説明

ソーラパネルを利用した認証装置

【課題】ソーラパネルによる電力供給に加えてIDの照合・認証を行う。
【解決手段】認証装置3は、吸収波長の異なる2つのセル11a1,11a2を厚さ方向に重ね合わせた2層構造のソーラパネル11aを利用し、2つのセルのうち、一方のセルを発電源とし、他方のセルを照合用信号源とする。発電源とされる一方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力は充電回路11bに充電される。照合用信号源とされる他方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力はIDパターンの照合信号として信号検出回路11cで検出される。制御器12は、充電回路11bにより充電された光起電力が電源として供給され、信号検出回路11cが検出した照合信号を予め設定された照合IDと照合し、その結果に基づいて電気錠4を解錠・施錠制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電による電力供給に加えてIDの照合・認証を行うことができるソーラパネルを利用した認証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IDを取得して照合・認証を行い、IDを正常認証したときに錠前を電気的に解錠制御する電気錠システムとして、例えば下記非特許文献1に記載される共用エントランスシステムが知られている。この共用エントランスシステムは、共用エントランスの入口にノンタッチリーダを配置し、このノンタッチリーダを制御する制御器が屋内に配置され、ノンタッチリーダが非接触IDキーから非接触で取得したIDを制御器で照合・認証し、制御器がIDを正常認証したときに共用エントランスの電気錠や自動ドアを解錠する認証システムである。この認証システムでは、制御器を介してノンタッチリーダに駆動電源が供給される。
【0003】
尚、認証システムに用いられる非接触IDキーとしては、ノンタッチリーダにかざすだけのノンタッチキー、フェリカ(登録商標)カード、カバン等に携帯してノンタッチリーダに近づくだけのタッチキーなどがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】美和ロック 総合カタログ2009年版 「共用エントランスシステム」680〜682頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の認証システムにおいて、発電用に用いられるソーラパネルを利用して自己発電付きの認証装置を製品化する場合、ノンタッチリーダの照合面とは別にソーラパネルを用意する必要があり、設置スペースの問題からソーラパネルの有効面積を稼ぐことができず、十分な発電量を得ることができないという課題があった。
【0006】
また、ソーラパネルによる電力供給に加えてIDの照合・認証を一緒に行うべく、ソーラパネルのセルを横並びすることも考えられるが、太陽光を含めて可視光と紫外線を同時に放射する放射源が存在するため、各セルに対して他の光がノイズになり、S/N比を十分に確保することができないという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、ソーラパネルによる電力供給に加えてIDの照合・認証を行うことができるソーラパネルを利用した認証装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載されたソーラパネルを利用した認証装置は、吸収波長の異なる材料からなる板状の2つのセルを厚さ方向に重ね合わせた2層構造からなるソーラパネルを利用した認証装置であって、
前記2つのセルのうち、一方のセルを発電源とし、他方のセルを照合用信号源としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載されたソーラパネルを利用した認証装置は、請求項1のソーラパネルを利用した認証装置において、
前記発電源とされる一方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力を充電する充電回路と、
前記照合用信号源とされる他方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力をIDパターンの照合信号として検出する信号検出回路と、
前記充電回路により充電された光起電力が電源として供給され、前記信号検出回路が検出した照合信号を予め設定された照合IDと照合し、その結果に基づいて電気錠を解錠・施錠制御する制御器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸収波長の異なる2つのセルを厚さ方向に重ね合わせた2層構造のソーラパネルを用い、1層を従来通り発電に利用し、もう1層を光による照合用信号源に利用し、ソーラパネルによる電力供給に加え、このソーラパネルでの認証・照合が可能となる。
【0011】
しかも、2つのセルを厚さ方向に重ね合わせて2枚重ねにしているので、セル面積が大きく取れ、発電量を十分に稼ぐことができ、斜めに入射するノイズの受光面積を小さくすることができる。これにより、ノイズの影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るソーラパネルを利用した認証装置を含む電気錠システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】投光機の一例を示す外観平面図である。
【図3】ソーラパネルのセル構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係るソーラパネルを利用した認証装置を含む電気錠システムの概略構成を示すブロック図、図2は同システムに用いられる投光機の一例を示す外観平面図、図3は同システムにおけるソーラパネルのセル構成の概略図である。
【0014】
本発明に係るソーラパネルを利用した認証装置は、2層のセル構造からなるソーラパネルを用い、2層のセルのうち一方のセルを従来通りの発電源とし、他方のセルを光による照合用信号源とするものであって、ソーラパネルによる装置内回路への電力供給に加えてIDの照合・認証が行え、このIDを正常認証したときに電気錠を解錠する電気錠システムに採用されるものである。以下、本発明に係る認証装置を電気錠システムに採用した場合を例にとって説明する。
【0015】
本例の電気錠システム1は、図1に示すように、利用者が所持する投光機2と、投光機2からの光による電源供給及びIDの照合・認証を行う認証装置3と、認証装置3の認証結果に基づいて錠前が電気的に解錠(施錠)制御される電気錠4とを備えて概略構成される。
【0016】
投光機2は、例えば利用者が所持可能なタグ型タイプ又はキーヘッド型タイプ等で構成され、照合用照射光(後述する照合用セル11a1で吸収される波長領域の光)と発電用照射光(後述する発電用セル11a2で吸収される波長領域の光)とを選択的に投光している。
【0017】
図2は投光機2の一例であり、鍵21が装着可能なキーヘッド型タイプの投光機2の外観平面図を示している。図2の投光機2は、本体2aに電池(不図示)を内蔵し、2つのボタン2A,2Bを備え、発電用照射光としての可視光を投光するLEDと、照合用照射光としての紫外線を投光するLEDを有している。この投光機2では、一方のボタン2Aが押下されると、光強度を意図的に変化させて変調した紫外線(IDパターン)を照合用照射光として投光する。この変調には、スペクトラム拡散で使用されるM系列、Gold系列が用いられる。これにより、後述する信号検出回路11cでのSAWフィルタの一致出力を大きく取ることができる。また、他方のボタン2Bが押下されると、連続した可視光を発電用照射光として投光する。
【0018】
尚、投光機2は、図2に示す構成に限定されるものではない。例えば、夜間を考慮して、ボタンを浅く押下する、深く押下するの2段型、1つのボタンで1度押下すると変調した紫外線(IDパターン)を投光し、そのままボタンをスライドすると紫外線と可視光を投光する構成が考えられる。
【0019】
また、投光機2としてブラック(紫外線)ライトを用い、紫外線の点灯/消灯をIDパターンとして照合用照射光を投光したり、投光機2のボタンを押下するとIDパターンの照合用照射光を自動的に照射したり、点灯時に紫外線の波長を変えたり、紫外線の強弱をIDパターンに使用するなど様々な構成が考えられる。
【0020】
さらに、発電用照射光に関しては、上述した人工光、太陽光などの自然光を限定するものではなく、後述する発電用セル11a2で吸収される波長領域の光であれば良い。
【0021】
図1に示すように、認証装置3は、受光機11、制御器12、表示器13を備えている。さらに、受光機11は、例えば扉や錠のエスカチオンに取り付けられ、ソーラパネル11a、充電回路11b、信号検出回路11cを備えている。
【0022】
ソーラパネル11aは、受光部としての板状の2層のセルを有し、図3に示すように、受光機11の本体取付面に対し、照合用セル11a1、発電用セル11a2の順に厚さ方向に重ね合せた2層構造からなる。照合用セル11a1は、例えば400nm以下の材料a−SiGeで構成され、照合用信号源として用いられる。この照合用セル11a1は、投光機2から投光され、発電用セル11a2を透過した照合用照射光を吸収し、この吸収した照合用照射光の光強度に応じた光起電力を光電効果により発生している。
【0023】
発電用セル11a2は、照合用セル11a1と異なる吸収波長、例えば約400nm〜約700nmの材料a−Siで構成され、発電源として用いられる。この発電用セル11a2は、投光機2からの人工光や自然光による発電用の照射光を吸収し、この吸収した発電用照射光の光強度に応じた光起電力を光電効果により発生している。
【0024】
充電回路11bは、発電用セル11a2が発生する光起電力を充電し、この充電した光起電力を駆動電源として制御器12に供給している。
【0025】
信号検出回路11cは、ソーラパネル11aで発生した光起電力を照合信号として検出するもので、S/Nを確保してパターンマッチングを行う櫛形フィルタやSAWフィルタを検波部に備え、この検波部を介して照合用セル11a1からの光起電力の電圧や電流による信号を検出し、この検出した信号を照合信号(IDパターン)として制御器12に出力している。
【0026】
制御器12は、充電回路11bから電源供給され、信号検出回路11cからの照合信号が予め設定された照合IDと一致するか否かを判別し、両者一致と判別したときに、そのときの扉の開閉状態に応じて、電気錠4を解錠するための解錠制御信号又は電気錠4を施錠するための施錠制御信号を選択的に出力している。
【0027】
尚、制御器12は、上述した照合信号の照合IDとの照合に限らず、IDの登録や抹消の制御も行うことができる。この場合、投光機2から投光されて信号検出回路11cによって検出される照合信号には、IDを照合するID照合モード、IDを登録するID登録モード、IDを抹消するID抹消モードの何れかのモードを示す情報が含まれる。そして、制御器12は、ID照合モードであれば、照合信号と予め設定された照合IDとを比較して両者が一致するか否かを判別し、ID登録モードであれば、照合信号によるIDを登録し、ID抹消モードであれば、照合信号によるIDを抹消する。
【0028】
表示器13は、例えば赤色点灯するLEDと、緑色点灯するLEDからなる。この表示器13では、発電用セル11a2で受光可能な電源が得られたときに、例えば赤色点灯してその旨を識別表示している。また、表示器13は、照合用セル11a1からの照合信号が照合IDと一致し、電気錠4を正常に解錠制御又は施錠制御したときに、例えば緑色点灯してその旨を識別表示している。
【0029】
電気錠4は、建物の各種扉に装備される周知の構成であり、制御器12からの解錠制御信号(施錠制御信号)によってソレノイドなどのアクチュエータを駆動することにより、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを引き込む(解錠時)又は突出(施錠時)することで錠前を電気的に解錠制御又は施錠制御している。
【0030】
このように、本発明に係る認証システムでは、図3に示すように、吸収波長の異なる2つのセル(照合用セル11a1、発電用セル11a2)を厚さ方向に重ね合わせた2層構造のソーラパネル11を用い、一方のセル(発電用セル11a2)を従来通り発電源とし、他方のセル(照合用セル11a1)を光による照合用信号源としている。これにより、ソーラパネル11による電力供給に加え、このソーラパネル11での認証・照合が可能となる。
【0031】
しかも、2つのセル(照合用セル11a1、発電用セル11a2)を厚さ方向に重ね合わせて2枚重ねにしているので、セル面積が大きく取れ、発電量を十分に稼いで短時間で充電を行うことができる。また、夜間でも送信機2から光を照射すれば、すぐに充電でき、時間を経ずに使用することができる。さらに、発電用セル11a2の下部に位置する照合用セル11a1では、斜めに入射するノイズの受光面積を小さくでき、ノイズの影響を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 電気錠システム
2 投光機
3 認証装置
4 電気錠
11 受光機
11a ソーラパネル
11a1 照合用セル
11a2 発電用セル
11b 充電回路
11c 信号検出回路
12 制御器
13 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収波長の異なる材料からなる板状の2つのセルを厚さ方向に重ね合わせた2層構造からなるソーラパネルを利用した認証装置であって、
前記2つのセルのうち、一方のセルを発電源とし、他方のセルを照合用信号源としたことを特徴とするソーラパネルを利用した認証装置。
【請求項2】
前記発電源とされる一方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力を充電する充電回路と、
前記照合用信号源とされる他方のセルが光の吸収に伴って発生する光起電力をIDパターンの照合信号として検出する信号検出回路と、
前記充電回路により充電された光起電力が電源として供給され、前記信号検出回路が検出した照合信号を予め設定された照合IDと照合し、その結果に基づいて電気錠を解錠・施錠制御する制御器とを備えたことを特徴とする請求項1記載のソーラパネルを利用した認証装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−94352(P2011−94352A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247894(P2009−247894)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】