説明

タイヤセンサユニット

【課題】発電機及び蓄電装置を備えるタイヤセンサユニットにおいて、蓄電装置の構成や充放電制御を改善すること。
【解決手段】タイヤセンサユニット3は、車両ホイールの回転に伴い電気エネルギーを生成する発電機21と、発電機21によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して処理回路部9に供給する小容量蓄電装置23と、同じく発電機21によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して処理回路部9に供給する大容量蓄電装置24と、両蓄電装置23,24の充放電を制御する充放電制御部(8,14)とを備える。充放電制御部は、小容量蓄電装置23への充電を大容量蓄電装置24への充電よりも優先して行う一方、大容量蓄電装置24からの放電を小容量蓄電装置23からの放電よりも優先して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ状態監視装置におけるタイヤセンサユニットに関し、詳しくは発電機及び蓄電装置を備えるタイヤセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に設けられた複数のタイヤの状態を運転者が車室内で確認できるようにするために、無線方式のタイヤ状態監視装置が提案されている。このタイヤ状態監視装置は、車両のホイールにそれぞれ装着される複数のタイヤセンサユニットと、車両の車体に搭載される受信機ユニットとを備えている。各タイヤセンサユニットは、対応するタイヤの状態、即ちタイヤ内の圧力や温度を検出し、検出されたタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信する。一方、受信機ユニットは、各タイヤセンサユニットからのデータ信号を受信アンテナを通じて受信して、タイヤ状態に関する情報を、車室内に設けられた表示器に必要に応じて表示させる。
【0003】
上記タイヤセンサユニットは一般的に、内蔵電池から供給される電力によって駆動されるが、タイヤセンサユニットはタイヤの内部空間に配置されるので、電池が消耗した場合に同電池を交換するのは非常に煩雑である。そこで、例えば特許文献1に開示されるように、外部から受信した電磁波のエネルギーを電気エネルギーに変換するとともに同電気エネルギーを蓄電装置に蓄電(充電)し、この蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを用いてタイヤセンサユニットを駆動するようにした技術が提案されている。この特許文献1のタイヤセンサユニットでは、蓄電装置への充電を外部から容易に行うことができ、電池を交換するといったような手間は生じない。
【0004】
また、特許文献2には、車両のホイールの回転時に生じる遠心力、加速度、又は振動により電気エネルギーを生成する、タイヤセンサユニットの電源として用いることのできる圧電発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−209343号公報
【特許文献2】特開2007−282355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された技術では、蓄電装置に充電を行うためには、車両の停車時において、車両の運転手或いは点検作業員が、発電用の電磁波を放射可能な携帯装置を操作して、タイヤセンサユニットに対して電磁波を放射する必要がある。そのため、充電作業が面倒であるだけでなく、車両の走行中には充電を行うことができない。
【0007】
また、タイヤセンサユニットの駆動時間を長くしたり、タイヤセンサユニットの動作の安定性を図ったりするためには、蓄電装置の容量は極力大きい方が望ましいが、蓄電装置の容量を大きくすると同蓄電装置への充電に要する時間が長くなる。言い換えれば、充電の開始から、蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを用いてタイヤセンサユニットを駆動できる状態になるまでに要する時間が長くなる。しかし逆に、蓄電装置の容量を小さくすると、充電に要する時間は短くて済むものの、タイヤセンサユニットの駆動時間が短くなってしまうとともに、タイヤセンサユニットの動作の安定性が低下する。この点、上記特許文献1には、その段落[0073]において、タイヤセンサユニットを1日に5回駆動するのに十分な容量を有する蓄電装置を用いる旨記載されているのみであり、タイヤセンサユニットを適切に駆動する上でより好適な蓄電装置の構成や充放電制御が望まれている。
【0008】
特許文献2に開示された圧電発電装置は、ホイールの回転時、すなわち車両の走行時に、タイヤセンサユニットの駆動に必要な電気エネルギーを生成するものであるが、同特許文献2には、生成した電気エネルギーを蓄電するための構成については一切記載されていない。
【0009】
本発明の目的は、発電機及び蓄電装置を備えるタイヤセンサユニットにおいて、蓄電装置の構成や充放電制御を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本願発明は、車両のホイールに取り付けられるように構成されたタイヤセンサユニットであって、前記ホイールに装着されるタイヤの状態を検出するとともに検出されたタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信する処理回路部を備えるタイヤセンサユニットを提供する。同タイヤセンサユニットは、前記ホイールの回転に伴い電気エネルギーを生成する発電機と、前記発電機によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して前記処理回路部に供給する第1蓄電装置と、前記発電機によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して前記処理回路部に供給する第2蓄電装置であって、前記第1蓄電装置の容量よりも大きな容量を有する第2蓄電装置と、前記第1及び第2蓄電装置への充電と同第1及び第2蓄電装置からの放電とを制御する充放電制御部とを備える。同充放電制御部は、前記第1蓄電装置への充電を前記第2蓄電装置への充電よりも優先して行う一方、第2蓄電装置からの放電を第1蓄電装置からの放電よりも優先して行う。
【0011】
より詳しくは、前記第1蓄電装置の電圧レベルが前記処理回路部の駆動を可能とする許容値以下である場合には、前記充放電制御部は、第1蓄電装置への充電を前記第2蓄電装置への充電よりも優先して行う。一方、前記第1及び第2蓄電装置の電圧レベルが共に前記処理回路部の駆動を可能とする許容値を越えている場合には、前記充放電制御部は、第2蓄電装置からの放電を第1蓄電装置からの放電よりも優先して行う。
【0012】
上記構成によれば、容量の小さな第1蓄電装置への充電が容量の大きな第2蓄電装置への充電よりも優先して行われるので、容量の小さな第1蓄電装置への充電を極力短時間で完了して、同第1蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを用いて、充電の開始から極力早期に処理回路部の駆動を開始することが可能となる。一方、第2蓄電装置からの放電が第1蓄電装置からの放電よりも優先して行われるので、第2蓄電装置に十分な量の電気エネルギーが蓄電された後には、容量の大きな第2蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを用いて、比較的長い時間に亘って安定的に処理回路部を駆動することが可能となる。
【0013】
本発明の一態様において、前記充放電制御部は、前記発電機及び前記処理回路部に対する前記各蓄電装置の接続を切り替える切替回路部と、前記各蓄電装置の電圧レベルに基づき前記切替回路部を切替制御するコントローラとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ状態監視装置が搭載された車両を示す概略構成図。
【図2】図1のタイヤセンサユニットの回路構成を示すブロック図。
【図3】図2のタイヤセンサユニットで行われる充放電制御を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、タイヤ状態監視装置を搭載した車両1が示されている。タイヤ状態監視装置は、車両1の4つのホイール5にそれぞれ取り付けられる4つのタイヤセンサユニット3と、車両1の車体に設置される受信機ユニット4とを備えている。
【0016】
前記各タイヤセンサユニット3は、タイヤ6の内部空間に配置されるように、そのタイヤ6が装着されたホイール5に対して取り付けられている。特に図示しないが、各タイヤセンサユニット3は、ホイール5を貫通して延びるバルブステムを一体に有している。各タイヤセンサユニット3は、対応するタイヤ6の状態(タイヤ内圧力、タイヤ内温度)を検出して、検出されたタイヤ状態を示すデータを含む信号、即ちタイヤ状態データ信号を無線送信する。
【0017】
図2に示すように、前記各タイヤセンサユニット3は、電源回路部7、切替回路部8、及び処理回路部9を備えている。処理回路部9は、電源回路部7から切替回路部8を介して供給される電気エネルギーによって駆動されて、各種処理を行う。処理回路部9は、圧力センサ11、温度センサ12、制御部としてのセンサユニットコントローラ14、送信部としてのRF送信回路16を有している。センサ11,12は、タイヤ6の状態を検出する検出部を構成する。
【0018】
前記圧力センサ11は、対応するタイヤ6内の圧力(内部空気圧)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内圧力データをセンサユニットコントローラ14に出力する。温度センサ12は、対応するタイヤ6内の温度(内部空気温度)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内温度データをセンサユニットコントローラ14に出力する。センサユニットコントローラ14は、CPU、RAM及びROMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、RAMには固有の識別情報であるIDコードが登録されている。このIDコードは、各タイヤセンサユニット3を受信機ユニット4において識別するために使用される情報である。センサユニットコントローラ14は、タイヤ内圧力データ、タイヤ内温度データ及びIDコードを含むデータを、RF送信回路16に出力する。RF送信回路16は、センサユニットコントローラ14からのデータを変調して変調信号を生成し、変調信号を送信アンテナ19から無線送信する。
【0019】
各タイヤセンサユニット3は、例えば、タイヤ状態の計測動作を第1の所定時間間隔(例えば、15秒間隔)で定期的に行う一方、タイヤ状態データ信号の送信動作を前記第1の所定時間間隔よりも長い第2の所定時間間隔(例えば、1分間隔)で定期的に行う。但し、計測されたタイヤ状態が異常を示す場合(例えば、タイヤ内圧力の異常低下、タイヤ内圧力の急変、タイヤ内温度の急変等)、タイヤセンサユニット3は定期的な送信動作とは関係無く、直ちに送信動作を行う。なお、車両の走行の有無を検出可能なセンサ(例えば、加速度センサ)をタイヤセンサユニット3に設け、車両の走行が停止されているときには、少なくともタイヤ状態データ信号の定期的な送信動作を行わないようにしてもよい。
【0020】
図1に示すように、前記受信機ユニット4は、車体の所定箇所に設置され、例えば車両1のバッテリ(図示せず)からの電力によって動作する。受信機ユニット4は、車体の任意の箇所に配置された少なくとも1つの受信アンテナ32を備えており、各タイヤセンサユニット3から受信アンテナ32を通じて前記タイヤ状態データ信号を受信して、同タイヤ状態データ信号を処理する。
【0021】
受信機ユニット4は、受信機ユニットコントローラ33、RF受信回路35、警報器37、及び表示器38を備えている。受信機ユニットコントローラ33はCPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、受信機ユニット4の動作を統括的に制御する。RF受信回路35は、各タイヤセンサユニット3から受信アンテナ32を通じて受信されたRF信号(タイヤ状態データ信号)を復調して、受信機ユニットコントローラ33に送る。受信機ユニットコントローラ33は、RF受信回路35からのタイヤ状態データ信号に基づき、発信元のタイヤセンサユニット3に対応するタイヤ6の内部空気圧及び内部温度を把握する。
【0022】
受信機ユニットコントローラ33はまた、前記内部空気圧及び内部温度に関する情報等を前記表示器38に表示させる。表示器38は、車室内等、車両1の搭乗者の視認範囲に配置される。受信機ユニットコントローラ33はさらに、内部空気圧及び内部温度の異常を前記警報器(報知器)37にて報知させる。警報器37としては、例えば、異常を音によって報知する装置や、異常を光によって報知する装置が適用される。なお、タイヤ6の内部空気圧及び内部温度の異常を、報知器としての表示器38に表示させてもよい。
【0023】
以下に、本願発明の要部に係る構成について説明する。
図2に示すように、前記電源回路部7は、発電機21、整流回路22、第1蓄電装置としての小容量蓄電装置23、及び第2蓄電装置としての大容量蓄電装置24を有している。発電機21は、ホイール5の回転に伴い電気エネルギーを生成する(すなわち、発電を行う)ように構成される。発電機21は、例えば、圧電素子を備え、ホイール5の回転時に生じる遠心力、加速度、又は振動により同圧電素子が電気エネルギーを生成するように構成される。このような圧電素子を用いた発電機は、例えば上記した特許文献2に開示されている。
【0024】
発電機21で生成された電気エネルギーは、整流回路22で生成された後に、前記切替回路部8を介して小容量蓄電装置23及び大容量蓄電装置24の一方に択一的に供給される。各蓄電装置23,24は、供給を受けた電気エネルギーを蓄電(充電)するとともに、蓄電した電気エネルギーを切替回路部8を介して前記処理回路部9に供給するように構成される。各蓄電装置23,24は例えば、電気二重層キャパシタ等のキャパシタや、二次電池からなり、大容量蓄電装置24は小容量蓄電装置23の容量よりも大きな容量を有している。
【0025】
前記切替回路部8は、充電切替スイッチ26、第1放電切替スイッチ27、及び第2放電切替スイッチ28を有している。充電切替スイッチ26は、発電機21を小容量蓄電装置23及び大容量蓄電装置24の一方に択一的に接続するよう、前記センサユニットコントローラ14によって切替制御される。充電切替スイッチ26が接点S1に接触するように切り替えられたとき、発電機21が小容量蓄電装置23に接続されて、発電機21で生成された電気エネルギーが小容量蓄電装置23に供給(充電)される。充電切替スイッチ26が接点S2に接触するように切り替えられたとき、発電機21が大容量蓄電装置24に接続されて、発電機21で生成された電気エネルギーが大容量蓄電装置24に供給(充電)される。
【0026】
第1放電切替スイッチ27は、小容量蓄電装置23を前記処理回路部9に選択的に接続するよう、前記センサユニットコントローラ14によって切替制御される。第1放電切替スイッチ27が接点S3に接触するように切り替えられたとき、小容量蓄電装置23が処理回路部9に接続されて、小容量蓄電装置23に蓄電された電気エネルギーが処理回路部9に供給(放電)される。第2放電切替スイッチ28は、大容量蓄電装置24を処理回路部9に選択的に接続するよう、前記センサユニットコントローラ14によって切替制御される。第2放電切替スイッチ28が接点S4に接触するように切り替えられたとき、大容量蓄電装置24が処理回路部9に接続されて、大容量蓄電装置24に蓄電された電気エネルギーが処理回路部9に供給(放電)される。
【0027】
なお、上記切替スイッチ26,27,28の切り替えに伴い生じる電圧変動を抑制するために、図2に示すようにコンデンサC及びダイオードD1,D2を配置することが好ましい。コンデンサCは、切替回路部8と処理回路部9との間において、両蓄電装置23,24に対して並列に接続されている。第1のダイオードD1は接点S3と処理回路部9との間に直列に配置され、第2のダイオードD2は接点S4と処理回路部9との間に直列に配置されている。
【0028】
前記センサユニットコントローラ14は、各蓄電装置23,24の電圧レベル(言い換えれば蓄電量或いは充電量)を監視するとともに、その電圧レベルに基づき前記切替スイッチ26,27,28を切替制御して、各蓄電装置23,24への充電と各蓄電装置23,24からの放電とを制御する。センサユニットコントローラ14及び切替回路部8(切替スイッチ26,27,28)は、各蓄電装置23,24の充放電を制御する充放電制御部として機能する。そして、本実施形態では、充放電制御部(8,14)は、小容量蓄電装置23への充電を大容量蓄電装置24への充電よりも優先して行う一方、大容量蓄電装置24からの放電を小容量蓄電装置23からの放電よりも優先して行うように構成される。
【0029】
次に、充放電制御部(8,14)が行う充放電制御について図3を参照して説明する。なお、同図において、接点S1〜S4が「オン」とは、切替スイッチ26〜28が対応する接点S1〜S4に接触した状態を示し、接点S1〜S4が「オフ」とは、切替スイッチ26〜28が対応する接点S1〜S4から離間した状態を示す。また、同図には各蓄電装置23,24の電圧レベルの推移が示されているが、この推移はあくまでも例示であり、実際の電圧レベルの推移を必ずしも示すものではない。
【0030】
さて、図3において、時刻t0以前では、各蓄電装置23,24の電圧レベルはゼロ、すなわち各蓄電装置23,24の蓄電量はゼロであるとする。この状態では、接点S1がオンで且つ接点S2〜S4がオフになっている、つまり、発電機21が小容量蓄電装置23に接続されると共に、両蓄電装置23,24が処理回路部9から切り離されている。ここで、時刻t0で車両1が走行を開始すると(言い換えれば、ホイール5が回転し始めると)、発電機21が発電を開始して、生成された電気エネルギーが小容量蓄電装置23に充電される。このように、小容量蓄電装置23への充電が大容量蓄電装置24への充電よりも優先して行われる。
【0031】
そして、小容量蓄電装置23の電圧レベルが、処理回路部9の駆動を可能とする許容値Vt1を越えて、時刻t1で上限値(最大値)Vt2に達すると、接点S1がオフされて接点S2がオンされるとともに、接点S3がオンされる。つまり、発電機21が大容量蓄電装置24に接続されると共に、小容量蓄電装置23が処理回路部9に接続される。そのため、発電機21で生成された電気エネルギーが大容量蓄電装置24に充電されると共に、小容量蓄電装置23に蓄電された電気エネルギーが処理回路部9に放電(供給)される。
【0032】
時刻t2において、小容量蓄電装置23の電圧レベルが前記許容値Vt1にまで低下すると、再び発電機21が小容量蓄電装置23に接続されて(接点S1:オン)、同小容量蓄電装置23への充電が優先して開始される。そのため、大容量蓄電装置24への充電は中断される。時刻t3において、小容量蓄電装置23の電圧レベルが前記上限値Vt2に達すると、発電機21が再び大容量蓄電装置24に接続されて(接点S2:オン)、大容量蓄電装置24への充電が再開される。これにより、大容量蓄電装置24の電圧レベルが許容値Vt1を越えて、時刻t4で上限値Vt2に達する。なお、このとき、処理回路部9では電気エネルギーの消費が非常に少ないものとする。そのため、時刻t3〜時刻t4において小容量蓄電装置23が処理回路部9に接続されている(接点S3:オン)にも拘わらず、小容量蓄電装置23の電圧レベルはほぼ上限値Vt2のまま維持される。
【0033】
時刻t4で大容量蓄電装置24の電圧レベルが上限値Vt2に達すると、小容量蓄電装置23と処理回路部9との接続が断たれると共に(接点S3:オフ)、大容量蓄電装置24が処理回路部9に接続される(接点S4:オン)。その後、時刻t5で処理回路部9が電気エネルギーを消費する状態になると、大容量蓄電装置24に蓄電された電気エネルギーが処理回路部9に放電(供給)される。このように、両蓄電装置23,24の電圧レベルが共に許容値Vt1を越えている場合には(本実施形態では、上限値Vt2である場合には)、大容量蓄電装置24からの放電が小容量蓄電装置23からの放電よりも優先して行われる。
【0034】
時刻t6において、大容量蓄電装置24の電圧レベルが許容値Vt1にまで低下すると、大容量蓄電装置24と処理回路部9との接続が断たれると共に(接点S4:オフ)、小容量蓄電装置23が処理回路部9に接続される(接点S3:オン)。そのため、小容量蓄電装置23に蓄電された電気エネルギーが処理回路部9に放電(供給)される。このとき、大容量蓄電装置24は発電機21に接続されているので(接点S2:オン)、大容量蓄電装置24の充電が平行して行われる。
【0035】
時刻t7において、小容量蓄電装置23の電圧レベルが許容値Vt1にまで低下すると、発電機21が小容量蓄電装置23に接続されて(接点S1:オン)、同小容量蓄電装置23への充電が優先して開始される。そのため、大容量蓄電装置24への充電は中断される。時刻t8において、小容量蓄電装置23の電圧レベルが上限値Vt2に達すると、発電機21が再び大容量蓄電装置24に接続されて(接点S2:オン)、大容量蓄電装置24への充電が再開される。これにより、大容量蓄電装置24の電圧レベルが上限値Vt2に向かって上昇する。
【0036】
なお、両蓄電装置23,24の電圧レベルが許容値Vt1以上である場合、両放電切替スイッチ27,28は接点S3及び接点S4が同時にオフにならないように制御される。
以上詳述した本実施形態は、下記の利点を有する。
【0037】
(1)本実施形態では、小容量蓄電装置23への充電が大容量蓄電装置24への充電よりも優先して行われる。より詳しくは、小容量蓄電装置23の電圧レベルが許容値Vt1以下である場合には、大容量蓄電装置24の電圧レベルが許容値Vt1以下であるか否かに関係なく、小容量蓄電装置23の電圧レベルが上限値Vt2に達するまで、小容量蓄電装置23への充電が大容量蓄電装置24への充電よりも優先して行われる(図3の時刻t0〜t1及び時刻t7〜t8)。小容量蓄電装置23の充電に要する時間は大容量蓄電装置24の充電に要する時間よりも短くて済む。そのため、小容量蓄電装置23への充電を極力短時間で完了して、同小容量蓄電装置23に蓄電された電気エネルギーを用いて、充電の開始から極力早期に処理回路部9の駆動を開始することが可能となる。
【0038】
(2)本実施形態では、大容量蓄電装置24からの放電が小容量蓄電装置23からの放電よりも優先して行われる。より詳しくは、両蓄電装置23,24の電圧レベルが共に許容値Vt1を越えている場合には、大容量蓄電装置24の電圧レベルが許容値Vt1に低下するまで、大容量蓄電装置24からの放電が小容量蓄電装置23からの放電よりも優先して行われる(図3の時刻t5〜時刻t6)。そのため、大容量蓄電装置24に十分な量の電気エネルギーが蓄電された後には、同大容量蓄電装置24に蓄電された比較的大量の電気エネルギーを用いて、比較的長い時間に亘って安定的に処理回路部9を駆動することが可能となる。
【0039】
なお、上記実施形態は以下のように変更することも可能である。
・発電機21としては、ホイールの5の回転に伴い電気エネルギーを生成することができるのであれば、圧電素子以外のどの様なものを使用してもよい。
【0040】
・大容量蓄電装置24の容量と小容量蓄電装置23の容量との差(又は比率)は、タイヤセンサユニット3の使用環境やタイヤセンサユニット3を搭載する車両1の種類等に応じて適宜設定することができるが、大容量蓄電装置24の容量は小容量蓄電装置23の容量の10〜1000倍に設定するのが好ましい。
【0041】
上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
[A]前記第1蓄電装置の電圧レベルが前記処理回路部の駆動を可能とする許容値以下である場合には、前記充放電制御部は、第1蓄電装置の電圧レベルが上限値に達するまで、同第1蓄電装置への充電を前記第2蓄電装置への充電よりも優先して行う、請求項1に記載のタイヤセンサユニット(図3の時刻t0〜t1及び時刻t7〜t8)。
【0042】
[B]前記第1蓄電装置の電圧レベルが前記上限値に達した状態で前記第2蓄電装置の電圧レベルが前記許容値以下である場合には、前記充放電制御部は第1蓄電装置に蓄電された電気エネルギーを用いて前記処理回路部を駆動する、上記[A]に記載のタイヤセンサユニット(図3の時刻t1〜t2)。
【0043】
[C]前記第1蓄電装置の電圧レベルが前記処理回路部の駆動を可能とする許容値以下である場合には、前記充放電制御部は、前記第2蓄電装置の電圧レベルが前記許容値以下であるか否かに関係なく、同第1蓄電装置への充電を第2蓄電装置への充電よりも優先して行う、請求項1に記載のタイヤセンサユニット(図3の時刻t0〜t1及び時刻t7〜t8)。
【0044】
[D]前記第1及び第2蓄電装置の電圧レベルが共に前記処理回路部の駆動を可能とする許容値を越えている場合には、前記充放電制御部は、第2蓄電装置の電圧レベルが前記許容値に低下するまで、第2蓄電装置からの放電を第1蓄電装置からの放電よりも優先して行う、請求項1又は2に記載のタイヤセンサユニット(図3の時刻t5〜t6)。
【0045】
[E]前記第2蓄電装置の電圧レベルが前記許容値にまで低下したとき、前記充放電制御部は、第2蓄電装置からの放電を停止して、第2蓄電装置への充電を行うとともに、前記第1蓄電装置からの放電を開始する、上記[D]に記載のタイヤセンサユニット(図3の時刻t6〜t7)。
【符号の説明】
【0046】
Vt1…許容値、Vt2…上限値、1…車両、3…タイヤセンサユニット、5…ホイール、6…タイヤ、8…充放電制御部を構成する切替回路部、9…処理回路部、11…圧力センサ、12…温度センサ、14…充放電制御部を構成するセンサユニットコントローラ、16…RF送信回路、21…発電機、23…第1蓄電装置としての小容量蓄電装置、24…第2蓄電装置としての大容量蓄電装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールに取り付けられるように構成されたタイヤセンサユニットであって、前記ホイールに装着されるタイヤの状態を検出するとともに検出されたタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信する処理回路部を備えるタイヤセンサユニットにおいて、
前記ホイールの回転に伴い電気エネルギーを生成する発電機と、
前記発電機によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して前記処理回路部に供給する第1蓄電装置と、
前記発電機によって生成された電気エネルギーを蓄電するとともに、蓄電した電気エネルギーを放電して前記処理回路部に供給する第2蓄電装置であって、前記第1蓄電装置の容量よりも大きな容量を有する第2蓄電装置と、
前記第1及び第2蓄電装置への充電と同第1及び第2蓄電装置からの放電とを制御する充放電制御部であって、前記第1蓄電装置への充電を前記第2蓄電装置への充電よりも優先して行う一方、第2蓄電装置からの放電を第1蓄電装置からの放電よりも優先して行う充放電制御部と、
を備えるタイヤセンサユニット。
【請求項2】
前記第1蓄電装置の電圧レベルが前記処理回路部の駆動を可能とする許容値以下である場合には、前記充放電制御部は、第1蓄電装置への充電を前記第2蓄電装置への充電よりも優先して行う、請求項1に記載のタイヤセンサユニット。
【請求項3】
前記第1及び第2蓄電装置の電圧レベルが共に前記処理回路部の駆動を可能とする許容値を越えている場合には、前記充放電制御部は、第2蓄電装置からの放電を第1蓄電装置からの放電よりも優先して行う、請求項1又は2に記載のタイヤセンサユニット。
【請求項4】
前記充放電制御部は、前記発電機及び前記処理回路部に対する前記各蓄電装置の接続を切り替える切替回路部と、前記各蓄電装置の電圧レベルに基づき前記切替回路部を切替制御するコントローラとを有する、請求項1〜3の何れか一項に記載のタイヤセンサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206562(P2012−206562A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72466(P2011−72466)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】