説明

タイタープレート、タイタープレート用の読取装置、分析装置、ならびに分析対象の検出方法

【課題】増幅された試料の改善された自動操作を可能にするタイタープレートを提供する。
【解決手段】本発明は、分析対象を検出するためのタイタープレート及び方法ならびにその使用方法に関する。本発明は、高密度の空間的集積度の場合に試料汚染を有効に回避するために、タイタープレート(10)の複数のウェル(12)及びこれらに隣接配置されたバイオチップ(14)を壁(16)により取り囲むことを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析対象を検出するためのタイタープレート、ならびにタイタープレート用の読取装置に関する。更に、本発明は、分析対象の検出方法に関する。更に、本発明は、この種の方法、タイタープレートの使用方法、ならびにタイタープレートと読取装置との組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
分子診断分析により、例えば、HIウィルス、C型肝炎及びB型肝炎ウィルスによるウィルス感染が診断される。今日では、中央検査室において、この種の分析がしばしばピペットロボット装置上で行なわれる。反応容器として、マイクロタイタープレート、特に、例えば12個ずつの8列のウェルを有するいわゆる96ウェルプレートが使用される。これらのウェルは互いに約0.9cmの標準化された間隔で配置されている。試料物質及び試薬が、ピペットロボットから自由にプログラム可能に、プラスチック製のピペットチップ又は洗浄・再使用可能なチップにより、タイタープレートの予め定められたウェルつまりwellに移送される。更に、ピペットロボット装置においては、特定温度での培養、混合プロセス又は、例えば磁気的な分離プロセスのような幾つかの作業ステップが実行される。
【0003】
分子診断法のほぼ不可欠のプロセスは、例えばいわゆるポリメラーゼ連鎖反応(略してPCR)のような熱サイクル反応によるいわゆる標的(分析対象)の増幅である。その際に、分析対象分子の非常に僅かな直接的には検出できない量が指数関数的に検出可能な量に増やされる。
【0004】
増幅されるべき試料もしくは増幅された試料の操作は極めて厄介である。場合によっては単一の分子のみによる、例えばエアロゾル発生を介する極めて僅かな汚染が、誤った陽性結果又は高められた定量結果をともなう試料を生じるであろう。従って、分子診断においては、隔離された空間内で試料前処理及び増幅を行なうのが通常である。しかし、これは非常に高価であり、実験所員による試料の処理を必要とする。
【0005】
1つの解決手段は、PCR実施前における被覆フィルムによるタイタープレートの密封封印にある(例えば、特許文献1参照)。引続いて、もはやタイタープレートはその同じ空間内で開放してはならない。隔離された空間でのこの措置は、分析プロセスを統合して自動化する動向と矛盾する。
【0006】
生成されたPCR生成物を増幅された分析対象とともに分析するために、例えば、いわゆるリアルタイムPCRに基づく光学的な方法が考慮される。しかし、分子診断においては電気的に検出するための測定方法が存在し、これらの方法ではハイブリダイゼーション反応が行なわれる。この種の方法は公知である(例えば、特許文献2参照)。そのために、生成されたPCR生成物が反応容器からハイブリダイゼーション用の他の容器に移送される。汚染のない移送のための解決策は、PCR及びハイブリダイゼーション用の容器を、例えばいわゆるクイックラボ・ポイント・オブ・ケア−カセット(quicklab(登録商標) point of Care-Kassette)のような1つの閉じられたカセット内に密封統合することにある。しかし、この解決策は、多様なルーチン的用途にとって、しばしば高価すぎ、しかも比較的僅かな処理能力しか可能にしない。
【0007】
効率的な検出のためには、増幅された分析対象とのハイブリダイゼーション反応の生成物が電気的に検出されるとよい。模範的に言及したクイックラボ(quicklab(登録商標))は刊行物により公知である(例えば、特許文献3参照)。バイオチップのための他の装置も公知である(例えば、特許文献4参照)。分析対象とのハイブリダイゼーションによって電気的に検出可能な特性を変化させるバイオチップも公知である(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005059535号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第99/07879号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10233212号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10058397号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10126341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、増幅された試料の改善された自動取扱いを可能にするタイタープレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1による技術的に簡単な手段を用いて解決される。
【0011】
本発明は、特に請求項1によるタイタープレートの第1の実施形態を含む。
【0012】
本発明によるタイタープレートは、好ましくは、標準マイクロタイタープレートの場合の間隔に相当する間隔で配置された複数のウェルを有し、従って本発明によるタイタープレートはピペットロボットにより操作可能である。この標準間隔は例えば9mmである。更に、タイタープレートは好ましくは標準タイタープレートの長さ及び幅を有し、12×8個のウェルを有する標準タイタープレートサイズに相当すると好ましい。本発明によるタイタープレートの厚さは、以下になおも詳しく説明するように、それぞれ1つのバイオチップと複数のウェルとを取り囲む壁に場所を提供するために比較的大きいと好ましい。
【0013】
本発明によるタイタープレートは、清潔な複数のピペットチップのストックを持つピペットロボットによって操作可能であると好ましい。ピペットチップをピペットロボットがつかみ、標準タイタープレート上の例えば12×8=96個のウェル位置のうちの任意の1つの位置に移動させ、そこでピペットチップを降下させ当該ウェルから液体を吸い取り又は注入する。更に、ピペットロボットは、使用済みのピペットチップを廃棄物容器の中に下ろし、新しい清潔なピペットチップをつかみ取って、このピペットチップを用いて作業を更に続行する。
【0014】
分析対象の検出のために、本発明によれば、少なくとも1つのバイオチップがタイタープレート上に配置されている。「バイオチップ」とは、分析対象、例えば特定のDNAを検出するのに適し、特に分析対象の存在時に電気信号を発生するチップである。典型的には、バイオチップは、それぞれ特異的に分析対象に結合する捕捉分子を持つ1つ又は複数の感応面を有する。1つのバイオチップには異なる捕捉分子を持つ複数の感応面を配置することができ、例えば8〜400個、特に好ましくは64又は128個の感応面もしくはスポットを配置することができる。バイオチップは、例えばユニバーサルジップコード捕捉体を有するCMOSチップである。複数個、特に6〜24個、好ましくは12個のバイオチップがタイタープレート上に存在すると好ましく、それによって例えば12ランダムアクセス多重アッセイ法(Random Access Multiplex Assay)を実施することができる。
【0015】
分析対象分子が捕捉分子に結合し、例えば捕捉分子とハイブリダイズする際に、例えば、感応面においてキャパシタンスの変化が生じ、この変化が電気的に読取られる。これは次のようにして行なわれるとよい。分析対象もしくは標的がビオチン化されている。分析対象分子が捕捉分子に結合した後に、例えばストレプタビジン又はAGホスファターゼのような標識酵素が添加される。この酵素は標的のビオチンに結合する。その後に基質が添加されると反応生成物が生成し、この反応性生物がバイオチップによって読取可能な電気信号を発生する。特に好ましくは、バイオチップが、適切な捕捉分子とのハイブリダイゼーションによりDNAを検出するように設計されているとよい。
【0016】
バイオチップの1つ又は複数の感応面がバイオチップの一方の面、特に上面に配置され、バイオチップの前記一方の面に対向する面に電気信号の読取りを可能にする接触部が配置されているとよい。とりわけ、5〜100個、特に8〜12個の感応面と、同じ個数の接触部とを1つのバイオチップに配置することによって、同時に複数の異なる分析対象を検査することができる。
【0017】
バイオチップがタイタープレートの中に嵌め込まれているとよい。例えば、バイオチップがプラスチックリングの中に嵌め込まれ、このプラスチックリングが再びタイタープレートの適切なウェルの中へ嵌め込まれていることによって、試料物質又は反応物質が、バイオチップの好ましくは上方に向いた感応面と接触することができる。好ましくは、バイオチップが、例えば上方に向いた感応面側に、汚染物質が突き抜けて捕捉分子に到達するのを防ぐ密封部材を備えているとよい。密封部材は、例えばエラストマ材料及び/又は熱可塑性材料からなるカバーである。
【0018】
バイオチップは、標準タイタープレートの場合には例えば2、4、6又は8個のような固定個数のウェルが配置されている範囲に広がっているとよい。ウェルの標準位置でピペットロボットが停止し、物質を吸込み又は放出する。それによってバイオチップは、ピペットロボットによって、試料物質、反応物質又は標識酵素及び基質で満たされる。
【0019】
各DNAチップの隣にそれぞれ複数のウェルもしくは穴が配置され、これらの中において、例えば標的の増幅を、例えばPCR反応により実施することができ、あるいはその他の試薬を供給することができる。それゆえ、1つのバイオチップとウェルの複数個とがそれぞれ1つの単位を構成し、この単位内で定められた分析が行なわれる。この単位は壁によって周りを囲われている。この単位内において検出のために必要な全てのステップを実行することができる。これらの単位の空間的分離によって、個々の試料を汚染の危険にさらすことなく、非常に小さい面の上に多数の単位を収容することができる。非常に多数の試料の大規模な並列検査が高速かつ低コストにて可能である。
【0020】
壁によって取り囲まれた1つの単位には、例えば2、4、6、8又は10個のウェルと、1、2又は3個のバイオチップとが所属する。特に好ましくは、4個のウェルと1個のバイオチップとが1つの単位を構成し、しかもバイオチップが、標準タイタープレートにおいて4個のウェルによって占められる面積と同じ面積を占めるとよい。従って、好ましい1つの単位は、ピペットロボットがピペットチップを操作することができる8個のウェルに相当し、従って8つの位置を有する。従って、標準で12×8のサイズの1つのタイタープレートはそれぞれ壁によって互いに分離された12個の単位を有する。
【0021】
本発明によるタイタープレートは、例えば約20〜70mm、とりわけ45±10mmの高さのブロックであり、個々の単位間の壁は、各単位がブロック内の一種の切欠きの中に配置されていることによって形成される。ウェル及びバイオチップは切欠きの底部に配置されている。ピペットロボットは、切欠き内において、ピペットチップを1つのウェルから隣のウェルもしくはバイオチップに移動させることができる。バイオチップと複数のウェルとを取り囲む壁は切欠きの壁であり、タイタープレートの高さとほぼ同じ高さ、即ち好ましくは約20〜70mm、とりわけ45±10mmの高さを持つとよい。それによって、ピペット操作時に個々の滴が1つの単位からその隣に位置する1つの単位に達することが有効に防止される。従って、タイタープレートは、それぞれ複数のウェルと1つのバイオチップとからなる単位と同じ個数の切欠きを有すると好ましい。
【0022】
この種の切欠きは、単にタイタープレートの第1面、特に上面に向かって開いているだけでよい。各単位内に1つのピペットが切欠きを介して入れられ、試料を例えば1つのウェルからバイオチップへ移送する最中、当該単位の、周りを囲われた空間内にとどまる。タイタープレートの第1面に対向する面、特に下面は、バイオチップの収容部を提供し、かつそれぞれ1つのウェルに対応する膨らみを備えている。
【0023】
特に好ましくは、切欠きがそれぞれ長穴として形成され、単位ごとに例えばほぼE字の形を有するとよい。切欠きはピペットロボットの移動経過に合わせられている。長穴は、全部で4つのウェルとバイオチップ上の少なくとも1つの位置とにわたって延びている。長穴は、いわば、ウェルとバイオチップとの間における唯一の接続線を成している。これは、個々の単位間のみならず部分的に1つの単位内の個々のウェル間にも壁が配置されているという利点を有する。ピペットチップが一度試料物質に接触すると、そのチップはこの単位内に置きっぱなしにすることができる。公知のタイタープレートの場合と違って、非常に細かい滴ですら他の分析単位の中に落ち込むことは起こり得ない。なぜならば、使用されたピペットチップは他のウェルもしくはチップの上を跨いで外に出されることがないからである。発展形態によれば、切欠きは1つ又は複数のピペットチップを切欠き内にとどめ置くことができるように設計されている。
【0024】
タイタープレートはプラスチックから作られていると好ましい。タイタープレートは一方の面に向かって開いた切欠きを備えているので、このタイタープレート(バイオチップなし)を射出成形法により製作することができる。壁もしくは切欠きとウェルとを一体のプラスチック射出成形部品として製作し、後でこの射出成形部品の中にバイオチップを嵌め込むとよい。代替として、タイタープレートがウェルとバイオチップ用の収容部とを有する1つの平らな板として形成され、この板上の個々の単位の間に壁部材を載置してもよい。しかし、この場合には壁部材と板との間の密封を配慮しなければならないので、この実施形態は好ましくはない。
【0025】
バイオチップは、バイオチップの各コーナが標準サイズのマイクロタイタープレート上の1つのウェルの対応位置にあるように、タイタープレートの中に嵌め込まれていると好ましい。これらの位置の少なくとも1つには、バイオチップのエラストマカバー又は密封部材における注入口が存在する。エラストマ密封部材はバイオチップの感応面を汚染から守るために用いられている。密封部材は、例えば2成分射出成形法にて、タイタープレートの製作時にタイタープレートの中に組み込まれるとよい。代替として、バイオチップが嵌め込まれているプラスチックリングによって、密封部材もしくはカバーを固定してもよい。特に好ましくは、エラストマ密封部材をバイオチップ感応面から僅かに隔てることによって、その隙間に、バイオチップの感応面に液体を接触させるバイオチップ室を形成するとよい。
【0026】
好ましくは注入口を介して液体がバイオチップ室内に注入され、その後に液体が捕捉分子に接触し、それによりバイオチップによって分析される。バイオチップの注入口は、いわばタイタープレートの複数のウェルの標準位置の1つに一直線に揃えられているので、ピペットはピペットロボットにより自動的に試料をバイオチップへ移送することができる。
【0027】
特に好ましくは、バイオチップのエラストマ密封部材の上側に、ピペットチップのための少なくとも1つの、好ましくは2つの置場が設けられているとよい。しかも、当該置場が、標準タイタープレート上の1つのウェルにそれぞれに対応し、従ってピペットロボットによって到達可能である例えば4つの位置のうちの1つ又は好ましくは2つの位置に設けられているとよい。試料物質と接触させられるピペットはこの場所に下ろされ、従ってその単位内にとどめ置かれ、このことは場合によっては清潔なピペットチップがその単位内において使用される場合も当てはまる。更に、他の4つのピペットチップが4つのウェルの位置にとどめ置かれる。
【0028】
更に、余剰の液体を受け入れるために、各単位用に1つのオーバーフロータンクを設けると好ましい。好ましい実施形態においては、オーバーフロータンクがバイオチップ室と直接に接続されているかもしくは接続可能である。それにより、バイオチップ室内に注入された液体は直接に更にオーバーフロータンクへ流入する。バイオチップがタイタープレートの底部に嵌め込まれているので、オーバーフロータンクはバイオチップ室の上側にあるとよい。従って、オーバーフロータンクは、そのチップ室から液体を吸い取る芯材又は他の吸収力のある材料を備えていると好ましい。このようにしてチップ室によって押圧された液体の全てがオーバーフロータンクによって受け入れられる。オーバーフロータンクは、好ましくは0.5ml〜5ml、特に好ましくは1〜2mlの容積を有するとよい。更に、オーバーフロータンクが、バイオチップ室内への液体の逆流を防止するオーバーフロー壁を備えているとよい。代替として、オーバーフロータンクへの流入が、例えば、標準タイタープレート上の複数のウェルに対応する複数の標準位置の1つにおける入口を通して行なわれてもよい。
【0029】
代替実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのバイオチップを備え分析対象を検出するためのタイタープレートを含み、その少なくとも1つのバイオチップが分析対象を検出すべく設計されかつ壁によって取り囲まれ、密封部材、好ましくはエラストマ密封部材が少なくとも1つのバイオチップ(14)上に配置され、その密封部材がバイオチップと一緒にバイオチップ室を形成し、かつオーバーフロータンクと共に直接にそのバイオチップ室に接続されているかもしくは接続可能である。従って、バイオチップ室内に注入された液体は直接に更にオーバーフロータンクに流入する。バイオチップが好ましくはタイタープレートの底部に嵌め込まれるので、オーバーフロータンクはバイオチップ室の上側にあると好ましい。従って、オーバーフロータンクが、チップ室から液体を吸い取る芯材又は他の吸収力のある材料を備えているとよい。このようにして、チップ室によって押圧される液体の全てがオーバーフロータンクによって受け入れられる。この代替実施形態によれば、タイタープレートに他のウェルが必要でないので、タイタープレートの底面全体が完全にバイオチップによって占有可能である。
【0030】
請求項1による本発明の第1の実施形態に関連して言及されている他の好ましい本発明の特徴の全ては、本発明によるタイタープレートの代替実施形態においても備えることができる。
【0031】
任意選択的に、本発明によるタイタープレートは少なくとも1つの孔によって貫通されていてよい。この孔はタイタープレートの支持材料に対して直角方向に延び、好ましくはウェルとバイオチップとの間に開口している。更に、起こり得るタイタープレート上の空間からの汚染滴を吸い取るために、負圧にされるとよい。各単位もしくは各切欠きが1つの専用の孔を備えているとよい。
【0032】
更に、本発明は、試料の自動取扱いの更なる改善を保証すべく設計されているタイタープレート用の読取装置に関する。この読取装置は、バイオチップ用の少なくとも1つの電気接触面つまり読取面を提供する。読取面は加熱可能であると好ましい。なぜならば、バイオチップの読取結果は一般に適切な熱処理後にはじめて読取可能であるからである。
【0033】
更に読取装置はウェルのための槽を含み、これらの槽は加熱可能な収容部(サーモブロック)として設計されているとよい。読取装置上へのタイタープレートの載置時に、それぞれ1つのウェルが1つの槽の中に収容され、良好な熱伝達を保証するために、ウェルができるだけ密接に槽によって包囲されていると好ましい。1つの単位内に形成されているウェルと同数の槽が、それぞれ1つの独立の熱サイクル単位(以下において、サーモブロックと呼ぶ)を構成するとよい。槽の適切な加熱によって、ウェル内で例えばPCRを実行することができる。
【0034】
読取装置は、それぞれ4つの槽と1つの接触面とで構成される互いに独立な単位を有するとよい。
【0035】
本発明の他の課題は、バイオチップにより分析対象を検出するための改善された方法を提供することにある。本発明によるタイタープレートの使用によって、ピペットロボットによるいわゆる「液体の取扱い」が行なわれる。
【0036】
この方法は、タイタープレートの複数のウェルのうちの1つへの試料の注入のほかに分析対象の増幅を含み、かつ1つの共通の空間内でのバイオチップのハイブリダイゼーション領域の空間的統合という利点を提供する。ピペットチップがこの空間内にとどめ置かれるので、他の試料物質による汚染が有効に回避される。
【0037】
方法の有利な実施形態によれば、単位ごとに複数のピペットチップがピペットロボットによって使用され得るが、これらのピペットチップは使用後それぞれ当該単位内にとどめ置かれる。これは、ピペットチップが隣接する単位の上を跨いで運び去られる際に隣接する単位が増幅された物質により汚染されるということがないという利点を有する。特に好ましくは、使用されたピペットチップはバイオチップのカバー又は密封部材の上の置場に下ろされる。
【0038】
例えば、例えば同一患者の異なる組織からの1つのみならず複数の試料が、1つの単位の異なるウェルに入れられる。PCR後に相次いで反応混合物が異なるウェルから異なるピペットチップによりバイオチップ室に移送され、バイオチップが読み取られる。ピペットチップはバイオチップ室上で完全に空にされ、余剰の液体がオーバーフロータンクに流入する。その後にピペットチップはPCR反応混合物が移送されたのと同一のウェルの上に下ろされる。更なる操作のためには清潔なピペットチップが使用され、そのピペットチップも当該単位もしくは切欠き内にとどめ置かれる。
【0039】
PCR反応生成物の移送後に他の液体、特に標識液体がピペットチップによりバイオチップ上もしくはバイオチップ室内に移送されるとよい。この標識は、例えば、ビオチン化された分析対象に結合するストレプタビジン又はAGホスファターゼである。標識を移送したピペットチップは、場合によっては他の試料のためにもう一度使用されるので、まだ空にされず、従って置場位置又は待機位置の1つで待機させられる。
【0040】
更に、他のピペットチップにより基質がバイオチップ室の中に注入される。これはバイオチップにおいて電気信号を作動させる反応生成物を発生させる。基質を移送したピペットチップは、場合によっては他の試料のためにもう一度使用されるので、まだ空にされず、従って第2の置場位置又は待機位置で待機させられる。
【0041】
それゆえ、好ましい方法の特徴は、複数のピペットチップが、切欠き内における例えば異なる置場又はウェル内にとどめ置かれることにある。
【0042】
分析対象の増幅のために熱サイクル反応が使用されるとよい。その際に、本発明による方法の発展形態によれば、ポリメラーゼ連鎖反応(略してPCR)、アレル特異性プライマ発現(略してASPE)及び/又はいわゆる増幅不応性突然変異系(略してARMS)が考慮される。
【0043】
この場合に、分析対象の温度制御される増幅のほかに、温度制御されるハイブリダイゼーションも用いられる。
【0044】
更に、分析対象の改善された検出は、温度制御される電気的な、特に電気化学的な検出によって達成される。
【0045】
更に、試料の自動取扱いの改善のために、分析装置が、読取装置とタイタープレートとの組合せから提供される。この組合せは市販のピペットロボットに適合している。
【0046】
本発明の他の特徴は本発明によるタイタープレートの使用方法に関する。1つの単位における複数のウェルは、4つの異なる比較濃度を用いて定量分析用に使用できる。これは統合化DNA技術における発現実験又はいわゆる単一ヌクレオチド多型(略してSNP)における複合多重化のために考えられ得る。
【0047】
添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明によるタイタープレートの実施例の斜視図である。
【図2】図2は本発明によるタイタープレート用の読取装置の実施例の斜視図である。
【図3】図3は図1によるタイタープレートと図3による読取装置との組合せの斜視図である。
【図4】図4は本発明によるタイタープレートの上面の一部の平面図である。
【図5】図5は第2の実施形態によるタイタープレート及び読取装置の一部の縦断面図である。
【図6】図6は本発明による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下において図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0050】
図1は、分析対象を検出するためのタイタープレート10を下面22から見た図で示す。タイタープレート10は列に配置された複数のウェル12を有し、これらのウェル12は下面22からは膨らみ12’として見える。ウェル12は、ピペットロボットがピペットチップにより必要な試薬、溶剤、及び/又は分析対象かどうかを検査されるべき試料を入れることができるように、互いに隔てられて整列させられている。
【0051】
2列のウェル12ごとに隣に1列のバイオチップ14が配置されている。バイオチップ14は、同様にウェル12に対して、ロボットがピペットチップをそこへ自動的にプログラム制御により移動することができるように配置されている。これらのバイオチップ14は、例えばDNAをハイブリダイゼーションにより検出すべく設計されており、バイオチップ14の少なくとも1つの電気特性が変化する。この種のバイオチップ14は、必要に応じてチップカード実験室も含み得る。
【0052】
タイタープレート10はモジュールに構成され、このタイタープレート10は、ウェル12つまり膨らみ12’が形成されているプラスチック製ブロック、例えば射出成形部品と、バイオチップ14とを含む。バイオチップ14はこのブロックの収容部14’に収容されている。バイオチップ14の下に熱可塑性エラストマからなる密封部材が配置されていると好ましく、この密封部材は収容部14’をタイタープレートの上面(図1では下方にある)に向かって密封する。密封部材には、入口、出口及び場合によっては置場を成す漏斗状の開口が配置されているとよい。更に、バイオチップ14がそれぞれ1つのプラスチックリングの中に嵌め込まれ、そのプラスチックリングが収容部14’に、例えば接着又は溶接により取り付けられているとよい。
【0053】
タイタープレート10上で複数の試料を検査できるように、それぞれ複数のウェル、ここでは4つのウェル12が、それぞれ1つのバイオチップ14と共に、1つの単位21にまとめられ、図1ではこの単位21が鎖線によって囲まれている。4つのウェル12と1つのバイオチップ14とを囲って汚染から保護する壁16が、少なくともこの鎖線21に沿って延びている。このために射出成形部品は、約50mm〜約60mmの厚さd、即ち壁高さを有する。タイタープレート10は16個のこの種の単位21を有する。
【0054】
図2は、タイタープレート10用の読取装置26の実施例を示す。読取装置26上には、一方では、タイタープレートのウェル12のための加熱可能な収容部として用いられる槽13の列が配置されている。特に、図1に示されている膨らみ12’は、槽13の中にぴったりはまる。1つの単位21の4つの槽13は、それぞれ1つのサーモブロック11にまとめられ、互いに関係なく加熱可能であり、かつ特に他のサーモブロック11に関係なく加熱可能である。従って、図示の読取装置26は、1つの単位の4つの槽からなる独立のサーモブロック11を12個含んでいる。1つのサーモブロック11を用いて、ウェル12内の分析対象を増幅反応により良好に検出できる量まで増やすことができる。
【0055】
更に、読取装置26は、バイオチップ14のための幾つかの電気的な読取面つまり接触面15を提供する。それぞれ1つのバイオチップ14が1つの読取面15上に載っていることによって、バイオチップ14の接触部が接触して読み取られる。読取面15の温度が制御されるとよい。1つの読取面15上には、例えば8個の電気接触部が配置されている。
【0056】
接触面15及び槽13は縁枠部17によって取り囲まれ、縁枠部17は図1に示されているタイタープレート10を読取装置26上に位置合わせして保持することができる。
【0057】
読取装置26の底面積及び高さは、公知のスターレット(STARlet(登録商標))システムと互換性があると好ましく、従ってそのサイズは150×110×110mm3であり、7トラックの支持体にぴったり適合する。読取装置26は、任意にプログラム可能なPCRを実行することができる1つの単位の4つの槽からなる12個の独立のサーモブロックもしくはサーモサイクラ11と、12個の独立の温度制御される電気バイオチップ読取ブロックとを含むと好ましい。電子集積回路が、通信インターフェースと、24個の独立の温度制御ユニットと、12個の独立のバイオチップ読取用のディジタルインターフェースとを有するとよい。
【0058】
図3には、図1のタイタープレート10が図2による読取装置26の上にどのように装着されるかを上面側から見た図で示されている。タイタープレート10は縁枠部17によって支持されている。タイタープレート10の上面20においては、ほぼE字形の長穴として形成された切欠き18を認識することができる。切欠き18は、ブロック内に切り込んだようにタイタープレート10の底部にまで達している。従って、各切欠き18は、タイタープレート10内のウェル12にまで達する比較的厚い壁16によって区切られている。壁16は、複数のウェル12と1つのバイオチップ14とからなる個々の単位の囲いを提供する。これらのウェル12は、切欠き18の底部19に配置され、ピペットロボットにより到達可能である。ピペットロボットは、増幅された試料混合物を長穴18に沿ってウェル12からバイオチップ14へ移送すべく、ピペットチップ40を移動する。
【0059】
図4には、タイタープレート10の1つのバイオチップと4つのウェルと含む1つの単独の単位21が上面20から見た平面図で概略的に示されている。このタイタープレート10において、1つの切欠き18が形成されている。切欠き18は長穴として形成され、壁16によって取り囲まれている。切欠き18は上面20に向かって開いている。
【0060】
切欠き18を通してタイタープレート10の底部19を見ると、その底部19内には右側に示す4つのウェル12が到達することができる。左側にはバイオチップ14が破線の下に位置している。バイオチップ14は例えば密封部材30によって覆われている。密封部材30においては、32のところで注入口に到達することができ、注入口を通してピペットチップにより試料をバイオチップ14と接触させることができる。位置33,35において、バイオチップ14上の密封部材30は透過できないが、ピペットチップのための小さな収容部を備えている。この収容部は、例えば、密封部材30内における小さな窪みであってよく、この窪みの中にピペットチップを収容することができる。しかし、この種の窪みは必ずしも必要ではない。いずれにせよ位置33,35にピペットチップを下ろすことができる。それゆえ、これらの位置33,35は長穴18とつながっている。ピペットチップの開口は密封部材30のエラストマ材料によって密封されるので、ピペットチップは、これらの置場位置の1つ33又は35に待機させられる際に、例えば基質又は標識酵素をなおも満たされていてよい。位置34にはオーバーフロータンクの開口が配置されている。この位置は長穴18とつながっていない。なぜならば、この位置にはピペットチップを移動する必要でないからである。
【0061】
ウェル12内での試料の取扱いのために、切欠き18は、とりわけ4つのウェルをいわば「上から」接近可能にする多枝の長穴として設計されている。即ち、ピペットチップ40はピペットロボットにより長穴18を介して挿入し移動することができる。挿入されたピペットチップは、その切欠き18から出て行かなくても、全てのウェル12にも、バイオチップ14にも到達する。標的を含んでいる増幅された試料は、ピペットによってウェル12の1つから受け取られ、注入口32を介してバイオチップ14内へ移送される。注入口32は、保護のためにバイオチップ14上に設けられたエラストマ密封部材又は被覆30を貫通する。
【0062】
注入口32を介して液状試料がピペットチップ40からバイオチップ室36の中へ流入する。バイオチップ室36はバイオチップ14の感応面に接するように配置され、特にバイオチップ14と密封部材30との間に延びている。バイオチップ室36からオーバーフロータンク24が分岐し、このオーバーフロータンク24は上に向かって開いている。オーバーフロータンク24内には芯材31が配置されている。この場合に芯材31は、例えば発泡材又は脱脂綿のような吸収性材料からなる円筒状部材である。従って、バイオチップ室34から更に、ピペットチップ40からの液状試料24がオーバーフロータンク24へ流入する。
【0063】
ピペットチップは、使用後に、切欠き18の内部において6つの異なる位置にとどめ置かれてもよい。ピペットチップが、例えば標識又は基質、特に後にもう一度必要される液体でなおも満たされている場合には、そのピペットチップは両置場位置33,35のうちの1つに待機させられるとよい。そこでは、それらの置場の開口が密封部材30によって封鎖されている。空の使用済みのピペットチップ、例えばPCR生成物をウェル12の1つから注入口32を介してバイオチップ室36の中へ移した後のピペットチップは、その都度のウェル12内に下ろされるとよい。PCR生成物をバイオチップ室36へ移した後に、ピペットチップを完全に空にするとよい。なぜならば、バイオチップ室36がオーバーフロータンク24に直接的につながっていて、オーバーフロータンク24の中へ全ての余剰の液体が吸い取られるからである。
【0064】
図5はタイタープレート10と読取装置26との組合せを示し、ここでも1つの単位21だけが示されている。タイタープレート10は複数のウェル12を含み、これらのウェルの膨らみ12’がサーモブロック11の壁13の中に挿入されている。注入された試料物質がPCRの如き熱サイクル反応により繰り返し複製される。他のウェル12からの試料物質の汚染を避けるために、封鎖媒体28(ここでは鉱油膜)がウェル12の1つに設けられている。ウェル12には、第1面20に向かって開いた壁16が隣接している。それゆえ、ピペットチップ40がピペットロボットによって持ち込まれてウェル12に到達することができる。両ウェル12の間ならびに左側のウェル12とバイオチップ14との間において、壁14は切断されているのではなくて、上から見て認識することができる。
【0065】
バイオチップ14はプラスチックリング41によって縁取りされている。このプラスチックリング41は、好ましくは密封縁部を有し、バイオチップ14をタイタープレート10もしくは密封部材30に対して密封する。バイオチップ14は、上側に、汚染防止手段として、例えばポリプロピレンからなる密封部材30を有する。密封部材30と、バイオチップ14上の分析対象のための捕捉分子を有する面との間には、試料を受け入れ得るバイオチップ室36が構成されている。増幅された試料は、ピペットチップ40により注入口32を介してバイオチップ室36の中に移されるが、その際に周りを囲まれた切欠き18から外に出ることはない。
【0066】
ウェル12と注入口32との間には孔38が配置されている。この孔38はタイタープレート10全体を貫通する。負圧又は真空の適用によって、試料物質による汚染の確率を更に低減する連続的な空気流を発生させることができる。この場合に空気流は第1面20を介してタイタープレート10の中に入る。その後、エアロゾル、滴などが空気流と一緒に孔38を介して排出される。従って、本発明によるタイタープレート10のためのいわゆる抽出システムが使用できる。更に孔38がフィルタ材料39で覆われているとよい。
【0067】
試料は注入口32を介してバイオチップ14上のチップ室36の中に流入する。過剰の液体がバイオチップ室36の中に注入された場合、これは、密封部材30における出口34を介してオーバーフロータンク24の中に流入する。オーバーフロータンク24内にある液体がもう一度元に戻ることができないようにするために、図5に示されているように、中間壁37がオーバーフロー防止手段として設けられている。中間壁37と壁16との間の間隙には、例えば吸収性の芯材が存在し、この芯材は、余剰の試料液体を受け入れ、これを毛細管力により、約1.3mlの液体を収容できるオーバーフロータンク24の中に導く。
【0068】
図示されていない他の実施形態によれば、オーバーフロータンク24は出口34の直上に配置されているが、しかしバイオチップ室36からは間隙を介して離されている。オーバーフロータンク24は、図4に示されているように、ほぼ完全に芯材で占められ、この芯材は1〜2mlの液体を保持することができる。出口34に現れる液体は芯材によって吸収される。間隙が存在するために、液体がもはや補給されないときには、液体流が直ぐに途切れる。このようにして毛細管力によらなくても逆流は生じない。
【0069】
タイタープレート10を用いて、バイオチップ14による分析対象を検出するための本発明による方法を実施することができる。バイオチップ14は、前述のようにタイタープレート10の中に組み込まれている。この方法は次のステップを含む。試料がタイタープレート10のウェル12の1つに注入され、そのウェル12に試薬が注入される。次に、試薬と混合された試料を用いて増幅反応が行なわれ、その際にPCR反応、ASPE反応及び/又はARMS反応が考慮される。その後、生成された反応混合物がバイオチップ14上に移送され、分析対象とのハイブリダイゼーションによって少なくとも1つの電気的に検出可能な特性を変化させるバイオチップ14が読み取られる。本発明による方法は、液体がピペットチップ40を有するピペットロボットにより移送され、周りを囲われた空間18内にピペットチップ40がとどめ置かれることを特徴とする。このためにピペットチップ40がウェル12の1つ又は置場位置33,35の1つに下ろされる。
【0070】
ピペットロボットの使用によって分析プロセスが著しく加速され、誤りを生じることが少なくなり、しかもコスト的に有利である。特に、定量分析、統合DNA技術(integrated DNA technology;略してIDT)又はSNPの際の複合多重化のための使用が可能になる。
【0071】
バイオチップ14により分析対象を検出するための本発明による方法が図6にフローチャートとして示されている。本発明による方法は、先ず、タイタープレート10の1つ又は複数のウェル12内への1つ又は複数の被検査試料の注入102を含む。このタイタープレート10は、既に述べたような本発明によるタイタープレート10であると好ましい。試料に接触したピペットチップ40は、その後、ピペットロボットによって通常のように廃棄物処理されてよい。
【0072】
更なる方法ステップ104において、分析対象の増幅反応に必要な試薬がウェル12内に入れられる。このために他のピペットチップ40がピペットロボットによって切欠き18内に入れられ、その後通常のように切欠きの外へ廃棄物処理されてよい。任意選択的に試料が増幅反応前に鉱油により表面膜を形成されるとよい。試薬と試料とが一緒にされた後に、PCR反応を進行させるために温度プログラム106が実行される。引続いて、反応混合物は検出改善のために大量に複製された形の分析対象を含んでいる。
【0073】
それゆえ、ステップ108において、ピペットロボットが新しい清潔なピペットチップ40を受け入れる。このピペットチップにより、ステップ110において、増幅された試料を有する反応混合物が第1のウェル12からバイオチップ14へ移送される。反応混合物がバイオチップ室36の中へ注入される。場合によっては過剰に受け入れられた反応混合物は出口34を通してオーバーフロータンク24の中に流入する。ステップ114において、使用されたピペットチップが完全に空にされた後に第1のウェル12に下ろされる。即ち、そのピペットチップは切欠き18内にとどめ置かれる。
【0074】
それゆえ、ステップ116において、ピペットロボットが先ず他の新しい清潔なピペットチップ40を受け入れる。このピペットチップにより、ステップ118において、標識酵素が、切欠き18の外側にある貯蔵タンクから受け入れられ、バイオチップ14の中に移送される。ピペットチップ40は、その後でもまだ空になっていなく、従ってステップ120において第1の置場位置33に下ろされる。即ち、そのピペットチップ40は切欠き18内にとどめ置かれる。
【0075】
その後、ステップ122において、ピペットロボットが他の新しい清潔なピペットチップ40を受け入れる。このピペットチップ40により、ステップ124において、基質が切欠き18の外側にある貯蔵タンクから受け入れられ、バイオチップ14へ移される。ピペットチップ40はその後でもまだ空になっていなく、従ってステップ126において第2の置場位置35に下ろされる。即ち、そのピペットチップ40は切欠き18内にとどめ置かれる。
【0076】
その後、ステップ128において、バイオチップ14が読み取られる。
【0077】
ステップ110〜128は、なおも多数回繰り返され、しかも他のウェル12からの他の反応混合物に関して繰り返される。ウェル12から反応混合物を吸い取るために使用されたピペットチップは、それぞれのウェル12へ戻されてそこにとどめ置かれ、やがてそのピペットチップはタイタープレート10と一緒に廃棄物処理される。標識酵素及び基質を移送するのに用いたピペットチップは再使用され、その後再び置場位置33,35で待機させられる。
【0078】
従って、本発明は、使用されたピペットチップを他の試料が検査される他の切欠き18の上を跨いで廃棄物処理する必要がないことを可能にし、それにより汚染の危険が減少する。
【符号の説明】
【0079】
10 タイタープレート
11 サーモブロック(サーモサイクラ)
12 ウェル
12’ 膨らみ
13 槽
14 バイオチップ
14’ 収容部
15 読取面(接触面)
16 壁
17 縁枠部
18 切欠き(長穴)
19 底部
20 上面
21 単位
22 下面
24 オーバーフロータンク
26 読取装置
28 封鎖媒体
30 密封部材(被覆)
31 芯材
32 注入口
33 置場位置、置場
34 位置
35 置場位置、置場
36 バイオチップ室
37 中間壁
38 孔
39 フィルタ材料
40 ピペットチップ
102〜128 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェル(12)と少なくとも1つのバイオチップ(14)とを備え分析対象を検出するためのタイタープレート(10)において、
少なくとも1つのバイオチップ(14)が分析対象を検出すべく設計され、少なくとも1つのバイオチップ(14)がウェル(12)の複数個と一緒に壁(16)によって取り囲まれていることを特徴とするタイタープレート(10)。
【請求項2】
バイオチップ(14)がウェル(12)に隣接して配置され、壁(16)によって少なくとも1つの切欠き(18)が画成され、それぞれウェル(12)の複数個と1つのバイオチップ(14)とが切欠き(18)の底部(19)に配置されていることを特徴とする請求項1記載のタイタープレート(10)。
【請求項3】
タイタープレート(10)が複数の切欠き(18)を有することを特徴とする請求項2記載のタイタープレート(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの切欠き(18)がタイタープレート(10)の第1面(20)に向かって開き、第1面(20)に対向する面(22)がバイオチップ(14)のための収容部(14’)とウェル(12)の膨らみ(12’)とを備えていることを特徴とする請求項2乃至4の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの切欠き(18)が長穴(24)として形成され、この長穴が壁(16)によって取り囲まれた全てのウェル(12)及びバイオチップ(14)の上に延びていることを特徴とする請求項2乃至5の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項6】
少なくとも1つのバイオチップ(14)の上にエラストマ密封部材(30)が設けられ、このエラストマ密封部材が注入口(32)を有することを特徴とする請求項1乃至5の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項7】
バイオチップ(14)のエラストマ密封部材(30)の上に、ピペットチップ(40)のための少なくとも1つの置場が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項8】
バイオチップ(14)の感応面に液体を接触させるバイオチップ室(36)が存在することを特徴とする請求項1乃至7の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項9】
バイオチップ室(36)が、バイオチップ室(36)からの液体を受け入れるためのオーバーフロータンク(24)に接続可能であることを特徴とする請求項8記載のタイタープレート(10)。
【請求項10】
オーバーフロータンク(24)内に、バイオチップ室(36)からの液体を吸い取るための芯材(31)が配置されていることを特徴とする請求項9記載のタイタープレート(10)。
【請求項11】
1つのウェル(18)内に、タイタープレート(10)を貫通する1つの孔(38)が存在することを特徴とする請求項1乃至10の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項12】
バイオチップ(14)が、ハイブリダイゼーションによりDNAを検出すべく設計されていることを特徴とする請求項1乃至11の1つに記載のタイタープレート(10)。
【請求項13】
タイタープレート(10)用の読取装置(26)、特に請求項1乃至12の1つに記載のタイタープレート(10)用の読取装置(26)であって、読取装置(26)が、1つのバイオチップ(14)のための少なくとも1つの電気接触面(15)と、タイタープレート(10)のウェル(12)を収容するための槽(13)とを有することを特徴とするタイタープレート(10)用の読取装置(26)。
【請求項14】
タイタープレート(10)のウェル(12)のための槽(13)が選択的に加熱可能であることを特徴とする請求項13記載の読取装置(26)。
【請求項15】
タイタープレート(10)のウェル(12)のための複数の槽(13)がそれぞれ1つのサーモブロック(11)にまとめられ、読取装置(26)が互いに独立に動作可能な複数のサーモブロック(11)を含むことを特徴とする請求項13又は14記載の読取装置(26)。
【請求項16】
請求項1乃至12の少なくとも1つに記載のタイタープレート(10)と請求項13乃至15の1つに記載の読取装置とを含む分析装置。
【請求項17】
請求項1乃至12の1つに記載のタイタープレート(10)に組み込まれているバイオチップ(14)により分析対象を検出する方法であって、基質、特に液体を複数のウェル(12)のうちの1つからバイオチップ(14)に移送するステップ(110)を有する方法において、
基質が、ピペットチップ(40)を有するピペットロボットによりバイオチップ(14)に移送され、ピペットチップ(40)が切欠き(18)内にとどめ置かれることを特徴とする分析対象の検出方法。
【請求項18】
a)複数のウェル(12)のうちの1つに試料を注入するステップ(102)、
b)複数のウェル(12)のうちの少なくとも1つに試薬を注入するステップ、
c)試薬に混合された試料を用いた増幅反応を実行するステップ、
d)生成された反応混合物をバイオチップ(14)上へ移送するステップ(110)、
e)分析対象とのハイブリダイゼーションによって少なくとも1つの電気的に検出可能な特性を変化させるバイオチップ(14)の読取りステップ、
を有し、請求項1乃至12の1つに記載のタイタープレート(10)に組み込まれているバイオチップ(14)により分析対象を検出するための請求項17記載の方法において、
反応混合物及び/又は試料が、ピペットチップ(40)を有するピペットロボットにより注入されもしくはバイオチップ(14)上へ移送され、かつピペットチップ(40)が切欠き(18)内にとどめ置かれることを特徴とする方法。
【請求項19】
ステップd)の後に、液体、特に標識液体がピペットチップ(40)によりバイオチップ(14)上に移送されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
複数のピペットチップ(40)が切欠き(18)内にとどめ置かれることを特徴とする請求項17乃至19の1つに記載の方法。
【請求項21】
ピペットチップ(40)が、ピペット操作後に、特に複数のウェル(12)のうちの1つからバイオチップ(14)上へ生成した反応混合物の移送(110)後に、液体が移送されたそれぞれのウェル(12)に置かれることを特徴とする請求項17乃至20の1つに記載の方法。
【請求項22】
ピペットチップ(40)が、ピペット操作後に、特にバイオチップ(14)上への標識液体の移送後に、切欠き(18)内の1つの置場(33,35)に置かれ、その置場が、ピペットチップ(40)から液体が漏れないようにピペットチップ(40)の下側を封鎖することを特徴とする請求項17乃至21の1つに記載の方法。
【請求項23】
ステップa)〜e)が更に別の試料に関して実行されることを特徴とする請求項17乃至22の1つに記載の方法。
【請求項24】
定量分析、IDT、SNP(単一ヌクレオチド多型)又は発現分析のための請求項1乃至12の1つに記載のタイタープレート(10)の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−524004(P2011−524004A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510959(P2011−510959)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056231
【国際公開番号】WO2009/144173
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】