶縁状態で、かつ、ハウジング22とも絶縁状態となされ、開放部を内側に向けてハウジング22の内側端面に取り付けられている。端子28(29、30)は、接続子26a(26b、26c)に対応する位置に3個配置されている。
【0023】
次に、センサ20のセンシング方法を説明する。
【0024】
センサ20は、図13に示すように端子28を構成する各電極28a(28b)は隣接する端子29(30)を構成する一方の電極29a(30a)と導線31a(31b)により結線されている。そして、接続子26a(26b、26c)が端子28(29、30)に押接されている。そのため、図14に示すように、二つの電極28aおよび28bは、接続子26aにより電気的に接続されている。他の端子29(30)を構成する二つの電極29aおよび29b(30aおよび30b)も、同様に、接続子26b(26c)により電気的に接続されている。以上から、二つの引出線32aおよび32bの間は導通状態となっている。
【0025】
次に、プローブ24が物12に接触すると、プローブ24がハウジング22に対して傾動する。プローブ24に固定されている接続子26a(26b、26c)の少なくともいずれか一つは、他の接続子26bおよび26c(26cおよび26a、26aおよび26b)を軸として端子28(29、30)から浮き上がる。これにより二つの電極28aおよび28b(29aおよび29b、30aおよび30b)の間が絶縁状態となり、二つの引出線32aおよび32bの間は絶縁状態となる。
【0026】
従って、二つの引出線32aおよび32bの間が絶縁状態か否かを観測しておくことで、プローブ24と物12との接触を検知することができる。これにより、タレット旋盤は、センサが物と接触したX軸方向の位置を示す情報を取得することができ、取得した位置情報に基づいて物の寸法が計測される。
【0027】
このような、プローブと物との接触を検出するセンサの内、高精度を要求されるセンサは、ハウジング内部にオイルが封入されることがある。当該オイルは、通電状態にある端子と接続子とが離れる際や接触する際に発生する放電現象を抑制して放電による物理的な損傷を抑制する機能を備える。また、センサの擦れ合う部分の摩擦により発生する微小片が端子と接続子との間に挟まりセンサの精度を低下させる原因となるため、前記オイルは、擦れ合う部分の摩擦を低減し微小片の発生を抑制する機能も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】実開平7−3902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
ところが、前記センサをタレット旋盤などの工作機器に取り付けて用いる場合、センサにオイルが封入されているにもかかわらず、センサの測定精度が低下することを本願発明者らは見いだした。
【0030】
そして、本願発明者らは鋭意実験と研究の結果、工作機械に取り付けられているセンサには50G以上もの強い振動が加えられる場合があり、この強い振動により擦れ合う部分から微小片が発生するばかりでなく、強い振動によって封入されているオイルが攪拌され、オイルが攪拌されることによって微小片が端子や接続子に至るまで浮遊して付着し、センサの測定精度の低下が発生することを見いだすに至った。
【0031】
本願発明は上記知見に基づきなされたものであり、強い振動が発生する工作機器などに用いられる場合でも長期にわたって高い測定精度を維持することのできるセンサの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するために、本願発明にかかるセンサは、物との接触を検知するセンサであって、中空柱状のハウジングと、前記ハウジングの内部から外部にわたって突出状に配置され、前記ハウジングに対して往復動および傾動可能なプローブと、前記プローブに固定され、前記ハウジングの内部に配置される接続子と、前記ハウジング内部に固定され、前記接続子と当接することにより導通する端子と、前記接続子が前記端子に当接するように前記プローブを付勢する第一付勢手段と、前記第一付勢手段による前記端子への前記接続子の当接を解除する解除手段と、前記ハウジングの内部であって、少なくとも前記端子と前記接続子との周囲を満たす絶縁性を備える液体と、前記液体を前記ハウジング内部に留める封止手段と、前記端子と前記接続子との当接の解除状態において、前記ハウジングに設けられる保持孔と係合し、前記プローブをハウジングに対して固定する固定部材とを備えることを特徴とする。
【0033】
これにより、センサを使用しない間、プローブを往復動させて端子と接続子との当接状態を解除するとともに、ほとんどの可動部を固定することが可能となる。従って、強い振動が発生してもセンサは、プローブも含めて固定状態となっているため、摩擦などによる微小片の発生を抑制することができる。さらに、微小片が発生したとしても、封入されたオイルにより、微小片が端子や接続子まで到達することを防止することができる。また、封入されたオイルがプローブなどの部材で攪拌されることもないため、オイルの攪拌により微小片が端子や接続子に到達することを防止して、センサの測定精度を高い状態で維持することが可能となる。
【0034】
前記封止手段は、前記プローブの外周壁に液密状態で取り付けられると共に前記ハウジングに液密状態で取り付けられ、前記プローブとハウジングとの隙間を封止する、可撓性を有する膜部材を備えることが好ましい。
【0035】
これにより、センサを使用する際にはハウジングに対して突出状態となり、物と接触することで傾動し、センサを使用しない際にはハウジングに対しては半没入状態で固定されるプローブ、つまり、稼働領域が三次元的で広いプローブの動きを阻害することなく、プローブとハウジングとの隙間を封止することが可能となる。
【0036】
また、前記液体は、100(cSt)以上、208(cSt)以下(40℃環境下)の範囲から選定される動粘度を備えることが好ましい。
【0037】
これにより、センサの測定精度や反応速度の低下を許容範囲に留め、オイルの攪拌による微小片の浮遊を有効に抑止することが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
強い振動が発生する工作機器などに用いられる場合であっても、長期にわたって高い測定精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】センサの外観を示す斜視図である。
【図2】センサの内部を模式的に示す断面図である。
【図3】センサの一部を切り欠いて内部を示す斜視図である。
【図4】センサのセンシング状態と、保護状態とを対比して示す図である。
【図5】保護状態のセンサを切り欠いて示す斜視図である。
【図6】センシング状態のセンサを有するセンサモジュールを示す側面図である。
【図7】保護状態のセンサを有するセンサモジュールを示す側面図である。
【図8】封止手段の別態様を切り欠いて示す斜視図である。
【図9】封止手段の別態様の接続部材を示す図である。
【図10】一般的な従来のタレット旋盤の一例を示す外観斜視図である。
【図11】物の直径を直接的に計測するための機構を備えた従来のタレット刃物台の一例を示す概要図である。
【図12】機内計測に利用されるセンサの構造の一例を示す断面図である。
【図13】端子の結線状態を示す平面図である。
【図14】端子と接続子の状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本願発明にかかるセンサの実施の形態を説明する。
【0041】
図1は、センサ40の外観を示す斜視図である。
【0042】
センサ40は、物と接触するプローブの傾動と連動する電気接点の離接を電気的に読み出すことで、センサ40と物との接触を検知するセンサであって、プローブ44と、ハウジング42と、解除手段45とを備えている。
【0043】
プローブ44は、直接物と接触する部材であって、円柱状の部材の先端に部分真球が一体に取り付けられた部材である。プローブ44は、ハウジング42の内部からハウジング42の一端部を通過してハウジング42の外部に至るまで突出状に配置されている。
【0044】
ハウジング42は、タレット刃物台の工具取り付け面に取り付けられる工具ステーションまたは同様の取付具に直接取り付けられ、センサ40の位置を決定するための部材である。また、ハウジング42は、内包する電気的な接点やその他機構を保護するための部材であり、両端部の一部が覆われた円筒形状の部材である。
【0045】
解除手段45は、後述する第一付勢手段53による端子と接続子との当接を解除することが可能な部材であって、プローブ44をハウジング42に対し往復動させ、プローブ44をセンシング位置と解除位置とに転換する部材である。解除手段45は、ハウジング42の内部からハウジング42の他端部を通過してハウジング42の外部に至るまで突出状に配置されている。解除手段45は、ハウジング42の外部に、位置決めフランジ47と、第一係合フランジ46とを備えている。
【0046】
係止部としての位置決めフランジ47は、ハウジング42の他端部と当接することで、ハウジング42に対する解除手段45の位置を決定する部材である。
【0047】
第一係合フランジ46は、外部の機構(後述)と係合することで、駆動力を解除手段45に伝達し、解除手段45を往復動させるための部材である。
【0048】
図2は、センサ40の内部を模式的に示す断面図である。
【0049】
また、図3は、センサ40の一部を切り欠いて内部を示す斜視図である。なお、図3はオイルを省略して示している。
【0050】
同図に示すように、プローブ44は、ハウジング42の内部に、接続子48a、48bおよび48cと、第二係合フランジ44aとを備えている。また、プローブ44は、ハウジング42の外部に、固定部材60を備えている。ハウジング42は、自身の内部に、端子49(50、51)を備え、一端部に保持孔62を備え、他端部には解除手段45が挿通されている。また、保持孔62を封止するため、封止手段70の一つである膜部材71がプローブ44とハウジング42との間に取り付けられている。一方、ハウジング42と解除手段45との間には、封止手段70の一つであるOリング72が取り付けられている。
【0051】
また、ハウジング42の内部にはオイル80が充填されている。
【0052】
解除手段45は、ハウジング42の内部に、基板52と、係合爪54と、第一付勢手段53と、第二付勢手段58とを備えている。
【0053】
接続子48a(48b、48c)は、端子49(50、51)と接触することによって導通を確保することのできる円柱形状の金属部材であり、プローブ44の中間部に3個固定されている。全ての接続子48a、48bおよび48cは、プローブ44の軸に対し垂直に固定されている。接続子48a、48bおよび48cは、同一の円周上で均等に配置されており、接続子48a、48bおよび48cが互いになす角は120度である。つまり、接続子48a、48bおよび48cは、プローブ44の軸に対し放射状均等となるようにプローブ44に固定されている。
【0054】
第二係合フランジ44aは、解除手段45の係合爪54と係合し、プローブ44がハウジング42に没入する方向の駆動力をプローブ44に伝達する部材であり、プローブ44の基端に固定される円盤状の部材である。
【0055】
固定部材60は、プローブ44が解除位置に位置する際に、ハウジング42に設けられる保持孔62と嵌り合い、ハウジング42に対してプローブ44が固定されるようにする部材である。固定部材60は、ハウジング42に向かって縮径する円錐台形状をしており、プローブ44の中間部に固定されている。
【0056】
端子49は、接続子48aと接触することによって導通を確保する部材であって、V字状に配置された二つの円柱状の電極49a、49bで構成されている。二つの電極49a、49bは相互に絶縁状態で、かつ、ハウジング42とも絶縁状態となされ、開放部をプローブ44の往復動方向の内側に向けて、ハウジング42の内側端面に取り付けられている。端子50及び端子51も、端子49と同様の構成および取り付け態様で設けられる部材である。端子49と端子50と端子51とは、それぞれ、接続子48aと接続子48bと接続子48cとに対応する位置に配置されている。
【0057】
保持孔62は、ハウジング42の一端面の中央に設けられた孔であり、外方に向けて拡径するテーパー形状となっている。保持孔62は、固定部材60と嵌り合う。
【0058】
基板52は、ハウジング42の内部の断面形状に合致しハウジング42の内径より小さい径の円板部と、位置決めフランジ47と接続するための接続棒部とを備えている。
【0059】
係合爪54は、プローブ44の基端部にある第二係合フランジ44aと係合し、解除手段45の駆動力をプローブ44に伝える部材であり、基板52の周縁部から基板52の往復同方向に一体に突設される鍵状の部材である。係合爪54は、基板52の円板部の周縁部に均等に3個一体に設けられており、それぞれが第二係合フランジ44aと係合して、プローブ44をハウジング42の軸に沿ってまっすぐ引っ張れるものとなっている。係合爪54は、位置決めフランジ47がハウジング42と当接した状態(センシング位置)では、第二係合フランジ44aと係合せず、プローブ44の傾動を邪魔しないものとなっている。
【0060】
第一付勢手段53は、位置決めフランジ47がハウジング42と当接した状態(センシング位置)において、接続子48a(48b、48c)を端子49(50、51)に緩やかに押接する弦巻ばねである。第一付勢手段53は、基板52に対し、プローブ44が遠ざかる方向に付勢力を備えている。また、前記付勢力は、接続子48a、48bおよび48cが端子49、50および51に押接されているが、プローブ44の先端が物に僅かに触れただけで、三つある接続子48a、48bおよび48cと端子49、50および51との押接状態の少なくとも一つが解除される程度の付勢力である。
【0061】
第二付勢手段58は、位置決めフランジ47がハウジング42と当接した状態(センシング位置)を維持するためのものであり、ハウジング42の他端部内側と、対向する基板52との間を相互に遠ざかる方向の付勢力を備えている。第二付勢手段58の付勢力は第一付勢手段53の付勢力よりも強く、センサ40に多少の振動が加えられても、センシング位置を維持し得る付勢力を備えている。
【0062】
オイル80は、ハウジング42の内部であって、少なくとも接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との周囲を満たす絶縁性を備える液体である。本実施の形態の場合、オイル80は、ハウジング42と、膜部材71とOリング72とで囲われた空間全体に充填されている。具体的にオイル80は、パーフルオロポリエーテル(PFPE)を用いるのが好ましい。一般的な鉱物油では、酸化によるオイルの劣化が懸念されるからである。つまり、鉱物油が酸化すると粘度が上昇し、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との接触動作を妨げる可能性が高まるからである。これに対し、パーフルオロポリエーテルは、酸化安定性に優れているため、上記の問題を解決することも可能となる。また、パーフルオロポリエーテルは、化学的に安定であり、膜部材71やOリング72に対して不活性で膜部材71やOリング72などの樹脂やゴム製品を劣化させる可能性が非常に低いという効果を備えている。ちなみに、シリコン系のオイルを使用した場合、残存する低分子シロキサンによって接点部分に絶縁堆積物が生成され、接点障害が引き起こされるが、パーフルオロポリエーテルは、接点部分に堆積物が生成されにくく、障害の発生が少ないなどの利点もある。
【0063】
また、オイル80は、100(cSt)以上、208(cSt)以下(40℃環境下)の範囲から選定される動粘度となっている。動粘度が208(cSt)よりも高い場合、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との相対的な移動が阻害されることとなる、つまり、接点における接触の抵抗となってしまい、センサ40の測定精度が許容値外となる。また、反応速度も鈍くなる。一方、動粘度が100(cSt)よりも低い場合、振動によりオイル80が攪拌され易くなり、微小片が接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との間に到達して付着する可能性が高くなるからである。
【0064】
封止手段70は、液体としてのオイル80をハウジング42の内部に留める機能を有する機構であり、膜部材71とOリング72とを備えている。
【0065】
膜部材71は、プローブ44の外周壁に液密状態で取り付けられると共にハウジング42に液密状態で取り付けられ、プローブ44とハウジング42との隙間を封止する部材であり、可撓性を有している。本実施の形態の場合、膜部材71は、ベローズ(蛇腹)状に形成されたゴム製の膜であり、プローブ44がセンシング位置と保護位置との間を往復動する際にも液密状態を維持しながらプローブ44の動きに追随するものとなっている。また、プローブ44がセンシング位置に在る場合に、物との接触によるプローブ44の傾動に対し大きな負荷とならないような柔軟性、伸縮性を備えている。また、膜部材71自体もオイル80は透過しないものとなっている。
【0066】
Oリング72は、解除手段45と液密状態で摺動を可能とする部材であり、解除手段45の外周面と接触状態で取り囲む円環状の部材である。また、Oリング72は、ハウジング42に設けられた円環状の溝にはめ込まれる状態で配置されている。
【0067】
以上のように、ハウジング42と封止手段70とにより、オイル80を液密状態で封じ込めることが可能となる。
【0068】
なお、本実施の形態では、ハウジング42の内部全体にオイル80を充填したが、本願発明はこれに限定されるものではない。例えば、図8、図9に示すように、基板52と係合爪54とを接続する円筒形状の接続部材73を設け、当該接続部材73の外周面とハウジング42の内周面との間にOリング72を配置してもかまわない。この場合、オイル80は、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との周囲のみを満たすことができる。これにより、第二付勢手段58等が存在する空間と、接続子48a(48b、48c)や端子49(50、51)とが配置される空間とを隔絶することができ、第二付勢手段58等から発生する微小片の影響を抑制することが可能となる。
【0069】
次に、センサ40のセンシング方法を説明する。
【0070】
センサ40の解除手段45がセンシング位置にある場合は、従来のセンサと変わりがない。図13および図14を参照して説明したように、二つの引出線間が導通状態と絶縁状態とのいずれであるかを観測しておくことで、プローブ44と物との接触を検知することができる。
【0071】
この状態において、オイル80は、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との周囲を満たしているため、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との間の放電の発生を抑制し、接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)とが物理的に損傷することを防止している。
【0072】
次に、センサ40の保護状態を説明する。
【0073】
図4は、センサ40のセンシング状態と、保護状態とを対比して示す図である。同図(a)はセンシング状態を示し、同図(b)は保護状態を示している。本図では、端子49のみを示しており、他の端子50、51を省略している。
【0074】
同図(a)に示すように、解除手段45がセンシング位置にある場合、基板52等の解除手段45は、ハウジング42に対し所定の位置に配置され、第二付勢手段58により前記位置が固定されている。この状態では、解除手段45の係合爪54と第二係合フランジ44aとは離隔しており、プローブ44は第一付勢手段53により接続子48aが端子49に押接されている。
【0075】
従って、上述したように、プローブ44と物との僅かな接触を検出することができる。また、この状態において接続子48a(48b、48c)と端子49(50、51)との周囲にはオイル80が満たされているため、接続子と端子とが離接する際に発生する放電を抑制することができ、放電による接続子と端子との損傷を抑止することが可能となる。
【0076】
一方、センサ40を使用しない状態においては、同図(b)に示すように、解除手段45を解除位置にする。つまり、解除手段45をハウジング42に対し引き出した状態とする。これにより、解除手段45の係合爪54が第二係合フランジ44aと係合して、プローブ44をハウジング42に対して没入させ、接続子48aと端子49との接続を強制的に解除する。
【0077】
これにより、センサ40に多少の振動が加えられたとしても、接続子48aと端子49
とが擦り合わされることが無いため、接続子48aと端子49とが摩耗することが無くなる。さらに、プローブ44の固定部材60と、ハウジング42の保持孔62とが嵌り合うため、ハウジング42に対しプローブ44が固定され、タレット刃物台が回転し、遠心力や加速度がセンサ40に加わったとしても、ハウジング42に対しプローブ44が揺れ動かないため、接続子48aと端子49とが激しく衝突することもなくなる。
【0078】
さらに、ハウジング42の開口部である保持孔62は、固定部材60により封止されるため、ハウジング42内部に封入されるオイル80は強い振動を受けても攪拌されにくくなる。従って微小片がオイル80の中を移動することを抑止することができる。さらに、オイル80は、没入するプローブ44に追随する膜部材71の収縮により圧力が高められた状態でハウジング42内部に封入されるため、より攪拌されにくくなっている。
【0079】
以上により、センサ40を保護し、センサ40の長寿命化を図ることが可能となる。また、長期にわたって高い精度を維持することが可能となる。
【0080】
なお、図5は、保護状態のセンサ40をハウジングの一部を切り欠いて示す斜視図である。同図において、オイルの図示を省略している。
【0081】
同図に示すように、緩衝部材としてのOリング64が、固定部材60に取り付けられており、固定部材60と保持孔62とが嵌り合った場合に隙間を埋めている。なお、緩衝部材は、保持孔62の周縁の内側側面に取り付けられてもよい。
【0082】
これにより、センシング状態から保護状態に状態を変更する際のプローブ44とハウジング42との衝撃を和らげることができ、衝撃などにより微小片が発生するのを防止している。また、保護状態において、ハウジング42の密閉性を高めており、内部に閉じ込められているオイル80の攪拌を防止している。
【0083】
次に、センサ40のタレット旋盤での利用態様およびセンサ40を保護状態にするための駆動力の伝達について説明する。
【0084】
図6は、センシング状態のセンサ40を有するセンサモジュールを示す側面図である。
【0085】
図7は、保護状態のセンサ40を有するセンサモジュールを示す側面図である。
【0086】
これらの図では、センサ40を有するセンサモジュール120として、タレット刃物台107の工具取付面の1つに取り付けられる例を示す。
【0087】
センサモジュール120は、タレット刃物台107の径方向に伸縮する機構およびタレット刃物台107の工具取付面への取り付け具を有する支柱122と、物の寸法を計測するためのセンサ40と、保護状態のセンサ40を覆うカバー220とを備えている。
【0088】
つまり、センサ40はあたかも1つの工具かのような態様でタレット刃物台107に取り付けられている。
【0089】
センサ40は、支柱頭部122bに、伸縮方向に対して垂直に取り付けられている。また、センサ40が備える第一係合フランジ46に対応する支柱頭部122bの部分にはレバー部材181が軸支されている。このレバー部材181の一端部は第一係合フランジ46とハウジング42側から当接することができるものとなっている。
【0090】
一方、支柱脚部122aには、板状のカム部材182が取り付けられている。カム部材182は、支柱頭部122bが縮退するにつれて近づいてくるレバー部材181の他端部と当接し、当該他端部をハウジング42側に押し出すことができる形状と剛性を備えた部材である(図7参照)。
【0091】
以上のようにレバー部材181とカム部材182とを備えることで、センサモジュール120が伸長状態、すなわちセンサ40によるセンシングが必要な場合は、解除手段45に外部から駆動力が伝達されていないため、第二付勢手段58の付勢力により、解除手段45はセンシング位置で固定され、センサ40はセンシング状態となる。
【0092】
一方、センサモジュール120が縮退状態、すなわち、センサ40を振動などから保護する必要がある場合は、エアシリンダ(図示しない)の駆動力がレバー部材181を介して解除手段45に伝達され、解除手段45は、ハウジング42に対して引き出される。すなわち解除手段45はセンサモジュール120の縮退に連動して保護位置に配置される。
【0093】
以上のような構成を採用することで、一つのエアシリンダにより、センサモジュール120が備える伸縮機構の伸縮と、センサ40のセンシング状態と保護状態との転換とを同時に行うことが可能となる。
【0094】
また、カバー220は、支柱122の工具取付面への取り付け具に支持軸239により軸支して取り付けられる。カバー220は、センサ40がセンシング状態と保護状態とに変更することに連動して開閉する機構を備え、センシング状態では開き、保護状態では閉じている。これにより、保護状態にあるセンサ40が保護される。
【0095】
以上、本願発明の一実施の形態に係るセンサについて説明したが、本願発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本願発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも本願発明の範囲内に含まれる。
【0096】
例えば、実施の形態の固定部材60は、保持孔62と嵌り合う円錐台形状としたが、保持孔62の径より大きい円盤状であってもよい。この場合、保護状態のプローブ44は、円盤状の固定部材60と保持孔62の周縁部とが当接する部分同士の摩擦力により、移動が抑制される。
【0097】
また、センサ40の位置の変更と連動して解除手段45を操作する必要は無く、解除手段45を操作できる操作機構を独立して設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本願発明に係るセンサは、物との接触を検知するセンサに利用でき、例えば、タレット旋盤やマシニングセンタといった工作機械に利用される物との接触を検知するセンサとして利用できる。
【符号の説明】
【0099】
40 センサ
42 ハウジング
44 プローブ
44a 第二係合フランジ
45 解除手段
46 第一係合フランジ
47 位置決めフランジ
48a 接続子
48b 接続子
48c 接続子
49 端子
50 端子
51 端子
52 基板
53 第一付勢手段
54 係合爪
58 第二付勢手段
60 固定部材
62 保持孔
64 Oリング
70 封止手段
71 膜部材
72 Oリング
80 オイル
107 タレット刃物台
120 センサモジュール
122 支柱
122a 支柱脚部
122b 支柱頭部
181 レバー部材
182 カム部材
220 カバー
239 支持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物との接触を検知するセンサであって、
中空柱状のハウジングと、
前記ハウジングの内部から外部にわたって突出状に配置され、前記ハウジングに対して往復動および傾動可能なプローブと、
前記プローブに固定され、前記ハウジングの内部に配置される接続子と、
前記ハウジング内部に固定され、前記接続子と当接することにより導通する端子と、
前記接続子が前記端子に当接するように前記プローブを付勢する第一付勢手段と、
前記第一付勢手段による前記端子への前記接続子の当接を解除する解除手段と、
前記ハウジングの内部であって、少なくとも前記端子と前記接続子との周囲を満たす絶縁性を備える液体と、
前記液体を前記ハウジング内部に留める封止手段と、
前記端子と前記接続子との当接の解除状態において、前記ハウジングに設けられる保持孔と係合し、前記プローブをハウジングに対して固定する固定部材と
を備えるセンサ。
【請求項2】
前記封止手段は、
前記プローブの外周壁に液密状態で取り付けられると共に前記ハウジングに液密状態で取り付けられ、前記プローブとハウジングとの隙間を封止する、可撓性を有する膜部材を備える
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記液体は、100(cSt)以上、208(cSt)以下(40℃環境下)の範囲から選定される動粘度を備える
請求項1に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−234463(P2010−234463A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83781(P2009−83781)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】