説明

ゼロクロス検出装置及び画像形成装置

【課題】交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出可能なゼロクロス検出装置、及び、そのゼロクロス検出装置を有する画像形成装置の提供。
【解決手段】交流電圧の絶対値が閾値Vt1未満に低下するとローアクティブのゼロクロス信号1が出力され、上記絶対値が閾値Vt2(Vt1>Vt2)未満に低下するとローアクティブのゼロクロス信号2が出力される。Tw2*Ta/(Ta+Tb)なる式によって算出された時間だけゼロクロス信号2の始点より遅い時点がゼロクロスポイントとして算出される。但し、Tw1はゼロクロス信号1のパルス幅、Tw2はゼロクロス信号2のパルス幅、Taはゼロクロス信号1の始点からゼロクロス信号2の始点に至るまでの時間、Tbはゼロクロス信号2の終点からゼロクロス信号1の終点に至るまでの時間。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧の絶対値がゼロとなるゼロクロスポイントを検出するゼロクロス検出装置に関し、詳しくは、上記交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出可能なゼロクロス検出装置、及び、そのゼロクロス検出装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流電圧の絶対値がゼロとなるタイミングとしてのいわゆるゼロクロスポイントを検出するゼロクロス検出装置が提案されている。検出されたゼロクロスポイントは、例えばヒータのON/OFFタイミングを設定するなど、各種電気機器における各種制御に応用される。また、この種のゼロクロス検出装置では、交流電圧の絶対値が所定の閾値未満となる期間に応じたゼロクロスパルスを出力し、そのゼロクロスパルスの始点と終点との中心の時点を上記ゼロクロスポイントとして検出することがなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−186908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1のようにゼロクロスパルスの始点と終点との中心の時点をゼロクロスポイントとして検出する場合、次のように正確なゼロクロスポイントが検出できない場合がある。例えば、交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れ、ゼロクロスポイントの前後で交流電圧の波形の傾きが異なる場合、上記のようにして検出されたゼロクロスポイントは、正確なゼロクロスポイントから上記波形の傾きが緩い側にずれてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出可能なゼロクロス検出装置、及び、そのゼロクロス検出装置を有する画像形成装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達するためになされた本発明のゼロクロス検出装置は、交流電源が出力する交流電圧の絶対値がゼロとなるゼロクロスポイントを検出するゼロクロス検出装置であって、上記交流電圧の絶対値が、予め設定された第1閾値未満となる期間に応じた第1ゼロクロスパルスを出力する第1ゼロクロスパルス出力手段と、上記交流電圧の絶対値が、上記第1閾値よりも小さい値に予め設定された第2閾値未満となる期間に応じた第2ゼロクロスパルスを出力する第2ゼロクロスパルス出力手段と、上記第1ゼロクロスパルス出力手段が出力する上記第1ゼロクロスパルスの始点及び終点と、上記第2ゼロクロスパルス出力手段が出力する上記第2ゼロクロスパルスの始点及び終点とからなる4つの時点に基づいて、上記ゼロクロスポイントを検出するゼロクロスポイント検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明のゼロクロス検出装置では、第1ゼロクロスパルス出力手段は、交流電圧の絶対値が第1閾値未満となる期間に応じた第1ゼロクロスパルスを出力し、第2ゼロクロスパルス出力手段は、上記交流電圧の絶対値が第2閾値未満となる期間に応じた第2ゼロクロスパルスを出力する。ここで、上記第1閾値及び上記第2閾値は、上記第2閾値の方が上記第1閾値よりも小さい値となるように予め適宜設定された値であればよく、その値に臨界的意義がある必要はない。
【0008】
この場合、交流電圧が最大値または最小値からゼロクロスポイントを経て最小値または最大値まで変化する際に、通常、第1ゼロクロスパルスの始点,第2ゼロクロスパルスの始点,第2ゼロクロスパルスの終点,第1ゼロクロスパルス終点の順で、その4つの時点が時系列的に配設される。そこで、ゼロクロスポイント検出手段は、上記4つの時点に基づいて、上記交流電圧の絶対値がゼロとなるゼロクロスポイントを検出する。このため、本発明のゼロクロス検出装置では、上記交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出することができる。
【0009】
例えば、ゼロクロスポイントの手前の上記波形の傾きは第1ゼロクロスパルスの始点から第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間に反映され、ゼロクロスポイントの後の上記傾きは第2ゼロクロスパルスの終点から第1ゼロクロスパルス終点に至るまでの時間に反映される。このため、上記4つの時点を参照することによって上記ゼロクロスポイントを正確に推定(検出)することができる。なお、上記ゼロクロスポイントは他の方法で推定されてもよい。
【0010】
また、本発明は以下の構成に限定されるものではないが、上記第1ゼロクロスパルスの始点から上記第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間と、上記第2ゼロクロスパルスの終点から上記第1ゼロクロスパルスの終点に至るまでの時間との比が、予め設定された所定範囲を外れた場合、エラーを報知するエラー報知手段を、更に備えてもよい。
【0011】
上記第1ゼロクロスパルスの始点から上記第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間と、上記第2ゼロクロスパルスの終点から上記第1ゼロクロスパルスの終点に至るまでの時間との比が、例えば通常の経年変化で取り得る範囲等として予め設定された所定範囲を外れた場合、いずれかの上記ゼロクロスパルス出力手段が故障しているか、若しくはタコ足配線が行われていたり、大電力を消費する機器が近くで使用されているなどの何らかの異常が想定される。そこで、そのような場合にエラーを報知するエラー報知手段を、更に備えておけば、上記ゼロクロスパルス出力手段の異常や交流電源の異常等にも良好に対応することができる。
【0012】
また、上記第1ゼロクロスパルス出力手段または上記第2ゼロクロスパルス出力手段のいずれか一方が、上記第1ゼロクロスパルスまたは上記第2ゼロクロスパルスを出力しない場合、上記ゼロクロスポイント検出手段は、出力された方のゼロクロスパルスの始点と終点との中心の時点を上記ゼロクロスポイントとして検出してもよい。
【0013】
ゼロクロスパルス出力手段の経年変化や交流電源の電圧変化等によって、上記第1ゼロクロスパルスまたは上記第2ゼロクロスパルスのいずれか一方が出力されなくなる場合がある。例えば、発光ダイオードは経年変化によって徐々に光度が低下するので、発光ダイオードを用いたフォトカプラ等を使用したゼロクロスパルス出力手段では、経年変化によっていずれかの上記ゼロクロスパルスが出力されなくなる場合がある。そこで、そのような場合に、上記ゼロクロスポイント検出手段が、出力された方のゼロクロスパルスの始点と終点との中心の時点を上記ゼロクロスポイントとして検出すれば、ゼロクロスポイントの検出が不可能となって他の制御に支障を来たすのを抑制することができる。
【0014】
また、上記ゼロクロスポイント検出手段は、上記第1ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間と上記第2ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間との差で、上記第1ゼロクロスパルスの始点から上記第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間を割り、その値に上記第2ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間をかけた時間だけ上記第2ゼロクロスパルスの始点よりも遅い時点を上記ゼロクロスポイントとして検出してもよい。この場合、前述のように、ゼロクロスポイントの前後における上記波形の傾きを反映したゼロクロスポイントの検出が、簡単な演算処理によって実行することができる。
【0015】
また、本発明の画像形成装置は、上記いずれかに記載のゼロクロス検出装置を有する画像形成装置であって、被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、上記交流電源から交流電圧を印加されて加熱を行う加熱部を備え、上記画像形成手段によって上記被記録媒体に形成された画像を熱定着する定着器と、上記ゼロクロス検出装置が検出するゼロクロスポイントに基づいて、上記加熱部を制御する加熱制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0016】
このように構成された本発明の画像形成装置では、画像形成手段によって被記録媒体に画像が形成されると、上記交流電源から交流電圧を印加されて加熱を行う加熱部を備えた定着器が、上記被記録媒体に形成された画像を熱定着する。また、加熱制御手段は、上記ゼロクロス検出装置が検出するゼロクロスポイントに基づいて、上記加熱部を制御する。このため、本発明の画像形成装置では、前述のように正確に検出されたゼロクロスポイントに基づいて加熱部を制御することができる。例えば、上記加熱制御手段が上記検出されたゼロクロスポイントに合わせて加熱部への通電/非通電を切り換える場合、フリッカの発生等を極めて良好に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されたレーザプリンタの構成を概略的に表す説明図である。
【図2】そのレーザプリンタのヒータを制御するための構成表す回路図である。
【図3】その回路で生成されるゼロクロスパルスの一例を表す説明図である。
【図4】その回路で実行されるゼロクロスポイント検出処理を表すフローチャートである。
【図5】その回路で生成されるゼロクロスパルスの他の例を表す説明図である。
【図6】その回路で実行されるウォームアップ処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[レーザプリンタの構成]
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された画像形成装置としてのレーザプリンタ1の構成を概略的に表す説明図である。図1に示すように、本実施の形態のレーザプリンタ1は、被記録媒体の一例としての用紙Pに電子写真方式によって画像を形成する画像形成手段の一例としての画像形成部10を備えている。
【0019】
画像形成部10は、感光体ドラム11と転写ローラ12との間に用紙Pを挟んで矢印方向に搬送する間に、その用紙Pにトナー像を形成するものである。感光体ドラム11は、ドラム本体が接地されると共に、その表面に正帯電性の感光層が形成されており、レーザプリンタ1に、図1における反時計方向に回転可能に支持されている。
【0020】
また、感光体ドラム11の外周には、帯電器13,レーザスキャナユニット14,及び現像ユニット15が、転写ローラ12との対向部から感光体ドラム11の回転方向に沿って順次配設されている。帯電器13は、タングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型帯電器であり、感光体ドラム11の表面を一様に正極性に帯電させるように構成されている。レーザスキャナユニット14は、外部より入力される画像データに応じたレーザ光Lを光源(図示せず)から出射し、ポリゴンモータにより回転駆動されるポリゴンミラー(図示せず)の鏡面などによりレーザ光Lを走査して、感光体ドラム11の表面へ照射する周知のものである。
【0021】
また、現像ユニット15は、感光体ドラム11との対向部に現像ローラ16を備えている。そして、この現像ユニット15は、現像ユニット15の内部に収容された正帯電性の非磁性1成分重合トナー(図示せず)を図示省略した周知の供給ローラ,層厚規制ブレード等によって摩擦帯電させながら、現像ローラ16を介して感光体ドラム11の表面まで供給するものである。
【0022】
このため、感光体ドラム11の表面は、その感光体ドラム11の回転に伴って、先ず、帯電器13により一様に正帯電された後、レーザスキャナユニット14からのレーザ光Lの高速走査により露光され、画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0023】
次いで、現像ユニット15より、正帯電されているトナーが感光体ドラム11に供給されると、そのトナーは、感光体ドラム11の表面上に形成された静電潜像、すなわち、一様に正帯電されている感光体ドラム11の表面のうち、レーザ光Lによって露光され電位が下がっている露光部分に供給され、選択的に担持されることによって可視像化され、これによってトナー像が形成される。
【0024】
転写ローラ12は、レーザプリンタ1に図1において時計方向に回転可能に支持されている。この転写ローラ12は、金属製のローラ軸に、イオン導電性のゴム材料からなるローラが被覆されており、転写時には、転写バイアス(転写順バイアス)が印加されるように構成されている。そのため、感光体ドラム11の表面上に担持された上記トナー像は、用紙Pが感光体ドラム11と転写ローラ12との間を通る間に、用紙Pに転写される。上記トナー像転写後の用紙Pは、加熱ローラ21と加圧ローラ22とを備えた定着器20へ搬送され、上記トナー像が熱定着される。
【0025】
[ヒータを制御するための回路構成]
ここで、定着器20は、加熱ローラ21の表面を加熱するための加熱部の一例としてのハロゲンヒータ23と、その加熱ローラ21の表面温度を検出するための温度検出手段の一例としてのサーミスタ25と(いずれも図2参照)、を備えている。次に、図2を用いて、ハロゲンヒータ23を制御するための回路構成について説明する。
【0026】
図2に示すように、レーザプリンタ1が接続される100Vの交流電源100には、その交流電源100からの交流電圧を4つのダイオードによって全波整流するダイオードブリッジD1が、抵抗器R1を介して接続されている。ダイオードブリッジD1によって全波整流された上記交流電圧は、フォトカプラPC1の発光ダイオードPC1aに印加されている。
【0027】
フォトカプラPC1のフォトトランジスタPC1bは、直列接続された抵抗器R3,R2を介してコレクタが直流電源Vccに接続され、エミッタが接地されている。そして、抵抗器R3,R2間の電位は第1ゼロクロスパルス出力手段の一例としての反転バッファIC1に入力され、フォトトランジスタPC1bのコレクタの電位は第2ゼロクロスパルス出力手段の一例としての反転バッファIC2に入力されている。このため、反転バッファIC1は、上記交流電圧の絶対値が所定の閾値Vt1(第1閾値の一例)未満となる期間に応じたローアクティブのゼロクロス信号1(第1ゼロクロスパルスの一例)を出力し、反転バッファIC2は、上記交流電圧の絶対値が所定の閾値Vt2(第2閾値の一例)未満となる期間に応じたローアクティブのゼロクロス信号2(第2ゼロクロスパルスの一例)を出力する(図3参照)。なお、ゼロクロス信号1,2の発生原理については後に詳述する。
【0028】
これらのゼロクロス信号1,2は、ROM,RAM等を内蔵したマイコン60に入力されている。マイコン60には、前述の交流電源100に前述のハロゲンヒータ23と直列接続され、そのハロゲンヒータ23への通電を制御するヒータ制御回路70と、前述のサーミスタ25と、レーザプリンタ1の筐体表面に設けられたエラー報知手段の一例としての表示パネル80とが接続されている。
【0029】
また、図示省略したが、交流電源100とダイオードブリッジD1及びハロゲンヒータ23との間には、周知のメインスイッチが設けられている。図2では、交流電源100を便宜上2つに分けて記載しているが、両者は同じもの(より具体的には例えば同一のコンセント)である。なお、抵抗器R1とダイオードブリッジD1からマイコン60に至る構成が、本発明のゼロクロス検出装置の一例に相当する。
【0030】
次に、ゼロクロス信号1,2の発生原理について説明する。上記交流電圧の絶対値が高くなるに従って、フォトトランジスタPC1bに多くの電流が流れて反転バッファIC1に入力される電位は低下し、反転バッファIC2に入力される電位は更に低下する。このため、反転バッファIC1は、直流電源Vccの電圧と反転バッファIC1の特性とフォトカプラPC1の特性と抵抗器R2,R3の抵抗値とに応じて定まる閾値Vt1以上に上記絶対値が上昇するとHレベルの信号を出力し、その閾値Vt1未満に上記絶対値が低下するとゼロクロス信号1としてLレベルの信号を出力する(図3参照)。同様に、反転バッファIC2は、直流電源Vccの電圧と反転バッファIC2の特性とフォトカプラPC1の特性と抵抗器R2,R3の抵抗値とに応じて定まる閾値Vt2(Vt1>Vt2)以上に上記絶対値が上昇するとHレベルの信号を出力し、その閾値Vt2未満に上記絶対値が低下するとゼロクロス信号2としてLレベルの信号を出力する(図3参照)。
【0031】
[本実施の形態における処理]
次に、マイコン60(ゼロクロスポイント検出手段,加熱制御手段の一例)が内蔵のROMに記憶されたプログラムに基づいて実行する処理について説明する。図4は、上記メインスイッチがオンされたときに実行され周期的に繰り返し実行されるゼロクロスポイント検出処理を表すフローチャートである。
【0032】
この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、ゼロクロス信号1が検出されたか否かが判断される。なお、このS1では、反転バッファIC1の出力が処理開始時からLレベル(ゼロクロス信号1の出力中)であった場合は否定判断され、実質的には反転バッファIC1の出力がHレベルからLレベルに切り換ったか否かが判断される。ゼロクロス信号1が検出されていない場合は(S1:N)、処理はS2へ移行し、ゼロクロス信号2が検出されたか否かが判断される。なお、このS2でも、反転バッファIC2の出力が処理開始時からLレベル(ゼロクロス信号2の出力中)であった場合は否定判断され、実質的には反転バッファIC2の出力がHレベルからLレベルに切り換ったか否かが判断される。そして、ゼロクロス信号2も検出されていない場合は(S2:N)、処理は前述のS1へ移行する。
【0033】
こうして、S1,S2のループ処理が繰り返し実行される間に、通常は、ゼロクロス信号1が検出された後にゼロクロス信号2が検出される。そこで、上記ループ処理の実行中にゼロクロス信号1が検出されると(S1:Y)、処理はS3へ移行し、マイコン60に内蔵された第1のタイマがスタートされることによってゼロクロス信号1のパルス幅Tw1(図3参照)の測定が開始される。続くS4では、ゼロクロス信号2が検出されたか否かが、S2と同様に判断される。ゼロクロス信号2が検出されていないときは(S4:N)、処理はS4にて待機し、ゼロクロス信号2が検出されると(S4:Y)、処理はS5へ移行する。S5では、マイコン60に内蔵された第2のタイマがスタートされることによって、ゼロクロス信号2のパルス幅Tw2(図3参照)の測定が開始される。
【0034】
図3に例示するように、通常は、交流電圧が最大値(+側の極大値)または最小値(−側の極大値)からゼロクロスポイントを経て最小値または最大値まで変化する際に、ゼロクロス信号1の検出,ゼロクロス信号2の検出,ゼロクロス信号2の検出終了(反転バッファIC2出力のLレベルからHレベルへの変化),ゼロクロス信号1の検出終了(反転バッファIC1出力のLレベルからHレベルへの変化)の順で、その4つの時点が時系列的に配列される。
【0035】
そこで、S5に続くS6では、ゼロクロス信号2の検出が終了するまで待機し(S6:N)、ゼロクロス信号2の検出が終了すると(S6:Y)、処理はS7へ移行する。S7では、上記第2のタイマが停止されることによってゼロクロス信号2の測定が終了され、ゼロクロス信号2のパルス幅Tw2が算出される。更に続くS8では、ゼロクロス信号1の検出が終了するまで待機し(S8:N)、ゼロクロス信号1の検出が終了すると(S8:Y)、処理はS9へ移行する。S9では、上記第1のタイマが停止されることによってゼロクロス信号1の測定が終了され、ゼロクロス信号1のパルス幅Tw1が算出される。S9に続くS10では、上記交流電圧の絶対値がゼロとなるゼロクロスポイントが、次のように算出される。
【0036】
ここで、交流電源100からの交流電圧が正確な正弦波であれば、ゼロクロス信号1,2の中心は一致し、その中心がゼロクロスポイントとなる。ところが、交流電源100からの交流電圧が歪んで正確な正弦波となっていない場合は、ゼロクロス信号1,2の中心はゼロクロスポイントからずれてしまう。例えば、図3に例示するように、ゼロクロスポイントの前後で交流電圧の波形の傾きが異なる場合、ゼロクロス信号1,2の中心(すなわちパルス幅Tw1、Tw2の中心)は、正確なゼロクロスポイントから上記波形の傾きが緩い側にずれてしまう。
【0037】
そこで、S10では、Tw2*Ta/(Ta+Tb)なる式によって算出された時間だけゼロクロス信号2の始点より遅い時点がゼロクロスポイントとして算出されて、処理が一旦終了する。なお、上記式において、図3に例示するように、Taはゼロクロス信号1の始点からゼロクロス信号2の始点に至るまでの時間で、Tbはゼロクロス信号2の終点からゼロクロス信号1の終点に至るまでの時間である。ゼロクロスポイントの手前の上記波形の傾きは時間Taに反映され、ゼロクロスポイントの後の上記傾きは時間Tbに反映される。このため、上記式を利用すれば、ゼロクロスポイントを正確に推定することが、簡単な演算処理によって実行できる。このため、本実施の形態では、上記波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出することができる。
【0038】
なお、上記S10では、ゼロクロスポイントを算出する前に時間Taと時間Tbとの比を算出して、その比の値が1/2<Ta/Tb<2の範囲にない場合は表示パネル80を介してエラーを報知してもよい。すなわち、フォトカプラPC1の経年変化や交流電圧の歪で、上記比の値は変化するが、1/2<Ta/Tb<2の範囲にない場合は何らかの異常が生じていることが想定される。例えば、反転バッファIC1またはIC2が故障しているか、若しくはタコ足配線が行われていたり、大電力を消費する機器が近くで使用されているなどの何らかの異常が想定される。そこで、そのような場合にエラーを報知すれば、反転バッファIC1またはIC2の異常や交流電源の異常等にも良好に対応することができる。
【0039】
また、経年変化によって、発光ダイオードPC1aは徐々に光度が低下するので、フォトトランジスタPC1bに流れる電流も減少し、図5に例示するようにゼロクロス信号1が出力されなくなる場合がある。また、交流電圧が何らかの事情で低下した場合も、同様にゼロクロス信号1が出力されなくなる場合がある。そこで、本実施の形態では、そのような場合、次のようにゼロクロス信号2のみに基づいてゼロクロスポイントを検出している。
【0040】
図4に戻って、この場合、ゼロクロス信号1が検出される前に(S1:N)、ゼロクロス信号2が検出されるので(S2:Y)、処理はS15へ移行し、前述のS5と同様にゼロクロス信号2のパルス幅Tw2の測定が開始される。続くS16では、ゼロクロス信号2の検出が終了するまで待機し(S16:N)、ゼロクロス信号2の検出が終了すると(S16:Y)、S17にて、前述のS7と同様にゼロクロス信号2のパルス幅Tw2が算出される。続くS20では、Tw2/2なる式によって算出された時間だけゼロクロス信号2の始点より遅い時点、すなわちゼロクロス信号2の中心がゼロクロスポイントとして算出されて、処理が一旦終了する。このため、本実施の形態では、ゼロクロスポイントの検出が不可能となって他の制御に支障を来たすのを抑制することができる。
【0041】
次に、図6は、上記メインスイッチがオンされ、上記ゼロクロスポイント検出処理によってゼロクロスポイントが最初に算出された後に実行されるウォームアップ処理を表すフローチャートである。図6に示すように、この処理では、先ず、S50にて、上記算出されたゼロクロスポイントに合わせてハロゲンヒータ23がオンされる。
【0042】
続くS51では、サーミスタ25を介して検出される加熱ローラ21の表面温度(以下、定着器20の温度ともいう)が、ウォームアップ用に予め設定された規定温度に達したか否かが判断される。規定温度に達していない場合は(S51:N)、処理はS52へ移行し、予め設定されたウォームアップタイムアウト時間Tが経過したか否かが判断される。ウォームアップタイムアウト時間Tが経過していない場合は(S52:N)、処理は前述のS51へ移行する。
【0043】
そして、このS51,S52の処理が繰り返される間に定着器20の温度が規定温度に達すると(S51:Y)、処理はS53へ移行し、ゼロクロスポイントに合わせてハロゲンヒータ23がオフされた後、処理が終了する。一方、定着器20の温度が規定温度に達する前に(S51:N)、ウォームアップタイムアウト時間Tが経過すると(S52:Y)、S54にて定着器20に異常がある旨の定着器エラーが表示パネル80に表示された後、処理が終了する。なお、S50,S53の処理では、上記ゼロクロスポイント検出処理によってそれまでに算出されたゼロクロスポイントに基づいて(既知の交流周波数も参照してもよい)、次にゼロクロスポイントが算出されるタイミングが予測されることによって、ハロゲンヒータ23のオン/オフがゼロクロスポイントに合わせられる。
【0044】
[本実施の形態の効果及び変形例]
このように、本実施の形態では、交流電圧の波形が歪んで正弦波から外れた場合などにも良好にゼロクロスポイントを検出することができる。このため、本実施の形態において検出(算出)されたゼロクロスポイントに合わせて前述のようにハロゲンヒータ23のオン/オフを切り換えれば、フリッカの発生等を極めて良好に抑制することができる。また、本実施の形態では、経年変化等によってゼロクロス信号1が出力されなくなってもゼロクロス信号2のみによってゼロクロスポイントを検出することができるので、ゼロクロス信号1の検出が不可能となったことが制御に支障を来たすのを抑制することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、ゼロクロス信号1,2の始点,終点に基づいてゼロクロスポイントを推定する形態としては、上記以外の計算式,マップ等を使用することも考えられる。また、上記のように算出されたゼロクロスポイントは、ハロゲンヒータ23の制御以外にも応用することができ、本発明は、レーザプリンタ1等の画像形成装置以外にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…レーザプリンタ 10…画像形成部 11…感光体ドラム
14…レーザスキャナユニット 15…現像ユニット 20…定着器
21…加熱ローラ 22…加圧ローラ 23…ハロゲンヒータ
70…ヒータ制御回路 80…表示パネル 100…交流電源
D1…ダイオードブリッジ IC1,IC2…反転バッファ
L…レーザ光 P…用紙 PC1…フォトカプラ
PC1a…発光ダイオード PC1b…フォトトランジスタ
R1,R2,R3・・・抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源が出力する交流電圧の絶対値がゼロとなるゼロクロスポイントを検出するゼロクロス検出装置であって、
上記交流電圧の絶対値が、予め設定された第1閾値未満となる期間に応じた第1ゼロクロスパルスを出力する第1ゼロクロスパルス出力手段と、
上記交流電圧の絶対値が、上記第1閾値よりも小さい値に予め設定された第2閾値未満となる期間に応じた第2ゼロクロスパルスを出力する第2ゼロクロスパルス出力手段と、
上記第1ゼロクロスパルス出力手段が出力する上記第1ゼロクロスパルスの始点及び終点と、上記第2ゼロクロスパルス出力手段が出力する上記第2ゼロクロスパルスの始点及び終点とからなる4つの時点に基づいて、上記ゼロクロスポイントを検出するゼロクロスポイント検出手段と、
を備えたことを特徴とするゼロクロス検出装置。
【請求項2】
上記第1ゼロクロスパルスの始点から上記第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間と、上記第2ゼロクロスパルスの終点から上記第1ゼロクロスパルスの終点に至るまでの時間との比が、予め設定された所定範囲を外れた場合、エラーを報知するエラー報知手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項1記載のゼロクロス検出装置。
【請求項3】
上記第1ゼロクロスパルス出力手段または上記第2ゼロクロスパルス出力手段のいずれか一方が、上記第1ゼロクロスパルスまたは上記第2ゼロクロスパルスを出力しない場合、上記ゼロクロスポイント検出手段は、出力された方のゼロクロスパルスの始点と終点との中心の時点を上記ゼロクロスポイントとして検出することを特徴とする請求項1または2記載のゼロクロス検出装置。
【請求項4】
上記ゼロクロスポイント検出手段は、上記第1ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間と上記第2ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間との差で、上記第1ゼロクロスパルスの始点から上記第2ゼロクロスパルスの始点に至るまでの時間を割り、その値に上記第2ゼロクロスパルスの始点から終点に至るまでの時間をかけた時間だけ上記第2ゼロクロスパルスの始点よりも遅い時点を上記ゼロクロスポイントとして検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼロクロス検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼロクロス検出装置を有する画像形成装置であって、
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
上記交流電源から交流電圧を印加されて加熱を行う加熱部を備え、上記画像形成手段によって上記被記録媒体に形成された画像を熱定着する定着器と、
上記ゼロクロス検出装置が検出するゼロクロスポイントに基づいて、上記加熱部を制御する加熱制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146862(P2011−146862A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5016(P2010−5016)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】