説明

ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法

【課題】作業環境の問題が無く、苦味等の不快な味が低減され、しかも口腔内崩壊性にも優れた、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることができる製造方法、及び該製造方法により得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を提供すること。
【解決手段】ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得ること、次いでこの1段目の造粒物を更に流動層造粒することを特徴とするゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法、並びに該製造方法により得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不眠症等の治療剤として有用なゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠は、水なしで服用することができ、高齢者、小児、嚥下困難な患者等に、飲みやすい剤形であり、高齢化社会の到来や患者のコンプライアンス向上のため、その意義が重要視されるようになって来た。
【0003】
ゾルピデム酒石酸塩は、苦味等の不快な味を有するため、口腔内で速やかに溶ける口腔内崩壊錠への適用は困難であるという問題があった。
【0004】
上記問題を解消して、苦味等の不快な味が低減されたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を製造できる製造方法として、ゾルピデム酒石酸塩、塩基性物質、着色剤、マンニトール等を粉体混合する第一の混合工程;この混合物に、ポリビニルピロリドンを溶解した水溶液を加えて、練合する練合工程;乾燥工程;整粒工程;崩壊剤や滑沢剤等を混合する第二の混合工程;及びこの混合物を錠剤に成型する成型工程を含む方法が公知である(特許文献1特に段落〔0036〕〜〔0037〕、図1等参照)。
【0005】
しかしながら、上記従来公知のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、第一の混合工程〜成型工程の一連の工程が開放下で行われるので、各工程で使用する機器の開閉の際、次工程に移る際等にゾルピデム酒石酸塩を含む粉体が飛散することを避けるのはほぼ不可能である。そのため、作業員に対して睡眠導入作用を有するゾルピデム酒石酸塩が暴露される機会が非常に多くなり、作業員が眠気を催し、また時にはその眠気が原因で大事故を引き起こすおそれもあるなど、上記従来公知の方法には作業環境が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−238451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、作業環境の問題が無く、苦味等の不快な味が低減され、しかも口腔内崩壊性にも優れた、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることができる製造方法、及び該製造方法により得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した。その結果、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を製造するに当たって、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して水分含有量が5重量%以上である造粒物を得、次いでこの造粒物を更に流動層造粒する場合には、上記目的を悉く達成し得ることを見出した。即ち、上記の場合には、流動層造粒では原料の混合、造粒及び乾燥が同一の機器中にて閉鎖下で行われることにより、ゾルピデム酒石酸塩を含む粉体が飛散することが実質的に無いこと、1段目の造粒物の水分含有量が特定範囲であることによって、苦味等の不快な味が著しく低減され、かつ口腔内崩壊性にも優れた、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることができることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下に示す、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法及び該製造方法により得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を提供するものである。
【0010】
1.ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得ること、次いでこの1段目の造粒物を更に流動層造粒することを特徴とするゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【0011】
2.無機塩基性物質が、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記項1に記載の製造方法。
【0012】
3.無機塩基性物質の使用量が、ゾルピデム酒石酸塩100重量部に対して、1〜100重量部である上記項1又は2に記載の製造方法。
【0013】
4.1段目の造粒物の水分含有量が、8〜30重量%である上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
5.1段目の造粒物の水分含有量が、10〜20重量%である上記項4に記載の製造方法。
【0015】
6.2段目の流動層造粒工程を、溶媒に結合剤を溶解した溶液をスプレーして行う上記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
7.上記項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法によれば、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒(1段目の造粒工程)して水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得ること、及び1段目の造粒物を更に流動層造粒(2段目の造粒工程)することによって、以下の如き格別顕著な効果を得ることができる。
【0018】
(1)流動層造粒では、原料の混合、造粒及び乾燥が閉鎖下で行われることにより、ゾルピデム酒石酸塩を含む粉体の飛散が実質的に無いので、作業環境が悪化するという問題が生じない。
【0019】
(2)上記1段目の流動層造粒の造粒物の水分含有量が特定範囲であることによって、苦味、酸味等の不快な味が著しく低減されたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることができる。
【0020】
(3)また、得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠は、口腔内崩壊時間が通常約30秒以内程度であり、口腔内崩壊性にも優れている。また、優れた口腔内崩壊性を有していながら、自動分包機にも適用可能な錠剤硬度を有している。
【0021】
(4)従って、本発明の製造方法によれば、作業環境が悪化する等の問題を起こすことなく、苦味等の不快な味が著しく低減され、しかも口腔内崩壊性にも優れたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法は、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得、次いで得られた1段目の造粒物を更に流動層造粒することを特徴とするものである。即ち、本発明では、かかる少なくとも2段階の流動層造粒工程を行うことを必須とし、1段階の流動層造粒のみでは、苦味等の不快な味が著しく低減され、口腔内崩壊性にも優れ、しかも錠剤強度にも優れたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を得ることは困難である。
【0023】
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、通常、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、1段目の流動層造粒工程を行って水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得、更に、1段目の流動層造粒工程で得られた造粒物を用いて2段目の流動層造粒工程を行った後、成型工程を行うことによって、ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を調製する。ここで、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質以外の製剤原料として、賦形剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、滑沢剤、甘味剤、香料等の添加剤を、適宜使用することができる。これらの添加剤の添加時期は、特に限定されず、任意の工程で添加することができ、又これらのいずれかの添加剤を1の工程または複数の工程において複数回添加することもできる。
【0024】
ゾルピデム酒石酸塩
ゾルピデム酒石酸塩は、本発明の口腔内崩壊錠の活性成分であり、化学名が(+)−N,N,6−トリメチル−2−p−トリルイミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−アセタミド ヘミ L−タルトレート(C1921O・1/2C)である。ゾルピデム酒石酸塩は、ω(BZD)受容体に対して選択的な親和性を示し、不眠症等の治療剤として有用である。
【0025】
無機塩基性物質
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、1段目の流動層造粒工程を行って水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得ることによって、水の存在下で、無機塩基性物質によりゾルピデム酒石酸塩が解離して、ゾルピデムのフリー体が生成して、ゾルピデム酒石酸塩の苦味等の不快な味が低減されるものと推定される。1段目の流動層造粒工程において用いる無機塩基性物質としては、例えば、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。これらの無機塩基性物質は、いずれか1種を単独で、又は二種以上を適宜組み合わせて用いることができる。無機塩基性物質の使用量は、ゾルピデム酒石酸塩100重量部に対して、1〜100重量部程度であるのが好ましく、10〜50重量部程度であるのが、より好ましい。
【0026】
添加剤
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質以外の製剤原料として、製薬分野において通常使用される薬理学的に許容される各種添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、着色剤、滑沢剤、甘味剤、香料等の添加剤を、適宜組み合わせて、用いることができる。
【0027】
賦形剤としては、例えば、デキストリン、白糖、果糖、乳糖、トウモロコシデンプン、デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、軽質無水ケイ酸、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
崩壊剤としては、例えば、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋化ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、各種デンプン類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
結合剤としては、例えば、ショ糖等の糖類、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、マクロゴール、プルラン、デキストリン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、部分α化デンプン、寒天などが挙げられる。これらの結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色5号アルミニウムレーキ、リボフラビン等が挙げられる。これらの着色剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、水素添加植物油、マイクロクリスタリンワックス、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0032】
甘味剤としては、例えば、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオシドなどを挙げることができる。
【0033】
香料としては、例えば、ストロベリーフレーバー、レモンフレーバー、レモンライムフレーバー、オレンジフレーバー、l−メントール、ハッカ油などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、更に、その他の添加剤として、例えば、甘味剤以外の矯味剤、流動化剤、帯電防止剤、界面活性剤、湿潤剤、充填剤、増量剤、吸着剤、防湿剤、抗酸化剤、保存剤(例えば防腐剤など)、緩衝剤などを用いることもできる。
【0035】
本発明において、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質以外の製剤原料として用いられる、上記各種添加剤の使用量としては、特に制限はない。
【0036】
第1流動層造粒工程
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、先ず、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含み、更に、必要に応じて、上記各種添加剤などを含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、1段目の流動層造粒工程を行う。ここで、この流動層造粒は、水をスプレーしつつ行うことが必要である。水をスプレーすることによって、無機塩基性物質がゾルピデム酒石酸塩を解離して、ゾルピデムのフリー体が生成して、ゾルピデム酒石酸塩の苦味等の不快な味を低減するものと考えられるからである。
【0037】
第1流動層造粒工程は、例えば、流動層造粒装置を用いて、ゾルピデム酒石酸塩を含む粉末状の上記混合物に、水をスプレーしながら、混合し、造粒することが好ましい。水の使用量としては、特に限定されないが、〔(水重量/固形分全重量)×100〕で表される固液比(重量%)として、通常、25〜100重量%程度とするのが、好ましい。また、流動層造粒装置の吸気温度は、特に限定されないが、通常、40〜80℃程度とするのが、好ましい。
【0038】
また、第1流動層造粒工程で得られる1段目の造粒物は、その水分含有量が、5重量%以上程度であることが、ゾルピデム酒石酸塩の苦味等の不快な味を低減する観点から、必要である。造粒物の水分含有量が5重量%未満では、苦味等の不快な味の低減が不十分な傾向にあるので、好ましくない。1段目の造粒物の水分含有量は、8〜30重量%程度であるのが好ましく、10〜20重量%程度であるのがより好ましい。造粒物の水分含有量は、流動層造粒装置の吸気温度と液速度を適宜調節することによって、調整することができる。例えば、液速度をほぼ一定にして、所望の水分含有量を達成するために、吸気温度で調整してもよいし、逆に、吸気温度をほぼ一定にして、所望の水分含有量を達成するために、液速度で調整してもよい。
【0039】
第1流動層造粒工程で得られた造粒物は、通常、乾燥後、2段目の流動層造粒工程に供される。
【0040】
本発明の製造方法において、流動層造粒装置としては、「MP−1」(パウレック社製)、「FLO−5」(フロイント社製)等の市販品を用いることができる。
【0041】
第2流動層造粒工程
次に、第2流動層造粒工程において、第1流動層造粒工程において得られた1段目の造粒物に、溶媒に結合剤を溶解した溶液をスプレーしつつ、更に造粒する。第2流動層造粒工程においては、溶媒に結合剤を溶解した溶液をスプレーして造粒することが、錠剤の硬度を向上させる観点から、好ましい。溶媒としては、水;エタノール、イソプロパノール等の水性有機溶媒等を1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。結合剤の使用量は、結合剤の種類によって変動するが、通常、1錠中に、1〜3重量%程度とするのが好ましい。また、必要に応じて、結合剤に加えて、甘味剤等の添加剤を溶媒に溶解させた溶液をスプレーしてもよい。第2流動層造粒工程において、水等の溶媒の使用量としては、特に限定されないが、固液比として、通常、25〜100重量%程度とするのが、好ましい。また、流動層造粒装置の吸気温度は、特に限定されないが、通常、40〜80℃程度とするのが、好ましい。
【0042】
また、第2流動層造粒工程で得られる2段目の造粒物の水分含有量は、特に限定されない。2段目の造粒物は、乾燥後、必要に応じて、整粒後、成型工程に供される。
【0043】
第2流動層造粒工程で得られた2段目の造粒物は、乾燥後、整粒機を用いて整粒するのが好ましい。整粒に使用する装置としては、特に制限はないが、例えば、「パワーミル」((株)ダルトン製)、「コーミル」(パウレック社製)、「ロールグラニュレーター」(日本グラニュレーター(株)製)等の整粒機が挙げられる。また、篩などを使用して整粒してもよい。
【0044】
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法においては、第1流動層造粒工程及び第2流動層造粒工程の2段階の流動層造粒工程を行うことを必須とするが、更に必要に応じて、3段階目以上の造粒工程を行ってもよい。
【0045】
成型工程
次いで、成型工程においては、打錠に先立って、必要に応じて、第2流動層造粒工程で得られた2段目の造粒物に、通常、滑沢剤、崩壊剤等の添加剤の少なくとも1種を混合する混合工程を行った後、常法により、打錠を行う。打錠機としては、医薬品の製造に使用しうるものであれば特に制限はなく、例えばロータリー式打錠機や単発打錠機などが使用される。
【0046】
かくして得られる本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を使用する場合には、不眠症等の疾患に対する治療有効量を投与すればよい。患者の年令、体重、症状、性別などにより投与量は変わりうるが、1日当たり、就寝前に、ゾルピデム酒石酸塩として、通常、5〜10mg程度を、水無しで、唾液のみで経口的に投与することができる。この場合において、本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠は、口腔内崩壊性が、通常約30秒以内程度と良好であり、また優れた口腔内崩壊性を有していながら、PTP(プレススルーパッケージ)包装からの押し出しに耐える硬度を有している。
【0047】
本発明のゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠は、通常、PTP包装またはボトル包装(例:ポリ瓶、ガラス瓶、アルミ缶)されているのが好ましい。また、包装中には脱臭剤、乾燥剤、脱酸素剤等を同封しても良い。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0049】
各実施例及び比較例において、造粒物の水分含有量は、赤外線式水分計(SHIMADZU社製、機種「EB−340MOC」)を用い、乾燥減量を測定して求めた。即ち、造粒物粉末2gを90℃で15分間乾燥後、重量変化分を水分含有量とした。
【0050】
また、各実施例及び比較例において、錠剤の硬度は、錠剤硬度計(SCHLEUNIGER社製、機種「MODEL 6D」)を用いて測定し、5錠の測定値の平均値を示した。
【0051】
実施例1
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、30.0g)、D−マンニトール(421.5g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(60.0g)及び酸化マグネシウム(6.0g)を、流動層造粒装置(パウレック(株)製、機種「MP−01」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(405g、固液比:75重量%)を、液速度8.5g/minで噴霧し、吸気温度80℃、排気温度25.6℃で、流動層造粒した。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(1.5g)及びスクラロース(3.0g)の水溶液(162g)を、液速度6.7g/minで噴霧し、吸気温度55℃、排気温度25.3℃で、流動層造粒した。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(6.0g)及びステアリン酸マグネシウム(12.0g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計540.0g)。得られた混合物を、単発打錠機(菊水製作所(株)製)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.40mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.3kgであった。
【0052】
実施例2
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、30.0g)、D−マンニトール(421.5g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(60.0g)及び炭酸マグネシウム(6.0g)を、流動層造粒装置(パウレック(株)製、機種「MP−01」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(405g、固液比:75重量%)を、液速度6.5g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度24.1℃で、流動層造粒した。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(1.5g)及びスクラロース(3.0g)の水溶液(162g)を、液速度6.7g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度24.6℃で、流動層造粒した。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を用いて、実施例1と同様にして、整粒し、軽質無水ケイ酸(6.0g)及びステアリン酸マグネシウム(12.0g)を混合し、打錠して、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.47mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.6kgであった。
【0053】
実施例3
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、30.0g)、D−マンニトール(421.5g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(60.0g)及び水酸化マグネシウム(6.0g)を、流動層造粒装置(パウレック(株)製、機種「MP−01」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(405g、固液比:75重量%)を、液速度6.5g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度24.7℃で、流動層造粒した。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(1.5g)及びスクラロース(3.0g)の水溶液(162g)を、液速度6.8g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度24.6℃で、流動層造粒した。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を用いて、実施例1と同様にして、整粒し、軽質無水ケイ酸(6.0g)及びステアリン酸マグネシウム(12.0g)を混合し、打錠して、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.47mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.0kgであった。
【0054】
比較例1
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、30.0g)、D−マンニトール(421.5g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(60.0g)、酸化マグネシウム(6.0g)を、流動層造粒装置(パウレック(株)製、機種「MP−01」)を用いて混合し、得られた混合物に、ヒドロキシプロピルセルロース(1.5g)及びスクラロース(3.0g)の水溶液(162g)を、液速度6.8g/minで噴霧し、吸気温度55℃、排気温度23.7℃で、流動層造粒した。この造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(6.0g)及びステアリン酸マグネシウム(12.0g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計540.0g)。得られた混合物を、単発打錠機(菊水製作所(株)製)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.48mの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は3.2kgであった。
【0055】
実施例1〜3及び比較例1で得られた各ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の苦味を、下記方法によって、評価した。
苦味評価方法:ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を、水無しで、服用したときの苦味を、下記基準により、評価した。
○:苦味を感じることなく、容易に服用できた。
△:やや苦味を感じたが、十分に服用可能であった。
×:苦くて、服用できなかった。
【0056】
表1に、実施例1〜3及び比較例1における造粒方法及び回数、実施例1〜3及び比較例1で得られた各ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間、並びに苦味評価結果を示した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から、ゾルピデム酒石酸塩と、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基性物質とを含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して1段目の造粒物を得、次いで得られた1段目の造粒物を更に流動層造粒するという2段階の流動層造粒工程を行うことによって、口腔内崩壊性に優れ、しかも苦味等の不快な味が低減された口腔内崩壊錠が得られることが明らかである。
【0059】
実施例4
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3900g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)、酸化マグネシウム(60g)、黄色三二酸化鉄(微量)及び三二酸化鉄(微量)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度34g/minで噴霧し、吸気温度40℃、排気温度20.9℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、14.2重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(30g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度33g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度26.9℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、3.5重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.39mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は5.0kgであった。
【0060】
実施例5
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3900g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)、酸化マグネシウム(60g)、黄色三二酸化鉄(微量)及び三二酸化鉄(微量)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度38g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.1℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、10.5重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(30g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度37g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.2℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、14.6重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.41mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.2kgであった。
【0061】
実施例6
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3915g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)、酸化マグネシウム(60g)、黄色三二酸化鉄(微量)及び三二酸化鉄(微量)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度34g/minで噴霧し、吸気温度40℃、排気温度20.9℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、14.2重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(15g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度33g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度28.3℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、3.2重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.42mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.1kgであった。
【0062】
実施例7
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3915g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)、酸化マグネシウム(60g)、黄色三二酸化鉄(微量)及び三二酸化鉄(微量)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度38g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.1℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、10.5重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(15g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度37g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.8℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、9.5重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.37mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.6kgであった。
【0063】
実施例8
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3912g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)及び酸化マグネシウム(60g)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度37g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.2℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、13.1重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(18g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度37g/minで噴霧し、吸気温度50℃、排気温度23.6℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、8.9重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.39mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.6kgであった。
【0064】
比較例2
ゾルピデム酒石酸塩(活性成分、300g)、D−マンニトール(3900g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(600g)、結晶セルロース(300g)、酸化マグネシウム(60g)、黄色三二酸化鉄(微量)及び三二酸化鉄(微量)を、流動層造粒装置(フロイント社製、機種「FLO−5」)を用いて混合し、得られた混合物に精製水(2700g、固液比:50重量%)を、液速度33g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度26.3℃で、流動層造粒した。得られた1段目の造粒物の水分含有量は、3.0重量%であった。1段目の造粒物を該流動層造粒装置で乾燥し、該乾燥物に、ヒドロキシプロピルセルロース(30g)及びスクラロース(30g)の水溶液(1000g)を、液速度33g/minで噴霧し、吸気温度60℃、排気温度26.7℃で、流動層造粒した。得られた2段目の造粒物の水分含有量は、2.7重量%であった。2段目の造粒物を乾燥した乾燥物を、「パワーミル」((株)ダルトン製、機種「P−04S」)にて、φ1.2mmのスクリーンを用いて整粒した。得られた整粒物、軽質無水ケイ酸(60g)及びステアリン酸マグネシウム(120g)をV型混合機(不二パルダル(株)製、機種「VM−5」)に投入し、粉末を7分間混合した(固形分量合計5400g)。得られた混合物を、ロータリー式打錠機(菊水製作所(株)製、機種「VIRGO−512」)にて、φ8.5mmR面(割線入り)杵を用い、打錠圧力約750kgで打錠し、1錠あたり活性成分を10.0mg含有する重量180mg、厚み3.43mmの口腔内崩壊錠を製造した。得られた口腔内崩壊錠の硬度は4.6kgであった。
【0065】
実施例4〜8及び比較例2で得られた各ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の苦味を、前記と同じ苦味評価方法によって、評価した。
【0066】
表2に、実施例4〜8及び比較例2における1段目の造粒物の水分含有量、2段目の造粒物の水分含有量、造粒方法及び回数、実施例4〜8及び比較例2で得られた各ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の口腔内崩壊時間、及び苦味評価結果を示した。
【0067】
【表2】

【0068】
表2から明らかなように、実施例4〜8の錠剤は、1段目の造粒物の水分含有量がいずれも10重量%以上であり、いずれも、苦味を感じることがなく、又口腔内崩壊時間も約30秒以内で、水無しで十分に服用でき、口腔内崩壊錠として優れた製剤である。これに対して、比較例2の錠剤は、1段目の造粒物の水分含有量が5重量%未満であり、苦味が強く、水無しでは服用は困難であり、口腔内崩壊錠時間も約1分以上で、口腔内崩壊錠としてのメリットはない。また、実施例4〜8の結果から、2段目の造粒物の水分含有量は、苦味との関連性が殆ど認められないことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法により得られるゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠は、口腔内崩壊性に優れ、しかも苦味等の不快な味が低減されており、不眠症治療剤として有用であり、本発明は製薬業分野において有効に利用される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠を製造する方法であって、ゾルピデム酒石酸塩及び無機塩基性物質を含む混合物に、水をスプレーしつつ流動層造粒して、水分含有量が5重量%以上である1段目の造粒物を得ること、次いでこの1段目の造粒物を更に流動層造粒することを特徴とするゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【請求項2】
無機塩基性物質が、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸カルシウム及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
無機塩基性物質の使用量が、ゾルピデム酒石酸塩100重量部に対して、1〜100重量部である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
1段目の造粒物の水分含有量が、8〜30重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
1段目の造粒物の水分含有量が、10〜20重量%である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
2段目の流動層造粒工程を、溶媒に結合剤を溶解した溶液をスプレーして行う請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法によって得られたゾルピデム酒石酸塩含有口腔内崩壊錠。



【公開番号】特開2012−46446(P2012−46446A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189572(P2010−189572)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000209049)沢井製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】