説明

ソルダーレジスト層及びプリント配線板

【課題】ファインパターン化に優れると共に、LED等の光を効率よく利用し得る高反射率のソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を有するプリント配線板を提供すること。
【解決手段】白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層とを含むソルダーレジスト層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発光部品を実装するための、高反射率のソルダーレジスト層及び該ソルダーレジスト層を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、一般的に積層板に張り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板には、電子部品をはんだ付けする際の回路の保護膜として、基材に塗布して硬化させて形成するソルダーレジストが使用されている。
このソルダーレジストは、はんだ付けの際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて、酸素や湿分による劣化を防止する。さらに、回路基板の永久保護膜としても機能する。そのため、密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの諸特性が要求される。
【0003】
また、プリント配線板は、高密度化実現のため微細化(ファイン化)、多層化およびワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。そのため、ソルダーレジストも、ファイン化、高解像性、高精度、高信頼性の要求が高まっている。
【0004】
このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術として、微細なパターンを正確に形成できるフォトリソグラフィー法が用いられており、特に環境面の配慮等から、アルカリ現像型のフォトリソグラフィー法が主流となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
一方で、近年、携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト、また照明器具の光源など、低電力で発光する発光ダイオード(LED)を、ソルダーレジストを有するプリント配線板に直接実装する用途が増えてきている。
【0006】
これに対し従来、LEDの光を効率よく利用するために、高反射率のソルダーレジストが種々提案されている。
【0007】
例えば、特定の酸化チタンを用いることにより、劣化特性を向上させたソルダーレジストが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の高反射率を目的とした白色のソルダーレジストでは、現像性を中心とする組成の制限から、ファインパターン化と高反射率の両立の観点から更なる改善が望まれる。
【0009】
一方、スクリーン印刷法等でパターン印刷し、加熱による硬化を行なう、熱硬化型ソルダーレジストは、組成の制限は少ないが、パターン印刷することから、高精細なソルダーレジストパターンの形成には不向きであり、また、量産において、印刷を繰返すことによりパターンのにじみが発生し、部品実装に支障をきたすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平1−54390号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特公平7−17737号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−322546号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の目的は、ファインパターン化に優れると共に、LED等の光を効率よく利用し得る高反射率のソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、上記目的実現に向け鋭意研究した結果、ソルダーレジスト層として、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層を含むソルダーレジスト層を用いることで、正確な部品実装性を維持しながら、従来の限界を超えた高い反射率をもつプリント配線板が得られることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明のソルダーレジスト層は、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層とを含むことを特徴とする。
本発明の一形態において、上記アルカリ現像型感光性樹脂組成物は、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、光重合開始剤と、酸化チタンとを含有し得るものであり、好ましい一形態として、上記光重合開始剤として、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用してもよい。
【0014】
また、本発明の一形態において、上記熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ化合物と、ポリカルボン酸またはその酸無水物と、酸化チタンを含有し得る。
【0015】
また、本発明のソルダーレジスト層は、一形態において、上記熱硬化性樹脂組成物からなる層として複数層含む。
【0016】
また、本発明の一形態において、白色の熱硬化性樹脂組成物からなる上層パターンの面積は、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる下層パターンの面積より小さく形成されている。
【0017】
また、本発明のプリント配線板は、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層とを含むソルダーレジスト層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ファインパターン化に優れると共に、LED等の光を効率よく利用し得る高反射率のソルダーレジストを有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のソルダーレジスト層及びプリント配線板について説明する。
本発明のソルダーレジスト層は、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層(以下、「下層」などともいう。)と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層(以下、「上層」などともいう。)とを含む。アルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層を下層とすることは、ファインパターン化の観点から必須である。この2層の関係を満たす限り、白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層は2層以上でもよく、また白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層の間に他の層を有していてもよい。白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層を複数層とすることにより、界面反射により反射率の向上がもたらされる。
【0020】
一般的に使用される酸化チタンなどを含まないソルダーレジスト用の感光性樹脂組成物層では充分な反射率が得られにくい。それ故に、本発明の一形態として、下層の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物層は、酸化チタンなどを含んだ白色であることが必要である。また、上層の熱硬化性樹脂組成物層も酸化チタンなどを含んだ白色であることが必要である。
【0021】
本発明のソルダーレジスト層においては、上層として酸化チタンなどを含有してなる白色の熱硬化性樹脂組成物層を有することにより、以下の効果が得られる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物は、露光、現像工程が必要ないので、アルカリ現像型樹脂組成物より多量の酸化チタンなどの着色剤を配合でき、反射率を向上させることはもとより、光でパターニングする現像型樹脂組成物では多量には配合できない光安定剤や酸化防止剤等の添加剤を配合できるので、長期にわたって反射率を維持することもできる。
【0022】
また、本発明のソルダーレジスト層においては、下層としてアルカリ現像型感光性樹脂組成物層を介することで、回路による凹凸が少なくなり、上層の熱硬化性樹脂組成物をパターン印刷する際に生じるにじみを低減することができ、良好な生産性と部品実装性が得られる。上層の白色の熱硬化型ソルダーレジストパターンは、下層のソルダーレジストパターンと同一のパターンでも良いが、少し面積が小さいパターンにすることにより、多少のにじみが生じても量産性と部品実装性を確保できる。なお、さらに高精細なパターンが混在する場合はその部分は上層のソルダーレジストを省略したパターンを使用することができる。
【0023】
以下に、本発明のソルダーレジスト層に含まれる、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と上層用の白色の熱硬化樹脂組成物について説明する。
【0024】
〔下層〕
(A)樹脂
本発明の一態様において、白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物には、分子内にカルボキシル基、フェノール性水酸基などが存在し、アルカリ性の現像液に中和して溶解する樹脂を用いる。中でもカルボキシル基が存在すると、炭酸ナトリウム水溶液などの弱アルカリ水が現像液として使用できるので、望ましい。また、感光性を付与するためには、アクリロイル基などのエチレン性不飽和基を用いるのが一般的であり、エチレン性不飽和基を持つ他の樹脂やモノマーをブレンドする方法と、カルボキシル基を含む樹脂を変性し、分子内にエチレン性不飽和基を導入する方法がある。
【0025】
高反射率で白色のソルダーレジストにおいては、多量の白色着色剤、主に酸化チタンを多量配合するので、現像特性の維持のために、カルボキシル基を含む樹脂を変性し、分子内にエチレン性不飽和基を導入し、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂を用いるのが特に望ましい。
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物に用い得る、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂(以下、「樹脂(A)」という。)としては、1分子内に光硬化性のためのエチレン性不飽和基と弱アルカリ水溶液による現像を可能にするカルボキシル基を有する樹脂であれば使用可能であり、特定の樹脂に限定されるものではない。このような1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂は、以下に列挙する樹脂(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)を好適に使用することができる。すなわち、
(1)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(2)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した第2級の水酸基に飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂、
(3)水酸基含有ポリマーに、飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に、1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基およびカルボキシル基含有樹脂
である。
【0026】
これらの中でも、前記(1)に記載の感光性のカルボキシル基含有樹脂である、(a)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と、(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られるカルボキシル基を有する共重合系樹脂が好ましい。
【0027】
この場合、特に1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物(b)として、脂肪族重合性モノマーから生成される化合物を用いれば、樹脂の芳香環から起因する光による劣化も抑えられるので好ましい。
【0028】
(a)のカルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと、1分子中に1個の不飽和基と少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物とを共重合させて得られる。共重合樹脂(a)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール変性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタアクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0029】
また、1分子中に1個の不飽和基と少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、不飽和基とカルボン酸の間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、例えばβ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性等によりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、さらにはマレイン酸等のカルボキシル基を分子中に2個以上含むものなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
(b)の1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物としては、特に脂肪族モノマーから生成される化合物を用いることが好ましく、具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これら(b)1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
樹脂(A)は、その酸価が50〜200mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。酸価が50mgKOH/g未満の場合には、弱アルカリ水溶液での未露光部分の除去が難しい。200mgKOH/gを超えると、硬化被膜の耐水性、電気特性が劣るなどの問題がある。また、樹脂(A)の重量平均分子量は、5,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が5000未満であると指触乾燥性が著しく劣る傾向がある。また、重量平均分子量が100,000を超えると現像性、貯蔵安定性が著しく悪化する傾向があるために好ましくない。
【0032】
(B)光重合開始剤
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(B)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類; アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1 ,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類; 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−{(4−メチルフェニル)メチル}−1−{4−(4-モルフォルニル)フェニル}−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類; 2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類; アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4 ’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドや、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール系化合物;2,4−ビス( トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−フェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン,1−[−4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)9H−カルバゾ−ル−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられるが、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用することが望ましい。
【0033】
ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でもビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名;イルガキュア819)が入手しやすく実用的である。
【0034】
モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等が挙げられる。中でも2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン社製、商品名;ダロキュアTPO)が入手しやすく実用的である。
【0035】
上記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と前記モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用することにより、酸化チタンを配合した高反射率の塗膜でも必要な光を吸収でき、高精細なパターン形成ができるようになるが、その配合比率を変えることにより微調整が可能となる。パターンの断面形状で基材面側の深部の硬化性が不足してアンダーカットが出やすいときには、上記ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の比率を大きくし、表面硬化性が不足して現像後に表面状態が悪いときには前記モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の比率を大きくする。光重合開始剤の配合率は、樹脂(A)100質量部に対して好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部である。配合率が1質量部未満の場合、光硬化性が低下し、露光・現像後のパターン形成が困難になる傾向があるので好ましくない。一方、30質量部を超えた場合、光重合開始剤由来の塗膜の色つきが大きくなり、またコスト高の原因となるので好ましくない。
【0036】
(C)酸化チタン
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物に用いられる酸化チタン(C)について以下に説明する。なお、下層用のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に使用され得る酸化チタンと、後述する上層用の熱硬化性樹脂組成物に使用され得る酸化チタンとにおいては、特段の区別はなく、ここで説明する酸化チタン(C)は、上層用の白色熱硬化性樹脂組成物における酸化チタンとして好適に用いられる。
【0037】
酸化チタン(C)としては、アナターゼ型もルチル型も用いることができるが、ルチル型が好ましい。アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型と比較して紫外線領域の短波長側での反射率が高いため、反射率としては望ましいが、光触媒活性を有するために、組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して紫外線領域の短波長側での反射率が劣るものの、光活性を殆ど有さないために、樹脂の劣化を抑えることができ、安定した硬化物を得ることができる。
【0038】
このようなルチル型の酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。具体的には、タイペークR−820、タイペークR−830、タイペークR−930、タイペークR−550、タイペークR−630、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−680、タイペークR−670、タイペークR−780、タイペークR−850、タイペークCR−50、タイペークCR−57、タイペークCR−80、タイペークCR−90、タイペークCR−93、タイペークCR−95、タイペークCR−97、タイペークCR−60、タイペークCR−63、タイペークCR−67、タイペークCR−58、タイペークCR−85、タイペークUT771(石原産業株式会社製)、タイピュアR−100、タイピュアR−101、タイピュアR−102、タイピュアR−103、タイピュアR−104、タイピュアR−105、タイピュアR−108、タイピュアR−900、タイピュアR−902、タイピュアR−960、タイピュアR−706、タイピュアR−931(デュポン株式会社製)、TITON R−25、TITON R−21、TITON R−32、TITON R−7E、TITON R−5N、TITON R−61N、TITON R−62N、TITON R−42、TITON R−45M、TITON R−44、TITON R−49S、TITON GTR−100、TITON GTR−300、TITON D−918、TITON TCR−29、TITON TCR−52、TITON FTR−700(堺化学工業株式会社製)等を使用することができる。このようなルチル型酸化チタンの中でも塩素法で製造したものが、樹脂の劣化をさらに抑えるので特に好ましい。
【0039】
また、アナターゼ型酸化チタンとしては、TA−100、TA−200、TA−300、TA−400、TA−500(富士チタン工業株式会社製)、タイペークA−100、タイペークA−220、タイペークW−10(石原産業株式会社製)、TITANIX JA−1、TITANIX JA−3、TITANIX JA−4、TITANIX JA−5(テイカ株式会社製)、KRONOS KA−10、KRONOS KA−15、KRONOS KA−20、KRONOS KA−30(チタン工業株式会社製)、A−100、A−100、A−100、SA−1、SA−1L(堺化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
このような酸化チタン(C)の配合率は、組成物中の全固形分に対して、好ましくは30〜80質量部であり、より好ましくは40〜70質量%である。配合率が80質量部を超えても反射率の向上がみられなく、また、光硬化性が低下し、硬化深度が低くなり好ましくない。一方、30質量部未満であると、隠ぺい力が小さく、高反射率の硬化物を得にくい。
【0041】
光重合性モノマー
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、感光性の向上を目的として光重合性モノマーを添加してもよい。光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド付加物の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート及び、これらのフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類;グルセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルのアクリレート類;メラミンアクリレート;及び/又は上記アクリレート類に対応するメタクリレート類等を挙げることができる。
【0042】
これらの光重合性モノマーの配合率は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは10〜80質量部である。配合率が100質量部を超えると、その硬化塗膜はソルダーレジストとしての物性が低下してしまうため好ましくない。
【0043】
有機溶剤
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、組成物を分散させやすい状態にする、塗布しやすい状態にする、塗布後乾燥させて造膜させるといった目的で、有機溶剤を添加することができる。このような有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤等を挙げることができる。また、これらの有機溶剤は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0044】
エポキシ化合物
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、耐熱性を向上させる目的でエポキシ化合物を配合することができる。エポキシ化合物としては、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート(例えば日産化学(株)製のTEPIC−H(S−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体)や、TEPIC(β体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物)等)などの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂などの希釈剤に難溶性のエポキシ樹脂や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの希釈剤に可溶性のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
このようなエポキシ化合物の配合率は、樹脂(A)100質量部に対して好ましくは70質量部以下、より好ましくは5〜60質量部である。エポキシ化合物の配合率が70質量部を超えると、現像液での未露光部分の溶解性が低下し、現像残りが発生しやすくなり、実用上使用することが難しい。
【0046】
酸化防止剤
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、塗膜にかかる熱が原因の劣化による変色を少なくする目的で、酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくはヒンダードフェノール系化合物である。ヒンダードフェノール系化合物としては、例えばノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業(株)製);MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれもアデカアーガス化学(株)製);イルガノックス245、イルガノックス259、イルガノックス565、イルガノックス1010、イルガノックス1035、イルガノックス1076、イルガノックス1081、イルガノックス1098、イルガノックス1222、イルガノックス1330、イルガノックス1425WL(以上いずれもチバ・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0047】
前記酸化防止剤の配合率は、樹脂(A)100質量部に対して好ましくは0.4〜15質量部である。0.4質量部以下では塗膜にかかる熱が原因の劣化による変色防止効果が少なく、15質量部以上では現像性の低下をおこし、パターニングに不具合がでるため好ましくない。
【0048】
光安定剤
さらに、本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、ヒンダードアミン系光安定剤を含有させてもよく、これにより光劣化を減少させることができる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、チヌビン622LD、チヌビン144;CHIMASSORB 944LD、CHIMASSORB 119FL(以上いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカル社製);MARK LA−57、LA−62、LA−67、LA−63、LA−68(以上いずれもアデカア−ガス化学(株)製);サノールLS−770、LS−765、LS−292、LS−2626、LS−1114、LS−744(以上いずれも三共ライフテック(株)製)などが挙げられる。
【0049】
前記光安定剤は、樹脂(A)100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0050】
分散剤
本発明の一態様において、下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、分散剤を含有させてもよい。これにより酸化チタンの分散性、沈降性を改善することができる。例えば、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U100、ANTI−TERRA−204、ANTI−TERRA−205、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−112、DISPERBYK−116、DISPERBYK−130、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−183、DISPERBYK−185、DISPERBYK−184、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2020、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2070、DISPERBYK−2096、DISPERBYK−2150、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−9076、BYK−9077、BYK−220S(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210、ディスパロンKS−860、ディスパロンKS−873N、ディスパロン7004、ディスパロン1830、ディスパロン1860、ディスパロン1850、ディスパロンDA−400N、ディスパロンPW−36、ディスパロンDA−703−50(楠本化成株式会社製)、フローレンG−450、フローレンG−600、フローレンG−820、フローレンG−700、フローレンDOPA−44、フローレンDOPA−17(共栄社化学株式会社製)が挙げられる。
【0051】
分散剤の含有率は、上記の目的を有効に達成するために、酸化チタン(C)100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0052】
その他の添加剤
さらに、本発明の下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃助剤等が使用され得る。
【0053】
〔上層〕
(D)熱硬化性樹脂
本発明の一態様において、白色の熱硬化性樹脂組成物には、加熱により硬化して電気絶縁性を示す樹脂を用いる。このような樹脂としては、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。特に、本発明においては、エポキシ化合物が好ましく用いられる。
【0054】
上記エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、なかでも2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物などが挙げられる。特に、後述する硬化剤(E)としてポリカルボン酸無水物を用いる場合には、反応性の面で多官能脂環式エポキシ樹脂を用いることが好ましい。この多官能脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、セロキサイド2021P、エポリードGT−301、エポリードGT−403、EHPE−3150等(いずれもダイセル化学工業製)が挙げられる。
これらのエポキシ化合物は、塗膜の特性向上の要求に合わせて、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
(E)硬化剤
本発明の一態様において、上層用白色熱硬化性樹脂組成物に用いられる硬化剤(E)としては、多官能フェノール化合物、ポリカルボン酸またはその酸無水物、脂肪族又は芳香族の一級又は二級アミン、ポリアミド樹脂、ポリメルカプト化合物などが挙げられる。これらの中で、ポリカルボン酸又はその酸無水物が、作業性、絶縁性、変色性の面から、好ましく用いられる。
【0056】
前記ポリカルボン酸及びその酸無水物は、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及びその酸無水物であり、例えば(メタ)アクリル酸の共重合物、無水マレイン酸の共重合物、二塩基酸の縮合物などが挙げられる。なかでも、変色性の面でスチレン−無水マレイン酸の共重合物がより好ましい。この共重合物としては、例えば、SMA−1000P、SMA−2000P、(サートマー社製)が挙げられる。このようなスチレン−無水マレイン酸の共重合体において、スチレン単位と無水マレイン酸単位の共重合比(モル比)が、1:1〜3:1であることが好ましい。より好ましくは、1:1〜2:1である。スチレン単位の比が1未満であると、共重合体を形成することができず、3を超えると、架橋点が少なくなり、はんだ耐熱性を得ることが困難となる。また、分子量が800〜6000であることが好ましい。
【0057】
これら硬化剤の配合率は、通常用いられる量的割合で充分であり、熱硬化性樹脂(D)、例えば前記エポキシ化合物100質量部当たり、好ましくは30〜300質量部、より好ましくは50〜200質量部が適当である。この範囲を逸脱すると耐熱性が劣化するので好ましくない。
【0058】
(C)酸化チタン
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物に含有される酸化チタンとしては、上述したように、下層用のアルカリ現像型感光性樹脂組成物に含有される前記酸化チタン(C)と同様のものを使用することができる。その配合率は、組成物中の全固形分に対して、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量%である。配合率が100質量部を超えると印刷特性が悪くなり、一方、30質量部未満であると、隠ぺい力が小さく、高反射率の硬化物を得にくい。
【0059】
有機溶剤
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物には、下層用の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物と同様の目的で、前記と同様の有機溶剤を用いることができる。
【0060】
酸化防止剤
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物には、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と同様の目的で、前記と同様の酸化防止剤を配合することができる。酸化防止剤の配合率は、熱硬化性樹脂(D)100質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは0.4〜25質量部である。0.4質量部以下では塗膜にかかる熱が原因の劣化による変色防止効果が少なく、30質量部以上でも効果の向上はみられない。
【0061】
光安定剤
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物には、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と同様の目的で同様のヒンダードアミン系光安定剤を添加できる。前記光安定剤は、熱硬化性樹脂(D)100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲で添加することが好ましい。
【0062】
分散剤
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物には、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と同様に分散剤を含有させてもよい。これにより酸化チタンの分散性、沈降性を改善することができる。好ましい含有率は、酸化チタン(C)100質量部に対して、0.1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0063】
その他の添加剤
本発明の一態様において、上層用の熱硬化性樹脂組成物には、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物と同様に、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃助剤等が使用され得る。
【0064】
以下に本発明のソルダーレジスト層を有するプリント配線板の製造方法の一態様について説明する。
【0065】
まず、本発明の下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整する。次に、粘度調整した組成物を、回路形成されたプリント配線板に、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、例えば70〜90℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成する。その後、フォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、100℃〜200℃で熱硬化する。この熱硬化工程は上層用の熱硬化性樹脂組成物層の硬化工程と兼ねることができるので省略することもできる。そして、本発明の上層用熱硬化性樹脂組成物を必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整する。次にスクリーン印刷法で所定のパターンにて印刷する。このパターンは部品実装の正確性を考慮し、下層のレジストパターンよりはみ出さないように下層のレジストパターンより小面積であることが望ましい。次いで、100℃〜200℃で熱硬化することにより、正確な部品実装性を維持しながら、従来の限界を超えた反射率をもつ本発明のソルダーレジスト層を有するプリント配線板を製造することができる。
【0066】
なお、下層用の白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を露光するための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどを用いることができる。その他、レーザー光線なども活性光線として利用できる。
【0067】
また、現像液であるアルカリ水溶液としては、0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリ水溶液を使用することも可能である。他のアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を挙げることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではないことはもとよりである。
【0069】
〔下層用白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物の調製〕
樹脂溶液1の合成
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル900g、および重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、商品名;パーブチルO)21.4gを加えて90℃に加熱した。加熱後、ここに、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、およびラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名;プラクセルFM1)109.8gを、重合開始剤であるビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製、商品名;パーロイルTCP、)21.4gと共に3時間かけて滴下して加え、さらに6時間熟成することにより、カルボキシル基含有共重合樹脂を得た。なお、反応は、窒素雰囲気下で行った。
【0070】
次に、得られたカルボキシル基含有共重合樹脂に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学(株)製、商品名;サイクロマーA200)363.9g、開環触媒としてジメチルベンジルアミン3.6g、重合抑制剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に加熱し、攪拌することによりエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分の酸価が108.9mgKOH/g、重量平均分子量が25,000の、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を53.8質量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液を樹脂溶液1と呼ぶ。
【0071】
表1に従って各成分を配合、攪拌して3本ロールにて分散させてそれぞれ白色のアルカリ現像型ソルダーレジスト組成物を作製した。表中の数字は、質量部を示す。
【表1】

【0072】
〔上層用白色熱硬化性樹脂組成物の調製〕
表2に従って各成分を配合、攪拌して3本ロールにて分散させて白色熱硬化性樹脂組成物を調製した。表中の数字は、質量部を示す。
【表2】

【0073】
各組成物を用いて形成されるソルダーレジストの諸性質を調べるために、表3のようにソルダーレジスト層を形成する塗膜を振り分けて試験片を作製し、試験、評価を行った。
【表3】

【0074】
(1)試験片の作製
下層用の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR−4銅張り積層板にスクリーン印刷法にて、膜厚30μmとなるように100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)で印刷し、80℃で30分間、熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。これをプリント配線板用露光機HMW−680GW(オーク製作所製)を用いて、積算光量700mJ/cmの紫外線でパターン露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、プリント配線板用現像機にて60秒間現像し、続いて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化させて塗膜を作製した。作製した塗膜は、高密度実装に十分なファインパターンであることを確認することができた。
【0075】
次に、実施例1、2として、上層用の白色熱硬性樹脂組成物を、上記において得られた下層用の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物の塗膜上に、スクリーン印刷法にて膜厚30μmとなるように100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してパターン印刷し、これを150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化させて、下層と上層からなるソルダーレジスト層を形成した特性試験用の試験片を作製した。
【0076】
比較例1、2については、下層用の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて形成した塗膜のみからなるソルダーレジスト層を形成したものを特性試験用の試験片とした。
【0077】
(2)反射率の測定
得られた試験片を、分光測色計CM−2600d(コニカミノルタ製)を用いてSCI方式で、XYZ表色法のY値を測定した。結果を表4に示す。
【表4】

【0078】
表4において、YはXYZ表色系の反射率を示し、Lは、L表色系の明度を表わす。aは赤方向、−aは緑方向、bは黄方向、−bは青方向を示し、ゼロに近いほど彩度がないことを示す。
【0079】
表4から明らかな通り、本発明の組成物を用いた実施例1および実施例2においては、XYZ表色系の反射率Yは90以上と極めて高い反射率を示すことがわかった。特に、実施例2においては、下層用の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物中の酸化チタン配合量が少ないにも関わらず、実施例1とほぼ同等の反射率を有していることがわかる。これは、上層に白色熱硬化性樹脂組成物層を設けたことによって、下層の白色アルカリ現像型感光性樹脂組成物層に大きく影響を受けることなく、極めて高い反射率を示していることがわかった。
【0080】
一方で、比較例1、2では実施例並みの反射率を得ることはできなかった。これらは光でパターニングするアルカリ現像型であるために、多量の酸化チタンを配合できないといった組成の制限があるため、反射率の特性向上にも限界があることがわかる。
【0081】
(3)はんだ耐熱性
(1)と同様に作製した各試験片に、ロジン系フラックスを塗布して260℃のはんだ槽で10秒間フローさせた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、乾燥させた後に、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれについて評価した。結果を表5に示す。
【0082】
(4)耐溶剤性
(1)と同様に作製した各試験片を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに30分間浸漬し、乾燥させた後に、セロハン粘着テープによるピールテストを行い、塗膜の剥がれと変色について評価した。結果を表5に示す。
【0083】
(5)鉛筆硬度試験
(1)と同様に作製した各試験片に、芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、約45°の角度で押し付けて、塗膜の剥がれが生じない鉛筆の硬さを記録した。結果を表5に示す。
【0084】
(6)絶縁抵抗試験
FR−4銅張り積層板の代わりにIPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポンを用いること以外は(1)と同様の条件で試験片を作製した。この試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。結果を表5に示す。
【表5】

【0085】
表5において、はんだ耐熱性、耐溶剤性の評価における丸印は、塗膜の剥がれや変色がないことを示している。
【0086】
表5から明らかなように、本発明のソルダーレジスト層は、ソルダーレジストに要求される良好な耐熱性、耐溶剤性、密着性および電気絶縁性を有することがわかった。
【0087】
上記結果から、本発明のソルダーレジスト層によれば、下層にファインパターン化が可能な白色アルカリ現像型の感光性樹脂組成物を用いると共に、この層の上層に白色の熱硬化性樹脂組成物を用いているので、正確な部品実装性を維持しながら、従来の限界を超えた高い反射率をもつプリント配線板を得ることができたことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色のアルカリ現像型感光性樹脂組成物からなる層と、この層に重ねるように設けた白色の熱硬化性樹脂組成物からなる層とを含むソルダーレジスト層。
【請求項2】
前記アルカリ現像型感光性樹脂組成物が、1分子内にエチレン性不飽和基とカルボキシル基を含む樹脂と、光重合開始剤と、酸化チタンとを含む組成物である請求項1に記載のソルダーレジスト層。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ化合物と、ポリカルボン酸またはその酸無水物と、酸化チタンを含む組成物である請求項1に記載のソルダーレジスト層。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物からなる層として複数層含む、請求項1に記載のソルダーレジスト層。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のソルダーレジスト層を有するプリント配線板。