説明

ソレノイドバルブ

【課題】弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止するソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】プランジャ11が吸着面101に吸着された時のスプール6の慣性による移動距離S1を、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間の距離によって定める。移動距離S1を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最短距離Tより短い距離に形成する。プランジャ11吸着時に、ストッパ部162の端面163と、キャップ18の底面185とを当接させて第二のばね受け16の吸着方向側への移動を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャが固定鉄心に吸着される時に発生する、振動及びスプールの切換え不良を防止するソレノイドバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプールの過度のオーバーランを防止するソレノイドバルブとして、特許文献1に記載されるものがあった。
【0003】
特許文献1において、ソレノイドは、弁装置と、弁装置と連結されたソレノイドと、を備えていた。弁装置は、バルブボディと、バルブボディ内に配設された油路と、を備え、油路は、複数のポートが連通されるとともに、スプールが進退自在に配設されていた。ソレノイドは、吸着面を有する固定鉄心及び吸着面に接近離隔可能なプランジャを備えていた。スプールとプランジャとの間には、プランジャの動きをスプールに伝えるバルブピンが介設されていた。
【0004】
バルブボディのスプールと対向する面には、スプールを押圧するスプール戻しばねが配設されるとともに、プランジャが吸着されたときにスプールが押し動かされる側の位置にスプールを受け止めるようにしたストッパが配設されていた。スプールのスプール戻しばねと対向する端面には、ばね座が配設され、スプール戻しばねは、ばね座を介してスプールを押圧していた。
【0005】
固定鉄心の吸着面からストッパのスプールを受け止める受止端までの距離と、プランジャの固定鉄心との当接端面からスプールのストッパが配設される側の端面に配設されたばね座までの距離を実質的に等しく形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−18291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のソレノイドバルブにより、スプールの過度のオーバーランに係る問題は、解決された。
【0008】
ところで、ソレノイドバルブ作動時に、プランジャが固定鉄心に吸着する時の衝突音が繰り返し発生する場合には、図3の(b)のような電流波形を示す。なお、図3において、実線は、電源電圧を現わし、破線はソレノイドコイル電流値を現わす。
【0009】
この場合、図3(a)に示すような、ソレノイドバルブが正常に作動している場合の波形と比較すると、プランジャが吸着、離脱を繰り返すため、電流値の異常が見られる。ACタイプのソレノイドの特性として、固定鉄心の吸着面からプランジャが離れるに従い、電流値が大きくなるからである。
【0010】
これらのことより、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止して、図3(a)に示すような正常な電流波形の状態を維持することが望まれる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止するソレノイドバルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明では、プランジャが吸着された時の、スプールの慣性による移動距離を、プランジャが吸着される吸着力と、スプールがプランジャを押し返す慣性力と、がつり合わない距離に形成している。
【0013】
これにより、押し返されるスプールの慣性力と、ソレノイドの吸着力とのいずれかの力が勝ることになるので、プランジャの固定鉄心への吸着と、スプールがプランジャを押し返す、という現象がループ状に繰り返されることを防止することができる。よって、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明では、プランジャが吸着された時に、ばね受けの当接部材側の端面と、当接部材のばね受け側の端面とを、スプールの慣性により当接するように形成して、スプールの慣性による移動距離を、プランジャが吸着面に吸着された時の、ばね受けの前記当接部材側の端面と、当接部材のばね受け側の端面との間の距離によって定めている。このような構成にして、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止することができる。
【0015】
請求項3記載の発明のように、スプールの慣性による移動距離を、プランジャが吸着される吸着力と、スプールがプランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より短い距離に形成すれば、ばね受けの当接部材側の端面と、当接部材のばね受け側の端面とが当接してスプールの移動が制限される。よって、プランジャの吸着力は、スプールがプランジャを押し返す慣性力を上回るので、プランジャの吸着は維持されるので、好適にプランジャの固定鉄心への吸着と、スプール戻しばねのスプールへの押し込みが繰り返されるのを防止することができる。
【0016】
また、請求項4記載の発明のように、スプールの慣性による移動距離を、プランジャが吸着される吸着力と、スプールがプランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より長い距離に形成しても、プランジャの固定鉄心への吸着と、スプールがプランジャを押し返す、という現象がループ状に繰り返されることを防止することができる。
【0017】
請求項5記載の発明のように、ダブルソレノイドタイプの場合に、ばね受けを、円環板状に形成して、当接部材を、ばね受け側に向かって延びる突出部を有する構成にすることによって、部品点数、製造工程を減少させることができる。
【0018】
また、請求項6記載の発明のように、シングルソレノイドタイプの場合に、
プランジャが吸着された時に、スプールの当接部材側の端面と、当接部材のばね受け側の端面とを、スプールの慣性により当接するように形成して、スプールの慣性による移動距離が、プランジャが吸着面に吸着された時の、スプールの当接部材側の端面と、当接部材のばね受け側の端面との間の距離によって定めている。このような構成によっても、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止することができる。
【0019】
請求項7記載の発明のように、スプールの慣性による移動距離を、プランジャが吸着される吸着力と、スプールがプランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より短い距離に形成することで、請求項3記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0020】
また、請求項8記載の発明のように、スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より長い距離に形成することによっても、請求項4記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、弁の切換え不良及びプランジャと固定鉄心が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明におけるソレノイドバルブの第一の実施形態の断面図である。
【図2】図1における(a)ストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185とが、スプール6の慣性により当接した状態、(b)プランジャ11が吸着面101に吸着された時の静止させた状態、を示した部分拡大断面図である。
【図3】ソレノイドバルブの電流波形図である。
【図4】本発明におけるソレノイドバルブの第二の実施形態の断面図である。
【図5】図4における(a)ストッパ部152Aの吸着方向側の端面153Aと、固定鉄心10Aの有底孔106Aの底面107Aとが、スプール6の慣性により当接した状態、(b)プランジャ11が吸着面101に吸着された時の静止させた状態、を示した部分拡大断面図である。
【図6】本発明におけるソレノイドバルブの第一の実施形態の第一の変形例の部分拡大断面図である。
【図7】本発明におけるソレノイドバルブの第一の実施形態の第二の変形例の部分拡大断面図である。
【図8】本発明におけるソレノイドバルブの第二の実施形態の第一の変形例の部分拡大断面図である。
【図9】本発明におけるソレノイドバルブの第二の実施形態の第二の変形例の部分拡大断面図である。
【図10】本発明におけるソレノイドバルブの力平衡部分Hの最長距離より長く距離を形成した例の部分拡大断面図である。
【図11】本発明におけるソレノイドバルブの移動距離S9を、スプール6Kのキャップ18の底面185側の端面62Kと、キャップ18の底面185との間の距離によって定めた例の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明におけるソレノイドバルブの第一の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、図1に向かって左の矢印の方向側を離脱方向、右の矢印の方向側を吸着方向とする。
【0024】
図1に示すように、ソレノイドバルブ1は交流電源が用いられるシングルソレノイドタイプで、弁装置2と、弁装置2と連結されるソレノイド3と、を備えている。
【0025】
弁装置2は、バルブボディ4内に油路5が配設され、油路5には、図示しない複数のポートが連通されるとともに、スプール6が進退自在に配設されている。
【0026】
ソレノイド3は、コイル7が内蔵されるケース8を有している。コイル7の内周側には、ソレノイド鉄心9が離脱方向に向かって突出するように配設されている。
【0027】
ソレノイド鉄心9は、ケース8外側に突出する本体部91と、コイル7内周側に位置して円筒状に形成された円筒部92を有している。ソレノイド鉄心9は、円筒部92の吸着方向側で固定鉄心10と溶着され、円筒部92の中空部にコイル7の励磁により後述する固定鉄心10の吸着面101に接近するプランジャ11が配設されている。ソレノイド鉄心9は、本体部91の離脱方向側で固定具12によって螺合されケース8に固定されている。
【0028】
固定鉄心10は、離脱方向側にプランジャ11が吸着される吸着面101を有している。固定鉄心10には、後述するバルブピン14が挿通される挿通孔102が吸着離脱方向に沿って形成されている。固定鉄心10は、円柱状の柱部103と、柱部103より拡径したフランジ部104を有し、フランジ部104でバルブボディ4の離脱方向側の面と接している。ばね受け部105は、フランジ部104の吸着方向側に配設され、吸着離脱方向に沿って有底孔106が形成され、有底孔106の底面107でばね13と当接するとともに、外周面でバルブボディ4と螺合されている。
【0029】
スプール6とプランジャ11との間には、プランジャ11の動きをスプール6に伝えるバルブピン14が挿通孔102内を摺動可能に配設されている。
【0030】
バルブピン14と、スプール6とは、第一のばね受け15内で当接するように形成されている。
【0031】
第一のばね受け15は、吸着方向側に位置して円環板状に形成されたフランジ部151と、フランジ部151から離脱方向に向かって延びる円筒状のストッパ部152と、を有している。
【0032】
ばね13は、らせん状に形成されストッパ部152の外周部分に配設され、フランジ部151と、底面107とに当接して、スプール6を吸着方向に付勢している。
【0033】
スプール6は、吸着離脱方向に沿って円柱状に形成され、吸着方向の端部に第二のばね受け16(特許請求の範囲のばね受けに相当)が装着されている。スプール6は、二か所の大径部61を有している。大径部61は、スプール6の吸着離脱方向に沿った位置に応じて、図示しないポートを接続、遮断するように形成されている。
【0034】
第二のばね受け16は、離脱方向側に位置して円環板状に形成されたフランジ部161と、フランジ部161から吸着方向側に向かって延びる円筒状のストッパ部162と、を有している。
【0035】
スプール戻しばね17は、らせん状に形成されストッパ部162の外周部分に配設され、フランジ部161と、後述するキャップ18の底面185とに当接して、スプール6を離脱方向に付勢している。
【0036】
キャップ18(特許請求の範囲の当接部材に相当)は、段差を有した円柱状の柱部181と、柱部181より拡径したフランジ部182と、柱部181の離脱方向側に配設されたばね受け部183とを有している。ばね受け部183は、吸着離脱方向に沿って有底孔184が形成され、有底孔184の底面185でスプール戻しばね17と当接するとともに、外周面でバルブボディ4と螺合されている。
【0037】
図2(b)は、プランジャ11が吸着面101に吸着された時の静止させた状態を示し、プランジャ11が吸着面101に吸着された時のスプール6の慣性による移動距離S1が、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間の距離によって定められている。移動距離S1は、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最短距離Tより短い距離に形成されている。
【0038】
ここで、「移動距離S1」とは、図2(b)に参照するように、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間が、最短となる場合の距離をいう。以下の「距離S2乃至9」、「最短距離T」、「最長距離U」、についても同様に考えるものとする。
【0039】
ここで、「力平衡部分」とは、図2(b)に参照するように、潤滑油の粘性、外気温、電源電圧等の変化により変動する、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合う位置の集合部分をいう。
【0040】
図2(a)に示すように、プランジャ11が吸着された時に、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185とが、スプール6の慣性により当接するように形成されている。
【0041】
ソレノイドバルブ1の作用について説明する。コイル7に通電すると、図2に示すように、プランジャ11が固定鉄心10の吸着面101に吸着され、バルブピン14を介してスプール6が吸着方向に移動する。
【0042】
プランジャ11は、図2(a)に示すように、プランジャ11が吸着された時に、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185とが、スプール6の慣性により当接する。また、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間の距離によって定められた移動距離S1が、力平衡部分Hの最短距離Tより短い距離に形成されているため、ストッパ部162の端面163と、キャップ18の底面185とが当接しての吸着方向側への移動が制限される。そして、プランジャ11の吸着力は、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力を上回るので、プランジャ11の吸着は維持される。
【0043】
スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力が、プランジャ11が吸着される吸着力を下回るので、プランジャ11の固定鉄心10への吸着と、スプール戻しばね17のスプール6への押し込みがループ状に繰り返されるのを防止する。
【0044】
コイル7への通電を止めると、磁束の流れが消滅し、スプール戻しばね17の付勢力が、プランジャ11が吸着される吸着力を上回り、プランジャ11が離脱方向側に戻されるとともに、固定鉄心10側のばね13の付勢力によって、スプール6は中立位置に戻される。
【0045】
ソレノイドバルブ1では、プランジャ11が吸着された時に、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185とが、スプール6の慣性により当接するように形成している。また、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間の距離によって定められた移動距離S1を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最短距離Tより短い距離に形成している。
【0046】
これにより、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力が、プランジャ11が吸着される吸着力を下回るとともに、ストッパ部162の端面163と、キャップ18の底面185とが当接しての吸着方向側への移動が制限される。よって、プランジャ11の固定鉄心10への吸着と、スプール6がプランジャ11を押し返す、という現象がループ状に繰り返されることを、後述する図10に示した、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最長距離Uより長い距離に形成された形態のものより好適に防止することができる。よって、弁の切換え不良及びプランジャ11と固定鉄心10が吸着する時の衝突音が繰り返し発生するのを防止することができる。
【0047】
また、第二のばね受け16と、キャップ18の二部品で、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着方向側の端面163と、キャップ18の底面185との間の距離によって定められた移動距離S1を調節するので、部品点数、製造工程を減少させることができる。
【0048】
さらに、第二のばね受け16のストッパ部162の吸着離脱方向の長さを調節することで、容易に移動距離S1の設定をすることができる。
【0049】
本発明におけるソレノイドバルブの第二の実施形態について説明する。以下の説明において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し説明を省略する。本実施形態はダブルソレノイドタイプであるが、図4に向かって左の矢印の方向側を離脱方向、右の矢印の方向側を吸着方向とする。なお、ダブルソレノイドタイプであるため、プランジャ11Aが吸着された場合には、第一のばね受け15が、特許請求の範囲のばね受けに相当し、ばね13が、特許請求の範囲のスプール戻しばねに相当し、固定鉄心10が特許請求の範囲の当接部材に相当する。
【0050】
ソレノイドバルブ1Aでは、図に示すように、弁装置2の吸着方向側にキャップ18の代わりに、ソレノイド3Aを有している。
【0051】
ソレノイド3Aは、コイル7Aが内蔵されるケース8Aを有している。コイル7Aの内周側には、ソレノイド鉄心9Aが吸着方向に向かって突出するように配設されている。
【0052】
ソレノイド鉄心9Aは、ケース8A外側に突出する本体部91Aと、コイル7A内周側に位置して円筒状に形成された円筒部92Aを有している。ソレノイド鉄心9Aは、円筒部92Aの離脱方向側で固定鉄心10Aと溶着され、円筒部92Aの中空部にコイル7Aの励磁により後述する固定鉄心10Aの吸着面101Aに接近するプランジャ11Aが配設されている。ソレノイド鉄心9Aは、本体部91Aの吸着方向側で固定具12Aによって螺合されケース8Aに固定されている。
【0053】
固定鉄心10Aは、離脱方向側にプランジャ11Aが吸着される吸着面101Aを有している。固定鉄心10A(特許請求の範囲の当接部材に相当)には、後述するバルブピン14Aが挿通される挿通孔102Aが吸着離脱方向に沿って形成されている。固定鉄心10Aは、円柱状の柱部103Aと、柱部103Aより拡径したフランジ部104Aを有し、フランジ部104Aでバルブボディ4の吸着方向側の面と接している。ばね受け部105Aは、フランジ部104Aの離脱方向側に配設され、吸着離脱方向に沿って有底孔106Aが形成され、有底孔106Aの底面107Aでばね13Aと当接するとともに、外周面でバルブボディ4と螺合されている。
【0054】
スプール6とプランジャ11Aとの間には、プランジャ11Aの動きをスプール6に伝えるバルブピン14Aが挿通孔102A内を摺動可能に配設されている。
【0055】
バルブピン14Aと、スプール6とは、第一のばね受け15A(特許請求の範囲のばね受けに相当)内で当接するように形成されている。
【0056】
第一のばね受け15Aは、離脱方向側に位置して円環板状に形成されたフランジ部151Aと、フランジ部151Aから吸着方向に向かって延びる円筒状のストッパ部152Aと、を有している。
【0057】
ばね13Aは、らせん状に形成されストッパ部152Aの外周部分に配設され、フランジ部151Aと、底面107Aとに当接して、スプール6を離脱方向に付勢している。
【0058】
図5の(b)は、プランジャ11が吸着面101に吸着された時の静止させた状態を示し、プランジャ11が吸着面101に吸着された時のスプール6の慣性による移動距離S2が、第一のばね受け15Aのストッパ部152Aの端面153Aと、固定鉄心10Aの有底孔106Aの底面107Aとの間の距離によって定められている。移動距離S2は、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、固定鉄心10Aの有底孔106Aの底面107Aとの最短距離Tより短い距離に形成されている。
【0059】
図5の(a)に示すように、プランジャ11が吸着された時に、第一のばね受け15Aのストッパ部152Aの吸着方向側の端面153Aと、固定鉄心10Aの有底孔106Aの底面107Aとが、スプール6の慣性により当接するように形成されている。
【0060】
ソレノイドバルブ1Aは、ダブルソレノイドタイプであり、ソレノイド3Aとソレノイド3Aとは対称に配置されるため、ソレノイド3側も同様の構成となる。
【0061】
ソレノイドバルブ1Aでは、キャップ18の代わりに、ソレノイド3Aを有していることが異なるのみである。ソレノイド3Aが、第一の実施形態のソレノイド3と吸着離脱方向を反対にした作用を奏し、かつ、第一の実施形態のソレノイドバルブ1と同様の効果を奏する。
【0062】
本発明におけるソレノイドバルブの第一の実施形態の変形例について説明する。
【0063】
第一の変形例では、図6に示すように、第二のばね受け16Cが、円環板状に形成されている。キャップ18Cが、離脱方向側に向かって延びる円柱状の突出部186Cを有している。
【0064】
これにより、突出部186Cの吸着離脱方向の長さを調節することで、容易に移動距離S3の設定をすることができる。
【0065】
第二の変形例では、図7に示すように、第二のばね受け16Dのストッパ部162Dの吸着離脱方向の長さが、第一の実施形態の第二のばね受け16より短く形成されている。キャップ18Dの突出部186Dが、第一の実施形態の第一の変形例のキャップ18Cの突出部186Cより吸着離脱方向の長さを短く形成されている。これにより、突出部186D及びストッパ部162Dの吸着離脱方向の長さを調節することで、容易に移動距離S4の設定をすることができる。
【0066】
第二の実施形態の変形例について説明する。
【0067】
第一の変形例では、図8に示すように、第一のばね受け15Eが、円環板状に形成されている。固定鉄心10Eが、有底孔106Aの底面107Aから離脱方向側に向かって延びる円筒状の突出部108Eを有している。
【0068】
これにより、突出部108Eの吸着離脱方向の長さを調節することで、容易に移動距離S5の設定をすることができる。
【0069】
第二の変形例では、図9に示すように、第一のばね受け15Fのストッパ部152Fの吸着離脱方向の長さが、第二の実施形態の第一のばね受け15Aのストッパ部152Aより短く形成されている。固定鉄心10Fの突出部108Fが、第二の実施形態の第一の変形例の固定鉄心10Eの突出部108Eより吸着離脱方向の長さを短く形成されている。これにより、突出部108F及びストッパ部152Fの吸着離脱方向の長さを調節することで、容易に移動距離S6の設定をすることができる。
【0070】
また、図10に参照するように、プランジャ11が吸着面101に吸着された時のスプール6の慣性による移動距離S7を、第二のばね受け16Gのストッパ部162Gの吸着方向側の端面163Gと、キャップ18の底面185との間の距離によって定めることができる。そして、移動距離S7を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最長距離Uより長い距離に形成している。これによっても、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力が、プランジャ11が吸着される吸着力を、上回り、プランジャ11の固定鉄心10への吸着と、スプール戻しばね17のスプール6への押し返す、という現象がループ状に繰り返されることを防止することができる。
【0071】
また、シングルソレノイドタイプにおいて、図11に参照するように、スプール6Kの慣性による移動距離S8を、プランジャ11が吸着面101に吸着された時の、スプール6Kのキャップ18の底面185側の端面62Kと、キャップ18の底面185との間の距離によって定めることができる。そして、移動距離S8を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6Kがプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最短距離Tより短い距離に形成している。これによっても、第一の実施形態のソレノイドバルブ1と同様の効果を奏する。
【0072】
また、図11の破線に示すように、スプール6Kの慣性による移動距離S9を、プランジャ11が吸着面101に吸着された時の、スプール6Kのキャップ18の底面185側の端面62Kと、キャップ18の底面185との間の距離によって定めることができる。そして、移動距離S9を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6Kがプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離であって、力平衡部分Hと、キャップ18の底面185との最長距離Uより長い距離に形成することもできる。
【0073】
本出願人は、第一の実施形態のソレノイドバルブを用いて、印可電圧90Vのもと、移動距離S1を0.5mm、1.0mm、1.5mmに設定して実験を行なった。移動距離S1が、1.0mmのときには、プランジャ11の固定鉄心10への吸着と、スプール戻しばね17のスプール6への押し込みがループ状に繰り返され振動が発生した。それ以外の移動距離S1の、0.5mm及び1.5mのときには、振動は発生しなかった。このことより、移動距離S1を、プランジャ11が吸着される吸着力と、スプール6がプランジャ11を押し返す慣性力と、がつり合わない距離に設定すれば、効果を得られるという結果を得た。
【符号の説明】
【0074】
1、1A ソレノイドバルブ
2 弁装置
3、3A ソレノイド
4 バルブボディ
5 油路
6、6K スプール
62K 端面
7 コイル
8 ケース
9、9A ソレノイド鉄心
10、10A、10E、10F 固定鉄心
101、101A 吸着面
11 プランジャ
13 ばね
14、14A バルブピン
16、16C、16D、16G 第二のばね受け
162、162D、162G ストッパ部
163C、163D 端面
17 スプール戻しばね
18、18C、18D キャップ
185 底面
186C、186D 突出部
187C、187D 底面
S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9 移動距離
H 力平衡部分
T 最短距離
U 最長距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置と、該弁装置と連結されるソレノイドと、を備え、
前記弁装置には、バルブボディ内に油路が配設され、該油路には、複数のポートが連通されるとともに、スプールが進退自在に配設され、
前記ソレノイドには、コイルと、吸着面を有する固定鉄心と、前記コイルの励磁により前記吸着面に接近するプランジャが配設され、
前記スプールと前記プランジャとの間には、前記プランジャの動きを前記スプールに伝えるバルブピンが配設され、
前記プランジャが前記吸着面に吸着されることにより、前記スプールを移動させて前記ポートの切換開閉を行なうソレノイドバルブであって、
前記バルブボディの、前記プランジャが前記吸着面に吸着されることにより前記スプールが移動する側には、前記スプールを押し戻すスプール戻しばねが配設されるとともに、前記スプール戻しばねを支持する当接部材が配設され、
前記スプールの前記スプール戻しばねが配設される側には、前記スプール戻しばねと当接するばね受けが配設され、
前記プランジャが吸着された時の、前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合わない距離に形成されていることを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記プランジャが吸着された時に、該ばね受けの前記当接部材側の端面と、前記当接部材の前記ばね受け側の端面とが、前記スプールの慣性により当接するように形成され、
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが前記吸着面に吸着された時の、前記ばね受けの前記当接部材側の端面と、前記当接部材の前記ばね受け側の端面との間の距離によって定められていることを特徴とする請求項1記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より短い距離に形成されていることを特徴とする請求項2記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より長い距離に形成されていることを特徴とする請求項2記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記ソレノイドバルブが、ダブルソレノイドタイプであって、
前記ばね受けが、円環板状に形成され、
前記当接部材が、前記ばね受け側に向かって延びる突出部を有していることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のソレノイドバルブ。
【請求項6】
前記ソレノイドバルブが、シングルソレノイドタイプであって、
前記プランジャが吸着された時に、前記スプールの前記当接部材側の端面と、前記当接部材の前記ばね受け側の端面とが、前記スプールの慣性により当接するように形成され、
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが前記吸着面に吸着された時の、前記スプールの前記当接部材側の端面と、前記当接部材の前記ばね受け側の端面との間の距離によって定められていることを特徴とする請求項1記載のソレノイドバルブ。
【請求項7】
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より短い距離に形成されていることを特徴とする請求項6記載のソレノイドバルブ。
【請求項8】
前記スプールの慣性による移動距離が、前記プランジャが吸着される吸着力と、前記スプールが前記プランジャを押し返す慣性力と、がつり合う距離より長い距離に形成されていることを特徴とする請求項6記載のソレノイドバルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−132532(P2012−132532A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286465(P2010−286465)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】