説明

ソーラーコレクター用の吸収プレートの製造方法

本発明は、金属(特に、アルミニウム又はアルミニウム合金)製のソーラーコレクター用の、吸収シートメタルプレート(1)の製造方法に関する。本発明は、更に、ソーラーコレクター用の吸収シートメタルプレート(1)と、前記吸収シートメタルプレート(1)の有利な使用とにも関する。高選択性コーティング(2,3,4)を有する吸収シートメタルプレートのコスト効率の良い製造を可能にする、ソーラーコレクター用の吸収シートメタルプレートの製造方法を提供する本発明の目的は、コイルコーティングプロセスを使用して、ストリップを高選択性コーティングで塗装することにより達成され、この場合、前記高選択性コーティングは、太陽光のための非常に良好な吸収性と、非常に少ない熱放出とを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、金属(特に、アルミニウム又はアルミニウム合金)製のストリップから、ソーラーコレクター(Sonnenkollektoren)用の吸収プレートを製造する方法に関する。更に、本発明は、ソーラーコレクター用の吸収プレートと、前記吸収プレートの有利な使用とに関する。
【0002】
ソーラーコレクターは、太陽放射から熱を回収するデバイスである。ソーラーコレクターは、太陽光中に含まれるエネルギーを捕捉し吸収する。それによって、光電池システムとは対照的に、太陽光のほとんど全ての放射スペクトルを高い効率で使用する。パネルの最も重要な部品は吸収体であり、前記吸収体は太陽の光エネルギーを熱へ変換して、その熱を熱担体媒質(Waermetraeger)へ導き、そこを通過させて流す。吸収体は、通常吸収プレートによって実現され、前記吸収プレートは、直達太陽放射及び拡散太陽放射を可能な限りよく捕らえるように設計され、それを熱へ変換する。しばしば、銅合金又はアルミニウム合金を含む吸収プレートは、吸収される熱が熱放出の形態で再度逃げないことを確実にする必要がある。吸収プレートによる放射熱の放出を介するエネルギー損失を最小限にするために、前記吸収プレートは、いわゆる高選択性コーティング(hochselektive Beschichtung)を有する。通常、高選択性コーティングの太陽光の吸収値は、約94%に達し、放出値は6%未満である。高選択性コーティングは、極めて薄いコートを含み、前記コートは「通常物理蒸着;Physical Vapor Deposition」(PVD)工程又は「化学蒸着;Chemical Vapor Deposition」(CVD)工程によってつくられる。PVD工程では、ストリップがエアロックシステムを介して真空コーティングマシーンへ供給され、そこでいくつかの陰極を通過する。前記陰極は互いに前後して連結しており、その上にコーティング材料が標的として集められる。加速されたアルゴンイオンによって、コーティング材料製の標的から粒子が排除され、そして、金属ストリップの表面上へ定着して、それと永久的な結合を形成する。その後、ストリップを真空から開放して、巻き取る。先行技術工程によって小さい厚さを得ることができるが、PVD又はCVD設備用の設備投資は非常に高い。このことが、吸収プレートのコストに反映する。
【0003】
このことに基づいて、本発明の目的は、ソーラーコレクター用の吸収プレートを製造する方法を提供することであって、それによって、高選択性コーティングを有するソーラーコレクター用吸収プレートを経済的に製造することができる。本発明のその他の目的は、経済的に製造することができる吸収プレートを提供することである。
【0004】
本発明の第1の教示によると、本発明に関して前記目的は、コイルコーティングプロセス(Coil-Coating-Verfahren)を使用して、ストリップに高選択性コーティングを塗装することであり、前記高選択性コーティングは、太陽光の非常に良好な吸収性を有し、そして、非常に少ない熱放出を保証する。
【0005】
コイルコーティングプロセスを使用することによって、非常に薄いコーティングをストリップへ均一に付与することができ、その結果、相当に薄いコートを有する高選択性コーティングを吸収プレートの製造用のストリップ上へ付与することができることが分かった。従来使用されている方法と比較すると、特に、ストリップをコーティングするために、真空へ、及び真空からのエアロックシステムを必要としないので、本発明の方法のための高い設備投資が不要である。次に、ストリップは、例えば、コイル上で巻き取られ、その後に、長さに対して切断される。しかしながら、コイルコーティング後に、ストリップを長さに対して直接切断することもできる。
【0006】
本発明の第1の有利な態様によると、少なくとも1つのローラーコーター(Lackierwalze)を使用してコーティングを付与する。コーティング厚さは、ローラーコーター上のグラビアによって、そして、例えば、ストリップに対するそれらの相対速度によって、非常に正確に調節することができる。更に、ストリップを塗装するその他の方法、例えば、ストリップ表面の粉末コーティング又は噴霧も考えることができる。
【0007】
好ましくは、複数の機能性コート(funktionale Schichten)をコイルコーティングプロセス中に付与して、異なる機能性コートを選択することによって、高選択性コーティングの特性を適合させることができる。
【0008】
個々の機能性コートの厚さは、0.0005〜0.02mmの間である。
【0009】
吸収プレートを製造するための本発明による方法のその他の更なる実施態様によると、予備処理でコーティングされることが好ましい、定着剤コート又はプライマーコートを、ストリップ表面へ付与する。定着剤コート又はプライマーコートのそれぞれによって、その後の機能性コートのためのストリップ表面の定着性が実質的に改良される。定着剤コートだけではなくプライマーコートをも予備処理でコーティングすることが好ましく、その結果、高選択性コーティングの付与が、定着剤コート又はプライマーコートの付与によって妨げられない。更に、その他のコートが付与される場合には、ストリップ表面の改良された接着性を利用することができる。この段階でも、定着剤コートを機能性(高選択性)コートとして理解することができる。
【0010】
付与されたコートが機能性粒子(特に、ナノ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子及び/又は顔料)を含む場合、付与される個々のコートによって、異なる機能を使用することができる。例えば、この場合には、機能性粒子を選択することによって、コートの反射防止性又は吸収性を決定することができる。
【0011】
1つ以上のゾル−ゲル系(auf Sol-Gel-Basis)コートを付与する場合に、特に小さい厚さを得ることができる。ゾル−ゲル系コーティングを使用する場合には、最初に、液体ゾル膜(これは、短い乾燥時間の後に固体ゲル膜へ変化する)を付与する。追加の熱処理によって金属−有機ポリマーの有機成分が除去されるので、その結果、金属酸化物膜が表面上に残る。これを、例えば、二酸化チタン粒子をストリップ表面上に堆積させることによる吸収体コートの製造に使用するか、又は、二酸化シリコン膜をストリップ上に堆積させることによる反射防止コーティングの付与に使用することができる。この場合、得られるコート厚を非常に小さくすることができる。同時に、粒子の機能性は、乾燥工程のみによってつくることができる。
【0012】
最後に、少なくとも部分的に可撓性を有する付与されたコーティングによって、更なる利点が生じる。この場合、コーティング中での亀裂を生じさせずに吸収表面を増加させるために、コーティング後で、吸収プレートにエンボス加工(Praegungen)を提供することも可能である。
【0013】
本発明の第2の教示によると、前記の目的は、コイルコーティングシステムを使用することで、吸収性の改良のための高選択性コーティングを有する吸収プレートによって、達成することができる。
【0014】
前述したとおり、コイルコーティングを使用して付与されるコーティングを、従来より必要とされるPVD又はCVDの場合よりも、実質的により経済的につくることができる。なぜなら、コストの集中する新規技術用の設備投資を省略することができ、そして、かなり高いコーティング速度を達成することができるからである。
【0015】
アルミニウム又はアルミニウム合金を含む吸収プレートによるその他の更なる実施態様によると、追加コスト及び重量の利点を本発明による吸収プレートによって得ることができる。同様の熱伝導性(Waermeleiteigenschaften)を有する銅と比較すると、アルミニウムは実質的により軽い重量を有する。更に、アルミニウムは、材料として、銅よりも実質的により経済的である。
【0016】
いくつかの機能性コートを含む高選択性コーティングによって、吸収性に関して最適化される吸収プレートを利用することができ、この場合、機能性コートは少なくとも部分的に機能性粒子(特に、ナノ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子及び/又は顔料)を有する。結果として、機能性粒子を選択することによって、個々のコートをそれらの機能について最適化することができる。例えば、機能性コートは、短波太陽放射(kurzwellige Sonnenstrahlung)を吸収すると同時に長波放射熱(langwellige Waermestrahlung)に対して透過的であるという特性を有することができる。結果として、長波放射熱に変換される短波太陽放射の導入を達成することができ、その結果、それに応じて吸収プレートが加熱される。同時に、外側コートは、放射熱に対して反射的であることができ、その結果、吸収コートは、外側に対して任意の放射熱をほとんど放出しない。更なる機能は、表面の腐食防止(例えば、湿気抵抗及び温度抵抗による)であるか、又は、金属基板のコーティングを実施的に改良する定着性である。
【0017】
吸収プレート上の前記機能性コートの厚さは、0.0005〜0.02mmの間であることが好ましい。
【0018】
前述したとおり、定着剤コート又はプライマーコートを提供することによって、機能性コートのための改良された定着性を有する吸収プレートを利用可能にすることができる。
【0019】
本発明の吸収プレートのその他の実施態様では、少なくとも1つのゾル−ゲル系機能性コートを提供することによって、特に小さい厚さを利用可能にすることができる。
【0020】
コーティングの前又は後で、吸収プレートがエンボス加工を提供される場合には、本発明の吸収プレートの熱吸収性を更に改良することができる。吸収性のために利用可能なプレートの表面は、エンボス加工によって増加する。
【0021】
最後に、前記目的は、ソーラーコレクター(特に、フラットプレートコレクター)用の本発明の吸収プレートの使用によって達成される。前述したとおり、経済的に製造された吸収プレートは、同様の効率を維持しながら、ソーラーコレクター、又は、ソーラーパネルのコストでの実質的な削減に寄与することができる。
【0022】
ソーラーコレクター用の吸収プレートを製造する本発明の方法、並びに、本発明による吸収プレート及びその使用を発展させ、そして、構成する多くの可能性がある。このために、一方で、本明細書の請求項1及び9に従属する請求項を、他方で、図面と併せて模範的な実施態様の記載を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による吸収プレートの模範的な実施態様の表面の模式的な断面図を示す図である。
【0024】
図1は、コーティングを有する吸収プレート1の表面を示しており、前記コーティングは、合計で3つの機能性コート2,3,4を含む。この場合、機能性コート2は、定着剤コート又はプライマーコートとして構成され、そして、予備処理で既にストリップ表面に付与されていることが好ましい。本発明による吸収プレートの図1に示される模範的な実施態様の場合に、機能性コート3は、ナノ粒子(例えば、亜硝酸チタン粒子(Titannitrit)又は二酸化チタン粒子)を有する、ゾル−ゲル系吸収コートを含む。吸収コート3は、長波放射熱に対して透過的であることが好ましく、そして、従って、短波太陽放射を長波太陽放射(langwellige Sonnenstrahlung)に変化させることによって、熱エネルギーを吸収プレート1の表面へ導くことができる。同様に、コイルコーティングプロセスにより付与されるゾル−ゲル系反射防止コート4により、コーティングされた吸収プレートの反射係数を極めて低くすることができる。なぜなら、反射防止コートにより屈折率を調節するからである。結果として、太陽光の吸収が同様に増加する。本発明による前記機能性コート2,3,4は、コイルコーティングプロセスにより付与され、この場合、ローラーコーターを使用することが好ましい。ゾル−ゲルコートは、これらのローラーコーターによって単純な方法で付与することができる。しかしながら、コイルコーティングプロセスの異なる付与方法、例えば、噴霧設備又は粉末コーティングも考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属(特に、アルミニウム又はアルミニウム合金)製のストリップからソーラーコレクター用の吸収プレートを製造する方法であって、
コイルコーティングプロセスを使用して、ストリップを高選択性コーティングで塗装することを特徴とし、
前記高選択性コーティングが、太陽光のための非常に良好な吸収性を有し、そして、非常に少ない熱放出を保証する、前記方法。
【請求項2】
少なくとも1つのローラーコーターを使用して、高選択性コーティングを付与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の機能性コートを付与することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
個々の機能性コートの厚さが、0.0005〜0.02mmの間であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
予備処理でコーティングことが好ましい、定着剤コート又はプライマーコートを付与することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
付与されたコートが、機能性粒子(特に、ナノ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子及び/又は顔料)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つの又はいくつかのゾル−ゲル系コートが付与されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
付与されたコーティングが、少なくとも部分的に可撓性を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の方法を使用する、特に、金属ストリップ製のソーラーコレクターの吸収プレートであって、
吸収性の改良のために、コイルコーティングプロセスを使用して付与される高選択性コーティングを有することを特徴とする、前記吸収プレート。
【請求項10】
吸収プレートが、アルミニウム又はアルミニウム合金を含むことを特徴とする、請求項9に記載の吸収プレート。
【請求項11】
高選択性コーティングが、いくつかの機能性コートを含むことを特徴とし、
ここで、前記機能性コートが、少なくとも部分的に機能性粒子(特に、ナノ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子及び/又は顔料)を有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の吸収プレート。
【請求項12】
機能性コートの厚さが、0.0005〜0.02mmの間であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の吸収プレート。
【請求項13】
定着剤コート又はプライマーコートを提供することを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の吸収プレート。
【請求項14】
少なくとも1つのゾル−ゲル系機能性コートを提供することを特徴とする、請求項9〜13のいずれか一項に記載の吸収プレート。
【請求項15】
コーティングの前又は後で、吸収プレートにエンボス加工を提供することを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の吸収プレート。
【請求項16】
ソーラーコレクター(特に、フラットプレートコレクター)用の、請求項9〜15に記載の吸収プレートの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−501884(P2010−501884A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525075(P2009−525075)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058809
【国際公開番号】WO2008/023054
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505379308)ハイドロ アルミニウム ドイチュラント ゲー エム ベー ハー (16)
【氏名又は名称原語表記】HYDRO ALUMINIUM DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】