説明

ソフトウェア無線装置

【課題】ソフトウェア無線装置における機能部品の構築を簡略化し、ソフトウェアの開発を容易にする。
【解決手段】各機能部品が共通の形式の入出力端子を有する構成とする。また、各機能部品がそれぞれのタイミングで動作する分散タイミング制御を用い、各機能部品が共通の入出力信号を持つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェアの書き換えにより機能の変更が可能な処理部を有する無線装置、いわゆるソフトウェア無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていた無線機は、プロトコル処理部、ベースバンド処理部、無線変復調部で構成される(特開2000-138651号公報(特許文献1))。プロトコル処理部から送信された送信データは、ベースバンド処理部で無線方式に適合した帯域のベースバンド信号に変換され、無線変復調部で無線周波数帯の信号に変換され、アンテナから送信される。アンテナから受信した無線周波数帯の信号は、無線変復調部でベースバンド信号に変換され、ベースバンド処理部でベースバンドの復調処理が行われ、受信データとしてプロトコル処理部に送られる。ベースバンド信号処理を行った結果は、送信の場合は、変調信号として無線変復調部に、受信の場合は、復調データとしてプロトコル処理部に出力される。
【0003】
また、無線機における処理の一部を、ソフトウェアで機能変更可能なように構成する方法が知られている。新しい無線方式に対応する場合は、各機能部品を新方式のものに置き換える、または接続の順番を変更する、パラメータの変更を行うなどをして対処を行う。
【0004】
【特許文献1】特開2000-138651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術では、ベースバンド処理部の各機能を担う複数機能部品をまとめて制御する制御部が必要である。この制御部では、例えば、各機能部品における信号処理のタイミングなどを制御する。このため、異なる無線方式に対応するためには、それぞれの機能部品の組み換えを行うだけでは対応できず、これらを統括する制御部をも新しい無線方式に適応したものに作り変える必要がある。このため、新しい無線方式に対応するためには、大幅な設計変更を必要とし、開発時間の増大を招くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、前記の問題点を解決するために、各機能部品が共通の形式の入出力端子を有する構成とする。また、各機能部品がそれぞれのタイミングで動作する分散タイミング制御を用い、各機能部品に共通して入出力される(最前段の機能部品から後段の各機能部品に順次送られる)制御信号を準備する。これによって、機能部品を自由に組み替えることが可能になり、新しい通信方式に対しても、機能部品の接続変更や、パラメータの変更によって対応できるようにしたものである。機能部品の組み換えの自由度が上がることによって、新しい通信方式を実現するために要する開発時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明を用いることによって、ソフトウェア無線機において、タイミング制御の分散処理を行うことができる。これにより、ソフトウェア無線機を構成する機能部品の独立性を高め、再利用性の高いライブラリを構築することが可能である。また、無線方式に依存した独立したタイミング制御部を設ける必要が無いため、機能部品を並び替えることにより容易に無線方式の変更を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に本発明におけるソフトウェア無線装置の構成例を示す。データの送信時には、プロトコル処理部(CPU)104から出力された送信データを、ベースバンド信号処理部103で無線方式に合った信号に変換し、無線変復調部102で無線周波数帯の信号に変換し、アンテナ101より出力する。データの受信時には、アンテナ101から入力された無線周波数帯の信号は、無線変復調部102でベースバンド帯域の信号に変換され、ベースバンド信号処理部103で復調処理をされ、受信データとしてプロトコル処理部104に送られる。ベースバンド信号処理部103は、ソフトウェアで実現される機能部品105〜110、クロック111、ソフトウェアを書き込むためのインタフェース112を具備する。図1において、機能部品は6個であるが、これは一例であり他の個数でも良い。
【0009】
プロトコル処理部104からベースバンド信号処理部103に入力された送信データは、クロック111に同期して110、109、108の機能部品に順に送られ、それぞれの機能部品で信号処理を施される。最終段の機能部品108から出力された信号は、無線変復調部102に送られる。各機能部品は、例えば、符号化処理、拡散処理、位相変調処理などの、ベースバンド信号処理の小さな単位の処理を行う。無線変復調部102からベースバンド信号処理部103に送られたベースバンド受信信号は、クロック111に同期して105、106、107の機能部品に順に送られ、それぞれの機能部品で信号処理を施されて、最終段の機能部品107からプロトコル処理部104に送られる。機能部品の処理内容は、例えば、位相復調処理、逆拡散処理、復号処理などである。
【0010】
図2に本特許における機能部品の一例を示す。202は信号処理を行うデータを入力する入力端子、203は信号処理結果を出力する出力端子、204は電源投入時などに初期化を行うためのリセット信号が入力されるリセット端子、205はリセット後に信号処理動作に必要なパラメータを設定するためのパラメータ情報が入力されるパラメータ設定端子、206はパラメータ設定後に信号処理動作を指示するための開始信号が入力される動作開始端子、207は信号処理プログラムを格納するためのメモリ、208は動作クロックを与えるクロック端子、209はメモリ207に書き込む内容を与えるメモリ書き換え端子である。入力端子および出力端子は1つずつである必要は無く、複数の入力端子や複数の出力端子を持つ場合もある。入力端子202は、前段の機能部品からのデータや、前後段の機能部品からの制御信号の受信に用いられるため、前後段の機能部品の出力端子に接続される。出力端子203は、前後段の機能部品への制御信号の送信や、後段の機能部品へのデータの送信に用いられるため、前後段の機能部品の入力端子に接続される。また、入力端子を持たずに内部で発生した信号を出力する場合もある。
【0011】
図2に示す機能部品は、ソフトウェアで制御され、またはソフトウェアのみで構成され、ソフトウェアは書き換え端子209から入力され、メモリ207に格納される。機能部品は図1に示すように複数個存在するが、全てが図2に示す構成とインタフェースを持ち、入出力端子の構成は共通化される。図2に示す機能部品は、DSP等のプログラムのみで実現される場合、FPGA等の再構成可能なハードウェアに書き込まれるソフトウェアまたはデータとして実現される場合、FPGA等に書き込まれるソフトウェアまたはデータと、それを制御するDSP等のプログラムの両方で実現される場合がある。図2に示される各端子は、機能部品がDSP等のプログラムで実現されている場合は、プログラム内のインタフェースとなり、機能部品がFPGA内に実現される場合は、FPGA内に構成されるブロックの信号線となり、いずれの場合もソフトウェアによるコンフィギュレーションによって実現される。
【0012】
図3に機能部品の入力端子と出力端子との間で入出力される各信号の信号フォーマットの一例を示す。入出力端子には、信号処理に用いるデータを伝達するデータフィールド301、データフィールドに含まれる内容等の、データの流れと同一方向の制御情報を伝達する順方向制御信号フィールド302、次のデータを受け取るとこができること等、データの流れと逆向きの制御情報を伝達する逆方向制御信号フィールド303がある。データフィールドは複数のビット、例えば32ビットで構成される。制御信号フィールドは、伝達すべき制御情報の量によりサイズが決まる。例えば、逆方向の制御信号でビジー状態/ビジー解除の情報のみを伝達すれば十分な場合は、逆方向制御信号フィールドは1ビットで足りる。フィールド毎にビット数が異なる場合もある。データフィールド301は、信号処理が行われるデータを受け渡すために用いられ、ある機能部品の出力端子から出力され、その端子が接続された入力端子に入力される。順方向制御信号フィールド302は、データフィールドのデータの種別や有効データであることの識別子などが含まれ、データフィールド301のデータを受け取った機能部品が、そのデータが何であるかを判断し、処理内容を決定するために用いられる。なお、順方向制御フィールドは、送信系、受信系のそれぞれの機能部品の系列において、最前段から最後段まで同一のフォーマットで伝達するようにすれば、後の方の機能部品で必要となる制御情報を最前段の機能部品から途中の機能部品を介して伝達することができ、中央制御部がなくても各機能部品に対する制御を行うことが可能となる。逆方向制御信号フィールド303は、データフィールド301の信号の流れとは逆向きに制御情報を伝え、後段の入力端子から出力され、前段の出力端子に入力される。逆方向制御信号フィールド303には、機能部品が次のデータを受け取れるか否かを示すビジー信号などが含まれる。
【0013】
図4にベースバンド信号処理部103の動作を示す。機能部品110は符号化処理、機能部品109は拡散処理、機能部品108は位相変調処理を行うものとして、送信側の処理を示している。401は符号化処理を行う機能部品110の処理フロー、402は拡散処理を行う機能部品109の処理フロー、403は位相変調処理を行う機能部品108の処理フローである。各機能部品に対して、まず、プロトコル処理を行うCPU104からリセット信号404が入力される。このリセット信号404は、それぞれの機能部品に伝えられ、リセット処理405、406、407が行われる。次にCPU104からパラメータ設定を行う信号408が入力され、パラメータ設定処理409、410、411が実行される。パラメータ設定完了後に、動作開始信号412がCPU104から送られ、動作開始処理413、414、415が実行され、機能部品110、109、108はそれぞれの動作を開始する。
【0014】
CPU104から送られた送信データ416は、まず符号化処理を行う機能部品110に入力され、符号化処理417が行われる。符号化処理を行われたデータ418は、拡散処理を行う機能部品109に送られる。機能部品109はビジー信号419を機能部品110に送り、次のデータを受け取れないことを伝えた後に、データ418の拡散処理420を実行する。ただし、データ418に対応する順方向制御信号がデータの無効を示す場合は、拡散処理420は実行せず、次の有効なデータを待つ。拡散処理が終わったデータ421は、位相変調処理を行う機能部品108に送られる。機能部品108はデータを受け取った後、ビジー信号422を機能部品108に送った後、位相変調処理を行う。また、機能部品109はデータ421を機能部品108に送った後に次のデータを受け取るため、ビジー解除信号427を機能部品110に送る。機能部品110はデータ418を送った後、CPU104から次の送信データ425を受け取り、符号化処理426を行う。ただし、データ425に対応する順方向制御信号がデータの無効を示す場合は、符号化処理426は実行せず、次の有効なデータを待つ。符号化処理後のデータ428は、ビジー解除信号427を受け取った後に、機能部品109に送られる。このあと、前のデータと同様に、拡散処理430、位相変調処理434が行われて無線変復調部102に送られる。CPU104からのデータ436、442も同様に各機能部品で符号化処理、拡散処理、位相変調処理が行われたあと、無線変復調部102に送られる。機能部品間のデータの入出力は、データの種別を示す制御情報と共に、クロック111から供給されるクロック信号に同期して行われる。
【0015】
本実施例では、各機能部品で行う信号処理をどのデータから開始するかという情報やなどのタイミング情報を、制御情報として機能部品間で受け渡しされるデータと対応付けて伝送させるため、無線装置全体のタイミング管理を行うモジュールを置くことなく、それぞれの機能部品が独立してタイミング制御を行うことが可能である。また、逆方向制御によってビジー状態を伝えるため、処理速度や処理周期の異なる機能部品を接続した場合でも、全体のタイミング管理を行うことなくデータの受け渡しが可能になる。すなわち、ビジー情報信号により機能部品間のデータの入出力さえ同期すれば、ベースバンド処理部の全ての機能部品の動作が同期している必要はなく、タイミング管理を簡略化することができる。このことは、機能部品の独立性を高めることによる再利用性の向上につながる。
【0016】
本発明では、クロックは機能部品間のデータの受け渡しと、機能部品内での動作タイミングに用いられ、各機能部品の信号処理の開始や終了タイミングは、データに付随するタイミング情報によって決まる。すなわち、各機能部品内では、入力信号内に示された情報を元に信号処理の開始と終了を行うため、各信号処理はあらかじめ決められたタイミングではなく、非同期に行うことができる。このため、CPU104は信号処理のタイミングを厳密に制御する必要が無く、また、全体のタイミングを制御するブロックを設ける必要も生じない。このため、タイミング設計を容易に行うことが可能となり、ソフトウェアの開発を容易にすることが可能となる。
【0017】
また、ソフトウェア無線における信号処理では、途中で処理パラメータを更新する場合がある。本発明ではパラメータ更新のタイミングも機能部品間で非同期に行う。図9に本発明におけるパラメータ更新を行う時の信号処理部103の動作を示す。図4と同様に、機能部品110は符号化処理、機能部品109は拡散処理、機能部品108は位相変調処理を行うものとして、送信側の処理を示している。901は符号化処理を行う機能部品110のパラメータ更新時の処理フロー、902は拡散処理を行う機能部品109のパラメータ更新時の処理フロー、903は位相変調処理を行う機能部品108のパラメータ更新時の処理フローである。まずCPU104から変更するパラメータ904が入力され、更新に用いるパラメータが処理905、906、907によって機能部品に設定される。この段階では、機能部品はパラメータを受け取るだけであり、信号処理には反映されない。従って、CPUからのパラメータ設定904は、実際にパラメータが更新される前であれば、どのタイミングで行っても良く、信号処理の流れとは非同期に行うことができる。つまり、CPU104から入力されるデータ908は、更新前のパラメータで符号化処理909、拡散処理913、いそう変調処理916が行われ、ベースバンド信号917として無線変調部に送られる。このとき、図4に示す処理と同様に、910、914によって機能部品間の受け渡しが行われ、911、915に示すビジー制御が行われる。CPU104はパラメータ更新を信号処理内容に反映させるために、パラメータ更新指示912を機能部品110に与える。パラメータ更新指示912を受け取った機能部品110は、パラメータ更新処理918を行い、905で受け取ったパラメータを次に受け取るデータの処理から反映させるようにする。また、パラメータ更新指示920を、順方向制御信号に乗せて、次の機能部品109に送る。このパラメータ更新指示920もビジー制御に従って送られるため、機能部品109からビジー解除信号919を受け取ってから送る。パラメータ更新指示921を受け取った機能部品109は、ビジー信号921を機能部品108に送った後、自身のパラメータ更新処理923を実行する。同様に、次の機能部品110からビジー解除信号924を受け取った後、パラメータ更新指示925を次の機能部品910に送る。パラメータ更新指示925を受け取った機能部品110はビジー信号926を機能部品109に送った後に、自身のパラメータ更新処理を行う。機能部品110は最終段であるため、パラメータ更新信号を次段に送る必要は無い。このように、パラメータ更新もデータと同じ手順で受け渡しが行われるため、CPU104はパラメータ更新のタイミングを厳密に管理する必要が無く、タイミング設計が容易になる。
【0018】
また、本実施例の機能部品は、入力端子・出力端子の接続先を分岐・合流すること等により、分岐構造や階層化構造を自由に構築することがでる。このため、機能の小さい部品を組合わせて大きな部品を作ることも可能であり、開発の柔軟性を確保することができる。
受信処理の場合も同様に、機能部品103で位相復調処理、機能部品104で逆拡散処理、機能部品105で復号処理が行われるが、図4に示す手順と同様に、各機能部品間でデータと制御信号の受け渡しが行われる。
【0019】
図5に機能部品の動作フローを示す。機能部品のフローは501から始まり、まずステップ502でリセット端子204を介してCPU104からのリセットを受け、初期化処理を行う。次にステップ503でパラメータ設定端子205を介してCPU104からパラメータ設定を受けた後、ステップ504で動作開始端子206を介してCPU104からの動作開始信号を受け、機能部品としての動作を開始する。動作開始後にステップ505で入力データ(送受信データまたは順方向制御信号)が来るまで待つ。前段の機能部品からデータ(送受信データまたは順方向制御信号)が送られて来ると、ステップ506で入力端子202を介してそのデータ(送受信データまたは順方向制御信号)を受け取り、ステップ507で出力端子203からビジー信号を前段の機能部品に返し、次のデータを受け取れないことを示す。入力データを受け取るバッファを複数持つ機能部品の場合は、バッファに空きがある場合はビジー信号を返さず、全てのバッファにデータが入った状態になったときに、ビジー信号を返す。受け取ったデータは、ステップ508で信号処理を行う。この信号処理は、ソフトウェアによってあらかじめ定められたものであり、機能ブロックの種類によって内容が異なる。また、受け取ったデータがパラメータ更新指示を含むものであった場合は、パラメータ更新処理が行われる。信号処理が終ったデータは、ステップ509で出力側の次段の機能部品のビジー状態が解除されているのを確認し、510で次段の機能部品に送られる。出力側からのビジー解除信号を入力端子202から受信することにより、次段の機能部品がデータを受け取れる状態になったことを判断することができる。データを次段の機能ブロックに送ると、次のデータを受け取れる状態になるため、ステップ511において出力端子203から前段の機能部品へのビジー解除信号を送信し、ステップ505に戻り次のデータが来るのを待つ。次のデータに対しても506以下同じ動作を繰り返す。ステップ508に示す信号処理内容は機能部品の種類によって異なるが、処理の流れは全ての機能部品で共通化される。
【0020】
機能部品はソフトウェアで構成され、そのソフトウェアは外部の書き込み装置から書き変え端子209を通して書き込まれる。図6に書き込み装置の構成の一例を示す。601はインタフェース、602は書き込み制御部、603はメモリ、604はユーザインタフェース、605はソフトウェアの管理テーブル、606はソフトウェアが格納されるライブラリである。ユーザインタフェース604から書き換え指示をユーザが与えると、書き込み制御部602はメモリ603の中の管理テーブル605の中から該当する通信方式のソフトウェアの情報を検索する。管理テーブル内に該当する通信方式が見つかると、それに対応したソフトウェアをライブラリ606から取り出し、インタフェース601を通じてソフトウェア無線機に送り出す。このとき、ソフトウェア無線機が該当するソフトウェアを実行可能であるか等を検査するために、インタフェース601を通じてソフトウェア無線機の情報を読み取るようにしてもよい。インタフェース601、ユーザインタフェース604は、書き込み装置から無線通信装置へのライブラリの書き込み、および、メモリに新たなライブラリを追加するための書き込みなどに用いられる。
【0021】
図7にメモリ603に格納される管理テーブル605とライブラリ606の構成の一例を示す。701が管理テーブル、706がライブラリである。管理テーブル701には、各種通信方式のソフトウェア管理情報が格納される。図7の例では、通信方式名702、バージョン番号703、使用する機能部品のID704、その機能部品に設定する機能のライブラリ本体が格納されているアドレス705が表になって格納される。ライブラリ706には、各機能部品のソフトウェア本体と付属情報が格納される。図7の例では、パラメータ707、データビット数定義708、順方向制御線定義709、逆方向制御線定義710、処理プログラム711が格納されている。
【0022】
図6に示す書き込み装置が、ベースバンド処理部103にソフトウェアを書き込む手順の例を図8に示す。801は書き込み装置側の動作を示し、802はベースバンド処理部103の動作を示す。803から開始した動作は、ユーザインタフェース604によってユーザ入力804が行われる。ユーザ入力804では、通信方式、バージョン番号などの情報が与えられ、その方式が無線装置に合致しているかの検査805が行われる。このとき、無線装置側の情報を要求し、無線装置のベースバンド処理部103から装置情報の転送809を行うようにしてもよい。装置情報から当該無線装置が書き換えようとしている無線方式に対応するものであるとこが確認されれば、書き込み装置は管理テーブル701から対応する通信方式の検索806を行う。合致する通信方式とバージョンが管理テーブル701に見つかれば、対応する部品ID、ライブラリのアドレス705に格納されているソフトウェア本体や付属情報などをステップ807でベースバンド処理部103に転送する。ベースバンド処理部103では、ステップ810で受け取った処理プログラムを各機能部品に対応させた形態で記憶する。図3では、各機能部品に分散してソフトウェアを格納するメモリを具備する例を説明したが、複数の機能部品のためのソフトウェアをまとめて格納するメモリを設けるようにしてもよい。全ての処理プログラムを書き込んだ後、ベースバンド処理部103は、終了通知811を書き込み装置に送る。書き込み装置はステップ808において終了通知を受け取り、ステップ812へ進み、書き込み動作を完了する。以上説明した、ベースバンド処理部103と書き込み装置との間の通信は、無線装置のインタフェース112と書き込み装置のインタフェース601との間で行われる。
【0023】
ソフトウェア無線装置の機能部品のライブラリを作成するためには、機能部品ごとの機能検証が必要となる。また、機能部品を組合わせてソフトウェア無線装置を構成するにあたっても検証が必要である。機能検証は最終的にはこれを実行するハードウェアで無線装置としての動作を確認する必要があるが、開発段階では、機能部品ごと、および他の機能部品と組合わせて無線装置全体としてのシミュレータを用いることで、機能検証を効率化することができる。シミュレータ及び実際のハードウェアでの機能検証が完了したライブラリを、図7で説明したような定型のフォーマットにして書き込み装置のメモリに格納する。
【0024】
以上詳細に説明したように、本発明を用いることによって、ソフトウェア無線機において、タイミング制御の分散処理を行うことができる。これにより、ソフトウェア無線機を構成する機能部品の独立性を高め、再利用性の高いライブラリを構築することが可能である。また、無線方式に依存した独立したタイミング制御部を設ける必要が無いため、機能部品を並び替えることにより容易に無線方式の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるソフトウェア無線装置の構成例を示す図。
【図2】信号処理部の機能部品の機能図。
【図3】信号フォーマットを示す図。
【図4】信号処理部の機能部品の動作を示すプロセス図。
【図5】逆方向制御信号を用いた機能部品の処理を示すフロー図。
【図6】ソフトウェアの書き込み装置の構成図。
【図7】ソフトウェアの管理テーブルとソフトウェアライブラリの構成図。
【図8】ソフトウェアの書き込み処理を示すフロー図。
【図9】順方向制御信号を用いた機能部品の動作を示すプロセス図。
【符号の説明】
【0026】
101:アンテナ、102:無線処理部、103:ベースバンド信号処理部、104:プロトコル処理部、105-110・201:機能部品、111:クロック、112:インタフェース、
202:入力端子、203:出力端子、204:リセット端子、205:パラメータ設定端子、206:動作開始端子、207:メモリ、208:クロック端子、209:書き換え端子
601:インタフェース、602:書き込み制御部、603:メモリ、604:ユーザインタフェース、605・701:管理テーブル、606・706:ライブラリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号の送受信を行うアンテナと、
該アンテナに接続され、送信信号の無線周波数帯への変調及び受信信号の無線周波数帯からの復調を行う無線変復調部と、
該無線変復調部に接続され、送受信信号の信号処理を行う信号処理部と、
該信号処理部に接続され、送受信信号のプロトコル処理を行うCPUとを有する無線通信装置であって、
前記信号処理部は、プログラムの実装により機能が定義される、送信信号データまたは受信信号データの信号処理を行う複数の機能ブロックを含み、
該各機能ブロックは、該機能ブロックが次の送信信号データまたは次の受信信号データの入力を受け付けることができるか否かを示すビジー状態情報を逆方向制御信号として前段に通知し、後段の機能ブロックから、次の送信信号データまたは受信信号データの入力を受け付けることができることを示すビジー状態情報の通知を受けた場合に、該機能ブロックにおける信号処理を施した送信信号データまたは受信信号データを該後段の機能ブロックへ出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信装置であって、
前記各機能ブロックは、共通のクロックからクロック信号の供給を受け、該クロック信号を用いて前記各機能ブロックの信号処理を行い、また、該クロック信号を用いて、前段または後段の機能ブロックとの間における前記送信信号データまたは前記受信信号データの受け渡しを行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信装置であって、
前記各機能ブロックは、該機能ブロックにおいて信号処理を行った送信信号データまたは受信信号データを前記後段の機能ブロックへ出力することと合わせて、前記次の送信信号データまたは前記次の受信信号データの入力を受け付けることができることを示すビジー状態情報を前記前段の機能ブロックへ出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信装置であって、
前記各機能ブロックは、前段の機能ブロックから、前記送信信号データまたは前記受信信号データと対応付けた順方向制御信号の入力を受け、該順方向制御信号が該機能ブロックの信号処理に関係する情報を含む場合には該順方向制御信号に基づいて信号処理を行い、該順方向制御信号が該機能ブロックの信号処理に関係する情報を含まない場合には該順方向制御信号を用いることなく対応する送信信号データまたは受信信号データの信号処理を行い、該信号処理を行った送信信号データまたは受信信号データと該順方向制御信号とを対応付けて後段の機能ブロックへ出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線通信装置であって、
前記順方向制御信号には、前記対応する送信信号データまたは受信信号データについての種別または該送信信号データまたは受信信号データが有効であるか無効であるかについての情報を含むことを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項5記載の無線通信装置であって、前記各機能ブロックは、入力された前記順方向制御信号に、前記対応する送信信号データまたは受信信号データが無効であることを示す情報が含まれる場合は、該機能ブロックにおける信号処理を行わないことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項4記載の無線通信装置であって、
前記順方向制御信号は、前記複数の機能ブロックのうち、送信処理系または受信処理系の最前段の機能ブロックから最後段の機能ブロックまで、同一フォーマットで受け渡されることを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項4記載の無線通信装置であって、
前記CPUは、前記プロトコル処理に基づいて前記送信信号データまたは前記受信信号データの処理方法を変更することを判断した場合は、該変更に関連する前記機能ブロックに該変更の通知を行い、該変更が発生する送信信号データまたは受信信号データに対応付けられる前機順方向制御信号に、該変更タイミングを通知するタイミング情報を含めるよう送信処理系または受信処理系の最前段の処理ブロックに通知し、
前記変更の通知を受けた機能ブロックは、前記タイミング情報を含む順方向制御信号の入力を受けた場合に、該順方向制御信号に対応付けられる送信信号データまたは受信信号データに対して、該通知された変更に基づく信号処理を行うことを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
無線信号の送受信を行うアンテナと、該アンテナに接続され、送信信号の無線周波数帯への変調及び受信信号の無線周波数帯からの復調を行う無線変復調部と、該無線変復調部に接続され、送受信信号の信号処理を行う信号処理部と、該信号処理部に接続され、送受信信号のプロトコル処理を行うCPUとを有する無線通信装置における無線通信信号処理方法であって、
前記信号処理部に含まれる、プログラムの実装により機能が定義され、送信信号データまたは受信信号データの信号処理を行う複数の機能ブロックにおいて、
該機能ブロックが次の送信信号データまたは次の受信信号データの入力を受け付けることができるか否かを示すビジー状態情報を逆方向制御信号として前段に通知する第1のステップと、
後段の機能ブロックから、次の送信信号データまたは受信信号データの入力を受け付けることができることを示すビジー状態情報の通知を受けた場合に、該機能ブロックにおける信号処理を施した送信信号データまたは受信信号データを該後段の機能ブロックへ出力する第2のステップとを有することを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項10】
請求項9記載の無線通信信号処理方法であって、前記各機能ブロックにおいて、
共通のクロックからクロック信号の供給を受ける第3のステップを有し、
前記第2のステップにおいて、該クロック信号を用いて、前段または後段の機能ブロックとの間における前記送信信号データまたは前記受信信号データの受け渡しを行うことを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項11】
請求項9記載の無線通信信号処理方法であって、前記各機能ブロックにおいて、
該機能ブロックにおいて信号処理を行った送信信号データまたは受信信号データを前記後段の機能ブロックへ出力することと合わせて、前記次の送信信号データまたは前記次の受信信号データの入力を受け付けることができることを示すビジー状態情報を前記前段の機能ブロックへ出力することを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項12】
請求項9記載の無線通信信号処理方法であって、前記各機能ブロックにおいて、
前段の機能ブロックから、前記送信信号データまたは前記受信信号データと対応付けた順方向制御信号の入力を受ける第4のステップと、
該順方向制御信号が該機能ブロックの信号処理に関係する情報を含む場合には該順方向制御信号に基づいて信号処理を行い、該順方向制御信号が該機能ブロックの信号処理に関係する情報を含まない場合には該順方向制御信号を用いることなく対応する送信信号データまたは受信信号データの信号処理を行う第5のステップと、
該信号処理を行った送信信号データまたは受信信号データと該順方向制御信号とを対応付けて後段の機能ブロックへ出力する第6のステップを有することを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の無線通信信号処理方法であって、前記順方向制御信号には、前記対応する送信信号データまたは受信信号データについての種別または該送信信号データまたは受信信号データが有効であるか無効であるかについての情報を含むことを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項14】
請求項13記載の無線通信信号処理方法であって、
前記第5のステップにおいて、入力された前記順方向制御信号に、前記対応する送信信号データまたは受信信号データが無効であることを示す情報が含まれる場合は、該機能ブロックにおける信号処理を行わないことを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項15】
請求項12記載の無線通信信号処理方法であって、前記順方向制御信号は、前記複数の機能ブロックのうち、送信処理系または受信処理系の最前段の機能ブロックから最後段の機能ブロックまで、同一フォーマットで受け渡されることを特徴とする無線通信信号処理方法。
【請求項16】
請求項12記載の無線通信信号処理方法であって、
前記CPUにおいて、
前記プロトコル処理に基づいて前記送信信号データまたは前記受信信号データの処理方法を変更することを判断した場合は、該変更に関連する前記機能ブロックに該変更の通知を行う第7のステップと、
前記第7のステップに合わせて、該変更が発生する送信信号データまたは受信信号データに対応付けられる前機順方向制御信号に、該変更タイミングを通知するタイミング情報を含めるよう送信処理系または受信処理系の最前段の処理ブロックに通知する第8のステップと、
前記変更の通知を受けた機能ブロックにおいて、
前記タイミング情報を含む順方向制御信号の入力を受けた場合に、該順方向制御信号に対応付けられる送信信号データまたは受信信号データに対して、該通知された変更に基づく信号処理を行う第9のステップを有することを特徴とする無線通信。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−109397(P2006−109397A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59855(P2005−59855)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年9月21日から24日 EIC電子情報通信学会主催の「2004ソサイエティ大会」に文書をもって発表
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】