説明

タイヤの製造方法、及びタイヤの製造装置

【課題】熱可塑性材料からなるタイヤ構成部材の溶着部分の強度を十分確保したタイヤを、簡単な装置で効率的に製造する。
【解決手段】熱可塑性材料からなる下側のタイヤ半体17Aを溶着面近傍に形成した環状溝に第1保持具78を挿入して保持し、上側のタイヤ半体17Aを溶着面近傍に形成した環状溝に第2保持具82を挿入して保持する。溶着面に設けた溶接しろ25を溶融させた後、第1保持具78及び第2保持具82を互いに接近させてタイヤ半体17A同士の溶着を行う。タイヤ半体17Aの溶着面近傍を保持具で押圧するので、溶着面に対して保持具からの押圧力を効率的に付与することができ、溶着面同士を確実に溶着させることができる。また、ブラダー等を用いずにタイヤ半体17Aを支持するので、装置構成が簡略化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムに装着するタイヤを製造するためのタイヤの製造方法、及びタイヤの製造装置にかかり、特には、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤを製造するためのタイヤの製造方法、及びタイヤの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材等から構成された空気入りタイヤが用いられている。
しかしながら、使用後のゴムはリサイクルの用途に制限があり、焼却してサーマルリサイクルする、破砕して道路の舗装材料として用いる等して処分することが行われていた。
【0003】
近年では、軽量化やリサイクルのし易さから、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−223430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易で、低コストである。
ところで、タイヤを金型で成形するにあたり、中子でタイヤ内腔部を形成すると、成形後のタイヤから中子を取り出せなくなる問題がある。そのため、特許文献1では、タイヤを軸方向に分割した半環状タイヤを一対成形し、一対の半環状タイヤを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で溶着することでタイヤ本体を得ている。
【0006】
そして、一対の半環状タイヤの溶着は、一対の半環状タイヤを一対の保持金型に形成された凹部に嵌合させて保持し、各半環状タイヤのタイヤ赤道面側の端部(以後、途切れ部という)に熱板を当接させて溶融させ、途切れ部が溶融した後に一対の保持金型を近づけることにより溶融部を互いに押付け溶着する。
【0007】
また、この溶融に際して、途切れ部近傍内面は、気密なゴム状のシート状材からなるトロイド状に拡径するブラダーで支持される。ブラダーは、空気圧によって拡径され、半環状タイヤを保持金型に均一に押圧して半環状タイヤを保持している。
【0008】
しかしながら、この従来技術では、半環状タイヤの外周面に対応した凹部の形成された保持金型以外に、ブラダー、及びブラダーを拡径させるための空気供給装置(エアコンプレッサー、レギュレーター、電磁弁、配管等)が必要となっており、装置構成が複雑化しており改良の余地がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、熱可塑性材料で形成されるタイヤを製造するにあたり、確実な溶着が行え、かつ簡単な装置で効率的にタイヤを製造することのできるタイヤの製造方法、及びタイヤの製造装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、熱可塑性材料を含んで形成されたタイヤ構成部材を互いに接合する工程を含むタイヤの製造方法であって、溶着前の一方のタイヤ構成部材には、前記一方のタイヤ構成部材を支持する第1保持具が係合される第1係合部が形成されており、前記一方のタイヤ構成部材に溶着する溶着前の他方のタイヤ構成部材には、前記他方のタイヤ構成部材を支持する第2保持具が係合される第2係合部が形成されており、前記一方のタイヤ構成部材の第1溶着面及び前記第2のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方を溶融する溶融工程と、前記第1係合部に前記第1保持具を係合させた前記一方のタイヤ構成部材の前記第1溶着面と、前記第2係合部に前記第2保持具を係合させた前記他方のタイヤ構成部材の前記第2溶着面とを互いに対向させ、前記第1保持具と前記第2保持具とを互いに接近させて前記第1溶着面と前記第2溶着面とを互いに接触させて溶着する接合工程と、を有する。
【0011】
請求項1に記載のタイヤの製造方法では、先ず、溶融工程では、一方のタイヤ構成部材の第1溶着面及び第2のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方が溶融される。
次の接合工程では、第1係合部に第1保持具が係合されることで一方のタイヤ構成部材が第1保持具で支持され、第2係合部に第2保持具が係合されることで他方のタイヤ構成部材が第2保持具で支持される。
そして、第1係合部に第1保持具を係合させた一方のタイヤ構成部材の第1溶着面と、第2係合部に第2保持具を係合させた他方のタイヤ構成部材の第2溶着面とが互いに対向され、第1保持具と第2保持具とが互いに接近されて、第1溶着面と第2溶着面とが互いに接触されて溶着され、これにより、熱可塑性材料で形成されるタイヤ構成部材を互いに溶着することで構成されるタイヤを効率的に製造できる。なお、第1溶着面と第2溶着面とを互いに接触するのみならず、互いに押圧することが好ましい。
【0012】
請求項1に記載のタイヤの製造方法では、一方のタイヤ構成部材を保持した第1保持具と、他方のタイヤ構成部材を保持した第2保持具の何れか一方を、例えば、互いに接離する方向に移動する移動手段を用いて相手側へ移動するだけで溶着を行うことができ、部材を保持するためのブラダー、空気供給装置等を必要とせず、装置構成も簡略化できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤの製造方法において、前記一方のタイヤ構成部材及び前記他方のタイヤ構成部材は、各々ビード部からトレッドのタイヤ赤道面まで連続したタイヤ半体形状とされ、前記第1係合部は、前記一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成され、前記第2係合部は、前記他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成され、前記第1溶着面は、前記一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端面とされ、前記第2溶着面は、前記他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端面とされている。
【0014】
請求項2に記載のタイヤの製造方法では、タイヤ半体形状とされた一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端部と、同じくタイヤ半体形状とされた他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端部とが溶着され、タイヤが製造される。
また、第1係合部は一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成され、第2係合部は他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成されているので、第1保持具及び第2保持具は、各々溶着部分に近い部分を押圧することができ、第1溶着面及び第2溶着面に対して第1保持具及び第2保持具からの押圧力を効率的に付与することができ、第1溶着面と第2溶着面とを確実に溶着させることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤの製造方法において、前記第1係合部及び前記第2係合部は、タイヤ構成部材外周面からタイヤ径方向外側へ突出する突起部を備え、前記接合工程では、筒状に形成された前記第1保持具の内周面を前記一方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて保持すると共に、筒状に形成された前記第2保持具の内周面を前記他方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて保持し、前記第1保持具で前記一方のタイヤ構成部材の前記突起部を押圧し、前記第2保持具で前記他方のタイヤ構成部材の前記突起部を押圧することで前記溶着を行う。
【0016】
請求項3に記載のタイヤの製造方法では、接合工程で、第1保持具で一方のタイヤ構成部材の突起部を押圧し、第2保持具で他方のタイヤ構成部材の突起部を押圧することで、一方のタイヤ構成部材と他方のタイヤ構成部材との溶着が行われる。
また、筒状に形成された第1保持具の内周面を一方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて一方のタイヤ構成部材を保持すると共に、筒状に形成された第2保持具の内周面を他方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて他方のタイヤ構成部材を保持するので、溶着時に、一方のタイヤ構成部材及び他方のタイヤ構成部材が各々真円状(軸方向から見て)に保持されるため、タイヤ周方向に渡って均一に溶着が行われる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤの製造方法において、前記第1係合部及び前記第2係合部は、各々タイヤ構成部材外周面からタイヤ径方向外側へ突出し、タイヤ周方向に沿って連続して延びる環形状に形成された環状突起を備え、前記環形突起には、タイヤ周方向に沿って連続して形成され、タイヤ赤道面側が溝底とされタイヤ赤道面側とは反対側に開口する環状溝が形成され、前記接合工程では、前記第1保持具を前記第1係合部の前記環状溝に挿入して前記一方のタイヤ構成部材を保持し、前記第2保持具を前記第2係合部の前記環状溝に挿入して前記他方のタイヤ構成部材を保持し、前記第1保持具で前記一方のタイヤ構成部材の前記環状突起を押圧し、前記第2保持具で前記他方のタイヤ構成部材の前記環状突起を押圧することで前記溶着を行う。
【0018】
請求項4に記載のタイヤの製造方法では、接合工程で、第1保持具で一方のタイヤ構成部材の環状突起を押圧し、第2保持具で他方のタイヤ構成部材の環状突起を押圧することで、一方のタイヤ構成部材と他方のタイヤ構成部材との溶着が行われる。
また、筒状に形成された第1保持具を一方のタイヤ構成部材の環状溝に挿入して一方のタイヤ構成部材を保持すると共に、筒状に形成された第2保持具を他方のタイヤ構成部材の環状溝に挿入してタイヤ構成部材を保持するので、溶着時に、一方のタイヤ構成部材及び他方のタイヤ構成部材が各々真円状(軸方向から見て)に保持されるため、タイヤ周方向に渡って均一に溶着が行われる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のタイヤの製造方法において、前記環状溝の溝底と溝側壁との隅部分の断面形状は円弧形状とされている。
【0020】
請求項5に記載のタイヤの製造方法では、例えば、環状溝に挿入された第1保持具からの押圧力が、環状突起の環状溝の溝底に作用することとなるため、環状溝の溝底と溝側との隅部分が断面で見て角張っていると、応力集中を招き易い。請求項5に記載のタイヤの製造方法では、環状溝の溝底と溝側壁との隅部分の断面形状が円弧形状となっているため、該応力集中を抑えることが出来る。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記第1溶着面及び前記第2溶着面の少なくとも一方には、前記溶融工程で溶融される溶融しろが設けられている。
【0022】
請求項6に記載のタイヤの製造方法では、溶融工程において、第1溶着面及び第2溶着面の少なくとも一方に設けられた溶融しろが溶融される。溶融しろを設けることで、溶融させる部位が明確となり、溶融する必要の無い部分との区別が付きやすくなる。このため、必要の無い部分の溶融を防止することが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のタイヤの製造方法において、前記溶融しろは、前記第1溶着面と前記第2溶着面との押圧方向の寸法が0.5〜5mmの範囲内に設定されている。
【0024】
溶融しろが少なすぎると、第1溶着面と第2溶着面との溶着が不確実になる虞があり、溶融しろが多すぎると、タイヤ表面へのはみ出し量が多くなり過ぎ、はみ出し部分を除去することを考えると、材料の無駄となる。よって、溶融しろの第1溶着面と第2溶着面との押圧方向の寸法を0.5〜5mmの範囲内とすることが、材料の無駄を抑えつつ、確実な溶着を行う上で好ましい範囲となる。
なお、「溶融しろ」とは、溶融させる部分のみを意味する。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記第1溶着面、及び前記第2溶着面の何れか一方が上向となり、何れか他方が下向きとなるように前記一方のタイヤ構成部材及び前記他方のタイヤ構成部材を配置し、前記第1溶着面、及び前記第2溶着面の内で上向きとされた方を溶融する。
【0026】
ところで、第1溶着面、及び第2溶着面の何れか一方を溶融した場合、溶融した部分が縦に配置されていると、溶融した熱可塑性材料が下方へ流れ、溶着面における溶融した熱可塑性材料の厚みが周方向に不均一になる(例えば、上側では溶融した熱可塑性材料が下方へ流れるため溶融した熱可塑性材料の厚みが薄くなってしまい、下側では上方から流れた熱可塑性材料によって厚みが厚くなる傾向となる。また、溶融した熱可塑性材料が垂落ちる場合も想定される。)。
【0027】
請求項8に記載のタイヤの製造方法では、第1溶着面、及び第2溶着面の内で上向きとされた方を溶融するので、溶融された熱可塑性材料の厚みが周方向に不均一になることを抑制でき、周方向に渡って確実な溶着を行うことができる。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記熱可塑性材料の溶融は、前記熱可塑性材料の融点よりも高温に加熱した加熱部材を接近または接触させることで行われる。
【0029】
請求項9に記載のタイヤの製造方法では、熱可塑性材料の融点よりも高温に加熱した加熱部材を第1溶着面、及び第2溶着面の少なくとも一方に接近または接触させることで、接近または接触した部分が加熱部材からの熱を受けて溶融する。
【0030】
熱風や赤外線を照射する場合、必要部位以外も加熱されることになるが、高温に加熱した加熱部材を第1溶着面、及び第2溶着面の少なくとも一方に接近または接触させるようにすれば、加熱部位は限定的となり、必要の無い部位まで加熱してしまうことが無い。必要の無い部位まで加熱すると、タイヤ構成部材を変形させてしまう虞がある。
【0031】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のタイヤの製造方法において、前記加熱部材の表面には、フッ素樹脂層が設けられている。
【0032】
請求項10に記載のタイヤの製造方法では、加熱部材の表面にフッ素樹脂層が設けられているため、溶融した熱可塑性材料が加熱部材に接触しても、加熱部材表面に熱可塑性材料が付着したまま残ることを抑制できる。
【0033】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、外周部から突出する凸状部分を除去する除去工程を有する。
【0034】
請求項11に記載のタイヤの製造方法では、除去工程において、外周部から突出する凸状部分が除去される。凸状部分としては、突起部、環状突起、溶融した熱可塑性樹脂が溶着時に外周部からはみ出て固化したもの等である。外周部からはみ出て固化した熱可塑性樹脂は、切削、研削等の機械加工で簡単に除去することができる。
【0035】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記タイヤ構成部材はタイヤ径方向内側にリムのビードシート、及びリムフランジに接触するビード部を備え、前記ビード部に環状のビードコアが埋設されている。
【0036】
請求項12に記載のタイヤの製造方法で得られるタイヤは、リムとの嵌合部位であるビード部に、環状のビードコアが埋設されているので、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リムに対してタイヤを強固に保持することが出来る。ビードコアは、金属製が好ましいが、合成樹脂製であっても良い。
【0037】
請求項13に記載の発明は、請求項1〜請求項12の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材とを溶着した後、外周部に前記熱可塑性材料よりも剛性の高いコードを螺旋状に巻回することで補強層を形成する。
【0038】
請求項13に記載のタイヤの製造方法では、熱可塑性材料よりも剛性の高いコードを螺旋状に巻回することで形成された補強層をタイヤ外周部に設けることで、タイヤの路面と接地する側が補強されたタイヤが得られる。なお、この補強層は、ゴム製の空気入りタイヤのベルトに相当する役目をする。タイヤの外周部に補強層を設けることで、補強層を設け無い場合に比較して耐パンク性、耐破壊性、周方向剛性、クリープ防止効果等が向上する。
【0039】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜請求項13の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材とを溶着した後、路面と接触する部分に、前記熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層を接着する。
【0040】
請求項14に記載のタイヤの製造方法では、路面と接触する部分に、熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層を設けることで、路面と接触する部分にゴムからなるトレッドゴム層を設けない場合に比較して、耐摩耗性、耐破壊性等が向上したタイヤが得られる。
【0041】
請求項15に記載の発明は、請求項1〜請求項14の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材に対して、タイヤ内の空気が外部へ漏れないように、リムと接触する部分に前記熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴムからなるシール部を貼り付ける。
【0042】
請求項15に記載のタイヤの製造方法では、リムと接触する部分に、熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴムからなるシール部を設けることで、タイヤとリムとの間のシール性が向上したタイヤが得られる。このため、タイヤは、リムと熱可塑性材料とでシールする場合に比較して、タイヤ内の空気の漏れをより一層抑えることができる。また、シール部を設けることで、リムフィット性も向上する。
【0043】
請求項16に記載の発明は、熱可塑性材料を含んで形成されたタイヤ構成部材を互いに接合するタイヤの製造装置であって、溶着前の一方のタイヤ構成部材に形成された第1係合部に係合して前記一方のタイヤ構成部材を支持する第1保持具と、溶着前の他方のタイヤ構成部材に形成された第2係合部に係合して前記他方のタイヤ構成部材を支持する第2保持具と、前記一方のタイヤ構成部材の第1溶着面、及び前記第2のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方を溶融する加熱手段と、前記第1保持具と前記第2保持具とを互いに接離する方向に移動させる移動手段と、を有する。
【0044】
次に、請求項16に記載のタイヤの製造装置の作用を説明する。
請求項16に記載のタイヤの製造装置では、第1保持具を溶着前の一方のタイヤ構成部材に形成された第1係合部に係合させることで、一方のタイヤ構成部材が第1保持具に支持される。また、第2保持具を溶着前の他方のタイヤ構成部材に形成された第2係合部に係合させることで、他方のタイヤ構成部材が第2保持具に支持する。また、加熱手段は、一方のタイヤ構成部材の第1溶着面、及び他方のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方を溶融する。
【0045】
第1溶着面、及び第2溶着面の少なくとも一方を溶融した後、移動手段で第1保持具と第2保持具とを互いに接離する方向に移動させることで、一方のタイヤ構成部材と他方の構成部材とを互いに接近し、第1溶着面と第2溶着面とが互いに押付けられて溶着する。これにより、熱可塑性材料で形成されるタイヤ構成部材を互いに溶着することで構成されるタイヤを効率的に製造できる。
【0046】
請求項16記載のタイヤの製造装置では、一方のタイヤ構成部材を保持した第1保持具と、他方のタイヤ構成部材を保持した第2保持具を移動手段を用いて互いに接近させることで溶着を行うことができ、部材を保持するためのブラダー、空気供給装置等を必要とせず、装置構成も簡略化できる。
【0047】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のタイヤの製造装置において、前記加熱部材の表面には、フッ素樹脂層が設けられている。
【0048】
次に、請求項17に記載のタイヤの製造装置の作用を説明する。
請求項17に記載のタイヤの製造方法では、加熱部材の表面にフッ素樹脂層が設けられているため、溶融した熱可塑性材料が加熱部材に接触しても、加熱部材表面に熱可塑性材料が付着したまま残ることを抑制できる。
【発明の効果】
【0049】
以上説明したように請求項1に記載のタイヤの製造方法によれば、熱可塑性材料からなるタイヤ構成部材の溶着部分の強度を十分確保したタイヤを、簡単な装置で効率的に製造することができる。
請求項2に記載のタイヤの製造方法によれば、第1溶着面と第2溶着面とを確実に溶着させることができ、溶着の信頼性が向上する。
請求項3に記載のタイヤの製造方法によれば、タイヤ周方向に渡って均一に溶着を行うことができ、溶着の信頼性が向上する。
請求項4に記載のタイヤの製造方法によれば、タイヤ周方向に渡って均一に溶着を行うことができ、溶着の信頼性が向上する。
【0050】
請求項5に記載のタイヤの製造方法によれば、環状溝の溝底と溝側壁との隅部分の応力集中を抑えることができる。
請求項6に記載のタイヤの製造方法によれば、溶融させる部位が明確となり、必要の無い部分の溶融を防止することが可能となる。
請求項7に記載のタイヤの製造方法によれば、材料の無駄を抑えつつ、溶着の信頼性が向上する。
請求項8に記載のタイヤの製造方法によれば、周方向に渡って確実な溶着を行うことができ、溶着の信頼性が向上する。
【0051】
請求項9に記載のタイヤの製造方法によれば、加熱部位を限定的とし、必要の無い部位まで加熱して変形させてしまうことが無い。
請求項10に記載のタイヤの製造方法によれば、加熱部材表面に熱可塑性材料が付着したまま残ることを抑制できる。
請求項11に記載のタイヤの製造方法によれば、タイヤ表面が平滑になり、トレッド等、他の部材をタイヤ表面に貼り付ける場合等に都合が良くなる。
請求項12に記載のタイヤの製造方法によれば、リムに対して強固に保持することが出来るタイヤが得られる。
【0052】
請求項13に記載のタイヤの製造方法によれば、耐パンク性、耐破壊性、周方向剛性、クリープ防止効果等に優れたタイヤが得られる。
請求項14に記載のタイヤの製造方法によれば、耐摩耗性、及び耐破壊性を向上したタイヤが得られる。
請求項15に記載のタイヤの製造方法によれば、タイヤ内の空気の漏れをより一層抑えることができ、また、リムフィット性を向上することができるタイヤが得られる。
【0053】
請求項16に記載のタイヤの製造装置によれば、熱可塑性材料からなるタイヤ構成部材の溶着部分の強度を十分確保したタイヤを、簡単な装置で効率的に製造することができる。
請求項17に記載のタイヤの製造装置によれば、加熱部材表面に熱可塑性材料が付着したまま残ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を断面にした斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。
【図2】成形機の斜視図である。
【図3】(A)は最小径としたタイヤ支持部の斜視図であり、(B)は最大径としたタイヤ支持部の斜視図である。
【図4】コード供給装置の要部を示す斜視図である。
【図5】(A)はタイヤ半体の溶着部分の斜視図であり、(B)はタイヤ半体の溶着部分の拡大断面図である。
【図6】(A)、(B)はタイヤの製造工程を示す説明図である。
【図7】(A)、(B)は図6に続くタイヤの製造工程を示す説明図である。
【図8】図7に続くタイヤの製造工程を示す説明図である。
【図9】(A)は2つのタイヤ半体を溶着して得られたタイヤケースの一部断面図であり、(B)は溶着部分の拡大断面図である。
【図10】タイヤケースを支持したタイヤ支持部の斜視図である。
【図11】他の実施形態に係るタイヤ半体の端部を示す断面図である。
【図12】(A)は他の実施形態に係るタイヤ半体の端部を示す断面図であり、(B)は図12(A)に示すタイヤ半体を溶着した後の溶着部分の断面図である。
【図13】他の実施形態に係るタイヤの断面図である。
【図14】チューブ半体を溶着したチューブの断面図である。
【図15】チューブタイプのタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に、図面にしたがって本発明のタイヤの一実施形態に係るタイヤを説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
タイヤ10は、リム20のビードシート部21、及びリムフランジ22に接触する1対のビード部12、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16からなるタイヤケース(タイヤ骨格部材)17を備えている。
【0056】
本実施形態のタイヤケース17は、熱可塑性材料で形成されている。
本実施形態のタイヤケース17は、一つのビード部12、一つのサイド部14、及び半幅のクラウン部16が一体としてモールド等で成形された同一形状とされた円環状の、タイヤ構成部材としてのタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で溶着することで形成されており、リムとの間で空気室を形成する。なお、タイヤケース17は、2つの部材を溶着して形成するものに限らず、例えば、一方のビード部12とサイド部14と一体とした第1の部材、トレッド部(タイヤ外周部)に対応する第2の部材、及び他方のビード部12とサイド部14とを一体とした第3の部材等、3以上の部材を溶着して形成しても良く、1対のビード部12、1対のサイド部14、及びクラウン部16を一体で成形したものであっても良い。
また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強しても良い。
【0057】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0058】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が上げられる。特に、一部ゴム系の樹脂が混錬されているTPVが好ましい。
【0059】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が上げられる。
【0060】
熱可塑性材料からなるタイヤ半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができ、ゴムで成形(加硫)する場合に比較して、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間も短くて済む。
【0061】
また、本実施形態では、タイヤ半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤ半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットがある。
【0062】
本実施形態のビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されているが、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければビードコア18は省略しても良い。なお、ビードコア18は、有機繊維コード等、スチール以外のコードで形成されていても良く、合成樹脂で形成されていても良い。
【0063】
本実施形態では、ビード部12のリム20との接触部分、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、熱可塑性樹脂よりもシール性に優れたゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はビードシートと接触する部分にも形成されていても良い。シール層24を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略しても良く、サイド部14を形成している熱可塑性樹脂よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂を用いても良い。
【0064】
クラウン部16には、螺旋状に巻回されたスチールの補強コード26からなるクラウン部補強層28が埋設されている。なお、補強コード26は、全体がクラウン部16に埋設されていても良く、一部分がクラウン部16に埋設されていても良い。このクラウン部補強層28は、従来のゴム製の空気入りタイヤのカーカスの外周面に配置されるベルトに相当するものである。
【0065】
なお、補強コード26の埋設量は、補強コード26の直径の1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量が、補強コード26の直径の1/2を超えると、補強コード26が寸法上、表面から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面がフラットになり、上に部材の載ってもエア入りし難くなる。
【0066】
クラウン部補強層28の外周側には、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層30が配置されている。トレッドゴム層30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、サイド部14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料からなるトレッド層を外周部に設けても良い。
【0067】
(タイヤの製造装置)
次に、本実施形態のタイヤ10の製造装置を説明する。
図2には、タイヤ10を形成する際に用いる成形機32の要部が斜視図にて示されている。成形機32は、床面に接地された台座34の上部に、水平に配置された軸36を回転させるギヤ付きモータ37が取り付けられている。
【0068】
軸36の端部側には、タイヤ支持部40が設けられている。タイヤ支持部40は、軸36に固定されたシリンダブロック38を備え、シリンダブロック38には径方向外側に延びる複数のシリンダロッド41が周方向に等間隔に設けられている。
シリンダロッド41の先端には、外面がタイヤ内面の曲率半径と略同等に設定された円弧曲面42Aを有するタイヤ支持片42が設けられている。
【0069】
図2、及び図3(A)は、シリンダロッド41の突出量が最も小さい状態(タイヤ支持部40が最小径の状態)を示しており、図3(B)はシリンダロッド41の突出量が最も大きい状態(タイヤ支持部40が最大径の状態)を示している。
各シリンダロッド41は連動して同一方向に同一量移動可能となっている。
【0070】
また、成形機32の近傍には、図4に示すコード供給装置56が配置されている。コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64、及び第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66を備えている。なお、コード供給装置56は、第1のローラ60、及び第2のローラ64の何れか一方が設けられていれば良い。
【0071】
また、コード加熱装置59は、熱風を生成する図示しないヒーター、及びファンと、内部に熱風が供給され、内部空間を補強コード26が通過する加熱ボックス68と、加熱された補強コード26を排出する排出部70を備えている。
【0072】
(タイヤケースの成形工程)
次に、タイヤケースの成形工程を説明する。
本実施形態のタイヤケース17は、同一形状とされた円環状のタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で溶着することで形成されているが、溶着前のタイヤ半体17Aの形状は図5(A)に示すように、製品タイヤでの形状と一部分が異なっている。
【0073】
図5(A)に示すように、溶着前のタイヤ半体17Aは、外周面のタイヤ赤道面側端部付近に、タイヤ径方向外側に向けて突出し、かつタイヤ周方向に沿って連続して延びる環状突起19が形成されている。
【0074】
環状突起19には、タイヤ赤道面CL側とは反対側に、タイヤ周方向に沿って連続して形成され、タイヤ赤道面CL側が溝底とされタイヤ赤道面CL側とは反対側に開口する環状溝23が形成されている。図5(B)に示すように、環状溝23の溝底と溝側壁との隅部分の断面形状は、応力集中を緩和するために円弧形状とされている。
【0075】
溶着前のタイヤ半体17Aのタイヤ赤道面側端部17Aaには、溶着する際に溶融させるための溶融しろ25が形成されている。本実施形態の溶融しろ25は、タイヤ赤道面側端部17Aaからタイヤ赤道面CL側へ突出し、周方向に一定高さで連続する環状のリブ状突起である。溶融しろ25の高さ寸法h(本発明の押圧方向(接触させる方向)の寸法)は、0.5〜5mmの範囲内とすることが好ましい。本実施形態では、溶融しろ25の断面形状を矩形としているが、図5(C)に示すように半円形等の他の形状としても良い。
【0076】
タイヤケース17を製造するには、図6に示すような溶着装置74を用いる。
図6に示すように、溶着装置74は、一方のタイヤ半体17Aを、タイヤ赤道面側端部17Aaを上向きにして支持する下側支持部材76を備えている。下側支持部材76の上面には、円筒状の第1保持具78が軸線を鉛直方向として取り付けられている。下側支持部材76には、タイヤ半体17Aが挿入される凹部76Bが形成されている。本実施形態の凹部76Bの内壁面の形状は、タイヤ半体17Aの外面の形状と同一形状とされ、タイヤ半体17Aの外面が凹部76Bの内壁面に密着するが、図6(A)の2点鎖線で示すように、凹部76Bの内壁面の形状は、タイヤ半体17Aの外面から離間しても良い。
なお、下側支持部材76の下方には、下側支持部材76を上下に移動するシリンダ装置76Aが配置されている。
【0077】
下側支持部材76の上方には、シリンダ装置80Aで上下に移動する上側支持部材80が配置されており、上側支持部材80の下面には、円筒状の第2保持具82が軸線を鉛直方向とし、かつ第1保持具78と同軸に取り付けられている。上側支持部材80にもタイヤ半体17Aが挿入される凹部80Bが形成されている。なお、図6(A)の2点鎖線で示すように、凹部80Bの内壁面の形状も、タイヤ半体17Aの外面から離間しても良い。
【0078】
下側支持部材76及び上側支持部材80は同一形状である。
また、第1保持具78及び第2保持具82は同一形状であり、タイヤ半体17Aの環状溝23に挿入(係合)可能な径に形成されている(図5,6参照。)。なお、第1保持具78の端部、及び第2保持具82の端部は、各々面取りすることが好ましい(本実施形態ではアール面取りが施されている。)。
溶着装置74は、図示しないヒーターで加熱される熱板84を備えており、下側支持部材76の側方には、熱板84を水平方向に移動可能に支持する熱板移動装置84Aが配置されている。
【0079】
次に、この溶着装置74を用いてタイヤケース17を製造する方法を説明する。
図6(A)に示すように、一方のタイヤ半体17Aを、タイヤ赤道面側端部17Aaを上向きにして下側支持部材76の第1保持具78の上に同軸状に配置し、該タイヤ半体17Aを下方に移動して、第1保持具78の上端部分をタイヤ半体17Aの環状溝23に係合する。円筒状の第1保持具78を環状溝23に係合することで、下側のタイヤ半体17Aは真円を保ったまま第1保持具78に保持される。このとき、一方のタイヤ半体17Aの外周面は第1保持具78の内周面に密着している。
【0080】
また、他方のタイヤ半体17Aを、タイヤ赤道面側端部17Aaを下向きにして上側支持部材80の第2保持具82の下に同軸状に配置し、該タイヤ半体17Aを上方に移動して、第2保持具82の下端部分をタイヤ半体17Aの環状溝23に係合する。円筒状の第2保持具82を環状溝23に係合することで、上側のタイヤ半体17Aは真円を保ったまま第2保持具82に保持される。なお、第2保持具82を環状溝23に係合しているので、第2保持具82と環状溝23との摩擦によって上側のタイヤ半体17Aは落下しないように保持される。このとき、他方のタイヤ半体17Aの外周面は第2保持具82の内周面に密着している。
【0081】
次に、上側のタイヤ半体17Aのタイヤ赤道面側端部17Aaと下側のタイヤ半体17Aタイヤ赤道面側端部17Aaとの中間に加熱した熱板84を挿入し、図6(B)に示すように、上側のタイヤ半体17Aを下方に移動して溶融しろ25を熱板84に接触させて溶融させると共に、下側のタイヤ半体17Aを上方に移動して溶融しろ25を熱板84に接触させて溶融させる(本発明の溶融工程)。
【0082】
溶融しろ25が溶融した後、図7(A)に示すように、上側のタイヤ半体17Aを上側に移動して熱板84から離間させると共に、下側のタイヤ半体17Aを下側に移動して熱板84から離間させ、熱板84を側方へ素早く退避させる。
【0083】
その後、図7(B)に示すように、上側のタイヤ半体17Aを下方に移動して上側のタイヤ半体17Aの溶融した溶融しろ25と下側のタイヤ半体17Aの溶融した溶融しろ25とを互いに押し付け、溶着を行う(本発明の接合工程)。なお、上側のタイヤ半体17Aと下側のタイヤ半体17Aとを互いに押圧すると、溶融した熱可塑性材料がタイヤ外面及び内面へはみ出て固化する(図9(B)の斜線部分。)。
【0084】
溶融しろ25は、本実施形態の様に熱板84を接触させて溶融しても良いが、熱板84を接近させて接触させずに溶融させることもできる。なお、熱板84を溶融しろ25に接触させる場合には、熱板84の表面にフッ素樹脂層を設け、熱板表面に熱可塑性材料が付着したまま残ることを防止することが好ましい。
本実施形態では、溶融しろ25を水平にして溶融させているので、溶融した熱可塑性材料の厚みが周方向に不均一になることはない。
【0085】
溶融した熱可塑性材料が固化した後、図8に示すように、下側支持部材76と上側支持部材80とを互いに離間させ、タイヤケース17を取り出す。
このようにして2つのタイヤ半体17Aを溶着した直後のタイヤケース17は、図9に示すように、タイヤ外周面の幅方向中央部分に環状突起19が突出しているので、タイヤ外周面よりもタイヤ径方向外側に突出している環状突起19(図9(B)の点線よりも図面左側)を、切削、研削等の機械加工により除去する(本発明の除去工程)。
【0086】
環状突起19を除去したタイヤケース17は、次に説明するタイヤ支持部40に装着してクラウン部補強層28の形成を行う。
【0087】
(クラウン部補強層の形成)
図2に示すように、先ず、タイヤケース17の内側に薄い金属板(例えば、厚さ0.5mmの鋼板)からなる筒状のタイヤ内面支持リング72を配置する(なお、図2では、内部を見せるために一方のタイヤ半体17Aを外して記載されている。)。タイヤ内面支持リング72は薄い金属板で形成されているため、曲げ変形させてタイヤケース17の内部に容易に挿入可能である。タイヤ内面支持リング72の外径は、タイヤケース17のクラウン部の内径と略同一寸法に設定されており、タイヤ内面支持リング72の外周面が、タイヤケース17のクラウン部内周面に密着するようになっている。
【0088】
次に、図10に示すように、タイヤ支持部40の外周側に、タイヤケース17を配置し、タイヤ支持部40を拡径してタイヤ内面支持リング72の内周面に複数のタイヤ支持片42を接触させてタイヤ内面支持リング72を内側から保持する(図10では、内部を見せるために両方のタイヤ半体17Aを外して記載している。)。
【0089】
次に、図4に示すように、タイヤ支持部40(図4では図示省略)で支持したタイヤケース17を矢印A方向に回転させ、コード供給装置56の排出部70から排出された加熱された補強コード26をタイヤケース17の外周面に螺旋状に巻き付けてクラウン部補強層28を形成する。補強コード26をタイヤケース17の外周面に螺旋状に巻き付けるには、タイヤケース17を回転しながら、コード供給装置56をタイヤケース17の軸方向に移動させれば良い。
【0090】
補強コード26を熱可塑性材料の融点よりも高温に加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200°C程度に加熱)することで、補強コード26が接触した部分の熱可塑性材料が溶融し、タイヤケース17の外周面に補強コード26の一部または全体を埋設することができる。
本実施形態では、補強コード26は、第1のローラ60、及び第2のローラ64に押圧されて熱可塑性材料内部に埋設される。
【0091】
補強コード26の埋設量は、補強コード26の温度、補強コード26に作用させるテンション等によって調整することができる。なお、補強コード26に作用させるテンションは、例えば、リール58にブレーキを掛ける、補強コード26の搬送経路途中にテンション調整用ローラを設ける等して調整可能である。
【0092】
次に、タイヤケース17の外周面に、加硫済みの帯状のトレッドゴム層30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッドゴム層30を接着剤や未加硫ゴム(未加硫ゴムを用いる場合、接着するための加硫は後工程で行う。)等を用いて接着する。なお、トレッドゴム層30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
【0093】
接着剤としては、トリアジンチオール系接着剤、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤などを用いることができる。接着力を向上させるためには、接着剤を塗布した後に、ある程度乾燥させておくことが好ましい。このため、接着剤を塗布する際には、湿度70%以下の雰囲気で行うことが好ましい。
【0094】
また、トレッドゴム層30を接着する部位は、予めバフして表面を粗し、アルコール等の溶剤で洗浄しておくことが好ましい。また、接着前のタイヤ半体17Aにおいて、溶接用熱可塑性材料43が付着し易い様に、溶着部位にコロナ処理や紫外線処理等を行っても良い。
【0095】
タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
最後に、タイヤ支持部40の径を縮小し、完成したタイヤ10をタイヤ支持部40から取り外し、内部のタイヤ内面支持リング72を曲げ変形させてタイヤ外へ取り外す。
【0096】
(作用効果)
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態のタイヤ10では、一方のタイヤ半体17Aを第1保持具78で保持し、他方のタイヤ半体17Aを第2保持具82で保持し、双方の溶着面を溶融した後、第1保持具78と第2保持具82とを互いに接近させて一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとを溶着するという簡単な製造工程で、タイヤケース17を効率的に製造することができる。
【0097】
本実施形態のタイヤの製造方法では、タイヤ半体17Aを保持するためのブラダー、空気供給装置等を必要としないので、従来よりも装置構成を簡略化することができる。
【0098】
本実施形態では、第1保持具78で一方のタイヤ半体17Aの溶着面近傍に設けた環状突起19を押圧し、第2保持具82で他方のタイヤ半体17Aの溶着面近傍に設けた環状突起19を押圧することで、双方の溶着面(溶融しろ25)を互いに押付けているため、溶着面に対して第1保持具78及び第2保持具82からの押圧力を効率的に付与することができ、双方の溶着面を確実に溶着させることができる。このように、一方のタイヤ半体17Aの溶着面を溶融させ、他方のタイヤ半体17Aの溶着面を溶融させ、溶融させた接着面同士を押圧する事が接合が確実で好ましい。なお、接合が確実に行われるのであれば、一方の溶着面は溶融させなくても良い。
【0099】
さらに、筒状に形成された第1保持具78を一方のタイヤ半体17Aの環状溝23に挿入して一方のタイヤ半体17Aを保持すると共に、筒状に形成された第2保持具82を他方のタイヤ半体17Aの環状溝23に挿入して他方のタイヤ半体17Aを保持するので、溶着時に、一方のタイヤ半体17A及び他方のタイヤ半体17Aが各々真円状に保持され、タイヤ周方向に渡って均一に溶着を行うことができる。
【0100】
本実施形態では、溶融しろ25が水平に配置されているので、溶融しろ25の溶融された熱可塑性材料何れかの方向に偏って厚みが周方向に不均一になることが抑制され、周方向に渡って確実な溶着を行うことができる。
そして、一方のタイヤ半体17Aの溶融しろ25と、他方のタイヤ半体17Aの溶融しろ25とを互いに押圧して溶融した熱可塑性材料(溶融しろ)をタイヤ表面からはみ出させるため、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aとを隙間無く確実に溶着させることができる。
【0101】
本実施形態では、熱板84によって溶融しろ25のみを溶融させており、加熱部位は限定的となっている。即ち、熱風等で必要の無い部位まで加熱してしまうことが無いため、タイヤ半体17Aを変形させてしまう虞が無い。
また、溶融しろ25を設けることで、溶融させる部位が明確となり、溶融する必要の無い部分との区別が付きやすくなる。このため、必要の無い部分の溶融を防止することが可能となる。
【0102】
本実施形態では、同一形状のタイヤ半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤケース17を形成しているため、タイヤ半体17Aの成形用の金型は1種類で済む。即ち、一方のタイヤ半体17Aと他方のタイヤ半体17Aで金型の形状を変えなくても左右対称のタイヤ10を製造することができる。
【0103】
本実施形態のタイヤ10では、トレッド部を除く略全体を熱可塑性材料で形成したので、真空成形、圧空成形、インジェクション成形等で成形することができ、ゴム製の空気入りタイヤに比較して、製造工程を大幅に簡略化できる。
【0104】
本実施形態のタイヤ10では、ビード部12にビードコア18を埋設しているので、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対する嵌合強度を確保できる。
本実施形態のタイヤ10では、タイヤ構成材料の中で熱可塑性材料の占める割合が大きいので、リサイクル性が良好である。
【0105】
熱可塑性材料よりも剛性の高い補強コード26を螺旋状に巻回することで形成されたクラウン部補強層28をクラウン部16に設けることで、クラウン部16が補強され、耐パンク性、耐破壊性、周方向剛性、クリープ防止効果等が向上する。
【0106】
リム20と接触する部分、特にはリムフランジ22と接触する部分に、熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴムからなるシール層24を設けているので、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様のシール性が得られる。
【0107】
本実施形態の10では、従来のゴム製の空気入りタイヤのトレッドに用いられているゴムと同種のゴムからなるトレッドゴム層を供えているので、従来のゴム製の空気入りタイヤと同等の耐摩耗性、グリップ等が得られる。
【0108】
なお、本実施形態のタイヤケース17は、2つのタイヤ半体17Aを溶着して形成したが、3つの部材から構成する場合、タイヤケース17は、一方のサイド部14、他方のサイド部14、及び略円筒状のクラウン部16の3部材に分けることが出来る。これらを溶着する際も、溶接用熱可塑性材料43を用いて溶接することができる。なお、サイド部14とクラウン部16との溶着部分は、路面と接地しない部位に配置することが好ましい。
【0109】
[その他の実施形態]
タイヤ半体17Aの端部は、上記実施形態で説明した形状に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態で説明した製造工程の順番は一例であり、各工程の順番を適宜変更しても良い。
上記実施形態では、上側のタイヤ半体17Aと、下側のタイヤ半体17Aの双方に溶融しろ25を設けたが、例えば、下側のタイヤ半体17Aのみに溶融しろ25を形成し、下側のタイヤ半体17Aの溶融しろ25を溶融して上側のタイヤ半体17Aのタイヤ赤道面側端部17Aa(溶融していない)に溶着することもできる。下側のタイヤ半体17Aの溶融しろ25は、上向きで水平に配置されているので、溶融された熱可塑性材料の厚みが周方向に不均一にならず、周方向に渡って確実な溶着を行うことができる。
【0110】
上記実施形態では、例えば、上側のタイヤ半体17Aを保持するために上側支持部材80の係合される環状溝23が環状突起19に形成されていたが、上側支持部材80の内周面等をタイヤ半体17Aの外周面に強く接するようにして保持できれば、図11に示すように、環状突起19に環状溝23を形成しなくても良い。このとき、一方のタイヤ半体17Aの外周面が第1保持具78の内周面に密着し、他方のタイヤ半体17Aの外周面が第2保持具82の内周面に密着しているので、一方のタイヤ半体17A、及び他方のタイヤ半体17Aは各々真円が保たれた状態で保持される。
【0111】
上記実施形態では、第1保持具78を下側のタイヤ半体17Aの環状溝23に係合して下側のタイヤ半体17Aを保持し、第2保持具82を上側のタイヤ半体17Aの環状溝23に係合して上側のタイヤ半体17Aを保持したが、第1保持具78及び第2保持具82を用いず、下側のタイヤ半体17Aを下側支持部材76の凹部76Bに係合して下側支持部材76に保持し、上側のタイヤ半体17Aを上側支持部材80の凹部80Bに係合して上側支持部材80に保持しても良い。この場合、図12に示すように、タイヤ半体17Aの外周面に環状突起19を形成しなくても良い。なお、図12(A)は溶着前、図12(B)は溶着後を示している。
さらに、タイヤ半体17Aは、下側支持部材76、及び上側支持部材80を用いず、例えば、吸着パッド(吸盤)等を用いて保持することできる。
【0112】
上記実施形態では、加硫済みの帯状のトレッドゴム層30をタイヤケース17の外周面に1周分巻き付けてトレッド部を形成したが、予め円環状に形成した加硫済みのトレッドゴム層30を、タイヤケース17の軸方向から挿入してタイヤケース17と円環状に形成した加硫済みのトレッドゴム層30とを接着剤等を用いて接着することも出来る。
【0113】
上記実施形態では、補強コード26の材質がスチールであったが、有機繊維等であっても良い。補強コード26が有機繊維である場合、補強コード26自身を加熱せず、又は加熱しつつタイヤケース17の外周部の外表面を加熱して溶融させながら補強コード26を巻き付けることが出来、外表面を加熱する方が接合の観点で好ましい。
また、この場合も、接合面を、接合前に加熱(熱風を当てたり、熱ロールを転がす等)することが好ましい。
【0114】
上記実施形態のタイヤ10は、チューブレスタイプのタイヤであったが、図13に示すように、本実施形態のタイヤ86は、熱可塑性材料からなる円環状とされた中空のチューブ88をタイヤ幅方向に3本配置して、それらの外周部分に、ベルト89を埋設したトレッドゴム層30を接着した構成であり、チューブ88に係合する凹部を備えたリム90に装着されるものである。なお、このタイヤ86にはビードコアは設けられていない。
【0115】
チューブ88は、図14に示すように、横向きに配置した断面半円形状のチューブ半体88Aを互いに向き合わせて溶着して形成することができる。チューブ半体88Aの内周側及び外周側の溶着面近傍には、各々上記実施形態のタイヤ半体17Aと同様の環状溝23を有する環状突起19が内外周に設けられており、内周側の環状溝23、及び外周側の環状溝23に筒状の内側保持具92、及び外側保持具94を挿入し、上側のチューブ半体88Aの端部と下側のチューブ半体88Aの端部とを互いに押付けて溶着を行う。なお、溶着後は、環状突起19の除去を行う。
【0116】
また、タイヤ10は、図15に示すように、1本のチューブ88(2つのチューブ半体88Aからなる)を用い、そのチューブ88の外周部分にトレッドゴム層30を接着したチューブタイプの構成とすることも出来る。
なお、クラウン部補強層28は、補強コード26を螺旋状に巻回して形成することが製造上容易だが、タイヤ幅方向でコードを不連続としても良い。
【0117】
上記実施形態では、上側支持部材80及び下側支持部材76を上下に配置してタイヤ半体17Aを保持したが、上側支持部材80及び下側支持部材76の配置される向きはこれに限らず、例えば、左右に配置しても良い。
【符号の説明】
【0118】
10 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
17 タイヤケース
17A タイヤ半体(熱可塑性材料。タイヤ構成部材)
17Aa タイヤ赤道面側端部
18 ビードコア
19 環状突起(第1,2係合部。突起)
23 環状溝
25 溶融しろ
76A シリンダ装置(移動手段)
80A シリンダ装置(移動手段)
84 熱板
86 タイヤ
88 チューブ
88A チューブ半体(タイヤ構成部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料を含んで形成されたタイヤ構成部材を互いに接合する工程を含むタイヤの製造方法であって、
溶着前の一方のタイヤ構成部材には、前記一方のタイヤ構成部材を支持する第1保持具が係合される第1係合部が形成されており、前記一方のタイヤ構成部材に溶着する溶着前の他方のタイヤ構成部材には、前記他方のタイヤ構成部材を支持する第2保持具が係合される第2係合部が形成されており、
前記一方のタイヤ構成部材の第1溶着面及び前記第2のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方を溶融する溶融工程と、
前記第1係合部に前記第1保持具を係合させた前記一方のタイヤ構成部材の前記第1溶着面と、前記第2係合部に前記第2保持具を係合させた前記他方のタイヤ構成部材の前記第2溶着面とを互いに対向させ、前記第1保持具と前記第2保持具とを互いに接近させて前記第1溶着面と前記第2溶着面とを互いに接触させて溶着する接合工程と、
を有するタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記一方のタイヤ構成部材及び前記他方のタイヤ構成部材は、各々ビード部からトレッドのタイヤ赤道面まで連続したタイヤ半体形状とされ、
前記第1係合部は、前記一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成され、
前記第2係合部は、前記他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側に形成され、
前記第1溶着面は、前記一方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端面とされ、
前記第2溶着面は、前記他方のタイヤ構成部材のタイヤ赤道面側端面とされている、
請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第1係合部及び前記第2係合部は、タイヤ構成部材外周面からタイヤ径方向外側へ突出する突起部を備え、
前記接合工程では、筒状に形成された前記第1保持具の内周面を前記一方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて保持すると共に、筒状に形成された前記第2保持具の内周面を前記他方のタイヤ構成部材の外周面に接触させて保持し、前記第1保持具で前記一方のタイヤ構成部材の前記突起部を押圧し、前記第2保持具で前記他方のタイヤ構成部材の前記突起部を押圧することで前記溶着を行う、請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第1係合部及び前記第2係合部は、各々タイヤ構成部材外周面からタイヤ径方向外側へ突出し、タイヤ周方向に沿って連続して延びる環形状に形成された環状突起を備え、
前記環形突起には、タイヤ周方向に沿って連続して形成され、タイヤ赤道面側が溝底とされタイヤ赤道面側とは反対側に開口する環状溝が形成され、
前記接合工程では、前記第1保持具を前記第1係合部の前記環状溝に挿入して前記一方のタイヤ構成部材を保持し、前記第2保持具を前記第2係合部の前記環状溝に挿入して前記他方のタイヤ構成部材を保持し、前記第1保持具で前記一方のタイヤ構成部材の前記環状突起を押圧し、前記第2保持具で前記他方のタイヤ構成部材の前記環状突起を押圧することで前記溶着を行う、請求項2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記環状溝の溝底と溝側壁との隅部分の断面形状は円弧形状とされている、請求項4に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記第1溶着面及び前記第2溶着面の少なくとも一方には、前記溶融工程で溶融される溶融しろが設けられている、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記溶融しろは、前記第1溶着面と前記第2溶着面との押圧方向の寸法が0.5〜5mmの範囲内に設定されている、請求項6に記載のタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記第1溶着面、及び前記第2溶着面の何れか一方が上向となり、何れか他方が下向きとなるように前記一方のタイヤ構成部材及び前記他方のタイヤ構成部材を配置し、前記第1溶着面、及び前記第2溶着面の内で上向きとされた方を溶融する、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性材料の溶融は、前記熱可塑性材料の融点よりも高温に加熱した加熱部材を接近または接触させることで行われる、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記加熱部材の表面には、フッ素樹脂層が設けられている、請求項9に記載のタイヤの製造方法。
【請求項11】
前記一方のタイヤ構成部材と前記他方のタイヤ構成部材との溶着時にタイヤ表面にはみ出した熱可塑性材料からなるはみ出し部を除去する除去工程を有する、請求項1〜請求項10の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項12】
前記タイヤ構成部材はタイヤ径方向内側にリムのビードシート、及びリムフランジに接触するビード部を備え、前記ビード部に金属材料からなる環状のビードコアが埋設されている、請求項1〜請求項11の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項13】
前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材とを溶着した後、外周部に前記熱可塑性材料よりも剛性の高いコードを螺旋状に巻回することで補強層を形成する、請求項1〜請求項12の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項14】
前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材とを溶着した後、路面と接触する部分に、前記熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れたゴムからなるトレッドゴム層を接着する、請求項1〜請求項13の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項15】
前記一方のタイヤ構成部材と前記第2のタイヤ構成部材に対して、タイヤ内の空気が外部へ漏れないように、リムと接触する部分に前記熱可塑性材料よりもシール性に優れたゴムからなるシール部を貼り付ける、請求項1〜請求項14の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項16】
熱可塑性材料を含んで形成されたタイヤ構成部材を互いに接合するタイヤの製造装置であって、
溶着前の一方のタイヤ構成部材に形成された第1係合部に係合して前記一方のタイヤ構成部材を支持する第1保持具と、
溶着前の他方のタイヤ構成部材に形成された第2係合部に係合して前記他方のタイヤ構成部材を支持する第2保持具と、
前記一方のタイヤ構成部材の第1溶着面、及び前記第2のタイヤ構成部材の第2溶着面の少なくとも一方を溶融する加熱部材と、
前記第1保持具と前記第2保持具とを互いに接離する方向に移動させる移動手段と、
を有するタイヤの製造装置。
【請求項17】
前記加熱部材の表面には、フッ素樹脂層が設けられている、請求項16に記載のタイヤの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−42090(P2011−42090A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191197(P2009−191197)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】